説明

フラットケーブル、及び、ワイヤハーネス

【課題】本発明は、部品点数を削減できるとともに、軽量化、及び、小型化を図ることができるフラットケーブル及び当該フラットケーブルを備えたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】ワイヤハーネス1はフラットケーブル2を備えている。フラットケーブル2は、互いに平行に並べられる複数の電線4と、弓状に弾性変形することが可能に形成された直線状に設けられ、かつ、前記複数の電線と並ぶ位置に設けられる少なくとも1つの弾性部材7と、前記複数の電線4及び弾性部材7に交差しかつこれら複数の電線4及び弾性部材7に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯される長尺の横糸9と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の電気機械に配策される複数の電線を有したフラットケーブル及び当該フラットケーブルを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体としての自動車などの各種電気機械には、多種多様な電子機器同士を電気的に接続するためにワイヤハーネスが配策されている。前述したワイヤハーネスは、自動車の車体と、該車体に開閉自在(回転自在)に取り付けられたバックドアなどの可動部と、に亘って配策されており、このフラットケーブルの導体の端末に取り付けられるコネクタが、バックドアに設けられた各種電子機器に設けられた相手方のコネクタに嵌合して、前述した電気機械に配策されている。こうして、ワイヤハーネスは、前述した電気機械の各種電子機器に必要な信号などを供給している(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
前述した特許文献1に示されたワイヤハーネス(即ちフラットケーブル)は、前記バックドアが開閉しても電力が供給できるように十分な余長(以下、余長部分と記す)を持たせている。このワイヤハーネスは、複数の導体を等間隔毎に並列に配置するとともに各導体を絶縁性の合成樹脂からなる被覆部で被覆することで、これら複数の導体を一体化してフラット状に形成したフラットケーブルと、このフラットケーブルの導体の端末に取り付けられるコネクタと、前記フラットケーブルを収容して当該フラットケーブルを保護するコルゲートチューブ及びプロテクタと、板ばねと、を備えている。この板ばねは、湾曲するように撓むことが可能に形成されている。また、前記板ばねは、帯板状に形成されており、前記余長部分に粘着テープなどで取り付けられている。また、前記余長部分に取り付けられた板ばねは、湾曲するように撓むことが可能に形成されているので、バックドアなどの可動部を全開から全閉する際には、板ばねの付勢力によって、前記余長部分を小さな半径で弛みなく湾曲させて、バックドアなどの可動部を全閉から全開する際には、板ばねの付勢力によって、前記余長部分を大きな半径で弛みなく湾曲させる。このように、板ばねの付勢力によって、フラットケーブル即ちワイヤハーネスを弛むことなく配策することで、バックドアなどの可動部が開閉した際に、ワイヤハーネスの他部材との干渉や、車体と、バックドアなどの可動部との間にフラットケーブルの余長部分が挟み込まれることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来のワイヤハーネスは、ワイヤハーネスの他部材との干渉を防止するための板ばねや、フラットケーブルを収容して当該フラットケーブルを保護するための、コルゲートチューブやプロテクタを備えている。このように、従来のワイヤハーネスは、フラットケーブルとは別体の板ばね、コルゲートチューブ、プロテクタなどを設けているので、部品点数が増加するとともに、ワイヤハーネスの組み立て作業に時間がかかり、さらに、前述したコルゲートチューブやプロテクタがフラットケーブルを収容するために大型化する傾向であった。
【0006】
また、板ばねは、前記余長部分に、粘着テープによって取り付けられているので、経年変化などによって、前記余長部分から板ばねが取り外されてしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、部品点数を削減できるとともに、軽量化、及び、小型化を図ることができるフラットケーブル及び当該フラットケーブルを備えたワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、互いに平行に並べられる複数の電線と、弓状に弾性変形することが可能に形成された直線状に設けられ、かつ、前記複数の電線と並ぶ位置に設けられる少なくとも1つの弾性部材と、前記複数の電線及び弾性部材に交差しかつこれら複数の電線及び弾性部材に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯される長尺の横糸と