説明

フラットケーブル

【課題】従来のFPCを用いたフラットケーブル構造よりも、放熱性に優れ、且つ、屈曲性、柔軟性、摺動性を損なわないフレキシブルプリント配線板を用いたフラットケーブルを提供する。
【解決手段】複数枚のフレキシブルプリント配線板2を重ねて形成されるフラットケーブルであって、複数枚のフレキシブルプリント配線板2間に金属箔3を介在させ、金属箔3がフラットケーブル1の端部でそれを挟んでいるフレキシブルプリント配線板2と補強板4で固定されてなるフラットケーブル1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器、電子機器等の配線のために使用される、複数枚のフレキシブルプリント配線板を重ね合わせて形成されるフラットケーブルに係り、特に、フレキシブルプリント配線板間に金属箔を介在させてなるフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械・機器、自動車、航空機の機械・機器内(間)の電気配線システムとして、接続に使用されるケーブルの構成は、ワイヤーハーネス、FFC(フレキシブルフラットケーブル)が多用されているが、電線を束ねるワイヤーハーネスでは、軽量化・省スペース化、接続の単純化に限界をもつ。また、FFCは、軽量化・省スペース化には対応可能であるが、1本当たりの芯数(配線数)は少なく分岐が困難な上、部品実装もできない。
【0003】
そのような中で、軽量化・省スペース化、単純化、高機能化が可能なフレキシブルプリント配線板(FPC)を用いた長尺タイプのケーブルが検討されてきている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−251958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記フレキシブルプリント配線板(FPC)を用いた長尺タイプのケーブルは複数枚を重ね合わせて用いる場合が多く、その場合各枚層間に配線板から発生した熱による温度上昇が問題になっている。その放熱対策のため、放熱層をもつ構造がいくつか検討されているようであるが、使用時の摺動に対して優れた信頼性を含め問題点は多い。
【0005】
そこで、本発明は、従来のFPCを用いたフラットケーブル構造よりも、放熱性に優れ、且つ、屈曲性、柔軟性、摺動性を損なわないフレキシブルプリント配線板を用いたフラットケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、ケーブルにおける各フレキシブルプリント配線板間に金属箔を介在させることにより、近傍の回路から発生する発熱による温度上昇を低減させることができ、且つ、屈曲性、摺動性を損なわずに構成させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明のフラットケーブルは、複数枚のフレキシブルプリント配線板を重ねて形成されるフラットケーブルであって、複数枚のフレキシブルプリント配線板間に金属箔を介在させてなることを特徴とするものである。
【0008】
また、このとき、フレキシブルプリント配線板間に介在させる金属箔は、厚さが18〜105μmの銅箔であることが好ましく、さらに、金属箔がこのフラットケーブルの端部で固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフラットケーブルは、放熱性に優れるためケーブル自体の温度上昇を抑え、それでいて、屈曲性や摺動性等の特性も従来のものと比較して同程度であるため、製品信頼性に優れたフラットケーブルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のケーブルについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のフラットケーブルの一例となる実施形態を示した図であり、図2は、図1におけるA−A断面図である。
【0011】
本発明のフラットケーブル1は、図1に示したように両面に導電層を有するフレキシブルプリント配線板2の複数枚と、その複数枚のフレキシブルプリント配線板2の間に金属箔3を介在させてなるものであり、ここでは、金属箔3がフラットケーブル1の端部でそれを挟んでいるフレキシブルプリント配線板2と補強板4で固定され、このケーブル端部はコネクタ5により、他の装置等と接続できるようになっている。そして、補強板を介してフレキシブルプリント配線板と金属箔が端部で接合するようになっているものである。
【0012】
図1においては、2枚の両面フレキシブルプリント配線板2で金属箔3を挟み込むケーブル構造になっているが、必要とされるフレキシブルプリント配線板間に金属箔がはいる構造であれば、回路の形成面が片面・両面のいずれでもよく、また、用いるフレキシブルプリント配線板の枚数に限定はない。なお、金属箔は端部コネクタ接続部以外に、相対するフレキシブルプリント配線板に接点を設けるようにしても良い。図1では、フレキシブルプリント配線板2と金属箔3の間は空隙となっている。
【0013】
本発明に用いられるフレキシブルプリント配線板2は、汎用の2層タイプ又は3層タイプの銅張板及びカバーレイを用いて製造されるものであって、特に限定されるものではない。このフレキシブルプリント配線板は、本発明のフラットケーブル1の本体として、コネクタ接続時には屈曲して用いることができるものである。
【0014】
このフレキシブルプリント配線板2は、例えば、基板2aと、その両面に配線2bが形成され、配線2bには防汚、防錆、耐屈曲性を向上させるためにカバーレイフィルム2cが貼り付けられて構成されている。
【0015】
そして、ここで用いる金属箔3は、フレキシブルプリント配線板2の放熱板として機能するものであれば特に制限なく用いることができ、銅、銀等が挙げられる。なかでも、熱伝導性、屈曲性、コストの観点より、銅箔であることが好ましい。このとき銅箔としては、これまでフレキシブルプリント配線板で用いられている汎用の電解銅箔、圧延銅箔を用いればよい。
【0016】
ここで用いる金属箔3の厚さは、18μm以上105μm以下あることが好ましい。18μm未満であると、放熱性の効果が小さく、また動作中の箔のシワ、破れ等の強度が十分にとれない可能性があり、厚さが105μmを超えると、屈曲性が不十分となる可能性があるためである。
【0017】
また、本発明のフラットケーブル1の端部には後述するようにコネクタ5を形成するものであるが、この端部には、フラットケーブルのコネクタ接続を容易にするために補強板4が設けられている。
【0018】
補強板4が用いられることで、フレキシブルプリント配線板2と金属箔3との間に空隙が形成されるが、これはフレキシブルプリント配線板2の放熱効果を妨げるものではないため問題はなく、放熱及び屈曲性を阻害しないものであれば他の部材を設けて空隙を生じないように形成しても良い。
【0019】
本発明に用いる補強板4の材質は、例えば、ポリイミドフィルム、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリエーテルニトリルフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルムやガラスエポキシ等の繊維強化プラスチック(FRP)等が上げられる。
【0020】
次に、本発明の端部に形成されるコネクタ5について説明するが、これは、電子機器等が有するコネクタに挿脱自在とし、例えば、電子機器同士を本発明のフラットケーブルにより接続することができるように構成されたものである。
【0021】
このコネクタ5は、そのフレキシブルプリント配線板2の導電層である金属箔2bを露出した構造となり、ここがコネクタ端子と接合することで導通するようになっている。コネクタ接続部以外のフレキシブルプリント配線板2の本体部分はカバーレイ2cにより保護されている。
【0022】
そして、このコネクタ5は、コネクタの挿脱を容易とするように補助するための補強板4をフレキシブルプリント配線板2、金属箔3に積層して接着し、金属箔3をフラットケーブルの端部で固定するように設けていることが好ましく、さらに、フレキシブルプリント配線板2及び金属箔3の間にそれぞれ補強板4を積層し、金属箔3を隣接するフレキシブルプリント配線板2と接着して固定することが、コネクタケーブル端部の断裂を防止するために特に好ましい。
【0023】
そして、図2は、図1のフラットケーブルにおけるA−A断面図であるが、このとき、フレキシブルプリント配線板2で生じた熱は、フラットケーブルの上下両面の熱はケーブル表面から放熱し、複数枚のフレキシブルプリント配線板2の間で生じた熱は金属箔3を伝ってケーブルの左右から放熱することができるようになっている。つまり、図2に示したように矢印方向に熱が流れて空気中に放熱し、フラットケーブルが高熱になるのを防ぐことができるのである。
【0024】
上記の実施形態では2枚のフレキシブルプリント配線板を重ねた場合を例示したが、3枚以上のフレキシブルプリント配線板を重ねてフラットケーブルを構成してもよく、この場合には、フレキシブルプリント配線板間の少なくとも1箇所に金属箔を介在させていれば、フラットケーブルの放熱性を向上させることができるが、より放熱性を高めることができる点から各フレキシブルプリント配線板間に金属箔を介在させることが好ましい。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
京セラケミカル株式会社製の片面フレキシブル銅張板(商品名:TLF−521GR−70/25)を用い、導体幅6mm、導体間隔1.5mm、長さ1000mmで5往復し幅方向に10本の配線がある構造にし、京セラケミカル株式会社製カバーレイ(商品名:TFA−577KH−2540)を貼り合わせフレキシブルプリント配線板1を製造した。
【0027】
得られたフレキシブルプリント配線板1を2枚重ね合わせる際に、フレキシブルプリント配線板間に70μmの銅箔を挟みフラットケーブル1を製造した。
なお、このときフラットケーブルの平面側から見た導体の構造の模式図を図3に示した。
【0028】
(実施例2)
2枚のフレキシブルプリント配線板1の間に挟み込む銅箔を、18μmの銅箔に代えた以外は実施例1と同様の操作によりフラットケーブル2を製造した。
【0029】
(実施例3)
2枚のフレキシブルプリント配線板1の間に挟み込む銅箔を、105μmの銅箔に代えた以外は実施例1と同様の操作によりフラットケーブル3を製造した。
【0030】
(比較例1)
京セラケミカル株式会社製の片面フレキシブル銅張板TLF−521GR−70/25を用い導体幅6mm、導体間隔1.5mm、長さ1000mmで5往復し幅方向に10本の配線がある構造にし、京セラケミカル株式会社製カバーレイTFA−577KH−2540を張り合わせフレキシブルプリント配線板1を製造した。
得られたフレキシブルプリント配線板1に銅箔を挟み込むことなく2枚重ね、フラットケーブル4を製造した。
【0031】
(比較例2)
AWG17のケーブルを用い長さ1000mmで5往復し幅方向に10本の配線がある構造のフラットケーブル5を製造した。
【0032】
(比較例3)
京セラケミカル株式会社製の片面フレキシブル銅張板(商品名:TLF−521GR−70/25)を用い導体幅6mm、導体間隔1.5mm、長さ1000mmで5往復し幅方向に10本の配線がある構造にし、京セラケミカル株式会社製カバーレイ(商品名:TFA−577KH−2540)を張り合わせた後、さらにその上に市販の放熱シート電気化学工業社製BFG45(45μm品)を張り合わせてフレキシブルプリント配線板2を製造した。
得られたフレキシブルプリント配線板を2枚重ね、フラットケーブル6を製造した。
【0033】
(試験例)
実施例、比較例で製造したフラットコネクタケーブルについて、屈曲性およびケーブルの温度上昇を確認した。その結果を表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
[試験方法]
1.屈曲性試験 IPC法により測定
屈曲半径:2.5〜10mm
ストローク:25mm
サイクル:1000回/分
なお、×は測定不可であることを示した。
2.温度上昇 室温23℃の恒温室において実施例および比較例で製造したフラットケーブルに10Aの電流を印加したときのフラットケーブル表面の温度上昇を、熱電対を用い測定した。
【0036】
この結果から、本発明のフラットケーブルが、フレキシブルプリント板により発生する熱を、ケーブル内部に溜めることなく上手く放出し、内部温度を下げる機能を有しており、かつ、その屈曲性にも優れたものであることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のフラットケーブルの概略構成図である。
【図2】図1のフラットケーブルにおけるA−A断面図である。
【図3】フラットケーブルの平面側から見た導体の構造の模式図である。
【符号の説明】
【0038】
1…フラットケーブル、2…フレキシブル配線板、2a…基板、2b…銅箔、2c…カバーレイフィルム、3…金属箔、4…補強板、5…コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のフレキシブルプリント配線板を重ねて形成されるフラットケーブルであって、
前記複数枚のフレキシブルプリント配線板間に金属箔を介在させてなることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
前記金属箔が、厚さ18〜105μmの銅箔であることを特徴とする請求項1記載のフラットケーブル。
【請求項3】
前記金属箔が、前記フラットケーブルの端部で固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載のフラットケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate