説明

フライアッシュを含有する樹脂組成物

【課題】フライアッシュ原粉は、一般に未燃カーボン量を多量に含有していることや粒径が大きく広範囲分布であり、且つ真球度(長・短軸比)が0.8以下と劣ること等により、素材物性の低下や成形品の物性の低下、成形後の外観不良等の問題があり、ポリ塩化ビニル樹脂、ゴム樹脂、ポリオレフィン樹脂等への充填材、補強剤として使用することは困難であった。
【解決手段】平均粒度が5μm以下、未燃カーボンが1%以下、真球度(長・短軸比)が0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下の全条件を満足するフライアッシュと、樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂又はゴム樹脂又はポリオレフィン樹脂と、その他必要な添加剤を含有し、前記フライアッシュを前記樹脂に対し所定の配合率で配合してなることを特徴とするフライアッシュを含有する樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフライアッシュを含有するポリ塩化ビニル樹脂組成物、ゴム組成物(以下便宜上ゴム樹脂組成物と言う)、ポリオレフィン樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの樹脂組成物には材料コストの低減、剛性や引張強度等の力学特性の向上、寸法安定性の改善、難燃性向上、耐摩耗性向上等を目的として、炭酸カルシウムや酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸アルミニウム、タルク等の充填材、補強剤が添加されている。
一方、火力発電等で発生するフライアッシュは、安価なこととその補強効果により、コンクリート用の混和材として利用されている。しかしながら大半は、埋め立て用以外に確たる有効利用手段が見出されておらず、その処理に苦慮する産業廃棄物が存在する。
上記のような背景から、樹脂組成物にフライアッシュを混合して利用しようとする試みがなされている。例えば、特開昭61-72059号公報(特許文献1)には、70重量部以下のフライアッシュと熱可塑性樹脂との混合物が開示されており、又、特開平3-146564号公報(特許文献2)には、250重量部以下のフライアッシュと粘着付与剤からなる制振材が開示されている。しかし、上記いずれの場合も、フライアッシュの添加量が増大すると力学物性の低下と成形加工性の低下があり、フライアッシュの添加量は低いところに限界があるので、大量に排出される産業廃棄物を処理するという観点からは寄与度の低いものである。
特開平09-263667号公報(特許文献3)は、塩化ビニル系樹脂と鉛系安定剤とフライアッシュと白色充填剤からなる塩化ビニル系樹脂組成物であり、特開平09-263662号公報(特許文献4)は、密度を0.840〜0.925g/cm3のポリエチレン系樹脂100重量部に対して100〜900重量部のフライアッシュを含有させたポリエチレン系樹脂組成物であるが、前者の樹脂組成物において使用するフライアッシュは、平均粒径0.1〜30μmであり、後者の樹脂組成物において使用するフライアッシュは、粒径1〜200μm、平均粒径20μmと何れも粗く、しかも未燃カーボン量の多い産業廃棄物扱いのもので他の物性値が特定されてない。このため引張、伸び等の諸物性及び成形加工性などが高位に安定したポリエチレン系樹脂組成物を得ることが甚だ困難である。また成形の際には、粗い粒子のフライアッシュが多く混在するため、成形機器の摩耗損傷が甚だしく成形性にも大きな影響を与える等の問題があり、配合量にも限界がある。
【特許文献1】特開昭61-72059号公報
【特許文献2】特開平3-146564号公報
【特許文献3】特開平09-263667号公報
【特許文献4】特開平09-263662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
<上記の従来技術の問題点>
前述のようにフライアッシュの原粉は、一般に未燃カーボン量を多量に含有していることや粒径が大きく、しかも真球度(長・短軸比)が0.8以下と劣ること等のフライアッシュ成分と性状のバラツキ等により、素材物性の低下や成形品の物性の低下、成形後の外観不良等の問題があり、樹脂組成物への充填材、補強剤として使用することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記問題を解決するためになされたものでありその特徴とするところは、次の(1)〜(3)にある。
(1)、平均粒度が5μm以下、未燃カーボンが1%以下、真球度(長・短軸比)が0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下の全条件を満足するフライアッシュと、ポリ塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、熱安定剤とを含有し、前記フライアッシュをポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し10〜150重量部配合してなることを特徴とするフライアッシュを含有するポリ塩化ビニル樹脂組成物。
(2)、平均粒度が5μm以下、未燃カーボンが1%以下、真球度(長・短軸比)が0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下の全条件を満足するフライアッシュと、ゴム樹脂と、架橋剤と、熱安定剤とを含有し、前記フライアッシュをゴム樹脂100重量部に対し100〜1200重量部配合してなることを特徴とするフライアッシュを含有するゴム樹脂組成物。
(3)、平均粒度が5μm以下、未燃カーボンが1%以下、真球度(長・短軸比)が0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下の全条件を満足するフライアッシュと、ポリオレフィン樹脂とを含有し、前記フライアッシュをポリオレフィン樹脂100重量部に対し10〜150重量部配合してなることを特徴とするフライアッシュを含有するポリオレフィン樹脂組成物。
上記本発明において、重量部とは、PHRのことであり、ゴム樹脂の場合は、 P= per、H= hundred 、R=rubber、ゴム樹脂以外のポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂の場合は、P=per、H=hundred、R=resinで、主となるゴムや樹脂の重量を100とした場合に、その他の配合、添加する物の重量を数字で表示する場合に用いる単位を言う。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、上記構成により、次の優れた効果が得られる。
フライアッシュの成分と性状を前記の如く特定したことにより、このフライアッシュをポリ塩化ビニル樹脂組成物、ゴム樹脂組成物、ポリオレフィン樹脂組成物への充填材、補強剤として有利に使用することを可能にした。
即ち特定条件のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物は、実施例1で紹介のように、引張強さ、破断伸び、耐寒性の各物性値を高位に安定保持する等の補強効果が優れていると共に成形後の外観も極めて良好である。
又、特定条件のフライアッシュ含有のゴム樹脂組成物は、実施例2で紹介のように、引張強さ、破断伸び、引裂強さ、耐寒性、酸素指数等の各物性値を高位に安定保持する等の補強効果が優れていると共に成形後の外観も極めて良好である。
更に、特定条件のフライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物は、実施例3で紹介のように、引張強さ、引裂強さ等の各物性値を高位に安定保持する等の補強効果が優れていると共に難燃性を付与することも可能であり、成形後の外観も極めて良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
1.本発明において、使用する前記特定条件のフライアッシュの製造方法
例えば、本発明者等が開発して出願した特願2006−312286号で紹介の製造方法により得られる。つまり、表1に記載のフライアッシュ原粉を流動させながら焼成して未燃カーボンを除去しながら球状化させ、引き続いて流動させながら間接冷却して粒子間接合を防止し、この間接冷却工程後に分級回収するものである。
前記分級回収による改質フライアッシュの区分を表1に記載して紹介する。改質フライアッシュの区分は、間接冷却工程後にそのまま回収した改質フライアッシュ(A)と、その後風砕サイクロン処理をして分級した沈降分級回収の改質フライアッシュ(B)と、バグフィルター等による浮遊吸引分級回収の改質フライアッシュ(C)である。
後述する実施例の具体例No1〜No6にて使用したフライアッシュは、改質フライアッシュ(C)相当のものであり、前記特定条件である平均粒度5μm以下、未燃カーボン(強熱減量)1%以下、真球度(長・短軸比)0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下を満足する。
また実施例の比較例で使用のフライアッシュは、改質フライアッシュ(A)(B)相当のものであり、前記特定条件の殆どを満足しない。
【0007】
【表1】

2.本発明のポリ塩化ビニル樹脂組成物、ゴム樹脂組成物、ポリオレフィン樹脂組成物の各々において、共通するフライアッシュの前記特定条件の技術的意義
(1)、平均粒度を5μm以下等とする理由
図1、図5、図7に示すように、フライアッシュの平均粒径が5μm以下であれば、フライアッシュ含有する樹脂組成物の引張強度や破断伸びは最も大きな値を示し、5μmを超えた10μm以上になるとそれらは20〜30%低下する傾向を示す。また実施例でも紹介のようにフライアッシュ含有する樹脂組成物の成形後の外観は、平均粒度が5μm以下の小さい領域のものほど滑らかさや光沢などが良好で、5μm を超え10μm以上になるとそれらは好ましくない結果がえられている。
