説明

フラックス転写状態検査装置及びフラックス転写状態検査方法

【課題】電子部品の電極部へのフラックスの転写状態を精度良く検査できるフラックスの転写状態検査装置及びフラックスの転写状態検査方法を提供する。
【解決手段】フラックス転写装置12は、回転テーブル13内に貯留するフラックスを雰囲気温度よりも例えば10〜20℃程度高い温度に加温するヒータ15と、フラックス転写後に吸着ノズル17の吸着部品18が移動する経路の下方に位置する部位にサーモグラフィカメラ21を備える。電子部品18の電極部19にフラックスを転写する前に、該フラックスをヒータ15で雰囲気温度よりも高い温度に加温しておき、電子部品18の電極部19に、ヒータ15で加温したフラックスを転写した後に、該電子部品18のフラックス転写側の面の熱画像をサーモグラフィカメラ21により撮影し、撮影した熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分をフラックスと認識してフラックスの転写状態を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の電極部(バンプ、端子)へのフラックスの転写状態を検査するフラックス転写状態検査装置及びフラックス転写状態検査方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1(特開2003−60398号公報)に記載されているように、CCDカメラ等の光学カメラで電子部品の電極部側の面を撮像して、その撮像画像から電極部のフラックス転写部分を認識してフラックスの転写状態の良否を検査したり、或は、特許文献2(特開2007−281024号公報)に記載されているように、電子部品の電極部側の面をLED等の光源で照明しながら光学カメラで撮像して、その撮像画像から電極部の輝度(転写したフラックスによる電極部の輝度の低下)を検出して、電極部へのフラックスの転写状態の良否を検査するようにしたものがある。
【特許文献1】特開2003−60398号公報
【特許文献2】特開2007−281024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、フラックスは透明であるため、光学カメラで電子部品の電極部側の面を撮像しても、その撮像画像から電極部とフラックスとを区別して画像認識することは困難であり、電極部へのフラックスの転写状態を精度良く検査することができない。
【0004】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、電子部品の電極部へのフラックスの転写状態を精度良く検査することができるフラックス転写状態検査装置及びフラックス転写状態検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、電子部品の電極部(バンプ、端子)にフラックスを転写する前に該フラックスを加温手段で雰囲気温度(周囲の空気温度)よりも高い温度に加温しておき、前記電子部品の電極部に前記加温手段で加温したフラックスを転写した後に、該電子部品のフラックス転写側の面の熱画像をサーモグラフィカメラにより撮影し、撮影した熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分をフラックスと認識してフラックスの転写状態を検査するようにしたものである。
【0006】
本発明のように、電子部品の電極部にフラックスを転写する前に、該フラックスを雰囲気温度よりも高い温度に加温しておけば、フラックスの転写後に、電子部品のフラックス転写側の面の熱画像をサーモグラフィカメラにより撮影することで、撮影した熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分であるフラックスと雰囲気温度に近い電極部とを精度良く識別することができ、光学カメラを用いた従来の検査方法と比較して、電子部品の電極部へのフラックスの転写状態を精度良く検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、図1に基づいて本発明の実施例1を図1乃至図3に基づいて説明する。
図1に示すように、電子部品実装機10のセット台11には、フラックス転写装置12がフィーダユニット(図示せず)に隣接して着脱可能にセットされている。このフラックス転写装置12には、フラックスを膜状に成形する皿状の回転テーブル13(転写テーブル)が着脱可能に装着され、この回転テーブル13がモータ(図示せず)によって回転駆動されるようになっている。回転テーブル13を載せる回転台14には、ヒータ15(加温手段)が内蔵され、このヒータ15によって回転テーブル13を加温することで、回転テーブル13内のフラックスを雰囲気温度(周囲の空気温度)よりも例えば10〜20℃程度高い温度(フラックスが変質しない温度範囲)に加温するようにしている。
【0009】
図2に示すように、回転テーブル13の上方には、その半径とほぼ同じ長さのスキージ16が回転テーブル13の半径方向に沿って設けられ、回転テーブル13を回転させることで、回転テーブル13内のフラックスをスキージ16によって均一に押し広げてフラックスを膜状に成形するようになっている。電子部品実装機10の稼働中は、図1に示すように、電子部品実装機10の吸着ノズル17に吸着した電子部品18下面の各電極部19(バンプ、端子)を回転テーブル13の底面に当接するまで下降させることで、各電極部19をフラックス膜に浸して各電極部19にフラックスを転写する。
【0010】
フラックス転写装置12には、フラックス転写後に吸着ノズル17の吸着部品18が移動する経路の下方に位置する部位にサーモグラフィカメラ21が上向きに設けられ、フラックス転写後に吸着ノズル17の吸着部品18がサーモグラフィカメラ21の上方を通過する際に、サーモグラフィカメラ21で吸着ノズル17の吸着部品18の下面(フラックス転写側の面)の熱画像を撮影するようにしている。
【0011】
このサーモグラフィカメラ21から出力される熱画像の信号は、熱画像解析装置22(検査手段)に入力され、この熱画像解析装置22で熱画像の温度分布が解析され、熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分がフラックスと認識されて、各電極部19へのフラックスの転写状態が検査される。
【0012】