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の本発明において、前記弾性部材が、前記複数の電線間に設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載の本発明において、前記弾性部材が、前記電線を互いの間に挟む位置に複数設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の本発明において、前記弾性部材が、金属からなることを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の本発明は、互いに平行に並べられる複数の電線を有したフラットケーブルと、前記フラットケーブルの端末に取り付けられるコネクタと、を備えたワイヤハーネスにおいて、前記フラットケーブルとして、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のフラットケーブルを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の本発明によれば、互いに平行に並べられる複数の電線と、弓状に弾性変形することが可能に形成された直線状に設けられ、かつ、前記複数の電線と並ぶ位置に設けられる少なくとも1つの弾性部材と、前記複数の電線及び弾性部材に交差しかつこれら複数の電線及び弾性部材に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯される長尺の横糸と、を備えているので、例えば、本発明のフラットケーブルを、自動車の車体と、該車体に開閉自在(回転自在)に取り付けられたバックドアなどの可動部と、に亘って配策する際には、この弾性部材の弾性(即ち、弾性復元力)によって、フラットケーブルが、予め定められた軌跡に沿って弛むことなく配策されることとなり、よって、フラットケーブルと他部品との干渉や、車体とバックドアなどの可動部との間に、該フラットケーブルが、挟み込まれることを防止することができる。こうして、可動部への配策に適したフラットケーブルを得ることができる。
【0014】
また、横糸が、前記複数の電線及び弾性部材に交差しかつこれら複数の電線及び弾性部材に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯されているので、横糸によって、複数の電線及び弾性部材を確実に一体に取り付けることができる。また、複数の電線の周りを覆う横糸が、電線への衝撃や振動を吸収することで、該電線を保護することができる。よって、コルゲートチューブを用いることなく、当該フラットケーブルを配策することができるので、当該フラットケーブルの部品点数を削減することとなり、よって、フラットケーブル及び当該フラットケーブルを備えたワイヤハーネスの軽量化、及び、小型化を図ることができる。
【0015】
また、複数の電線及び弾性部材と長尺の横糸とを一定の規則により交錯させて織って形成されているので、横糸で織る電線及び弾性部材の外径、本数を、容易に変更することができる。したがって、製造コストを増大することなく、様々な形状の導体を一体にすることができる。
【0016】
請求項2記載の本発明によれば、前記弾性部材が、前記複数の電線間に設けられているので、フラットケーブルの幅方向の寸法を広げることなく、フラットケーブル及び当該フラットケーブルを備えたワイヤハーネスの軽量化、及び、小型化を図ることができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、前記弾性部材が、前記電線を互いの間に挟む位置に複数設けられているので、この弾性部材の弾性復元力が高まることとなり、よって、フラットケーブルと他部品との干渉や、車体とバックドアとの間に、該フラットケーブルが、挟み込まれることをより確実に防止することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、前記弾性部材が、金属からなるので、フラットケーブルに作用する引っ張り応力や曲げ応力を支えることとなり、よって、フラットケーブル自体の機械的な強度を向上させることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、前述したフラットケーブルを備えているので、ワイヤハーネスの軽量化、及び、小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。
【図2】図1に示されたワイヤハーネスのコネクタを分解して示す斜視図である。
【図3】図1に示されたワイヤハーネスのフラットケーブルを示す平面図である。
【図4】図3に示されたP1矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施の形態にかかるワイヤハーネス、及び、フラットケーブルを、図1及び図4を参照して説明する。
【0022】
