説明

フッ素重合体多層光学フィルムを含む建築用物品及びその作成方法

この開示は、光学的に薄い重合体層を有する多層光学フィルムを含む建築用物品に関し、光学的に薄い重合体層の少なくとも1つが、フッ素重合体を含み、多層光学フィルムが、紫外線安定性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、多層光学フィルムを含む建築用物品、並びにその作成及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体材料は、特にその柔軟性、光学特性及び重量により、従来の建築構造材料より優れた利点を提供する。
【0003】
例えば、温室用途では、構造支持のためにフレーム(例えば、金属又はプラスチック)が構築され、フレーム構造の上にフィルム(例えば、厚さ200〜500マイクロメートル)が被せられる。フィルムのシートは、典型的には、1〜3層のポリエチレンからなり、これらの層のうちの1つの層は、例えば防曇性などの機能を追加したり、又は引裂抵抗若しくは穿刺抵抗などの耐久性を高めたりするために改質されることがある。ポリエチレンは、低価格で取り扱い易いだけでなく、低波長でガラスと同等の透過率、かつ高波長(赤外線など)でガラスより高い透過率を有するため、一般に好まれる材料である。しかしながら、ポリエチレンは、過酷な気候条件では、保管寿命が短くなり、フィルムの機械的及び光学的特性が変化する可能性がある。例えば、紫外線(UV)は、ポリエチレンによって吸収されることがあり、AlhamdanらによってJournal of Material Processing Technology v.209、issue 1、63〜69ページに記載されているようにフィルムの酸化と機械的破壊をもたらす。ポリエチレンフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を添加することによって耐紫外線性を改善するように改質できるが、通常は、フィルムの機械的完全性を変化させないようにかつ/又はコストのために、限られた量の紫外線吸収剤が添加される。
【0004】
別の例では、2008年の北京オリンピックの際に使用されたBeijing National Aquatic Centerは、エチレンとテトラフルオロエチレン(ETFE)の共重合体のクッション構造で覆われていた。クッション構造では、ETFEフィルムのシートが、シートを縁に沿って溶着しガスを充填することによって枕にされる。次に、これらの枕は、支持のためのフレームに留められる。ETFEフィルムは、紫外線に対して安定しており、紫外線、可視光及び赤外線(IR)を透過するが、建物内の物体による赤外線領域(例えば、800〜1300nm)の地球太陽放射の吸収が、ETFEフィルムを使用する建物内部を過度に加熱させる可能性がある。したがって、建築構造物で使用されるETFEフィルムは、典型的には、赤外線の透過を減少させるように改質される。これらの改質には、ETFEフィルム上へのパターン(例えば、点、正方形、十字など)の印刷、又はETFEフィルムの全体若しくはその一部分を赤外線遮断インク又は金属又は金属酸化物化合物で被覆することが挙げられる。これらの改良は、建物に入る赤外線を減少させるだけでなく、紫外線と可視光を含む建物に入る全ての光を減少させる傾向があり、これが透明性に影響を与える可能性がある。更に、金属と金属酸化物化合物は、携帯電話などの放送信号を妨げる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層光学フィルムを含む重合体構造が、ガラス板を被覆するために使用されてきた。例えば、窓ガラスの裏側を被覆して建物に入る太陽熱負荷を軽減するために、赤外線ミラーフィルムが使用されてきた。しかしながら、これらの赤外線ミラーフィルムは、蒸着金属層を使用し、これは単に赤外線だけを遮断しない場合がある。更に、従来から、多層光学フィルムは、0.1を超える屈折率差を有する非フッ素化重合体材料の交互層で構成され、交互層は、例えば、0.25の屈折率差を有するポリエチレン2,6−ナフタレートとポリ(メチルメタクリレート)、及び0.14の屈折率差を有するポリエチレンテレフタレートと(メチル及びエチルアクリレートから誘導された共重合体)である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡潔に言えば、一実施形態では、本開示は、光学スタックを有する多層光学フィルムを含む建築用物品を提供し、この光学スタックは、複数の第1の光学層と、複数の第1の光学層と繰り返す順序で配置された複数の第2の光学層とを含み、複数の光学層の少なくとも1つはフッ素重合体材料を含み、光学スタックは紫外線安定性である。
【0007】
一実施形態では、本開示は、本開示の多層光学フィルムをクッション構造物又は張力構造物で提供する。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、本開示による建築用物品を使用する方法を提供し、この方法は、屋根、ファサード、壁、外殻、窓、天窓、アトリウム、又はこれらの組み合わせの建築に建築用物品を使用することを含む。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、第1の屈折率を有する第1の光学層と第2の屈折率を有する第2の光学層を交互にして、複数の層を含む光学スタックを構成する工程を含む建築用物品を作成する方法を提供し、第1の屈折率は第2の屈折率と異なり、光学層の少なくとも1つはフッ素重合体材料を含み、光学スタックは紫外線安定性である。
【0010】
これらの新規の建築用物品は、重合体材料を使用する他の建築用物品と比較して、例えば、改善された透明度、紫外線及び/若しくは天候安定性、低燃焼性、並びに/又は赤外線反射性を含む改善された性能を提供することができる。
【0011】
上記要約は、各実施形態を説明することを意図するものではない。また、本開示の1つ又は複数の実施形態の詳細を以下の説明に示す。他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本開示の1つの例示的な実施形態による多層光学フィルム100の概略側面図。
【図1B】多層光学フィルム100に含まれる2要素光学スタック140の概略側面図。
【図2】本開示の1つの例示的な実施形態によるクッション構造物200の概略側面図。
【図3】実施例13の多層光学フィルムの波長と反射率との関係を示すグラフ。
【図4】実施例14の多層光学フィルムの波長と反射率との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用するとき、用語
「a」、「an」、「the」、及び「の少なくとも1つ(at least one of)」は、交換可能に使用され、1つ又は複数を意味し、
「及び/又は」は、一方又は両方の記述された事例が起こる場合があることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含み、
「共重合」は、高分子化合物を生成するためにともに重合されるモノマーを指し、
「共重合体」は、少なくとも2つの異なる共重合モノマー(即ち、モノマーが同じ化学構造を有さない)を含む重合体材料を指し、例えば、ターポリマー(3つの異なるモノマー)、又はテトラポリマー(4つの異なるモノマー)を含み、
「重合体」は、同じモノマー(単独重合体)又は異なるモノマー(共重合体)の共重合モノマーを含む重合体材料を指し、
「光」は、200nm〜2500nmの範囲の波長を有する電磁放射を指し、
「溶融加工可能」は、押出成形機などの通常の処理装置において溶融、加熱及び/又は加圧で流れる重合体材料を指し、
「光学層」は、反射される光の約4分の1波長の厚さを有する材料の層を指す。
【0014】
図1Aは、本開示の1つの例示的な実施形態を示す。多層光学フィルム100は、光学スタック140、例えば、任意の保護境界層120及び122、並びに任意のスキン層130及び150などの任意の追加層を含む。
【0015】
光学スタック140は、図1Bを参照してよりよく理解される。光学スタック140は、第2の光学層162a、162b、....、162n(集合的に第2の光学層162)と密着した第1の光学層160a、160b、...、160n(集合的に第1の光学層160)を含む。
【0016】
複数の第1又は第2の光学層の少なくとも1つは、フッ素重合体材料を含む。幾つかの実施形態では、第1及び第2の光学層の両方が、フッ素重合体材料を含む。この開示によって意図されたフッ素重合体材料には、完全又は部分的にフッ素化されたモノマーの共重合単位から誘導された溶融加工性フッ素重合体が挙げられ、半晶質でも又は非晶質でもよい。フッ素重合体材料には、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フルオロアルキルビニルエーテル、フルオロアルコキシビニルエーテル、フッ素化スチレン、フッ素化シロキサン、ヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)、又はこれらの組み合わせのモノマーのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0017】
例示的なフッ素重合体材料には、TFEの単独重合体(例えば、PTFE)、エチレンとTFE共重合体の共重合体(例えば、ETFE)、TFEとHFPとVDFの共重合体(例えば、THV)、VDFの単独重合体(例えば、PVDF)、VDFの共重合体(例えば、coVDF)、VFの単独重合体(例えば、PVF)、HFPとTFEの共重合体(例えば、FEP)、TFEとプロピレンの共重合体(例えば、TFEP)、TFEと(ペルフルオロビニル)エーテルの共重合体(例えば、PFA)、TFEと(ペルフルオロビニル)エーテルと(ペルフルオロメチルビニル)エーテルの共重合体(例えば、MFA)、HFPとTFEとエチレンの共重合体(例えば、HTE)、クロロトリフルオロエチレンの単独重合体(例えば、PCTFE)、エチレンとCTFEの共重合体(例えば、ECTFE)、HFPOの単独重合体(例えば、PHFPO)、4−フルオロ−(2−トリフルオロメチル)スチレンの単独重合体、TFEとノルボルネンの共重合体、HFPとVDFの共重合体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
幾つかの実施形態では、前述の代表的な溶融加工性共重合体は、追加のモノマーを含み、このモノマーは、フッ素化されても又は非フッ素化されてもよい。例には、例えばエポキシドなどの重合条件下で開環する3又は4員環などの開環化合物、例えばプロピレン、エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、及びノルボルネンなどのオレフィンのモノマー、並びに式CF=CF−(OCFCF(R))OR’のペルフルオロ(ビニルエーテル)が挙げられ、式中、Rは、1〜8個、典型的には1〜3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルであり、R’は、1〜8個、典型的には1〜3個の炭素原子のペルフルオロ脂肪族、典型的にはペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルコキシであり、aは、0〜3の整数である。この式を有するペルフルオロ(ビニルエーテル)の例には、CF=CFOCF、CF=CFOCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFCF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCF、及びCF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCFが挙げられる。特に有用なものは、少なくとも3つ、又は少なくとも4つの異なるモノマーを含む溶融加工性フッ素重合体でよい。
