フルオロキノロンカルボン酸分子結晶
(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形は、(a)2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;(b)DSCの融点のピークが288℃にあることと;(c)23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;(d)pKa値が5.65と9.91であることのうちの少なくとも1つを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロキノロンカルボン酸分子結晶に関する。本発明は特に、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸分子結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
合成抗菌剤(例えばナリジクス酸、ピロミド酸など)は、グラム陰性菌によって起こる感染症の治療薬として知られている。しかし合成抗菌剤は、緑膿菌感染症などの難治性疾患に対しては不十分な効果しか示さない。
【0003】
その一方で、6位がフッ素原子で置換されたキノロンカルボン酸誘導体(例えばノルフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン)または8位が塩素原子で置換されたキノロンカルボン酸誘導体が開発され(日本国特開第225181/1986号、第90183/1984号)、その強い抗菌活性のために臨床で利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からあるこれら合成抗菌剤は、生体内での吸収率が十分でないために小さな生物学的利用能しか提供しないという欠点と、グラム陽性菌に対する抗菌活性が低いという欠点を持っていた。
【0005】
したがって、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方(その中には耐性菌も含まれる)に対する強い抗菌活性を持つとともに、生体内でより優れた吸収率を持つ抗菌剤の開発が、以前から望まれている。
【0006】
活性医薬成分(“API”)はしばしば有機分子であり、製造法に応じて異なる有機結晶形で存在できる。このように異なる分子結晶形は、これらAPIを含む医薬組成物の加工性、物理的特性、化学的特性、安定性などに、実際に影響を与える可能性がある。
【0007】
したがって、APIの分子結晶形で有利な特性を有するものを提供することが望ましい。特に、フルオロキノロンカルボン酸の分子結晶形で新規な抗感染症用医薬組成物の製造に有利な特性を有するものを提供することが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、本発明により、フルオロキノロンカルボン酸の特別な分子形態が提供される。
【0009】
1つの特徴では、本発明により、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の特別な分子形態が提供される。
【0010】
別の特徴では、本発明により、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の安定な分子形態が提供される。
【0011】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0012】
さらに別の特徴では、本発明により、DSC(示差走査熱量測定)の融点のピークが288℃にあることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0013】
別の特徴では、本発明により、23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0014】
さらに別の特徴では、本発明により、pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0015】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトル;またはDSCの融点のピークが288℃にあること;または23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトル;またはpKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物が提供される。
【0016】
別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物が提供される。
【0017】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物が提供される。
【0018】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明、請求項、添付の図面から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下に示す各図面には簡単な説明が伴っている。
【0020】
【図1】ベシフロキサシンHClの構造を示す。
【図2】ロット050956330のベシフロキサシンHClに関するpH-溶解度の挙動を示す。
【図3】ロット050956330のベシフロキサシンHCl塩の水分吸収を示す。
【図4】ロット2325-288のベシフロキサシン遊離塩基の水分吸収を示す。
【図5A】ロット051157469のベシフロキサシンHClに関する示差走査熱量測定の結果を示す。
【図5B】ロット051157469のベシフロキサシンHClに関する熱重量測定分析の結果を示す。
【図6A】ロット2325-282-0のベシフロキサシン遊離塩基に関する示差走査熱量測定の結果を示す。
【図6B】ロット2325-282-0のベシフロキサシン遊離塩基に関する熱重量測定分析の結果を示す。
【図7A】ロット051157469のベシフロキサシンHCl塩に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図7B】ロット051157469のベシフロキサシンHCl塩に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図8A】ロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図8B】ロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図9】ベシフロキサシンHCl塩とベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析結果を重ね合わせて示してある。
【図10】有機溶媒平衡サンプル(ベシフロキサシンHCl塩)から得られた過剰な固体に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図11】有機溶媒平衡サンプル(ベシフロキサシン遊離塩基)から得られた過剰な固体に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図12】ベシフロキサシン眼科用懸濁液製剤(0.6%)に含まれるベシフロキサシン遊離塩基を粉末X線回折分析で同定した結果を示している。
【図13】ISV-403薬製品に含まれるベシフロキサシンHClを検出するための粉末X線回折分析の感度を示してい
【図14】第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準(ロット14104J)に関する2〜40°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図15】第2の実験室で製造したベシフロキサシンHClとボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基に関する3〜40°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図16】第1の実験室で製造したベシフロキサシンHClロットと、第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準と、ボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基に関する4〜16°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図17】第2の実験室で製造したベシフロキサシンHClロットとボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基に関する4〜16°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図18】ベシフロキサシン遊離塩基(ロット2325-293)を第1の実験室で製造したベシフロキサシンHCl(BL8/R&D/07/001ロット2)の中に入れたスパイキング研究用サンプルに関する粉末X線回折の分析パターンを示しており、遊離塩基の含有量が増加していることを示すピークが見られる。
【図19】ベシフロキサシン遊離塩基(ロット2325-293)を第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準の中に入れたスパイキング研究用サンプルに関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図20A】ベシフロキサシンHCl塩とベシフロキサシン遊離塩基の13C NMRスペクトルを示している。
【図20B】ベシフロキサシンHCl塩とベシフロキサシン遊離塩基の13C NMRスペクトルを示している。
【図21】3つのロットのベシフロキサシン遊離塩基を平均した粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図22A】ベシフロキサシンHCl参照基準とベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図22B】ベシフロキサシンHCl参照基準とベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図23】ロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の結果を分析して得られたピークの表を示している。
【図24】ベシフロキサシンHCl参照基準とロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の結果を比較して示している。
【図25】ベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の結果を分析して得られた主要なピークの表を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この明細書では、“制御”という用語に、軽減、緩和、改善、予防も含まれる。
【0022】
この明細書では、“安定な”という用語は、材料を最初に調製してから2週間後の時点で、XRPDパターンにおける複数のピークによってわかる結晶構造が変化できないことを意味する。
【0023】
一般に、本発明により、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の安定な分子結晶が提供される。
【0024】
この明細書と請求項の全体を通じ、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸をベシフロキサシンとも呼ぶ。
【0025】
(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の合成はアメリカ合衆国特許第5,447,926号に開示されており、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0026】
ベシフロキサシンHCl塩(ベシフロキサシンのHCl添加塩)は、水にはほとんど溶けず、メタノールとエタノールにはわずかに溶け、アセトニトリルとイソプロパノールには溶けないことが観察された。ベシフロキサシンは、pHが2〜12の範囲全体でイオン化可能な2つの官能基、すなわちカルボン酸と第一級アミンを有する。これら官能基をpH5.5〜9.0でイオン化すると両性イオンが形成され、その両性イオンは、非常にわずかだけ溶ける(約0.1mg/ml)固体として結晶化する。したがってベシフロキサシンHClは、水性媒体(pH>4)の中で、対イオンのない新しい結晶相(今後は“遊離塩基”と呼ぶ)に変換されることが観察された。独立な分光学的研究から、この遊離塩基は両性イオン性分子結晶であることが確認される。pH>9とpH<5では、ベシフロキサシンの溶解度は、pHの関数として最大で約10mg/ml(pH3)まで上昇した。固有溶解度が0.074mg/mlであると仮定してpH-溶解度の挙動をヘンダーソン-ハッセルバッハ式にフィットさせると、カルボン酸基と第一級アミン基のpKaはそれぞれ5.65と9.91であると見積もられた。
【0027】
ベシフロキサシン遊離塩基とベシフロキサシンHCl塩の両方で独自の粉末X線回折(XRPD)パターンが同定された。これらの形態は、DSC(示差走査熱量測定)によって検出される独自の融点も持っていた。遊離塩基は融点のピークが288℃であるのに対し、HCl塩のほうは321.5℃である。両方の固体の融解には分解が伴っていた。薬製品のXRPD分析に基づくと、HCl塩の証拠は観察されなかったが、遊離塩基に付随するピークが常に存在していた。pH6.5の溶液(製品のpH)では、ベシフロキサシンの遊離塩基は最低の溶解度であった。したがって、製品の製造中にすべてのHCl塩が遊離塩基に変換されたようである。これらの研究は、ベシフロキサシンの遊離塩基が薬製品の中で優勢な結晶相であることを示している。
【0028】
ベシフロキサシンは、目の感染症を治療するための抗生剤として現在開発されているフルオロクロロキノロンである。医薬製品は、活性医薬成分(“API”)の出発材料としてベシフロキサシンのHCl添加塩を用いて製造される。ベシフロキサシンHCl塩は分子量が430である。ベシフロキサシンHClの構造を図1に示す。ベシフロキサシンHCl塩の物理化学的特性を研究し、医薬組成物の中にベシフロキサシンを含む固相を明らかにした。
【0029】
ロット050956330とロット051157469のベシフロキサシンHCl塩を用いて医薬組成物を調製した。どちらのロットも、多くの研究で使用する薬製品の製造に用いる材料を代表していると考えられ、あらゆる仕様を満たしていた。それに加え、以下に記載する方法を利用し、遊離塩基の実験室ロットをいくつか調製した。これらのバッチに2325-293、2325-288、2325-282の番号を付けた。
【0030】
装置
【0031】
バーレル社のリスト・アクション・シェイカー、モデル75
クロマトグラフィ・システム:フォトダイオード・アレイ検出器を備えるHP 1100。HPケムステーション・ソフトウエア
示差走査熱量測定器(DSC)、パーキン・エルマー社のピリス
メトラー社の天秤、モデルAE160
アキュメット社の925 pH/イオン・メーター
リガク社のミニフレックスXRPDユニットCuKアルファ線源(30kV/15mA)
熱重量分析器、TAインスツルメンツ社
水分吸収分析器、モデルMB-300W、VTIコーポレーション社
【0032】
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)法
【0033】
逆相勾配HPLC法を利用し、ベシフロキサシンの溶解度を調べるサンプルを分析した。条件を以下に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
ベシフロキサシンHClの溶解度をいくつかの有機溶媒の中で調べた。小さな磁気撹拌器またはバーレル社のリスト・アクション・シェイカーを用い、各溶媒を10ml用いて過剰な薬物質を24〜48時間にわたって周囲温度(24±3℃)で平衡させた。サンプルを目で調べ、必要な場合には、撹拌後に過剰な固体が残るまで、より多くの薬物質を添加した。次にサンプルを0.45μmのナイロン製フィルタまたはPVDF製フィルタで濾過するか、10,000rpmで15分間にわたって遠心分離した。濾液または上清を必要に応じてHPLC希釈液を用いて希釈し、HPLCで分析した。溶解度が100mg/mlよりも大きい場合には、平衡溶解度を決定するのに何もせず、USPの定義にあるように、その化合物を“自由に溶ける”と記述した。
【0036】
ロット050956330のベシフロキサシンHClの溶解度を、1NのNaClを用いてpHを調節することにより、蒸留水の中でpHの関数として決定した。薬物質の懸濁液(10mlの蒸留水に約50〜150mg)をバーレル社のシェイカーを用いて72〜96時間かけて平衡させた。実験室の温度は22±2℃であった。懸濁液のpHは、サンプリングの前に過剰な固体が存在している状態で測定した。サンプルは、エンプロテック社のISS-I13遠心分離機の中で15分間にわたって10,000rpmで遠心分離するか、0.45μmのナイロン製フィルタまたはPVDF製フィルタで濾過した。サンプルを濾過した場合には、フィルタが飽和するよう、ある体積の濾液を廃棄した。上清または濾液を必要に応じてHPLC希釈液を用いて希釈した後、分析した。サンプルの濃度をさまざまな時間間隔でモニタし、完全に平衡していることを確認した。また、サンプルの濃度は、ベシフロキサシンHClの濃度ではなくベシフロキサシン遊離塩基の濃度として記録した。
【0037】
pKaが観察された溶解度の挙動と整合していることを確認するため、pHに依存する溶解度を以下の式にフィットさせた。
S=S0×(10pKa1-pH+10pH-PKa2+1)
ただし、S=溶解度
S0=固有溶解度(両性イオンと中性化学種の合計)
pKa1=カルボン酸部分の解離定数
pKa2=第一級アンモニウム・イオン部分の解離定数
【0038】
示差走査熱量測定(DSC)と熱重量分析(TGA)
【0039】
DSC実験をパーキン・エルマー社のピリス7 DSCで実施し、結果をピリス・ソフトウエア、バージョン7.0.0.0110を用いて分析した。少量の細かく粉砕した粉末を正確に計量し(約1.5〜3mg)、50μlのアルミニウム・パンの中に入れた。このパンをピンホール・カバーのクリンピングによって封止した。サンプルは、50℃から340℃まで20℃/分で走査した。固体の融解が始まる温度を融解曲線から外挿した。それに加え、この材料の特徴を明らかにするため、他の事象(発熱、分解)も記録した。
【0040】
熱重量分析を行なうため、TAインスツルメンツ社のモデルQ50を使用した。風袋を計量した白金製ホルダに重さ約15mgのサンプルを装填した。このサンプルを室温から350℃まで10℃/分で加熱した。加熱の間、サンプルに40ml/分で窒素を吹き付けた。サンプルの重量損失を温度の関数としてモニタした。
【0041】
水分吸収分析
【0042】
VTI社の水分吸収天秤を用い、水分の取り込みと損失を相対湿度の関数としてモニタした。風袋を計量したガラス製サンプル・ホルダに30〜40mgのサンプルを装填した。サンプルの初期重量を正確に記録した。次に、一定の窒素流のもとで40℃にてサンプルを2時間にわたって乾燥させた。最初の乾燥の後、25℃の乾燥窒素を用いてサンプルの重量を平衡させ、次いでサンプルを、制御された条件下で湿度を階段状に徐々に増加させている中に曝露した。サンプルは、新しいそれぞれの相対湿度で2時間にわたって平衡させた。水分を吸収する挙動は、10%から90%RHまで10%RHの間隔でモニタし、脱水は、90%から10%RHまでモニタした。%水分利得/損失を%RHに対して記録した。
【0043】
固体ベシフロキサシン遊離塩基の調製
【0044】
ベシフロキサシンの遊離塩基の分離を、HCl塩を水に溶かし、1NのNaClを用いてpHを10超に調節することによって行なった。1NのNaClを用いて溶液のpHをわずかに小さい約9〜10にした。得られたスラリーを室温にて1時間にわたって撹拌し、膜フィルタを用いた濾過によって沈殿物を分離した。その固体を真空炉の中で室温にて24〜48時間にわたって乾燥させた。
【0045】
粉末X線回折
【0046】
