説明

フルオレン含有ポリエステル系樹脂粒子及びその製造方法

【課題】ナノメータサイズのフルオレン含有ポリエステル系樹脂粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂粒子は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含有するフルオレン含有ポリエステル系樹脂で構成された樹脂粒子であって、数平均粒子径がナノメータサイズである。前記樹脂粒子は、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)、及び前記樹脂フルオレン含有ポリエステル系(A)を溶解可能な溶媒(B)を含む樹脂溶液と、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)の貧溶媒であり、かつ前記溶媒(B)と混和する溶媒(C)とを接触させて、前記樹脂溶液を微細化しつつ、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を粒子状に析出させて製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含有するフルオレン含有ポリエステル系樹脂で構成されるナノメータサイズの樹脂粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子は、例えば、各種材料又は部材(例えば、添加剤など)として利用でき、プラスチック製品、ゴム製品、化粧品、食品、医薬品、接着剤、塗料(又はコーティング剤)、電子分野、光学分野などの広い分野において、製品の特性、価値などを向上させるために汎用されている。中でも、電子分野、光学分野では、部材の精密化、高機能化に伴い、樹脂粒子の微小化、均一化(又は粒子径のバラツキの低減)が望まれ、さらに、耐熱性、透明性などの光学特性を兼ね備えた樹脂粒子が望まれている。
【0003】
これらの樹脂粒子を製造する方法は、(1)気相法、(2)液相法、(3)固相法に大別される。なお、これらの3つの方法は、さらに化学的方法、物理的方法に分けられる。
【0004】
(1)気相法では、通常、樹脂(又はモノマー)溶液を加熱下で噴霧し、微細化させる方法が汎用されている。しかし、この方法では、生成する粒子が高温であるため、粒子の変形や、粒子同士の凝集(又は凝結)が生じる虞があり、均一な樹脂粒子を製造するのが困難である。また、大掛かりな設備が必要であるとともに、製造条件(噴霧条件など)も厳密な制御が必要となり、生産性に劣る。
【0005】
(2)液相法に関し、例えば、特開平6−206950号公報(特許文献1)には、炭素原子数が1〜14個のアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、炭素原子数が1〜14個の飽和脂肪族カルボン酸のビニルエステル、オレフィン、ビニル芳香族化合物、ハロゲン化ビニルおよび/またはビニルエーテルよりなる群からの1種類またはそれ以上に基づくラテックスが第一工程において重合され、得られるラテックス重合体が、第二工程においてグラフトされる、二工程乳化重合法におけるコアとシェルの間に改善された相結合を有するコア/シェル分散粒子のグラフト共重合体ラテックスの製造方法が開示されている。この文献の実施例では、平均粒径がナノメータサイズのコア/シェル分散粒子(例えば、実施例2では、平均粒径が192nmのコア/シェル分散粒子)が得られている。しかし、この文献に記載の製造方法は、重合反応を水系溶媒中で行うとともに、重合はラジカル反応により進行するため、縮重合などの他の重合形態を示すモノマー及び縮重合ポリマーに適用できない。また、この文献に記載のコア/シェル分散粒子は耐熱性、光学特性(透明性など)などに劣る。
【0006】
さらに、(2)液相法には、特許文献1に記載の乳化重合を利用した方法の他、共沈法、均一沈殿法などが含まれるが、このような製造方法では、樹脂粒子の粒径の制御が困難であるとともに、生成した樹脂粒子が凝集(又は凝結)する場合がある。また、重合反応に必要な界面活性剤、凝集剤が樹脂粒子に残存しやすく、そのため、分離精製が困難な上に、用途によっては使用が制限される場合があり、実用的でない。さらに、生成した微粒子は、粒子径が不均一になりやすく、また、表面の平滑性にも劣る。
【0007】
(3)固相法について、代表的な固相法には、粉砕法が含まれる。例えば、特表2002−506890号公報(特許文献2)には、粉砕再生ポリマー粒子(リサイクルに供するポリマーを粉砕して得られるポリマー粒子)から有害な表面物質を除去するための方法が開示されている。この文献に記載の粉砕再生ポリマー粒子は、いずれかの適切な粉砕操作により作り出され、前記粉砕再生ポリマー粒子の平均粒子サイズは、約1/4インチないし約3/4インチであり、約3/8インチないし約5/8インチが好ましいと記載されている。しかし、この文献に記載の粉砕再生ポリマー粒子は、粒子サイズが大きいため、精密部材への使用が制限される場合がある。また、特開2004−130305号公報(特許文献3)には、複数個の粉砕媒体ボールと粉体とを収納した処理容器の回転により、前記粉体を微粒子化する高速粉体反応装置であって、粉砕媒体ボールが前記処理容器内壁面上の前記粉体に衝突することにより、前記粉砕媒体ボールが有する運動エネルギーを前記粉体に与えて前記粉体を微粒子化する高速粉体反応装置が開示されている。この文献には、前記粉体として、有機物、プラスチック、無機物、金属等の各種粉体が使用できると記載されている。例えば、実施例では、約40nmのアルミニウム(又はニッケル)粉末を前記高速粉体反応装置に適用することにより、約20nmに微粒子化されている。
【0008】
しかし、樹脂粒子を粉砕(機械的粉砕)法で製造する場合、粒子サイズの微小化に限度があるとともに、表面が平滑で均一な樹脂粒子を製造するのが困難である。また、粉砕(機械的粉砕)法は、粉砕時に熱が発生するため、Tg(ガラス転移温度)が高い樹脂、架橋構造を有する樹脂などに対しては比較的容易に適用できるが、Tgが低い樹脂、高分子量の樹脂、熱に不安定な樹脂などを微粒子化する場合には、生成する微粒子同士が凝集したり、前記微粒子が粉砕装置に付着するなどの虞があるため、実用性が低い。
【0009】
なお、樹脂粒子を構成する樹脂として、フルオレン骨格を有するポリエステル系樹脂がこれまで知られているが、前記ポリエステル系樹脂は、縮合系の樹脂であり、嵩高い骨格を有しているため、前記の方法では、表面が平滑で均一なナノメータサイズの樹脂粒子を製造するのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−206950号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特表2002−506890号公報(特許請求の範囲、段落[0012])
【特許文献3】特開2004−130305号公報(特許請求の範囲、段落[0015]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、ナノメータサイズのフルオレン含有ポリエステル系樹脂粒子及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、高屈折率であり、耐熱性及び透明性に優れるフルオレン含有ポリエステル系樹脂粒子及びその製造方法を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、粒子径のバラツキが小さいフルオレン含有ポリエステル系樹脂粒子及びその製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、工業的に容易に製造でき、フルオレン含有ポリエステル系樹脂(縮合系樹脂)であってもナノメータサイズの粒子を形成できるフルオレン含有ポリエステル系樹脂粒子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のフルオレン含有ポリエステル系樹脂を含む樹脂溶液を特定の条件下で微細化すると、新規なナノメータサイズのフルオレン含有ポリエステル系樹脂粒子が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の樹脂粒子は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含有するフルオレン含有ポリエステル系樹脂で構成された樹脂粒子であって、数平均粒子径がナノメータサイズである。
【0017】
前記数平均粒子径は、1〜500nm(例えば、40〜500nm)程度であり、前記数平均粒子径の変動係数は、35%以下であってもよい。本発明では、特に、前記数平均粒子径を50nm以下(例えば、1〜30nm)とすることもできる。
前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂は、下記式(1)
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、Z及びZは同一又は異なって芳香族炭化水素基を示す。R1a及びR1bは同一又は異なってアルキレン基を示し、R2a及びR2bは同一又は異なって、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、R3a及びR3bは同一又は異なって炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、m及びnは同一又は異なって0又は1以上の整数である。h1及びh2は同一又は異なって0〜4の整数であり、j1及びj2は同一又は異なって0〜4の整数である)
で表される化合物を含むジオール成分と、ジカルボン酸成分とを少なくとも重合成分とするポリエステル系樹脂であってもよい。前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、20,000〜45,000程度であってもよい。
【0020】
本発明には、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含有するフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)、及び前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を溶解可能な溶媒(B)を含む樹脂溶液と、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)の貧溶媒であり、かつ前記溶媒(B)と混和(又は相溶)する溶媒(C)とを接触させて、前記樹脂溶液を微細化し、前記樹脂粒子を製造する方法も含まれる。
【0021】
このような方法では、前記樹脂溶液に、さらに、溶媒(B)および溶媒(C)とは異なる溶媒(D)(中間溶媒、第3の溶媒などということがある)を接触させてもよい。このような溶媒(D)は、例えば、脂肪族ケトンおよびカルボン酸アルキルエステルから選択された少なくとも1種の溶媒であってもよい。溶媒(D)は、樹脂(A)に対して溶媒(B)と溶媒(C)との中間的な溶解性を示す溶媒である場合が多い。このような溶媒(D)を使用する態様では、代表的には、前記樹脂溶液および溶媒(D)を含む混合液と、溶媒(C)とを接触させてもよい。このような溶媒(D)を使用すると、樹脂粒子の回収効率を効率よく向上させることができる。
【0022】
前記方法では、例えば、撹拌下で、前記樹脂溶液と溶媒(C)とを混合して接触(例えば、前記樹脂溶液および溶媒(C)のうち、いずれか一方に他方を滴下して接触)させてもよく、特に、前記樹脂溶液に、撹拌下で前記溶媒(C)を混合(例えば、滴下)させてもよい。前記樹脂溶液に対して溶媒(C)を混合すると、より一層樹脂粒子の粒径を小さくできる。なお、このような方法では、前記溶媒(D)を好適に使用できる。例えば、この方法において、前記樹脂溶液として、樹脂溶液(前記樹脂(A)および溶媒(B)を含む溶液)および前記溶媒(D)を含む混合液を用いてもよい。
【0023】
また、前記方法において、前記樹脂溶液に対し、溶媒(C)を噴霧(又は噴射)してもよい。特に、1mL/分の流量で流通する樹脂溶液に対し、溶媒(C)を100〜10000mL/分の噴霧量で噴霧してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、フルオレンのように嵩高い骨格を有する縮合系樹脂を用いるにも拘わらず、ナノメータサイズの樹脂粒子を形成できる。また、前記樹脂微粒子は、特定の樹脂で構成されているため、高屈折率であり、耐熱性及び透明性にも優れる。さらに、前記樹脂微粒子は、粒子径のバラツキが小さく、粒子径の均一性が良好である。このような樹脂粒子は、特定の条件下で前記樹脂溶液を微細化すればよいため、工業的に容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は本発明の樹脂粒子の製造装置の一例を示す一部切欠概略断面図である。
【図2】図2は実施例1で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図3】図3は実施例2で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真である。
【図4】図4は実施例3で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真(10000倍)である。
【図5】図5は図4の顕微鏡写真の拡大写真(50000倍)である。
【図6】図6は実施例4で得られた樹脂粒子の顕微鏡写真(10000倍)である。
【図7】図7は図6の顕微鏡写真の拡大写真(50000倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0027】
[樹脂粒子]
本発明の樹脂粒子は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含有するフルオレン含有ポリエステル系樹脂で構成されている。前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂は、9,9−ビス(カルボキシアリール)フルオレン骨格を含有するジカルボン酸成分と、ジオール成分とを重合成分とするポリエステル系樹脂であってもよいが、通常、フルオレン含有ポリエステル系樹脂は、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン骨格を含有するジオール成分と、ジカルボン酸成分とを重合成分とするポリエステル系樹脂である。このようなフルオレン含有ポリエステル系樹脂には、例えば、少なくとも前記式(1)で表されるジオール成分[少なくとも前記式(1)で表される化合物(ジオール成分)を含むジオール成分]と、ジカルボン酸成分とを重合成分とするポリエステル系樹脂が含まれる。
【0028】
(フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A))
前記式(1)のZ及びZにおいて、芳香族炭化水素基としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデンなどのC6−14芳香族炭化水素環に対応する基などが例示できる。Z及びZは、ベンゼンに対応する基(例えば、フェニレン基など)が好ましい。
【0029】
また、前記式(1)において、R1a及びR1bで表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基が例示できる。R1a及びR1bにおいてアルキレン基の種類はそれぞれ異なっていてもよい。また、アルキレン基R1a及びR1bの種類は係数m及びnの数によっても異なっていてもよい。好ましいアルキレン基は、C2−3アルキレン基(エチレン基、プロピレン基)であり、通常、エチレン基である場合が多い。
【0030】
2a及びR2bとしては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1−8アルキル基(特に、C1−6アルキル基)など)、シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロへキシル基などのC5−10シクロアルキル基、好ましくはC5−8シクロアルキル基、さらに好ましくはC5−6シクロアルキル基など)、アリール基[例えば、フェニル基、アルキルフェニル基(メチルフェニル基(又はトリル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基など)、ジメチルフェニル基(キシリル基)など)、ナフチル基などのC6−10アリール基など]、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1−8アルコキシ基(特にC1−6アルコキシ基)など);シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など);アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基);アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基など);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシカルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(ジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0031】
置換基R2a及びR2bの置換数h1及びh2は、通常、0〜4(例えば、0〜2)程度の整数であってもよい。置換基R2a及びR2bの置換位置も特に制限されない。好ましい置換基R2a及びR2bは、C1−6アルキル基(特にメチル基)であり、好ましい置換数h1及びh2は0〜2(例えば、0又は1)程度の整数である。
【0032】
3a及びR3bとしては、前記例示の炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。
【0033】
置換基R3a及びR3bの置換数j1及びj2は、通常、0〜4、好ましくは0〜2(例えば、0又は1)程度の整数であってもよい。置換基R3a及びR3bの置換位置も特に制限されない。好ましい置換基R3a及びR3bは、C1−6アルキル基(特にメチル基)であり、好ましい置換数j1及びj2は0又は1(例えば0)である。
【0034】
オキシアルキレン単位の繰り返し数m及びnは、0又は1以上の整数であり、通常、1〜10、好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜5(例えば、1〜3)程度の整数であってもよい。
【0035】
また、フルオレン含有ポリエステル系樹脂は、上記式(1)で表される化合物(ジオール成分)をジオール成分として含んでいればよく、例えば、上記式(1)で表されるジオール成分と、さらに下記式(2)
HO−R1c−OH (2)
(式中、R1cはアルキレン基を示す。)
で表されるジオール成分とを含むジオール成分と、後述のジカルボン酸成分とを重合成分とするポリエステル系樹脂であってもよい。前記式(2)において、R1cで表されるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2−10アルキレン基が例示でき、直鎖状又は分岐鎖状C2−4アルキレン基(例えば、エチレン基、テトラメチレン基など)が好ましい。
【0036】
式(1)で表されるジオール成分と式(2)で表されるジオール成分との割合(モル比)は、前者/後者=100/0〜10/90(例えば、100/0〜30/70)程度の範囲から選択でき、通常、99/1〜50/50、好ましくは99/1〜55/45、さらに好ましくは98/2〜60/40、特に97/3〜65/35(例えば、95/5〜70/30)程度であってもよい。
【0037】
一方、ジカルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸成分であってもよいが、光学特性(例えば、屈折率、複屈折など)の観点から、脂環族ジカルボン酸成分又は芳香族ジカルボン酸成分であることが好ましい。
【0038】
脂環族ジカルボン酸成分としては、シクロアルカンジカルボン酸類(シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸)、多環式アルカンジカルボン酸類(ボルナンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸などのジ又はトリシクロC7−10アルカン−ジカルボン酸)などが例示できる。通常、脂環族ジカルボン酸成分は、C5−10シクロアルカン−ジカルボン酸(特に1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)である。
【0039】
芳香族ジカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などのC6−14アレーン−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4′−ジカルボン酸などのC12−14ビフェニル−ジカルボン酸などが例示できる。通常、芳香族ジカルボン酸成分は、C6−12アレーン−ジカルボン酸(特に、テレフタル酸)である。
【0040】
前記ジカルボン酸成分は、酸無水物、ジメチルエステルなどの低級C1−4アルキルエステル、ジカルボン酸に対応する酸ハライドなどのエステル形成可能な誘導体であってもよい。また、前記ジカルボン酸成分は、1又は複数の置換基、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基などのC1−4アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)など]、ハロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−10アルコキシ基など)、ハロアルコキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基などのC1−10アルコキシ−カルボニル基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC2−5アシル基など)、置換アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基などを有していてもよく、ジカルボン酸の種類に応じて適宜選択できる。
【0041】
前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分との割合(使用割合)は、前者/後者(モル比)=5/1〜0.1/1程度から選択でき、通常、前者/後者=1.5/1〜0.5/1、好ましくは1.2/1〜0.8/1、さらに好ましくは1.1/1〜0.9/1程度であってもよい。前記ジカルボン酸成分と前記ジオール成分との割合(使用割合)を調整することにより、生成するフルオレン含有ポリエステル系樹脂の末端基の種類を調整することもできる。
【0042】
好ましいフルオレン含有ポリエステル系樹脂には、例えば、(i)前記式(1)において、R1a及びR1bがエチレン基であり、m及びnが1であり、R2a及びR2bがアルキル基(例えば、メチル基などのC1−6アルキル基)又はアリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)であり、h1及びh2が0〜2であり、j1及びj2が0であるジオール成分と、前記式(2)において、R1cがエチレン基であるジオール成分と、テレフタル酸であるジカルボン酸成分とを重合成分とする共重合体であって、下記式(3a)で表される単位と下記式(4a)で表される単位とを有する共重合体、(ii)前記式(1)において、R1a及びR1bがエチレン基であり、m及びnが1であり、R2a及びR2bがアルキル基(例えば、メチル基などのC1−6アルキル基)又はアリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)であり、h1及びh2が0〜2であり、j1及びj2が0であるジオール成分と、前記式(2)において、R1cがエチレン基であるジオール成分と、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸であるジカルボン酸成分とを重合成分とする共重合体などが含まれる。例えば、前記(i)に含まれる共重合体の一例として、下記式(3a)で表される単位と下記式(4a)で表される単位とを有する共重合体が、前記(ii)に含まれる共重合体の一例として、下記式(3b)で表される単位と下記式(4b)で表される単位とを有する共重合体が挙げられる。
【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

【0045】
下記式(3a)で表される単位と下記式(4a)で表される単位との割合は、前者/後者(単位数比)=50/50〜100/0、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは65/35〜90/10程度であってもよい。また、下記式(3b)で表される単位と下記式(4b)で表される単位との割合も、前者/後者(単位数比)=50/50〜100/0、好ましくは60/40〜95/5、さらに好ましくは65/35〜90/10程度であってもよい。
【0046】
前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂は、市販品であってもよく、慣用の方法を利用(又は応用)して合成した合成品であってもよい。前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂は、対応するジオール成分とジカルボン酸成分とを反応させることにより得ることができる。このようなポリエステル系樹脂の製造方法については、例えば、特開2004―315676号公報を参照することができる。
【0047】
前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、40℃の条件下、ゲル浸透クロマトグラフィー(溶媒:テトラヒドロフラン、基準樹脂:ポリスチレン)を用いて測定したとき、5,000〜50,000、好ましくは10,000〜48,000、さらに好ましくは、15,000〜46,000、特に20,000〜45,000(例えば、25,000〜40,000)程度であってもよい。
【0048】
このようなフルオレン含有ポリエステル系樹脂で構成された樹脂粒子の形状は、粒子状である限り、特に制限されず、例えば、球状(又は真球状)、異形状(楕円球状、円柱状、棒状、扁平状、不定形状など)などであってもよい。好ましい形状は、球状である。前記樹脂粒子の表面(又は外面)は、平滑状であってもよく、凹凸形状(又は湾曲形状)であってもよい。
【0049】
前記樹脂粒子は、嵩高い構造を含むフルオレン含有ポリエステル系樹脂で構成されているにも拘わらず、粒子サイズ(粒子径)は極めて小さく、ナノメータサイズである。前記樹脂粒子の数平均粒子径(又は個数基準平均粒子径:Dn)は、1〜1000nm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜900nm、好ましくは20〜800nm(例えば、30〜800nm)、さらに好ましくは35〜600nm(例えば、40〜550nm)、特に40〜500nm(例えば、50〜400nm)程度であり、通常1〜500nm(例えば、2〜400nm、好ましくは3〜300nm)程度であってもよい。また、本発明では、樹脂粒子の数平均粒子径(又は個数基準平均粒子径:Dn)を、50nm以下(例えば、1〜40nm、好ましくは1〜30nm、さらに好ましくは2〜20nm、通常3〜25nm程度)の極めて小さな粒径とすることもできる。前記樹脂粒子の体積平均粒子径(又は体積基準平均粒子径:Dv)は、2〜1000nm程度の範囲から選択でき、例えば、10〜1000nm、好ましくは20〜800nm、さらに好ましくは30〜750nm、特に40〜700nm(例えば、50〜600nm)程度であり、通常2〜600nm(例えば、2〜500nm、好ましくは3〜400nm)程度であってもよい。また、本発明では、樹脂粒子の体積平均粒子径(又は体積基準平均粒子径:Dn)を、60nm以下(例えば、2〜50nm、好ましくは3〜40nm、さらに好ましくは4〜30nm程度)の極めて小さな粒径とすることもできる。なお、前記数平均粒子径及び体積平均粒子径は、前記樹脂粒子が前記異形状である場合には、それぞれ、球状に換算して求めた数平均粒子径及び体積平均粒子径を示す。
【0050】
前記樹脂粒子は、粒子径のバラツキが小さく、粒子径の均一性が高い。すなわち、前記樹脂粒子は、粒子径の分散度(又は分散性)が小さい。前記樹脂粒子の体積平均粒子径と数平均粒子径との割合(Dv/Dn)は、例えば、1.0〜10、好ましくは1.01〜8、さらに好ましくは1.02〜6、特に1.05〜5(例えば、1.07〜4)程度であってもよい。また、粒子径のバラツキを示す変動係数(CV値)は、例えば、50%以下(例えば、1〜45%程度)、好ましくは40%以下(例えば、2〜40%程度)、さらに好ましくは35%以下(例えば、3〜35%程度)、特に30%以下(例えば、5〜25%程度)であってもよい。なお、前記変動係数(CV値)は、下記式(1)
変動係数(%)=(数平均粒子径の標準偏差/数平均粒子径)×100 (1)
を用いて算出できる。
【0051】
このような樹脂粒子(又はその成形体)は、耐熱性に優れる。前記樹脂粒子(又はその成形体)のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上(例えば、110〜180℃)、好ましくは115〜170℃、さらに好ましくは120〜165℃程度である。
【0052】
また、前記樹脂粒子は、各種光学特性に優れる。具体的には、前記樹脂粒子は、透明性に優れ、例えば、前記樹脂粒子の成形体の波長550nmにおける光線透過率は、80〜97%、好ましくは82〜96%、さらに好ましくは85〜95%程度である。また、前記樹脂粒子(又はその成形体)は、屈折率が高く、例えば、1.56〜1.75、好ましくは1.57〜1.73、さらに好ましくは1.58〜1.7程度である。
【0053】
なお、前記樹脂粒子は、本発明の特性を損なわない限り、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂と他の樹脂とのアロイで構成されていてもよい。アロイを形成可能な樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂であってもよいが、通常、熱可塑性樹脂[例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、熱可塑性アクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂などのポリアルキレンアリレート系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂など)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂など]である場合が多い。前記樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。前記樹脂の割合は、種類に応じて選択すればよく、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂100重量部に対し、例えば、20重量部以下(例えば、0.01〜20重量部)、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部程度であってもよい。
【0054】
さらに、前記樹脂粒子は、必要に応じて、慣用の添加剤、例えば、可塑剤、軟化剤、着色剤、分散剤、離型剤、安定化剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、帯電防止剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、結晶核成長剤、充填剤(ガラス繊維や炭素繊維などの繊維状充填剤など)などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。添加剤の割合は、種類に応じて選択すればよく、特に限定されないが、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂100重量部に対し、0.01〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部程度である。
【0055】
[樹脂粒子の製造方法]
本発明の樹脂粒子を製造する方法は、背景技術の項で例示の通り、種々の製造方法(例えば、(1)気相法、(2)液相法、(3)固相法など)であってもよい。なお、前記樹脂粒子は、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂の塊状物(又は塊状のフルオレン含有ポリエステル系樹脂)を粉砕する方法、前記塊状物を加熱下で(又は溶融状態で)噴霧する方法などを利用して製造してもよいが、操作性に優れる点(例えば、非加熱下であっても製造できる点、粘度調整をし易い点など)、粒子サイズが微小である樹脂粒子を工業的に容易に製造できる点などから、前記樹脂と、前記樹脂を溶解可能な溶媒とを含む樹脂溶液の状態で微細化(又は粒子化)して製造するのが好ましい。
【0056】
具体的には、前記樹脂粒子は、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)と、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を溶解可能な溶媒(B)とを含む樹脂溶液を微細化して製造してもよい。
【0057】
(樹脂溶液)
前記樹脂溶液は、少なくとも前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)と、前記樹脂(A)を溶解可能な溶媒(B)とを混合することにより調製できる。
【0058】
(溶媒(B))
溶媒(B)は、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を溶解可能である限り、特に制限されないが、前記樹脂(A)を良好に溶解させる点、後述する溶媒(C)との親和性の点から、前記溶媒(B)は、通常、非プロトン性極性溶媒[例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、ジオキサン、トリオキサンなどの環状エーテル類;ジエチルケトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどのケトン類;ラクトン又は環状モノエステル(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどのC4−10ラクトン);窒素含有溶媒[例えば、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ピロリドン含有溶媒(例えば、N−メチル−2−ピロリドンなど)、ヘキサメチルホスファミドなど];硫黄含有溶媒[例えば、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、スルホランなど]などが好適に使用される。溶媒(B)は、単独で又は二種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。これらの溶媒(B)のうち、樹脂粒子の製造過程(又は製造後)において前記溶媒(B)を除去し易い点から、揮発性の溶媒を用いるのが好ましい。具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサンなどの環状エーテル類などが好ましく、特に、テトラヒドロフランが好適に使用される。なお、溶媒(B)の溶解性パラメータ(δ)は、例えば、23MPa1/2以下(例えば、10〜23MPa1/2)、好ましくは22MPa1/2以下(例えば、12〜22MPa1/2)、さらに好ましくは21MPa1/2以下(例えば、15〜21MPa1/2)程度であってもよい。
【0059】
フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)と溶媒(B)との割合は、前者/後者(重量比)=1/99〜50/50、好ましくは2/98〜45/55、さらに好ましくは3/97〜40/60、特に5/95〜30/70(例えば、7/93〜25/75)程度であってもよく、通常3/97〜40/60(例えば、4/96〜35/65)程度であってもよい。このような割合でフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を含む樹脂溶液は、後述するように、樹脂溶液を微細化しつつ、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を溶媒(C)で析出させて樹脂粒子を製造するのに有効である。
【0060】
なお、前記樹脂(A)と他の樹脂とのアロイで構成される樹脂粒子、添加剤を含有する樹脂粒子などを形成する場合、前記例示の他の樹脂、添加剤などは、通常、前記樹脂溶液の調製過程に添加又は混合される場合が多い。
【0061】
前記樹脂溶液を微細化(又は粒子化)する方法としては、特に制限されないが、前記樹脂溶液の微細化(又は粒子化)を促進し、生産効率を高めるとともに、生成した樹脂粒子の凝集(又は凝結)を防止するため、通常、前記樹脂溶液と、前記樹脂(A)の貧溶媒であり、かつ前記溶媒(B)と混和する溶媒(C)とを接触させて、樹脂溶液を微細化(又は粒子化)する場合が多い。
【0062】
(溶媒(C))
溶媒(C)は、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)の貧溶媒であり、かつ前記溶媒(B)と混和(又は相溶)する溶媒である限り、特に制限されない。溶媒(C)には、例えば、水、有機溶媒(例えば、水溶性有機溶媒){例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、ヘキサノールなどのC1−7アルカノール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール(又は1,4−ブタンジオール)などのC2−6アルカンジオール類など)、(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類[例えば、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなどのC1−4アルキルセロソルブ類など)、カルビトール類(メチルカルビトール、エチルカルビトールなどのC1−4アルキルカルビトール類など)、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのジプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテル)など]、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類[例えば、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテート類)、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテート)など]など}などの溶媒(例えば、水性溶媒)などが含まれる。溶媒(C)は、単独で又は二種以上組み合わせた混合溶媒であってもよい。これらの溶媒(C)のうち、樹脂粒子の製造後において除去し易い点、コスト面、安全性などの点から、水、アルコール類が好ましく、特に、水、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC1−3アルカノール類などが好適に使用される。また、樹脂粒子を微細化する点においては、(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類や(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類も好ましい。このような溶媒はコーティング液を構成する溶媒として汎用されている溶媒であるため、前記樹脂粒子を、溶媒に分散した分散液の形態で使用することもできる。溶媒(C)の溶解性パラメータ(δ)は、例えば、16MPa1/2以上(例えば、16〜50MPa1/2)、好ましくは17MPa1/2以上(例えば、17〜40MPa1/2)、さらに好ましくは18MPa1/2以上(例えば、18〜35MPa1/2)程度であってもよい。
【0063】
前記溶媒(C)の割合は、前記樹脂溶液に含まれるフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)1重量部に対し、5〜1000重量部、好ましくは10〜700重量部、さらに好ましくは30〜500重量部(例えば、50〜400重量部)程度であってもよく、通常、30〜300重量部程度であってもよい。また、前記溶媒(C)の割合は、前記樹脂溶液(又は前記樹脂(A)及び溶媒(B)の合計)1重量部に対し、例えば、1〜800重量部、好ましくは3〜500重量部、さらに好ましくは5〜400重量部(例えば、7〜300重量部)程度であってもよく、通常10〜250重量部程度であってもよい。
【0064】
微細化においては、溶媒(B)および(C)に加えて、さらに、第3の溶媒(D)を使用してもよい。このような溶媒(D)としては、樹脂(A)に対して、良溶媒と貧溶媒との中間的な溶解性を示す溶媒(すなわち、樹脂(A)をやや溶解可能な溶媒)を選択できる。このような溶媒(D)(中間溶媒ということがある)を使用すると、溶媒(D)が樹脂(A)の析出を促進するためか、樹脂(A)の回収効率を効率よく向上できる。このような溶媒(D)としては、樹脂(A)の種類にもよるが、例えば、脂肪族ケトン(例えば、アセトン、エチルメチルケトンなどのジC1−4アルキルケトン)などの鎖状ケトン、エステル類[例えば、カルボン酸アルキルエステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチルなどの酢酸C1−4アルキルエステル)など]などが挙げられる。なお、溶媒(D)は、通常、溶媒(B)および溶媒(C)と混和する溶媒であってもよい。溶媒(D)は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。溶媒(D)(例えば、脂肪族ケトン、カルボン酸アルキルエステルなど)の溶解性パラメータ(δ)は、例えば、17〜25MPa1/2、好ましくは17.5〜23MPa1/2、さらに好ましくは18〜22MPa1/2、特に18.5〜21MPa1/2程度であってもよい。
【0065】
なお、中間溶媒(D)は、前記樹脂溶液と溶媒(C)とを接触させる過程において、樹脂溶液と接触させることができればよく、例えば、(a)樹脂溶液および中間溶媒(D)の混合液と、溶媒(C)とを接触させてもよく、(b)樹脂溶液および中間溶媒(D)の混合液と、中間溶媒(D)および貧溶媒(C)との混合液とを接触させてもよい。好ましい態様では、少なくとも樹脂溶液に予め中間溶媒(D)を混合した状態で、溶媒(C)を混合してもよい(例えば、上記態様(a)など)。
【0066】
溶媒(D)の割合は、フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)1重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは2〜30重量部(例えば、3〜25重量部)程度であってもよく、通常5〜20重量部程度であってもよい。また、溶媒(D)の割合は、溶媒(B)1重量部に対して、例えば、0.05〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部、さらに好ましくは0.2〜5重量部(例えば、0.3〜3重量部)程度であってもよく、通常0.1〜2重量部(例えば、0.2〜1重量部)程度であってもよい。
【0067】
本発明の樹脂粒子は、前記の通り、前記樹脂溶液と前記溶媒(C)とを接触させて前記樹脂溶液を微細化して製造してもよい。具体的には、前記樹脂粒子は、(1)前記樹脂溶液を微細化しつつ前記溶媒(C)と混合して[例えば、前記樹脂溶液を前記溶媒(C)に添加(又は滴下)し、撹拌(超音波処理など)などの機械的(又は物理的)手段などにより混合して]微細化しつつ、前記溶媒(C)によりフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を粒子状に析出(詳細には相分離させて粒子状に析出)させて製造してもよく、(2)樹脂粒子の粒子径を極小にするため、前記樹脂溶液に対し、前記溶媒(C)を噴霧(又は噴射)し、噴霧液を前記樹脂溶液に衝突させて微細化しつつ、フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を相分離させて粒子状に析出させて製造してもよい。なお、中間溶媒(D)を使用する場合、これらのいずれの方法においても、前記のように適当な段階で樹脂溶液と中間溶媒(D)とを接触できればよい。例えば、樹脂溶液および中間溶媒(D)を含む混合液を微細化しつつ前記溶媒(C)と混合してもよく、樹脂溶液および中間溶媒(D)を含む混合液に、前記溶媒(C)を噴霧してもよい。
【0068】
以下、これらの2つの方法について詳述する。
【0069】
[方法(1)]
前記方法(1)では、前記樹脂溶液を微細化しつつ前記溶媒(C)と混合し、前記溶媒(C)によりフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を粒子状に析出させる。このような方法(1)において、前記樹脂溶液を微細化する方法としては、特に限定されないが、代表的には、撹拌下で、前記樹脂溶液と前記溶媒(C)とを混合してもよい。
【0070】
撹拌は、撹拌手段(撹拌子など)や超音波を利用して行うことができ、これらを組み合わせて行ってもよい。撹拌羽根などの撹拌手段を用いる場合、撹拌速度は、例えば、10〜5000rpm、好ましくは30〜2000rpm、さらに好ましくは50〜1000rpm程度であってもよく、通常20〜500rpm程度であってもよい。
【0071】
混合順序は、限定されず、溶媒(C)に樹脂溶液を混合(撹拌下で混合)してもよく、樹脂溶液に溶媒(C)を混合(撹拌下で混合)してもよい。特に、樹脂溶液に溶媒(C)を混合(例えば、滴下)すると、より一層フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を微細化しやすい。また、混合は、樹脂溶液を微細化するという観点から、滴下などにより少量ずつ行うのが好ましい。代表的には、樹脂溶液および溶媒(C)のうち、いずれか一方(例えば、溶媒(C))に他方(例えば、樹脂溶液)を滴下することにより混合する場合が多い。
【0072】
なお、前記のように中間溶媒(D)を使用する場合、中間溶媒(D)の混合は適宜行うことができ、例えば、樹脂溶液および溶媒(D)を含む混合液に溶媒(C)を混合(例えば、滴下)してもよく、樹脂溶液に溶媒(C)および中間溶媒(D)を含む混合液を混合(例えば、滴下)してもよい。
【0073】
[方法(2)]
前記方法(2)(溶媒(C)を噴霧する方法)において、前記樹脂溶液の濃度は、0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜40重量%、さらに好ましくは1〜30重量%程度であってもよい。
【0074】
樹脂溶液の流量と噴霧させる溶媒(C)の噴霧量との割合は、所望の粒子径などに応じて適宜選択できるが、例えば、1mL/分の流量で流通する樹脂溶液に対し、前記溶媒(C)を、例えば、100〜10000mL/分、好ましくは300〜9000mL/分、さらに好ましくは500〜8000mL/分、特に1000〜7000mL/分(例えば、1300〜6000mL/分)程度の噴霧量で噴霧してもよい。また、前記樹脂溶液に対し、前記溶媒(C)を高速(又は高圧)で噴霧すると、粒子径の極小化に有効である。例えば、1m/秒の流速で流通する樹脂溶液に対し、前記溶媒(C)を、例えば、200〜5000m/秒、好ましくは500〜4000m/秒、さらに好ましくは700〜3000m/秒、特に800〜2500m/秒(例えば、1000〜2000m/秒)程度の噴霧速度で噴霧してもよい。なお、樹脂溶液及び溶媒(C)の流速(又は噴霧速度)は、種々のポンプ類(例えば、送液ポンプ、循環ポンプなど)を利用して調整(又は制御)してもよい。また、前記樹脂溶液に対し、前記溶媒(C)を噴霧角度(又は噴霧角)60〜150°、好ましくは75〜125°さらに好ましくは80〜110°程度の広角で噴霧すると、前記樹脂溶液と溶媒(C)とを効率よく接触させることができる。
【0075】
本発明では、前記樹脂溶液の形態は、樹脂溶液流であってもよく、液滴であってもよい。前記樹脂溶液流の幅方向の大きさ(又は径)は、例えば、0.1〜10mm、好ましくは0.5〜8mm、さらに好ましくは1〜5mm程度であってもよい。液滴の大きさ(又は液滴径)は、例えば、0.5〜5mm、好ましくは0.6〜4mm、さらに好ましくは0.7〜3mm、特に0.7〜2mm程度であってもよい。
【0076】
なお、前記溶媒(C)は、部材(又は基材)などに固定されている前記樹脂溶液(又はその液滴)に対し、噴霧してもよく、流動している前記樹脂溶液(又は樹脂溶液流)又はその液滴に対し、噴霧してもよい。
【0077】
このような樹脂粒子の製造方法は、種々の装置を用いて行うことができる。図1は、本発明の樹脂粒子の製造装置の一例を示す一部切欠概略断面図である。図中の矢印は、生成混合物の流れを示す。
【0078】
この装置は、溶媒(C)を供給(又は噴霧)するための供給管(溶媒供給管)4と、樹脂溶液を供給(又は滴下)するための供給管(樹脂溶液供給管)5と、供給された溶媒(C)及び樹脂溶液を接触させて前記樹脂溶液を微細化するとともに、溶媒(C)でフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を粒子状に析出させるための析出管(長さ0.5〜3m程度、内径20〜50mmφ程度)2と、前記析出管2内で生成した樹脂粒子を収集するための受器3と、この受器3の側壁(又は側面壁)から延び、溶媒(C)を溶媒供給管4に導く(又は循環させる)ためのポンプ6とを備えており、ポンプ6と、受器3及び溶媒供給管4とが各々、第1の流路7a及び第2の流路7bで連結されている。
【0079】
前記溶媒供給管(内径5〜10mmφ程度)4及び樹脂溶液供給管(内径1〜3mmφ程度)5は、前記溶媒(C)及び前記樹脂溶液を析出管2内に導くため、栓1を並列に貫通し、析出管2内に延出している。また、樹脂溶液供給管5は、溶媒(C)と樹脂溶液とを接触させるため、樹脂溶液の供給方向の下流端部が、前記溶媒供給管4の軸芯方向にほぼ直角に折り曲げられており、その先端部には開口部(又は流出口)(内径0.1〜1mmφ程度)5bが形成されている。前記流出口5bは、前記溶媒供給管4の下流側の開口部(又は噴霧口)4bと3〜10mm程度の間隔をおいて、前記溶媒供給管4の軸芯の延長線上に配設されている。
【0080】
このような装置では、例えば、樹脂溶液は、樹脂溶液供給管5の上流側の開口部(又は供給口)5aから流出口5bに向けて供給され、かつ流出口5bから0.5〜3mL/分程度の流量で樹脂溶液流又は液滴(例えば、液滴径0.5〜2mm程度の液滴)の形態で鉛直方向に析出管2内に流出される。流出された樹脂溶液は、溶媒供給管4の上流側の供給口4aから噴霧口4bに向けて供給され、かつ噴霧口4bから3000〜5000mL/分程度の噴霧量で鉛直方向に噴霧される溶媒(C)と、析出管2内で接触(又は衝突)して微細化されるとともに、溶媒(C)によりフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)が粒子状に析出されて、樹脂粒子が生成する。生成した樹脂粒子は、前記溶媒(B)及び溶媒(C)とともに受器3に収集される。収集された樹脂粒子、溶媒(B)及び溶媒(C)は、ポンプ6により吸い出され、第1の流路7a、第2の流路7bを介して再び溶媒供給管4へと送られ、再利用される。
【0081】
前記装置において、析出管、溶媒供給管及び樹脂溶液供給管の大きさ(内径、長さなど)は、前記例示の大きさに限られず、所望の粒子径、生産量などに応じて選択できる。また、前記装置において、溶媒供給管4及び樹脂溶液供給管5は、中空筒状であって、断面が円状、楕円形状、多角形状(例えば、三角形、四角形、五乃至八角形状など)などであってもよいが、断面が円状(又は円筒状)であるのが好ましい。また、流出口5bは、通常、溶媒供給管4の軸芯の延長線上に配設されるが、噴霧される溶媒(C)が、樹脂溶液(又はその液滴)と接触(又は衝突)可能である限り、前記流出口5bは溶媒供給管4の軸芯からずれていてもよい。さらに、前記噴霧口4bと流出口5bとの距離は、溶媒(C)の噴霧量、噴霧速度、及び前記樹脂溶液(又はその液滴)の流量などに応じて選択でき、前記の通り、必ずしも3〜10mm程度である必要はなく、例えば、1〜30mm、好ましくは2〜20mm、さらに好ましくは3〜15mm(例えば、5〜10mm)程度であっても、噴霧される溶媒(C)と樹脂溶液(又はその液滴)とが有効に接触(又は衝突)し、極小の樹脂粒子を製造することができる。
【0082】
なお、本発明では、溶媒(C)及び樹脂溶液の両者が少なくとも接触可能であればよく、例えば、ともに液体状態で接触させてもよく、ともに噴霧液状態で接触(又は衝突)させてもよく、さらには、溶媒(C)及び樹脂溶液のいずれか一方を、他方に噴霧して接触させてもよい。具体的には、溶媒(C)と樹脂溶液流とを接触させてもよい。また、溶媒(C)の噴霧液と樹脂溶液の噴霧液とを接触(又は衝突)させてもよい。さらには、溶媒(C)に対し、樹脂溶液を噴霧(又は噴射)してもよく、樹脂溶液流(又はその液滴)に対して溶媒(C)を噴霧(又は噴射)してもよい。
【0083】
また、溶媒(C)及び樹脂溶液の両者の流出(又は噴霧)方向は、両者が接触可能である限り、特に制限されず、例えば、溶媒(C)の流出(特に、噴霧)方向に対して、樹脂溶液の流出方向が向いていてもよく、溶媒(C)の流出(特に、噴霧)方向と樹脂溶液の流出方向が交差していてもよい。
【0084】
なお、樹脂溶液の流量及び溶媒(C)の噴霧量も、前記の例に限られない。例えば、樹脂溶液の流量は、0.5〜3mL/分に限られず、所望の粒子径、生産量などに応じ、例えば、0.1〜100mL/分、好ましくは0.5〜50mL/分、さら好ましくは1〜30mL/分程度であってもよい。また、溶媒(C)の噴霧量も、3000〜5000mL/分に限られず、所望の粒子径、生産量などに応じ、例えば、100〜50000mL/分(例えば、300〜20000mL/分)、好ましくは500〜10000mL/分(例えば、1000〜8000mL/分)、さらに好ましくは2000〜6000mL/分(例えば、2500〜4500mL/分)程度であってもよい。なお、前記の通り、溶媒(C)を、樹脂溶液の流速(又は流出速度)に比べ、高速で噴霧することにより、有効にナノメータサイズの樹脂粒子を生成することができる。
【0085】
なお、前記の方法では、溶媒(C)を噴霧し、噴霧液を樹脂溶液に接触(又は衝突)させて前記樹脂溶液を微細化しつつ、フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を析出させるメカニズムで樹脂粒子を製造する。そのため、溶媒(C)は、樹脂溶液が流出口から流出している間、連続的に供給(又は噴霧)されていてもよく、断続的に供給(又は噴霧)されていてもよい。しかし、前記メカニズムの通り、溶媒(C)と樹脂溶液とを接触させる観点から、溶媒(C)は、樹脂溶液が流出口5bから流出している間、連続的に供給(又は噴霧)するのが好ましい。特に、溶媒(C)と樹脂溶液とを有効に接触させ、フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)の析出効率を高めるとともに、ナノメータサイズの粒子を得る観点から、溶媒(C)を、連続的に、かつ前記の通り、高速で供給(又は噴霧)して析出管内に前記溶媒(C)を充満させるのが好ましい。なお、溶媒(C)を、連続的に、かつ高速で供給(又は噴霧)する場合であっても、前記の例のようにポンプ(循環ポンプなど)などを利用して溶媒(C)を循環させて再利用することにより、樹脂粒子の生産コストを有意に削減できる。
【0086】
なお、製造終了後、受器に、溶媒(B)及び溶媒(C)との分散液の状態で収集される樹脂粒子は、例えば、前記分散液に少量の極性溶媒[例えば、慣用の極性溶媒(例えば、塩酸などの酸など)など]を添加することにより分散性を高め、遠心分離(例えば、5000〜12000rpm程度)して樹脂粒子を沈殿させ、脱液して単離(又は精製)してもよい。
【0087】
以上のようにして(例えば、方法(1)又は(2)により)、樹脂(A)の粒子が得られる。樹脂粒子の回収は、濾過などの慣用の方法を利用して行うことができる。回収には、遠心分離などを利用してもよい。また、回収において、必要に応じて、増粘剤[例えば、セルロースエーテル類(メチルセルロースなどのアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、ポリカルボン酸類(ポリアクリル酸ナトリウムなど)]を使用してもよい。これらの増粘剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。増粘剤の使用割合は、例えば、樹脂(A)100重量部に対して、1〜500重量部、好ましくは2〜300重量部程度であってもよい。増粘剤は、通常、粒子生成後の混合液に混合して使用する場合が多い。このような増粘剤を使用することにより、生成した樹脂粒子を混合液中に沈殿させやすく、回収効率を高めることができる。
【実施例】
【0088】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における各評価方法及び成分の略号は以下の通りである。
【0089】
[評価方法]
(流量及び噴霧量)
溶媒(C)の流量及び樹脂溶液の噴霧量は、送液ポンプ(ヤマト科学(株)製、「マスターフレックスチューブポンプ」)を用いて測定、調整した。
【0090】
(平均粒子径)
数平均粒子径及び体積平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装(株)製、「Microtrac UPA 150」)を用いて測定した。
【0091】
[成分の略号]
FBP:フルオレン含有ポリエステル系樹脂{大阪ガスケミカル(株)製[前記式(3b)で表される単位と下記式(4b)で表される単位とを有するブロック共重合体(式(3b)において、h1及びh2が0であり、式(3b)で表される単位/式(4b)で表される単位(単位数比)=80/20である共重合体、重量平均分子量:33,850)]}
(実施例1)
図1に示す装置を用いて、樹脂粒子を製造した。詳細には、溶媒供給管(内径6.0mmφ)4と、樹脂溶液供給管(内径2.15mmφ、開口部(又は流出口)の内径0.65mmφ)5と、析出管(長さ1.5m、内径40mmφ)2と、受器3と、溶媒(C)を溶媒供給管4に導くためのポンプ6とを備えている装置を用いて、フルオレン含有ポリエステル系樹脂(FBP)とテトラヒドロフラン(THF)とを含む樹脂溶液[FBP/THF(重量比)=10/90の樹脂溶液]を2mL/分の流量で樹脂溶液供給管5から流出させた。流出した樹脂溶液に対し、4000mL/分の噴霧量で溶媒供給管4から溶媒(C)としてのメタノールを噴霧角度90°で噴霧し、前記液滴と接触させてFBPで構成される樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は253nmであった。前記顕微鏡写真を図2に示す。図中のスケールバーは1μmを示す。また、得られた樹脂粒子の数平均粒子径の変動係数は、14.5%であった。
【0092】
(実施例2)
メタノールの代わりに水を用いる以外は実施例1と同様に樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は273nmであった。前記顕微鏡写真を図3に示す。図中のスケールバーは1μmを示す。また、得られた樹脂粒子の数平均粒子径の変動係数は、29.9%であった。
【0093】
(実施例3)
THFの代わりにシクロヘキサノンを、メタノールの代わりに水を用いる以外は実施例1と同様に樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は248nmであった。前記顕微鏡写真を図4及び図5(図4の拡大図)に示す。図4中のスケールバーは5μmを、図5中のスケールバーは1μmを示す。また、得られた樹脂粒子の数平均粒子径の変動係数は、12.1%であった。
【0094】
(実施例4)
THFの代わりにシクロヘキサノンを用いる以外は実施例1と同様に樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は170nmであった。前記顕微鏡写真を図6及び図7(図6の拡大図)に示す。図6中のスケールバーは5μmを、図7中のスケールバーは1μmを示す。また、得られた樹脂粒子の数平均粒子径の変動係数は、3.2%であった。
【0095】
図3乃至図7から明らかなように、実施例で得られた樹脂粒子は、ナノメータサイズであった。また、粒子径のバラツキも小さく、均一性に優れていた。
【0096】
(比較例1)
フルオレン系ポリエステル樹脂(大阪ガスケミカル(株)製、FBP−GX)30部と、水溶性ポリビニルアルコール((株)クラレ製、エクセパル)70部とをドライブレンドし、260℃に加熱したラボプラストミル((株)トーシン製、TDR100−500X3型)に投入し、300rpmで10分間混練した。混練直後に融液は濁りはじめ、フルオレン系ポリエステル樹脂が水溶性ポリビニルアルコールに分散したことを示した。混練終了後、冷却し、粉砕機(大阪ガスケミカル(株)製、アブソルートミルABS-W)を用いて、冷却した分散体を1cm程度の塊に粉砕し、80℃の熱水で水溶性ポリビニルアルコールを溶出して、フルオレン系ポリエステル樹脂微粒子を沈殿として得た。さらに、前記熱水による洗浄を3回繰り返した。フルオレン系ポリエステル樹脂微粒子の平均粒子径は、水分散状態で測定したところ、1.94μmであった。
【0097】
(実施例5)
FBPを10重量%の割合で含むTHF溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン13.5gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)(混合液)を得た。
【0098】
500mLのビーカーに400gのメタノールを入れた。そして、長さ7cmの撹拌子で激しく撹拌しながら、注射針(φ0.9mm)を取り付けたシリンジ(10mL)の針をメタノール中に2cm程度漬けた状態で、前記シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーを、回転速度5000rpmで15分間、遠心分離器にかけることにより1.8gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率90%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.15μmであった。
【0099】
(実施例6)
FBPを10重量%の割合で含むTHF溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン12.2gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)を得た。
【0100】
500mLのビーカーに360gのイソプロパノールを入れた。そして、実施例5と同様にして、シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入したのち、ヒドロキシプロピルセルロース(アルドリッチ社製)0.72gを添加し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーから実施例5と同様にして1.80gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率90%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.2μmであった。
【0101】
(実施例7)
FBPを7重量%の割合で含むTHF溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン14.6gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)を得た。
【0102】
500mLのビーカーに216gのイソプロパノールを入れた。そして、実施例5と同様にして、シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーから実施例5と同様にして1.22gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率87%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.1μmであった。
【0103】
(実施例8)
FBPを7重量%の割合で含むTHF溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン12.8gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)を得た。
【0104】
500mLのビーカーに55.8gのイソプロパノールを入れた。そして、実施例5と同様にして、シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーから実施例5と同様にして1.19gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率85%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.2μmであった。
【0105】
(実施例9)
FBPを5重量%の割合で含むTHF溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン14.1gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)を得た。
【0106】
500mLのビーカーに190gのイソプロパノールを入れた。そして、実施例5と同様にして、シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーから実施例5と同様にして0.88gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率88%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.09μmであった。
【0107】
(実施例10)
FBPを5重量%の割合で含むTHF溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン14.1gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)を得た。
【0108】
500mLのビーカーに190gのイソプロパノールを入れた。そして、実施例5と同様にして、シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入したのち、ヒドロキシプロピルセルロース(アルドリッチ社製)0.95gを添加し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーから実施例5と同様にして0.86gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率86%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.15μmであった。
【0109】
(実施例11)
FBPを5重量%の割合で含むTHF溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン14.1gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)を得た。
【0110】
500mLのビーカーに190gの水を入れた。そして、実施例5と同様にして、シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入したのち、ヒドロキシプロピルセルロース(アルドリッチ社製)0.95gを添加し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーから実施例5と同様にして0.85gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率85%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.15μmであった。
【0111】
(実施例12)
FBPを10重量%の割合で含むジオキサン溶液20gを100mLビーカーに入れ、マグネチックスターラーで撹拌しながら、アセトン15.1gを5分かけて滴下し、アセトンを含む樹脂溶液(A)を得た。
【0112】
500mLのビーカーに360gのメタノールを入れた。そして、実施例5と同様にして、シリンジから前記樹脂溶液(A)を10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーから実施例5と同様にして1.8gの樹脂粒子を回収した(すなわち収率90%で回収した)。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は0.2μmであった。
【0113】
(実施例13)
FBPを20重量%の割合で含むTHF溶液100gを500mLのビーカーに入れた。そして、7cmの撹拌子で激しく撹拌しながら、注射針(φ0.9mm)を取り付けたシリンジ(10mL)の針を前記樹脂溶液中に2cm程度漬けた状態で、前記シリンジからPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)20gを10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーを、回転速度5000rpmで15分間、遠心分離器にかけることにより樹脂粒子を回収した。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は6.7nmであった。
【0114】
(実施例14)
FBPを20重量%の割合で含むTHF溶液100gを500mLのビーカーに入れた。そして、実施例13と同様にしてシリンジからPGME12gを10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーを、回転速度5000rpmで15分間、遠心分離器にかけることにより樹脂粒子を回収した。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は11.2nmであった。
【0115】
(実施例15)
FBPを20重量%の割合で含むTHF溶液100gを500mLのビーカーに入れた。そして、実施例13と同様にしてシリンジからプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20gを10分以上かけて注入し、樹脂粒子を含むスラリーを得た。得られたスラリーを、回転速度5000rpmで15分間、遠心分離器にかけることにより樹脂粒子を回収した。得られた樹脂粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、数平均粒子径を測定したところ、数平均粒子径は8.5nmであった。
【0116】
実施例で得られた樹脂粒子は、ナノメータサイズであり、高機能化(又は精密化)が急速に進んでいる電子分野、光学分野などにおける各種材料又は部材として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の樹脂粒子は、微小であり、かつ粒子径のバラツキが小さいため、プラスチック製品、ゴム製品、化粧品、食品、医薬品、接着剤、塗料(又はコーティング剤)、電子分野、光学分野などの広い分野において、添加剤などの各種材料(又は部材)として有用である。特に、本発明の樹脂粒子は、耐熱性、各種光学特性(例えば、透明性、高屈折率、低複屈折など)などに優れるため、光学用途に有用であり、具体的には、例えば、光学用スペーサ、各種添加剤[コーティング剤に添加するための添加剤(ブロッキング剤、スリップ剤など)、レオロジー制御剤(例えば、上塗り塗料用レオロジー制御剤など)、光拡散剤、つや消し剤、充填剤、アンチブロッキング剤(例えば、フィルム用アンチブロッキング剤など)など]などとして有用である。
【符号の説明】
【0118】
1…栓
2…析出管
3…受器
4…溶媒供給管
5…樹脂溶液供給管
4a,5a…供給口
4b…噴霧口
5b…流出口
6…ポンプ
7a…第1の流路
7b…第2の流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含有するフルオレン含有ポリエステル系樹脂で構成された樹脂粒子であって、数平均粒子径がナノメータサイズである樹脂粒子。
【請求項2】
数平均粒子径が1〜500nmであり、数平均粒子径の変動係数が35%以下である請求項1記載の樹脂粒子。
【請求項3】
数平均粒子径が1〜30nmである請求項1又は2記載の樹脂粒子。
【請求項4】
フルオレン含有ポリエステル系樹脂が、下記式(1)
【化1】

(式中、Z及びZは同一又は異なって芳香族炭化水素基を示す。R1a及びR1bは同一又は異なってアルキレン基を示し、R2a及びR2bは同一又は異なって、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、R3a及びR3bは同一又は異なって炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又は置換アミノ基を示し、m及びnは同一又は異なって0又は1以上の整数である。h1及びh2は同一又は異なって0〜4の整数であり、j1及びj2は同一又は異なって0〜4の整数である)
で表される化合物を含むジオール成分と、ジカルボン酸成分とを少なくとも重合成分とするポリエステル系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項5】
フルオレン含有ポリエステル系樹脂の重量平均分子量が、20,000〜45,000である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂粒子。
【請求項6】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を含有するフルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)、及び前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)を溶解可能な溶媒(B)を含む樹脂溶液と、前記フルオレン含有ポリエステル系樹脂(A)の貧溶媒であり、かつ前記溶媒(B)と混和する溶媒(C)とを接触させて、前記樹脂溶液を微細化し、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂粒子を製造する方法。
【請求項7】
樹脂溶液に、さらに、溶媒(B)および溶媒(C)と異なる中間溶媒(D)であって、脂肪族ケトンおよびカルボン酸アルキルエステルから選択された少なくとも1種の溶媒(D)を接触させる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
樹脂溶液および溶媒(D)を含む混合液と、溶媒(C)とを接触させる請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
撹拌下で、樹脂溶液および溶媒(C)のうち、いずれか一方に他方を滴下して接触させる請求項6記載の製造方法。
【請求項10】
樹脂溶液に、撹拌下で溶媒(C)を滴下する請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
樹脂溶液として、樹脂溶液および請求項7記載の溶媒(D)を含む混合液を用いる請求項9又は10記載の製造方法。
【請求項12】
樹脂溶液に対し、溶媒(C)を噴霧する請求項6記載の製造方法。
【請求項13】
1mL/分の流量で流通する樹脂溶液に対し、溶媒(C)を100〜10000mL/分の噴霧量で噴霧する請求項12記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−256669(P2009−256669A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79658(P2009−79658)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】