説明

フライングリードの接合方法

【課題】フライングリードと基板パッドとの接合性を確保し、ボンディングツールを用いて効率的に超音波接合することを可能にする複数のフライングリードの接合方法を提供する。
【解決手段】並列に配列された複数の基板パッド17の各々にフライングリード18を位置合わせし、各々の基板パッド17とフライングリード18とを接合するフライングリードの接合方法において、前記フライングリード18に当接して超音波振動を作用させる当接部材32a、32bが転動自在に支持されたボンディングツール30を使用し、前記当接部材32a、32bを前記フライングリード18に当接させて転動させつつ、前記ボンディングツール30を、並列に配置された前記フライングリード18を横切る方向に移動させることにより、各々のフライングリード18と基板パッド17とを超音波接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフライングリードの接合方法に関し、より詳細には、超音波接合方法を利用して基板パッドにフライングリードを接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、磁気ディスク装置に用いられるキャリッジアセンブリの全体構成を示す。キャリッジアセンブリは、媒体の枚数に対応して複数個設けられたキャリッジアーム10の先端に、磁気ヘッドを搭載したサスペンション12を取り付けて形成される。キャリッジアーム10の基部にはアクチュエータ軸14が設けられ、キャリッジアーム10はアクチュエータ軸14を支持軸として媒体の表面に対して平行に回動操作される。
サスペンション12に搭載された磁気ヘッドと信号伝送回路とを電気的に接続する方法にはいくつかの方法がある。図3は、サスペンション12に設けられるサスペンション基板の端部を、キャリッジアーム10の基部側面に取り付けられたフレキシブル基板16の取り付け位置まで延出させて形成した、いわゆるロングテールサスペンション基板を用いた接続構造を示す。
【0003】
このロングテールサスペンション基板を用いた接続構造では、フレキシブル基板16に設けられた基板パッドと、ロングテールサスペンション基板の端部から延出するフライングリード18とを位置合わせし、超音波ツールを用いてフライングリード18を基板パッドに接合する。図4は、フライングリード18とフレキシブル基板16に設けた基板パッド17とをボンディングツール20を用いて超音波接合する状態を示す。
【0004】
超音波接合は半導体チップをフリップチップ接続によって基板に搭載する場合や、リードにワイヤをボンディングする場合に利用されており、確実な超音波接合がなされるようにするための方法がいろいろと提案されている。
特許文献1は、振動抑制部材を介してリードフレームを押さえることによりリードフレームの共振を防止してワイヤボンディングする方法を示す。特許文献2は、基板電極に導電性材料を塗布して接合電極を形成することにより接合面積を確保して接合する方法を示す。特許文献3、4は、異方性導電性膜を介在させ互いに密着する方向に超音波を印加して接合する方法を示す。特許文献5は、接合面を粗面として接合する方法を示す。特許文献6は、接合面に非導電性接着剤を塗布して接合する方法を示す。
【特許文献1】特開平10−150137号公報
【特許文献2】特開2005−136399号公報
【特許文献3】特開平08−146451号公報
【特許文献4】特開平10−189657号公報
【特許文献5】特開平05−63038号公報
【特許文献6】特開2005−93581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3に示すロングテールサスペンション基板を用いる接続構造では、フライングリード18は微小間隔をおいて多数本、並列に配置されているから、フライングリード18を一本ずつ基板パッド17に超音波接合することも可能であるが、図4に示すように、一度に複数本のフライングリード18を超音波接合する方法が効率的である。
図4では、2本のフライングリード18にボンディングツール20を当接して、超音波接合している。しかしながら、ボンディングツール20に複数本のフライングリード18を当接させて超音波接合する方法の場合は、ボンディングツール20の作用面が平坦面に形成されているために、接合面に凹凸があると接合ポイントごとに接合強度がばらつき、接合部分の接合信頼性が損なわれるという問題がある。
【0006】
図5は、フライングリード18と基板パッド17との接合界面を断面方向から見た状態を説明的に示す。接合界面は、接合部分の表面の凸部が潰れ、酸化膜が破れて接合されることにより、実際に接続している部分と酸化膜を介して接続している部分、接触していない部分Aが混在した状態になる。