約20〜100mgの粉末を低バックグラウンドのサンプル・ホルダに装填した。サンプルをリガク社のミニフレックス(走査式の設計)で分析し、5〜60°2θの範囲において1°2θ/分の速度でサンプリング速度を0.02秒にして走査した。マテリアルズ・データ社から提供されたジェイド・ソフトウエアのバージョン7.5を用いてパターンを分析した。
【0047】
ベシフロキサシン眼科用懸濁液に含まれる結晶性固体(0.6mg/g)の分析
【0048】
ベシフロキサシン懸濁製剤は、水和したポリカルボフィルの中に固体の薬粒子が懸濁状態で含まれる粘性溶液である。濾過または遠心分離によって固体を分離する試みはうまくいかなかった。懸濁製剤中のベシフロキサシンの結晶相を決定するため、約5gの懸濁液を真空炉の中で室温にて乾燥させた。サンプルを多数のバッチ(ISVロットJ04Q、E06Q、965701、E04Q、D05Q)から採取し、バッチ間の整合性を調べた。乾燥後、材料を乳鉢の中ですりつぶし、XRPDによって分析した。固体ベシフロキサシンHClに関するこの方法の感度は、乾燥させたプラセボ(ロットAAP-020)に5〜20%w/wのベシフロキサシンHCl塩を入れることによって調べた。これら混合物をXRPDによって分析し、検出可能なベシフロキサシンHClの最低濃度を決定した。
【0049】
結果
【0050】
溶解度
【0051】
ベシフロキサシンのHCl塩と遊離塩基(ロット2325-293)を表1に示す。平衡したサンプルから過剰な固体を分離し、XRPDによって分析した。有機溶媒中では、いかなる形態の変換も観察されなかった。しかし水性pH可溶化サンプルでは、過剰な固体ベシフロキサシンHClが3.5〜4.0よりも大きなpHで異なる結晶相へと変換された。以下に議論するように(XRPDの項)、この相は、結晶ベシフロキサシン遊離塩基であると同定された。
【0052】
ベシフロキサシンはイオン化可能な化合物であり、カルボン酸と第一級アミンの両方を含んでいる。これらイオン化可能な基の両方が、水性媒体において観察される溶解度の挙動に寄与する。溶解度の値をpHの関数として表2に示す。このデータは、ヘンダーソン-ハッセルバッハ式にうまくフィットした。最良のフィットを実現するため、カルボン酸基と第一級アンモニウム基のpKa値をそれぞれ5.65と9.91と見積もり、固有溶解度(S0)を0.074mg/mlと見積もった。実験データにフィットさせた曲線を図2に示す。図2からわかるように、この分子の溶解度は、pHが5.5〜9の範囲全体で比較的一定であり(約0.1mg/ml)、この範囲ではカルボン酸基と第一級アミン基の両方がイオン化されている。ベシフロキサシンの“遊離塩基”は、実際には、ベシフロキサシンHClに含まれるカルボン酸の脱プロトン化から得られるほとんど溶けない両性イオンから沈殿する固体である。ベシフロキサシン遊離塩基にとって、カルボン酸の脱プロトン化は、約3.5を超えるpHの水溶液中で溶解度の平衡を支配する上で十分に意味を持つようになる。酸性pH(pH<5)とアルカリ性pH(pH>9)の両方において、二重に帯電しているが中性である両性イオンが、一重にイオン化した化学種と平衡しているため、ベシフロキサシン遊離塩基の溶解度は、カルボン酸または第一級アミンのpKa付近の範囲でpHの関数として上昇する。
【0053】
ベシフロキサシンHClの水分吸収分析:
【0054】
ロット050956330のベシフロキサシンHClとロット2325-288のベシフロキサシン遊離塩基の水分吸収データをそれぞれ図3と図4に示す。ベシフロキサシンHClは吸湿性ではなかった。ベシフロキサシン遊離塩基はすべてのRH条件で水分を吸収し、90%RHでは5%w/wになった。
【0055】
ベシフロキサシンHClとベシフロキサシン遊離塩基の熱分析
【0056】
ベシフロキサシンHClの典型的なサンプル(ロット051157469)に関するDSC(示差走査熱量測定)の結果を図5Aに示す。この挙動は、外挿による315.7℃という温度で融解が始まることに対応する吸熱を示す。融点のピークと融解熱の積分値は決定できなかった。なぜなら融解の吸熱が、突然の不規則な発熱/吸熱によって中断されたからである。これは、融解相に伴う分解から生じたように見えた。
【0057】
図5Bに示してあるように、開放したパンの中でのTGAから、HCl形では融解する前に著しい重量損失があることがわかった。予想通り、溶媒和化した固体または水和した固体に付随すると思われる突然の重量損失事象は存在していなかった。融点よりも高温で起こった重量損失は、融解に分解が伴うという過程と整合していた。融点よりも低温の重量損失には、脱塩化水素が伴っている可能性がある。
【0058】
結晶ベシフロキサシン遊離塩基をpH溶解度実験(ロット2325-282)で分離し、DSCによって分析した。図6Aからわかるように、この材料は、外挿した融解開始温度が279.0℃であり、融点のピークは288.1℃であった。融点のピークよりも高温での追加の熱事象が存在していた。これは、おそらく熱分解の結果であろう。この熱事象を融解転移から分離できなかったため、融解熱の積分値は決まらなかった。図6Bに示した熱重量測定のデータから、融解の前にわずかな重量損失があったことがわかった。この重量損失は、試行ごとに0.3〜0.6%で変化した。この重量損失の挙動は、大きさと開始温度に関しては、吸収された水のほうを特徴としており、化学量論的水和物に付随する重量損失のタイプには典型的ではなかった。