【0019】
フッ素重合体材料は、本質的に半晶質でも又は非晶質でもよい。例えば、TFE、HFP、及びVDFの比率によって、フッ素重合体材料は、半晶質のこともあり又は非晶質のこともある。今後の考察のために、Arcella,V及びFerro R.in Modern Fluoroplastics,by Scheirs.,J.,ed.,John Wiley and Sons,NY,1997、77ページを参照されたい。
【0020】
前述のテトラフルオロエチレン及び他のモノマーの例示的な溶融加工性共重合体には、Dyneon LLC.,Oakdale、MNにより商品名「DYNEON THV 220」、「DYNEON THV 230」、「DYNEON THV 500」、「DYNEON THV 500G」、「DYNEON THV 510D」、「DYNEON THV 610」、「DYNEON THV 815」、「DYNEON THVP 2030G」で販売されているテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体、Dyneon LLC.により商品名「DYNEON HTE 1510」及び「DYNEON HTE 1705」と、日本国大阪府のダイキン工業株式会社により商品名「NEOFLON EFEP」で販売されているテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンの共重合体、日本国東京都の旭硝子株式会社により商品名「AFLAS」で販売されているテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンの共重合体、E.I.du Pont de Nemours and Co.,Wilmington,DEにより商品名「TEFLON(登録商標) AF」で販売されているテトラフルオロエチレン及びノルボルネンの共重合体、Dyneon LLC.により商品名「DYNEON ET 6210A」及び「DYNEON ET 6235」、E.I.du Pont de Nemours and Co.により商品名「TEFZEL ETFE」、及び旭硝子株式会社により商品名「FLUON ETFE」で販売されているエチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体、Solvay Solexis Inc.,West Deptford,NJにより商品名「HALAR ECTFE」で販売されているエチレン及びクロロトリフルオロエチレンの共重合体、Dyneon LLCにより商品名「DYNEON PVDF 1008」及び「DYNEON PVDF 1010」で販売されているフッ化ビニリデンの単独重合体、Dyneon LLCにより商品名「DYNEON PVDF 11008」、「DYNEON PVDF 60512」、「DYNEON FC−2145」(HFPとVDFの共重合体)で販売されているポリフッ化ビニリデンの共重合体、E.I.du Pont de Nemours and Co.により商品名「DUPONT TEDLAR PVF」で販売されているフッ化ビニルの単独重合体、並びにSolvay Solexis Incにより商品名「HYFLON MFA」で販売されているMFA、又はこれらの組み合わせなどの市販品が挙げられる。
【0021】
幾つかの実施形態では、光学スタックは、共重合単位から誘導された単独重合体又は共重合体、アクリレート、オレフィン、スチレン、カーボネート、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、ジメチルシロキサン、及びシロキサンのモノマーのうちの少なくとも1つ、ウレタンとポリエステルの官能基のうちの少なくとも1つ、又はこれらの組み合わせを含む、複数の様々なほぼ透明な非フッ素化溶融加工性重合体材料を含むことができる。
【0022】
非フッ素化溶融加工性重合体材料の例には、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリレート共重合体、アセテート共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリイソブチレン、熱可塑性ポリエステル、ポリブタジエン、アミドの共重合体、イミドの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、テレフタレート共重合体、エチルセルロース、ポリホルムアルデヒド、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)の共重合体、ポリプロピレン、プロピレンの共重合体、例えばシンジオタクチックポリスチレ、アイソタクチックポリスチレン、アタクチックポリスチレン、又はこれらの組み合わせを含むポリスチレン、例えばアクリロニトリル、スチレン及びアクリレート(ASA)の共重合体などのスチレンの共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、エチレンの共重合体、環状オレフィン共重合体、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
例示的な非フッ素化重合体材料には、Ineos Acrylics,Inc.,Wilmington,DEにより商品名「CP71」及び「CP80」で販売されているポリ(メチルメタクリレート)、75重量パーセントのメチルメタクリレートと25重量パーセントのエチルアクリレートから生成されたIneos Acrylics,Incにより商品名「PERSPEX CP63」で販売されているポリ(メチルメタクリレート)の共重合体、及びメチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートから生成された共重合体、アタクチックポリプロピレンとアイソタクチックポリプロピレンを含むポリプロピレン、ポリプロピレンと無水マレイン酸から生成されたMitsui Chemicals America Inc.,Rye Brook,NYにより商品名「ADMER」、及びアタクチックポリプロピレンとアイソタクチックポリプロピレンの共重合体であり、Huntsman Chemical Corp.,Salt Lake City,UTにより商品名「REXFLEX W111」で販売されているポリプロピレンの共重合体、Dow Chemical Co.,Midland,MIにより商品名「STYRON」で販売されているポリスチレン、スチレンとアセトニトリルの共重合体であり、Dow Chemical Co.により商品名「TYRIL」、及びアクリロニトリルとスチレンとアクリレートの共重合体であり、Lubrizol Corp.,Wickliffe,OHの子会社のNoveonから入手可能なスチレンとアクリレートの共重合体あるSamsung,La Mirada,CAにより商品名「STAREX」で販売されているポリスチレンの共重合体、Dow Chemical Co.により商品名「SARAN」で販売されているPVDC、Dow Chemical Co.により商品名「CALIBRE」で販売されているポリカーボネート、Lubrizol Corp.により商品名「STATRITE X5091」、及びBASF Corp.,Freeport,TXにより商品名「ELASTOLLAN」で販売され、及びBayer MaterialScience,AG,Leverkusen,Germanyから入手可能な熱可塑性ポリウレタン、エチレンとオクテンの共重合体であり、Dow Chemical Co.により商品名「ENGAGE 8200」、エチレンと酢酸ビニルの共重合体であり、E.I.du Pont de Nemours and Co.により商品名「DUPONT ELVAX」、ブチルアクリレートと、エチルアクリレートと、メチルアクリレート(EBA、EEA、及びEMA)とを含むエチレンとアクリレートの共重合体であり、E.I.du Pont de Nemours and Co.により商品名「DUPONT ELVALOY」、及びエチレン共重合体であり、E.I.du Pont de Nemours and Co.により商品名「DUPONT BYNEL」で販売されているポリエチレンの共重合体、エチレンとノルボルネンの共重合体であり、Topas Advanced Polymers,Florence,KYにより商品名「TOPAS COC」で販売されている環状オレフィン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0024】
再び図1Bを参照すると、第2の光学層162は、第1の光学層160との繰り返し順序で配置される。層ペア(例えば、第1の光学層160がA、第2の光学層162がB)は、図1Bに示したように交互層ペア(例えば、ABABAB...)として配列されてもよい。他の実施形態では、層ペアは、例えば第3の光学層Cなどの中間層と共に配置されてもよく(例えば、ABCABC...)、又は非交互式(例えば、ABABABCAB...、ABABACABDAB...、ABABBAABAB...など)で配列されてもよい。典型的には、層ペアは、交互層ペアとして配列される。
【0025】
一実施形態では、第1の光学層はそれぞれ、テトラフルオロエチレンの共重合モノマーを含む溶融加工性共重合体を含み、第2の光学層はそれぞれ、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)の共重合体、ポリプロピレン、プロピレンの共重合体、ポリスチレン、スチレンの共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、エチレンの共重合体、環状オレフィン共重合体、及びこれらの組み合わせなる群から選択される非フッ素化重合体材料を含む。更に、溶融加工性共重合体は、フッ素化エチレン−プロピレン共重合体ではなく、又はペルフルオロアルコキシ樹脂ではなく、フッ素化エチレン−プロピレン共重合体(即ち、FEP)は、ASTM D 2116−07「FEP−フッ化炭素の成形及び押出成形材料の標準規格」により定義され、屈折率=1.34を有し、ペルフルオロアルコキシ樹脂(即ち、PFA)は、ASTM D 3307−08「ペルフルオロアルコキシ(PFA)−フッ化炭素樹脂の成形及び押出成形材料の標準規格」により定義され、屈折率=1.35を有する。しかしながら、ASTM D 2116−07及びASTM D 3307−08の対象外の、テトラフルオロエチレンをヘキサフルオロエチレン及び/又はビニルエーテルと共に含む重合体材料が意図される。より詳しくは、付随して出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/141572号(代理人整理番号64819US002)を参照されたい。
【0026】
別の実施形態では、それぞれの第1の光学層とそれぞれの第2の光学層は、フッ素重合体材料を含む。より詳しくは、付随して出願され、参照により本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第61/141591号(代理人整理番号64817US002)を参照されたい。
【0027】
