説明

フラットケーブルの電気メッキ方法及びフラットケーブルの製造方法

【課題】長尺のフラットケーブルの導体露出部に露出する複数本の導体が確実にメッキ電源に接続され、メッキ洩れ導体が生じないフラットケーブルの電気メッキ方法とフラットケーブルの製造方法を提供する。
【解決手段】複数本の導体を平面上に配列して、導体の配列面の両面を絶縁樹脂で被覆した長尺のフラットケーブル1の長手方向に、所定の間隔で複数の導体露出部3を設け、この導体露出部3の導体4に電気メッキ施す方法である。長尺のフラットケーブル1の少なくとも1個所の導体露出部3で、露出する複数本の導体4を導電部材10で接続一体化して電気的に接続し、フラットケーブルをメッキ液に浸す。また、導体露出部3の露出する導体4は、導電部材10で接続一体化した部分を切断除去する切断代dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面上に配列された複数本の導体の両面が絶縁材で被覆され、長手方向に複数の導体露出部を有する長尺のフラットケーブルに電気メッキを施す方法及びそれを用いたフラットケーブルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やビデオカメラ等の小型通信機器内の電気配線に用いられるフラットケーブルは、機器内の限られたスペース内で高密度、高信頼性が要求されている。このための配線部材としては、複数本の平形導体を平面上に配列し、その配列面の両面を絶縁樹脂フィルム等で被覆し、両端に電気接続用の端末を形成したフラットケーブルが多用されている。この種のフラットケーブルには、可撓性と導電性に優れた平形銅導体が用いられるが、裸の銅導体のままで使用すると、高温、多湿環境下でマイグレーションが発生しやすく、隣接する導体間の電気絶縁性を低下させ、電気的短絡を発生しやすい。また、裸の銅導体は酸化しやすく絶縁フィルムとの接着性が低下する。このため、通常は、平型銅導体の表面に錫メッキを施したものが用いられている。
【0003】
また、銅導体に電気メッキで錫メッキを施したフラットケーブルは、その両端の端末部分は電気接触のための圧縮応力を受けることに起因して針状結晶体(ホイスカ)が発生する。この端末部分でのホイスカの発生を抑制することと、端末導体と電気コネクタとの電気接続の信頼性を高めるために、端末導体に金メッキを施すことが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−49185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラットケーブルの端末導体に金メッキを施す方法について、上記特許文献1には具体的には開示されていないが、通常は、図3(A)に示すような方法が用いられる。すなわち、両端に端末部分を有するフラットケーブルは、連続形成された長尺のフラットケーブル1の絶縁体2に所定の間隔で導体露出部3を設けておき、長尺のフラットケーブル1は、メッキ液槽5に間欠的に送られて浸漬され、メッキ電源8によりメッキ液に電界を加えることにより、導体露出部3の導体4に順次メッキが施される。そして、この導体露出部3で露出する導体4を分断することにより短尺で単体形状のフラットケーブルとされる。
【0005】
この場合、長尺のフラットケーブル1の導体露出部2で露出する導体4メッキ液槽5の外に出ている部分に電極ローラ6等の給電電極を接触させてメッキ電源8の負電位が与えられ、メッキ金属材7には正電位が与えられる。複数本の導体4は、図3(B)に示すように電極ローラ6等の給電電極に電気的に接触されるように形成されている。しかし、ケーブル繰り出し張力や絶縁体2の樹脂フィルムのラミネート状態によっては、図3(C)に示すように、導体4の配列が湾曲した状態となって、電極ローラ6等の給電電極に接触されない導体が生じる場合がある。また、導体露出部3の露出面積が小さいと、電極ローラ6等の給電電極が導体4に接触されない場合もある。
【0006】
なお、上記の問題を回避するために、導体4の上下両面に電極ローラ6を配して導体4を挟むようにして接触させる方法も考えられるが、電極ローラ6の支持軸が傾いていたりすると、やはり電極ローラ6に接触されない導体が生じる場合があり完全ではない。電極ローラ6に接触しない導体があると、メッキが施されない導体が生じ、電気コネクタとの接続不良やホイスカ発生による電気的短絡が生じやすくなる。
【0007】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、長尺のフラットケーブルの導体露出部に露出する複数本の導体が確実にメッキ電源に接続され、メッキ洩れ導体が生じないフラットケーブルの電気メッキ方法とフラットケーブルの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるフラットケーブルの電気メッキ方法は、複数本の導体を平面上に配列して、導体の配列面の両面を絶縁樹脂で被覆した長尺のフラットケーブルの長手方向に、所定の間隔で複数の導体露出部を設け、この導体露出部の導体に電気メッキ施す方法である。長尺のフラットケーブルの少なくとも1個所の導体露出部で、露出する複数本の導体を導電部材で接続一体化して電気的に接続し、フラットケーブルをメッキ液に浸す。また、前記の導体露出部の露出する導体は、導電部材で接続一体化した部分を切断除去する切断代を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導体露出部に露出する全導体を電気的に接続して、全導体をメッキ電源に確実に接続することができ、フラットケーブルの端末導体にメッキ抜けが生じるのを防止することができる。また、導体に切断代を設けておき、そこに導電部材を接続し、その切断代を除去して導電部材を取り除くことにより、製品を無駄にすることなく、短尺に切断したフラットケーブルの全数を使用可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1により本発明の実施の形態を説明する。図1(A)はフラットケーブルをメッキ液槽で電気メッキする状態を説明する図、図1(B)及び図1(C)は導体露出部の導体を導電部材で接続一体化した状態を示す図である。図中、1は長尺のフラットケーブル、2は絶縁体、3は導体露出部、4は導体、5はメッキ液槽、7はメッキ金属材、8はメッキ電源、9は端末補強テープ、10は導電部材、11は半田剤を示す。
【0011】
本発明によるフラットケーブルの電気メッキ方法は、図1(A)に示すように、メッキ液槽5に、長尺のフラットケーブル1を間欠的に送りこんで浸漬させ、フラットケーブル1の導体露出部3の部分に露出する導体に電気メッキを施している。露出する導体にメッキ金属を付着させるために、少なくとも1個所の導体露出部3で、露出する全導体と交差する導電部材10で接続一体化して電気的に接続する。フラットケーブル1をメッキ液に漬けたときに導電部材10がメッキ液の外に出るときは、導電部材10を電気クリップ等でメッキ電源8の負電位側に接続し、メッキ液に浸したメッキ金属材7をメッキ電源8の正電位側に接続する。導電部材10がメッキ液に漬かる場合は、メッキ液の外に外に出ている導体の何れかをメッキ電源8の負電位側に接続する。
【0012】
長尺のフラットケーブル1は、図1(B)又は図1(C)に示すように、通常、複数本の導体4(例えば、軟銅の丸線を押し潰して断面を平坦にした平型銅導体)を平面上に一列に配列し、その配列面の両面(上下面)を絶縁樹脂等の絶縁体2で被覆されている。また、導体4を裸銅のままで使用すると、高温、多湿下においてマイグレーションが発生しやすく、隣接する導体間の絶縁抵抗を低下させ、電気的短絡を起こしやすい。さらに、裸銅は酸化しやすく絶縁体2で被覆する前に酸化が生じていると絶縁体2と接着性が低下する。このため、通常は、導体表面に錫メッキを施したものが用いられている。
【0013】
複数本の導体4を被覆し絶縁する絶縁体2は、例えば、接着樹脂層を有する絶縁フィルムを導体4の配列面の上下両面からラミネートするか、又は、押出機により導体上に成形することにより形成される。そして、短尺で単体状のフラットケーブルは、前記の長尺のフラットケーブル1の絶縁体2を所定の間隔で除去して導体4を露出させた導体露出部3を形成しておき、この導体露出部3の導体4を分断して形成される。こうして、両端末に導体4が露出したフラットケーブルが得られる。なお、導体露出部3は、例えば、一方の面側の絶縁体を除去し、反対の面側の絶縁体を残して絶縁端部2aとし、ここに端末補強テープ9を接合している。
【0014】
導電部材10は、例えば、断面が丸形又は矩形の棒状体で形成され、導体露出部3から露出する全導体4に交差する十分な長さを有し、半田剤又は導電接着剤を用いて導体4に接続され、全導体を電気的に短絡する。この導電部材10は、全ての導体露出部3に設けなくてもよく、長尺のフラットケーブル1の任意の位置の導電露出部3に設けることでもよい。例えば、図1(A)に示すようにメッキ液槽5に一度に浸漬することができるフラットケーブル長さ毎の導電露出部3(図では、2つおき)に設ける。
【0015】
また、本発明では、隣接して接合される端末補強テープ9間にスペースdを設けておき、このスペース部分では両面の絶縁フィルムを除去し、導電部材10をスペースdの端末補強テープ側部分で半田付け又は導電接着剤で固定するようにしてもよい。スペースd部分は、後に導体露出部3を分断する際に切断除去するもので、切断代として形成される。この構成によれば、導電部材10を固定する半田剤11は、導体4の長手方向い沿って流れようとするが、スペースdの両側の端末補強テープ9のエッジにより半田剤11の流れが止められる。そして、半田剤11が付着した部分は、後に切断除去することで電気接続面となる端末導体としての状態を維持することができ、廃棄することなく製品として使用することができる。