フライングリード18と基板パッド17とは、ともに外表面に金めっきが施され、金−金接合によって接続される。この金めっき層は、フライングリード18と基板パッド17の表面の凹凸を吸収する作用を有する。しかしながら、金めっき層の厚さは3μm程度であり、この金めっき層が接合面の凹凸を吸収する十分な作用を有するものではない。
【0007】
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、フライングリードを基板パッドに接合する際に、フライングリードと基板パッドとの接合性を確保して、フライングリードを基板パッドに効率的に超音波接合することができるフライングリードの接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を備える。
すなわち、並列に配列された複数の基板パッドの各々にフライングリードを位置合わせし、ボンディングツールによりフライングリードに超音波振動を作用させ、各々の基板パッドとフライングリードとを接合するフライングリードの接合方法において、前記フライングリードに当接して超音波振動を作用させる当接部材が転動自在に支持されたボンディングツールを使用し、前記当接部材を前記フライングリードに当接させて転動させつつ、前記ボンディングツールを、並列に配置された前記フライングリードを横切る方向に移動させることにより、前記当接部材から前記フライングリードに超音波振動を作用させて、各々のフライングリードと基板パッドとを超音波接合することを特徴とする。
【0009】
また、前記当接部材が、前記ボンディングツールの移動方向に、複数個配置された構成とした場合は、ボンディングツールを移動させた際に、各々のフライングリードに複数回、超音波振動が作用し、フライングリードと基板パッドとが確実に接合される。
また、前記ボンディングツールに使用する当接部材としては、ローラあるいはボールが好適に使用される。
【0010】
また、キャリッジアームに取り付けられたフレキシブル基板と、ロングテールサスペンション基板とを電気的に接続する方法として、前記フレキシブル基板に設けられた基板パッドと、前記ロングテールサスペンション基板に設けられたフライングリードとを位置合わせし、前記フライングリードの接合方法を適用して前記基板パッドとフライングリードとを超音波接合する方法は、キャリッジアセンブリの組み立て方法として好適に利用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフライングリードの接合方法によれば、基板パッドとフライングリードとを確実に超音波接合することができ、また、並列に配置されたフライングリードを横切るようにボンディングツールを移動させるだけで基板パッドとフライングリードとが接合されるから、複数の基板パッドとフライングリードとを超音波接合する方法として有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るフライングリードの接合方法の実施の形態として、キャリッジアセンブリを組み立てる際に、ロングテールサスペンション基板に設けられているフライングリード18をフレキシブル基板16に接合する場合を例に説明する。
図1は、キャリッジアーム10の側面に取り付けられたフレキシブル基板16に、ロングテールサスペンション基板のフライングリード18を、超音波接合用のボンディングツール30を用いて接合している状態を示す。
【0013】
フレキシブル基板16の表面には、所定間隔をあけて並列に基板パッド17が露出している。フライングリード18はロングテールサスペンション基板の端部からリード状に並列に延出する。フライングリード18は、各々のリードの平面配置が基板パッド17の平面配置と一致するようにサスペンション基板に形成されている。図1は、フレキシブル基板16に形成されている各々の基板パッド17の上方に、1本ずつフライングリード18を位置合わせしてフライングリード18と基板パッド17とを接合している状態を示す。
【0014】
本実施形態のボンディングツール30は、フライングリード18の上面に当接して超音波振動を作用させる当接部材として一対のローラ32a、32bを備えていることを特徴とする。ローラ32a、32bは下面が開口して形成されたホルダ34の内部に、ホルダ34の開口面から周面の一部を露出させて収納される。
ローラ32a、32bは、超音波振動子を備えた超音波発生装置38連結されている振動体36から伸びるアーム部36aに転動自在に軸支される。振動体36およびアーム部36aはホルダ34内に収納されている。