本開示の例示的な層ペアには、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、ポリ(メチルメタクリレート)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリカーボネートと(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリカーボネートと(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、ポリカーボネートと(エチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体)の層ペア、ポリプロピレンの共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリプロピレンと(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、シンジオタクチックポリスチレンと(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペアを含む、ポリスチレンと(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリスチレンの共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリスチレンの共重合体と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、ポリエチレンの共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリエチレンの共重合体と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、(アクリロニトリル、スチレン、及びアクリレートの共重合体)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、(アクリロニトリル、スチレン、及びアクリレートの共重合体)と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、環状オレフィン共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、環状オレフィン共重合体と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、熱可塑性ポリウレタンと(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、フッ化ビニリデンの単独重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、(エチレン及びクロロトリフルオロエチレンの共重合体)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンの共重合体)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンの共重合体)と(エチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体)の層ペア、(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンの共重合体)とテトラフルオロエチレンとノルボルネンの共重合体との層ペア、(エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
第1の光学層と第2の光学層を適切に選択することによって、光学スタック140を、所望の帯域幅の光を反射又は透過するように設計することができる。以上の考察から、第2の光学層の選択が、多層光学フィルムの対象用途だけでなく、第1の光学層の選択と加工条件にも依存することが理解されるであろう。
【0029】
光が光学スタック140を通過するとき、光又は光の一部分は、光学層を透過するか、光学層に吸収されるか、光学層間の境界面によって反射される。
【0030】
光学層を透過する光は、吸光度、厚さ、及び反射と関連付けられる。透過率(T)は、吸光度(A)と関連付けられ、A=−logTであり、A%+T%+反射%=100%である。反射は、光学層間のそれぞれの境界面で生じる。図1Bを再び参照すると、第1の光学層160と第2の光学層162はそれぞれ、異なるそれぞれの屈折率n1及びn2を有する。光は、隣接した光学層の境界面、例えば、第1の光学層160aと第2の光学層162aとの境界面、及び/又は第2の光学層162aと第1の光学層160bとの境界面で反射されることがある。隣接した光学層の境界面で反射されない光は、典型的には、連続層を通過し、その後の光学層で吸収されるか、その後の境界面で反射されるか、完全に光学スタック140を透過する。典型的には、所定の層ペアの光学層は、所定の光波長を実質的に透過し所望の反射率が得られるように選択される。層ペア境界面で反射されない光は、次の層ペア境界面まで透過し、そこで光の一部分が反射され、反射されない光は透過し、その後も同様に続く。このように、多数の光学層(例えば、50個超、100個超、1000個超、又は更には2000個超の光学層)を有する光学層スタックが、高度の反射率を生成することができる。
【0031】
一般に、隣接した光学層の境界面の反射率は、反射波長の第1の光学層と第2の光学層上の屈折率の差の二乗に比例する。層ペア間の屈折率の絶対差(│n〜n│)は、典型的には0.1以上である。第1の光学層と第2の光学層との屈折率差は大きい方が望ましく、その理由は、より高い屈折力(例えば、反射率)を作り出すことができ、それにより反射帯域幅を大きくできるからである。しかしながら、本開示では、層ペア間の絶対差は、選択された層ペアにより、0.20未満、0.15未満、0.10未満、0.05未満、又は更には0.03未満でよい。例えば、PMMAとDYNEON HTE 1705Xは、0.12の絶対屈折率差を有する。
【0032】
適切な層ペア、層厚及び/又は層ペアの数を選択することによって、光学スタックを、所望の波長を透過又は反射するように設計することができる。それぞれの層の厚さは、反射率の大きさを変化させるか又は反射率波長範囲をずらすことによって、光学スタックの性能に影響を及ぼす場合がある。光学層は、典型的には、対象波長の約4分の1の平均個別層厚と、対象波長の約2分の1の層ペア厚とを有する。光学層はそれぞれ4分の1波長の厚さでよく、又は光学層は、層ペアの光学厚さの和が波長の半分(若しくはその倍数)である限り、異なる光学厚さを有することができる。例えば、400ナノメートル(nm)の光を反射させるためには、平均個別層厚は約100nmになり、平均層ペア厚は約200nmになる。同様に、800nmの光を反射させるためには、平均個別層厚は約200nmになり、平均層ペア厚は約400nmになる。第1の光学層160と第2の光学層162は同じ厚さを有してもよい。あるいは、光学スタックは、反射波長範囲を大きくするために異なる厚さを有する光学層を含んでもよい。3つ以上の層ペアを有する光学スタックは、ある波長範囲にわたって反射能を提供するために異なる光学厚さを有する光学層を含んでもよい。例えば、光学スタックは、特定の波長を有する通常の入射光を最適に反射させるように個別に調整される層ペアを含んでもよく、又はより大きい帯域幅にわたって光を反射させるために層ペア厚の勾配を含んでもよい。特定の層ペアの通常の反射率は、主に、個々の層の光学厚さに依存し、光学厚さは、層の実際の厚さとその屈折率の積として定義される。光学層スタックから反射された光の強度は、層ペアの数とそれぞれの層ペア内の光学層の屈折率の差の関数である。比n/(n+n)(一般に「f比」と呼ばれる)は、特定波長における所定の層ペアの反射率と関連する。f比において、nとnは、層ペア内の第1及び第2の光学層の特定波長でのそれぞれの屈折率であり、dとdは、層ペア内の第1及び第2の光学層のそれぞれの厚さである。屈折率、光学層厚さ、及びf比を適切に選択することによって、一次反射の強度をある程度制御することができる。例えば、約0.05〜0.3nmの光学厚さの層によって、紫(波長400ナノメートル(nm))〜赤(波長700nm)の一次可視光反射を得ることができる。一般に、f比が0.5からずれると、反射率のレベルが低くなる。
【0033】
式λ/2=n+nを使用して、波長λの光を垂直入射角で反射させるように光学層を最適化することができる。他の角度では、層ペアの光学厚さは、構成光学層内を伝わる距離(層の厚さより大きい)と、光学層の3つの光学軸のうちの少なくとも2つの光学軸の屈折率とに依存する。光学層はそれぞれ4分の1波長の厚さでもよく、又は光学厚さの和が波長の半分(又はその倍数)である限り、光学層は異なる光学厚さを有してもよい。3つ以上の層ペアを有する光学スタックは、ある波長範囲にわたって反射能を提供するために異なる光学厚さを有する光学層を含んでもよい。例えば、光学スタックは、特定の波長を有する通常の入射光を最適に反射させるように個々に調整される層ペアを含んでもよく、又はより大きい帯域幅にわたって光を反射させるために層ペア厚の勾配を含んでもよい。
【0034】
典型的な手法は、全て又はほとんど4分の1波長のフィルム積層を使用することである。この場合、スペクトルの制御には、フィルム積層の層厚プロファイルを制御する必要がある。空気中で大きな角度範囲にわたって可視光を反射させるために必要とされるような広帯域スペクトルは、重合体フィルムによって達成可能な屈折率の差が無機質フィルムより小さいので、層が重合体の場合は、多数の層を必要とする。そのような光学スタックの層厚プロファイルは、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に教示された軸ロッド装置を微視的手法で得られた層プロファイル情報と組み合わせて使用することによって、改善されたスペクトル特性が提供されるように調整することができる。
【0035】
制御されたスペクトルを有する多層光学フィルムを提供するための望ましい技術には、
1)米国特許第6,783,349号(Neavinら)に教示されたような、共押出重合体層の層厚値の軸ロッドヒータ制御を使用する。
【0036】
2)生産中の、例えば原子間力顕微鏡、透過型電子顕微鏡、又は走査電子顕微鏡などの層厚測定ツールから、層厚プロファイル・フィードバックを適時に得る。
【0037】
3)光学モデリングにより、所望の層厚プロファイルを生成する。
【0038】
4)測定した層プロファイルと望ましい層プロファイルとの間の差に基づいて、軸ロッド調整を繰り返し行う。
【0039】
層厚プロファイルを制御する基本処理は、ターゲット層厚プロファイルと測定した層のプロファイルの差に基づく軸ロッドゾーン出力設定の調整を含む。所定のフィードブロック領域における層厚値の調整に必要とされる軸ロッド出力の増加は、最初に、そのヒーター領域において生成される層の得られる厚さ変化のナノメートル当たりの入熱のワットに関して、検量されてよい。スペクトルの細かい制御は、275層に対して24個の軸ロッドゾーンを使用して可能である。較正後に、所定のターゲットプロファイルと測定プロファイルの必要な電力調整を一度に計算することができる。この手順は、2つのプロファイルが収束するまで繰り返されてもよい。
【0040】
例えば、光学スタックの層厚プロファイル(層厚値)は、340nmの光に関して4分の1波長の光学厚さ(屈折率と物理厚を掛けたもの)を有するように調整された第1の(最も薄い)光学層から、420nmの光に関して約4分の1波長厚の光学厚さになるように調整された最も厚い層まで、ほぼ線形プロファイルになるように調整されてもよい。
【0041】
光学スタック内の光学層の数を増やすと、屈折力も高まることがある。例えば、層ペア間の屈折率が小さい場合、光学スタックは、所望の反射率を達成しないことがあるが、層ペアの数を増やすことによって、十分な反射率が達成されることがある。本開示の一実施形態では、光学スタックは、少なくとも2個の第1の光学層と少なくとも2個の第2の光学層、少なくとも5個の第1の光学層と少なくとも5個の第2の光学層、少なくとも50個の第1の光学層と少なくとも50個の第2の光学層、少なくとも200個の第1の光学層と少なくとも200個の第2の光学層、少なくとも500個の第1の光学層と少なくとも500個の第2の光学層、又は更には少なくとも1000個の第1の光学層と少なくとも1000個の第2の光学層を含む。
【0042】
