説明

フルオロウラシル誘導体

本発明は、式(I)の新規なフルオロウラシル誘導体又はその薬学的に許容しうる塩に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む組成物、ならびにチミジル酸合成酵素阻害剤を投与することによって有利に処置される疾患及び症状を処置する方法における、かかる組成物の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき2010年3月1日に出願された米国仮特許出願第61/309,204号の優先権を主張し、これはその全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多数の現行の医薬は、不良な吸収、分布、代謝及び/又は排泄(ADME)特性の問題を抱えており、それらが医薬のより広い用途を阻み、又は特定の適応症における使用を制限する。不良なADME特性はまた、臨床治験における薬物候補の失敗の主な原因である。製剤技術及びプロドラッグ戦略を用いて、ある場合には特定のADME特性を向上させることができる一方で、これらのアプローチは、多くの場合、多数の薬物及び薬物候補について存在する根底にあるADME問題に対処できない。一つのかかる問題は、そうでなければ疾患の処置において非常に有効であろう幾つかの薬物が、非常に急速に体から除去されることを引き起こす急速な代謝である。急速な薬物クリアランスに対する可能な解決策は、薬物の十分な血漿高濃度を達成するための高頻度又は高用量の投薬である。しかし、これは、投与計画に対する不良な患者コンプライアンス、高用量になればなるほど重篤になる副作用、及び処置費用の増大のような幾つかの潜在的処置問題をもたらす。急速に代謝された薬物はまた、患者に望ましくない有毒な又は反応性代謝産物を暴露する場合がある。
【0003】
多数の医薬に影響する別のADME制限は、有毒な又は生物反応性代謝産物の形成である。結果的に、薬物を服用している一部の患者は毒性を経験しているか、又はかかる薬物の安全な投薬は、患者が活性薬剤の最適以下の量を服用するように制限されている場合がある。特定の場合において、投薬間隔又は製剤アプローチを改変することで、臨床的有害作用を減少させることに役立つことができるが、しかし、多くの場合、かかる望ましくない代謝産物の形成は、化合物の代謝に固有である。
【0004】
ある厳選された場合において、代謝阻害剤は、かなり急速に除去される薬物と一緒に同時投与される。このことは、HIV感染を処置するために使用されるプロテアーゼ阻害剤クラスの薬物に当てはまる。FDAは、シトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)(薬物の代謝に典型的に関与する酵素)の阻害剤である、リトナビル(ritonavir)と同時に、これらの薬物が投薬されることを推奨している(Kempf, D.J. et al., Antimicrobial agents and chemotherapy, 1997, 41(3): 654-60を参照のこと)。しかし、リトナビルは、有害作用を引き起こし、そして既に種々な薬物の組み合わせを服用しなければならないHIV患者にとって錠剤数の負担を増やす。同様に、CYP2D6阻害剤キニジンは、仮性球麻痺情動の処置におけるデキストロメトルファンの急速なCYP2D6代謝を減少させる目的のために、デキストロメトルファンに加えられてきた。しかし、キニジンは、望ましくない副作用を有し、それが有望な併用療法におけるその使用を大きく制限している(Wang, L et al., Clinical Pharmacology and Therapeutics, 1994, 56(6 Pt 1): 659-67;及びキニジンに関するFDAのラベルについては、www.accessdata.fda.govを参照のこと)。
【0005】
一般に、シトクロムP450阻害剤と薬物を組み合わせることは、薬物クリアランスを減少させるために満足できる戦略ではない。CYP酵素の活性の阻害は、同じ酵素によって代謝される他の薬物の代謝及びクリアランスに影響することがあり得る。CYP阻害は、他の薬物を有毒なレベルまで体内で蓄積させることがあり得る。
【0006】
薬物の代謝特性を向上させるための可能性がある魅力的な戦略は、重水素修飾である。このアプローチにおいて、本発明者は、1個以上の水素原子を重水素原子で置換することにより、薬物のCYP媒介代謝を遅くする、又は望ましくない代謝産物の形成を減少させることを試みる。重水素は、水素の安全で、安定的で、非放射性同位体である。水素と比べて、重水素は、炭素とより強い結合を形成する。厳選された場合において、重水素により与えられる結合力の増大は、薬効、安全性、及び/又は耐容性向上に対する可能性を創り出して、薬物のADME特性にポジティブに影響することができる。同時に、重水素の大きさ及び形状が本質的に水素のものと同一なので、重水素による水素の置換は、水素のみを含有している元の化学物質と比べて、薬物の生化学的効力及び選択性に影響しないことが期待される。
【0007】
過去35年の間、代謝速度に対する重水素置換の効果は、承認薬の非常に僅かな割合に関して報告された(例えば、Blake, MI et al, J Pharm Sci, 1975, 64:367-91; Foster, AB, Adv Drug Res 1985, 14:1-40 ("Foster"); Kushner, DJ et al, Can J Physiol Pharmacol 1999, 79-88; Fisher, MB et al, Curr Opin Drug Discov Devel, 2006, 9:101-09 ("Fisher")を参照のこと)。結果は変わりやすく且つ予測不可能であった。幾つかの化合物に関して、重水素化がインビボで代謝クリアランスの減少を引き起こした。他の化合物に関して、代謝における変化はなかった。更に他の化合物は、代謝クリアランスの増大を示した。重水素効果のばらつきはまた、専門家達に、有害な代謝を阻害するための実行可能薬物設計戦略としての重水素修飾を疑問視させ又は却下させた(Foster、p. 35及びFisher、p. 101を参照のこと)。
【0008】
薬物の代謝特性に対する重水素修飾の効果は、重水素原子が代謝の公知の部位にいつ取り込まれるかさえ予測不可能である。重水素化薬物を、実際に調製及び試験することによってのみ、代謝速度がその非重水素化対応物と異なるのかどうか、またどのように異なるのかを見極めることができる。例えば、Fukutoら(J. Med. Chem. 1991, 34, 2871-76)を参照のこと。多くの薬物は代謝が可能な多数の部位を有している。重水素置換が必要な部位及び代謝に対する効果を確かめるために必要な重水素化の程度は、もしあれば、それぞれの薬物ごとに異なる。
【0009】
5−フルオロ−N−ヘキシル−2,4−ジオキソ−ピリミジン−1−カルボキサミドとしても及び1−ヘキシルカルバモイル−5−フルオロウラシルとしても知られている、カルモフールは、ピリミジン類似体であり、チミジル酸合成酵素の阻害により抗悪性腫瘍薬として作用する。チミジル酸合成酵素は、デオキシウリジン一リン酸をメチル化して、チミジン一リン酸とする。この酵素を阻害することは、DNA複製に必要であるチミジンの合成を遮断することである。
【0010】
カルモフールは、癌の処置のため日本で承認されている。2001年〜2005年、近年の臨床治験は、乳癌(Morimoto, K. et al., Osaka City Med. J., 2003, 49: 77-83)、肝細胞癌(Ono, T. et al., Cancer, 2001, 91(12): 2378-85)及び結腸直腸癌(Sakamoto, J. et al., Japanese Journal of Clinical Oncology Advance, 2005, 35(9): 536-44)の処置のためのカルモフールの使用について重点的に取り組んできた。
【0011】
カルモフールは、それ自身のある抗癌活性を有しているプロドラッグであり、そして最終的にインビボで5−フルオロウラシル(5−FU)に変換される。5−FUは、抗癌剤として約40年間使用されており、主にチミジル酸合成酵素阻害剤として作用する。5−FUは、全身作用を有しているが、そのヌクレオチド合成機構に大きく依存する急速に分裂している細胞、例えば癌細胞に最も有意に作用する。
【0012】
近年、血漿/関連組織におけるより長い滞留時間を有する前駆体分子を投薬することによって、活性な5−FUの存在を延長させることを試みる幾つかの薬物が市販されている。カルモフールは、この種類の一種である。カルモフールのウレア側鎖の分解に必要な時間が、体内での薬物の存在を長引かせ、そして組織分布のためにより多くの時間を与える。ヒトにおける優勢な代謝性経路は、ヘキシル鎖の初期ω−酸化、それに続く連続β−酸化、そして最終的に5−FUを放出すること含む。カルモフール及びその中間カルボン酸代謝産物は、5−FUの強力な抗癌活性に加えて、それ自体抗癌活性を有するという証拠がある。
【0013】
白質脳症の稀なケース(0.026%、Brain Nerve, Feb. 2008, 60(2): 137-41においてMixutani, T.により報告された)が、カルモフール又は5−フルオロウラシルで処理された患者で指摘された(Matsumoto, S. et al., Neuroradiology, November, 1995, 37(8): 649-652; Baehring, JM, et al., Neurol Neurosurg Psychiatry, 2008, 79:535-539)。
【0014】
カルモフールの有益な活性にもかかわらず、前述の疾患及び症状を処置するための新規な化合物の変わらぬ必要性がある。
【0015】
定義
用語「処置する」は、疾患(例えば、本明細書において記載される疾患又は障害)の発症又は進行を、低下、抑制、減弱、減少、抑止、もしくは安定化する、疾患の重症度を和らげる、又は疾患に関連する症候を改善することを意味する。
【0016】
「疾患」は、細胞、組織、又は器官の正常な機能を損傷する又は干渉する、任意の症状又は障害を意味する。
【0017】
合成に使用される化学物質の起源に依存して、天然同位体存在量のいくらかの変動が合成される化合物において起こるということが認識される。したがって、カルモフールの調製剤は本質的に、少量の重水素化アイソトポログ(isotopologues)を含有する。この変動にかかわらず、天然に豊富にある安定的な水素及び炭素の同位体の濃度は、本発明の化合物の安定的な同位体的置換の程度と比較して、小さくて取るに足りない。例えば、Wada, E et al., Seikagaku, 1994, 66:15; Gannes, LZ et al., Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol, 1998, 119:725を参照のこと。
【0018】
本発明の化合物において、特定の同位体として具体的に明示されていない任意の原子は、その原子の任意の安定的な同位体を表すことを意味する。特記のない限り、位置が、「H」又は「水素」と具体的に明示される場合、該位置は、その天然存在量の同位体組成で水素を有すると理解される。また特記のない限り、位置が具体的に「D」又は「重水素」と明示される場合、該位置は、0.015%である重水素の天然存在量よりも少なくとも3,340倍多い存在量(すなわち、少なくとも重水素の50.1%取り込み)で重水素を有すると理解される。
【0019】
本明細書で使用する、用語「同位体濃縮係数」は、特定された同位体の同位体存在量と天然存在量との比率を意味する。
【0020】
他の実施態様において、本発明の化合物は、各明示された重水素原子に対して、少なくとも3500(各明示重水素原子において52.5%重水素取り込み)、少なくとも4000(60%重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%重水素取り込み)、少なくとも5000(75%重水素)、少なくとも5500(82.5%重水素取り込み)、少なくとも6000(90%重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%重水素取り込み)、少なくとも6600(99%重水素取り込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%重水素取り込み)の同位体濃縮係数を有している。
【0021】
用語「アイソトポログ(isotopologue)」は、本発明の特定の化合物とその同位体組成においてのみ化学構造が異なる化学種を指す。
【0022】
本発明の化合物を言及する場合、用語「化合物」は、分子の構成原子の中で同位体の変異があり得る場合を除いて、同一の化学構造を有する分子の集合体を指す。したがって、表示された重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物もまた、その構造において1つ以上の明示された重水素位置に水素原子を有する、より少ない量のアイソトポログを含有していることは、当業者には明らかである。本発明の化合物中のかかるアイソトポログの相対量は、化合物を生成するために使用する重水素化試薬の同位体の純度及び化合物を調製するために使用する種々の合成工程における重水素取り込みの効率を含む、幾つかの要因に依存する。しかし、先で説明したように、かかるアイソトポログ全体としての相対量は、化合物の49.9%未満である。他の実施態様において、かかるアイソトポログ全体としての相対量は、化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、又は0.5%未満である。
【0023】
本発明はまた、本発明の化合物の塩を提供する。
【0024】
本発明の化合物の塩は、酸とアミノ官能基のような化合物の塩基性基との間で、又は塩基とカルボキシル官能基のような化合物の酸性基との間で形成される。別の実施態様によると、化合物は、薬学的に許容しうる酸付加塩である。
【0025】
本明細書で使用する、用語「薬学的に許容しうる」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などを伴なわずにヒト及び他の哺乳動物の組織との接触における使用に適しており、且つ妥当なベネフィット/リスク比に相応する成分を指す。「薬学的に許容しうる塩」は、レシピエントに投与した際に、直接的又は間接的のいずれかで、本発明の化合物を提供することができる任意の無毒な塩を意味する。「薬学的に許容しうる対イオン」は、塩のイオン性部分であり、レシピエントに投与した際に、塩から放出されるとき有毒でないものである。
【0026】
薬学的に許容される塩を形成するために一般的に用いられる酸には、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、及びリン酸のような無機酸、ならびにp−トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、重酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、p−ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸、及び酢酸のような有機酸、ならびに関連する無機及び有機酸が挙げられる。したがってかかる薬学的に許容される塩には、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−ジカルボン酸(butyne-1,4-dioate)塩、ヘキシン−1,6−ジカルボン酸(hexyne-l,6-dioate)塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸及び他の塩が挙げられる。一つの実施形態において、薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸及び臭化水素酸のような鉱酸と形成される酸付加塩、そして特にマレイン酸のような有機酸と形成される酸付加塩が挙げられる。
【0027】
薬学的に許容しうる塩はまた、カルボン酸官能基のような酸性官能基及び塩基を有する、本発明の化合物の塩であってよい。例示的な塩基には、ナトリウム、カリウム、及びリチウムを含むアルカリ金属の水酸化物;カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウム及び亜鉛のような他の金属の水酸化物;アンモニア、有機アミン、例えば、非置換又はヒドロキシル−置換モノ−、ジ−、もしくはトリ−アルキルアミン、ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−、もしくはトリス−(2−OH−(C−C)−アルキルアミン)、例えばN,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンもしくはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;モルホリン;チオモルフィン;ピペリジン;ピロリジン;ならびにアミノ酸、例えばアルギニン、リジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の化合物(例えば、式(I)の化合物)は、不斉炭素原子を、例えば、重水素置換又はそうでないものの結果として含有し得る。そうであるで、本発明の化合物は、個々の鏡像異性体、又は2つの鏡像異性体の混合物のいずれとしても存在することができる。したがって、本発明の化合物は、ラセミ混合物又はスケールミック(scalemic)混合物として、或いは、別の可能な立体異性体を実質的に含まない個々それぞれの立体異性体のいずれかとして存在し得る。本明細書で使用する、用語「実質的に他の立体異性体を含まない」とは、他の立体異性体の25%未満、好ましくは他の立体異性体の10%未満、より好ましくは他の立体異性体の5%未満、そして最も好ましくは他の立体異性体の2%未満が存在することを意味する。所与の化合物の個々の鏡像異性体を得るか又は合成する方法は、当該技術において公知であり、そして最終化合物又は出発物質又は中間体に対して、実行可能なものとして利用され得る。
【0029】
特に断りのない限り、開示された化合物が、立体化学を特定せずに命名されるか又は構造によって描写され、且つ1個以上のキラル中心を有している場合、それは、該化合物の全ての可能な立体異性体を表すと理解される。
【0030】
本明細書で使用する、用語「安定的な化合物」は、それらの製造を可能にするのに十分な安定性を有し、且つ本明細書において詳述されている目的(例えば、治療用製品への製剤、治療用化合物の製造における使用のための中間体、単離可能又は保存可能な中間体化合物、治療薬に対して反応性である疾患又は症状を処置すること)のために有用であるのに十分な期間、化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0031】
「D」及び「d」は、共に重水素を指す。「立体異性体」は、鏡像異性体及びジアステレオマーの両方を指す。「tert」及び「t−」は、各々、第三級を指す。「US」は、アメリカ合衆国(United States of America)を指す。
【0032】
「重水素で置換されている」は、対応する数の重水素原子での1個以上の水素原子の置換を指す。
【0033】
「アルキル」は、単独で又は別の置換基の一部として、記述の数の炭素原子(すなわち、C−Cは、1〜6個の炭素原子を意味する)を有する、飽和の分岐鎖状又は直鎖状一価の炭化水素基を指す。
【0034】
特記のない限り、「アルキレン」は、単独で又は別の置換基の一部として、記述の数の炭素原子を有し、且つ対応するアルカンから2個の水素原子の除去により誘導される、飽和の直鎖状又は分岐鎖状の二価基を指す。直鎖状及び分岐鎖状アルキレン基の例には、−CH−(メチレン)、−CH−CH−(エチレン)、−CH−CH−CH−(プロピレン)、−C(CH−、−CH−CH(CH)−、−CH−CH−CH−CH−(ブチレン)、−CH−CH−CH−CH−CH−(ペンチレン)、−CH−CH(CH)−CH−、及び−CH−C(CH−CH−が挙げられる。
【0035】
「アリール」は、単独で又は別の置換基の一部として、記述の数の炭素原子(すなわち、C−C14は、5〜14個の炭素原子を意味する)を有する、一価芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基には、フェニル又はナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「アリールアルキル」は、単独で又は別の置換基の一部として、炭素原子(典型的には末端又はsp炭素原子)に結合している水素原子の1個がアリール基で置き換えられている、非環式アルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、ベンジル、フェニルメチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、及びナフチルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。一つの実施態様において、アリールアルキル基のアルキル部分は、(C−C)であり、そしてアリール部分は、(C−C14)である。より特定の実施態様において、アルキル基は、(C−C)であり、そしてアリール部分は、(C−C10)、例えば(C−C10)である。
【0037】
「ヘテロアリール」は、単独で又は別の置換基の一部として、親複素環式芳香族環系の単一の原子から1個の水素原子の除去により誘導される記述の数の炭素原子(例えば、「5〜14員」は、5〜14個の環原子を意味する)を有する、一価の複素環式芳香族基を指す。典型的なヘテロアリール基には、アクリジン、アルシンドール、ベンゾジオキサン、ベンゾフラン、カルバゾール、β−カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「ヘテロアリールアルキル」は、単独で又は別の置換基の一部として、炭素原子(典型的には末端又はsp炭素原子)に結合している水素原子の1個がヘテロアリール基で置き換えられている、非環式アルキル基を指す。一つの実施態様において、ヘテロアリールアルキルのアルキル部分は、(C−C)アルキルであり、そしてヘテロアリール部分は、5〜14員ヘテロアリールである。より特定の実施態様において、アルキル部分は、(C−C)アルキルであり、そしてヘテロアリール部分は、5〜10員ヘテロアリールである。
【0039】
「ハロゲン」又は「ハロ」は、単独で又は別の置換基の一部として、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、又はフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。
【0040】
本明細書で使用する、重水素で置換されている直鎖状アルキル中の用語「末端炭素」は、鎖の末端にある炭素を指す。例えば、鎖−CD−CD−CD−CH中、−CH基の炭素は、末端炭素である。別の例として、−CH−CH−CH−CD中、−CD基の炭素は、末端炭素である。
【0041】
本明細書で使用する、重水素で置換されている直鎖状アルキル中の用語「内部炭素」は、鎖の末端にある炭素以外の任意の炭素を指す。例えば、鎖−CD−CD−CD−CH中、−CH基の炭素以外のいずれの炭素も、内部炭素である。別の例として、鎖−CH−CH−CH−CD中、−CD基の炭素以外のいずれの炭素も、内部炭素である。
【0042】
本明細書を通して、変数は、一般的に(例えば、「各R」)を指すことができるか、又は特異的に(例えば、R、R、R、等)を指すことができる。特に断りのない限り、変数が一般的に言及される場合、それはその特別な変数の全ての特定の実施態様を含むことを意味する。
【0043】
治療用化合物
本発明は、式(I):
【化1】


[式中、
は、重水素で置換されているC−C直鎖状アルキル、又は(C−C直鎖状アルキレン)−COOR(ここで、該直鎖状アルキレンは、重水素で置換されている)であり;そして、
は、水素、(C−C)アルキル、(C−C14)アリール、(C−C16)アリールアルキル、5〜14員ヘテロアリール及び6〜16員ヘテロアリールアルキルより選択され、ここで、Rが水素以外の場合、Rは、場合により、R、=O、−OR、ハロ置換−OR、=S、−SR、=NR、−NONR、−NR、ハロゲン、−CF、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO、=N、−N、−S(O)R、−S(O)、−S(O)OR、−S(O)NR、−OS(O)R、−OS(O)、−OS(O)OR、−OS(O)NR、−C(O)R、−C(O)OR、−C(O)NR、−C(NH)NR、−OC(O)R、−OC(O)OR、−OC(O)NR、−OC(NH)NR、−NHC(O)R、−NHC(O)OR、−NHC(O)NR及び−NHC(NH)NRより独立に選択される1個以上の置換基で置換されており、ここで、
各Rは、水素、重水素、及び重水素で場合により置換されている(C−C)アルキルであり;そして
各Rは、独立にRであるか又は、或いは、2個のRは、それらが結合している窒素原子と一緒になって5〜6員環を形成する]で示される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩を提供する。
【0044】
一つの実施態様において、Rは、重水素で置換されているC−C直鎖状アルキル、又は(C−C直鎖状アルキレン)−COOR(ここで、該直鎖状アルキレンは、重水素で置換されている)であり;そして、Rは、水素、(C−C)アルキル、(C−C14)アリール、(C−C16)アリールアルキル、5〜14員ヘテロアリール及び6〜16員ヘテロアリールアルキルより選択され、ここで、Rが水素以外の場合、Rは、重水素で場合により置換されている。
【0045】
一つの実施態様において、Rは、C−C直鎖状アルキルであり、ここで、Rの各内部炭素は、0又は2個の重水素を有し、そしてRの末端炭素は、0又は3個の重水素を有している。
【0046】
一つの実施態様において、Rの末端炭素は、3個の重水素を有している。
【0047】
この実施態様の一つの態様において、Rは、−(CH−CD、−(CH−CD−CD、−(CH−(CD−CD、−(CH−(CD−CD、−CH−(CD−CD、及び−(CD−CDより選択される。
【0048】
一つの実施態様において、Rは、(C−C直鎖状アルキレン)−COORであり、そしてRアルキレンの各炭素原子は、独立に、0又は2個の重水素で置換されている。この実施態様の一つの態様において、Rは、水素である。この実施態様の別の態様において、Rアルキレンは、メチレン、プロピレン及びペンチレンより選択される。より特別な態様において、Rアルキレンは、メチレン、プロピレン及びペンチレンより選択され、そしてRは、水素である。この実施態様の更に別の態様において、Rアルキレンは、−CD−†、−(CD−†、及び−(CD−†より選択され、ここで、「†」は、COORへのRの結合点を表す。
【0049】
式(I)の化合物の例は、以下:
【化2】


、又はその薬学的に許容されうる塩を含む。
【0050】
実施態様の別の場合において、先に記載の実施態様のいずれかにおいて重水素と明記されていない任意の原子は、その天然同位体存在量に存在する。
【0051】
式(I)の化合物の合成は、通常の技能の合成化学者によって、本明細書に開示されている合成例及び実施例を参照することにより、容易に達成することができる。式(I)の化合物及びその中間体の調製のために使用する手順に類似している関連手順は、例えば、Wang, Y. et al., Jingxi Yu Zhuanyong Huaxuepin, 2005, 13(10): 11-13; Wei, R. et al., Zhongguo Yaowu Huaxue Zazhi, 2001, 11(1): 49-50; 米国特許番号4,071,519号;及びOzaki, S. et al., Chem. Pharm. Bull., 1986, 34(2): 893-896に開示されている。
【0052】
かかる方法は、対応する重水素化された及び場合により他の同位体含有の試薬及び/又は中間体を利用して本明細書に詳述された化合物を合成するか、或いは化学構造に同位体原子を導入するために当技術分野において公知の標準合成プロトコルを行使して、実行することができる。
【0053】
合成例
式(I)の化合物を合成するための簡便な方法を、スキーム1に示す。
スキーム1. 式(I)の化合物の一般経路
【化3】


スキーム1に式(I)の化合物を調製するための一般経路を示す。Wang, Y. et al., Jingxi Yu Zhuanyong Huaxuepin, 2005, 13(10): 11-13によって、及びWei, R. et al., Zhongguo Yaowu Huaxue Zazhi, 2001, 11(1): 49-50によって記載されたものと同様の方法で、カルボン酸10を、塩化チオニルで処理して、塩化アシル11を与える。アジ化ナトリウムでの処理によりイソシアナート12を生成する。4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)又は4−(ジエチルアミノ)ピリジン(DEAP)の存在下、12と5−フルオロウラシルとの反応により、式(I)の化合物を与える。この最後の工程はまた、米国特許番号第4,071,519号、実施例5に記載の方法と同様の方法で実施してもよい。
【0054】
酸10の例には、市販の7,7,7−d−ヘプタン酸10a及びヘプタン−d13酸10bが挙げられる。スキーム1での10a及び10bの使用は、最終的に、式(I)[式中、それぞれ、−Rは、−(CHCD(化合物100)であり、そして−Rは、−(CDCD(化合物105)である]の化合物を与える。他の重水素化酸10は、下記スキーム2及び3に示すようにして得ることができる。
【0055】
スキーム2. 中間体(10)の調製
【化4】


[式中、各Yは、独立に、水素又は重水素であるが、但し、少なくとも1個のYは、重水素である]。
【0056】
重水素化アルキルクロリド8の市販の例には、CDCD(CHCl及びCD(CDCHClが挙げられる。アルキルブロミド9の市販の例は、CD(CDCHBrである。Vitale, A. et al., J. Organometallic Chem., 1985, 286(1): 91-101によって記載された方法と同様の方法で、8のKCNでの処置、次いでHSO水溶液での加水分解、続くLiAlH還元、そして次いでトリフェニルホスフィン及びBrでのアルコールの処置により、適切に重水素化された中間体9を生成する。Owen, C.P.; et al. Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology (2008), 111(1-2), 117-127によって記載された方法と同様の方法で、カリウムtert−ブトキシドの存在下、アルキルブロミド9とマロン酸ジエチルとの反応、続くHO中のHCl及びAcOHでの処置により、酸CDCD(CHCOH(10c)、CD(CD(CHCOH(10d)、及びCD(CD(CHCOH(10e)を与える。或いは、Darley, D.J.; et al. Organic & Biomolecular Chemistry (2009), 7(3), 543-552によって記載された方法と同様の方法で、水素化ナトリウムの存在下、ブロミド9をマロン酸ジエチルと反応させ、続いてHCl水溶液での処理により、酸10c、10d及び10eを与える。スキーム1での10c、10d及び10eの使用は、最終的に、式(I)[式中、それぞれ、−Rは、−(CHCDCD(化合物101)であり、−Rは、−(CH(CDCD(化合物102)であり、そして−Rは、−(CH(CDCD(化合物103)である]の化合物を与える。
【0057】
スキーム3. 中間体(12)への代替経路
【化5】

【0058】
或いは、Dean, D. et al., Tetrahedron Letters, 1997, 38(6): 919-922によって記載された方法と同様の方法で、上記スキーム3に示したように、適切に重水素化されたイソシアナート12は、適切に重水素化されたアミン13から調製することができる。N−シクロヘキシル−N',N',N",N"−テトラメチルグアニジン(CyTMG)及びピリジンの存在下、適切に重水素化されたアミン13へのCOの添加、続く脱水剤としての塩化チオニルでの処置により、12を与える。
【0059】
重水素化アミン13の一つの例には、市販のヘキシルアミン−d13(13a)が挙げられる。他の重水素化アミンは、それらの対応するアルコールから当技術分野において公知の方法により調製することができる。かかるアルコールの市販の例には、CD(CDCHOH及びCDCD(CHOHが挙げられ、これらは、それぞれCD(CDCHNH(13b)及びCDCD(CHNH(13c)に変換することができる。スキーム1での使用のためにそれらの対応するイソシアナート12への13a、13b及び13cの変換は、最終的に、式(I)[式中、それぞれ、−Rは、−(CDCD(化合物105)であり、−Rは、−CH(CDCD(化合物104)であり、そして−Rは、−(CHCDCD(化合物101)である]の化合物を与える。
【0060】
スキーム4. 式(I)[式中、Rは、−(C−C直鎖状アルキレン)−COORである]の化合物の調製
【化6】

【0061】