図1、図2などに示すワイヤハーネス1は、例えば、前記電気機械としての自動車の車体と、該車体に開閉自在(回転自在)に取り付けられたバックドアとしての可動部と、に亘って配策されている。このワイヤハーネス1(即ちフラットケーブル2)は、バックドアとしての可動部が開閉しても電力が供給できるように十分な余長(以下、余長部分と記す)を持たせている。
【0023】
上記ワイヤハーネス1は、フラットケーブル2と、該フラットケーブル2の端末に取り付けられるコネクタ3と、を備えている。フラットケーブル2の端末に取り付けられるコネクタ3が、前記バックドアに設けられた各種電子機器に設けられた相手方のコネクタに嵌合するなどして、ワイヤハーネス1は、前述した電気機械としての自動車の各種電子機器に電源からの電力や、制御信号を供給している。
【0024】
上記フラットケーブル2は、図1及び図4に示すように、互いに間隔をあけて平行に並べられた複数の電線4と、複数の電線4と並ぶ位置に設けられ、かつ、これら複数の電線4各々を互いの間に挟む位置に設けられた複数の弾性部材7と、これら複数の電線4と複数の弾性部材7との双方と並ぶ位置に設けられ、これら複数の各電線4または各弾性部材7を互いの間に挟む位置に設けられた複数の縦糸8と、長尺の横糸9とを備えている。即ち、複数の電線4及び複数の弾性部材7及び複数の縦糸8は、これら電線4及び弾性部材7及び縦糸8の長手方向が矢印Yに沿って配置されており、矢印Xに沿って互いに平行に並べられている。また、図1などに示す前記矢印Yは、複数の電線4、複数の弾性部材7、複数の縦糸8、及び、コネクタ3の後述する端子収容室20の長手方向を示し、前記矢印Xは、前記矢印Yに対して直交する方向、即ち、複数の電線4、弾性部材7、縦糸8が並ぶ方向、及び、コネクタ3の後述する端子収容室20が並ぶ方向を示している。矢印Zは、前記矢印Yと前記矢印Xとの双方に対して直交する方向を示している。
【0025】
上記電線4は、導電性の芯線5と、絶縁性の被覆部6と、を備えている。芯線5は、複数の素線が束ねられて構成されている。この素線は、銅などの金属からなる。被覆部6は、例えば、ポリ塩化ビニルやポリオレフィン系樹脂などの絶縁性の合成樹脂からなり、芯線5を被覆している。また、本実施形態では、複数の電線4は、外径が互いに等しいものが用いられている。
【0026】
上記弾性部材7は、ステンレス(ステンレス鋼)によって構成され、かつ、棒状に形成されている。また、弾性部材7は、湾曲するように弓状に弾性変形することが可能に形成されており、当該弾性部材7は、直線状となるように弾性復元力(即ち、弾性)を生じるように形成されている。また、弾性部材7は、前記余長部分の全長に亘って設けられている。また、弾性部材7の弾性(即ち、弾性復元力)は、複数の電線4及び縦糸8よりも高く形成されており、弾性部材7の弾性(即ち、弾性復元力)によって、複数の電線4及び縦糸8を弛むことなく配策している。また、本実施形態では、弾性部材7は、外径が、複数の電線4より小さい(細い)ものが用いられている。
【0027】
上記縦糸8は、線状に形成されている。縦糸8は、ポリエステル、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、綿、カーボン、金属などの従来から織物(編み物)の繊維を構成するとして用いられる材料から1以上の材料を適宜選択して用いられることで構成されている。また、本実施形態では、縦糸8は、外径が、弾性部材7より小さい(細い)ものが用いられている。
【0028】
上記横糸9は、図3、図4に示すように、変形自在な長尺の線状に形成されている。また、横糸9は、ポリエステル、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、綿、カーボン、金属などの従来から織物(編み物)の繊維を構成するとして用いられる材料から1以上の材料を適宜選択して用いられることで構成されている。
【0029】
また、横糸9は、互いに間隔をあけて平行に並べられた複数の電線4と、複数の電線4と並ぶ位置に設けられ、かつ、これら複数の電線4各々を互いの間に挟む位置に設けられた複数の弾性部材7と、これら複数の電線4と複数の弾性部材7との双方と並ぶ位置に設けられ、これら複数の各電線4または各弾性部材7を互いの間に挟む位置に設けられた複数の縦糸8と、の端末において、図3に示すように、これら複数の縦糸8のうち図3中最も下側の端に位置する縦糸8(以下符号8aで示す)から、これら複数の縦糸8のうち図3中最も上側の端に位置する縦糸8(以下符号8bで示す)に向かって、各電線4及び各弾性部材7及び各縦糸8a、8、8bに対して交互に浮き沈みして交錯する交錯部9aが形成された後、前記縦糸8bに重ねられることで平行部9bが形成され、縦糸8bから前記縦糸8aに向かって、各電線4及び各弾性部材7及び各縦糸8a、8、8bに対して浮き沈みして交錯する第2交錯部9cが形成され、前記縦糸8aに重ねられた第2平行部9dが形成された後、交錯部9aに引っ掛けられて、再度、縦糸8aに重ねられることで第3平行部9eが形成されて、縦糸8aから縦糸8bに向かってから交互に浮き沈みして交錯する交錯部9aが形成される。また、横糸9は、前述した交錯部9aと平行部9bと第2交錯部9cと第2平行部9dと第3平行部9eと交錯部9aとが順に繰り返して形成され、かつ、第2平行部9dが交錯部9aとともに第2交錯部9cに引っ掛けられて、前述した各電線4及び各弾性部材7及び各縦糸8a、8、8bに対して、一定の規則によって交錯されて織られる。
