説明

フラックスゲート型磁気センサ

【課題】共振回路30の構成部品の特性にバラツキがあっても、地磁気などの入力磁界を最大の感度で検出できるように励磁周波数を自動的に調整できるフラックスゲート型磁気センサの提供。
【解決手段】試験モードにおいて、スイッチ回路12をオフとし、D/Aコンバータ19から一定直流電圧の試験信号を模擬入力信号として出力し、周波数可変発振器16の発振周波数を一定周波数範囲で変化させ、A/D出力114が最大値となったときの励磁周波数が最大感度周波数であると判断し、励磁周波数が最大感度周波数f(=F/2)に保持されるように周波数可変発振器16の発振周波数を設定するまでの処理をCPU15により自動的に行い、この段階で試験モードから測定モードに移行し、測定モードでは励磁周波数を最大感度周波数に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁心、励磁コイル及び検出コイルでなるフラックスゲートと、このフラックスゲートの出力信号における不要周波数を遮断するための共振回路とを備え、フラックスゲートに入力する地磁気などの磁界を測定するフラックスゲート型磁気センサに関し、特に共振回路における部品の特性のバラツキや経年変化などにより共振回路の共振周波数が所定値からずれていても、常に最大の感度が得られるように、該励磁信号の周波数を最適値に自動的に設定するようにしたフラックスゲート型磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フラックスゲート型磁気センサは、トロイダル型の磁心、周波数fの励磁信号で該磁心を励磁する励磁コイル、該磁心に巻かれた検出コイル等により構成されるフラックスゲートを備え、その検出コイルに並列にコンデンサを接続して共振周波数2fの共振回路を構成し、フラックスゲートが測定対象の入力磁界(地磁気など)に置かれたとき、入力磁界に応じて検出コイルに現れる信号のうちで、周波数2fの信号を検出信号として取り出し、該検出信号又はこの検出信号を処理した信号でもって、入力磁界を表す信号とする。
【0003】
図6は従来の一般的なフラックスゲート型磁気センサを示すブロック回路図である。図6の従来のフラックスゲート型磁気センサは、トロイダル型磁心に巻かれた励磁コイル6及びそのトロイダル型磁心に巻かれた検出コイル7を含むフラックスゲート1と、検出コイル7に並列に接続され、励磁周波数f(励磁信号118の周波数)の倍周波数2fを共振周波数とする共振回路30を構成するコンデンサ2と、周波数2fの信号126を発振する発振器26と、発振器26の発振信号126を分周し、周波数fの信号117と周波数2fの同期検波信号117aを生成する分周回路17と、信号117の電流増幅をし、励磁コイル6に励磁信号118として供給する電流増幅回路18と、検出コイル7より出力される検出信号107を増幅するプリアンプ8と、プリアンプ8の増幅出力108と同期検波信号117aとの積の処理により増幅出力108の同期検波をし、検波出力信号109を出力する同期検波器9と、検波出力信号109を積分し、積分出力を帰還信号110として検出コイル7に入力する積分器10と、検出コイル7に直列に接続され、帰還信号110による電流の流路となり、帰還信号110による電流に比例した電圧を入力磁界信号111として出力する読取抵抗11とを備えて構成される。以下では、発振信号126の周波数(以下、発振周波数と略記する)をF、共振回路30の共振周波数をf30とする。上述のとおり、F=2fである。
【0004】
検出コイル7に現れる信号には、入力磁界を表す希望信号(励磁周波数fの倍周波数2fの信号)のみならず、励磁周波数fの3倍又はそれ以上の高調波信号成分が包含されているので、検出コイル7と並列にコンデンサ2を接続し、共振周波数2fの共振回路30を構成し、周波数2fの成分だけを抽出するようにしている。ところが、共振回路30を構成するコンデンサ2及び検出コイル7の特性には製造される部品毎にバラツキがあるから、共振回路30の共振周波数f30は、フラックスゲート型磁気センサ毎に相違する。また、コンデンサ2及び検出コイル7の特性は、環境温度や経年変化によっても変化する。このような要因により、共振回路30の共振周波数f30が設計値から変移するのは避けがたい。
【0005】
従来のフラックスゲート型磁気センサの磁気センサ回路としては、例えば特許文献1(特開平9−61506号公報)に記載されたものがある。特許文献1においては、共振回路30の共振周波数の変移に起因して変動する感度を調整するために、検出コイル7とコンデンサ2とから成る共振回路に抵抗を挿入して共振回路30のQ値を低下させた上で、励磁周波数fをf30/2よりずらせる、即ちfをf30/2に合わせるのではなく、両周波数に偏差をもたせる、としている。このようにして発振器26の発振周波数Fを共振器30の共振周波数f30から偏移させることにより磁気検出の感度調整ができるものとしている。
【特許文献1】特開平9−61506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、共振回路30のQ値を低下させた上で、発振器26の発振周波数Fを共振周波数f30に一致させるのではなく、該発振周波数Fを共振周波数f30から偏移させることにより磁気検出の感度を調整するとしているが、共振回路のQ値の低下に伴い検出感度が低下するとともに、励磁周波数fを常時適正周波数に合わせこむために発振器26の発振周波数Fの手動調整が必要になる。したがって、共振回路30の構成部品(コンデンサ2等)の特性が個別にバラツク場合には、フラックスゲート型磁気センサの製作ごとに、発振器26の発振周波数Fの手動調整を要する。同様に、共振回路30の構成部品の特性が経年変化するときは、フラックスゲート型磁気センサの製造時点からの年数の経過ごとに発振器26の発振周波数Fの手動調整を要する。また、フラックスゲート型磁気センサを設置する環境の温度が相違すれば、環境が変わる度に、発振器26の発振周波数Fの手動調整を要する。このように、従来のフラックスゲート型磁気センサには、感度が低い上に、面倒な手動調整を要し、また調整をするべき状況の判断に経験を要するので、解決するべき課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、励磁周波数fの2倍の周波数2f成分だけをフラックスゲートから取り出すための共振回路の構成部品に部品毎の特性のバラツキ、経年変化、又は設置環境の温度変化による該特性の変動があっても、地磁気などの入力磁界に対する感度を自動的に最大に設定できるようにしたフラックスゲート型磁気センサの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決するために本発明は次の手段を提供する。
【0009】
(1)磁心、励磁コイル及び検出コイルを備え、励磁信号を該励磁コイルに受けるフラックスゲートと、
前記検出コイルに並列に接続されたコンデンサと、
前記検出コイル及び前記コンデンサでなる共振回路から出力される検出信号に基づき、地磁気その他の入力磁界の大きさを表す入力磁界信号を生成する検出回路部と、
試験モードと測定モードとで作動し、該試験モードでは該励磁信号の周波数を一定の範囲内で制御することにより、該一定の範囲内の該周波数の内で前記入力磁界信号の大きさが最大となる該周波数を見つけ出し、該最大となる該周波数を最大感度周波数として保持し、該測定モードでは該周波数を該最大感度周波数とする励磁信号発生部と、
前記励磁信号発生部が前記試験モードにあるときに、前記検出コイルに試験信号を印加する試験信号印加部と
を備えてなるフラックスゲート型磁気センサ。
【0010】
(2)前記検出回路部は、前記測定モードでは前記入力磁界信号を前記検出コイルに帰還する帰還線路を備え、
前記帰還線路には直列にスイッチ回路が設けてあり、
前記励磁信号発生部は、前記試験モードでは前記スイッチ回路をオフとし、前記測定モードでは該スイッチ回路をオンとする
ことを特徴とする前記(1)に記載のフラックスゲート型磁気センサ。
【発明の効果】
【0011】