図9に示したSEM写真からも分かるように、フライアシュの粒子形状は球状が多い。この写真で不定形であるものが未燃カーボンで、比較的大きな粒子として存在している。又この粒子が小さくなればなるほど、即ち、微粒子であればあるほどその形状は球に近い状態であることがわかる。したがって、フライアシュの粒径はそれに含まれる未燃カーボン量や45μm篩残分量に著しく影響を受けることから、フライアッシュの平均粒径を5μm以下にするためには、未燃カーボン量を1%以下にすると共に45μm篩残分量を4%以下にすることが重要な条件である。その結果、真球度(長・短軸比)は1.0に近づき、球に近い粒子が高効率で得られことになる。この球状の粒子を当該樹脂組成物の充填材にすることによりその表面は非常に滑らかで光沢も良く外観性状に優れたものとなる。またフライアシュの平均粒径が5μmを超える大きなものとなると成形時の成形機に対して磨耗損傷の問題を惹起させる。
3.本発明のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物
(1)、本発明の前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物において前記フライアッシュをポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し10〜150重量部配合する理由
フライアッシュが5重量部でも特性は良好であるが、充填材としての効果が低く、実用的でない。又フライアッシュが150重量部を越えると破断伸びが落ち、耐寒性が悪くなり、さらに成形性後の外観も悪くなるため実用的でない。
(2)、その他の配合剤の種類と好ましい配合率範囲とその理由等。
ポリ塩化ビニル樹脂としては重合度800〜2500程度まで、任意に選択が可能。
可塑剤としてはフタル酸系可塑剤やアジピン酸系可塑剤、マレイン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、スルホン酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、パラフィン系可塑剤、重合型可塑剤等、一般的な可塑剤を使用することができ、使用用途に応じて2種類以上を混用することも可能。配合量としては一般的に10〜100重量部が適当と考えられ、少なすぎると可塑化効率が低くなり逆に多すぎると強度等の特性の低下があるため好ましくない。
熱安定剤は、金属石けんや無機酸塩類、有機スズ化合物等が一般的な熱安定剤を使用することができ、使用用途に応じて2種類以上を混用することも可能。配合量としては1〜5重量部が適当と考えられ、少なすぎると熱安定性効果が低くなり逆に多すぎると強度等の特性の低下やコストアップとなってしまうため好ましくない。
その他、炭酸カルシウムやケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム等、一般的にポリ塩化ビニル樹脂に用いられる充填材、補強剤を混用することも可能である。
(3)、フライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造方法例の紹介
樹脂組成物を得るための混合方法としては、一般に使用されるヘンシェルミキサー等の混合機を使ってドライブレンドさせたあと押出混合機やニーダー、バンバリーミキサー等の混合機を用いて溶融しながら混合させる方法が代表的である。以上の混合方法のうち、溶融混練する場合や成形する場合、樹脂組成物に高い温度を作用させると熱分解または脱ハロゲン化水素反応を引起すので、150〜200℃の温度において実施することが好ましい。成形方法としては、一般に射出成形法、押出成形法、圧縮成形法及び中空成形法等の成形方法がある。
4.本発明のフライアッシュ含有のゴム樹脂組成物
(1)、本発明の前記ゴム樹脂組成物において前記フライアッシュをゴム樹脂100重量部に対し10〜800重量部配合する理由
5重量部では少なすぎるため強度の向上がほとんど認められない。800重量部を越えるとゴム樹脂組成物の流動性が下がり成形が困難となるため実用的でない。
(2)、その他の配合剤の種類と好ましい特筆条件
ゴム樹脂としてはエチレンプロピレンゴム以外に天然ゴムやクロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等一般的なゴムを使用することができ、使用用途に応じて2種類以上を混用することも可能。
軟化剤としては鉱物油系軟化剤や植物油系軟化剤、NBR等には一般的なポリ塩化ビニル用可塑剤等の一般的な軟化剤を使用することができ、使用用途に応じて2種類以上を混用することも可能。配合量としては150重量部以下が適当と考えられ、多すぎると強度の低下やブリードアウト等の不具合を引き起こすことが考えられる。
熱安定剤としてはナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p-フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系、ビス、トリス、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダート・フェノール系、フェノール系、亜リン酸エステル系、硫黄系等、一般的にゴムに使用される老化防止剤や酸化防止剤を使用することが可能。配合量は0.1〜10重量部が適当と考えられ、少なすぎると熱安定性効果が低くなり逆に多すぎると強度等の特性の低下やコストアップ、ブルームアウトとなってしまうため好ましくない。