光学層の複屈折(例えば、延伸によって生じる)は、層ペア内の光学層の屈折率の差を大きくする別の有効な方法である。2つの互いに垂直な面内軸に配向される層ペアを含む光学スタックは、例えば、光学層の数、f比、及び屈折率により極めて高い割合の入射光を反射させることができ、極めて効率の高いリフレクタである。
【0043】
言及したように、本開示の光学スタックは、対象となる少なくとも特定の帯域幅(即ち、波長範囲)を反射又は透過するように設計されてもよい。一実施形態では、本開示の光学スタックは、約400〜700nm、約380〜780nm、又は更には約350〜800nmの波長の少なくとも一部分、約700nm超、約780nm超、又は更には約800nm超の波長の少なくとも一部分、約700〜2500nm、約800〜1300nm、又は更には約800〜1100nmの波長の少なくとも一部分、約300〜400nm、又は更には約250〜400nmの波長の少なくとも一部分、約300nm未満の波長の少なくとも一部分、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを透過する。「少なくとも一部分」とは、波長の全範囲だけでなく、少なくとも2nm、10nm、25nm、50nm、又は100nmの帯域幅などの波長の一部分も含むことを意味する。「透過する」とは、対象の波長の少なくとも30、40、50、60、70、80、85、90、92、又は95パーセントが、90度の入射角で透過されることを意味する。
【0044】
一実施形態では、本開示の光学スタックは、約400〜700nm、約380〜780nm、又は更には約350〜800nmの波長の少なくとも一部分、約700nm超、約780nm超、又は更には約800nm超の波長の少なくとも一部分、約700〜2500nm、約800〜1300nm、又は更には約800〜1100nmの波長の少なくとも一部分、約300〜400nm、又は更には約250〜400nmの波長の少なくとも一部分、約300nm未満の波長の少なくとも一部分、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを反射する。「反射する」とは、対象の波長の少なくとも30、40、50、60、70、80、85、90、92、又は95パーセントが、90度の入射角で反射されることを意味する。
【0045】
層ペア、層の数、及び層の厚さは、光学スタックが第1の帯域幅の光を反射させ、第2の帯域幅の光を透過するように選択されてもよい。例えば、光学スタックは、可視光波長(例えば、400〜700nm)を透過し、赤外線波長(例えば、700〜2500nm)を反射させ、紫外線波長(例えば、250〜400nm)を透過し、赤外線波長を反射させ、又は赤外線波長を透過し、かつ紫外線波長を反射させてもよい。
【0046】
屋外用途のために、耐候性はまた、光学スタックと多層光学フィルムの重要な特徴である。促進耐候性試験は、物品の性能を評価する1つの選択肢である。促進耐候性試験は、一般に、ASTM G−155「促進試験装置において実験室光源を使用して非金属材料を露光する標準的技法」に記載されたものと類似の技術を使用して多層光学フィルムに実行される。この開示による光学スタックは、実質的に紫外線安定性を有する。一実施形態において、実質的な紫外線安定性は、本明細書では、スキン層などの追加の非光学構造支持層を含む場合がある光学スタックが、ASTM G155−05aに記載された天候サイクルと反射モードで動作するD65光源とに晒されたときに、色、ヘーズ(haze)及び透過率を実質的に変化させないことを意味する。「実質的に変化しない」は、ヘーズ%が、初期ヘーズ%と比較して15、10、8、5、2、1.5、1、又は更には0.5%以下の値しか増加せず、透過率が、初期透過%と比較して15、10、8、5、2、又は更には1.5%以下の値しか減少せず、CIE L色空間を使用して得られたデルタb(ここで、bは、重合体フィルムの黄色度を評価するために使用されるパラメータである)は、初期デルタbに対して10、8、5、2、1、又は更には0.5以下の値しか増加しないことを意味する。一実施形態では、光学スタックは、実質的に6000時間の暴露後に天候安定性を有する。
【0047】
前述の光学スタックに加えて、多層光学フィルムの物理的、化学的及び/又は光学的特性を修正又は強化するために、図1Aに示したような追加層が、必要に応じて、多層光学フィルムに付着されてもよい。必要に応じて本発明による多層光学フィルムで使用される被覆又は層の非限定的なリストは、以下の段落で述べる。
【0048】
一実施形態では、多層光学フィルムは、1つ又は複数の光学層を含む。多層光学フィルムは、単一の光学スタックからなってもよく、又は多層光学フィルムを形成するように後で組み合わされる多数の光学スタックから作成されてもよいことを理解されよう。追加されることがある付加的な光学層には、例えば、偏光子、鏡、透明−有色フィルム(clear to colored film)、有色−有色フィルム(colored to colored film)、コールドミラー、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
一実施形態では、多層光学フィルムは、例えば1つ若しくは複数のスキン層などの1つ若しくは複数の非光学層、又は例えば光学層のパケット間の保護境界層などの1つ若しくは複数の内部非光学層を含む。非光学層を使用して、多層光学フィルム構造を提供するか、又は処理中若しくは処理後に多層光学フィルム構造が損傷若しくは破損しないように保護することができる。幾つかの用途では、犠牲保護スキンを含むことが望ましい場合があり、スキン層と光学スタックとの間の境界接着は、使用前にスキン層を光学スタックから剥がすことができるように制御される。
【0050】
典型的には、非光学層の1つ又は複数は、光学層を透過するか光学層で反射される光の少なくとも一部分が、これらの層中を通るように配置される(即ち、これらの層は、第1及び第2の光学層内を通るか又はそれらの光学層によって反射される光の経路内に配置される)。非光学層は、対象の波長領域にわたる光学スタックの反射特性又は透過特性に影響を及ぼすこともあり、及ぼさないこともある。一般に、そのような非光学層は、光学スタックの光学特性に影響を及ぼしてはならない。
【0051】
非光学層には、例えば、多層光学フィルムの耐引裂性、耐穿刺性、靭性、耐候性及び/又は耐薬品性などの特性を付与するか又は改善する材料が選択されてもよい。例えば耐引裂層に使用するための材料を選択するときは、破壊時の延伸率、ヤング率、引裂強さ、内部層への接着、対象の波長での透過率と吸収率、光学的透明度とヘーズ、耐候性、及び様々な気体と溶剤の浸透性などの多くの因子を検討しなければならない。耐引裂層として使用されることがある材料の例には、ポリカーボネート、ポリカーボネート及びコポリエステルの混合物、ポリエチレンの重合体、ポリプロピレンの共重合体、エチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレン、並びにポリ(エチレンテレフタレート)の共重合体が挙げられる。
【0052】
非光学層はあらゆる適当な材料からなり、光学スタックに使用される材料の1つと同様であり得る。当然ながら、選択される材料は、光学スタックの光学特性に対してあまり有害な光学特性を有しないことが重要である。非光学層は、第1及び第2の光学層に使用されている重合体材料のいずれかを含む様々な重合体から形成されてもよい。幾つかの実施形態では、非光学層に選択される材料は、第1の光学層に選択された重合体材料及び/又は第2の光学層に選択された重合体材料と類似又は同じである。
【0053】
多層光学フィルムを、劣化を引き起こす場合がある紫外線から保護するために、多層光学フィルムに任意の紫外線吸収層が付着されてもよい。太陽光、特に280〜400nmの紫外線は、プラスチックの劣化を引き起こす可能性があり、その結果、変色し、光学的及び機械的性質の低下の原因となる。光酸化劣化の抑制は、長期耐久性が必須の屋外用途にとって重要である。ポリ(エチレンテレフタレート)による紫外線の吸収は、例えば、約360nmで始まり、320nm以下で著しく増加し、300nm以下で極めて明らかである。ポリ(エチレンナフタレート)は、310〜370nmの範囲で紫外線を強く吸収し、吸収末端は約410nmまで延在し、吸収最大量は352nmと337nmで生じる。酸素の存在下で鎖開裂が起き、支配的光酸化生成物は、一酸化炭素、二酸化炭素、及びカルボン酸である。エステル基の直接光分解に加えて、酸化反応を考慮しなければならず、これは同様に過酸化物ラジカルにより二酸化炭素を生成する。
【0054】
紫外線吸収層は、重合体と紫外線吸収剤を含む。典型的には、重合体は、熱可塑性重合体であるが、これは要件ではない。適切な重合体の例には、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート))、フッ素重合体、ポリアミド、アクリル樹脂(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))、シリコーン重合体(例えば、熱可塑性シリコーン重合体)、スチレン重合体、ポリオレフィン、オレフィン共重合体(例えば、TOPAS COCとして入手可能なエチレンとノルボルネンの共重合体)、シリコーン共重合体、ウレタン、又はこれらの組み合わせ(例えば、ポリメチルメタクリレートとポリフッ化ビニリデンの混合物)が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収層は、紫外線を吸収することによって多層光学フィルムを保護する。一般に、紫外線吸収層は、紫外線に長期間耐えることができる重合体組成物(即ち、添加剤と重合体)を含んでもよい。
【0056】
多層光学フィルムを保護する機能を支援するために、典型的には、様々な紫外線吸収安定化添加剤が、紫外線吸収層に混入される。添加剤の非限定的な例には、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤、酸化防止剤、及びこれらの組み合わせから選択される1つ又は複数の化合物が挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤などの紫外線安定剤は、光で生じる劣化の物理的及び化学的プロセスを仲介する可能性のある化合物である。したがって、紫外線による重合体の光酸化は、約400nm未満の波長の光を実質的に吸収する少なくとも1つの紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層を使用することによって防ぐことができる。紫外線吸収剤は、典型的には、180〜400nmの波長領域の入射光の少なくとも70パーセント、典型的には80パーセント、より典型的には90パーセント超、又は更には99パーセント超を吸収する量で紫外線吸収層に含まれる。
【0058】
典型的な紫外線吸収層の厚さは、10〜500マイクロメートルであるが、これより薄いか又は厚い紫外線吸収層を使用してもよい。典型的には、紫外線吸収剤は、紫外線吸収層に2〜20重量パーセントの量で存在するが、これより少ないか又は多い量が使用されてもよい。
【0059】