【0059】
粉末X線回折分析(“XRPD”)
【0060】
独自のXRPDパターンが、ベシフロキサシンHCl(ロット051154769)とベシフロキサシン遊離塩基(ロット2325-293)で観察された。これらサンプルのそれぞれについてのピークのリストを図7と図8に示す。これらの回折パターンを重ね合わせたものを図9に示す。
【0061】
メタノール、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、水の中で平衡した過剰な固体のXRPDパターンを、ベシフロキサシンHClについては図10に、ベシフロキサシン遊離塩基については図11に示す。
【0062】
ベシフロキサシン眼科用懸濁液(0.6%)からの固体のXRPD
【0063】
ロット965701、J04Q、E04Q、E06Q、D05Qのベシフロキサシン眼科用懸濁液(0.6%)のXRPD分析結果から、ベシフロキサシン遊離塩基に対応する回折のピークが常に存在し、ベシフロキサシンHClからの検出可能なピークは存在していないことがわかった。回折パターンを図12に示す。分析時のこれらバッチの保管期間は、表3にまとめてあるように、17〜25ヶ月であった。この情報は、薬製品が古くなるとき、薬製品の中で遊離塩基の形態が安定であることを示している。
【0064】
図13に示してあるように、XRPDにより、プラセボに含まれるベシフロキサシンHCl塩を合計で5〜10%w/w検出できることが明らかになった。この感度に基づくと、合計で25〜50%以下のベシフロキサシンが固体塩化水素塩として製品中に存在できよう。固体HCl塩は、pH6.5では製剤中に存在しない可能性が大きい。なぜならpH6.5でこの塩は溶けるが、固体遊離塩基は、製剤の公称w/w濃度よりもはるかに小さな溶解度を持つからである。HCl塩から遊離塩基への素早い変換が、pH溶解度実験において中性〜アルカリ性のpHで観察された。したがって製品のXRPD分析結果と、中性pHにおいてベシフロキサシンHCl塩で観察された水中での挙動に基づくと、ベシフロキサシン眼科用懸濁液の中では遊離塩基が固体薬の優勢な形態である可能性が大きい。
【0065】
結論
【0066】
ベシフロキサシンHCl眼科用懸濁液の調製に用いる出発API形であるベシフロキサシンHCl塩に関して1つの結晶形が観察された。このHCl塩は水性媒体(pH>4)に溶けること、そして異なる結晶形では沈殿することが観察された。この新しい形態は、結晶ベシフロキサシン遊離塩基を特徴とする。分光測定から、固体ベシフロキサシン遊離塩基は基本的な分子構成要素として両性イオン性ベシフロキサシンを含んでいることがわかる。ベシフロキサシンの固体遊離塩基とHCl塩の両方で独自のXRPDパターンが同定された。これらの形態はDSCによって検出される独自の融点を持っていたが、融解によって急速に分解するように見えた。ベシフロキサシン遊離塩基の水和形態の存在に関してTGAからの証拠はなかった。
【0067】
ベシフロキサシンHCl塩は水にはほとんど溶けず、メタノールとエタノールにはわずかに溶け、アセトニトリルとイソプロパノールには溶けなかった。この化合物は、イオン化可能な2つの官能基、すなわちカルボン酸と第一級アミンを持っていた。これら官能基のイオン化状態が原因でpH5.5〜9.0では両性イオンが支配的になり、この両性イオンはほんのわずかに溶ける(約0.1mg/ml)。pH>9とpH<5では、ベシフロキサシンの溶解度がpHの関数として最大で約10mg/ml(pH3)まで上昇した。pH-溶解度の挙動をヘンダーソン-ハッセルバッハ式にフィットさせることにより、両性イオンの固有溶解度が0.074mg/mlに決定され、カルボン酸基と第一級アミン基のpKはそれぞれ5.65と9.91であると見積もられた。
【0068】
薬製品のXRPD分析に基づくと、固体懸濁粒子はベシフロキサシン遊離塩基であり、ベシフロキサシンHClではなかった。この観察結果は、pH6.5(製品のpH)における溶液中の溶解度の挙動と一致している。このpH6.5では、ベシフロキサシンの遊離塩基は水性媒体の中で約0.1mg/mlの溶解度を持つ。この値は、ベシフロキサシンHCl眼科用懸濁液中の6mg/mlという公称濃度よりもはるかに小さい。固体HCl塩は、懸濁液の製造中に遊離塩基の形態に変換されるようである。これらの研究は、ベシフロキサシン眼科用懸濁液(0.6%)の中でベシフロキサシンの固体遊離塩基が優勢な薬相であることを示している。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
ベシフロキサシンHClが2つ以上の結晶形で存在できるかどうかを調べる研究を行なった。ベシフロキサシンHClの結晶形とベシフロキサシン遊離塩基の結晶形が、結晶形をスクリーニングする研究と、ベシフロキサシンHClを製造するための化学的方法と、ベシフロキサシン薬製品の製造法で観察された。図9からわかるように、これら2つの結晶形は、独自のX線回折パターンを有することが見いだされた。