以上説明した本実施例1のフラックス転写状態の検査は、熱画像解析装置22によって図3のフラックス転写状態検査プログラムに従って実行される。この図3のフラックス転写状態検査プログラムは、電子部品実装機10の吸着ノズル17に吸着した電子部品18の電極部19にフラックスを転写する毎に実行される。本プログラムが起動されると、まずステップ101で、吸着ノズル17に吸着した電子部品18がサーモグラフィカメラ21の上方に到達したか否かを判定し、まだ電子部品18がサーモグラフィカメラ21の上方に到達していなければ、電子部品18がサーモグラフィカメラ21の上方に到達するまで待機する。
【0013】
その後、電子部品18がサーモグラフィカメラ21の上方に到達した時点で、ステップ102に進み、サーモグラフィカメラ21で電子部品18の下面(フラックス転写側の面)の熱画像を撮影して、その熱画像の信号を取り込む。
【0014】
この後、ステップ103に進み、熱画像から電子部品18の下面の温度分布を解析した後、ステップ104に進み、熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分をフラックス転写部分と認識する。この後、ステップ105に進み、各電極部19のフラックス転写部分のサイズ(例えば面積、直径等)をそれぞれ所定の判定しきい値と比較して、いずれかの電極部19のフラックス転写部分のサイズが判定しきい値よりも小さいと判定されれば、ステップ106に進み、フラックス転写不良と判定する。尚、フラックス転写不良と判定された電子部品18は、回転テーブル13上へ戻して再度フラックスを電極部19に転写するようにしても良いし、或は、回路基板に半田付けせずに所定の廃棄場所に廃棄するようにしても良い。
【0015】
これに対して、上記ステップ105で、全ての電極部19のフラックス転写部分のサイズが判定しきい値以上と判定されれば、ステップ106に進み、フラックス転写合格(フラックス転写状態良好)と判定する。尚、フラックス転写合格と判定された電子部品18は、回路基板上へ移動されて回路基板に半田付けされる。
【0016】
以上説明した本実施例1のように、電子部品18の電極部19にフラックスを転写する前に、該フラックスを雰囲気温度よりも高い温度に加温しておけば、フラックスの転写後に、電子部品18のフラックス転写側の面の熱画像をサーモグラフィカメラ21により撮影することで、撮影した熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分であるフラックスと雰囲気温度に近い電極部19とを精度良く識別することができ、光学カメラを用いた従来の検査方法と比較して、電子部品18の電極部19へのフラックスの転写状態を精度良く検査することができる。
【実施例2】
【0017】
上記実施例1では、サーモグラフィカメラ21をフラックス転写装置12に設けたが、図4に示す本発明の実施例2では、電子部品実装機10にサーモグラフィカメラ31を設けている。具体的には、電子部品実装機10のうちのフラックス転写後の電子部品18が移動する経路の下方に位置する部位にサーモグラフィカメラ31を上向きに設けている。その他の構成は、上記実施例1と同じである。
【0018】
本実施例2の構成でも、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
尚、上記実施例1,2では、フラックスを膜状に成形する回転テーブル13をヒータ15によって加熱することで、回転テーブル13内のフラックスを雰囲気温度よりも高い温度に加温するようにしたが、回転テーブル13内に供給するフラックスを貯留するタンクにヒータ(図示せず)を設けて、このヒータによりタンク内で雰囲気温度よりも高い温度に加温したフラックスを回転テーブル13内に供給するようにしても良い。
【0019】
また、上記実施例1,2では、フラックスを供給する転写テーブル(回転テーブル13)を回転させて、固定したスキージでフラックスを押し広げる回転方式のフラックス転写装置を用いたが、転写テーブルを固定してスキージを水平方向に直線移動させたり、或は、スキージを固定して転写テーブルを水平方向に直線移動させる直動方式のフラックス転写装置を用いるようにしても良い。
【0020】
また、上記実施例1,2では、フラックス転写装置12を電子部品実装機10に着脱可能にセットするようにしたが、フラックス転写装置と電子部品実装機とを別々に設けて、フラックス転写工程とフラックス転写後の半田付け工程とを別々の装置で行うようにしても良い。また、フラックスの他に、はんだペーストや銀ペースト等の粘性流体にも本発明を適用して実施できる。
【0021】
その他、本発明は、サーモグラフィカメラの設置位置を適宜変更しても良い等、種々変更して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1のフラックス転写装置を電子部品実装機を装着した状態を示す図である。
【図2】実施例1のシステム構成を概略的に示す図である。
【図3】フラックス転写状態検査プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例2のフラックス転写装置を電子部品実装機を装着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
10…電子部品実装機、12…フラックス転写装置、13…回転テーブル、12…ヒータ(加温手段)、16…スキージ、17…吸着ノズル、18…電子部品、19…電極部、21,31…サーモグラフィカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の電極部へのフラックスの転写状態を検査するフラックス転写状態検査装置において、
前記電子部品の電極部にフラックスを転写する前に該フラックスを雰囲気温度よりも高い温度に加温する加温手段と、
前記電子部品の電極部に前記加温手段で加温したフラックスを転写した後に該電子部品のフラックス転写側の面の熱画像を撮影するサーモグラフィカメラと、
前記サーモグラフィカメラで撮影した熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分をフラックスと認識してフラックスの転写状態を検査する検査手段と
を備えていることを特徴とするフラックス転写状態検査装置。
【請求項2】
電子部品の電極部へのフラックスの転写状態を検査するフラックス転写状態検査方法において、
前記電子部品の電極部にフラックスを転写する前に該フラックスを加温手段で雰囲気温度よりも高い温度に加温しておき、前記電子部品の電極部に前記加温手段で加温したフラックスを転写した後に、該電子部品のフラックス転写側の面の熱画像をサーモグラフィカメラにより撮影し、撮影した熱画像の中から雰囲気温度よりも温度の高い部分をフラックスと認識してフラックスの転写状態を検査することを特徴とするフラックス転写状態検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate