説明

フラットパネルディスプレイ部材形成用組成物

【課題】優れた塗布特性と保存安定性を有するフラットパネルディスプレイ、特にプラズマディスプレイパネルの部材を形成するための組成物を提供する。
【解決手段】(A)無機粉体、(B)結着樹脂、および(C)下記構造式(1)で示される化合物を含有する組成物とする。(C)成分は、(A)成分100重量部に対して1〜30重量部含有され、(A)成分としては鉛ガラスや硼珪酸塩ガラス、アルミノ珪酸塩ガラスなどの粉末が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットパネルディスプレイ部材を形成するための材料に関する。
【背景技術】
【0002】
最近において、平板状の蛍光表示体としてフィールドエミッションディスプレイ(以下、「FED」ともいう。)やプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」ともいう。)のようなフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」ともいう。)が注目されている。図1は交流型のPDPの断面形状を示す模式図である。同図において、1及び2は、対向配置されたガラス基板、3は隔壁であり、ガラス基板1、ガラス基板2及び隔壁3によりセルが区画形成されている。4はガラス基板1に固定されたバス電極、5はガラス基板2に固定されたアドレス電極、6はセル内に保持された蛍光物質、7はバス電極4を被覆するようガラス基板1の表面に形成された誘電体層、8は例えば酸化マグネシウムよりなる保護膜である。誘電体層7はガラス焼結体より形成され、その膜厚は例えば20〜50μmとされる。
【0003】
このようなFPD部材の代表的な形成方法として、無機粉末を、結着樹脂を溶剤に溶解したバインダーと混練等することにより得られたペースト状組成物を塗布乾燥し、形成する部材に応じてパターン形成等を行った後に焼成して形成する方法がある。ペーストの塗布方法としては、スクリーン印刷法、ダイコート法等が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような塗布工程に適した組成物に求められるペースト粘度は1,000mPa・s〜500,000 mPa・sと高いものである。このような粘度を実現する為には結着樹脂の含有量を高くすることが考えられる。しかしながら、結着樹脂の含有量を高くすると、焼成工程において燃焼性が悪化し、良好なFPD部材が得られないという問題がある。特に誘電体においては、結着樹脂が燃焼する際の熱エネルギーの増大によって、誘電体ガラスとその誘電体ガラスに接触している電極の主成分である銀との反応が促進され、誘電体層が変色し、誘電体層の透明度が悪化して表示品質を悪化させるという課題がある。
【0005】
さらには、保存安定性の観点から、FPD用部材形成用組成物には、経時で無機粉末の凝集や沈降の発生または組成物中に濃度勾配が生じないことが求められている。
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものである。本発明の第1の目的は、塗布工程において優れた塗布性を有するFPD部材形成用組成物を提供することにある。本発明第2の目的は、保存安定性に優れたFPD部材形成用組成物組成物を提供することにある。本発明のさらなる目的は、下記説明で明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、(A)無機粉体、(B)結着樹脂、および(C)下記構造式(1)で示される化合物(以下、「特定添加剤」ともいう。)を含有することを特徴とするFPD部材形成用組成物によって上記課題を解決することができることを見出した。
【0008】
【化1】

【0009】
〔上記式(1)中、Rは1価の有機基を示す。〕
【0010】
上記特定添加剤としては、上記式(1)中、Rが下記式(2)で表される構造、または下記式(3)で表される構造を有する有機基であることが好ましい。
【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、優れた塗布性・保存安定性を有し、良好なFPD部材を形成することができるFPD部材形成用組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[FPD部材形成用組成物組成物]
以下、本発明の無機粉体含有組成物(以下、単に「組成物」ともいう)について詳細に説明する。本発明の組成物は、(A)無機粉体、(B)結着樹脂、および(C)特定の構造式で示される化合物を必須成分として含有する。
【0015】
[無機粉体(A)]
本発明の組成物に用いられる無機粉体(A)は、形成するパネル部材の種類によって異なる。以下、パネル部材の種類ごとに説明する。
誘電体形成材料および隔壁形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、ガラス粉体、好ましくは軟化点が400〜600℃のガラス粉体が挙げられる。
ガラス粉体の軟化点が400℃未満である場合には、無機粉体含有樹脂層の焼成工程において、結着樹脂などの有機物質が完全に分解除去されない段階でガラス粉体が溶融してしまうため、形成される部材中に有機物質の一部が残留することがあり、得られるFPD内にアウトガスが拡散する結果、蛍光体の寿命を低下させるおそれがある。一方、ガラス粉体の軟化点が600℃を超える場合には、無機粉体含有樹脂層を600℃より高温で焼成する必要があるため、該樹脂層の被転写体であるガラス基板に歪みなどが発生することがある。
上記ガラス粉体の好適な具体例としては、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化カルシウム(PbO−B−SiO−CaO)系;
酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(ZnO−B−SiO)系;
酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化アルミニウム(PbO−B−SiO−Al)系;
酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(PbO−ZnO−B−SiO)系;
酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素および酸化チタン(PbO−ZnO−B−SiO−TiO)系;
酸化ビスマス、酸化ホウ素および酸化ケイ素(Bi−B−SiO)系などを挙げることができる。
上記ガラス粉体の平均粒子径は、0.5〜2.5μmであることが好ましい。また、上記ガラス粉体には、たとえば、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化セリウムおよび酸化コバルトなどの無機酸化物を混合して使用してもよい。混合する無機酸化物の含有量は、無機粉体全量(ガラス粉体+無機酸化物)の40重量%以下であることが好ましい。
電極形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、Ag、Au、Al、Ni、Ag-Pd合金、Cu、CrおよびCoなどを挙げることができる。
抵抗体形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、RuOなどを挙げることができる。
蛍光体形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、
:Eu3+ 、YSiO:Eu3+、YAl12:Eu3+、YVO:Eu3+、(Y,Gd)BO:Eu3+、Zn(PO:Mnなどの赤色用蛍光体;
ZnSiO:Mn、BaAl1219:Mn、BaMgAl1423:Mn、LaPO:(Ce,Tb)、Y(Al,Ga)12:Tbなどの緑色用蛍光体;
SiO:Ce、BaMgAl1017:Eu2+、BaMgAl1423:Eu2+、(Ca,Sr,Ba)10(PO12:Eu2+、(Zn,Cd)S:Agなどの青色用蛍光体などを挙げることができる。
カラーフィルター形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、
Fe、Pb、CdS、CdSe、PbCrO、PbSO、Fe(NOなどの赤色用顔料;
Cr、TiO−CoO−NiO−ZnO、CoO−CrO−TiO−Al、Co(PO、CoO−ZnOなどの緑色用顔料;
2(AlNaSi10)・Na、CoO−Alなどの青色用顔料のほか、色補正用の無機顔料として、PbCrO−PbSO、PbCrO、PbCrO−PbO、CdS、TiO−NiO−Sbなどの黄色顔料;
Pb(Cr−Mo−S)Oなどの橙色顔料;
Co(POなどの紫色顔料を挙げることができる。
ブラックマトリックス形成材料に用いられる無機粉体としては、たとえば、Mn、Fe、Cr、Ni、Coおよびこれらの酸化物および複合酸化物などを挙げることができる。
なお、上記電極、抵抗体、蛍光体、カラーフィルターおよびブラックマトリックスの形成材料には、上述した無機粉体に加えて、隔壁形成材料および誘電体形成材料に用いるガラス粉体を併用してもよい。
一例を示せば、電極については、併用するガラス粉体の含有割合は、無機粉体全量の30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることが特に好ましい。
【0016】
<(B)結着樹脂>
本発明の組成物を構成する結着樹脂(B)はアクリル樹脂であることが好ましい。本発
明のFPD部材形成用組成物が、結着樹脂(B)としてアクリル樹脂を含有することにより、該ペーストは流動特性や塗布性に優れる。
上記アクリル樹脂としては、適度な粘着性を有して無機粉体を結着させることができ、無機粉体含有樹脂層の焼成処理(400℃〜600℃)によって完全に酸化除去される(共)重合体であることが望ましい。
【0017】
このようなアクリル樹脂としては、下記一般式(4)で表される(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、下記一般式(4)で表される(メタ)アクリレート化合物を2種以上含む共重合体、および、下記一般式(4)で表される(メタ)アクリレート化合物と共重合性単量体との共重合体が含まれる。
【0018】
【化4】

【0019】
(式(4)中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は1価の有機基を示す。)
【0020】
上記一般式(4)で表される(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、より具体的な例を以下に示す。
【0021】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0022】
上記フェノキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−プロポキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートとしては、たとえば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記シクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0023】
これらの中では、上記一般式(4)中のR2 で示される基が、アルキル基またはオキシアルキレン基を含有する基であることが好ましく、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物として、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートおよび2−エトキシエチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
他の共重合性単量体としては、上記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物ならば特に制限はないが、たとえば、(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マイレン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物が挙げられる。
本発明の組成物を構成するアクリル樹脂における、上記一般式(4)で表される(メタ)アクリレート化合物由来の共重合成分は、通常70重量%以上、好ましくは90重量%以上である。
好ましいアクリル樹脂の具体例としては、ポリエチルメタクリレート、ポリn−ブチルメタクリレート、ポリi−ブチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0024】
また、無機粉体含有樹脂層をエッチング処理する際に該樹脂層がアルカリ可溶性であることが必要な場合には、上記他の共重合性単量体(共重合成分)として不飽和カルボン酸類を含有することが好ましい。
【0025】