【0073】
薬製品を製造するための出発材料として、微粉化したベシフロキサシンHClを使用する。製造プロセスの間にHCl塩はベシフロキサシン遊離塩基に変換される。製品のpHが約6.5の溶液中では、ベシフロキサシン遊離塩基が、好まれる形態である。乾燥した薬製品の粉末X線回折の結果から、HCl塩では回折ピークが欠けていることと、遊離塩基の特徴的な回折ピークが存在していることが明らかになる。
【0074】
実験
【0075】
【表5】
【0076】
瑪瑙製の乳鉢と乳棒を用いてベシフロキサシンHClとベシフロキサシン遊離塩基のサンプルをわずかに粉砕することで、各サンプルでAPIが似た粒子サイズになるようにするとともに、好まれる方向になることを回避した。サンプルの粉末を、長方形の“ゼロ・バックグラウンド”サンプル・ホルダの中にあるサンプル用ウエルの中心近くに置いた。適切な高さの平坦な粉末用床を実現するため、粉末をウエルの中心部に広げた後、計量紙で覆われたガラス製スライドを下向きに動かして圧縮した。
【0077】
粉末X線回折
【0078】
リガク社のミニフレックス・デスクトップ式X線回折装置(シリアル番号CD016610)を用いて粉末X線回折パターンを採取した。ミニフレックスは、鉛直方向を向いたゴニオメータ(半径150mm)と、30kV/15mAで作動し、テイクオフ角が6°である、銅で密封したX線管を備えている。この装置は、可変(θ補償用)発散スリット・システムとニッケルKβフィルタを利用している。シンチレーション・カウンタを検出器として用いる。マテリアルズ・データ社からのジェイド・バージョン7.5ソフトウエアをパターンの評価と図面の作成に用いた。
【0079】
サンプルを、2〜40°2θの領域全体にわたって1.5°/分でステップのサイズを0.005°/ステップにして走査するか、7〜23°2θの領域全体にわたって0.5°/分でステップのサイズを0.003°/ステップにして走査した。ニューランド社で製造したロットに関する物理的形態の定性的決定を、各ロットの回折パターンをベシフロキサシンHCl参照基準およびベシフロキサシン遊離塩基の回折パターンと比較することによって行なった。
【0080】
シリコン製の基準を28〜29°2θの範囲全体にわたって1.0°/分でステップのサイズを0.02°/ステップにして毎日測定することにより、ミニフレックスX線回折装置についてシステムの適合性を確認した。システムの適合性は、シリコン製の基準に関するd111回折の頂点を測定して28.44±0.02°2θであるときに実現された。
【0081】
サンプルの調製
【0082】
瑪瑙製の乳鉢と乳棒を用いてベシフロキサシンHClとベシフロキサシン遊離塩基のサンプルをわずかに粉砕することで、各サンプルでAPIが似た粒子サイズになるようにするとともに、好まれる方向になることを回避した。サンプルの粉末を、長方形の“ゼロ・バックグラウンド”サンプル・ホルダの中にあるサンプル用ウエルの中心近くに置いた。適切な高さの平坦な粉末用床を実現するため、粉末をウエルの中心部に広げた後、計量紙で覆われたガラス製スライドを下向きに動かして圧縮した。
【0083】
結果
【0084】
第1の実験室で製造したベシフロキサシンHClと、第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準と、ボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基のX線回折パターンを表4〜表7と図14に示す。第1の実験室のロットR&D/BL/07/001、BL8/R&D/07/001 ロット1、BL8/R&D/07/001 ロット2の主要な回折ピークは、ボシュ&ロム社のベシフロキサシンHCl参照基準(ロット14104J)の主要な回折ピークと一致しているため、第1の実験室のロットはベシフロキサシンHCl参照基準と結晶形が同じであることが確認される。第1の実験室で製造したロットのX線回折パターンは、第2の実験室に由来する他のすべてのベシフロキサシンHClロットのパターンともよく一致している(表8〜表11と図15)。
【0085】
第1の実験室の3つのロットに関してX線回折パターンをベシフロキサシンHCl参照基準と比較したとき、X線回折パターンのわずかな違いが、約10.3°2θの非常に小さなピークとして観察された(図16)。この小さな回折ピークは、第2の実験室で製造したいくつかのロットにも存在しているように見える(図15と図17)。ベシフロキサシン遊離塩基を第1の実験室で製造したベシフロキサシンHClのサンプル(BL8/R&D/07/001 ロット2)に入れ、粉末の遊離塩基含有量が増えるにつれて10.3°2θの回折ピークの強度が増加するかどうかを調べた。図18は、この第1のスパイキング研究からのサンプルに関するX線回折パターンを示している。このスパイキング研究のサンプルでベシフロキサシン遊離塩基のレベルを大きくすると、10.3°2θ(d=8.6)、12.0°2θ(d=7.4)、21.2°2θ(d=21.2)で回折ピークの強度が増大した。