滑剤は成形性改良のために用いられ、パラフィンおよび炭化水素樹脂、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル等一般的にゴムに使用される滑剤を使用することが可能。配合量は0.1〜10重量部が適当と考えられ、少なすぎると成形性改良効果が低くなり逆に多すぎると強度等の特性の低下やコストアップ、ブリードアウトとなってしまうため好ましくない。
加硫促進剤としてはグアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿酸系、チウラム系、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系、金属酸化物や金属炭酸塩、脂肪酸やその誘導体、アミン類等一般的にゴムに使用される加硫促進剤を使用することが可能。配合量は15重量部以下が適当と考えられ、多すぎると強度等の特性の低下や成形加工時の不具合、コストアップ、ブルームアウトとなってしまうため好ましくない。
架橋材としては有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物、オキシム類、ニトロソ化合物、ポリアミン等一般的にゴムに使用される架橋材を使用することが可能。配合量は0.1〜15重量部以下が適当と考えられ、少なすぎると架橋効果が得られず、逆に多すぎると伸び等の特性の低下や成形加工時の不具合、コストアップとなってしまうため好ましくない。
その他、炭酸カルシウムやケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム、カーボンブラック、等、一般的にゴムに用いられる充填材、補強剤を混用することも可能。
(3)、フライアッシュ含有のゴム樹脂組成物の製造方法例の紹介
樹脂組成物を得るための混合方法としては、押出混合機やニーダー、バンバリーミキサー等の混合機を用いて溶融しながら混合させる方法が代表的である。以上の混合方法のうち、溶融混練する場合や成形する場合、樹脂組成物に高い温度を作用させると熱分解や架橋反応を引起すので、30〜200℃の温度において実施することが好ましい。成形方法としては、一般に射出成形法、押出成形法、圧縮成形法及び中空成形法等の成形方法がある。
5.本発明のフライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物
(1)、本発明の前記ポリオレフィン樹脂組成物において前記フライアッシュをポリオレフィン樹脂100重量部に対し10〜1200重量部配合する理由
フライアッシュが5重量部でも特性は良好であるが、充填材としての効果が低く、難燃性も向上せず、実用的でない。フライアッシュが1200重量部を越えると樹脂組成物の流動性が下がり成形が困難となるため実用的でない。
(2)、その他の配合剤の種類
その他配合剤として、熱安定剤や軟化剤、充填材、加工助剤、架橋材を混用することも可能である。
(3)、フライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法例の紹介
樹脂組成物を得るための混合方法としては、一般に使用されるヘンシェルミキサー等の混合機を使ってドライブレンドさせたあと押出混合機やニーダー、バンバリーミキサー等の混合機を用いる、もしくはドライブレンドを行わずにニーダー、バンバリーミキサー等の混合機を用いて溶融しながら混合させる方法が代表的である。以上の混合方法のうち、溶融混練する場合や成形する場合、樹脂組成物に高い温度を作用させると熱分解を引起すので、50〜250℃の温度において実施することが好ましい。成形方法としては、一般に射出成形法、押出成形法、圧縮成形法及び中空成形法等の成形方法がある。
6、本発明におけるフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物に関するデーターの照会
図1−1〜図1−6はフライアッシュの平均粒径(横軸)がポリ塩化ビニル樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図1−1は引張強度、図1−2は破断伸び、図1−3は耐寒性、図1−4は加熱変形率、図1−5は体積抵抗率、図1−6は酸素指数との関係で示すグラフである。図2−1〜図2−6は平均粒子径が3μmの改質フライアッシュを用いた場合、その配合割合がポリ塩化ビニル樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図2−1は引張強度、図2−2は破断伸び、図2−3は耐寒性、図2−4は加熱変形率、図2−5は体積抵抗率、図2−6は酸素指数との関係で示すグラフである。
図2−1〜図2−6には、改質フライアッシュ配合割合が500重量部では成形不能であったことから、改質フライアッシュ配合割合が各種特性に及ぼす影響を総合的に判断して、これ以上の配合割合では成形不能となることが予想される限界線も示されている。