移動機構40は、ホルダ34を支持してボンディングツール30をフライングリード18の接合位置に位置合わせし、ボンディングツール30をフライングリード18および基板パッド17の長手方向に直交する向きに移動させる作用をなすためのものである。
【0015】
図2は、本実施形態のボンディングツール30を用いてフライングリード18を基板パッド17に接合する方法を示す。
図2(a)は、フレキシブル基板16にフライングリード18を位置合わせし、並列に配置されているフライングリード18の一方側にボンディングツール30を位置合わせした状態を示す。図4に示すように、基板パッド17はフレキシブル基板16上で細長に露出する。ロングテールサスペンション基板は、フライングリード18のリードの長手方向をこの基板パッド17の長手方向と一致するようにフレキシブル基板16に対して位置決めされる。
【0016】
移動機構40により、ボンディングツール30は、ローラ32a、32bをフライングリード18に当接させながら、超音波発生装置38により振動体36に超音波を印加した状態で、フライングリード18および基板パッド17の長手方向に直交する方向に移動される。
超音波発生装置38により振動体36に超音波を印加しながらボンディングツール30を移動させることによって、ローラ32a、32bによりフライングリード18が基板パッド17の表面に押接され、ローラ32a、32bが超音波振動することによってフライングリード18と基板パッド17とが接合される。
【0017】
基板パッド17にフライングリード18を位置合わせした状態で、フライングリード18は基板パッド17の上面から若干離間する。ローラ32a、32bが移動する際にフライングリード18はローラ32a、32bの外周面によって基板パッド17に向けて押さえ込まれるように押圧され、基板パッド17に的確に押接されて基板パッド17との間で確実な超音波接合がなされる。
【0018】
図2(a)は、フライングリード18の一方側にボンディングツール30を位置合わせした状態で、ボンディングツール30の移動方向で先行するローラ32bのみがフライングリード18に当接している状態である。この状態から並列に配置されたフライングリード18を横切るようにボンディングツール30を移動させることにより、各々のフライングリード18と基板パッド17との間で超音波接合作用が奏され、すべてのフライングリード18と基板パッド17とが接合される。図2(b)は、並列に配置されたフライングリード18の他方側の近傍までボンディングツール30が移動した状態を示す。
【0019】
本実施形態のボンディングツール30では、一対のローラ32a、32bを設けることにより、各々のフライングリード18では先行するローラ32bと後行するローラ32aの2回にわたって超音波接合作用が奏される。これによって、1回のローラによって超音波接合する場合にくらべて、より確実にフライングリード18と基板パッド17とを接合することができる。
本実施形態のボンディングツール30を用いてフライングリード18を基板パッド17に接合する操作は、並列に配置されているフライングリード18をリードの長手方向に対して直交する向きにボンディングツール30を走査させるようにすることによってなされるから、個々のフライングリード18に超音波振動が作用する時間は短時間である。したがって、本実施形態のように、複数の当接部材(ローラ)を使用して、1回の操作でフライングリード18に対して複数回の超音波振動が作用するようにすることは有効である。
【0020】
また、本実施形態のボンディングツール30ではローラ32a、32bが振動体36に自在に転動可能に支持されているから、フライングリード18を横切るようにボンディングツール30を移動させる際に、ローラ32a、32b自体が回転し、フライングリード18を損傷させずにボンディングツール30を移動させながら超音波接合をすることができる。
【0021】
また、超音波振動を作用させる当接部材をローラ状としたことで、従来のように、作用面を平坦面とした当接部材を使用した場合にくらべて、個々のフライングリード18に対して超音波振動を集中的に作用させることができ、確実に超音波接合することが可能となる。基板パッド17の接合面やフライングリード18の接合面に凹凸が形成されていたり、基板パッド17やフライングリード18に厚さのばらつきが生じていたりした場合でも、ローラ32a、32bから個々のフライングリード18に超音波振動が作用することから、フライングリード18やフレキシブル基板16の製造時のばらつきを吸収してフライングリード18を確実に基板パッド17に接合することが可能になる。これによって、キャリッジアセンブリのフレキシブル基板とサスペンション基板との接合部分の接合信頼性を高めることが可能となる。