【0030】
このように、交錯部9a、9cは、各電線4及び各弾性部材7及び各縦糸8a、8、8bに対して交互に浮き沈みされることで、一体の規則によって浮き沈みされて配置される。また、互いに隣り合う交錯部9a、9cは、互いに間隔をあけて設けられ、それぞれの交錯部9a、9cでは、横糸9は、電線4、弾性部材7、縦糸8の長手方向(矢印Y)に対して直交(交差)している。また、横糸9は、複数の電線4及び複数の弾性部材7及び複数の縦糸8a、8、8bに対して前述したように織られることで、複数の電線4及び複数の弾性部材7及び複数の縦糸8a、8、8bを、互いに間隔をあけて並べられた状態で、互いに固定している。
【0031】
上記コネクタ3は、図2に示すように、フラットケーブル2の導体(即ち、電線4)の端末に接続される複数の雌型の端子金具(以下、単に雌端子と記し、図2には、一本のみ示し、他を省略する)10と、雌端子10を収容するコネクタハウジング11と、を備えている。コネクタ3は、図示しない相手方のコネクタに嵌合する。なお、図示例では、フラットケーブル2の導体(即ち、電線4)の一方の端末に取り付けられたコネクタ3のみを示しているが、本発明では、コネクタ3は、他方の端末などの必要とされる箇所に適宜取り付けられている。
【0032】
上記雌端子10は、図2に示すように、導電性の板金からなり、電線接続部12と、電線接続部12に連なる電気接触部13と、を一体に備えている。また、雌端子10は、電線接続部12が、フラットケーブル2の導体(即ち、電線4)の端末に取り付けられていて、電線4の端末に取り付けられた電線接続部12(即ち、雌端子10)は、後述するコネクタハウジング11の端子収容室20に矢印Yに沿って挿入することで、コネクタ本体部18(コネクタハウジング11)に収容される。
【0033】
上記電線接続部12は、平板状の矩形状に形成された底板14と、前記底板14の長手方向(矢印Y)の一(先)端部に設けられた一対の被覆かしめ片16と、前記底板14の長手方向の他端部に設けられた一対の芯線かしめ片15と、を一体に備えている。また、電線接続部12(即ち、雌端子10)は、電線4に、機械的及び電気的に接続される。また、電線接続部12(即ち、雌端子10)の長手方向(矢印Y)と、該電線接続部12に接続される電線4の長手方向(矢印Y)とは、互いに平行に設けられている。
【0034】
上記被覆かしめ片16は、底板14の幅方向(矢印X)の両縁部から立設している。また、一対の被覆かしめ片16は、底板14から離れた側の縁が底板14に近付くように曲げられていている。そして、一対の被覆かしめ片16は、電線4の被覆部6を、底板14との間に挟んで、電線4をかしめることで、被覆かしめ片16と、電線4とを機械的に接続する。
【0035】
上記一対の芯線かしめ片15は、底板14の幅方向の両縁部から立設している。また、一対の芯線かしめ片15は、底板14から離れた側の縁が底板14に近付くように曲げられていている。そして、一対の芯線かしめ片15は、電線4の被覆部6が皮剥ぎされて露出した状態の芯線5を、底板14との間に挟んで、該芯線5をかしめることで、芯線かしめ片15と、電線4の芯線5と、を電気的に接続する。
【0036】
上記電気接触部13は、図2に示すように、筒状の筒状部17と、この筒状部17内に設けられた図示しないばね片と、を一体に備えている。筒状部17は、底板14の前記他端部の前記一端部から離れた側に連なっている。前記ばね片は、筒状部17内に挿入された相手方の雄端子金具(以下、雄端子とよぶ)のタブを筒状部17の内面との間に挟みこんで、雌端子10と雄端子とを電気的に接続する。
【0037】
上記コネクタハウジング11は、絶縁性の合成樹脂からなり筒状(箱状)に形成されている。コネクタハウジング11は、コネクタ本体部18と、相手方のコネクタ(図示しない)のコネクタハウジングに係止するロックアーム19と、を備えている。ロックアーム19は、コネクタ本体部18の外表面に設けられている。
【0038】
上記コネクタ本体部18には、複数の端子収容室20が設けられている。端子収容室20は、直線状に延びた空間(孔)である。また、端子収容室20の長手方向は、前述した矢印Yと平行に設けられている。また、端子収容室20の長手方向の両端部は、コネクタ本体部18の外表面に開口している。また、複数の端子収容室20は、互いに平行に設けられていて、これら複数の端子収容室20は、矢印Xに沿って並べられている。
【0039】
