説明

フルオランテン大環状物質をもつOLED装置

本発明は、カソード、アノードを含み、それらの間に発光層を有し、カソードと発光層との間に、フルオランテン大環状化合物を含有する第1層をさらに含むOLED装置を提供する。フルオランテン大環状化合物は、連結基によって接続された7,10位を有するフルオランテン核を含む。フルオランテン核は、さらに置換されることができ、ただし、8及び9位の置換基は、結合して5員環基を形成することができない。OLED装置は、発光層とカソードとの間に、アルカリ金属物質を含有する少なくとも1つの層を含む。望ましくは、OLED装置は、第1層、又はカソードと第1層の間に配置される第2層中に存在する有機アルカリ金属化合物を含む。OLED装置は、フルオランテン大環状化合物に加えて、第1層中に存在するアントラセン誘導体を含むことができる。本発明の装置は、効率及び駆動電圧などの特性における改良を与える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
参照は、同一出願人による、特定のフルオランテン発光ドーパントをもつOLED装置と題されたWilliam J.Begleyらによる2007年10月26日に出願された米国特許出願第11/924,629号、特定のフルオランテンホストをもつOLED装置と題されたWilliam J.Begleyらによる2007年10月26日に出願された米国特許出願第11/924,626号、フルオランテン電子輸送物質をもつOLED装置と題されたWilliam J.Begleyらによる2007年10月26日に出願された米国特許出願第11/924,631号、フルオランテン化合物を含有するエレクトロルミネッセンス装置と題されたWilliam J.Begleyらによる2008年11月7日に出願された米国特許出願第12/266,802号、フルオランテン電子注入物質をもつOLED装置と題されたWilliam J.Begleyらによる2008年11月12日に出願された米国特許出願第12/269,066号、シクロブテン電子注入物質をもつOLED装置と題されたWilliam J.Begleyらによる2008年12月9日に出願された米国特許出願第12/330,547号に対してなされ、それらの開示は本明細書に援用される。
[発明の分野]
本発明は、発光層を有し、電子輸送層が特定の種類のフルオランテン大環状化合物を含む有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセンス(EL)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
本発明は、発光層を有し、且つ電子輸送層が特定の種類のフルオランテン大環状化合物を含む有機発光ダイオード(OLED)エレクトロルミネッセンス(EL)装置に関する。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)装置は20年以上前から知られているが、その性能の制限は、多くの望ましい用途にとって障害となっていた。最も単純な形態の有機EL装置は、正孔注入のためのアノードと、電子注入のためのカソードと、これらの電極に挟まれ、電荷の再結合を支持して光を発生させる有機媒体とから構成されている。これらの装置は、有機発光ダイオード又はOLEDとも一般に称される。初期の代表的な有機EL装置は、1965年3月9日に発行されたGurneeらの米国特許第3,172,862号、1965年3月9日に発行されたGurneeの米国特許第3,173,050号、Dresnerの「Double Injection Electroluminescence in Anthracene」, RCA Review, 30, 322, (1969)、及び1973年1月9日に発行されたDresnerの米国特許第3,710,167号である。これらの装置の有機層は、通常、多環芳香族炭化水素から構成されており、非常に厚いものであった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0004】
より最近の有機EL装置は、アノードとカソードとの間に極めて薄い層(例えば1.0μm未満)から成る有機EL素子を含む。本明細書では、「有機EL素子」という用語は、アノードとカソードとの間の層を包含する。厚さを小さくすることにより、有機層の抵抗値が小さくなり、はるかに低い電圧で動作する装置が可能となった。米国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層EL装置構造では、アノードに隣接するEL素子の一方の有機層が正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と称され、他方の有機層が電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と称される。有機EL素子の内部で注入された正孔と電子とが再結合することで効率的なエレクトロルミネッセンスが生じる。
【0005】
C. Tangら(J. Applied Physics, Vol. 65, 3610 (1989))によって開示されるような、正孔輸送層と電子輸送層との間に有機発光層(LEL)を含有する3層有機EL装置も提案されている。発光層は、ゲスト材料(別名ドーパントとしても知られる)をドープしたホスト材料を一般に含有する。またさらに、米国特許第4,769,292号には、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを含む4層EL素子が提案されている。これらの構造によって装置の効率が改善された。
【0006】
近年のEL装置は、赤色、緑色及び青色等の単色発光装置だけでなく、白色光を発する装置である白色装置にも拡大されている。効率的な白色発光OLED装置は産業上非常に望ましく、紙のように薄い光源、LCDディスプレイのバックライト、自動車のドーム型ライト、及びオフィス照明等の幾つかの用途の低コスト代替品とみなされている。白色発光OLED装置は明るく、効率的でなくてはならず、その国際照明委員会(CIE)色度座標は一般に、約(0.33、0.33)である。いずれにせよ、本開示によれば、白色光とは白色を有すると使用者により認識される光である。
【0007】
これら初期の発明以来、装置の材料がさらに改善された結果、例えば、特に米国特許第5,061,569号、米国特許第5,409,783号、米国特許第5,554,450号、米国特許第5,593,788号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,908,581号、米国特許第5,928,802号、米国特許第6,020,078号、及び米国特許第6,208,077号に開示されているように、色、安定性、輝度効率、製造容易性のような特性における性能が改善された。
【0008】
これら全ての発展にもかかわらず、高い色純度と同時に高い輝度効率及び長い寿命を維持しつつ、装置駆動電圧をさらに低くし、したがって電力消費量を減少させる、電子輸送材料及び電子注入材料等の有機EL装置構成要素が引き続き必要とされている。
【0009】
電子注入層の例としては、米国特許第5,608,287号、米国特許第5,776,622号、米国特許第5,776,623号、米国特許第6,137,223号及び米国特許第6,140,763号に記載されているものが挙げられる。電子注入層は、4.0eV未満の仕事関数を有する材料を一般に含有する。仕事関数の定義は、ケミストリー・アンド・フィジックスのCRCハンドブック(第70版、1989〜1990、CRCプレス社)F−132頁に見られ、様々な金属の仕事関数のリストがE-93頁及びE-94頁に見られる。このような金属の典型例としては、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、La、Sm、Gd、Ybが挙げられる。Li、Cs、Ca、Mg等の低仕事関数アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有する薄膜は、電子注入のために用いられ得る。さらに、これらの低仕事関数金属をドープした有機材料もまた電子注入層として効果的に使用され得る。例は、Li又はCsドープAlqである。
【0010】
米国特許第6,509,109号及び米国出願公開第20030044643号は、電子注入領域が、ホスト材料としての窒素を含有しない芳香族化合物と、アルカリ金属化合物等の還元ドーパントとを含有する有機エレクトロルミネッセンス装置を記載する。米国特許第6,396,209号は、電子輸送有機化合物と、少なくとも1つのアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又は希土類金属イオンを含有する有機金属錯体化合物との電子注入層を記載する。EL装置の電子注入層における有機リチウム化合物の追加例としては、米国特許出願公開第20060286405号、米国特許出願公開第20020086180号、米国特許出願公開第20040207318号、米国特許第6,396,209号、米国特許第6,468,676号、特開2000−053957号公報、国際公開第99/63023号が挙げられる。
【0011】
有用な種類の電子輸送材料は、オキシン自体のキレートを含む金属キレート化オキシノイド(oxinoid)化合物(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリンとも称される)に由来する材料である。トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq又はAlq3としても知られる)並びに他の金属及び非金属オキシンキレートが、電子輸送材料として当該技術分野で既知である。米国特許第4,769,292号におけるTangら及び米国特許第4,539,507号におけるVanSlykeらは、発光層又は発光域における電子輸送材料としてのAlqの使用を教示することによりEL装置の駆動電圧を低下させている。米国特許第6,097,147号におけるBaldoら及び米国特許第6,172,459号におけるHungらは、電子がカソードから電子輸送層に注入されると、電子が電子輸送層及び発光層の両方を横断するように、有機電子輸送層をカソードと隣接させて使用することを教示している。
【0012】
電子輸送層における置換フルオランテンの使用も既知であり、例としては、米国特許出願公開第20080007160号、米国特許出願公開第20070252516号、米国特許出願公開第20060257684号、米国特許出願公開第20060097227号及び特開2004−09144号公報が挙げられる。
【0013】
特開2003−123978号公報は、7,14−アルカノアセナフト[1,2−k]フルオランテン誘導体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を記載し、特に、発光層
におけるこの種類の材料の使用が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これら全ての発展にもかかわらず、OLED装置の効率を改善し、そして駆動電圧を低減すると共に、他の改善された特徴を持つ実施形態を与える新規化合物を開発する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[発明の概要]
本発明は、カソード、アノードを含み、それらの間に発光層を有し、前記発光層と前記カソードとの間に、フルオランテン大環状化合物を含有する第1層をさらに含むOLED装置を提供する。フルオランテン大環状化合物は、連結基によって接続された7,10位を有するフルオランテン核を含む。フルオランテン核は、さらに置換されることができ、ただし、8及び9位の置換基は、結合して5員環基を形成することができない。OLED装置は、発光層とカソードとの間に、アルカリ金属物質を含有する少なくとも1つの層を含む。
【0016】
第2の実施形態において、OLED装置は、第1層、又はカソードと第1層との間に配置された第2層に存在するアルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含む。
【0017】
第3の実施形態において、OLED装置は、フルオランテン大環状化合物に加えて、第1層に存在するアントラセン誘導体を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の装置は、効率及び駆動電圧などの特徴の改善を与える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のOLED装置の1つの実施形態の概略断面図である。個々の層があまりに薄く、各種層の厚さの差が縮尺通りに描写するには大き過ぎるため、図1は正確な縮尺ではないことが理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明の詳細な説明]
本発明は、一般に上記に記載されるようなものである。本発明のOLED装置は、カソード、アノード、発光層(LEL)(複数可)、電子輸送層(ETL)(複数可)、及び電子注入層(EIL)(複数可)、並びに任意で、正孔注入層(複数可)、正孔輸送層(複数可)、励起子ブロック層(複数可)、スペーサ層(複数可)、結合層(複数可)、及び正孔ブロック層(複数可)等の追加の層を備える多層エレクトロルミネッセンス装置である。
【0021】
発光層とカソードとの間の第1層は、フルオランテン大環状化合物を含む。フルオランテン大環状化合物は、カソードから発光層への電子の輸送を容易にする。望ましくは、第1層は電子輸送層である。電子輸送層の厚さは、多くの場合2nm〜750nm、しばしば5nm〜50nm、典型的に10nm〜40nmの範囲にある。電子輸送層は、2つ以上の副層にさらに分割されることができ、例えば、第1(ETL1)及び第2(ETL2)輸送層に分けられることができ、それはさらに分けられることができる。
【0022】
1つの実施形態において、フルオランテン大環状化合物は、非発光層である、少なくとも1つの電子輸送層に存在する。すなわち、電子輸送層は装置の全発光量の25%未満を提供すべきである。理想的には、電子輸送層は実質的に発光しない。
【0023】
フルオランテン大環状化合物は、環化した環を4つ含有するフルオランテン核を含み、その環の番号付けの順序を下記に示す:
【0024】
【化1】

【0025】
フルオランテン大環状化合物は、フルオランテン核に環化した追加の環を含有することができるが、ただし、それは、8及び9位に環化した5員環基を含有しない。環化した環(縮合環としても一般に称される)は、フルオランテン核のいずれかの2つの炭素原子間の共通の環結合を共有する環である。8及び9位に環化した5員環基をもつフルオランテン核を含有する化合物(本発明から除外される)の実例が以下に示される。1つの実施形態において、フルオランテン大環状化合物は、フルオランテン核に環化した芳香環を含有しない。
【0026】
【化2】

【0027】
フルオランテン核の7,10位は、連結基によって接続されており、連結基は、7位及び10位の両方に結合する2価種である。連結基は、炭素原子を含有し、N、O及びS等のヘテロ原子を含有することができる。
【0028】
7,10位に結合することで環を形成し、過剰の環の歪みが存在しないか、又は化合物が不安定であるように、連結基は十分な長さでなければならない。したがって、環の歪みを避けるために、大きな環を形成することが望ましく、本明細書において大環状環として称される。好ましくは、形成される大環状環が、10員環以上、より適切には12員環以上、望ましくは14員環以上であるように、連結基が選択される。
【0029】
本願において、連結基の長さは、連続した原子の最も少ない数として定義され、フルオランテン核の7及び10位を接続する鎖を形成する原子上の置換基を含まない。望ましくは、連結基の長さは、6原子以上、適切には8原子以上、より望ましくは10原子以上である。連結基があまりにも長すぎると、適切な昇華温度等の所望の物性を有さない化合物が得られる。望ましくは、連結基は、30原子以下、適切には25原子以下、さらには220原子以下の長さを有する。例として、以下に記載する各連結基は10原子の長さを有する。
【0030】
【化3】

【0031】
有用な2価連結基の例は、式(1)により表される。
−(CY2n− 式(1)
【0032】
式(1)において、ダッシュ記号(dash mark)は、フルオランテン核の7及び10位に式(1)の断片(fragment)を接続する結合を表す。各Yは同一でも異なっていてもよく、各Yは、水素又は置換基(例えば、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基又は6〜24個の炭素原子を有するアリール基など)を表す。隣接するY基は、結合して環基(例えば、5又は6員環基)を形成することができ、環基は芳香族(例えば、ベンゼン環基)又は非芳香族(例えば、シクロヘキサン環基)であることができ、環基はヘテロ原子を含有することができる。1つの実施形態において、各Yは水素を表す。式(1)において、nは6〜30の値を有する整数である。他の適切な実施形態において、nは8〜25の値を有し、望ましくはnは10〜20の値を有する。
【0033】
有用な連結基の他の例は、式(2)により表される。
−(CY2r−[(CY2)−(X)−(CY2)]s−(CY2t− 式(2)
【0034】
式(2)において、最初及び最後のダッシュ記号は、フルオランテン核の7及び10位に式(2)の断片を接続する結合を表す。各Xは同一でも異なっていてもよく、それぞれCY2、N、O又はSを独立して表す。式(2)において、各Yは、水素又は置換基を独立して表し、ただし、隣接するY基は、結合して環基を形成することができる。Y基の例としては、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、及び6〜24個の炭素原子を有するアリール基が挙げられる。式(2)において、rは0〜10であり、tは0〜10であり、sは1〜10であり、ただし、r、t及びsは、式(2)により表される連結基が、6〜30原子、適切には8〜25原子、望ましくは10〜20原子の長さを有するように選択される。
【0035】
特定の有用な連結基の非限定的な実例が以下に示される。
【0036】
【化4】