本発明の組成物を構成する結着樹脂(B)の分子量は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」または「Mw」ともいう)で、5,000〜5,000,000、好ましくは10,000〜500,000である。
上記結着樹脂(B)は、無機粉体(A)100重量部に対して、3〜50重量部、好ましくは5〜30重量部の範囲の量で用いられる。結着樹脂の量が過小である場合には、適度な粘度および粘着性が得られず無機粉体を確実に結着保持することができないことがあり、一方、過大である場合には、焼成工程において燃焼性が悪化し、良好なFPD部材が得られないことがある。また、ペーストが強粘性を呈してしまうために、フィルターの目詰まりなど濾過不良が起こることがある。また、ペースト塗布時の塗布すじや塗布むらが発生し易く、取扱いし難くなり、ペースト材料の損失も発生し易くなる。
【0026】
<(C)特定添加剤>
本発明の組成物において特定添加剤(C)は、上記式(1)で表される化合物である。前記(C)化合物は、樹脂との相溶性が良好であり、樹脂の溶解性が高く、ペーストのレオロジー特性を大きく変える事なく粘度の調節が可能であり、ペースト溶剤または添加剤に求められる種々の特性を満たしている。また、室温(25℃)で非常に高粘度を示すが、60℃程度まで加熱した場合、温度の上昇に伴い急激に低粘度に変化する粘度特性を有している。
したがって前記(C)化合物を用いることでFPD部材形成用組成物の粘度コントロールが可能で、結着樹脂成分減量が可能である。
【0027】
当該特定添加剤(C)としては、上記式(1)で表される化合物を用いることができる。このような化合物の内、下記式(5)で表される化合物が好ましい。上記式(1)または下記式(5)で表される化合物の内、Rは上記式(2)で表されるもの、若しくは上記式(3)で表されるものが好ましい。このような化合物の具体例としては、イソボルニルシクロヘキサノールやイソボルニルフェノールを挙げることができる。
【0028】
【化5】

【0029】
特定添加剤(C)は、無機粉体(A)100重量部に対して、通常、1〜30重量部、好ましくは3〜20重量部の量で用いられる。特定添加剤(C)の量が上記範囲よりも少ないと、適度な粘度および粘着性が得られず無機粉体を確実に結着保持することができないことがある。また、特定添加剤(C)の量が上記範囲よりも多いと、ペーストが強粘性を呈してしまうために、フィルターの目詰まりなど濾過不良が起こることがある。また、ペースト塗布時の塗布すじや塗布むらが発生し易く、取扱いし難くなり、ペースト材料の損失も発生し易くなる。
【0030】
<感光性成分>
本発明の組成物は、多官能性(メタ)アクリレート(E1)および放射線重合開始剤(E2)を含有する感光性組成物であってもよい。多官能性(メタ)アクリレート(E1)は露光により重合し、露光部分をアルカリ不溶性またはアルカリ難溶性にする性質を有する。
【0031】
<(E1)多官能性(メタ)アクリレート>
上記多官能性(メタ)アクリレート(E1)としては、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート類;両末端ヒドロキシポリブタジエン、両末端ヒドロキシポリイソプレン、両末端ヒドロキシポリカプロラクトンなどの両末端ヒドロキシル化重合体のジ(メタ)アクリレート類;グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールアルカン、テトラメチロールアルカン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類;3価以上の多価アルコールのポリアルキレングリコール付加物のポリ(メタ)アクリレート類;1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ベンゼンジオール類などの環式ポリオールのポリ(メタ)アクリレート類;ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等のオリゴ(メタ)アクリレート類などを挙げることができる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、トリメチロールプロパントリアクリレートが特に好ましく用いられる。
上記多官能性(メタ)アクリレート(E1)の分子量としては100〜2,000であることが好ましい。
【0032】
上記多官能性(メタ)アクリレート(E1)は、無機粉体(A)100重量部に対して、通常5〜50重量部、好ましくは10〜40重量部の範囲の量で用いられる。
【0033】
<(E2)放射線重合開始剤>
本発明で用いることができる放射線重合開始剤(E2)としては、たとえば、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、カンファーキノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−〔4’−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−エタン−1−オンオキシム−O−アセタートなどのカルボニル化合物;アゾイソブチロニトリル、4−アジドベンズアルデヒドなどのアゾ化合物あるいはアジド化合物;メルカプタンジスルフィドなどの有機硫黄化合物;ベンゾイルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、パラメタンハイドロパーオキシドなどの有機パーオキシド;1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−(2−フラニル)エチレニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのトリハロメタン類;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル1,2’−ビイミダゾールなどのイミダゾール二量体などが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記放射線重合開始剤(E2)は、上記多官能性(メタ)アクリレート(E1)100重量部に対して、通常0.1〜50.0重量部、好ましくは1.0〜30.0重量部の範囲の量で用いられる。
【0035】
<その他の成分>
本発明の組成物は、有機シラン化合物をさらに含有してもよい。このような有機シラン化合物としては、下記一般式(6)で表される飽和アルキルアルコキシシランおよび一般式(7)で表わされるシランカップリング剤が挙げられる。
【0036】
【化6】

【0037】
〔上記式(6)中、pは3〜20、好ましくは4〜16の整数、mは1〜3の整数、nは1〜3の整数、aは1〜3の整数である。〕
【0038】
【化7】

【0039】
〔上記式(7)中、Rはメチレン基または炭素数2〜100のアルキレン基を表し、Yはビニル基、エポキシ基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基またはアミノ基を表し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を表し、Xは加水分解性基を表し、rは0から3の整数である。〕
【0040】
上記一般式(5)において、pの値が3未満の飽和アルキルアルコキシシランを用いると、得られる無機粉体含有樹脂層において十分な可撓性が発現されない場合がある。一方、上記pの値が20を超える飽和アルキルアルコキシシランは分解温度が高いため、無機粉体含有樹脂層の焼成工程において、有機物質(前記シラン誘導体)が完全に分解除去されない段階でガラス粉体が溶融してしまい、形成されるFPD部材中に有機物質の一部が残留する場合がある。
【0041】
上記一般式(5)で表される飽和アルキルアルコキシシランとして用いられるシラン類の具体例を以下に示す。
飽和アルキルジメチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=1)としては、たとえば、n−プロピルジメチルメトキシシラン、n−ブチルジメチルメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシランおよびn−イコサンジメチルメトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジエチルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=2)としては、たとえば、n−プロピルジエチルメトキシシラン、n−ブチルジエチルメトキシシラン、n−デシルジエチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルメトキシシランおよびn−イコサンジエチルメトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジプロピルメトキシシラン類(a=1,m=1,n=3)としては、たとえば、n−ブチルジプロピルメトキシシラン、n−デシルジプロピルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルメトキシシランおよびn−イコサンジプロピルメトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジメチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=1)としては、たとえば、n−プロピルジメチルエトキシシラン、n−ブチルジメチルエトキシシラン、n−デシルジメチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルエトキシシランおよびn−イコサンジメチルエトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジエチルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=2)としては、たとえば、n−プロピルジエチルエトキシシラン、n−ブチルジエチルエトキシシラン、n−デシルジエチルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルエトキシシランおよびn−イコサンジエチルエトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジプロピルエトキシシラン類(a=1,m=2,n=3)としては、たとえば、n−ブチルジプロピルエトキシシラン、n−デシルジプロピルエトキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルエトキシシランおよびn−イコサンジプロピルエトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジメチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=1)としては、たとえば、n−プロピルジメチルプロポキシシラン、n−ブチルジメチルプロポキシシラン、n−デシルジメチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルプロポキシシランおよびn−イコサンジメチルプロポキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジエチルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=2)としては、たとえば、n−プロピルジエチルプロポキシシラン、n−ブチルジエチルプロポキシシラン、n−デシルジエチルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジエチルプロポキシシランおよびn−イコサンジエチルプロポキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルジプロピルプロポキシシラン類(a=1,m=3,n=3)としては、たとえば、n−ブチルジプロピルプロポキシシラン、n−デシルジプロピルプロポキシシラン、n−ヘキサデシルジプロピルプロポキシシランおよびn−イコサンジプロピルプロポキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルメチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=1)としては、たとえば、n−プロピルメチルジメトキシシラン、n−ブチルメチルジメトキシシラン、n−デシルメチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジメトキシシランおよびn−イコサンメチルジメトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルエチルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=2)としては、たとえば、n−プロピルエチルジメトキシシラン、n−ブチルエチルジメトキシシラン、n−デシルエチルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジメトキシシランおよびn−イコサンエチルジメトキシシランなどが挙げられている。
飽和アルキルプロピルジメトキシシラン類(a=2,m=1,n=3)としては、たとえば、n−ブチルプロピルジメトキシシラン、n−デシルプロピルジメトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジメトキシシランおよびn−イコサンプロピルジメトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルメチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=1)としては、たとえば、n−プロピルメチルジエトキシシラン、n−ブチルメチルジエトキシシラン、n−デシルメチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジエトキシシランおよびn−イコサンメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルエチルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=2)としては、たとえば、n−プロピルエチルジエトキシシラン、n−ブチルエチルジエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシランおよびn−イコサンエチルジエトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルプロピルジエトキシシラン類(a=2,m=2,n=3)としては、たとえば、n−ブチルプロピルジエトキシシラン、n−デシルプロピルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジエトキシシランおよびn−イコサンプロピルジエトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルメチルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=1)としては、たとえば、n−プロピルメチルジプロポキシシラン、n−ブチルメチルジプロポキシシラン、n−デシルメチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルメチルジプロポキシシランおよびn−イコサンメチルジプロポキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルエチルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=2)としては、たとえば、n−プロピルエチルジプロポキシシラン、n−ブチルエチルジプロポキシシラン、n−デシルエチルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジプロポキシシランおよびn−イコサンエチルジプロポキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルプロピルジプロポキシシラン類(a=2,m=3,n=3)としては、たとえば、n−ブチルプロピルジプロポキシシラン、n−デシルプロピルジプロポキシシラン、n−ヘキサデシルプロピルジプロポキシシランおよびn−イコサンプロピルジプロポキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルトリメトキシシラン類(a=3,m=1)としては、たとえば、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシランおよびn−イコサントリメトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルトリエトキシシラン類(a=3,m=2)としては、たとえば、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシランおよびn−イコサントリエトキシシランなどが挙げられる。
飽和アルキルトリプロポキシシラン類(a=3,m=3)としては、たとえば、n−プロピルトリプロポキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシランおよびn−イコサントリプロポキシシランなどが挙げられる。
【0042】
上記一般式(6)で表されるシランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルトリアセトキシシランなどのビニル基含有シラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよび3−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのアミノ基含有シラン化合物;
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基含有シラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランおよび2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有シラン化合物などが挙げられる。
上記有機シラン化合物(E)は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記シラン類の中では、n−ブチルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−デシルジメチルメトキシシラン、n−ヘキサデシルジメチルメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−デシルエチルジエトキシシラン、n−ヘキサデシルエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリプロポキシシラン、n−デシルトリプロポキシシラン、n−ヘキサデシルトリプロポキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
上記有機シラン化合物(E)は、無機粉体(A)100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは0.001〜5質量部の量で用いられる。有機シラン化合物(E)の量が過大である場合には、無機粉体含有樹脂組成物を保存する際に粘度が経時的に上昇したり、有機シラン化合物同士で反応が起こり、形成するパネル部材の焼成後に不具合を生ずる原因になったりする場合がある。
【0043】
また、本発明の組成物は、任意成分として、上記シランカップリング剤以外の分散剤、現像促進剤、接着助剤、ハレーション防止剤、レベリング剤、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、連鎖移動剤などの各種添加剤を含有してもよい。
【0044】
<溶剤>
本発明の組成物は、通常、溶剤を含有する。このような溶剤としては、無機粉体との親和性、結着樹脂の溶解性が良好で、組成物に適度な粘性を付与することができるとともに、後述する無機粉体含有樹脂層の形成工程において乾燥処理することにより容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。このような溶剤として、テルペン類(上記特定添加剤に該当するものを除く)、ケトン類、アルコール類およびエステル類(以下、これらを「特定溶剤」という。)を挙げることができる。
【0045】
上記特定溶剤としては、たとえば、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、1−ヒドロキシ−p−メンタン、8−ヒドロキシ−p−メンタン、p−メンタン−1−イル−アセテート、p−メンタン−8−イル−アセテート、ターピニルオキシエタノール、ジヒドロターピニルオキシエタノール、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテルなどのテルペン類、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールジアルキルエーテルアセテート類、酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類、乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノールを含むアルコール類などを挙げることができる。
これらの中では、α−テルピネオール、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、1−ヒドロキシ−p−メンタン、8−ヒドロキシ−p−メンタン、p−メンタン−1−イル アセテート、p−メンタン−8−イル アセテート、およびこれらの混合物などが好ましい。
これらの特定溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
上記溶剤は組成物の粘度を好適な範囲に維持する観点から、無機粉体(A)100重量部に対して通常5〜60重量部、好ましくは10〜50重量部の範囲で用いられる。また、全溶剤に対する特定溶剤の割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
【0047】
本発明のFPD部材形成用組成物は、上記無機粉体(A)、結着樹脂(B)、特定添加剤(C)、溶剤および必要に応じて用いられるその他の成分を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、サンドミルなどの混練・分散機を用いて混練することにより調製することができる。なお、特定添加剤(C)は、あらかじめ溶剤に溶解または分散したものを混練してもよい。本発明の組成物の粘度は通常1,000〜500,000mPa・s、好ましくは5,000〜100,000mPa・sである。
【0048】
<FPD部材形成用組成物の調整>
本発明のFPD部材形成用組成物は、上記の無機粉体、結着樹脂、特定添加剤、および溶剤と必要に応じて上記任意成分を、さらに、組成物に感光性を付与する場合には上記各成分に加えて光重合性モノマー、光重合開始剤を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミルなどの混練機を用いて均質に分散させ、混練することにより調製することができる。
【0049】
上記のようにして調製されるFPD部材形成用組成物は、従来において公知の膜形成材料層の形成方法、すなわち、スクリーン印刷法やダイコート法などによって当該組成物をガラス基板の表面に直接塗布し、塗膜を乾燥することにより膜形成材料層を形成する方法において最も好適に使用することができる。
【0050】
上記のようにして調製されるFPD部材形成用組成物は、塗布に適した流動性を有するペースト状の組成物である。
【0051】
<FPD用部材の製造方法>
本発明のFPD用部材の形成方法としては、
(I)本発明のFPD部材形成用組成物により基板上に無機粉体含有樹脂層を形成する工程、
(II)上記無機粉体含有樹脂層を焼成する工程
(以下、「FPD用部材の製造方法(a)」ともいう。)または、
(i)本発明のFPD部材形成用組成物により基板上に無機粉体含有樹脂層を形成する工程、
(ii)上記無機粉体含有樹脂層に露光してパターンの潜像を形成する工程
(iii)パターンの潜像を現像してパターンを形成する工程
(iv)上記パターン層を焼成する工程
を有する(以下「FPD用部材の製造方法(b)」ともいう。)。以下に、各工程について説明する。
【0052】
[FPD用部材の形成方法(a)]
(I)無機粉体含有樹脂層の形成工程
無機粉体含有樹脂層は、本発明のFPD部材形成用組成物を基板上に塗布することによって形成することができる。
【0053】
FPD部材形成用組成物の塗布方法としては、スクリーン印刷法、ダイコート法、ロール塗布法、回転塗布法、流延塗布法など種々の方法が挙げられ、本発明のFPD部材形成用組成物を塗布したあと、塗膜を乾燥する方法により、無機粉体含有樹脂層を形成することができる。なお、上記工程をn回繰り返すことでn層の積層体を形成してもよい。
【0054】
塗膜の乾燥方法として、例えば熱風乾燥法、赤外(IR)乾燥法などを利用することができるが、効率良く乾燥できて均質な無機粉体含有樹脂層を形成できる方法であれば良く、これら上記の方法に限定するものではない。乾燥条件としては、例えば50〜150℃で0.5〜30分間程度であり、乾燥後における溶剤の残存割合(無機粉体含有樹脂層中の含有率)は、通常2質量%以内である。
【0055】
上記のようにしてガラス基板上に形成される無機粉体含有樹脂層の厚さとしては、無機粉体の含有率やサイズなどによっても異なるが、例えば5〜40μmである。