ポリ塩化ビニル樹脂組成物の引張試験における「引張強度と破断伸びの関係」について、図3はフライアッシュの平均粒径の影響を示しており、図4は平均粒径3μmの改質フライアッシュの配合割合の影響を示している。図中には、JIS K 6723 軟質ポリ塩化ビニルコンパウンド1種3号(一般シース用ビニル)に相当する規格値(破断伸び200%以上、引張強さ11.8Mpa以上)を破線で示しており、ハッチの部分が規格値を満足するゾーンである。粒径については20μm以下であれば、また、配合割合については200重量部以下であれば、JIS規格値を満足していることがわかる。
これらの図より、成形性(加工性)や成形後の外観状態を考慮すれば、ポリ塩化ビニル樹脂組成物の製造では、改質フライアッシュの平均粒径は5μm以下が望ましく、好ましくは1〜3μmである。また、改質フライアッシュの配合割合は150重量部以下好ましくは100重量部以下である。
7、本発明におけるフライアッシュ含有のゴム樹脂組成物に関するデーターの紹介。
図5−1〜図5−6はフライアッシュの平均粒径がゴム樹脂組成物として用いたエチレンプロピレンゴム樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図5−1は引張強度、図5−2は破断伸び、図5−3は引裂強さ、図5−4は酸素指数との関係を示すグラフである。
図6−1〜図6−4は、粒子径が3μmの改質フライアッシュを用いた場合、その配合割合がエチレンプロピレンゴム樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図6−1は引張強度、図6−2破断伸び、図6−3は引裂強さ、図6−4は酸素指数との関係を示すグラフである。
図6−1〜図6−4には、改質フライアッシュの配合割合が1000重量部では成形不能であったことから、改質フライアッシュ配合割合が各種特性に及ぼす影響を総合的に判断して、これ以上の配合割合では成形不能となることが予想される限界線も示されている。
これらの図より、成形性(加工性)や成形後の外観状態を考慮すれば、エチレンプロピレンゴム樹脂組成物の製造では、改質フライアッシュの平均粒径は5μm以下好ましくは1〜3μmである。また、この改質フライアッシュの配合割合は800重量部以下好ましくは400重量部以下である。
8、本発明におけるフライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物に関するデーターの照会。
図7−1〜図7−4はフライアッシュの粒径がポリオレフィン樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図7−1は引張強度、図7−2は破断伸び、図7−3は引裂強さ、図7−4は酸素指数との関係を示すグラフである。
図8−1〜図8−4は平均粒径が3μmの改質フライアッシュを用いた場合、その配合割合がポリオレフィン樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図8−1は引張強度、図8−2は破断伸び、図8−3は引裂強さ、図8−4は酸素指数、である。
図8−1〜図8−4には、改質フライアッシュの配合割合が1500重量部では成形不能であったことから、改質フライアッシュの配合割合が各種特性に及ぼす影響を総合的に判断して、これ以上の配合割合では成形不能となることが予想される限界線も示されている。
これらの図より、成形性(加工性)や成形後の外観状態を考慮すれば、ポリオレフィン樹脂組成物の製造では、改質フライアッシュの粒径は5μm以下好ましくは1〜3μmである。また、改質フライアッシュの配合割合は1000重量部以下好ましくは600重量部以下である。
【実施例1】
【0008】
実施例1は、前記特定条件のフライアッシュを含有するポリ塩化ビニル樹脂組成物を紹介するものである。
表2には、ポリ塩化ビニル樹脂(PVCレジン)+可塑剤+熱安定剤+前記特定条件のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物の具体例と、特定条件外のフライアッシュを含有するポリ塩化ビニル樹脂組成物の比較例を記載してある。
特定条件のフライアッシュとしては、前記表1に記載の改質フライアッシュ(3)相当のフライアッシュを使用し、比較例のフライアッシュとしては、前記表1に記載の改質フライアッシュ(1)又は(2)相当のフライアッシュを使用した。
【0009】
【表2】

表3には、表2に記載の前記特定条件範囲のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物の具体例と特定条件外のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物との比較例の各種物性値と最適用途例を記載してある。