前述したワイヤハーネス1は、以下のように、組み立てられる。まず、複数の電線4を互いに間隔をあけて互いに平行に並べた後、これら互いに平行に並べられた複数の電線4各々を互いの間に挟む位置に縦糸8を並べる。そして、横糸9を前述した交錯部9aと平行部bと第2交錯部9cと第2平行部9dと第3平行部9eと交錯部9aが順に繰り返して形成されるように、横糸9によって、複数の電線4及び複数の縦糸8に交差し、かつ、これら複数の電線4及び複数の縦糸8に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯させる。そして、横糸9によって各電線4及び各縦糸8が織られた状態で、弾性部材7を、横糸9に交差し、かつ、横糸9に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯させる。こうして、図3、図4などに示された、フラットケーブル2を得る。その後、このフラットケーブル2の各電線4の端末に雌端子10を取り付け、当該雌端子10をコネクタハウジング11の端子収容室20内に挿入する。こうして、前述したワイヤハーネス1が得られる。こうして構成されたワイヤハーネス1は、コネクタ3が自動車に搭載される電子機器に設けられた相手方のコネクタに嵌合するなどして、自動車に配策される。また、この際、ワイヤハーネス1のフラットケーブル2は、前記余長部分に、弾性部材7が位置づけられるように配策されている。
【0040】
上述した実施形態によれば、互いに平行に並べられる複数の電線4と、弓状に弾性変形することが可能に形成された直線状に設けられ、かつ、前記複数の電線4と並ぶ位置に設けられる少なくとも1つの弾性部材7と、前記複数の電線4及び弾性部材7に交差しかつこれら複数の電線4及び弾性部材7に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯される長尺の横糸9と、を備えているので、例えば、本発明のフラットケーブル2を、自動車の車体と、該車体に開閉自在(回転自在)に取り付けられたバックドアなどの可動部と、に亘って配策する際には、この弾性部材7の弾性(即ち、弾性復元力)によって、フラットケーブル2が、予め定められた軌跡に沿って弛むことなく配策されることとなり、よって、フラットケーブル2と他部品との干渉や、車体とバックドアなどの可動部との間に、該フラットケーブル2が、挟み込まれることを防止することができる。こうして、可動部への配策に適したフラットケーブル2を得ることができる。
【0041】
また、横糸9が、前記複数の電線4及び弾性部材7に交差しかつこれら複数の電線4及び弾性部材7に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯されているので、横糸9によって、複数の電線4及び弾性部材7を確実に一体に取り付けることができる。また、複数の電線4の周りを覆う横糸9が、電線4への衝撃や振動を吸収することで、該電線4を保護することができる。よって、コルゲートチューブを用いることなく、当該フラットケーブル2を配策することができるので、当該フラットケーブル2の部品点数を削減することとなり、よって、フラットケーブル2及び当該フラットケーブル2を備えたワイヤハーネスの軽量化、及び、小型化を図ることができる。
【0042】
また、複数の電線4及び弾性部材7と長尺の横糸9とを一定の規則により交錯させて織って形成されているので、横糸9で織る電線4及び弾性部材7の外径、本数を、容易に変更することができる。したがって、製造コストを増大することなく、様々な形状の導体を一体にすることができる。
【0043】
また、前記弾性部材7が、前記複数の電線4間に設けられているので、フラットケーブル2の幅方向の寸法を広げることなく、フラットケーブル2及び当該フラットケーブル2を備えたワイヤハーネスの軽量化、及び、小型化を図ることができる。
【0044】
また、前記弾性部材7が、前記電線4を互いの間に挟む位置に複数設けられているので、この弾性部材7の弾性復元力が高まることとなり、よって、フラットケーブル2と他部品との干渉や、車体とバックドアとの間に、該フラットケーブル2が、挟み込まれることをより確実に防止することができる。
【0045】
また、前記弾性部材7が、金属からなるので、フラットケーブル2に作用する引っ張り応力や曲げ応力を支えることとなり、よって、フラットケーブル2自体の機械的な強度を向上させることができる。
【0046】
また、前記金属が、錆びにくいステンレスであるので、被水する部位への配策が可能となる。
【0047】
また、前述したフラットケーブル2を備えているので、ワイヤハーネス1の軽量化、及び、小型化を図ることができる。
【0048】