【0016】
この導電部材10は、メッキ液槽5の外部でメッキ電源に接続するが、メッキ液に浸されている部分の導体露出部3に電気メッキが施されるようにするもので、導体4の電気抵抗を考慮してできるだけメッキ液槽5の近くでメッキ電源8に接続されるようにするのが好ましい。また、メッキ液に浸されているケーブル部分の一方の導体露出部3のみにメッキ電源8を接続する例で示したが、メッキ液に浸されているケーブル部分の両側の導体露出部3にメッキ電源8を接続するようにしてもよい。なお、長尺のフラットケーブル1は、メッキ液槽内に連続的に送り込んで浸漬させる他に、メッキ液槽5に収まる程度の長さに分断して浸漬させるようにしてもよい。
【0017】
露出導体部3に施すメッキは、この端末部分でのホイスカの発生を抑制することと、或いは端末導体と電気コネクタとの電気接続の信頼性を高めるためのもので、好ましくは金メッキが施される。ただ、錫メッキ上に直接金メッキを施すと、異種金属接触による電食が生じ、長期の使用に耐えられない恐れがある。このため、下地金属としてニッケルメッキを施してから金メッキを施すようにしてもよい。
【0018】
図2は、上述した長尺のフラットケーブルを、各導体露出部で切断して両側に接続端末12を有する短尺で単体状のフラットケーブル1’とした一例を説明する図である。接続端末12は、図1(A)の方法で電気メッキされた導体露出部3を2つに切断して形成するもので、具体的には、図1(C)の導電部材10を半田付けした切断代(スペースd部分)を除去して形成される。また、実際には導電部材10を接続しなかった導体露出部3についても、切断代を有している場合は同様に切断除去する。
【0019】
単体状のフラットケーブル1’の接続端末12は、導体4の配列面を被覆している絶縁体2の片面側を除去して導体4の片面側を露出し、反対側の絶縁端部2aを残し、この部分に端末補強テープ9を貼り付けた形状となる。片面側が露出された複数本の導体4の露出面は、前述した電気メッキ方法により、確実にメッキ処理された端末導体で形成される。接続端末12は、電気コネクタ13の弾性接触子13aに挿入されて、確実で良好な電気接続を得ることができる。なお、導体4の露出する面は、両端の接続端子で同じ側となる場合もあるが、異なる側となる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の概略を説明する図である。
【図2】本発明によって作製される単体状のフラットケーブルの一例を説明する図である。
【図3】従来技術を説明する図である。
【符号の説明】
【0021】
1…長尺のフラットケーブル、1’…単体状のフラットケーブル、2…絶縁体、2a…絶縁端部、3…導体露出部、4…導体、5…メッキ液槽、6…電極ローラ、7…メッキ金属材、8…メッキ電源、9…端末補強テープ、10…導電部材、11…半田剤、12…接続端末、13…電気コネクタ、13a…弾性接触子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の導体を平面上に配列して、前記導体の配列面の両面を絶縁樹脂で被覆した長尺のフラットケーブルの長手方向に所定の間隔で複数の導体露出部を設け、前記導体露出部の導体に電気メッキを施すフラットケーブルの電気メッキ方法であって、
前記長尺のフラットケーブルの少なくとも1個所の導体露出部で露出する複数本の導体を導電部材で接続一体化して電気的に接続し、前記フラットケーブルをメッキ液に浸すことを特徴とするフラットケーブルの電気メッキ方法。
【請求項2】
前記導体露出部で露出する導体は、前記導電部材で電気的に接続一体化した部分を切断除去する切断代を有していることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブルの電気メッキ方法。
【請求項3】
複数本の導体を平面上に配列して、前記導体の配列面の両面を絶縁樹脂で被覆した長尺のフラットケーブルの長手方向に所定の間隔で複数所の導体露出部を設け、前記導体露出部の導体に電気メッキを施した後、前記導体露出部の導体を切断するフラットケーブルの製造方法であって、
前記長尺のフラットケーブルの少なくとも1個所の導体露出部で、露出する前記複数本の導体を導電部材で接続一体化して電気的に接続し、前記フラットケーブルをメッキ液に浸して前記導体露出部の導体に電気メッキを施すことを特徴とするフラットケーブルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−335176(P2007−335176A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164215(P2006−164215)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】