上記の発明によれば、励磁周波数fの2倍の周波数2f成分だけをフラックスゲートから取り出すための共振回路の構成部品に部品毎の特性のバラツキ、経年変化、又は設置環境の温度変化による該特性の変動があっても、地磁気などの入力磁界に対する感度を自動的に最大に設定できるようにしたフラックスゲート型磁気センサが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1の実施形態のフラックスゲート型磁気センサを示すブロック図、図2は図1のCPU15の内部における処理手順を示すフローチャートである。この第1の実施形態は、図1に示されるように、フラックスゲート1と、コンデンサ2と、励磁信号発生部3と、検出回路部4と、試験信号印加部5とから構成される。フラックスゲート1は、励磁コイル6及び検出コイル7並びに磁心(図示せず)でなる。コンデンサ2は、検出コイル7に並列に接続され、検出コイル7とともに共振回路30を形成する。励磁信号発生部3は、LPF(低域濾波器)13、A/Dコンバータ14、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)15、周波数可変発振回路16、分周回路17及び電流増幅回路18でなる。検出回路部4は、プリアンプ8、同期検波回路9、積分器10、読取抵抗11及びスイッチ回路12でなる。試験信号印加部5はD/Aコンバータ19でなる。この構成において、CPU15は、試験モード及び測定モードという2つのモードで作動し、スイッチ回路12、試験信号印加部5及び周波数可変発振器16を制御し、試験モードにおいて最大の感度が得られる励磁周波数f(最大感度周波数)を決定し、測定モードではその最大感度周波数で励磁コイル6を励磁できるように周波数可変発振器16の発振周波数を設定する。
【0013】
次に、本実施形態について、図1のブロック図及び図2のフローチャートを参照して説明する。この第1の実施形態では、検出回路部4にクローズドループを備える。このクローズドループは、図1における符号で示せば、30→8→9→10→12→30なる回路要素のループで構成される。測定モードにおいて、直流の帰還信号110を検出コイル7へ帰還し、帰還信号110による磁界と入力磁界とが釣り合わせることにより、検出信号107を得ており、検出信号107を生成する回路がクローズループを備える。図1の実施形態は、クローズループを有する点においては図6の従来例と同様である。しかし、図1の実施形態は、帰還信号110の帰還線路中にスイッチ回路12を備え、試験モードか測定モードかに応じてスイッチ回路12をオン/オフし、試験モードではスイッチ回路12をオフにする点で、図6の従来例と相違している。
【0014】
後述のように、励磁周波数f(励磁信号118の周波数)は周波数可変発振器16の発振周波数F(発振信号116の周波数)を分周回路17により分周することにより生成される。そこで、CPU15の出力の周波数制御信号115により周波数可変発振器16の発振周波数Fを設定したとき、この設定により励磁周波数fは一義的に決まる。この実施の形態では、発振周波数Fの制御により励振周波数fを制御している。
【0015】
いま図1の実施形態のフラックスゲート型磁気センサに電源を投入すると、CPU15は自動的に試験モードの処理を開始し、試験モードで最大感度周波数を決定する。最大感度周波数を決定するために、CPU15は、周波数制御信号115でもって周波数可変発振器16の発振周波数Fを指示する。CPU15は、一定周波数範囲内において、△Fの周波数間隔で間欠的に、発振周波数Fを順次に変化させる。CPU15は、発振周波数Fを一定範囲内変化させることにより、最大の感度が得られた発振周波数Fを見つけ、これを最大感度周波数として保存する。A/Dコンバータ14の出力114はこの実施の形態の感度を表し、出力114が最大値をなるときに、CPU15は本実施の形態の感度が最大であると判断する。最大感度周波数の周波数制御信号115とD/Aコンバータ19の出力をオフにする信号と、スイッチ回路12をオンにする信号をCPU15が出力して、本実施の形態は試験モードから測定モードに移行する。
【0016】