Ozaki, S. et al., Chem. Pharm. Bull., 1986, 34(2): 893-896によって記載された方法と同様の方法で、スキーム4に示したように、式(I)[式中、Rは、−(C−C直鎖状アルキレン)−COORである]の化合物を調製することができる。エタノール及びHClの存在下、対応するエステル15(スキーム4中のR2’は、水素以外の任意のRを表す)への適切に重水素化されたアミノアルキルカルボン酸14の変換に続き、ホスゲンとの反応により、イソシアナートカルボン酸16を与える。ピリジンのような塩基の存在下、中間体16と5−フルオロウラシル(5−FU)との反応により、式(I)[式中、Rは、−(C−C直鎖状アルキレン)−COORであり、そしてRは、水素以外である]の化合物を生成し、これは、HCl水溶液での加水分解により、式(I)[Rは、−(C−C直鎖状アルキレン)−COOHである]の対応する化合物を与える。
【0062】
アミノアルキルカルボン酸14の例には、市販のNHCDCOH(14a)、NHCD(CHCOH(14b)、NH(CHCDCOH(14c)及びNH(CDCOH(14d)が挙げられる。14の他の例[ここで、C−C直鎖状アルキレンは、重水素で置換されているn−ペンチレンである]は、公知の方法により調製することができる。例えば、NH(CDCOH(14e)は、Anastasiadis, A. et al., Australian Journal of Chemistry, 2001, 54(12): 747-750によって記載されているように、市販のシクロヘキサノン−d10から調製することができる。加えて、NH(CHCDCOH(14f)及びNHCD(CHCOH(14g)は、Heidemann, G. et al., Faserforschung und Textiltechnik, 1967, 18(4): 183-189によって記載されているように調製することができる。
【0063】
先に示した特定の方法及び化合物は、限定することを意図するものではない。本明細書におけるスキーム中の化学構造は、同じ変数名によって識別される(すなわち、R、R、R、等)か識別されないかに拘わらず、本明細書において化合物の式中の対応する位置の化学基の定義(部分、原子、等)に相応して、これによって定義される変数を示す。別の化合物の合成において使用するための、化合物の構造における化学基の適合性は、当業者の知識の範囲内である。
【0064】
本明細書におけるスキームで明確に示されていない経路内のものも含む、式(I)の化合物及びそれらの合成前駆体を合成するための更なる方法は、当該技術における通常の技術の化学者の手段の範囲内である。該当する化合物を合成するのに有用な合成化学変換及び保護基の方法論(保護及び脱保護)は、当技術分野において公知であり、そして例えば、Larock R, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); Greene, TW et al., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John Wiley and Sons (1999); Fieser, L et al., Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994);ならびにPaquette, L, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)及びその後続版に記載されたものを含む。
【0065】
本発明が意図する置換基と変数の組み合わせは、結果的に安定的な化合物の生成をもたらす組み合わせのみである。
【0066】
組成物
本発明はまた、有効量の式(I)の化合物(例えば、本明細書における任意の式を含む)、又は、前記化合物の薬学的に許容しうる塩;そして薬学的に許容しうる担体を含む、発熱物質を含まない医薬組成物を提供する。担体は、製剤の他の成分と適合するという意味において、医薬中で使用する量でそのレシピエントにとって有害ではない薬学的に許容しうる担体の場合において、「許容しうる」。
【0067】
本発明の医薬組成物で使用することができる薬学的に許容しうる担体、佐剤及び溶剤には、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム)、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロリド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース−ベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ロウ、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコール及び羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
必要に応じて、医薬組成物中の本発明の化合物の溶解性及び生物学的利用率は、当技術分野において周知の方法により向上され得る。一つの方法としては、製剤において脂質賦形剤の使用が挙げられる。“Oral Lipid-Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences),” David J. Hauss, ed. Informa Healthcare, 2007; 及び“Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples,”Kishor M. Wasan, ed. Wiley-Interscience, 2006.を参照のこと。
【0069】
生物学的利用率を増強する別の公知の方法は、場合により、ポロキサマー(例えば、LUTROL(商標)及びPLURONIC(商標)(BASF Corporation)、又はエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマーを用いて製剤化される本発明の化合物の無定形の形態の使用である。米国特許第7,014,866号;及び米国特許出願公開第20060094744号及び第20060079502号を参照のこと。
【0070】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、鼻腔、局所(頬側及び舌下を含む)、膣内又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)投与に適切な組成物を含む。特定の実施態様において、本発明の化合物は、経皮的(例えば、経皮パッチ又はイオン注入技術を使用して)に投与される。他の製剤は、単位剤形で、例えば、錠剤、徐放性カプセル、及びリポソームで都合よく提供することができ、そして薬学分野において周知の任意の方法により調製することができる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD (20th ed. 2000)を参照のこと。
【0071】
かかる調製方法は、投与されるべき分子と、1つ以上の副成分を構成する担体のような成分とを会合させる工程を含む。一般に、活性成分と、液体担体、リポソームもしく微粉固体担体、又はその両方とを均一に及び緻密に会合させることにより、そして必要であればその後、その生成物を成形することにより、組成物は調製される。
【0072】
特定の実施態様において、化合物は、経口投与される。経口投与に適している本発明の組成物は、カプセル剤、サシェ剤、又は錠剤(それぞれが所定量の活性成分を含有する);散剤又は顆粒剤;水性液体又は非水性液体の液剤又は懸濁剤;水中油液体乳剤;油中水液体乳剤;リポソームに充填されるもののような分割された単位として;又はボーラス、等として、提供することができる。軟ゼラチンカプセル剤は、かかる懸濁剤を含むことに有利であり得、これは化合物の吸収度を有利に高めることができる。
【0073】
経口用の錠剤の場合、一般に使用される担体は、乳糖及びトウモロコシデンプンを含む。ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤もまた、典型的に追加される。カプセル形態での経口投与のために、有用な希釈剤としては、乳糖及び乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁剤が経口投与される場合、活性成分は、乳化剤及び懸濁化剤と組み合わされる。所望であれば、特定の甘味剤及び/又は着香剤及び/又は着色剤を添加することができる。
【0074】
経口投与に適している組成物には、風味付けした基剤、通常、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカント中に成分を含むトローチ剤(lozenges);ならびにゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴムのような不活性基剤中に活性成分を含むトローチ剤(pastilles)が挙げられる。
【0075】
非経口投与に適切な組成物には、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬及び対象レシピエントの血液と製剤との等浸透圧を付与する溶質を含有してもよい、水性及び非水性無菌注射液剤;ならびに懸濁化剤及び増粘化剤を含んでもよい水性及び非水性の無菌懸濁剤が挙げられる。製剤は、単位用量容器又は多用量容器、例えば、密閉アンプル及びバイアルで提供されることができ、そして使用する直前に、無菌液体担体、例えば注射用水を添加するだけでよい、フリーズドライ(凍結乾燥)された状態で保存することができる。即時調合注射液剤及び懸濁剤は、無菌の散剤、顆粒剤及び錠剤から調製してもよい。
【0076】
かかる注射液剤は、例えば、無菌注射用の水性又は油性懸濁液の剤形であり得る。この懸濁液は、当技術分野で公知の技術に従って、適切な分散化剤又は湿潤化剤(例えば、Tween 80のような)及び懸濁化剤を使用して製剤化することができる。無菌注射用調製剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の液剤のような、無毒な非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射用液剤又は懸濁剤であってもよい。用いることができる許容しうる溶剤及び溶媒としては、マンニトール、水、リンゲル液及び等浸透圧食塩水液である。加えて、無菌の固定油は、慣習的に溶媒又は懸濁化媒として用いられてもよい。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の固定油を用いることができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸、オリーブオイル又はヒマシ油のような、天然由来の薬学的に許容しうる油、特にそれらのポリオキシエチル化された型は、注射可能物の調製において有用である。これらの油性液剤又は油性懸濁剤はまた、長鎖アルコールの希釈剤又は分散剤をも含有し得る。
【0077】
本発明の医薬組成物は、直腸内投与用の坐剤の形態で投与することができる。これらの組成物は、室温では固体であるが直腸温度では液体であり、それゆえ直腸内で融解して活性成分を放出する、適切な非刺激性賦形剤と本発明の化合物とを混合することによって調製することができる。かかる材料には、カカオ脂、蜜ロウ及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明の医薬組成物は、鼻用エアロゾル剤又は吸入剤により投与することができる。かかる組成物は、医薬製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、かつベンジルアルコール又は他の適切な防腐剤、生物学的利用率を増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は当技術分野で公知の他の可溶化剤又は分散化剤を用いて生理食塩水の液剤として調製してもよい。例えば: Rabinowitz JD and Zaffaroni AC, US Patent 6,803,031, assigned to Alexza Molecular Delivery Corporationを参照のこと。
【0079】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の処置が局所適用により容易に到達できる部位や器官に及ぶ場合、特に有用である。皮膚に対して局所的な局所適用のために、医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解した活性成分を含有している適切な軟膏剤を用いて製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体には、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウ及び水が挙げられるが、これらに限定されない。或いは、医薬組成物は、担体中に懸濁又は溶解した活性化合物を含有している適切なローション剤又はクリームで製剤化することができる。適切な担体としては、鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリソルベート 60、セチルエステルロウ、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、及び水が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物はまた、肛門坐剤製剤又は適切な浣腸製剤によって下部腸管に局所的に適用することができる。局所的経皮パッチ及びイオン注入投与もまた、本発明に含まれる。
【0080】
被験体の治療への適用は、関心対象の部位に投与できるように、局所的であり得る。注射、カテーテル、トロカール、放射体(projectiles)、プルロニックゲル(pluronic gel)、ステント、持続性薬物放出ポリマー、又は内部アクセスを提供する他の器具の使用のような様々な技術を使用して、被験体に組成物を関心対象の部位に提供することが可能である。
【0081】
それゆえ、更に別の実施態様に従って、本発明の化合物は、プロテーシス、人工弁、血管移植片、ステント、又はカテーテルのような植え込み型医療器具をコーティングするために組成物に組み込むことができる。適切なコーティング及びコーティングされた植え込み型器具の一般的調製は、当技術分野において公知であり、米国特許第6,099,562;第5,886,026号;及び第5,304,121号に例示されている。コーティングは、典型的には、ハイドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル、およびそれらの混合物のような生体適合性ポリマー材料である。組成物中に制御放出特性を付与するために、コーティングは、場合により、フルオロシリコーン、ポリサッカライド、ポリエチレングリコール、リン脂質又はそれらの組み合わせの適切なトップコートによって更に覆われてもよい。浸潤的な器具のためのコーティングは、それらの用語が、本明細書において使用されているように、薬学的に許容される担体、佐剤又は溶剤の定義の範囲内に含まれるものとする。
【0082】
別の実施態様に従って、本発明は、植え込み型医療器具をコーティングする方法であって、前記器具を先に記載のコーティング組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。器具のコーティングは、哺乳動物への植え込みの前に行うことは当業者には明らかである。
【0083】
別の実施態様に従って、本発明は、植え込み型薬物放出器具を含浸させる方法であって、前記薬物放出器具を本発明化合物又は組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。植え込み型薬物放出器具には、生分解性ポリマーカプセル又は弾丸状物(bullets)、非分解性、拡散性ポリマーカプセル及び生分解性ポリマーウエハが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
別の実施態様に従って、本発明は、前記化合物が治療上活性であるように、化合物又は本発明の化合物を含む組成物でコーティングされた植え込み型医療器具を提供する。
【0085】
別の実施態様に従って、本発明は、前記化合物が前記器具から放出され、且つ治療上活性であるように、化合物又は本発明の化合物を含む組成物を含浸される、又は含有している植え込み型薬物放出器具を提供する。
【0086】
被験体からの摘出により、器官又は組織にアクセス可能である場合、かかる器官又は組織は、本発明の組成物を含有している保存液中に浸してもよく、本発明の組成物を器官の上に塗ってもよいし、又は本発明の組成物を任意の他の簡便な方法で適用してもよい。
【0087】
別の実施態様において、本発明の組成物は更に、第2治療薬を含む。第2治療薬は、カルモフールと同じ作用機序を有する化合物と一緒に投与された場合、有利な特性を有する又は有利な特性を実証するとして知られている任意の化合物又は治療剤より選択され得る。
【0088】
好ましくは、第2治療薬は、化学療法薬、又は代謝拮抗薬のような癌の治療又は予防において有用な薬剤である。
【0089】
一つの実施態様において、第2治療薬は、5−フルオロウラシル又はマイトマイシンCである。
【0090】
別の実施態様において、本発明は、本発明の化合物及び先に記載の任意の一つ以上の第2治療薬の別々の剤形を提供し、ここで、該化合物と第2治療薬は、互いに付随している。本明細書で使用する、用語「互いに付随している」とは、別々の剤形が一緒に包装されること、又はそうでなければ、別々の剤形が一緒に販売され且つ投与される(連続的にまたは同時に、互いに24時間未満以内に)ことを意図していることが容易に明らかであるように、互いに付随していることを意味する。
【0091】
本発明の医薬組成物において、本発明の化合物は、有効量で存在する。本明細書で使用する、用語「有効量」は、適切な投与計画で投与される場合、標的障害を処置するための十分な量を指す。
【0092】
動物とヒトに対する投与の相互関係(体表面の平方メートル当たりのミリグラムに基づく)は、Freireich et al., Cancer Chemother. Rep, 1966, 50: 219に記載されている。体表面積は、被験体の身長及び体重からおおよそ求めることができる。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N.Y., 1970, 537を参照のこと。
【0093】
一つの実施態様において、本発明の化合物の有効量は、約0.1〜10mg/kg体重/日、
又は約10〜1000mg/m2/日の範囲であるこができる。より特定の態様において本発明の化合物の有効量は、約50〜1000mg/m2/日、より詳細には約50〜600mg/m2/日の範囲であることができる。
【0094】
当業者により認識されているように、有効用量はまた、処置される疾患、疾患の重篤度、投与経路、被験体の性別、年齢及び一般的健康状態、賦形剤の使用法、他の薬剤の使用のような他の治療的処置との併用の可能性及び臨床医の判断に依存して異なる。例えば、有効用量を選択するガイダンスは、カルモフールに対する処方情報を参照することによって決定することができる。
【0095】
第2治療薬を含む医薬組成物に関して、第2治療薬の有効量は、該薬剤だけを用いる単剤療法投与計画において通常用いられる用量の約20%〜100%の間である。好ましくは、有効量は、標準的な単剤療法用量の約70%〜100%である。これらの第2治療薬の通常の単剤療法用量は、当技術分野において周知である。例えば、Wells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照のこと、これらの各々は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0096】
先で参照した第2治療薬の幾つかは、本発明の化合物と相乗的に作用することが期待されている。このことが起こる場合、第2治療薬及び/又は本発明の化合物の有効用量を、単剤療法で必要とされる有効用量よりも減少させることを可能にする。このことは、第2治療薬又は本発明の化合物のいずれの毒性副作用も最小にする、有効性の相乗作用的な改善、投与又は使用の容易さの向上、及び/或いは化合物の調製又は製剤の総費用の軽減という利点がある。
【0097】
処置の方法
別の実施態様において、本発明は、細胞のチミジル酸合成酵素の活性を阻害する方法であって、細胞を、1つ以上の式(I)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩と接触させることを含む方法を提供する。
【0098】
別の実施態様に従って、本発明は、被験体における癌を処置する方法であって、有効量の、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容しうる塩、又は本発明の組成物を被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0099】
一つの特別な実施態様において、本発明の方法を使用して、それを必要としている被験体の乳癌、肝細胞癌又は結腸直腸癌を処置する。
【0100】
本開示化合物で処理できる他の癌には、胃癌、食道胃接合部の癌、卵巣癌、膵臓癌、泌尿生殖器路の癌及び基底細胞癌が挙げられる。
【0101】
別の特別な実施態様において、本発明の方法を使用して、それを必要としている被験体の結腸直腸癌を処置する。
【0102】
かかる処置を必要としている被験体を同定することは、被験体又は医療専門家の判断であり得るし、及び主観的(例えば、意見)又は客観的(例えば、検査又は診断方法により測定可能である)であり得る。
【0103】
別の実施態様において、上記の処置の方法のいずれかは、それを必要としている被験体に一つ以上の第2治療薬を同時に投与する更なる工程を含む。第2治療薬の選択は、カルモフールとの同時投与が有用であると知られている任意の第2治療薬より行われる。第2治療薬の選択はまた、処置される特定の疾患又は症状に依存する。本発明の方法で用いられる第2治療薬の例は、本発明の化合物及び第2治療薬を含む組成物の組み合わせにおける使用に関して先に記載の例である。
【0104】
特に、本発明の組み合わせ治療は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩、及びマイトマイシン又はフルオロウラシルより選択される第2治療薬を、結腸癌又は結腸直腸癌の処置のためにそれを必要としている被験体に、同時投与することを含む。
【0105】
本明細書で使用する、用語「同時投与される」は、第2治療薬を本発明の化合物と一緒に、単一剤形(例えば、先に記載のように本発明の化合物及び第2治療薬を含む本発明の組成物)の一部として、又は別個の多剤形として投与し得ることを意味する。或いは追加薬剤は、本発明の化合物の投与の前に、投与に連続して、又は投与に引き続き、投与することができる。かかる組み合わせ治療処置において、本発明の化合物及び第2治療薬の両方を、慣用的な方法により投与する。本発明の化合物及び第2治療薬の両方を含む本発明の組成物の被験体への投与は、該同じ治療薬、任意の他の第2治療薬、又は任意の本発明の化合物を、治療過程の間の別の時点で前記被験体に別々に投与することを妨げない。
【0106】
これら第2治療薬の有効量は、当技術分野に周知であり、投薬ガイダンスは、本明細書で参照する特許及び公開特許出願、ならびにWells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)、及び他の医学書に見出すことができる。しかし、第2治療薬の最適な有効量の範囲を決定するのは十分に当業者の範囲内である。
【0107】
本発明の一つの実施態様において、第2治療薬が被験体に投与される場合、本発明の化合物の有効量は、第2治療薬が投与されない場合の本発明の化合物の有効量より少ない。別の実施態様において、第2治療薬の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合の第2治療薬の有効量より少ない。このようにして、いずれの薬剤の高用量に関係する望ましくない副作用は、最小限に抑えることができる。他の潜在的利点(非限定的に、投与計画の改善及び/又は薬剤費の減少を含む)は、当業者には明らかである。
【0108】
更に別の態様において、本発明は、先に記載の疾患、障害又は症状の被験体における治療又は予防のための、単一組成物として又は別個の剤形としての医薬の製造における、単独で又は1つ以上の先に記載の第2治療薬と一緒に、式(I)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の使用を提供する。本発明の別の態様は、本明細書に記載されている疾患、障害又はその症状の被験体における治療又は予防における使用のための式(I)の化合物又はその薬学的に許容しうる塩である。
【0109】
実施例
実施例1. 5−フルオロ−2,4−ジオキソ−N−(ヘキシル−d13)−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−カルボキサミドの合成(化合物105).
スキーム5. 化合物105の合成
【0110】
【化7】

【0111】
工程1. 1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−d13−6−イソシアナトヘキサン(12a).