なお、上述したフラットケーブル2は、横糸9によって、各電線4及び各縦糸8が織られた状態で、弾性部材7を、横糸9に交差し、かつ、横糸9に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯させることで組み立てられているが、本発明はこれに限ったものではなく、本発明は、複数の電線4を、互いに間隔をあけて平行に並べて、弾性部材7をこれら複数の電線4各々を互いの間に挟む位置に並べて、複数の縦糸8を、これら複数の電線4と複数の弾性部材7との双方と並ぶ位置に、これら複数の各電線4または各弾性部材7を互いの間に挟む位置に並べた後、横糸9を、複数の電線4及び複数の弾性部材7及び複数の縦糸8に交差しかつこれら複数の電線4及び複数の弾性部材7及び複数の縦糸8に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯されることで、フラットケーブル2を組み立ててもよい。
【0049】
また、前述した実施形態では、弾性部材7は、ステンレス(ステンレス鋼)によって構成されているが、本発明はこれに限ったものではなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄、チタン、シリコンなどの金属によって構成されていてもよい。また、弾性部材7は、例えば、ガラスエポキシ材のような樹脂によって構成されていてもよい。弾性部材7が、樹脂からなることで、フラットケーブル2即ちワイヤハーネス1の軽量化を図ることができる。
【0050】
また、前述した実施形態のフラットケーブル2では、横糸9が織る対象として、複数の電線4及び複数の弾性部材7及び複数の縦糸8を示しているが、本発明はこれに限ったものではなく、弾性部材7は、少なくとも1本設けられていればよく、複数の縦糸8は設けられていなくてもよい。
【0051】
また、前述した実施形態では、ワイヤハーネス1は、電気機械としての自動車の車体と、該車体に回転自在に取り付けられたバックドアと、に亘って配策されているが、本発明はこれに限ったものではなく、本発明のワイヤハーネス1は、前記車体と、該車体に回転自在に取り付けられたスイングドアと、に亘って配策されていてもよく、また、本発明のワイヤハーネス1は、前記車体と、該車体にスライド自在に取り付けられたスライドドアとに亘って配策されてもよく、また、本発明のワイヤハーネス1は、車体の前後方向にスライド自在に取り付けられた社内シート(座席)に配策されていてもよい。
【0052】
また、前述した実施形態では、自動車に配策されるワイヤハーネス1を示しているが、本発明では、ワイヤハーネス1を自動車に限らず、ポータブルコンピュータや携帯小型端末などの種々の電子機器や電気機械に用いてもよい。
【0053】
また、本発明では、前述した実施形態に示した織り方に限らず、平織り、綾織り(斜文織り)、朱子織り、その他の織り方などの種々の織り方で、横糸9を複数の電線4及び弾性部材7に織ってもよい。さらに、前述した実施形態に示された織り方の場合であっても、交錯部9a、9cでは、横糸9を複数の電線4及び弾性部材7に対して一定の規則として数毎に交互に浮き沈むように織ってもよい。
【0054】
また、前述した実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ワイヤハーネス
2 フラットケーブル
3 コネクタ
4 電線
7 弾性部材
9 横糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に並べられる複数の電線と、
弓状に弾性変形することが可能に形成された直線状に設けられ、かつ、前記複数の電線と並ぶ位置に設けられる少なくとも1つの弾性部材と、
前記複数の電線及び弾性部材に交差しかつこれら複数の電線及び弾性部材に対して一定の規則に浮き沈みするように交錯される長尺の横糸と、
を備えていることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記複数の電線間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記電線を互いの間に挟む位置に複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフラットケーブル。
【請求項4】
前記弾性部材が、金属からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のフラットケーブル。
【請求項5】
互いに平行に並べられる複数の電線を有したフラットケーブルと、
前記フラットケーブルの端末に取り付けられるコネクタと、を備えたワイヤハーネスにおいて、
前記フラットケーブルとして、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のフラットケーブルを備えたことを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−165334(P2011−165334A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23170(P2010−23170)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】