以下に試験モードの処理について記述する。試験モードの処理の開始でCPU15はまず初期設定(ステップS11)を行う。この初期設定は、スイッチ回路(図2ではSWと略記)12をオフにすること、D/Aコンバータ19に試験用電圧V19を出力すること、また、CPU15の内部メモリ内の変数の初期値として、周波数可変発振器16の発振周波数FにFSTARTを設定すること、A/Dコンバータ14の出力値VADの最大値Vmaxに“0”を設定すること、最大値Vmaxを得たときの発振周波数FXにFSTARTを設定することの初期化から成る。
【0017】
この初期設定において、D/Aコンバータ19は、デジタル試験信号115aをアナログ電圧に変換し、所定の試験用電圧V19を出力する。試験用電圧V19は、検出コイル7に印加される。これにより、検出コイル7には、試験用電圧V19並びに検出コイル7の抵抗値及び読取抵抗11の抵抗値により定まる電流が流れる。検出コイル7に流れるその電流は、試験モードにおける検出コイル7に対する模擬的な入力信号となる。また、試験モードでは、スイッチ回路12は、前述のとおり、スイッチ制御信号115bによりオフに設定される。
【0018】
ステップS11の初期設定を受けて、CPU15は周波数制御信号115でもって周波数可変発振器16の発振周波数Fを制御し、発振周波数FをFSTARTに設定する。周波数Fの発振信号116は、分周回路17において2分周されて、励磁周波数f=F/2の信号117として電流増幅回路18に入力されるとともに、元の周波数Fの発振信号は同期検波信号(復調キャリア)117aとして同期検波回路9に入力される。電流増幅回路18は、周波数fの信号117の電流増幅を行い、電流増幅した信号を励磁信号118として励磁コイル6に供給する。励磁コイル6に周波数fの励磁信号118が供給されると、フラックスゲート1の磁心(図示省略)が励磁される。このとき、検出コイル7には、入力磁界を表す希望信号(励磁周波数fの倍周波数2fの信号)のみならず、励磁周波数fの3倍又はそれ以上の高調波信号成分が誘起されるが、検出コイル7とコンデンサ2でなる共振回路30により周波数2fの信号だけが抽出される。この周波数2fの信号が検出信号107である。
【0019】
検出信号107はプリアンプ回路8において増幅され、その出力信号108は、同期検波回路9において同期検波信号117aで同期検波され、検波信号109となる。検波信号109は、積分器10で積分され、直流に変換され、帰還信号110なる。試験モードではスイッチ回路12がオフであるから、帰還信号110は利用されない。他方、検波信号109は、LPF13にも供給される。LPF13は、検波信号109を平滑化し、直流信号113に変換する。A/Dコンバータ14は、直流信号113をデジタルのA/D出力114に変換する。
【0020】
CPU15は、ステップS11に続くステップにおいて、周波数可変発振器16に発振周波数Fを出力し、A/D出力114を周波数Fにおける感度を表すデータとしてVADに格納する(ステップS12)。続いて、A/D出力値VADと最大値Vmaxの値を比較して、周波数FにおけるA/D出力が最大値よりも大であるか否かを判定する。VAD>Vmaxでない場合にはステップS15に進み、VAD>Vmaxである場合にはステップS14に進む(ステップS13)。VAD>Vmaxである場合には、A/D出力値が最大となる発振周波数FXを発振周波数Fとし、最大値VmaxをA/D出力値VADの値とする(ステップS14)。続いて、発振周波数Fと予め決められている周波数FSTOPとを比較する。F≦FSTOPでない場合にはステップS17に進み、F≦FSTOPである場合にはステップS16に進む(ステップS15)。発振周波数FがFSTOP以下である場合には、発振周波数Fに予め決められている△Fを加算したF+△Fを発振周波数FとしてステップS12に戻り、再度ステップS12以降の処理手順を繰返す(ステップS16)。発振周波数FがFSTOPの値を超えた場合には、周波数制御信号115にA/D出力値が最大となる発振周波数FXを設定し、D/Aコンバータ19の出力をオフとし、スイッチ回路12をオンとして、試験モードの処理を終了し、測定モードへ移行する(ステップS17)。このようにして、周波数FSTARTからFSTOPの範囲でA/D出力が最大となる発振周波数が、変数FXに格納される。周波数FSTART、FSTOP、FXで検出出力が変わる様子を模式的に図5で示す。D/Aコンバータ19の出力がオフとなることで、検出コイルへの試験用電圧V19の印加がなくなる。
【0021】
測定モードでは、スイッチ回路12がオンとなるので、帰還信号110は検出コイル7へ接続される。帰還信号110(直流電圧)は検出コイル7と読取抵抗11との直列回路に供給され、帰還信号110による電流はその直列回路から接地点に至る回路に流れ、読取抵抗11には入力磁界と拮抗する電流が流入する。この電流によって読取抵抗11の端子に生じる電圧は、入力磁界(地磁気など)を表す信号となり、即ち磁界検出信号111として出力される。図1の実施形態では、磁界検出信号111は検出信号107と同じである。
【0022】
測定モードにおける周波数可変発振器16の発振周波数Fは、試験モードで設定された周波数FXである。周波数可変発振器16は、入力磁界に対する本実施形態の感度を最大とする周波数FXで発振する。このとき、励磁信号118の周波数(励磁周波数)fはFX/2となり、このFX/2が前述の最大感度周波数に相当する。図1の第1の実施形態では、起動とともに自動的に試験モードで作動し、励磁周波数fが最大感度周波数となるように、周波数可変発振器16の発振周波数Fが自動的に調整される。このような効果が得られるのは、試験モードにおいて、励磁周波数fが共振回路30の共振周波数F30の2分の1、即ちF30/2に自動的に設定されるからである。
【0023】
上述のように、図1の第1の実施形態は、励磁信号発生部3から出力される励磁信号118の周波数、即ち励磁周波数を、自動的に共振回路30の共振周波数の2分の1に調整するので、共振回路30を形成する検出コイル7とコンデンサ2の特性変動に関わりなく、常に最大感度で入力磁界を測定することができる。
【0024】
次に、第2の実施形態について図面を参照して説明する。図3は本発明の第2の実施形態のフラックスゲート型磁気センサを示すブロック図、図4は図3のCPU15の内部における処理手順を示すフローチャートである。図1の第1の実施形態と図3の第2の実施形態との相違点をまず説明する。主要な相違点は検出回路部4にあり、第1の実施形態では、検出回路部4が帰還ループを備えるクローズループであり、第2の実施形態では、検出回路部4が帰還ループのないオープンループとなっている点である。図3の第2の実施形態はオープンループであるから、図1で帰還ループに相当する帰還信号線路とスイッチ回路12がなく、また積分器に代えてLPF33を備えている。図1の第1の実施形態では、検出信号107が磁界検出信号111であり、磁界検出信号111でもって入力磁界の測定値を表しているが、図3の第2の実施形態では、LPF33の出力の磁界検出信号133でもって、入力磁界の測定値を表している。図3のLPF33の機能は、図1のLPF13と同じであり、LPF33の出力は励磁信号発生部3のA/Dコンバータへの入力にもなる。また、図1の読取抵抗11は、図3では検出信号を出力するのではなく、検出コイル7に流れる電流を制限する電流制限抵抗となる。LPF33の機能は、検波信号109を直流に変換する点では積分器10と同じ機能である。試験モードにおいて、所定の試験信号がD/Aコンバータ19から出力され、検出コイル7に印加されたとき、検出コイル7及び電流制限抵抗20に流れる一定の電流が模擬的に検出信号127となる。
【0025】
図3の第2の実施形態は、試験モード及び測定モードのいずれでも検出回路部4にはクローズドループは構成せず、オープンループだけで磁界検出信号133を得ている。CPU15における処理は、図4のフローチャートに示すとおりであり、試験モードにおいて、励磁周波数fが共振回路30の共振周波数Fの1/2、即ち最大感度周波数となる周波数可変発振器16の発振周波数を探索するために、周波数可変発振器16の発振周波数を一定周波数範囲(FSTARTからFSTOPまで)で変化させ、A/D出力114が最大値となったときの励磁周波数が最大感度周波数であると判断し、励磁周波数が最大感度周波数f(=F/2)に保持されるように周波数可変発振器16の発振周波数を設定するまでの処理をCPU15により自動的に行い、この段階で試験モードから測定モードに移行し、測定モードでは励磁周波数を最大感度周波数に保持する。図4のフローチャートにおけるステップS21〜S27は、図2のフローチャートにおけるステップS11〜S17にそれぞれ相当する。但し、図3の実施形態は図1の実施形態におけるスイッチ12を有しないから、図2のステップS11におけるSW→OFFの処理及び図2のステップS17におけるSW→ONの処理は、図4のステップS21及びステップS27にはない。
【0026】
上述のように、図3の第2の実施形態は、励磁信号発生部3から出力される励磁信号118の周波数、即ち励磁周波数を、自動的に共振回路30の共振周波数の2分の1に調整するので、共振回路30を形成する検出コイル7とコンデンサ2の特性変動に関わりなく、常に最大感度で入力磁界を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1の第1の実施形態におけるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
【図4】図3の第2の実施形態におけるCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】CPU15で設定する変数FSTART、FSTOP及びFXと検出出力との関係を示す模式図である。
【図6】従来のフラックスゲート型磁気センサを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
1 フラックスゲート
2 コンデンサ
3 励磁信号発生部
4 検出回路部
5 試験信号印加部
6 励磁コイル
7 検出コイル
8 プリアンプ
9 同期検波回路
10 積分器
11 読取抵抗
12 スイッチ回路
13,33 LPF
14 A/Dコンバータ
15 CPU
16 周波数可変発振器
17 分周回路
18 電流増幅回路
19 D/Aコンバータ
20 電流制限抵抗
107,127 検出信号
108 プリアンプ8の増幅出力
109 検波出力
110 帰還信号
111,133 磁界検出信号
113 LPF出力の直流信号
114 A/D出力
115 周波数制御信号
115a デジタル試験信号
115b スイッチ制御信号
116 発振信号
117 分周回路17出力(周波数fの信号)
117a 同期検波信号
118 励磁信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁心、励磁コイル及び検出コイルを備え、励磁信号を該励磁コイルに受けるフラックスゲートと、
前記検出コイルに並列に接続されたコンデンサと、
前記検出コイル及び前記コンデンサでなる共振回路から出力される検出信号に基づき、地磁気その他の入力磁界の大きさを表す入力磁界信号を生成する検出回路部と、
試験モードと測定モードとで作動し、該試験モードでは該励磁信号の周波数を一定の範囲内で制御することにより、該一定の範囲内の該周波数の内で前記入力磁界信号の大きさが最大となる該周波数を見つけ出し、該最大となる該周波数を最大感度周波数として保持し、該測定モードでは該周波数を該最大感度周波数とする励磁信号発生部と、
前記励磁信号発生部が前記試験モードにあるときに、前記検出コイルに試験信号を印加する試験信号印加部と
を備えてなるフラックスゲート型磁気センサ。
【請求項2】
前記検出回路部は、前記測定モードでは前記入力磁界信号を前記検出コイルに帰還する帰還線路を備え、
前記帰還線路には直列にスイッチ回路が設けてあり、
前記励磁信号発生部は、前記試験モードでは前記スイッチ回路をオフとし、前記測定モードでは該スイッチ回路をオンとする
ことを特徴とする請求項1に記載のフラックスゲート型磁気センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−163424(P2007−163424A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363582(P2005−363582)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】