1,4−ジオキサン中の1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6−トリデカジュウテロヘキサン−1−アミン(200mg、1.75mmol、98原子%D、CDN Isotopes)の溶液(3.5mL、0.5M)を、25mL容量の丸底フラスコ中で調製した。1,4−ジオキサン(0.952mL)中の塩酸溶液をこの溶液に、窒素雰囲気下、加えた。直ぐにガスの発生が、白色の固体の沈殿と共に観察された。次に、トルエン(0.483mL)中のホスゲンの20重量%溶液を反応物に加えた。得られた混合物を3時間加熱還流した。反応物を冷却し、ヘプタン(10mL)で希釈し、そして氷水を含有している分液漏斗に注いだ。相を分離し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた。懸濁液を濾過し、得られたイソシアナートの溶液12aを、更なる処置をせずに次の工程で使用した。
【0112】
工程2. 5−フルオロ−2,4−ジオキソ−N−(ヘキシル−d13)−3,4−ジヒドロピリミジン−1(2H)−カルボキサミド(化合物105).
ピリジン(0.708mL)及び5−フルオロウラシルを、工程1で調製したイソシアナート溶液に直接加えた。白色の固体の沈殿が直ぐに観察された。懸濁液を90℃に12時間加熱した。次に反応物を冷却し、ほぼ乾燥するまで濃縮し、そしてジクロロメタンに再溶解した。有機層をHCl水溶液(1M)、硫酸銅(飽和)水溶液及びブラインで洗浄した。次に有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、そして濃縮して、化合物105を白色の固体(48mg、0.178mmol、収率11%)として与えた。MS[(M−H)]:269.2。
【0113】
実施例2. 代謝安定性の評価
【0114】
A. ミクロソームアッセイ:
ヒト肝臓ミクロソーム(20mg/mL)を、Xenotech, LLC (Lenexa, KS)から入手した。β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(還元型(NADPH))、塩化マグネシウム(MgCl)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0115】
代謝安定性の決定:
7.5mM 試験化合物の原液を、DMSO中で調製した。7.5mM 原液を、アセトニトリル(ACN)中で12.5〜50μMに希釈した。20mg/mLヒト肝臓ミクロソームを、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.4、3mM MgCl含有)中で、0.625mg/mLに希釈した。希釈したミクロソームを、ポリプロピレンプレートを三連で96穴の深穴のウェルに加えた。12.5〜50μM試験化合物のアリコート10μLをミクロソームに加え、混合物を10分間予め温めた。反応を、予め温めたNADPH溶液の添加により開始した。最終反応容量は、0.5mLであり、0.1M リン酸カリウム緩衝液(pH7.4、3mM MgCl含有)中の0.5mg/mLヒト肝臓ミクロソーム、0.25〜1.0μM 試験化合物、及び2mM NADPHを含有していた。反応混合物を37℃でインキュベートし、アリコート50μLを0分、5分、10分、20分、及び30分時点で除去し、浅穴の96穴−プレートに加え、これは、反応を停止させるために内部標準を含む氷冷ACN 50μLを含有していた。プレートを4℃で20分間保存し、その後、水100μLをプレートの穴に加え、その後、遠心分離により沈殿したタンパク質がペレットとなった。上清を別の96穴プレートに移し、Applied Bio-systems API 4000質量分析計を使用して、LC−MS/MSにより親の残留量について分析した。式(I)の化合物の非重水素化対応物及び陽性対照、7−エトキシクマリン(1μM)について同様の手順に従った。試験を三連で行った。
【0116】
データ分析:
試験化合物のインビトロt1/2(半減期)を、%親残留量(ln)vsインキュベーション時間の関係の線形回帰の傾きから計算値した。
インビトロt1/2=0.693/k
k=−[%親残留量(ln)vsインキュベーション時間の線形回帰の傾き]
【0117】
データ分析は、Microsoft Excelソフトウエアを用いて行われた。
【0118】
B. 代謝安定性のインビボ決定:
雄Sprague-Dawleyラットに、静脈内又は経口にて10mg/kgで、適切な投薬溶剤で、カルモフール又は本発明の例示的化合物(ラット4匹/化合物/用量)を投与した。血液試料を、各ラットから、投与前及び投与後のおよそ8時点で採血した。各時間点で投与化合物の濃度を測定するために、全血又は血漿をLC−MS/MSで分析した。カルモフール及び本発明の例示的化合物の薬物動態パラメータは、WinNonlinプログラムを使用して、非コンパートメント解析により決定した。
【0119】
更なる記載がなくとも、当業者が、先の記載及び例示的実施例を用いて、本発明の化合物を調製及び利用すること、そして特許請求される方法を実行することは可能であると考えられる。前述の説明及び実施例はただ、特定の好ましい実施態様の詳細な記載を提示しているに過ぎないことは理解されるべきである。当業者にとって、本発明の本質および範囲を逸することなく、様々な改変及び等価物を作製できることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化8】


[式中、
は、重水素で置換されているC−C直鎖状アルキル、又は(C−C直鎖状アルキレン)−COOR(ここで、該直鎖状アルキレンは、重水素で置換されている)であり;そして、
は、水素、(C−C)アルキル、(C−C14)アリール、(C−C16)アリールアルキル、5〜14員ヘテロアリール及び6〜16員ヘテロアリールアルキルより選択され、ここで、Rが水素以外の場合、Rは、重水素で場合により置換されている]で示される化合物、又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
が、C−C直鎖状アルキルであり、ここで、Rの各内部炭素は、0又は2個の重水素を有し、そしてRの末端炭素は、0又は3個の重水素を有している、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
の末端炭素が、3個の重水素を有している、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
が、−(CH−CD、−(CH−CD−CD、−(CH−(CD−CD、−(CH−(CD−CD、−CH−(CD−CD、及び−(CD−CDより選択される、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
が、(C−C直鎖状アルキレン)−COORであり、そしてRアルキレンの各炭素原子は、独立に、0又は2個の重水素で置換されている、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
が、水素である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
アルキレンが、メチレン、プロピレン及びペンチレンより選択される、請求項5又は6記載の化合物。
【請求項8】
が、−CDCOOR、−(CDCOOR、及び−(CDCOORより選択される、請求項7記載の化合物。
【請求項9】
重水素と明記されていない任意の原子が、その天然同位体存在量で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
化合物が、下記:
【化9】


[式中、化合物100、101、102、103、104、105、110、111、及び112中で重水素と明記されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する]で示されるいずれか一つより選択される;又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
化合物が、化合物105中で重水素と明記されていない任意の原子は、その天然同位体存在量で存在する化合物105;又はその薬学的に許容しうる塩である、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容しうる塩及び薬学的に許容しうる担体を含む、発熱物質を含まない医薬組成物。
【請求項13】
5−フルオロウラシル又はマイトマイシンCを更に含む、請求項12記載の組成物。
【請求項14】
それを必要とする被験体において癌を処置する方法であって、該被験体に請求項12記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項15】
癌が、乳癌、結腸癌又は結腸直腸癌より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
それを必要とする被験体に癌の処置に有用な第2治療薬を投与する更なる工程を含む、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
癌が、結腸癌又は結腸直腸癌であり、そして第2治療薬がマイトマイシンC又はフルオロウラシルである、請求項16記載の方法。

【公表番号】特表2013−521289(P2013−521289A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556128(P2012−556128)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/026436
【国際公開番号】WO2011/109274
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(509049012)コンサート ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】