【0037】
1つの望ましい実施形態において、フルオランテン核及びその置換基を含むフルオランテン大環状化合物は、合計10未満の縮合芳香環、又は8未満の縮合芳香環、又は6未満の縮合芳香環を含有する。本発明のフルオランテン大環状化合物は、1つよりも多いフルオランテン核を含有することができ、すなわち、2つ以上のフルオランテン基が単結合を介して結合されるか、又は一緒に環化されることができる。しかしんがら、1つの実施形態において、フルオランテン大環状化合物は、唯一のフルオランテン核を含有する。
【0038】
本発明に用いられるフルオランテン大環状化合物は、フルオランテン核がまさにポリマー鎖の一部であるポリマー骨格又は化合物に接続された多数のフルオランテン基を含まない。本発明のフルオランテン大環状化合物は、典型的に1500ダルトン未満、好ましくは1000ダルトン未満の分子量をもつ小さな分子である。
【0039】
1つの望ましい実施形態において、フルオランテン大環状化合物は、式(I)により表される。
【0040】
【化5】

【0041】
式(I)において、R1〜R8はそれぞれ、水素又は個々に選択された置換基を独立して表し、隣接する置換基は、結合して環基を形成することができ、ただし、R1及びR2は、結合して5員環基を形成することができない。適切な置換基としては、例えば、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基(例えば、メチル基及びt−ブチル基)、6〜24個の炭素原子を有するアリール基(例えば、フェニル基及びナフチル基)が挙げられる。1つの実施形態において、隣接するR1〜R8置換基は、結合して、さらに置換され得る縮合ベンゼン環基を形成することができる。さらなる実施形態において、フルオランテン大環状化合物は、フルオランテン核に縮合した芳香環を含有しない。
【0042】
式(I)において、Lは連結基を形成するのに必要な原子を表す。望ましくは、Lは、6〜30原子、適切には8〜25原子、より望ましくは10〜20原子の長さを有する。Lの長さは、フルオランテン核の7及び10位を接続する鎖を形成する、連結基の連続した原子の最も少ない数として定義されるが、鎖の原子上の置換基を含まない。連結基は、炭素、水素及びヘテロ原子(例えば、N、O及びS)を含有することができる。また、連結基は、環基を含有することができる。1つの望ましい実施形態において、Lは前述した式(1)又は式(2)により表される。
【0043】
他の望ましい実施形態において、フルオランテン大環状化合物は、式(II)により表される。
【0044】
【化6】

【0045】
式(II)において、R1〜R8はそれぞれ、水素又は個々に選択された置換基を独立して表す。隣接する置換基は、結合して環基を形成することができ、ただし、R1及びR2は、結合して5員環基を形成することができない。しかしながら、1つの実施形態において、隣接するR1〜R8置換基は、結合して如何なる種類の環基を形成することができない。したがって、1つの適切な実施形態において、式(II)のフルオランテン大環状化合物は、フルオランテン核に環化した芳香環を含有しない。他の実施形態において、R1及びR2の少なくとも1つは、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜24個の炭素原子を有するアリール基を表す。
【0046】
式(II)において、各Yは同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素又は置換基を独立して表し、ただし、隣接するY基は、結合して環基を形成することができる。1つの実施形態において、各Yは、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基又は6〜24個の炭素原子を有するアリール基を表し、ただし、隣接するY基は、結合して環基を形成することができる。式(II)において、mは4以上30未満、適切にはmは6以上25未満、望ましくはmは8以上20未満である。
【0047】
またさらなる実施形態において、本発明のフルオランテン大環状化合物は、置換基としてか、又は置換基内に含有されるヘテロ原子を含有しない。
【0048】
適切なフルオランテン大環状化合物は、公知の合成法(例えば、Marappan VelusamyらのDalton Trans., 3025-3034(2007)又はP.BergmannらのChemische Berichte, 828-35(1967)に記載されている方法に類似する方法)の改良を利用することによって調製することができる。1つの一般的な合成経路の例が、以下(スキームA)に示される。化合物1を塩基(例えば、水酸化カリウム)の存在下でケトン2と反応させ、3を生成する。高沸点溶媒(例えば、o−ジクロロベンゼン又はジフェニルエーテル)中、高温でアセチレン4を用いて3を処理することにより、フルオランテン大環状化合物を形成する。
【0049】
【化7】

【0050】
有機分子の合成において、特定の合成経路が、分子を排他的に、又は同じ分子式を有するが、分子中のどこかの様々な場所に配置される特定の置換基を有する点においてのみ異なる分子の混合物として生じさせることができることを理解すべきである。言い換えると、分子又は混合物中の分子は、それらの置換基の配置、又は一般的には空間中のそれらの原子のいくつかの配置によって互いに異なることができる。これが起きると、物質は異性体として称される。異性体の広範な定義は、Grant and Hackh's Chemical Dictionary, Fifth Edition, McGraw-Hill Book Company, page 313に見出すことができる。スキームAで説明される合成経路は、化合物3が非対称である場合に、アセチレン分子4が化合物3とどのように空間的に反応するかで異性体を生じさせ得る経路の例である。本発明は、一般式(I)及び(II)により表される分子の例、並びにそれらの特定の分子例を含むだけでなく、これらの構造と関連した全ての異性体も含むことに気付くべきである。さらに、本発明の化合物及びそれらの異性体の例は、一般構造3の対称又は非対称化合物から誘導されるものに限定されず、式(I)及び(II)の化合物を製造するのに有用な他の構造及び調製方法も含むことができる。いくつかの実施形態において、異性体の混合物からなるフルオランテン大環状化合物を使用することが望ましい。
【0051】
有用なフルオランテン大環状化合物の非限定的な実例が以下に示される。
【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
【化13】

【0058】
【化14】

【0059】
OLED装置は、発光層とカソードとの間に、アルカリ金属物質を含有する少なくとも1つの層を含む。本願において、アルカリ金属物質は、アルカリ金属、有機アルカリ金属化合物、又は無機アルカリ金属化合物として定義される。
【0060】
望ましくは、カソードと第1層との間に配置され、好ましくは第1層に接触する第2層が追加的に存在し、第2層はアルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含有する。この層は電子注入層(EIL)と典型的に称される。かかる層は、カソードと直接接触して一般に配置され、発光層へと向かう電子の効率的な移動の助けとなる。一般的な層の順序はLEL|ETL|EIL|カソードである。ETL及びEILは、複数の副層に分かれていてもよい。これら3つの界面のいずれかの間に中間層、例えばカソードとEILとの間に無機アルカリ金属化合物の薄層があってもよい。有用な無機アルカリ金属化合物の例としては、LiF及びCsFが挙げられる。アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物は、ETLやEIL中にも存在することができる。
【0061】
EILは、単一のアルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物のみから構成されていても、又は2種以上のアルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物の混合物であってもよい。EILは、アルカリ金属又はアルカリ金属化合物に加えて、1つ以上の追加物質を含有することができ、例えば、それは、12〜50個の炭素原子を有する多環芳香族炭化水素を含有することができる。追加物質に対するアルカリ金属の体積比%は、0.1%〜10%のいずれであってもよく、典型的には0.5%〜8%、適切には0.5%〜5%である。追加物質に対する有機アルカリ金属化合物の体積比%は、0.1%〜99%のいずれであってもよく、典型的には0.5%〜95%、より適切には10%〜90%、最も望ましくは30%〜70%である。第1層は、追加物質を含むことができる。EILの厚さは、典型的に0.1nm〜20nm、しばしば0.4nm〜10nm、頻繁には1nm〜8nmであり得る。
【0062】
有用なアルカリ金属の例としては、Li、Na、K、Rb及びCs金属が挙げられ、Li金属が好ましい。
【0063】
有機アルカリ金属化合物は、有機配位子がアルカリ金属イオンに結合した有機金属化合物である。アルカリ金属は、周期表第1族に属する。その中でも、リチウムが非常に好ましい。
【0064】
有用な有機アルカリ金属化合物としては、式(III)に従う有機リチウム化合物が挙げられる。
(Li+f(Q)g 式(III)
式中、Qはアニオン性有機配位子であり、f及びgは錯体の電荷が中性となるように独立して選択される整数である。
【0065】
アニオン性有機配位子Qは、最も好適には一価アニオン性(monoanionic)であり、酸素、窒素又は炭素から成る少なくとも1つのイオン化可能な部位を含有する。エノラート又は酸素を含有する他の互変異系の場合、リチウムが酸素に結合していると見なされ、そのように描かれるが、リチウムは実際は他の部位に結合してキレートを形成している場合もある。また、配位子が、リチウムイオンと配位結合又は供与結合を形成することのできる少なくとも1つの窒素原子を含有するのが望ましい。整数f及びgは、幾つかの有機リチウム化合物について知られる、クラスター錯体を形成する傾向に鑑みると、1超過であり得る。
【0066】
また、有用な有機アルカリ金属化合物としては、式(IV)に従う有機リチウム化合物も挙げられる。
【0067】
【化15】

【0068】
式中、Z及び破線の弧は、2個〜4個の原子及びリチウムカチオンを有する5員〜7員環を完成するのに必要な結合を表し、各Aは、水素又は置換基を表し、各Bは、水素又は独立して選択されるZ原子上の置換基を表し、ただし、2つ以上の置換基が結合して縮合環又は縮合環系を形成することができ、jは0〜3であり、kは1又は2であり、f及びgは錯体の電荷が中性となるように独立して選択される整数である。
【0069】
式(IV)の化合物の中でも、A置換基及びB置換基が一緒になって追加の環系を形成するのが最も望ましい。この追加の環系は、リチウムに配位結合又は供与結合して、多座配位子を形成する追加のヘテロ原子をさらに含有することができる。望ましいヘテロ原子は窒素又は酸素である。
【0070】
式(IV)において、示される酸素が、ヒドロキシル基、カルボキシ基又はケト基の一部であることが好ましい。適切な窒素配位子の例は、8−ヒドロキシキノリン、2−ヒドロキシメチルピリジン、ピペコリン酸又は2−ピリジンカルボン酸である。
【0071】
有用な有機アルカリ金属化合物の具体例は以下の通りである。
【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
有用な第2層(EIL)は、その場で形成される、すなわち、層の形成中にアルカリ金属と有機配位子とを混合することによって形成される有機アルカリ金属化合物を含む。例えば、有用なEILは、有機配位子(例えば、フェナントロリン誘導体)とアルカリ金属(例えば、Li金属)との両方を含有する。好切な金属としては、Li、Na、K、Rb及びCsが挙げられ、リチウム金属が最も好ましい。適切な置換フェナントロリン誘導体としては、式(R)により表されるものが挙げられる。
【0078】
【化21】

【0079】
式(R)において、R1〜R8は独立して、水素、アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R1〜R8のうち少なくとも1つはアリール基又は置換アリール基である。
【0080】
EILに有用なフェナントロリンの具体例は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−フェナントロリン(BCP)(式(R−1)を参照)及び4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)(式(R−2)を参照)である。
【0081】
【化22】

【0082】
他の実施形態において、フルオランテン大環状化合物は、ETL中に存在し、EILは、2つ以上の副層、例えば、EIL1(ETLに隣接する)及びEIL2(カソードに隣接する)に分割される。フェナントロリン化合物はEIL1中に存在し、有機アルカリ金属化合物又は無機アルカリ金属化合物はEIL2中に存在する。有用な無機アルカリ金属化合物の例としては、LiF及びCsFが挙げられる。
【0083】
図1は、電子輸送層(ETL、136)及び電子注入層(EIL、138)が存在する本発明の1つの実施形態を示す。発光層と電子輸送層との間に任意の正孔ブロック層(HBL、135)が示される。任意の正孔注入層(HIL、130)も図面に示される。他の実施形態では、ETLとLELとの間に配置される正孔ブロック層(HBL、135)は存在しない。さらに他の実施形態では、電子注入層は、2つ以上の副層(示されていない)に分割されることができる。
【0084】
1つの実例において、OLED装置100は、正孔ブロック層を有さず、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層のみを有する。フルオランテン大環状化合物はETL(136)中に存在し、有機アルカリ金属化合物(例えば、AM−1)はEIL(138)中に存在する。
【0085】
フルオランテン大環状化合物は、第1層の100%を構成してもよく、又は層中に他の成分があってもよい。この場合、フルオランテン大環状化合物は、実質的に層の100%未満のレベルで存在することができ、例えば、90体積%、80体積%、70体積%若しくは50体積%、又はそれ以下で存在することができる。望ましくは、他の成分が層中に存在する場合、それらは良好な電子輸送特性も有する。
【0086】
上記したように、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物もまた、ETL及びEIL中に存在することができる。例えば、特に有用な組み合わせとしては、フルオランテン大環状化合物及び有機リチウム化合物AM−2の両方を含有するETLが挙げられ、ここで、この層は、AM−2も含有するEILに隣接する。
【0087】
さらに望ましい実施形態において、第1層は、フルオランテン大環状化合物に加えてアントラセン誘導体を含む。アントラセン誘導体は、9及び10位に、6〜24個の炭素原子を有する独立して選択されたアリール基を有するアントラセン核を含み、アントラセン核はさらに置換されていてもよい。アントラセン核の付番方式を下記に示す:
【0088】
【化23】

【0089】
有用なアントラセン誘導体としては、式(V)に従って表されるものが挙げられる。
【0090】
【化24】

【0091】
式(V)において、各R1及びR6は、6〜24個の炭素原子を有するアリール基(例えば、フェニル基又はナフチル基)を独立して表す。各R2〜R5及びR7〜R10は、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜24個の炭素原子を有する芳香族基から独立して選択される。
【0092】
1つの適切な実施形態において、各R1及びR6は、独立して選択されたフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基を表す。R3は、水素又はフェニル基又はナフチル基を表す。R2、R4、R5、R7〜R10は、水素を表す。
【0093】
有用なアントラセンの実例が下記に記載される。
【0094】
【化25】

【0095】
【化26】

【0096】
【化27】

【0097】
【化28】

【0098】
【化29】

【0099】
本発明の好ましい組み合わせの例は、フルオランテン大環状化合物がInv−1、Inv−2、Inv−3、Inv−4及びInv−5又はこれらの混合物から選択され;アルカリ金属がLi金属であり、有機アルカリ金属が、AM−1、AM−2及びAM−3又はこれらの混合物から選択され、アントラセン誘導体(存在する場合)が、P−1、P−2、P−3及びP−4又はこれらの混合物から選択されるものである。
【0100】
1つの適切な実施形態において、EL装置は白色光を発し、それは、相補エミッタ、白色エミッタ、又はフィルタを含むことによって達成され得る。本発明は、例えば、米国特許第5,703,436号及び米国特許第6,337,492号に教示されるような、いわゆる積層装置構造で使用され得る。本発明の実施形態は、白色光を生じさせるために蛍光素子だけを含む積層装置において使用され得る。装置は、蛍光発光材料とリン光発光材料との組み合わせを含んでもよい(ハイブリッドOLED装置と称される場合もある)。白色発光装置を作製するためには、ハイブリッド蛍光/リン光装置は、青色蛍光エミッタ、並びに適当な割合の緑色及び赤色リン光エミッタ、又は白色発光を生じるのに好適な他の色の組み合わせを備えるのが理想的である。しかしながら、非白色発光を有するハイブリッド装置は、それ自体が有用であり得る。非白色発光を有するハイブリッド蛍光/リン光素子を、積層OLEDにおいて、追加のリン光素子と順に組み合わせてもよい。例えば、白色発光は、1つ以上のハイブリッド青色蛍光/赤色リン光素子を、Tangらの米国特許第6936961B2号に開示されているようなp/n接合コネクタを用いて、緑色リン光素子と順に積層することによって生じさせることができる。
【0101】
1つの望ましい実施形態において、EL装置は、ディスプレイ装置の一部である。他の適切な実施形態において、EL装置は、エリア照明装置の一部である。
【0102】
本発明のEL装置は、電灯、又はテレビ、携帯電話、DVDプレイヤー、若しくはコンピュータ用モニター等の静止画像装置若しくは動画像装置の構成要素のような安定した発光が所望される任意の装置に有用である。
【0103】
本明細書中及び本願全体を通して使用される場合、「炭素環」及び「複素環」又は「炭素環基」及び「複素環基」という用語は、一般に、Grant & Hackh's Chemical Dictionary, Fifth Edition, McGraw-Hill Book Companyによって定義されるようなものである。炭素環は、炭素原子のみを含有する任意の芳香環系又は非芳香環系であり、複素環は炭素原子及び窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)、及び環系を形成するのに有用な、周期表に見られる他の元素等の非炭素原子の両方を含有する任意の芳香環系又は非芳香環系である。本発明の目的上、配位結合を含む環も複素環の定義に含まれる。配位結合又は供与結合の定義は、Grant & Hackh's Chemical Dictionary, pages 91 and 153に見ることができる。要するに、配位結合は、O又はN等の電子の豊富な原子が、電子不足の原子又はイオン、例えばアルミニウム、ホウ素、又はLi+、Na+、K+、及びCs+等のアルカリ金属イオンに電子対を供与する場合に形成される。かかる例の1つは、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(Alqとも称される)において見られるが、この場合キノリン部分にある窒素が、その孤立電子対をアルミニウム原子に供与することで複素環が形成され、その結果Alqに合計で3つの縮合環が生じる。多座配位子を含む配位子の定義はそれぞれ、Grant & Hackh's Chemical Dictionary, pages 337 and 176に見ることができる。
【0104】
特に規定のない限り、「置換された」又は「置換基」という用語の使用は、水素以外の任意の基又は原子を意味する。さらに、「基」という用語を用いる場合、置換基が置換可能な水素を含有するのであれば、置換基の置換されていない形態だけでなく、本明細書中に言及される任意の置換基(複数可)でさらに置換された形態も、デバイスの有用性に必要とされる性質をその置換基が失わせない限りは包含することも意図されることを意味する。適切には、置換基は、ハロゲンであり得るか、又は原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、若しくはホウ素)によって分子の残部と結合し得る。置換基は、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、若しくはフルオロ等)、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、カルボキシル、又はさらに置換されていてもよい基であり得る。さらに置換されていてもよい基としては、例えば、アルキル(メチル、トリフルオロメチル、エチル、t−ブチル、3−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)プロピル、及びテトラデシル等の直鎖アルキル若しくは分岐鎖アルキル又は環式アルキルが含まれる)、アルケニル(例えば、エチレン、2−ブテン)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2−メトキシエトキシ、sec−ブトキシ、ヘキシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エトキシ、及び2−ドデシルオキシエトキシ)、アリール(例えば、フェニル、4−t−ブチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、ナフチル)、アリールオキシ(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、α−ナフチルオキシ又はβ−ナフチルオキシ、及び4−トリルオキシ)、カルボンアミド(例えば、アセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α−(3−ペンタデシルフェノキシ)−ヘキサンアミド、α−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシ)−テトラデカンアミド、2−オキソ−ピロリジン−1−イル、2−オキソ−5−テトラデシルピロリン−1−イル、N−メチルテトラデカンアミド、N−スクシンイミド、N−フタルイミド、2,5−ジオキソ−1−オキサゾリジニル、3−ドデシル−2,5−ジオキソ−1−イミダゾリル、及びN−アセチル−N−ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5−(ジ−t−ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p−ドデシル−フェニルカルボニルアミノ、p−トリルカルボニルアミノ、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−メチル−N−ドデシルウレイド、N−ヘキサデシルウレイド、N,N−ジオクタデシルウレイド、N,N−ジオクチル−N’−エチルウレイド、N−フェニルウレイド、N,N−ジフェニルウレイド、N−フェニル−N−p−トリルウレイド、N−(m−ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N−(2,5−ジ−t−ペンチルフェニル)−N’−エチルウレイド、及びt−ブチルカルボンアミド)、スルホンアミド(例えば、メチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トリルスルホンアミド、p−ドデシルベンゼンスルホンアミド、N−メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ、及びヘキサデシルスルホンアミド)、スルファモイル(例えば、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−ヘキサデシルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−[3−(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N−メチル−N−テトラデシルスルファモイル、及びN−ドデシルスルファモイル)、カルバモイル(例えば、N−メチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−オクタデシルカルバモイル、N−[4−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N−メチル−N−テトラデシルカルバモイル、及びN,N−ジオクチルカルバモイル)、アシル(例えば、アセチル、(2,4−ジ−t−アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p−ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3−ペンタデシルオキシカルボニル、及びドデシルオキシカルボニル)、スルホニル(例えば、メトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2−エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4−ノニルフェニルスルホニル、及びp−トリルスルホニル)、スルホニルオキシ(例えば、ドデシルスルホニルオキシ及びヘキサデシルスルホニルオキシ)、スルフィニル(例えば、メチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2−エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4−ノニルフェニルスルフィニル、及びp−トリルスルフィニル)、チオ(例えば、エチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ、及びp−トリルチオ)、アシルオキシ(例えば、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p−ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチルカルバモイルオキシ、及びシクロヘキシルカルボニルオキシ)、アミン(例えば、フェニルアニリノ、2−クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン)、イミノ(例えば、1−(N−フェニルイミド)エチル、N−スクシンイミド、又は3−ベンジルヒダントイニル)、ホスフェート(例えば、ジメチルホスフェート及びエチルブチルホスフェート)、ホスファイト(例えば、ジエチルホスファイト及びジヘキシルホスファイト)、複素環基、複素環オキシ基、又は複素環チオ基(どの基も置換されていてもよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、硫黄、リン、又はホウ素から成る群から選択される)とから構成される3員〜7員の複素環を含有し、例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ベンゾイミダゾリルオキシ、又は2−ベンゾチアゾリルがある)、第四級アンモニウム(例えば、トリエチルアンモニウム)、第四級ホスホニウム(例えば、トリフェニルホスホニウム)、並びにシリルオキシ(例えば、トリメチルシリルオキシ)が挙げられる。
【0105】
必要に応じて、置換基それ自体が上記の置換基で1回以上さらに置換されていてもよい。当業者は、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように、使用する具体的な置換基を選択することができる。置換基としては、例えば、電子求引基、電子供与基及び立体基を挙げることができる。分子が2つ以上の置換基を有することができる場合には、特に規定のない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば、縮合環)を形成させてもよい。一般に、上記の基及びその置換基は、48個までの炭素原子(典型的には1個〜36個であり、通常は24個未満である)を有する基を含み得るが、選択される個々の置換基によって、それよりも多くすることも可能である。
【0106】
OLED装置の層構造、材料の選択、及び製造プロセスについて以下に記載する。
【0107】
<OLED装置の一般的な構造>
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、又はこれらの組み合わせを用いた多くのOLED構成で使用することができる。このような構成には、単一のアノードとカソードとを有する非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(例えば、複数のアノードとカソードとが直交配列を成して画素を形成するパッシブマトリクスディスプレイ、及び各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)によって独立して制御されるアクティブマトリクスディスプレイ)までが含まれる。本発明が首尾よく実施される有機層の構成は多数ある。本発明にとって必須の要件は、カソード、アノード、LEL、ETL、及びHILである。
【0108】
上記したように、小分子装置に特に有用な本発明による1つの実施形態を図1に示す。OLED100は、基板110、アノード120、正孔注入層130、正孔輸送層132、発光層134、正孔ブロック層135、電子輸送層136、電子注入層138、及びカソード140を含有する。いくつかの他の実施形態において、LELのいずれかの側に任意のスペーサ層が存在する。これらのスペーサ層は、発光材料を典型的に含有しない。これらの層タイプの全てを下記に詳しく説明する。基板を代替的にカソードに隣接して配置してもよいこと、又は基板が実際にアノード若しくはカソードを構成し得ることに留意されたい。また、有機層を合計した厚さは、500nm未満であることが好ましい。
【0109】
OLEDのアノード及びカソードは、導電体160を介して電圧/電流源150と接続される。アノードとカソードとの間に、アノードがカソードより正の電位となるように電位を印加することによってOLEDが動作する。正孔はアノードから有機EL素子に注入される。ACモードではサイクル中に電位バイアスが逆転して電流が流れない期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときに装置の安定性向上を実現することができる場合もある。AC駆動のOLEDの例が、米国特許第5,552,678号に記載されている。
【0110】
<アノード>
所望のEL発光をアノードを通して見る場合には、アノード120は、対象となる発光に対して透明であるか、又は実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム−スズ酸化物(ITO)、インジウム−亜鉛酸化物(IZO)、及びスズ酸化物であるが、他の金属酸化物(アルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム−インジウム酸化物、ニッケル−タングステン酸化物が挙げられるが、これらに限定されない)も有効である。これらの酸化物に加え、金属窒化物(例えば、窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えば、セレン化亜鉛)、及び金属硫化物(例えば、硫化亜鉛)をアノード120として用いることができる。EL発光をカソード140のみを通して見るような用途では、アノード120の透光特性は重要でないため、透明、不透明又は反射性の任意の導電性材料を使用することができる。この用途での導体の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、及び白金が挙げられるが、これらに限定されない。典型的なアノード用材料は、光透過性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、任意の適切な手段(例えば、蒸着、スパッタリング、化学蒸着、又は電気化学的手段)によって一般に堆積される。アノードは、既知のフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることができる。任意で、アノードを研磨した後に、他の層を塗布することで表面粗度を小さくして、短絡を最少にすること、又は反射性を向上させることができる。
【0111】
<正孔注入層>
必ずしも必要な訳ではないが、OLEDにHILを設けることが有用であることが多い。OLED中のHIL130は、アノードからHTLへの正孔の注入を促進する役割を果たすことができ、それによりOLEDの駆動電圧が低下する。HIL130に使用するのに適切な材料としては、米国特許第4,720,432号に記載されるようなポルフィリン化合物、及びいくつかの芳香族アミン(例えば、4,4’,4’’−トリス[(3−エチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−TDATA))が挙げられるが、これらに限定されない。OELDに有用であることが報告されている代替的な正孔注入材料は、欧州特許出願公開第0891121号及び欧州特許出願公開第1029909号に記載されている。後述する芳香族第三級アミンも正孔注入材料として有用であり得る。ジピラジノ[2,3−f:2’,3’−h]キノキサリンヘキサカルボニトリル等の他の有用な正孔注入材料が、米国特許出願公開第2004/0113547号及び米国特許第6,720,573号に記載されている。また、米国特許第6,423,429号に記載されるように、p型ドープ有機層もHILに有用である。「p型ドープ有機層」という用語は、この層がドープ後に半導体特性を有し、この層を流れる電流が正孔により実質的に搬送されることを意味する。伝導性は、ドーパントからホスト材料への正孔の移動による電荷移動錯体の形成によってもたらされる。
【0112】
HIL130の厚さは、0.1nm〜200nmの範囲内、好ましくは0.5nm〜150nmの範囲内である。
【0113】
<正孔輸送層>
HTL132は、少なくとも1つの正孔輸送材料(例えば、芳香族第三級アミン)を含有する。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香環の成員である)のみに結合する少なくとも1つの三価窒素原子を含有する化合物であると理解される。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えば、モノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、高分子アリールアミン)である。単量体トリアリールアミンの例は、Klupfelらの米国特許第3,180,730号に示されている。1つ以上のビニルラジカル、又は少なくとも1つの活性な水素含有基で置換された他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらの米国特許第3,567,450号及び同第3,658,520号に開示されている。
【0114】
より好ましい種類の芳香族第三級アミンは、米国特許第4,720,432号及び米国特許第5,061,569号に記載されるように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。かかる化合物として、構造式(A)により表されるものが挙げられる。
【0115】
【化30】

【0116】
式中、Q1及びQ2は、独立して選択される芳香族第三級アミン部分であり、Gは炭素−炭素結合の連結基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、又はアルキレン基)である。
【0117】
1つの実施形態において、Q1又はQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えば、ナフタレン)を含有する。Gがアリール基である場合には、Q1又はQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、又はナフタレン部分であることが好都合である。
【0118】
構造式(A)を満たし、且つ2つのトリアリールアミン部分を含有する、有用な種類のトリアリールアミンは、構造式(B)で表される。
【0119】
【化31】

【0120】
式中、各R1及びR2は、水素原子、アリール基又はアルキル基を独立して表し、又はR1及びR2は共にシクロアルキル基を完成する原子を表し、各R3及びR4は、構造式(C)により示されるようなジアリール置換アミノ基で順に置換されたアリール基を独立して表す。
【0121】
【化32】

【0122】
式中、R5及びR6は、独立して選択されるアリール基である。1つの実施形態において、R5又はR6の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えば、ナフタレン)を含有する。
【0123】
他の種類の芳香族第三級アミンは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンは、構造式(C)に示されるもののような、アリーレン基を介して連結された2つのジアリールアミノ基を含む。有用なテトラアリールジアミンとしては、式(D)により表されるものである。
【0124】
【化33】

【0125】
式中、各AREは、独立して選択されるアリーレン基(例えば、フェニレン部分又はアントラセン部分)であり、nは1〜4の整数であり、Ar、R7、R8及びR9は、独立して選択されるアリール基である。典型的な実施形態において、Ar、R7、R8及びR9のうちの少なくとも1つは、多環式縮合環構造(例えば、ナフタレン)である。
【0126】
他の種類の正孔輸送材料は、式(E)の材料を含む。
【0127】
【化34】

【0128】
式(E)において、Ar1〜Ar6は、芳香族基(例えば、フェニル基又はトリル基)を独立して表し、R1〜R12は、水素、又は独立して選択される置換基(例えば、1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、アリール基、置換アリール基)を独立して表す。
【0129】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)及び(E)の様々なアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、及びアリーレン部分はそれぞれ、順に置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及びハロゲン(例えば、フッ化物、塩化物、及び臭化物)が挙げられる。様々なアルキル部分及びアルキレン部分は、約1個〜6個の炭素原子を典型的に含有する。シクロアルキル部分は、3個〜約10個の炭素原子を含有することができるが、5個、6個、又は7個の環炭素原子を典型的に含有する(例えば、シクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、及びシクロヘプチル環構造)。アリール部分及びアリーレン部分は、典型的にフェニル部分及びフェニレン部分である。
【0130】
HTLは、単一の芳香族第三級アミン化合物、又は芳香族第三級アミン化合物の混合物から形成される。具体的には、トリアリールアミン(例えば、式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば、式(D)に示されるもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて用いる場合には、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入層及び電子輸送層とに挟まれた層として位置する。芳香族第三級アミンは、正孔注入材料としても有用である。有用な芳香族第三級アミンの例は以下である。
【0131】
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
1,5−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ナフタレン、
2,6−ビス(ジ−p−トリルアミノ)ナフタレン、
2,6−ビス[ジ−(1−ナフチル)アミノ]ナフタレン、
2,6−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ナフタレン、
2,6−ビス[N,N−ジ(2−ナフチル)アミン]フルオレン、
4−(ジ−p−トリルアミノ)−4’−[4−(ジ−p−トリルアミノ)−スチリル]スチルベン、
4,4’−ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル、
4,4’’−ビス[N−(1−アントリル)−N−フェニルアミノ]−p−テルフェニル、
4,4’−ビス[N−(1−コロネニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)、
4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−(2−ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)、
4,4’’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]−p−ターフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ナフタセニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ペリレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−フェナントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(2−ピレニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(3−アセナフテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)、
4,4’−ビス[N−(8−フルオランテニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス[N−(9−アントリル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、
4,4’−ビス{N−フェニル−N−[4−(1−ナフチル)−フェニル]アミノ}ビフェニル、
4,4’−ビス[N−フェニル−N−(2−ピレニル)アミノ]ビフェニル、
4,4’,4’’−トリス[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(m−TDATA)、
ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)−フェニルメタン、
N−フェニルカルバゾール、
N,N’−ビス[4−([1,1’−ビフェニル]−4−イルフェニルアミノ)フェニル]−N,N’−ジ−1−ナフタレニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ビス[4−(ジ−1−ナフタレニルアミノ)フェニル]−N,N’−ジ−1−ナフタレニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ビス[4−[(3−メチルフェニル)フェニルアミノ]フェニル]−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N−ビス[4−(ジフェニルアミノ)フェニル]−N’,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ジ−1−ナフタレニル−N,N’−ビス[4−(1−ナフタレニルフェニルアミノ)フェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N’−ジ−1−ナフタレニル−N,N’−ビス[4−(2−ナフタレニルフェニルアミノ)フェニル]−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン、
N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、
N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラ−1−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、
N,N,N’,N’−テトラ−2−ナフチル−4,4’−ジアミノビフェニル、及び
N,N,N’,N’−テトラ(2−ナフチル)−4,4’’−ジアミノ−p−ターフェニル。
【0132】
他の種類の有用な正孔輸送材料としては、欧州特許第1009041号に記載されるような多環芳香族化合物が挙げられる。オリゴマー材料を含む、2個より多いアミン基を有する芳香族第三級アミンを使用することができる。さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びコポリマー(例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))等の高分子正孔輸送材料が使用される。
【0133】
HTL132の厚さは、5nm〜200nmの範囲内、好ましくは10nm〜150nmの範囲内である。
【0134】
<励起子ブロック層(EBL)>
任意の励起子ブロック層又は電子ブロック層は、HTLとLELとの間に存在し得る(図1に示さず)。かかるブロック層のいくつかの好適な例が、米国特許出願公開第20060134460号に記載されている。
【0135】
<発光層>
米国特許第4,769,292号及び米国特許第5,935,721号により詳しく説明されているように、図1に示す有機EL素子の発光層(LEL)134(複数可)は、発光材料、蛍光材料、又はリン光材料を含み、この領域で電子−正孔対が再結合する結果としてエレクトロルミネッセンスが発生する。発光層は単一の材料で構成されていてもよいが、より一般的には、エレクトロルミネッセンスゲスト化合物(一般に、ドーパントと称される)をドープした非エレクトロルミネッセンス化合物(一般に、ホストと称される)、又は発光がエレクトロルミネッセンス化合物に主に由来する化合物を含有し、任意の色であり得る。エレクトロルミネッセンス化合物は、0.01%〜50%で非エレクトロルミネッセンス成分材料にコーティングすることができるが、典型的には0.01%〜30%、より典型的には0.01%〜15%で非エレクトロルミネッセンス成分にコーティングすることができる。LELの厚さは任意の適切な厚さであり、0.1mm〜100mmの範囲内であり得る。
【0136】
エレクトロルミネッセンス成分として染料を選択する上で重要な関係は、分子の最高被占分子軌道と最低空分子軌道とのエネルギー差として規定されるバンドギャップ電位の比較である。非エレクトロルミネッセンス化合物からエレクトロルミネッセンス化合物分子への効率的なエネルギー移動にとって必要な条件は、エレクトロルミネッセンス化合物のバンドギャップが、非エレクトロルミネッセンス化合物(複数可)のバンドギャップより小さいことである。したがって、適切なホスト材料の選択は、エレクトロルミネッセンス化合物(発せられる光の性質及び効率について選択される)の電気的特性と比較したその電気的特性に基づく。下記に記載されるように、蛍光ドーパント及びリン光ドーパントは、異なる電気的特性を典型的に有するため、それぞれのために最も適切なホストは異なり得る。しかしながら、同一のホスト材料がいずれかのタイプのドーパントにとって有用である場合もある。
【0137】
有用であることが知られている非エレクトロルミネッセンス化合物及び発光分子としては、米国特許第5,141,671号、米国特許第5,150,006号、米国特許第5,151,629号、米国特許第5,405,709号、米国特許第5,484,922号、米国特許第5,593,788号、米国特許第5,645,948号、米国特許第5,683,823号、米国特許第5,755,999号、米国特許第5,928,802号、米国特許第5,935,720号、米国特許第5,935,721号、及び米国特許第6,020,078号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
a)リン光発光層
リン光LELに適切なホストは、ホストからリン光ドーパント(複数可)への三重項励起子の移動が効率的に起こり得るが、リン光ドーパント(複数可)からホストへの三重項励起子の移動が効率的に起こり得ないように選択しなくてはならない。したがって、ホストの三重項エネルギーが、リン光ドーパントの三重項エネルギーより高いことが非常に望ましい。一般的に言えば、大きな三重項エネルギーは光学バンドギャップが大きいことを示唆する。しかしながら、ホストのバンドギャップは、正孔の蛍光青色LELへの注入に対する許容し難い障壁、及びOLEDの駆動電圧の許容し難い上昇の原因となるほど大きくないように選択しなくてはならない。リン光LELのホストは、それが層中のリン光ドーパントの三重項エネルギーより高い三重項エネルギーを有する限り、HTL132に使用される上述の正孔輸送材料のいずれかを含み得る。リン光LELに使用されるホストは、HTL132に使用される正孔輸送材料と同一であっても、又は異なっていてもよい。場合によっては、リン光LELのホストは、適切には、それがリン光ドーパントの三重項エネルギーより高い三重項エネルギーを有する限り、電子輸送材料(後述する)も含み得る。
【0139】
HTL132中の上述の正孔輸送材料に加えて、いくつかの他の種類の正孔輸送材料もリン光LELにおいてホストとして使用するのに適切である。
【0140】
望ましいホストの1つは、式(F)の正孔輸送材料を含む。
【0141】
【化35】

【0142】
式(F)において、R1及びR2は置換基を表し、ただし、R1及びR2は結合して環を形成してもよく(例えば、R1及びR2はメチル基であっても、又は結合してシクロヘキシル環を形成してもよい)、Ar1〜Ar4は、独立して選択される芳香族基(例えば,フェニル基又はトリル基)を表し、R3〜R10は、水素、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基を独立して表す。
【0143】
適切な材料の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン(TAPC)、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)シクロペンタン、
4,4’−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビス[N,N−ビス(4−メチルフェニル)−ベンゼンアミン、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)−4−メチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−(N,N−ジ−p−トリルアミノ)フェニル)−3−フェニルプロパン、
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル(methylpenyl))メタン、
ビス[4−(N,N−ジエチルアミノ)−2−メチルフェニル](4−メチルフェニル)エタン、
4−(4−ジエチルアミノフェニル)トリフェニルメタン、
4,4’−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)ジフェニルメタン。
【0144】
ホストとして使用するのに適切である有用な種類のトリアリールアミンとしては、式(G)で表されるようなカルバゾール誘導体が挙げられる。
【0145】
【化36】

【0146】
式(G)において、Qは、窒素、炭素、アリール基又は置換アリール基、好ましくはフェニル基を独立して表し、R1は好ましくはアリール基又は置換アリール基、より好ましくはフェニル基、置換フェニル基、ビフェニル基、置換ビフェニル基であり、R2〜R7は独立して、水素、アルキル基、フェニル基若しくは置換フェニル基、アリールアミン、カルバゾール又は置換カルバゾールであり、且つnは1〜4から選択される。
【0147】
構造式(G)を満たす他の有用な種類のカルバゾールは、式(H)により表される。
【0148】
【化37】

【0149】
式中、nは1〜4の整数であり、Qは、窒素、炭素、アリール又は置換アリールであり、R2〜R7は独立して、水素、アルキル基、フェニル若しくは置換フェニル、アリールアミン、カルバゾール及び置換カルバゾールである。
【0150】
有用な置換カルバゾールの例は以下である。
4−(9H−カルバゾール−9−イル)−N,N−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−ベンゼンアミン(TCTA)、
4−(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)−N,N−ビス[4(3−フェニル−9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−ベンゼンアミン、
9,9’−[5’−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル][1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−4,4’’−ジイル]ビス−9H−カルバゾール、
9,9’−(2,2’−ジメチル[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル)ビス−9H−カルバゾール(CDBP);
9,9’−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイルビス−9H−カルバゾール(CBP)、
9,9’−(1,3−フェニレン)ビス−9H−カルバゾール(mCP)、
9,9’−(1,4−フェニレン)ビス−9H−カルバゾール、
9,9’,9’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス−9H−カルバゾール、
9,9’−(1,4−フェニレン)ビス[N,N,N’,N’−テトラフェニル−9H−カルバゾール−3,6−ジアミン、
9−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン、
9,9’−(1,4−フェニレン)ビス[N,N−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン、
9−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N,N’,N’−テトラフェニル−9H−カルバゾール−3,6−ジアミン。
【0151】
リン光LELに適切な上記の種類のホストは、蛍光LELにおけるホストとしても同様に使用することができる。
【0152】
リン光LELに使用するのに適切なリン光ドーパントは、下記式(J)によって記載されるリン光材料から選択することができる。
【0153】
【化38】

【0154】
式中、Aは、少なくとも1つの窒素原子を含有する置換又は非置換の複素環であり、Bは、置換又は非置換の芳香環若しくは芳香族複素環であるか、又はMに結合したビニル炭素を含有する環であり、X−Yはアニオン性二座配位子であり、M=Rh若しくはIrの場合、m+n=3となるように、mは1〜3の整数であり、且つnは0〜2の整数であるか、又はM=Pt若しくはPdの場合、m+n=2となるように、mは1〜2の整数であり、且つnは0〜1の整数である。
【0155】
式(J)に従う化合物は、その中心金属原子が、金属原子と1つ以上の配位子の炭素原子及び窒素原子との結合により形成される環状単位に含有されることを示すために、C,N−(又はC^N−)シクロメタル化錯体と称される場合もある。式(J)における複素環Aの例としては、置換又は非置換のピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、ピリミジン環、インドール環、インダゾール環、チアゾール環、及びオキサゾール環が挙げられる。式(J)における環Bの例としては、置換又は非置換のフェニル環、ナフチル(napthyl)環、チエニル環、ベンゾチエニル環、フラニル環が挙げられる。式(J)における環Bは、ピリジン等のN含有環であってもよく、ただし、このN含有環は、式(J)に示すように、N原子ではなくC原子を介してMに結合する。
【0156】
式(J)(m=3であり、且つn=0である)に従うトリス−C,N−シクロメタル化錯体の例は、トリス(2−フェニル−ピリジナト−N,C2’−)イリジウム(III)であり、facial(fac)異性体又はmeridional(mer)異性体として下記立体図に示す。
【0157】
【化39】