表2に示すとおり、前記特定条件範囲のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物と特定条件外のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物とを比較すると、特定条件のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物では引張強さ、破断伸び、耐寒性、加熱変形率、体積抵抗率、酸素指数、引裂き強さが向上していることがわかる。また成形後の外観は、特定条件のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物が特定条件外のフライアッシュ含有のポリ塩化ビニル樹脂組成物より向上していることを確認した。成形後の外観は実製品の見栄えの他に、強度、磨耗性、耐劣化性、成形性等に影響を与えるものと考えられ、外観が良いものはいずれの特性も良くなるものと考えられる。
さらに例記していないが炭酸カルシウムと比較し特定条件のフライアッシュを充填材として使用することで、耐摩耗性や熱伝導性、難燃性が向上するものと思われる。
【0010】
【表3】

【実施例2】
【0011】
実施例2は、前記特定条件のフライアッシュを含有するゴム樹脂組成物としてエチレンプロピレンゴム樹脂組成物を紹介するものである。
表4にはエチレンプロピレンゴム樹脂+軟化剤+熱安定剤+滑剤+架橋剤+加硫促進剤+硫黄+前記特定条件のフライアッシュ含有のエチレンプロピレンゴム樹脂組成物の具体例と、特定条件外のフライアッシュを含有するエチレンプロピレンゴム樹脂組成物の比較例を揚げてある。
特定条件のフライアッシュとしては、前記表1に記載の改質フライアッシュ(3)相当のフライアッシュを使用し、比較例のフライアッシュとしては、前記表1に記載の改質フライアッシュ(1)又は(2)相当のフライアッシュを使用した。
【0012】
【表4】

表5には、表4に記載の前記特定条件範囲のフライアッシュ含有組成物の具体例と特定条件外のフライアッシュ含有組成物の比較例の各種物性値と最適用途例を記載してある。
表5に示すとおり、特定条件のフライアッシュ含有のエチレンプロピレンゴム樹脂組成物による効果としては、特定条件外のフライアッシュ含有のエチレンプロピレンゴム樹脂組成物よりも引張強さ、破断伸び、引裂強さ、耐寒性、酸素指数が高く、補強効果に優れており、成形後の外観も良好である。
また前記軟質PVC場合と同様に、難燃性や耐摩耗性、熱伝導性といった特性も付与できる可能性があり、これまで使用していた難燃剤を減量することや補強剤の変更によるコストダウンも可能となるものと思われる。
【0013】
【表5】

【実施例3】
【0014】
実施例3は、前記特定条件のフライアッシュを含有するポリオレフィン樹脂組成物を紹介するものである。
表6にはポリオレフィン樹脂に前記特定条件のフライアッシュ含有させたポリオレフィン樹脂組成物の具体例と、特定条件外のフライアッシュを含有するポリオレフィン樹脂組成物の比較例を揚げてある。特定条件のフライアッシュとしては、前記表1に記載の改質フライアッシュ(3)相当のフライアッシュを使用し、比較例のフライアッシュとしては、前記表1に記載の改質フライアッシュ(1)又は(2)相当のフライアッシュを使用した。
【0015】
【表6】

表7には、表6に記載の前記特定条件範囲のフライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物の具体例と特定条件外のフライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物の比較例の各種物性値と最適用途例を記載してある。
表7に示すとおり、特定条件のフライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物による効果としては、特定条件外のフライアッシュ含有のポリオレフィン樹脂組成物よりも引張強さ、破断伸び、引裂強さ、耐寒性、酸素指数が高く、補強効果に優れており、成形後の外観も良好である。
また軟質PVC場合と同様に、難燃性や耐摩耗性、熱伝導性といった特性も付与できる可能性があり、これまで使用していた難燃剤を減量することや補強剤の変更によるコストダウンも可能となるものと思われる。
【0016】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、前記した優れた効果を有するため、各種電子機器の部材、電線の被覆材、家具調度品、自動車関係部品、おもちゃ、家庭用品等々のポリ塩化ビニル樹脂組成物成形品、ゴム樹脂組成物成形品、ポリオレフィン樹脂組成物成形品に適用することができこの種産業に貢献することが多大なものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−1】図1−1〜図1−6は、フライアッシュの平均粒径(横軸)がポリ塩化ビニル樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図1−1は引張強度との関係を示すグラフである。
【図1−2】平均粒径と破断伸びとの関係を示すグラフである。
【図1−3】平均粒径と耐寒性との関係を示すグラフである。
【図1−4】平均粒径と加熱変形率との関係を示すグラフである。
【図1−5】平均粒径と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
【図1−6】平均粒径と酸素指数との関係を示すグラフである。
【図2−1】図2−1〜図2−6は、平均粒子径が3μmの改質フライアッシュを用いた場合、その配合割合がポリ塩化ビニル樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図2−1は配合割合(図には混入率と記載してある。以下同じ)と引張強度との関係を示すグラフである。
【図2−2】配合割合と破断伸びとの関係を示すグラフである。
【図2−3】配合割合と耐寒性との関係を示すグラフである。
【図2−4】配合割合と加熱変形率との関係を示すグラフである。
【図2−5】配合割合と体積抵抗率との関係を示すグラフである。
【図2−6】配合割合と酸素指数との関係を示すグラフである。
【図3】ポリ塩化ビニル樹脂組成物の引張試験における「引張強度と破断伸びの関係」について、フライアッシュの平均粒径の影響を示すグラフである。
【図4】ポリ塩化ビニル樹脂組成物の引張試験における「引張強度と破断伸びの関係」について、平均粒径3μmの改質フライアッシュの配合割合の影響を示すグラフである。
【図5−1】図5−1〜図5−6は、フライアッシュの平均粒径がゴム樹脂組成物として用いたエチレンプロピレンゴム樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図5−1は平均粒径と引張強度との関係を示すグラフである。
【図5−2】平均粒径と破断伸びとの関係を示すグラフである。
【図5−3】平均粒径と引裂強さとの関係を示すグラフである。
【図5−4】平均粒径と酸素指数との関係を示すグラフである。
【図6−1】図6−1〜図6−4は粒子径が3μmの改質フライアッシュを用いた場合、その配合割合がエチレンプロピレンゴム樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で図6−1は配合割合と引張強度との関係を示すグラフである。
【図6−2】配合割合と破断伸びとの関係を示すグラフである。
【図6−3】配合割合と引裂強さとの関係を示すグラフである。
【図6−4】配合割合と酸素指数との関係を示すグラフである。
【図7−1】図7−1〜図7−4フライアッシュの平均粒径がポリオレフィン樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図7−1平均粒径と引張強度との関係を示すグラフである。
【図7−2】平均粒径と破断伸びとの関係を示すグラフである。
【図7−3】平均粒径と引裂強さとの関係を示すグラフである。
【図7−4】平均粒径と酸素指数との関係を示すグラフである。
【図8−1】図8−1〜図8−4はフライアッシュの平均粒径が3μmの改質フライアッシュを用いた場合、その配合割合がポリオレフィン樹脂組成物の各種特性に及ぼす影響を示した図で、図8−1は平均粒径と引張強度との関係を示すグラフである。
【図8−2】配合割合と破断伸びとの関係を示すグラフである。
【図8−3】配合割合と引裂強さとの関係を示すグラフである。
【図8−4】配合割合と酸素指数との関係を示すグラフである。
【図9】フライアシュの粒子形状のSEM写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒度が5μm以下、未燃カーボンが1%以下、真球度(長・短軸比)が0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下の全条件を満足するフライアッシュと、ポリ塩化ビニル樹脂と、可塑剤と、熱安定剤とを含有し、前記フライアッシュをポリ塩化ビニル樹脂100重量部に対し10〜150重量部配合してなることを特徴とするフライアッシュを含有するポリ塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
平均粒度が5μm以下、未燃カーボンが1%以下、真球度(長・短軸比)が0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下の全条件を満足するフライアッシュと、ゴム樹脂と、架橋剤と、熱安定剤とを含有し、前記フライアッシュをゴム樹脂100重量部に対し10〜800重量部配合してなることを特徴とするフライアッシュを含有するゴム樹脂組成物。
【請求項3】
平均粒度が5μm以下、未燃カーボンが1%以下、真球度(長・短軸比)が0.9〜1.0、45μm篩残分4%以下の全条件を満足するフライアッシュと、ポリオレフィン樹脂とを含有し、前記フライアッシュをポリオレフィン樹脂100重量部に対し10〜1200重量部配合してなることを特徴とするフライアッシュを含有するポリオレフィン樹脂組成物。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−73989(P2009−73989A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245816(P2007−245816)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(304028726)国立大学法人 大分大学 (181)
【出願人】(000196565)西日本電線株式会社 (57)
【Fターム(参考)】