【0056】
(II)焼成工程
無機粉体含有樹脂層を焼成処理して、無機粉体含有樹脂層の残留部における有機物質を焼失させる。この工程により、無機粉体含有樹脂層からFPD部材が形成される。
ここに、焼成処理の温度としては、無機粉体含有樹脂層(残留部)中の結着樹脂などの有機物質を燃焼させて分解除去される温度であることが必要であり、通常、400〜600℃である。また、焼成時間は、通常10〜90分間である。
【0057】
[FPD用部材の製造方法(b)]
(i)無機粉体含有樹脂層の形成工程
本工程は上記FPD用部材の製造方法(a)と同様に行うことができる。
【0058】
(ii)露光工程
無機粉体含有樹脂層の表面に、露光用マスクを介して紫外線などの放射線の選択的照射(露光)を行う方法や、レーザー光を走査する方法などで、パターンの潜像を形成する。ここに、放射線照射装置としては、フォトリソグラフィー法で一般的に使用されている紫外線照射装置、半導体および液晶表示装置を製造する際に使用されている露光装置、レーザー装置などが用いられるが、特に限定されるものではない。
【0059】
(iii)現像工程
露光された無機粉体含有樹脂層を現像して、無機粉体含有樹脂層のパターンを形成する。ここに、現像処理条件としては、無機粉体含有樹脂層の種類に応じて、現像液の種類・組成・濃度、現像時間、現像温度、現像方法(例えば浸漬法、揺動法、シャワー法、スプレー法、パドル法など)、現像装置などを適宜選択することができる。
【0060】
(iv)焼成工程
本工程においては上記工程で得られたパターンを焼成してFPD部材を得る。焼成は上記FPD用部材の製造方法(a)と同様に行うことができる。
【0061】
以下、上記各工程に用いられる材料、各種条件などについて説明する。
<基板>
基板材料としては、例えばガラス、シリコーン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族アミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどの絶縁性材料からなる板状部材が挙げられる。この板状部材の表面に対しては、必要に応じて、シランカップリング剤などによる薬品処理;プラズマ処理;イオンプレーティング法、スパッタリング法、気相反応法、真空蒸着法などによる薄膜形成処理のような適宜の前処理を施されていてもよい。
【0062】
なお、本発明においては、基板として、耐熱性を有するガラスを用いることが好ましい。ガラス基板としては、例えばセントラル硝子(株)製CP600V、旭硝子(株)製PD200、を好ましいものとして挙げることができる。また、ガラス基板上に銀電極などが設けられていてもよい。
【0063】
<露光用マスク>
本発明の製造方法による露光工程において使用される露光用マスクの露光パターンとしては、材料によって異なるが、一般的に10〜500μm幅のストライプまたは格子状のパターンである。
【0064】
<現像液>
本発明の製造方法による現像工程で使用される現像液としては、アルカリ現像液を好ましく使用することができる。
【0065】
なお、結着樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を使用した場合、無機粉体含有樹脂層に含有される無機粒子は、アルカリ可溶性樹脂により均一に分散されているため、アルカリ性溶液で結着樹脂であるアルカリ可溶性樹脂を溶解させ、洗浄することにより、無機粒子も同時に除去される。
【0066】
アルカリ現像液の有効成分としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、アンモニアなどの無機アルカリ性化合物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エタノールアミンなどの有機アルカリ性化合物などを挙げることができる。
【0067】
アルカリ現像液は、前記アルカリ性化合物の1種または2種以上を水などに溶解させることにより調製することができる。ここに、アルカリ性現像液におけるアルカリ性化合物の濃度は、通常0.001〜10質量%であり、好ましくは0.01〜5質量%である。なお、アルカリ現像液による現像処理がなされた後は、通常、水洗処理が施される。
【0068】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[保存安定性]
FPD部材形成用組成物を調製した後、保存容器に入れ25℃で静置保管した。90日間経過した後、保存容器底部にケーキ状の堆積物や組成物中に濃度勾配が生じていないかを調べ、組成物の保存安定性を評価した。表1では、ケーキ状の堆積物および組成物中に濃度勾配が生じていないものを○、ケーキ状の堆積物または組成物中に濃度勾配が生じているものを×と表記した。
[塗布性の評価]
無機粉体樹脂組成物のガラス基板上への塗布方法としてダイコート法を用い、塗布特性については、塗布スピードを一定にして塗布すじおよびダイコートの塗布開始時および終了時における塗布むらの発生の有無を目視で評価した。表1では、塗布すじおよび塗布むらが発生せず塗布特性に優れ均一な膜厚を形成できたものを○、塗布すじまたは塗布むらが発生したものを×と表記した。
[透過率の評価]
ガラス基板上に形成した無機粉体含有樹脂層を焼成することで得られたガラス焼結体の光透過率を測定した。表1では、形成されたガラス焼結体の光透過率(測定波長600nm)が90%以上のものを○、90%未満のものを×と表記した。
【0069】
<実施例1>
(1)誘電体層形成用組成物の調製
無機粉体として、酸化亜鉛、酸化ホウ素および酸化ケイ素(ZnO−B−SiO)系の混合物からなるガラス粉末(軟化点500℃)100重量部、結着樹脂としてポリエチルメタクリレート(B1)(Mw:350,000)10重量部、特定添加剤としてイソボルニルシクロヘキサノール(C1)10重量部、および溶剤としてターピネオール80部をビーズミルで混練することにより、粘度が15,000mPa・sの誘電体層形成用組成物(I)を調製した。
【0070】
無機粉体含有樹脂層の形成
FPD用電極が形成されたガラス基板上に誘電体層形成用組成物(I)をダイコート法により塗布したのち、100℃のクリーンオーブンで20分乾燥して、厚さ30μmの無機粉体含有樹脂層を形成した。
【0071】
(2)焼成工程(誘電体層の形成)
上記(1)において、無機粉体含有樹脂層を形成したガラス基板を焼成炉内に配置し、炉内の温度を、常温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下で30分間にわたって焼成処理を施して、ガラス基板の表面にガラス焼結体からなる透明の誘電体層を形成した。このガラス焼結体の膜厚は15μmであり、膜厚は均一性に優れていた。また、基板からの剥離などは認められず、基板密着性に優れていた。
また、形成された誘電体層の光透過率(測定波長600nm)を測定したところ95%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
【0072】
<実施例2>
誘電体層形成用組成物(I)における結着樹脂としてポリn−ブチルメタクリレート(B2)(Mw:400,000)10部を用いた以外は実施例1(1)と同様にして、粘度が12,000mPa・sの誘電体層形成用組成物(II)を調製した。得られた組成物を用いて実施例1と同様の工程で塗布し、焼成して得られた誘電体層の評価結果を表1に示した。
【0073】
<実施例3>
誘電体層形成用組成物(I)における特定添加剤としてイソボルニルフェノール(C2)10部を用いた以外は実施例1(1)と同様にして、粘度が13,000mPa・sのFPD部材形成用組成物(III)を調製した。得られた組成物を用いて実施例1と同様の工程で塗布し、焼成して得られた誘電体層の評価結果を表1に示した。
【0074】
<実施例4>
誘電体層形成用組成物(I)における結着樹脂としてポリi−ブチルメタクリレート(B3)(Mw:350,000)10部を用いた以外は実施例1(1)と同様にして、粘度が11,000mPa・sのFPD部材形成用組成物(IV)を調製した。得られた組成物を用いて実施例1と同様の工程で塗布し、焼成して得られた誘電体層の評価結果を表1に示した。
【0075】
<実施例5>
誘電体層形成用組成物(I)における結着樹脂としてn−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート共重合体(B4)(質量比:50/50、Mw:400,000)10部を用いた以外は実施例1(1)と同様にして、粘度が10,000mPa・sの誘電体層形成用組成物(V)を調製した。得られた組成物を用いて実施例1と同様の工程で塗布し、焼成して得られた誘電体層の評価結果を表1に示した。
【0076】
<実施例6〜8>
表1に示した組成物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、誘電体層を形成した。評価結果を表1にあわせて示す。
【0077】
<比較例1>
誘電体層形成用組成物(I)における結着樹脂としてポリn−ブチルメタクリレート(B2)(Mw:400,000)25部を用い、特定添加剤を使用しなかったこと以外は実施例1(1)と同様にして、粘度が12,000mPa・sの誘電体層形成用組成物(IX)を調製した。得られた組成物を用いて実施例1と同様の工程で塗布し、焼成して得られた誘電体層の評価結果を表1に示した。
【0078】
焼成処理を経て形成された誘電体層の光透過率(測定波長600nm)を測定したところ75%であり、透明性に劣るものであった。
【0079】
<比較例2>
誘電体層形成用組成物(I)における結着樹脂としてポリn−ブチルメタクリレート(B2)(Mw:400,000)10部を用い、特定添加剤を使用しなかったこと以外は実施例1(1)と同様にして、粘度が2,000mPa・sのFPD部材形成用組成物(X)を調製した。得られた組成物を用いて実施例1と同様の工程で塗布し、焼成して得られた誘電体層の評価結果を表1に示した。
【0080】
調製した誘電体層形成用組成物(X)を保存容器に入れ25℃で90日間静置保管したところ、保存容器底部にケーキ状の堆積物が認められ、保存安定性に劣るものであった。また、塗布開始時および塗布終了時に塗布装置であるダイコータからのたれよる塗布むらが発生し、均一な膜厚を形成するのが困難であり、塗布性に劣るものであった。


【0081】
【表1】

































【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】交流型プラズマディスプレイパネルの断面形状を示す模式図である。
【図2】フィールドエミッションディスプレイの断面形状を示す模式図である。
【符号の説明】
【0083】
101 ガラス基板
102 ガラス基板
103 背面隔壁
104 透明電極
105 バス電極
106 アドレス電極
107 蛍光物質
108 誘電体層
109 誘電体層
110 保護層
111 前面隔壁
201 ガラス基板
202 ガラス基板
203 絶縁層
204 透明電極
205 エミッタ
206 カソード電極
207 蛍光体
208 ゲート
209 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)無機粉末、(B)結着樹脂および(C)下記式(1)で表される化合物を含有することを特徴とするフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【化1】

〔上記式(1)中、Rは水酸基を有する1価の有機基を表す。〕
【請求項2】
上記式(1)中、Rが下記式(2)または下記式(3)で表される請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【化2】

【化3】

【請求項3】
前記(C)化合物を前記(A)無機粉体100重量部に対して1〜30重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項4】
前記(A)成分がガラス粉末であることを特徴とする請求項1〜3に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項5】
フラットパネルディスプレイの誘電体層形成に用いられることを特徴とする請求項1〜4に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。
【請求項6】
前記フラットパネルディスプレイがプラズマディスプレイパネルであることを特徴とする請求項5に記載のフラットパネルディスプレイ部材形成用組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−40619(P2009−40619A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204482(P2007−204482)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】