【0158】
一般に、facial異性体はmeridional異性体より高いリン光量子収率を有すると判明することが多いため、facial異性体が好ましい。式(J)に従うトリス−C,N−シクロメタル化リン光材料のさらなる例は、トリス(2−(4’−メチルフェニル)ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(3−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(1−(4’−メチルフェニル)イソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル(diflourophenyl))−ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(2−((5’−フェニル)−フェニル)ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)、トリス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’)イリジウム(III)、トリス(2−フェニル−3,3’−ジメチル)インドラト(indolato)−N,C2’)Ir(III)、トリス(1−フェニル−1H−インダゾラト(indazolato)−N,C2’)Ir(III)である。
【0159】
これらの中でも、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム(III)(Ir(piq)3とも称される)及びトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3とも称される)が本発明に特に適切である。
【0160】
トリス−C,N−シクロメタル化リン光材料には、一価アニオン性二座配位子X−Yが他のC,N−シクロメタル化配位子である、式(J)に従う化合物も含まれる。例としては、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)及びビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)が挙げられる。2つの異なるC,N−シクロメタル化配位子を含有する、かかるトリス−C,N−シクロメタル化錯体の合成は、以下の工程により都合よく合成することができる。最初に、ビス−C,N−シクロメタル化ジハロゲン化二イリジウム錯体(又は類似の二ロジウム錯体)を、Nonoyama(Bull. Chem. Soc. Jpn., 47, 767 (1974))の方法に従って作製する。第2に、第2の異種C,N−シクロメタル化配位子の亜鉛錯体を、ハロゲン化亜鉛と、シクロメタル化配位子のリチウム錯体又はグリニャール試薬との反応により調製する。第3に、そのように形成された第2のC,N−シクロメタル化配位子の亜鉛錯体を、先に得られたビス−C,N−シクロメタル化ジハロゲン化二イリジウム錯体と反応させて、2つの異なるC,N−シクロメタル化配位子を含有するトリス−C,N−シクロメタル化錯体を形成させる。望ましくは、そのように得られた2つの異なるC,N−シクロメタル化配位子を含有するトリス−C,N−シクロメタル化錯体は、ジメチルスルホキシド等の適切な溶媒中で加熱することにより、金属(例えばIr)に結合したC原子が全て互いにシスである異性体に変換することができる。
【0161】
式(J)に従う適切なリン光材料は、C,N−シクロメタル化配位子(複数可)に加えて、C,N−シクロメタル化していない一価アニオン性二座配位子(複数可)X−Yも含有し得る。一般的な例は、アセチルアセトネート等のβ−ジケトネート、及びピコリネート等のシッフ塩基である。式(J)に従う、かかる混合配位子錯体の例としては、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C3’)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、及びビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル(diflourophenyl))−ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(ピコリネート)が挙げられる。
【0162】
式(J)に従う他の重要なリン光材料としては、cis−ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)ピリジナト−N,C3’)白金(II)、cis−ビス(2−(2’−チエニル)キノリナト−N,C5')白金(II)、又は(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’)白金(II)(アセチルアセトネート)等のC,N−シクロメタル化Pt(II)錯体が挙げられる。
【0163】
式(J)に従うC,N−シクロメタル化リン光材料の発光波長(色)は、錯体の最低エネルギー光学遷移、したがってC,N−シクロメタル化配位子の選択に主に依存する。例えば、2−フェニル−ピリジナト−N,C2’錯体は典型的に緑色発光であるが、1−フェニル−イソキノリノラト−N,C2’錯体は典型的に赤色発光である。1つよりも多いC,N−シクロメタル化配位子を有する錯体の場合、発光は発光波長が最も長いという性質を有する配位子のものとなる。発光波長は、C,N−シクロメタル化配位子上の置換基の影響によりさらにシフトし得る。例えば、N含有環A上の適切な位置にある電子供与基、又はC含有環B上の電子求引基を置換することにより、発光が非置換C,N−シクロメタル化配位子錯体と比較して青色にシフトする傾向がある。式(J)においてより強い電子求引特性を有する単座アニオン性配位子X,Yを選択することにより、C,N−シクロメタル化配位子錯体の発光が同様に青色にシフトする傾向がある。電子求引特性を有する一価アニオン性二座配位子及び電子求引置換基の両方をC含有環B上に有する錯体の例としては、ビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(ピコリネート)及びビス(2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)−ピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(テトラキス(1−ピラゾリル)ボレート)が挙げられる。
【0164】
式(J)に従うリン光材料の中心金属原子は、Rh又はIr(m+n=3)、及びPd又はPt(m+n=2)であり得る。好ましい金属原子はIr及びPtであるが、これはこれらの原子が、より強いスピン軌道結合相互作用(一般に、第三遷移系列の元素により得られる)によって、より高いリン光量子効率をもたらす傾向があるためである。
【0165】
式(J)によって表される二座C,N−シクロメタル化錯体に加えて、多くの適切なリン光材料が多座C,N−シクロメタル化配位子を含有する。本発明に使用するのに好適な、三座配位子を有するリン光材料は、米国特許第6,824,895号に開示されている。本発明に使用するのに適切な、四座配位子を有するリン光材料は、以下の式により記載される。
【0166】
【化40】

【0167】
式中、MはPt又はPdであり、R1〜R7は水素又は独立して選択される置換基を表し、ただし、R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、R4及びR5、R5及びR6、並びにR6及びR7が結合して環基を形成してもよく、R8〜R14は水素又は独立して選択される置換基を表し、ただし、R8及びR9、R9及びR10、R10及びR11、R11及びR12、R12及びR13、並びにR13及びR14が結合して環基を形成してもよく、Eは以下から選択される架橋基を表す。
【0168】
【化41】

【0169】
式中、R及びR’は、水素又は独立して選択される置換基を表し、ただし、R及びR’が結合して環基を形成してもよい。
【0170】
リン光ドーパントとして使用するのに適切な望ましい四座C,N−シクロメタル化リン光材料の1つは、以下の式により表される。
【0171】
【化42】

【0172】
式中、R1〜R7は、水素又は独立して選択される置換基を表し、ただし、R1及びR2、R2及びR3、R3及びR4、R4及びR5、R5及びR6、並びにR6及びR7が結合して環基を形成してもよく、R8〜R14は、水素又は独立して選択される置換基を表し、ただし、R8及びR9、R9及びR10、R10及びR11、R11及びR12、R12及びR13、並びにR13及びR14が結合して環基を形成してもよく、Z1〜Z5は、水素又は独立して選択される置換基を表し、ただし、Z1及びZ2、Z2及びZ3、Z3及びZ4、並びにZ4及びZ5が結合して環基を形成してもよい。
【0173】
本発明に使用するのに適切な四座C,N−シクロメタル化配位子を有するリン光材料の具体例としては、下記に示される化合物(M−1)、(M−2)及び(M−3)が挙げられる。
【0174】
【化43】

【0175】
四座C,N−シクロメタル化配位子を有するリン光材料は、四座C,N−シクロメタル化配位子を、氷酢酸等の適当な有機溶媒中でK2PtCl4等の所望の金属の塩と、四座C,N−シクロメタル化配位子を有するリン光材料が形成されるように反応させることにより合成することができる。テトラブチルアンモニウムクロリド等のテトラアルキルアンモニウム塩を相間移動触媒として用いて、反応を促進することができる。
【0176】
C,N−シクロメタル化配位子を含まない他のリン光材料が知られている。Pt(II)、Ir(I)、及びRh(I)のマレオニトリルジチオレートとのリン光錯体が報告されている(Johnson et al., J. Am. Chem. Soc., 105, 1795 (1983))。Re(I)トリカルボニルジイミン錯体も強いリン光を発することが知られている(Wrighton and Morse, J. Am. Chem. Soc., 96, 998 (1974)、Stufkens, Comments Inorg. Chem., 13, 359 (1992)、Yam, Chem. Commun., 789 (2001))。シアノ配位子及びビピリジル配位子又はフェナントロリン配位子を含む配位子の組み合わせを含有するOs(II)錯体も、ポリマーOLEDにおいて実証されている(Ma et al., Synthetic Metals, 94, 245 (1998))。
【0177】
2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン白金(II)等のポルフィリン錯体も有用なリン光ドーパントである。
【0178】
有用なリン光材料のさらに他の例としては、Tb3+及びEu3+等の三価ランタニドの配位錯体が挙げられる(Kido et al., Chem. Lett., 657 (1990)、J. Alloys and Compounds, 192, 30 (1993)、Jpn. J. Appl. Phys., 35, L394 (1996)及びAppl. Phys. Lett., 65, 2124 (1994))。
【0179】
リン光LEL中のリン光ドーパントは、LELの1体積%〜20体積%の量で典型的に存在し、LELの2体積%〜8体積%であるのが都合がよい。いくつかの実施形態では、1つ以上のホスト材料にリン光ドーパント(複数可)を加えてもよい。ホスト材料はさらに、ポリマーであってもよい。第1のリン光発光層中のリン光ドーパントは、緑色リン光材料及び赤色リン光材料から選択される。
【0180】
リン光LELの厚さは、0.5nm超過、好ましくは1.0nm〜40nmの範囲内である。
【0181】
b)蛍光発光層
「蛍光」という用語は、任意の発光材料を説明するために一般に使用されるが、本件においては、該用語は一重項励起状態から発光する材料を指す。蛍光材料は、リン光材料と同一の層、隣接する層、隣接する画素において、又は任意の組み合わせで使用され得る。本発明のリン光材料の性能に悪影響を与える材料を選択しないよう注意しなければならない。リン光材料と同一の層又は隣接する層における材料の濃度及び三重項エネルギーを、望ましくないリン光の消失を防ぐよう適切に設定すべきことが当業者には理解される。
【0182】
典型的には、蛍光LELは、少なくとも1つのホスト及び少なくとも1つの蛍光ドーパントを含む。ホストは正孔輸送材料であっても、又は上記に規定されるリン光ドーパントに適切なホストのいずれかであっても、又は下記に規定される電子輸送材料であってもよい。
【0183】
ドーパントは、強い蛍光を発する染料、例えば、国際公開第98/55561号、国際公開第00/18851号、国際公開第00/57676号、及び国際公開第00/70655号に記載されるような遷移金属錯体から典型的に選択される。
【0184】
有用な蛍光ドーパントとしては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、フェニレンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物及びチアピリリウム化合物、アリールピレン化合物、アリーレンビニレン化合物、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタンホウ素化合物、ジスチリルベンゼン(distryrylbenzene)誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、ジスチリルアミン誘導体、並びにカルボスチリル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
いくつかの蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、及びキナクリドンの誘導体、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物及びチアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、(米国特許第5,121,029号に記載されるような)ビス(アジニル)メタン化合物、並びにカルボスチリル化合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な材料の実例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
【化44】

【0187】
【化45】

【0188】
【化46】

【0189】
【化47】

【0190】
【化48】

【0191】
【化49】

【0192】
好ましい蛍光青色ドーパントは、Chen, Shi, and Tang, "Recent Developments in Molecular Organic Electroluminescent Materials," Macromol. Symp. 125, 1 (1997)及びそれに引用される引用文献、Hung and Chen, "Recent Progress of Molecular Organic Electroluminescent Materials and Devices," Mat. Sci. and Eng. R39, 143 (2002)及びそれに引用される引用文献に見ることができる。
【0193】
特に好ましい種類の青色発光蛍光ドーパントは、ビス(アジニル)アミンボラン錯体として知られる式(N)によって表され、米国特許第6,661,023号に記載されている。
【0194】
【化50】

【0195】
式中、A及びA’は、少なくとも1つの窒素を含有する6員芳香環系に相当する独立したアジン環系を表し、各Xa及びXbは、独立して選択される置換基であり、そのうちの2つがA又はA’と結合して縮合環を形成してもよく、m及びnは独立して0〜4であり、Za及びZbは独立して選択される置換基であり、且つ1、2、3、4、1’、2’、3’及び4’は炭素原子又は窒素原子のいずれかであるように独立して選択される。
【0196】
望ましくは、アジン環がキノリニル環又はイソキノリニル環のいずれかであって、1、2、3、4、1’、2’、3’及び4’が全て炭素であり、m及びnが2以上であり、且つXa及びXbが、結合して芳香環を形成する少なくとも2つの炭素置換基を表す。望ましくは、Za及びZbはフッ素原子である。
【0197】
好ましい実施形態は、2つの縮合環系がキノリン系又はイソキノリン系であり、アリール又は複素環置換基がフェニル基であり、結合して6−6縮合環を形成する少なくとも2つのXa基及び2つのXb基が存在し、この縮合環系がそれぞれ1位−2位、3位−4位、1’位−2’位、又は3’位−4’位で縮合し、縮合環の一方又は両方がフェニル基で置換され、且つドーパントが式(N−a)、式(N−b)、又は式(N−c)に示される装置をさらに含む。
【0198】
【化51】

【0199】
式中、各Xc、Xd、Xe、Xf、Xg及びXhは、水素又は独立して選択される置換基であり、そのうちの1つがアリール基又は複素環基でなくてはならない。
【0200】
望ましくは、アジン環がキノリニル環又はイソキノリニル環のいずれかであって、1、2、3、4、1’、2’、3’及び4’が全て炭素であり、m及びnが2以上であり、且つXa及びXbが、結合して芳香環を形成する少なくとも2つの炭素置換基を表し、1つはアリール基又は置換アリール基である。望ましくは、Za及びZbはフッ素原子である。
【0201】
これらの中でも、化合物FD−54が特に有用である。
【0202】
クマリンは、Tangらの米国特許第4,769,292号及び米国特許第6,020,078号に記載されているように、有用な種類の緑色発光ドーパントである。緑色ドーパント又は緑色発光材料は、0.01重量%〜50重量%でホスト材料にコーティングしてもよいが、典型的には0.01%〜30%、より典型的には0.01重量%〜15重量%でホスト材料にコーティングしてもよい。有用な緑色発光クマリンの例としては、C545T及びC545TBが挙げられる。キナクリドンは、他の有用な種類の緑色発光ドーパントである。有用なキナクリドンは、米国特許第5,593,788号、特開平09−13026号、及び本発明の譲受人に譲渡された、Lelia Cosimbescuにより2002年6月27日付で出願された、「緑色有機発光ダイオードを含むデバイス(Device Containing Green Organic Light-Emitting Diode)」という表題の米国特許出願第10/184,356号(現在、放棄されている)で説明されている。
【0203】
特に有用な緑色発光キナクリドンの例は、FD−7及びFD−8である。
【0204】
下記式(N−d)は、本発明に有用な他の種類の緑色発光ドーパントを表す。
【0205】
【化52】

【0206】
式中、A及びA’は、少なくとも1つの窒素を含有する6員芳香環系に相当する独立したアジン環系を表し、各Xa及びXbは、独立して選択される置換基であり、そのうちの2つがA又はA’と結合して縮合環を形成してもよく、m及びnは独立して0〜4であり、YはH又は置換基であり、Za及びZbは独立して選択される置換基であり、且つ1、2、3、4、1’、2’、3’及び4’は炭素原子又は窒素原子のいずれかであるように独立して選択される。
【0207】
該装置において、1、2、3、4、1’、2’、3’及び4’は全て炭素原子であるのが都合がよい。装置は、結合して縮合環を形成する置換基を含有する環A又は環A’の少なくとも一方又は両方を望ましくは含有し得る。有用な1つの実施形態において、ハロゲン化物、並びにアルキル基、アリール基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から成る群から選択される少なくとも1つのXa基又はXb基が存在する。他の実施形態において、フッ素、並びにアルキル基、アリール基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基から成る群から独立して選択されるZa基及びZb基が存在する。望ましい実施形態において、Za及びZbはFである。Yは、好適には、水素、又はアルキル基、アリール基、若しくは複素環基等の置換基である。
【0208】
これらの化合物の発光波長は、目標色、すなわち緑色を達成するために、中心のビス(アジニル)メテンホウ素基の周囲を適切に置換することにより或る程度調整することができる。有用な材料のいくつかの例は、FD−50、FD−51及びFD−52である。
【0209】
ナフタセン及びその誘導体も有用な種類の発光ドーパントであり、安定剤としても使用することができる。これらのドーパント材料を0.01重量%〜50重量%でホスト材料にコーティングしてもよいが、典型的には0.01%〜30%、より典型的には0.01重量%〜15重量%でホスト材料にコーティングしてもよい。下記のナフタセン誘導体YD−1(t−BuDPN)は、安定剤として使用されるドーパント材料の例である。
【0210】
【化53】

【0211】
この種類の材料のいくつかの例は、ドーパントだけでなくホスト材料としても適切である。例えば、米国特許第6773832号又は米国特許第6720092号を参照されたい。この材料の具体例はルブレン(FD−5)である。
【0212】
他の種類の有用なドーパントはペリレン誘導体である。例えば、米国特許第6689493号を参照されたい。具体例はFD−46である。
【0213】
8−ヒドロキシキノリン及び類似の誘導体の金属錯体(式O)は、エレクトロルミネッセンスを支持することが可能な、有用な非エレクトロルミネッセンスホスト化合物の1種を構成し、500nmより長い波長、例えば、緑色、黄色、橙色、及び赤色の発光に特に適切である。
【0214】
【化54】

【0215】
式中、Mは金属を表し、nは1〜4の整数であり、且つZはどの場合も、少なくとも2つの縮合芳香環を有する核を完成する原子を独立して表す。
【0216】
金属が一価、二価、三価、又は四価の金属であり得ることが上記から明らかである。金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、若しくはカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム若しくはカルシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム若しくはガリウム等の土類金属、又は亜鉛若しくはジルコニウム等の遷移金属であり得る。一般に、有用なキレート金属であることが知られる任意の一価、二価、三価、又は四価の金属を使用することができる。
【0217】
Zは、少なくとも2つの縮合芳香環(そのうち少なくとも1つはアゾール環又はアジン環である)を含有する複素環の核を完成させる。必要に応じて、追加の環(脂環及び芳香環の両方を含む)を、2つの所要の環と縮合させてもよい。機能が改善されることなく多量の分子が付加されることを回避するために、環原子の数は通常18以下に維持される。
【0218】
有用なキレート化オキシノイド化合物の例は以下である。
O−1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
O−2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8−キノリノラト)マグネシウム(II)]
O−3:ビス[ベンゾ{f}−8−キノリノラト]亜鉛(II)
O−4:ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)
O−5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)インジウム]
O−6:アルミニウムトリス(5−メチルオキシン)[別名、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)]
O−7:リチウムオキシン[別名、(8−キノリノラト)リチウム(I)]
O−8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8−キノリノラト)ガリウム(III)]
O−9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8−キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
O−10:ビス(2−メチル−8−キノリナト)−4−フェニルフェノラトアルミニウム(III)。
【0219】
式(P)に従うアントラセン誘導体もLELに有用なホスト材料である。
【0220】
【化55】

【0221】
式中、R1〜R10は、水素、1個〜24個の炭素原子を有するアルキル基又は6個〜24個の炭素原子を有する芳香族基から独立して選択される。特に好ましいのは、R1及びR6がフェニル、ビフェニル、又はナフチル(napthyl)であり、R3がフェニル、置換フェニル、又はナフチル(napthyl)であり、R2、R4、R5、R7〜R10が全て水素である化合物である。かかるアントラセンホストは、優れた電子輸送特性を有することが知られている。
【0222】
9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセンの誘導体が特に望ましい。具体例としては、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(ADN)及び2−t−ブチル−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)が挙げられる。米国特許第5,927,247号に記載されるようなジフェニルアントラセン及びその誘導体等の他のアントラセン誘導体が、LELにおける非エレクトロルミネッセンス化合物として有用であり得る。米国特許第5,121,029号及び特開平08−333569号に記載されるようなスチリルアリーレン誘導体も、有用な非エレクトロルミネッセンス材料である。例えば、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルエテニル)−1,1’−ビフェニル(DPVBi)、及び欧州特許第681,019号に記載されるようなフェニルアントラセン誘導体は、有用な非エレクトロルミネッセンス材料である。
【0223】
適切なアントラセンのいくつかの具体例は以下である。
【0224】
【化56】

【0225】
【化57】

【0226】
<スペーサ層>
スペーサ層が存在する場合、スペーサ層はLELと直接接触させて配置される。スペーサ層は、アノード若しくはカソードのいずれかの上に配置してもよく、又はさらにはLELの両側に配置してもよい。スペーサ層は、典型的には、いかなる発光ドーパントをも含有しない。1つ以上の材料を使用してもよく、材料は上記で規定されるような正孔輸送材料、又は下記に規定されるような電子輸送材料のいずれかであり得る。リン光LELの隣に配置した場合、スペーサ層中の材料は、LEL中のリン光ドーパントの三重項エネルギーより高い三重項エネルギーを有しなくてはならない。最も望ましくは、スペーサ層中の材料は、隣接するLELにおいてホストとして使用されるものと同一である。したがって、記載されるいずれのホスト材料もスペーサ層に使用する上でも適切である。スペーサ層は、薄くなくてはならず、少なくとも0.1nm、しかし好ましくは1.0nm〜20nmの範囲内である。
【0227】
<正孔ブロック層(HBL)>
リン光エミッタを含有するLELが存在する場合、励起子及び再結合現象をLELに留めるのを助けるために、正孔ブロック層135を電子輸送層136と発光層134との間に配置するのが望ましい。この場合、共通ホスト(co-hosts)から正孔ブロック層への正孔の移動に対するエネルギー障壁がなくてはならず、一方で電子が正孔ブロック層から共通ホスト材料及びリン光エミッタを含む発光層へと容易に受け渡される必要がある。さらに、正孔ブロック材料の三重項エネルギーがリン光材料の三重項エネルギーより大きいことが望ましい。適切な正孔ブロック材料は、国際公開第00/70655号、国際公開第01/41512号、及び国際公開第01/93642号に記載されている。有用な正孔ブロック材料の2つの例は、バトクプロイン(BCP)及びビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。米国特許出願公開第20030068528号に記載されるように、BAlq以外の金属錯体も正孔及び励起子をブロックすることが知られている。正孔ブロック層を使用する場合、その厚さは2nm〜100nm、好適には5nm〜10nmであり得る。
【0228】
<電子輸送層>
上記したように、電子輸送層136は、フルオランテン大環状化合物を望ましくは含有し、又はフルオランテン大環状化合物と他の適切な材料との混合物であってもよい。
【0229】
いくつかの実施形態において、追加の電子輸送材料は、ETL又は追加の電子輸送層に使用するのに適切であり得る。キレート化オキシノイド化合物、アントラセン誘導体、ピリジン系材料、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール及びこれらの誘導体、ポリベンゾビスアゾール、シアノ含有ポリマー、及び過フッ化材料が挙げられるが、これらに限定されない。他の電子輸送材料としては、米国特許第4,356,429号に開示されているような様々なブタジエン誘導体、及び米国特許第4,539,507号に記載されるような様々な複素環光学的増白剤が挙げられる。
【0230】
好ましい種類のベンザゾールは、米国特許第5,645,948号及び米国特許第5,766,779号においてShiらにより説明されている。かかる化合物は構造式(Q)により表される。
【0231】
【化58】

【0232】
式(Q)において、nは2〜8から選択され、iは1〜5から選択され、Zは独立してO、NR、又はSであり、Rは個々に、水素、1個〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えば、プロピル、t−ブチル、ヘプチル等)、5個〜20個の炭素原子を有するアリール若しくはヘテロ原子置換アリール(例えば、フェニル、及びナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、及び他の複素環系)、又はクロロ、フルオロ等のハロゲン、又は縮合芳香環を完成するのに必要な原子であり、Xは、炭素、アルキル、アリール、置換アルキル、又は置換アリールから成る結合単位であり、共役的又は非共役的に複数のベンザゾールを結合する。
【0233】
有用なベンザゾールの例は、下記に示す式(Q−1)によって表される2,2’,2’’−(1,3,5−フェニレン)トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール](TPBI)である。
【0234】
【化59】

【0235】
他の適切な種類の電子輸送材料としては、式(R)によって表されるような様々な置換フェナントロリンが挙げられる。
【0236】
【化60】

【0237】
式(R)において、R1〜R8は独立して、水素、アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R1〜R8のうち少なくとも1つはアリール基又は置換アリール基である。
【0238】
EILに有用なフェナントロリンの具体例は、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−フェナントロリン(BCP)(式(R−1)を参照)及び4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)(式(R−2)を参照)である。
【0239】
【化61】

【0240】
電子輸送材料として機能する適切なトリアリールボランは、化学式(S)を有する化合物から選択され得る。
【0241】
【化62】

【0242】
式中、Ar1〜Ar3は独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環式(hydrocarbocyclic)基又は芳香族複素環基である。上記構造を有する化合物は、式(S−1)から選択されることが好ましい。
【0243】
【化63】

【0244】
式中、R1〜R15は独立して、水素、フルオロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、スルホニル基、アルキル基、アリール基又は置換アリール基である。
【0245】
トリアリールボランの具体的な実施態様としては以下が挙げられる。
【0246】
【化64】

【0247】
電子輸送材料は、式(T)の置換1,3,4−オキサジアゾールからも選択され得る。
【0248】
【化65】

【0249】
式中、R1及びR2は個々に、水素、1個〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えば、プロピル、t−ブチル、ヘプチル等)、5個〜20個の炭素原子を有するアリール又はヘテロ原子置換アリール(例えば、フェニル、及びナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、及び他の複素環系)、又はクロロ、フルオロ等のハロゲン、又は縮合芳香環を完成するのに必要な原子である。
【0250】
有用な置換オキサジアゾールの例は以下である。
【0251】
【化66】

【0252】
電子輸送材料は、式(U)に従う置換1,2,4−トリアゾールからも選択され得る。
【0253】
【化67】

【0254】
式中、R1、R2、及びR3は独立して、水素、アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R1〜R3のうち少なくとも1つはアリール基又は置換アリール基である。有用なトリアゾールの例は、式(U−1)によって表される3−フェニル−4−(1−ナフチル)−5−フェニル−1,2,4−トリアゾールである。
【0255】
【化68】

【0256】
電子輸送材料は、置換1,3,5−トリアジンからも選択され得る。適切な材料の例は:
2,4,6−トリス(ジフェニルアミノ)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリカルバゾロ−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス(N−フェニル−1−ナフチルアミノ)−1,3,5−トリアジン、
4,4’,6,6’−テトラフェニル−2,2’−ビ−1,3,5−トリアジン、
2,4,6−トリス([1,1’:3’,1’’−ターフェニル]−5’−イル)−1,3,5−トリアジンである。
【0257】
また、LEL中のホスト材料として有用な式(O)のオキシン自体のキレートを含む金属キレート化オキシノイド化合物(一般に、8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリンとも称される)のいずれかも、ETLに使用するのに適切である。
【0258】
高い三重項エネルギーを有するいくつかの金属キレート化オキシノイド化合物が、電子輸送材料として特に有用であり得る。高い三重項エネルギー準位を有する特に有用なアルミニウム又はガリウム錯体ホスト材料は、式(W)によって表される。
【0259】
【化69】

【0260】
式(W)において、M1はAl又はGaを表す。R2〜R7は水素又は独立して選択される置換基を表す。望ましくは、R2は電子供与基を表す。適切には、R3及びR4は各々独立して、水素又は電子供与置換基を表す。好ましい電子供与基は、メチル等のアルキルである。好ましくは、R5、R6及びR7は各々独立して、水素又は電子求引基を表す。隣接する置換基R2〜R7は、結合して環基を形成してもよい。Lは、酸素によりアルミニウムに連結した芳香族部分であり、Lが6個〜30個の炭素原子を有するように置換基で置換されていてもよい。
【0261】
ETLに使用する有用なキレート化オキシノイド化合物の例は、アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリン)−4−フェニルフェノラート[別名、Balq]である。
【0262】
LEL中のホスト材料として有用な式(P)に従うアントラセン誘導体と同一のものを、同様にETLにおいて使用してもよい。
【0263】
ETLの厚さは、典型的に5nm〜200nmの範囲内、好ましくは10nm〜150nmの範囲内である。
【0264】
<電子注入層>
上記したように、いくつかの実施形態において、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物(例えば、AM−1又はAM−2等の有機リチウム化合物)がEIL138中に存在する。さらなる実施形態において、EILは、2つ以上の副層、例えば、EIL1(ETLに隣接する)及びEIL2(カソードに隣接する)に分割されることができ、EIL1及びEIL2は、アルカリ金属、無機アルカリ金属化合物若しくは有機アルカリ金属化合物、又はそれらの混合物を含有することができる。またさらなる実施形態において、フルオランテン大環状化合物がETL中に存在し、式(R)により表されるようなフェナントロリン化合物(例えば、Bphen)がEIL中に存在し、アルカリ金属もまたEIL中に存在する。また他の実施形態において、フルオランテン大環状化合物がETL中に存在し、フェナントロリン化合物がEIL1に存在し、AM−1等の有機アルカリ金属化合物又はLiF等の無機リチウム化合物がEIL2中に存在する。
【0265】
いくつかの実施形態において、追加の電子注入材料は、EIL又は追加の電子注入層に使用するのに適切であり得る。ホストとして少なくとも1つの電子輸送材料、及び少なくとも1つのn型ドーパントを含有するn型ドープ層等の材料が挙げられるが、これに限定されない。ドーパントは、電荷移動によってホストを還元することが可能である。「n型ドープ層」という用語は、この層がドープ後に半導体特性を有し、この層を流れる電流が電子によって実質的に搬送されることを意味する。
【0266】
EILにおけるホストは、電子の注入及び電子の輸送を支持することが可能な電子輸送材料であり得る。電子輸送材料は、上記で規定されるようなETL領域に使用する電子輸送材料から選択することができる。
【0267】
n型ドープEIL中のn型ドーパントは、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属、若しくはアルカリ土類金属化合物、又はそれらの組み合わせから選択することができる。「金属化合物」という用語は、有機金属錯体、金属有機塩、及び金属無機塩、金属酸化物、及び金属ハロゲン化物を包含する。この種類の金属含有n型ドーパントのうち、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Sm、Eu、Tb、Dy、又はYb、及びこれらの化合物が特に有用である。n型ドープEILにおいてn型ドーパントとして使用される材料には、強い電子供与特性を有する有機還元剤も含まれる。「強い電子供与特性」とは、有機ドーパントが少なくともいくつかの電子電荷をホストに供与して、ホストと共に電荷移動錯体を形成可能であることを意味する。有機分子の非限定的な例として、ビス(エチレンジチオ)−テトラチアフルバレン(BEDT−TTF)、テトラチアフルバレン(TTF)、及びこれらの誘導体が挙げられる。高分子ホストの場合、ドーパントは上記のいずれかであるか、又は微量成分として分子状に分散した材料若しくはホストと共重合した材料でもある。好ましくは、n型ドープEIL中のn型ドーパントは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、若しくはYb、又はそれらの組み合わせを含む。n型ドープ濃度は、この層の0.01体積%〜20体積%の範囲内であるのが好ましい。
【0268】
EILの厚さは、典型的に20nm未満、しばしば10nm未満、又は5nm以下である。
【0269】
<カソード>
アノードのみを通して発光を見る場合には、カソード140は、ほぼ任意の導電性材料を含む。望ましい材料は、下にある有機層との効果的な接触を確実にする有効な膜形成特性を有し、低電圧で電子の注入を促進し、有効な安定性を有する。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな金属又は合金(4.0eV未満)を含有することが多い。好ましいカソード材料の1つは、米国特許第4,885,221号に記載されるようなMg:Ag合金を含む。他の適切な種類のカソード材料としては、有機層(例えば、有機EIL又はETL)に接触する薄い無機EILを含み、より厚い導電性金属層で覆われる二重層が挙げられる。ここで、無機EILは、仕事関数が小さな金属又は金属塩を含んでいることが好ましく、そのような場合には、より厚い被覆層が小さな仕事関数を有する必要はない。かかるカソードの1つは、米国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFの薄層と、その上に載るより厚いAl層を含む。他の有用なカソード材料の組としては、米国特許第5,059,861号、同第5,059,862号、及び同第6,140,763号に開示されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0270】
カソードを通して発光を見る場合、カソード140は透明であるか、又はほぼ透明である必要がある。かかる用途のためには、金属が薄いか、又は透明な導電性酸化物を使用するか、又はこのような材料を含んでいる必要がある。光学的に透明なカソードは、米国特許第4,885,211号、同第5,247,190号、同第5,703,436号、同第5,608,287号、同第5,837,391号、同第5,677,572号、同第5,776,622号、同第5,776,623号、同第5,714,838号、同第5,969,474号、同第5,739,545号、同第5,981,306号、同第6,137,223号、同第6,140,763号、同第6,172,459号、同第6,278,236号、同第6,284,393号、及び欧州特許第1076368号により詳細に記載されている。カソード材料は、熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンスパッタリング、又は化学蒸着によって典型的に堆積される。必要に応じて、多くの既知の方法(スルーマスク蒸着、米国特許第5,276,380号及び欧州特許第0732868号に記載されるような一体化シャドーマスキング(integral shadow masking)、レーザーアブレーション、及び選択的化学蒸着が挙げられるが、これらに限定されない)によってパターニングを行なう。
【0271】
EILの厚さは、0.1nm〜20nmの範囲内であることが多く、典型的に1nm〜5nmの範囲内である。
【0272】
<基板>
OLED100は、支持基板110上に典型的に設けられるが、ここでアノード120又はカソード140のいずれかが基板と接触していてもよい。基板と接触する電極は。便宜上、底面電極と称される。通常、底面電極はアノード120であるが、本発明はその構成に限定されない。基板は、意図される発光の方向に応じて光透過性であっても、又は不透明であってもよい。基板を通してEL発光を見るには光透過性が望ましい。このような場合には、透明なガラス又はプラスチックが一般に使用される。基板は複数の材料層を備える複雑な構造であってもよい。これは典型的には、OLED層の下側にTFTが設けられるアクティブマトリックス基板の場合に当てはまる。基板は、少なくとも発光画素化領域において、概ね透明な材料(ガラス又はポリマー等)から構成されることがさらに必要とされる。EL発光を上部電極を通して見る用途においては、底面支持体の光透過性は重要ではなく、したがって支持体は光透過性であっても、光吸収性であっても、又は光反射性であってもよい。この場合に使用される基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料(ケイ素、セラミックス等)、及び回路基板が挙げられるが、これらに限定されない。この場合もやはり、基板は、アクティブマトリクスTFT設計において見られるような複数の材料層を備える複雑な構造であってもよい。これらのデバイス構成においては、光透明性の上部電極を設けることが必要とされる。
【0273】
<有機層の堆積>
上記の有機材料は、昇華によって適切に堆積されるが、膜の形成を改善するために任意で結合剤を用いて溶媒から堆積させることもできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華によって堆積させる材料は、例えば、米国特許第6,237,529号に記載されるように、タンタル材料で構成されることの多い昇華「ボート」(sublimator "boat")から蒸発させるか、又は最初にドナーシートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。材料の混合物を含む層では、別個の昇華ボートを用いるか、又は材料を予め混合し、単一のボート若しくはドナーシートからコーティングすることができる。パターニング堆積は、シャドーマスク、一体化シャドーマスク(米国特許第5,294,870号)、ドナーシートからの空間的に限定された染料熱転写(米国特許第5,851,709号及び米国特許第6,066,357号)、インクジェット法(米国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0274】
OLEDを作製する上で有用な有機材料、例えば有機正孔輸送材料、有機エレクトロルミネッセンス成分をドープした有機発光材料は、分子結合力の比較的弱い比較的複雑な分子構造を有するため、物理的蒸着中に有機材料(複数可)の分解が回避されるよう注意を払う必要がある。上述の有機材料は、比較的高い純度で合成され、粉末、フレーク、又は顆粒の形態で提供される。これまで、かかる粉末又はフレークは、物理的蒸着源に入れて使用されてきたが、この物理的蒸着源には、有機材料の昇華又は気化により蒸気を形成させ、基板上で蒸気を凝縮させて基板上に有機層を設けるために熱が加えられる。
【0275】
有機粉末、フレーク又は顆粒を物理的蒸着において使用する際にいくつかの問題が見られていたが、これは、これらの粉末、フレーク、又は顆粒の取り扱いが困難であるということである。これらの有機材料は、比較的低い物理的密度を一般に有し、特に10-6トールにまで減圧されるチャンバ内に配置される物理的蒸着源に入れる際に、望ましくない低い熱伝導率を有する。このため、粉末粒子、フレーク、又は顆粒は、加熱源からの放射加熱、及び加熱源の加熱表面と直接接触した粒子又はフレークの伝導加熱によってしか加熱されない。加熱源の加熱表面と接触していない粉末粒子、フレーク、又は顆粒は、粒子間接触面積が比較的小さいことから、伝導加熱では効果的に加熱されない。これは物理的蒸着源におけるかかる有機材料の不均一な加熱をもたらし得る。したがって、結果として不均一な蒸着有機層が基板上に形成される可能性がある。
【0276】
これらの有機粉末は固結して固体ペレットとすることができる。昇華性有機材料粉末の混合物から固結して固体ペレットとなるこれらの固体ペレットは、取り扱いがより容易である。有機粉末の固体ペレットへの固結は、比較的単純な器具を用いて行なうことができる。1つ以上の非発光性の有機非エレクトロルミネッセンス成分材料、又は発光エレクトロルミネッセンス成分材料、又は非エレクトロルミネッセンス成分材料及びエレクトロルミネッセンス成分材料の混合物を含む混合物から形成される固体ペレットは、有機層を作製するために物理的蒸着源に入れることができる。かかる固結ペレットは、物理的蒸着装置において使用することができる。
【0277】
1つの態様において、本発明は、有機材料の圧縮ペレットから、OLEDの一部を形成する有機層を基板上に作製する方法を提供する。
【0278】
本発明の材料を堆積させる好ましい方法の1つは、米国特許出願公開第2004/0255857号及び米国特許出願第10/945,941号に記載されているが、この場合、本発明の材料の各々を蒸発させるために異なる蒸発源(source evaporators)が使用される。第2の好ましい方法は、温度制御された材料供給経路に沿って材料が計量供給される(metered)フラッシュ蒸発を利用する。このような好ましい方法は、以下の本願と同一出願人の米国特許第7,232,588号、同第7,238,389号、同第7,288,285号、同第7,288,286号、同第7,165,340号、米国特許出願第11/050,924号に記載されている。この第2の方法を用いる場合、各々の材料を異なる蒸発源を用いて蒸発させても、又は固体材料を混合した後に、同一の蒸発源を用いて蒸発させてもよい。
【0279】
<封止>
大抵のOLED装置は、水分及び/又は酸素に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば、窒素又はアルゴン)中で、乾燥剤(例えば、アルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、クレイ、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、金属硫酸塩、又は金属ハロゲン化物及び金属過塩素酸塩)と共に密封される。封止及び乾燥のための方法としては、米国特許第6,226,890号に記載される方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0280】
<OLED装置設計基準>
フルカラーディスプレイに対しては、LELの画素化が必要とされ得る。このLELの画素化堆積は、シャドーマスク、一体化シャドーマスク(米国特許第5,294,870号)、ドナーシートからの空間的に限定された染料熱転写(米国特許第5,688,551号、同第5,851,709号、及び同第6,066,357号)、並びにインクジェット法(米国特許第6,066,357号)を用いて行なわれる。
【0281】
本発明のOLEDでは、必要なら、その発光特性を向上させるために、既知の様々な光学的効果を利用することができる。これには、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止用若しくは反射防止用コーティングをディスプレイ上に設けること、偏光媒体をディスプレイ上に設けること、又は色フィルタ、減光フィルタ、若しくは色変換フィルタをディスプレイ上に設けること等がある。フィルタ、偏光板、及びグレア防止用又は反射防止用コーティングは、OLEDの上に、又はOLEDの一部として特に設けることができる。
【0282】
本発明のOLED装置では、必要なら、その特性を向上させるために、既知の様々な光学的効果を利用することができる。これには、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止用若しくは反射防止用コーティングをディスプレイ上に設けること、偏光媒体をディスプレイ上に設けること、又は色フィルタ、減光フィルタ、若しくは色変換フィルタをディスプレイ上に設けること等がある。フィルタ、偏光板、及びグレア防止用又は反射防止用コーティングは、カバーの上に、又はカバーの一部として特に設けることができる。
【0283】
本発明の実施形態により、良好な輝度効率、良好な動作安定性を有し、且つ駆動電圧を低減したEL装置が提供され得る。本発明の実施形態は、装置の寿命期間にわたって電圧増大を抑えることもでき、良好な光効率をもたらすように、高い再現性及び一貫性をもって作製することができる。本発明の実施形態では、電力消費(consumption requirements)がより少ないため、電池と共に使用する場合、電池寿命を延長することができる。
【0284】
本発明及びその利点を以下の具体例によりさらに説明する。「パーセンテージ」又は「パーセント」という用語、及び「%」という記号は、本発明の層及び装置の他の構成要素中の全材料における、特定の第1の化合物又は第2の化合物の体積パーセント(又は薄膜厚モニターで測定した厚さの比率)を表す。1種より多い第2の化合物が存在する場合には、第2の化合物の総体積を、本発明の層中の全材料におけるパーセンテージとして表すこともできる。
【実施例】
【0285】
(実施例1:本発明の化合物Inv−2の合成)
Inv−2を、以下に記載されるスキーム1に概説されるようにして合成した。
【0286】
【化70】

【0287】
(化合物3の合成)
メタノール(120mL)中のシクロドデカノン(Cpd2、11g、60.3ミリモル)を65℃に加熱し、1,2−アセナフチレンジオン(Cpd1、10g、54.9ミリモル)を加えた。よく攪拌しながら、次に水酸化カリウムの水溶液(20mLの1M溶液、20ミリモル)を滴下して加えた。添加終了時に、茶色溶液を65℃で約36時間加熱した。次に、その溶液を冷却し、沈殿物を濾別し、エタノールで洗い、空気乾燥して8,9,10,11,12,13,14,15,16−ノナヒドロ−7,17−メタノシクロトリデカアセナフチレン−18−オン(Cpd3、収量6.4g)を得た。
【0288】
(化合物Inv−2の調製)
化合物3(8,9,10,11,12,13,14,15,16−ノナヒドロ−7,17−メタノシクロトリデカアセナフチレン−18−オン、5.4g、16.4ミリモル)及び4−エチニル−1,1’−ビフェニル(Cpd4、2.9g、16.3ミリモル)を、1,2−ジクロロベンゼン(150mL)中、200℃で12時間加熱した。次に、溶液を冷却し、減圧下で溶媒を除去し、約50mLの溶媒を除いた。メタノール(50mL)を加えて再結晶を行った。得られた黄色がかった固体を濾別し、メタノールで洗い、空気乾燥して6.4gのInv−2を得た。Inv−2は、340℃の融点、220℃の収縮(shrinkage)を有していた。Inv−2を180〜210℃/3×10-1Torrで昇華させた。1H NMRスペクトルの分析は、所望の生成物が得られたことを示した。
【0289】
(実施例2.青色発光OLED装置2.1〜2.11の調製)
一連のOLED装置(2.1〜2.6)を以下の方法で組み立てた。
1.85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板をアノードとして、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、約1分間酸素プラズマに曝露した。
2.米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積させた。
3.次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を、95nmの厚さに堆積させた。
4.次に、ホスト材料P−4及び5.0体積%のFD−57に相当する20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
5.表1に示すような、Inv−1に相当する第1の電子輸送材料(ETM1)、又はP−4、又はInv−1とP−4との混合物に相当する第2の電子輸送材料(ETM2)を含有する35.0nmの電子輸送層(ETL)を、LEL上に堆積させた。
6.次に、AM−1に相当する3.5nmの電子注入層(EIL)を堆積させた。
7.最後に、100nmのアルミニウムの層をEIL上に堆積させて、カソードを形成した。
【0290】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。
【0291】
電子輸送層において、表1に特定されるようなC−1でInv−1(存在する場合)を置換したことを除き、装置2.1〜2.6と同様の方法で装置2.7〜2.11を調製した。
【0292】
【化71】

【0293】
それらの調製の間、各装置が重複して作製され、各実施例につき、完全に同じように作製された4つの装置を与えた。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び輝度効率について試験した。4つの重複した装置からの結果は平均化され、その結果を表1に報告する。
【0294】
【表1】

【0295】
電子輸送層においてInv−1を単独又はアントラセン誘導体P−4と組み合わせて含む装置(装置2.1〜2.5)が、ETLにおいてP−4のみを含有する比較装置2.6に比べて、より高い輝度、及び類似か又はより低い駆動電圧を提供することが表1から明らかである。
【0296】
比較装置2.7〜2.11は、フルオランテン誘導体C−1でInv−1を置換したことを除き、本発明の装置2.1〜2.5と同様の方法で組み立てられた。化合物C−1は、本発明の範囲外にあり、7,10−連結基をもつが、8,9−位において核に縮合した5員環基を有するフルオランテン核として記載され得る。OLED装置における化合物C−1及びその使用は、前に開示されている(特開2003−123978号公報)。各対応するレベルについて、Inv−1を含有する装置は、C−1を含有する装置に比べて低駆動電圧及び高輝度効率の両方を与えることが表1からわかる。さらに、比較装置2.7−2.11は、ETL中にアントラセン誘導体のみを含有する比較装置2.6に比べて不利であり、それらは、装置2.6に比べて駆動電圧が高いが、輝度が同等又は低い。
【0297】
(実施例3.赤色発光装置3.1〜3.6の調製)
一連のOLED装置(3.1〜3.6)を以下の方法で組み立てた。
1.85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板をアノードとして、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、約1分間酸素プラズマに曝露した。
2.米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積させた。
3.次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を、144.0nmの厚さに堆積させた。
4.次に、表2に示すような、ルブレン(FD−5)に相当する第1のホスト材料(ホスト1)、又はFD−5とInv−1に相当する第2のホスト材料(ホスト2)との混合物、及び0.5体積%のドーパントFD−46を含有する40nmの発光層(LEL)を堆積させた。
5.Inv−1の電子輸送層(ETL)を31.5nmの厚さでLEL上に真空堆積させた。
6.AM−1に相当する電子注入層(EIL)を3.5nmの厚さでETL上に真空堆積させた。
7.最後に、100nmのアルミニウムの層をEIL上に堆積させて、カソードを形成した。
【0298】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。
【0299】
【化72】

【0300】
それらの調製の間、各装置が重複して作製され、各実施例につき、完全に同じように作製された4つの装置を与えた。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び輝度効率について試験した。4つの重複した装置からの結果は平均化され、その結果を表2に報告する。
【0301】
【表2】

【0302】
ETLにInv−1を用いることに加えて、Inv−1がLELにおける共通ホストでもあるなら(装置3.2〜3.6)、改善された輝度効率、及びLEL中にInv−1を含有しない装置3.1に比べて同等又は低い駆動電圧(装置3.4を除く)を有する装置を得ることが表2から明らかである。全ての装置は、同じ全体厚さを有する。
【0303】
(実施例4.青色発光OLED装置4.1〜4.6の調製)
一連のOLED装置(4.1〜4.6)を以下の方法で組み立てた。
1.85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板をアノードとして、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、約1分間酸素プラズマに曝露した。
2.米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積させた。
3.次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を、95nmの厚さに堆積させた。
4.次に、ホスト材料P−4及び5.0体積%のドーパントFD−53に相当する20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
5.表3に記載するレベルでInv−2に相当する第1の電子輸送材料(ETM1)、又は表3に記載するレベルでInv−2とAM−2に相当する第2の電子輸送材料(ETM2)との混合物を含有する電子輸送層(ETL)を、LEL上に堆積させた。
6.装置4.2〜4.6については、表3に記載するレベルでAM−2に相当する電子注入層(EIL)をETL上に堆積させた。
7.最後に、100nmのアルミニウムの層をEIL上に堆積させて、カソードを形成した。装置4.1については、この層をETL上に直接堆積させた。
【0304】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。
【0305】
それらの調製の間、各装置が重複して作製され、各実施例につき、完全に同じように作製された4つの装置を与えた。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び輝度効率について試験した。4つの重複した装置からの結果は平均化され、その結果を表3に報告する。
【0306】
【表3】

【0307】
作製され、そして試験された全ての装置は、同じ全体厚さを有していた。AM−2を含有するEIL、及びInv−1又はAM−2と組み合わせたInv−2のいずれかを含有するETLを有する装置4.2〜4.6は、アルカリ金属物質を含有しない装置4.1に比べて良好な輝度及び比較的低い駆動電圧を与えた。
【0308】
(実施例3.青色発光OLED装置5.1〜5.11の調製)
一連のOLED装置(5.1〜5.5)を以下の方法で組み立てた。
1.85nmのインジウム−スズ酸化物(ITO)の層でコーティングしたガラス基板をアノードとして、順に、市販の洗剤中で超音波処理し、脱イオン水でリンスし、約1分間酸素プラズマに曝露した。
2.米国特許第6,208,075号に記載されるようなCHF3のプラズマ支援堆積によって、ITO上に1nmのフッ化炭素(CFx)正孔注入層(HIL)を堆積させた。
3.次に、正孔輸送材料4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)の層を、95nmの厚さに堆積させた。
4.次に、ホスト材料P−4及び1.5体積%のドーパントFD−54に相当する20nmの発光層(LEL)を堆積させた。
5.表4に示すような、Inv−1に相当する第1の電子輸送材料(ETM1)、又はP−4、又はInv−1とP−4との混合物に相当する第2の電子輸送材料(ETM2)を含有する35.0nmの電子輸送層(ETL)を、LEL上に堆積させた。
6.次に、AM−1に相当する3.5nmの電子注入層(EIL)をETL上に堆積させた。
7.最後に、100nmのアルミニウムの層をEIL上に堆積させて、カソードを形成した。
【0309】
上記の手順によってEL装置の堆積が完了した。次に、装置を周囲環境から保護するため、乾燥グローブボックス中で密封包装した。
【0310】
Inv−1(存在する場合)をInv−2で置換したことを除き、装置5.1〜5.5(表4参照)と同じ方法で第2の一連のOLED装置(5.6〜5.11)を組み立てた。
【0311】
それらの調製の間、各装置が重複して作製され、各実施例につき、完全に同じように作製された4つの装置を与えた。このように形成した装置を、20mA/cm2の動作電流で駆動電圧及び輝度効率について試験した。4つの重複した装置からの結果は平均化され、その結果を表4に報告する。
【0312】
【表4】

【0313】
全ての装置は、同じ全体厚さを有する。比較装置5.1及び5.11は、Inv−1又はInv−2を含有せず、電子輸送材料としてアントラセン誘導体P−4を使用する。Inv−1又はInv−2のいずれかを単独又はP−4と組み合わせて含有するETLを用いることにより、平均して、良好な輝度及び駆動電圧の両方を提供する装置を得ることができることが表4から明らかである。
【0314】
本発明は、それらの特定の好ましい実施形態に特に関連して詳細に説明されたが、本発明の精神及び範囲内で変更及び改良がなされ得ることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0315】
100 OLED
110 基板
120 アノード
130 正孔注入層(HIL)
132 正孔輸送層(HTL)
134 発光層(LEL)
135 正孔ブロック層(HBL)
136 電子輸送層(ETL)
138 電子注入層(EIL)
140 カソード
150 電圧/電流源
160 電気コネクタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード、アノードを含み、それらの間に発光層を有し、前記発光層と前記カソードとの間に第1層をさらに含むOLED装置であって、前記第1層は、連結基によって接続された7,10位を有するフルオランテン核を含むフルオランテン大環状化合物を含み、前記フルオランテン核は、さらに置換されることができ、ただし、8及び9位の置換基は、結合して5員環基を形成することができず、前記発光層と前記カソードとの間にアルカリ金属物質を含む少なくとも1つの層を含むOLED装置。
【請求項2】
前記連結基は、8原子以上30原子未満の長さを有する請求項1に記載のOLED装置。
【請求項3】
前記連結基は、10原子以上20原子未満の長さを有する請求項1に記載のOLED装置。
【請求項4】
前記フルオランテン大環状化合物は、1つのみのフルオランテン核を含有する請求項1に記載のOLED装置。
【請求項5】
前記フルオランテン核に環形成された芳香環がない請求項1に記載のOLED装置。
【請求項6】
前記フルオランテン大環状化合物は、式(I):
【化1】

(式中、R1〜R8は、水素又は置換基を独立して表し、隣接するR1〜R8置換基は、結合して環基を形成することができ、ただし、R1及びR2は、結合して5員環基を形成することができず、Lは、連結基を完成するのに必要な原子を表す)により表される請求項1に記載のOLED装置。
【請求項7】
Lは、式(1):
−(CY2n− 式(1)
(式中、各Yは同一でも異なっていてもよく、各Yは水素又は置換基を表し、ただし、隣接する置換基は、結合して環基を形成することができ、nは8〜25である)により表される請求項6に記載のOLED装置。
【請求項8】
Lは、式(2):
−(CY2r−[(CY2)−(X)−(CY2)]s−(CY2t− 式(2)
(式中、各Yは同一でも異なってもよく、各Yは水素又は置換基を表し、ただし、隣接する置換基は、結合して環基を形成することができ、各Xは同一でも異なっていてもよく、各XはCY2、N、O又はSを表し、rは0〜10であり、tは0〜10であり、sは1〜10であり、ただし、r、s及びtは、Lが少なくとも8原子であるが25原子未満の長さを有するように選択される)により表される請求項6に記載のOLED装置。
【請求項9】
1〜R8の各々が、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、又は6〜24個の炭素原子を有するアリール基を独立して表し、ただし、隣接する基は、結合して前記フルオランテン核に結合した芳香環基を形成することができない請求項6に記載のOLED装置。
【請求項10】
前記フルオランテン大環状化合物は、式(II):
【化2】

(式中、R1〜R8の各々は、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、6〜24個の炭素原子を有するアリール基を独立して表し、ただし、隣接する基は、結合して前記フルオランテン核に結合した芳香環基を形成することができず;各Yは、同一でも異なっていてもよく、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、6〜24個の炭素原子を有するアリール基をそれぞれ表し、ただし、隣接するY基は結合して環基を形成することができ;mは、4以上30未満である)により表される請求項1に記載のOLED装置。
【請求項11】
mは、6以上25未満である請求項10に記載のOLED装置。
【請求項12】
前記アルカリ金属物質は、リチウム金属又は有機リチウム化合物を含む請求項1に記載のOLED装置。
【請求項13】
前記第1層は、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含む請求項1に記載のOLED装置。
【請求項14】
前記第1層と前記カソードとの間に配置され且つ前記第1層に接触する第2層は、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含む請求項1に記載のOLED装置。
【請求項15】
前記第1層は、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含み、前記第1層と前記カソードとの間に配置され且つ前記第1層に接触する第2層は、独立して選択されるアルカリ金属又は独立して選択される有機アルカリ金属化合物を含む請求項1に記載のOLED装置。
【請求項16】
前記アルカリ金属物質は、式(III):
(Li+f(Q)g 式(III)
(式中、Qはアニオン性有機配位子であり;f及びgは、前記錯体に中性電荷を与えるように選択される独立して選択された整数である)により表される化合物を含む請求項1に記載のOLED装置。
【請求項17】
前記アルカリ金属物質は、式(IV)
【化3】

(式中、Z及び点線の弧は、2〜4個の原子及びリチウムカチオンとの5〜7員環を完成するのに必要な結合を表し;各Aは、水素又は置換基を表し、各Bは、Z原子上の水素又は独立的に選択された置換基を表し、ただし、2個以上の置換基は、結合して縮合環又は縮合環系を形成することができ;jは0〜3であり、kは1又は2であり;f及びgは、前記錯体に中性電荷を与えるように選択される独立して選択された整数である)により表される化合物を含む請求項1に記載のOLED装置。
【請求項18】
前記第1層は、前記フルオランテン大環状化合物に加えて、式(V):
【化4】

(式中、R1及びR6はそれぞれ、6〜24個の炭素原子を有するアリール基を独立して表し;R2〜R5及びR7〜R10はそれぞれ、水素、1〜24個の炭素原子を有するアルキル基、及び6〜24個の炭素原子を有する芳香族基から独立して選択される)によるアントラセン誘導体を含む請求項1に記載のOLED装置。
【請求項19】
前記フルオランテン大環状化合物は、前記第1層及び前記発光層中に存在する請求項1に記載のOLED装置。
【請求項20】
カソード、アノードを含み、それらの間に発光層を有し、前記発光層と前記カソードとの間に第1層をさらに含むOLED装置であって、前記第1層は、非発光電子輸送層であり、
a)前記第1層は、連結基によって接続された7,10位を有するフルオランテン核を含むフルオランテン大環状化合物を含み、前記連結基は少なくとも8原子の長さを有し、前記フルオランテン核は、さらに置換されることができ、ただし、8及び9位の置換基は、結合して5員環基を形成することができず、
b)前記第1層は、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含み;前記第1層と前記カソードとの間に配置され且つ前記第1層に接触する第2層は、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含み、ただし、前記第1層及び前記第2層の両方は、独立して選択されたアルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を含み得る
OLED装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−518275(P2012−518275A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550128(P2011−550128)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/000399
【国際公開番号】WO2010/093457
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(510048417)グローバル・オーエルイーディー・テクノロジー・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (95)
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL OLED TECHNOLOGY LLC.
【住所又は居所原語表記】13873 Park Center Road, Suite 330, Herndon, VA 20171, United States of America
【Fターム(参考)】