【0022】
なお、本発明に係るフライングリードの接合方法は、上述したキャリッジアセンブリの組み立てに使用する場合に限らず、フライングリードとして形成されたリードと配線基板の基板パッドとを超音波接合によって接合する際に、まったく同様に適用することができる。
フライングリードが複数本並列に配置されているような場合には、フライングリードと基板パッドとを位置合わせした状態で、フライングリードのリードの方向とは直交する方向にボンディングツールを移動させて超音波接合することにより、フライングリードと基板パッドとの超音波接合をきわめて効率的にかつ確実に行うことが可能になる。
【0023】
なお、上記実施形態においては、超音波振動を作用させる当接部材をローラとして形成したが、ローラのかわりにボール体を使用することも可能である。ボール体を使用した場合は、ローラを使用する場合にくらべて被接続部との接触面積が小さくでき、超音波振動をさらに接続部分に集中させて作用させることができる。
また、上記実施形態では、ローラ32a、32bを振動体36に取り付ける形態としたが、ホルダ34にローラ32a、32bを取り付け、ホルダ34を超音波振動させる構成とすることも可能である。また、超音波振動を作用させる当接部材の数を単数とすることもでき、3個以上とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ボンディングツールの構成と、ボンディングツールを用いてフライングリードと基板パッドとを超音波接合する状態を示す説明図である。
【図2】ボンディングツールを用いてフライングリードと基板パッドとを接合する方法を示す説明図である。
【図3】ロングテールサスペンション基板を用いてキャリッジアセンブリを組み立てる方法を示す斜視図である。
【図4】ボンディングツールによりフライングリードと基板パッドとを接合する従来方法を示す説明図である。
【図5】フライングリードと基板パッドとの接合界面の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10 キャリッジアーム
12 サスペンション
16 フレキシブル基板
17 基板パッド
18 フライングリード
20 ボンディングツール
30 ボンディングツール
32a、32b ローラ
36 振動体
38 超音波発生装置
40 移動機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配列された複数の基板パッドの各々にフライングリードを位置合わせし、ボンディングツールによりフライングリードに超音波振動を作用させ、各々の基板パッドとフライングリードとを接合するフライングリードの接合方法において、
前記フライングリードに当接して超音波振動を作用させる当接部材が転動自在に支持されたボンディングツールを使用し、
前記当接部材を前記フライングリードに当接させて転動させつつ、前記ボンディングツールを、並列に配置された前記フライングリードを横切る方向に移動させることにより、前記当接部材から前記フライングリードに超音波振動を作用させて、各々のフライングリードと基板パッドとを超音波接合することを特徴とするフライングリードの接合方法。
【請求項2】
前記当接部材が、前記ボンディングツールの移動方向に、複数個配置されていることを特徴とする請求項1記載のフライングリードの接合方法。
【請求項3】
前記ボンディングツールに使用する当接部材が、ローラであることを特徴とする請求項1または2記載のフライングリードの接合方法。
【請求項4】
前記ボンディングツールに使用する当接部材が、ボールであることを特徴とする請求項1または2記載のフライングリードの接合方法。
【請求項5】
キャリッジアームに取り付けられたフレキシブル基板と、ロングテールサスペンション基板とを電気的に接続する方法として、前記フレキシブル基板に設けられた基板パッドと、前記ロングテールサスペンション基板に設けられたフライングリードとを位置合わせし、請求項1記載のフライングリードの接合方法を適用して前記基板パッドとフライングリードとを超音波接合することを特徴とするキャリッジアセンブリの組み立て方法。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−173362(P2007−173362A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366331(P2005−366331)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】