1つの例示的な紫外線吸収化合物は、ベンゾトリアゾール化合物である5−トリフルオロメチル−2−(2−ヒドロキシ−3−α―クミル5−tert−オクチルフェニル)−2Hベンゾトリアゾールである。他の例示的なベンゾトリアゾールには、例えば、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−α−クミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−α−クミル−5−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾールが挙げられる。追加の例示的な紫外線吸収化合物には、2−(4,6−ジフェニル−1−3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシ−フェノールと、Ciba Specialty Chemicals Corp.,Tarrytown,NYにより商品名「TINUVIN 1577」及び「TINUVIN 900」で販売されているものが挙げられる。更に、紫外線吸収剤は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)及び/又は酸化防止剤の組み合わせで使用することができる。例示的なHALSには、Ciba Specialty Chemicals Corp.により商品名「CHIMASSORB 944」及び「TINUVIN 123」で販売されているものが挙げられる。例示的な酸化防止剤には、Ciba Specialty Chemicals Corp.により商品名「IRGANOX 1010」及び「ULTRANOX 626」で販売されているものが挙げられる。
【0060】
紫外線吸収層にUVA、HALS及び酸化防止剤を添加することに加えて、UVA、HALS及び酸化防止剤を、本開示の第1又は第2の光学層を含む他の層に添加することもできる。
【0061】
別の実施形態では、多層光学フィルムを赤外線から保護するために、任意の赤外線吸収層を多層光学フィルムに付着させてもよい。赤外線吸収層は、重合体と赤外線吸収剤を含む。赤外線吸収層は、多層光学フィルム上に被覆されてもよく、又は重合体層中に押出し混合されてもよい。例示的な赤外線吸収化合物には、インジウムスズ酸化物、アンチモンスズ酸化物、Epolin,Inc.,Newark,NJにより商品名「EPOLIGHT 4105」、「EPOLIGHT 2164」、「EPOLIGHT 3130」、及び「EPOLIGHT 3072」で販売されているような赤外線吸収染料、米国特許第4,244,741号(Kruse)に記載されたようなヘテロポリ酸、米国特許第3,850,502号(Bloom)に記載されたような金属錯体、H.W.Sands Corp.,Jupiter,FLによるSDE8832などのニッケル錯体染料、並びにやはりH.W.Sands Corp.によるSDA5484などのパラジウム錯体染料が挙げられる。
【0062】
多層光学フィルムの反射及び/若しくは透過性能、又は視覚的特性を更に高めるために、層の少なくとも1つに追加の添加剤が加えられてもよい。例えば、多層光学フィルムは、外観を変更するか又は多層光学フィルムを特定用途にカスタマイズするために、インク、染料又は顔料で処理されてもよい。したがって、例えば、多層光学フィルムは、製品情報、広告、装飾又は他の情報を表示するために使用されるような、インク又は他の印刷表示で処理されてもよい。多層光学フィルムに印刷するために、例えばスクリーン印刷、凸版印刷、及びオフセットなどの種々の技術を使用することができる。また、例えば1成分又は2成分インク、酸化的乾燥又は紫外線乾燥インク、溶解インク、分散インク、及び100%インク系を含む様々なタイプのインクを使用することができる。また、多層光学フィルムの外観は、例えば、多層光学フィルム上への染色層の積層、多層光学フィルムの表面への着色被覆の付着、層の1つ若しくは複数(例えば、第1若しくは第2の光学層、追加の光学層、又は非光学層)への顔料の混入、又はこれらの組み合わせなどによって着色されてもよい。可視光及び近赤外線化合物は両方とも、本開示において意図され、例えば、紫外線を吸収し、可視光範囲で蛍光を発する化合物などの蛍光増白剤が挙げられる。
【0063】
多層光学フィルムに含まれることがある他の添加剤には、粒子が挙げられる。例えば、カーボンブラック粒子を重合体中に分散させるか、又は基材に被覆して遮光を提供することができる。追加又は代替として、小さな粒子の非顔料酸化亜鉛、インジウムスズ酸化物、及び酸化チタンを、阻止添加剤、反射添加剤、又は散乱添加剤として使用して、紫外線劣化を最小限にすることができる。ナノスケール粒子は、可視光を透過し、同時に有害な紫外線を散乱又は吸収し、それにより熱可塑性物に対する損傷が減少する。米国特許第5,504,134号(Palmerら)は、直径約0.001マイクロメートル〜約0.20マイクロメートル、より典型的には直径約0.01〜約0.15マイクロメートルのサイズ範囲の金属酸化物微粒子を使用することによる紫外線に起因する重合体基材劣化の減少について述べている。米国特許第5,876,688号(Laundon)は、本発明での使用に十分適した塗料、被覆、仕上げ材、プラスチック物品、及び化粧品に紫外線ブロック及び/又は散乱剤として混入されたときに、透過されるのに十分に小さい微粉化酸化亜鉛を作成する方法を教示している。紫外線を減衰させることができる10〜100nmの範囲の粒径を有する酸化亜鉛及び酸化チタンなどのこれらの粉体は、Kobo Products,Inc.,South Plainfield,NJから市販されている。
【0064】
多層光学フィルムは、必要に応じて耐摩耗層を含んでもよい。耐摩耗層は、対象波長に透明な任意の耐摩耗材料を含んでもよい。耐引掻性被覆の例には、Ciba Specialty Chemicals Corp.により商品名「TINUVIN 405」で販売されている紫外線吸収剤を5重量パーセント、商品名「TINUVIN 123」で販売されているヒンダードアミン光安定剤を2重量パーセント、及びCiba Specialty Chemicals Corp.により商品名「TINUVIN 1577」で販売されている紫外線吸収材を3重量パーセント含む、Lubrizol Advanced Materials,Inc.,Cleveland,OHにより商品名「TECOFLEX」で販売されている熱可塑性ウレタンと、California Hardcoating Co.,Chula Vista,CAにより商品名「PERMA−NEW 6000 CLEAR HARD COATING SOLUTION」で販売されている熱硬化ナノシリカシロキサン充填重合体からなる耐引掻性被覆とが挙げられる。
【0065】
耐摩耗層は、必要に応じて、少なくとも1つの汚れ防止成分を含んでもよい。汚れ防止成分の例には、フッ素重合体、シリコーン重合体、二酸化チタン粒子、かご型シルセスキオキサン(例えば、Hybrid Plastics of Hattiesburg,MSにより商品名「POSS」で販売されているような)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。耐摩耗層は、また、導電性フィラー、典型的には透明導電性フィラーを含んでもよい。
【0066】
本開示の多層光学フィルムは、必要に応じて、特定の気体又は液体に対する多層光学フィルムの透過特性を変化させる1つ又は複数の境界膜又は被覆を含んでもよい。これらの境界膜又は被覆は、水蒸気、有機溶媒、酸素及び/又は二酸化炭素がフィルムを透過するのを抑制する。境界膜又は被覆は、特に、多層光学フィルムの構成要素が透湿による歪みを受けることがある高湿度環境で望ましいことがある。
【0067】
また、例えば静電防止被覆又は膜、防曇材などの付加的な任意の層が検討されてもよい。
【0068】
任意の追加層は、光学スタックの様々な光学層より厚くてもよく、薄くてもよく、又は同じ厚さでもよい。任意の追加層の厚さは、一般に、個別の光学層の少なくとも1つの厚さの少なくとも4倍、典型的には少なくとも10倍であり、少なくとも100倍以上でもよい。特定の厚さを有する多層光学フィルムを作成するために、追加層の厚さを変更することができる。
【0069】
多層光学フィルムにおいて、任意の追加層は、同時押出し形成又は、例えば接着剤、温度、圧力、若しくはこれらの組み合わせの使用を含む当該技術分野で既知の任意の接着技術により付着されてもよい。存在する場合、任意の結合層は、多層光学フィルムの層の間、主に光学スタックと任意の追加層との間の付着を促進する。結合層は、有機物(例えば、重合体層)でもよく、又は無機物でもよい。例示的な無機結合層には、例えば二酸化チタン、酸化アルミニウム、又はこれらの組み合わせなどの金属酸化物が挙げられる。結合層は、溶液流延法と粉体被覆法を含む任意の適切な手段により提供されてもよい。多層光学フィルムの性能を低下させないために、任意の結合層は、典型的には、実質的に対象波長の光を吸収しない。
【0070】
光学スタックは、例えば共押出し、積層、被覆、蒸着、又はこれらの組み合わせなどの技術による当業者に周知の方法によって製造することができる。同時押出し形成では、重合体材料は、ウェブに共押し出される。同時押出し形成では、2つの重合体材料が、層の不安定性又は不均一性を防ぐために類似の流動学的性質(例えば、融解粘度)を有することが好ましい。積層では、重合体材料シートが、積層され、次に熱、圧力及び/又は接着剤を使用して層化される。被覆では、1つの重合体材料の溶液が、別の重合体材料に塗布される。蒸着では、1つの重合体材料が、別の重合体材料上に蒸着される。更に、処理を改善するために、第1の光学層、第2の光学層及び/又は任意の追加層に機能性添加剤が添加されてもよい。機能性添加剤の例には、例えば流動を高めかつ/又はメルトフラクチャを減少させることがある加工添加剤が含まれる。
【0071】
米国特許第5,552,927号(Wheatleyら)、同第5,882,774号(Jonzaら)、同第6,827,886号(Neavinら)、及び同第6,830,713号(Hebrinkら)を参照することにより、材料の選択と光学スタック及び多層光学フィルムの製造と関連した更に詳しい考察を得ることができる。
【0072】
典型的には、第1及び第2の光学層と任意の追加層の重合体材料は、流れを乱すことなく共押出しを可能にする類似の流動学的特性(例えば、融解粘度)を有するように選択される。第1及び第2の光学層と使用される任意の追加層は、多層光学フィルムが剥離しないように十分な層間付着性を有しなければならない。
【0073】
様々な屈折率の望ましい関係を達成する能力(及び、したがって光学スタックの光学特性)は、光学スタックを作成するために使用される加工条件による影響を受ける。一実施形態では、多層光学フィルムは、一般に、個別の重合体材料を共押出して多層光学フィルムを形成し、次に特定の温度で延伸させ、次に必要に応じて特定の温度で加熱硬化させることによって多層光学フィルムを配向することによって調製される。あるいは、押出し及び配向工程は、同時に実施してよい。
【0074】
多層光学フィルムは、長さ配向機(length orienter)を使用して機械方向に延伸されてもよく、又は幅出機を使用して幅方向に延伸されてもよい。前延伸温度、延伸温度、延伸速度、延伸比、ヒートセット温度、ヒートセット時間、ヒートセット緩和、及び交差延伸緩和は、所望の屈折率関係を有する多層光学フィルムが得られるように選択される。これらの変量は相互依存しており、したがって、例えば比較的低い延伸温度で結合された場合は、例えば比較的低い延伸速度が使用されることがある。所望の多層光学フィルムを達成するためにこれらの変量の適切な組み合わせを選択する方法は、当業者には明らかであろう。フィルムが延伸される場合は、一般に、1つの延伸方向に1:2〜1:10又は1:3〜1:7の範囲、この延伸方向と垂直な方向に1:0.2〜1:10又は更には1:0.2〜1:7の範囲の延伸比が好ましい。幾つかの実施形態では、全体の延伸比が、3:1を超え、4:1を超え、又は更には6:1を超える。
【0075】
多層光学フィルムは、一般に、従順な材料シートである。本開示のため、用語「従順(compliant)」は、多層光学フィルムが寸法的に安定しており、しかも後で様々な形状に成形又は形成することができる柔軟特性を有することを示す。一実施形態では、多層光学フィルムは、特定の最終用途のための様々な形状又は構造に熱成形されてもよい。
【0076】
本開示による多層光学フィルムは、建築用物品に使用される。幾つかの実施形態では、多層光学フィルムは、単独で使用されてもよく、あるいは多層フィルムは、柔軟な無機又は有機の織布若しくは不織布、繊維メッシュ若しくは重合体フィルムなどの別の重合体材料上に配置されてもよい。例には、ガラス繊維、PTFE繊維、E.I.du Pont de Nemours and Co.による「KEVLAR」、又は金属メッシュが挙げられる。熱、圧力及び/又は接着剤を使用して、多層光学フィルムを、柔軟な無機又は有機の織布若しくは不織布、繊維メッシュ若しくは重合体材料に結合してもよい。
【0077】
幾つかの実施形態では、多層光学フィルムは、張力構造物又はクッション構造物の一部である。
【0078】
張力構造物では、多層光学フィルムは、ラーメン(rigid frame)(例えば、木材、金属及び/又はプラスチック)に固定される。多層光学フィルムをフレーム内に保持するために、典型的には、機械留め具(例えば、クランプ)が使用される。典型的には、張力構造物は、窓、温室、又はより小さいサイズの屋根材などのより小さな建築物に限定される。
【0079】
クッション構造物の1つの例示的な実施形態を図2に示す。クッション構造物200は、外側シート202、内側シート206、及び任意の中央シート204を含む。個別シートは、溶着、接着、又は他の方法で結合され、次にクランプフレーム210a及び210bに固定される。外側シート202、内側シート206、及び任意の中央シート204は、膨張空間220及び240を画定する。
【0080】
クッション構造物は、1枚、2枚、又はより多くのシート、例えば図2に示したような3枚、又は更には5枚以上のシートを含んでもよい。図2のクッション構造物の例示的な実施形態を再び参照すると、外側シート202、内側シート206、及び任意の中央シート204は、重合体材料の平坦な順応性シート(即ち、重合体フィルム)から構成される。クッション構造物に使用される従来のフィルムは、ETFEであるが、順応性シートに、PVC(ポリ塩化ビニル)及びHTEなどの他の重合体材料を使用してもよい。2枚以上の重合体材料シートが、縁で接合され、低圧空気で膨張される。クッションを形成するために、2つ以上の層を膨張させてもよい。内圧が重合体材料シートにあらかじめ張力を与え、クッション構造物が風及び雪などの外部荷重に耐えることを可能にする。圧力は、典型的には200〜600パスカルである。多層クッションにおいて、外側シートは、通常、外部条件に耐えなければならないので最も厚い(約200〜300マイクロメートル)。内側シートはより薄くてもよい。順応性重合体材料シートは、縁でフレームに留められ、フレームは、他の構造物に固定されてもよい。順応性重合体材料シートは、ある程度の動きを吸収することができる。単一の外側シートが内圧と外圧の差で緊張したまま多層光学フィルムを等しく適用可能であることを理解されよう。
【0081】
本開示の一実施形態では、本開示の多層光学フィルムは、外側シート、内側シート及び/又は中央シートの少なくとも1つである。本開示の別の実施形態では、多層光学フィルムは、重合体フィルムシートの外側面、重合体フィルムシートの内側面の少なくとも一方の上に配置されるか、又は重合体材料シートのうちの1つの外側面と内側面との間に挟まれる。例えば、多層光学フィルムは、外側シート202の外側面、外側シート202の内側面上に配置されてもよく、又は外側シート202が、2つのETFE層からなる場合は、多層光学フィルムは、外側シート202を構成する2つのETFE層の間に挟まれてもよい。クッション構造物は、国際公開第2007/096781号(Temmeら)に開示されるような雑音低減のために流体などの追加の構成要素を含んでもよい。
【0082】
多層光学フィルムが、支持構造物(例えば、クッション構造物、張力構造物、又は柔軟な無機又は有機の織布、不織布、又は繊維メッシュ)に取り付けられたとき、一実施形態では、支持構造物内の多層光学フィルムは、2.5GPa(ギガパスカル)未満、2GPa未満、1.5GPa未満、更には1GPa未満の曲げ弾性率を有する。
【0083】
一実施形態では、多層光学フィルムは、例えば屋根被覆材、部分的屋根被覆材、ファサード被覆材、ドーム被覆材(例えば、加圧建築物)、分離に使用される壁、外殻(例えば、建物の側面と屋根の両方に使用される)、窓、扉、天窓、アトリウム、又はこれらの組み合わせなどの建築用途に使用されてもよい。建築用途に使用される多層光学フィルムは、可視光を透過するが赤外線波長を反射させるように設計されてもよく、建物内の熱負荷を減少させる透明被覆を可能にする。別の実施形態では、温室用途に使用される多層光学フィルムは、最大限の植物成長を可能にするために紫外線波長を透過するように設計されてもよい。
【0084】
本開示の多層光学フィルムには、フッ素重合体光学層を含まない光学スタックで作成された多層光学フィルムと比較して、非燃焼性若しくは低燃焼性、改善された透明度、改善された耐食性、改善された放送信号受信、及び/又は改善された耐候性を含む利点を提供することがある。
【0085】
本開示の利点及び実施形態を、以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例において列挙される特定の材料及びその量並びに他の諸条件及び詳細によって、本開示を不当に制限するものではないと解釈すべきである。他に言及されるか、明らかでない限り、全材料は市販であるか、又は当業者に知られている。
【実施例】
【0086】
限定はしないが、以下の特定の実施例は、本開示を説明するために供されるであろう。実施例における、全ての部、パーセント、比などは、特に断らない限り、重量基準である。
【0087】
実施例1〜12:様々なフッ素化重合体材料のキャストフィルムを以下のように作成した。フッ素化重合体材料を、スクリュー回転数Yで動作する単一スクリュー押出機に押出量Xで供給した。押出物を適温で押し出し、3本ロール・スタック上にロール速度Zでキャストし、巻き取った。それぞれのフィルムの厚さをマイクロメートルゲージで測定すると、厚さ500マイクロメートル(μm)であった。下の表1に、試験したそれぞれの試料の実施例、キログラム/時(kg/hr)で表した押出量、回転数/分(rpm)で表したスクリュー回転数、及びメートル/分(m/分)で表したロール速度を示す。フッ素化重合体材料は全て、Dyneon LLC.,Oakdale,MNから入手した。それぞれのキャストフィルムを分光光度計(PerkinElmer,Inc.,Waltham,MAからのLAMBDA 950 UV/VIS/NIR)で測定した。
【0088】
【表1】

【0089】
表2(下)は、特定の波長における表1のそれぞれのフッ素化重合体材料の透過率(%)を示す。
【0090】
【表2】

【0091】
実施例13:キャストウェブを一工程で押し出し、その後フィルムを実験室フィルム延伸装置内で延伸させることによって、61層を含む共押出フィルムを作成した。1つの押出し成形機によって10ポンド(4.5kg)/時の量で供給されたポリ(メチルメタクリレート)(Arkema Inc.,Colombes Cedex,Franceにより商品名「ALTUGLAS V O44」で販売されている)、別の押出し成形機によって17ポンド(7.7kg)/時の量で供給されたテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体(Dyneon,LLC.により商品名「DYNEON THVP 2030G X」で販売されている)、並びに第3の押出し成形機によって10ポンド(4.5kg)/時の量で供給されたスキン層用のポリ(メチルメタクリレート)を、多層重合体溶融マニホールドを通して共押出して、ポリ(メチルメタクリレート)スキン層を含む61層を有する多層溶融ストリームを作成した。この多層共押出溶融ストリームを、4.0メートル/分(m/分)でチルロール(chill roll)上にキャストして、厚さ約10ミル(0.25ミリメートル(mm))、幅約6.5インチ(16.5センチメートル(cm))の多層キャストウェブを作成した。
【0092】
多層キャストウェブを実験室延伸装置を使用して延伸させ、この実験室延伸装置は、パンタグラフを使用してウェブの角部分を把握し、同時にウェブを両方向に均一速度で延伸させる。4インチ(約10cm)四方の多層キャストウェブを延伸フレームに入れ、140℃の炉内で55秒間加熱した。次に、多層キャストウェブを、ウェブが元の寸法の約3×3倍に延びるまで、25%/秒(元の寸法を基準にして)で延伸させた。延伸直後に、多層光学フィルムを延伸装置から取り出し室温で冷却した。多層光学フィルムは、1ミル(25μm)の厚さを有するがことが分かった。多層光学フィルムをマイクロメートルゲージで測定し、フィルムの中心で25μm、フィルムの縁で31μmの厚さを有することが分かった。多層光学フィルムをLAMBDA 950 UV/VIS/NIR分光光度計で測定し、様々な波長における反射率を図3に示す。図3において、スペクトル300は、フィルムの中心で測定された反射スペクトルであり、スペクトル320は、フィルムの端で測定された反射スペクトルである。図3に示したように、反射スペクトルは、多層光学フィルムの厚さにより変化することがある。
【0093】
実施例14:キャストウェブを一工程で押し出し、その後そのフィルムを実験室フィルム延伸装置内で延伸させることによって、61層を含む共押出フィルムを作成した。1つの押出し成形機によって14ポンド(6.4kg)/時の量で供給されたポリプロピレンの共重合体(Total Petrochemicals,Inc.,Houston,TXにより「TOTAL POLYPROPYLENE 8650」で販売されている)、別の押出し成形機によって15ポンド(6.8kg)/時の量で供給されたDYNEON THVP 2030G X、及び第3の押出し成形機によって10ポンド(4.5kg)/時の量で供給されたスキン層用のポリプロピレンの共重合体を、多層重合体溶融マニホールドを通して共押出して、ポリプロピレンスキン層の共重合体を含む61層を有する多層溶融ストリームを作成した。この多層共押出溶融ストリームを、2.2m/分でチルロール上にキャストして、厚さ約20ミル(0.51mm)、幅約7.25インチ(18.5cm)の多層キャストウェブを作成した。
【0094】
多層キャストウェブを、実験室延伸装置を使用して延伸させ、この実験室延伸装置は、パンタグラフを使用してウェブの角部分を把握し、同時にウェブを両方向に均一速度で延伸させる。4インチ(約10cm)四方の多層キャストウェブを延伸フレームに入れ、145℃の炉内で45秒間加熱した。次に、多層キャストウェブを、ウェブが元の寸法の約5×5倍に延びるまで、50%/秒(元の寸法を基準にして)で延伸させた。延伸直後に、多層光学フィルムを延伸装置から取り出し室温で冷却した。多層光学フィルムをマイクロメートルゲージで測定し、中心で約19μm、縁で約17μmの厚さを有することが分かった。多層光学フィルムをLAMBDA 950 UV/VIS/NIR分光光度計で測定し、様々な波長の反射率を図4に示す。図4において、スペクトル370は、フィルムの中心で測定された反射スペクトルであり、スペクトル350は、フィルムの端で測定された反射スペクトルである。図4に示したように、反射スペクトルは、多層光学フィルムの厚さにより変化することがある。
【0095】
実施例15:キャストウェブを一工程で押し出し、その後フィルムを実験室フィルム延伸装置内で配向させることにより、151層を含む共押出フィルムを作成した。1つの押出し成形機によって10ポンド(4.5kg)/時の量で供給されたポリフッ化ビニリデン(PVDF、Dyneon LLC.により商品名「DYNEON PVDF 1008」で販売されている)(PVDFの流量の10%が、2つの外側保護境界層に進み、それぞれの境界層は、高屈折率光学層の厚さの約10倍である)、別の押出し成形機によって11ポンド(5.0kg)/時の量で供給されたテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体(Dyneon,LLC.により商品名「DYNEON THVP 2030G X」で販売されている)、並びに第3の押出し成形機によって10ポンド(4.5kg)/時の量で供給されたスキン層用のPVDFを、多層重合体溶融マニホールドを通して共押出して、PVDF境界とスキン層を含む151層を有する多層溶融ストリームを作成した。この多層共押出溶融ストリームを、0.95メートル/分(m/分)でチルロール上にキャストして、厚さ約29ミル(0.74mm)、幅約6.5インチ(16.5cm)の多層キャストウェブを作成した。第2の試みで、多層共押出溶融ストリームを3.1m/分でチルロール上にキャストして、厚さ約9ミル(0.23mm)、幅5.75インチ(約14.5cm)の多層キャストウェブを作成した。
【0096】
多層キャストウェブを実験室延伸装置を使用して延伸させ、この実験室延伸装置は、パンタグラフを使用してウェブの角部分を把握し、同時にウェブを両方向に均一の速度で延伸させる。4インチ(約10cm)四方の29ミル(0.74mm)多層キャストウェブを延伸フレームに入れ、165℃の炉内で90秒間加熱した。次に、多層キャストウェブを、ウェブが元の寸法の約4×4倍に延びるまで、50%/秒(元の寸法を基準にして)で延伸させた。延伸直後に、多層光学フィルムを延伸装置から取り出し室温で冷却した。第2の試みで、4インチ(約10cm)四方の9ミル(0.23mm)多層キャストウェブを延伸フレームに入れ、165℃の炉内で30秒間加熱した。次に、多層キャストウェブを、ウェブが元寸法の約4×4倍に延びるまで、25%/秒(元の寸法を基準にして)で延伸させた。延伸直後に、多層光学フィルムを延伸装置から取り出し室温で冷却した。
【0097】
実施例16:実施例15と同じ手順に従って、ALTUGLAS V O44(PMMA)と、PMMA境界とスキン層を有するヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体(Dyneon,LLC.により商品名「DYNEON HTE 1510X」で販売されている)とによって、多層キャストウェブを構成した。この多層共押出溶融ストリームを、0.75m/分でチルロール上にキャストし、厚さ約56ミル(1.42mm)、幅約7.5インチ(19cm)の多層キャストウェブを作成した。
【0098】
実施例17:実施例15と同じ手順に従って、キャストウェブを一工程で押し出し、その後フィルムを実験室フィルム延伸装置内で配向することによって、151層を含む共押出フィルムを作成した。1つの押出し成形機によって10ポンド(4.5kg)/時の量で供給されたALTUGLAS V O44(PMMA)、別の押出し成形機によって17ポンド(7.7kg)/時の量で供給されたテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びエチレンの共重合体(Dyneon,LLC.により商品名「THV 500」で販売されている)、並びに別の押出し成形機によって10ポンド(4.5kg)/時の量で供給されたスキン層用のPMMAを、多層重合体溶融マニホールドを通して共押出して、PMMA境界とスキン層を含む151層を有する多層溶融ストリームを作成した。この多層共押出溶融ストリームを、4.6m/分でチルロール上にキャストし、厚さ約9ミル(0.23mm)、幅約6インチ(15cm)の多層キャストウェブを作成した。
【0099】
多層キャストウェブを、実験室延伸装置を使用して延伸した。4インチ(約10cm)四方の多層キャストウェブを延伸フレームに入れ、140℃の炉内で55秒間加熱した。次に、多層キャストウェブを、ウェブが元寸法の約2.5×2.5倍に延びるまで、25%/秒(元の寸法を基準にして)で延伸させた。延伸直後に、多層光学フィルムを延伸装置から取り出し室温で冷却した。多層光学フィルムは、マイクロメートルゲージを使用して約31μmの厚さを有することが分かった。
【0100】
実施例18:実施例17と同じ手順に従って、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET、Eastman Chemical of Kingsport,TNにより「EASTAPAK 7452」として販売されている)と、PET境界とスキン層を有するエチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体(Dyneon,LLC.により商品名「DYNEON ET 6218X」で販売されている)とによって、多層キャストウェブを構成した。この多層共押出溶融ストリームを、4.5m/分でチルロール上にキャストして、厚さ約9ミル(0.23mm)、幅約6インチ(15.5cm)の多層キャストウェブを作成した。
【0101】
実施例19:実施例17と同じ手順に従って、ALTUGLAS V O44(PMMA)と、PMMA境界とスキン層を含むポリフッ化ビニリデン(Dyneon,LLCにより商品名「DYNEON PVDF 1008/0001」で販売されている)とによって、多層キャストウェブを構成した。この多層共押出溶融ストリームを、1.5m/分でチルロール上にキャストして、厚さ約29ミル(0.74mm)、幅7インチ(約18cm)の多層キャストウェブを作成した。
【0102】
実施例20:実施例17と同じ手順に従って、ALTUGLAS V O44(PMMA)と、PMMA境界とスキン層を含むDYNEON PVDF 11008/0001とによって、多層キャストウェブを構成した。この多層共押出溶融ストリームを、1.4m/分でチルロール上にキャストして、厚さ約29ミル(0.74mm)、幅約7インチ(18cm)の多層キャストウェブを作成した。
【0103】
実施例21:実施例17と同じ手順に従って、ALTUGLAS V O44(PMMA)と、PMMA境界とスキン層を含むヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体(Dyneon,LLC.により商品名「DYNEON HTE 1705X」で販売されている)とによって、多層キャストウェブを構成した。この多層共押出溶融ストリームを、1.5m/分でチルロール上にキャストして、厚さ約29ミル(0.74mm)、幅約7インチ(17.5cm)の多層キャストウェブを作成した。比較例A:ポリエチレンテレフタレート(PET、Kingsport,TNのEastman Chemicalにより商品名「EASTAPAK 7452」で販売されている)から作成された第1の光学層と、ポリ(メチルメタクリレート)の共重合体(Ineos Acrylics,Inc.により商品名「PERSPEX CP63」で販売されている、75重量パーセントのメチルメタクリレートと25重量パーセントのエチルアクリレートの共重合体である)から作成された第2の光学層とによって、紫外線反射多層光学フィルムを作成した。PETとポリ(メチルメタクリレート)の共重合体を多層重合体溶融マニホールドを通して共押出して、223光学層のスタックを形成した。層厚プロファイル(層厚値)は、340nmの光に関して約4分の1波長の光学厚さ(屈折率と物理的厚さの積)を有するように調整された第1の(最も薄い)光学層から、420nmの光に関して約4分の1波長の光学厚さになるように調整された最も厚い層まで、ほぼ線形プロファイルになるように調整された。そのようなフィルムの層厚プロファイルを調整して、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に教示された軸ロッド装置を、微視的技術によって得られた層プロファイル情報と組み合わせて使用して、改善されたスペクトル特性を提供することができる。
【0104】
これらの光学層に加えて、PETの非光学保護スキン層(それぞれ101マイクロメートル厚)を光学スタックのいずれかの側面上に共押出した。この多層共押出溶融ストリームを、22m/分でチルロール上にキャストして、厚さ約1400μm(15ミル)の多層キャストウェブを作成した。次に、多層キャストウェブを、幅出機炉内で95℃で約10秒間加熱し、その後3.3×3.5の延伸比に二軸方向に配向させた。配向された多層フィルムを225℃で更に10秒間加熱し、PET層の結晶化度を増加させた。比較例Aを、LAMBDA 950 UV/VIS/NIR分光光度計で測定して、帯域幅340〜420nmで97.8パーセントの平均反射率を有することが分かった。比較例Aは、約0.9ミル(22.9μm)の平均厚みであった。
【0105】
耐候試験:上記の実施例13による3枚の多層光学フィルムシートを、約3インチ×3インチ(7.6cm×7.6cm)の大きさのシートに切断し、比較例Aによる3枚の多層光学フィルムシートを、サイズ約3インチ×3インチ(7.6cm×7.6cm)の大きさに切断した。それぞれのシートの色を、LAMBDA 950 UV/VIS/IR分光光度計で行うCIE色測定を使用して測定し、bを、ASTM E308「CIEシステムを使用して物体の色を計算する標準的手法」による400〜800nmの透過スペクトルから計算した。それぞれのシートのヘーズを、ヘーズメータ(HazeGuard,BYK−Gardner Columbia,MD)を使用して測定した。それぞれのシートの透過率を、LAMBDA 950 UV/VIS/IR分光光度計を使用して、300〜2500nmで測定した。次に、実施例13の試料(Ex 13)と比較例Aの試料(Ex A)を、促進耐候試験チャンバに入れ、ASTM G−155に記載された技法と類似の技法を使用して循環させた。試料を促進耐候試験チャンバに入れた。様々な時点で、試料を取り出し、それぞれの試料の色、ヘーズ、及び透過率を測定し、試験後に、試料を促進耐候試験チャンバに戻した。平均結果を以下の表3に示す。
【0106】
【表3】

【0107】
比較例B:エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体を含む押出フィルム(Dyneon,LLC.により商品名「DYNEON ET 6235」で販売されている)。
【0108】
引裂試験:切り目を有する台形試料に関するDIN 53363に従って、実施例13〜18並びに比較例A及びBの引裂伝搬を試験した。それぞれの試料を、試料が完全に引き裂かれるまで、切り目に対して垂直に試験速度100mm/分で引っ張り、引裂伝播強度を記録した。N/mmで表される引裂伝播強度は、達した最大力を試料の厚さで割った商である。それぞれの試料に関して反復試験を行った。結果を表4に示す。表4に、平均引裂伝播強度の後の、括弧内にそれぞれの実施例の反復数が示される。
【0109】
【表4】

【0110】
本発明の予測可能な改良及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱せずに実施できることは、当業者には明らかである。本発明は、例証の目的のために本出願において説明された実施形態に限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学スタックを有する多層光学フィルムを含む建築用物品であって、前記光学スタックが、複数の第1の光学層と、前記複数の第1の光学層と繰り返し順序で配置された複数の第2の光学層とを含み、前記複数の光学層の少なくとも1つがフッ素重合体材料を含み、前記光学スタックが紫外線安定性である、建築用物品。
【請求項2】
前記フッ素重合体材料が、TFE、VDF、HFP、CTFE、(フルオロアルキルビニル)エーテル、(フルオロビニルアルコキシ)エーテル、フッ素化スチレン、HFPO、フッ素化シロキサン、又はこれらの組み合わせのモノマーのうちの少なくとも1つの共重合単位から誘導された単独重合体又は共重合体を含む、請求項1に記載の建築用物品。
【請求項3】
前記フッ素重合体材料は、TFEの単独重合体、エチレンとTFE共重合体の共重合体、TFEとHFPとVDFの共重合体、VDFの単独重合体、VDFの共重合体、VFの単独重合体、HFPとTFEの共重合体、TFEとプロピレンの共重合体、TFEと(ペルフルオロビニル)エーテルの共重合体、TFEとペルフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、TFEと(ペルフルオロビニル)エーテルと(ペルフルオロメチルビニル)エーテルの共重合体、HFPとTFEとエチレンの共重合体、クロロトリフルオロエチレンの単独重合体、エチレンとCTFEの共重合体、HFPOの単独重合体、4−フルオロ−(2−トリフルオロメチル)スチレンの単独重合体、TFEとノルボルネンの共重合体、HFPとVDFの共重合体、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の建築用物品。
【請求項4】
前記複数の光学層の少なくとも1つが、アクリレート、オレフィン、スチレン、カーボネート、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、ジメチルシロキサン、シロキサン、若しくはこれらの組み合わせのモノマーのうちの少なくとも1つのモノマーの共重合単位から誘導された単独重合体若しくは共重合体、及び/又はウレタンとポリエステル、若しくはこれらの組み合わせの官能基群のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項5】
それぞれの第1の光学層は、溶融加工性共重合体が、ASTM D 2116−07準拠のフッ素化エチレン−プロピレン共重合体ではなく、又はASTM D 3307−08準拠のペルフルオロアルコキシ樹脂ではないという条件で、テトラフルオロエチレンの共重合モノマーを含む溶融加工性共重合体を含み、それぞれの第2の光学層が、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)の共重合体、ポリプロピレン、プロピレンの共重合体、ポリスチレン、スチレンの共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、エチレンの共重合体、環状オレフィン共重合体、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非フッ素化重合体材料を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項6】
前記溶融加工性共重合体が、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとフッ化ビニリデンの共重合体、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレンとノルボルネンの共重合体、及びエチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体からなる群から選択される、請求項5に記載の建築用物品。
【請求項7】
それぞれの第1の光学層とそれぞれの第2の光学層が、フッ素重合体材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項8】
前記光学スタックが、ポリ(メチルメタクリレート)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリ(メチルメタクリレート)と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、ポリカーボネートと(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリカーボネートと(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、ポリカーボネートと(エチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体)の層ペア、ポリプロピレンの共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリプロピレンと(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、ポリスチレンと(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリスチレンの共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリスチレンの共重合体と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン及びエチレンの共重合体)の層ペア、ポリエチレンの共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、ポリエチレンの共重合体と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、環状オレフィン共重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、環状オレフィン共重合体と(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)の層ペア、並びに熱可塑性ポリウレタンと(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、フッ化ビニリデンの単独重合体と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、(エチレン及びクロロトリフルオロエチレンの共重合体)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペア、(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)と(エチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体)の層ペア、(ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びエチレンの共重合体)とテトラフルオロエチレン及びノルボルネンの共重合体の層ペア、並びに(エチレン及びテトラフルオロエチレンの共重合体)と(テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンの共重合体)の層ペアからなる群から選択される層ペアを含む、請求項1に記載の建築用物品。
【請求項9】
前記フッ素重合体材料が、少なくとも3つの異なるモノマーを含む、請求項1〜3及び請求項5〜8のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項10】
前記フッ素重合体材料が、少なくとも4つの異なるモノマーを含む、請求項1〜3及び請求項5〜8のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項11】
前記光学スタックが、
a)約400〜700nmの波長の少なくとも一部分、
b)約700nmを超える波長の少なくとも一部分、
c)約300nm未満の波長の少なくとも一部分、又は
d)約300〜400nmの波長の少なくとも一部分
のうちの少なくとも1つを透過する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項12】
前記光学スタックが、
a)約400〜700nmの波長の少なくとも一部分、
b)約700nmを超える波長の少なくとも一部分、
c)約300nm未満の波長の少なくとも一部分、又は
d)約300〜400nmの波長の少なくとも一部分
のうちの少なくとも1つを反射する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項13】
前記多層光学フィルムが、
a)印刷、
b)接着剤、
c)耐引裂層、
d)スキン層、又は
e)保護境界層
のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項14】
紫外線吸収化合物、赤外線吸収化合物、又はこれらの組み合わせを更に含み、前記溶融加工性共重合体、前記非フッ素化重合体材料、又は任意の付加層が、前記紫外線吸収化合物、前記赤外線吸収化合物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項15】
前記多層光学フィルムが、柔軟な無機又は有機、織布又は不織布、繊維メッシュ又は重合体材料上に配置される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項16】
前記多層光学フィルムが、クッション構造物又は張力構造物である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項17】
前記多層光学フィルムが、前記クッション構造物の外側シート、中央シート、又は内側シートのうちの少なくとも1つである、請求項16に記載の建築用物品。
【請求項18】
前記クッション構造物が、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合単位を含む重合体フィルムを更に含む、請求項16又は17に記載の建築用物品。
【請求項19】
前記多層光学フィルムが、前記重合体フィルムの外側面、前記重合体フィルムの内側面の少なくとも一方に積層されるか、又は前記重合体フィルムの前記外側面と前記内側面との間に挟まれる、請求項18に記載の建築用物品。
【請求項20】
前記多層光学フィルムが、支持構造内に配置され、前記支持構造内の前記多層光学フィルムが、2.5GPa未満の曲げ弾性率(flex modulus)を有する、請求項15〜19のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項21】
前記支持構造内の前記多層光学フィルムが、1GPa未満の曲げ弾性率を有する、請求項15〜20のいずれか一項に記載の建築用物品。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれか一項に記載の建築用物品を使用する方法であって、屋根、ファサード、壁、外殻、窓、天窓、アトリウム、又はこれらの組み合わせの建築に建築用物品を使用することを含む、方法。
【請求項23】
第1の屈折率を有する第1の光学層と第2の屈折率を有する第2の光学層を交互にして、複数の層を含む光学スタックを構成する工程を含み、前記第1の屈折率が前記第2の屈折率と異なり、前記光学層の少なくとも1つがフッ素重合体材料を含み、前記光学スタックが紫外線安定性である、請求項1〜22のいずれか一項に記載の建築用物品を作成する方法。
【請求項24】
a)前記第1の光学層と前記第2の光学層をウェブに共押出しする工程、
b)前記第1の光学層のシートを前記第2の光学層上に層化するか、若しくは前記第2の光学層のシートを前記第1の光学層上に層化し、次に積層する工程、
c)前記第1の光学層の溶液を前記第2の光学層上に被覆するか、若しくは前記第2の光学層の溶液を前記第1の光学層上に被覆する工程、
d)前記第1の光学層を前記第2の光学層上に蒸着するか、若しくは前記第2の光学層を前記第1の光学層上に蒸着する工程、又は、
e)これらの組み合わせ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の建築用物品を作成する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−514236(P2012−514236A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544472(P2011−544472)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/068502
【国際公開番号】WO2010/078046
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】