したがって10.3°2θの小さな回折ピークは、ベシフロキサシン遊離塩基が存在していることの1つの指標であることが確認される。ベシフロキサシン遊離塩基をベシフロキサシンHCl参照基準に入れて第2スパイキング研究を実施した。図19は、第2のスパイキング研究のサンプルに関するX線回折パターンである。“そのままの”ベシフロキサシンHCl参照基準は、10.3°2θに検出可能な回折ピークを示さない。わずか5%のベシフロキサシン遊離塩基をベシフロキサシンHCl参照基準に添加した後には、10.3°2θに小さなピークを検出することができる。第2の研究からの2つのスパイキング・レベル(5%と10%の遊離塩基)だけを利用し、ベシフロキサシンHCl参照基準とベシフロキサシン遊離塩基が純粋であると仮定することで、第1の実験室の3つのロットに含まれる遊離塩基の量を大まかに見積もった。表12に第2のスパイキング研究の結果をまとめてあり、ここには第1の実験室の微粉化したベシフロキサシンHClロットに含まれる遊離塩基の大まかな推定値が記載されている。10.2〜10.3°2θの回折ピークの高さを用いると、第1の実験室で製造した微粉化されたロットであるBL8/R&D/07/001 ロット1とBL8/R&D/07/001 ロット2は、5〜9%のベシフロキサシン遊離塩基を含んでいると推定される。第2の実験室で製造したロットでは、粉砕していないバッチ#10だけが検出可能な遊離塩基を含んでいた。しかし第2の実験室の微粉化したロット05126J、03063J、01085Jはすべて、10.3°2θの領域に基線からの小さな増加を示す。これは、これらのロットがベシフロキサシン遊離塩基をいくらか含んでいるがおそらく5%以下であることを示している可能性が大きい。
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】
【表11】
【0092】
【表12】
【0093】
【表13】
【0094】
【表14】
【0095】
別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0096】
さらに別の特徴では、本発明により、DSC(示差走査熱量測定)の融点のピークが288℃にあることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0097】
別の特徴では、本発明により、23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0098】
さらに別の特徴では、本発明により、pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0099】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトル;またはDSCの融点のピークが288℃にあること;または23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトル;またはpKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0100】
別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0101】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0102】
本発明の医薬組成物は、対象にこのような組成物を投与することによって感染症(例えば細菌感染症)を治療するのに使用できる。
【0103】
このような医薬組成物は、適切な経路での投与に適したようにすることができる。例えば経口経路(頬、舌下が含まれる)、直腸経路、経鼻経路、局所経路(頬、舌下、経皮が含まれる)、膣経路、非経口経路(皮下、筋肉内、静脈内、皮内が含まれる)がある。このような組成物は、薬学で知られている任意の方法で調製することができ、例えばベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を基剤または賦形剤と組み合わせる。
【0104】
経口投与に適した医薬組成物は、離散した単位として提供することができ、その例として、カプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;水性液体または非水性液体への溶液または懸濁液;食用の泡またはホイップ;水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンなどがある。
【0105】
経皮投与に適した医薬組成物は、レシピエントの表皮と長期にわたって密に接触した状態に留まるようにする離散したパッチとして提供することができる。例えば活性成分をイオン泳動によってパッチから送達することができる。これに関する一般的な事柄は、Pharmaceutical Research、第3巻(6)、318ページ、1986年に記載されている。
【0106】
局所投与に適した医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エーロゾル、油の形態にすることができる。
【0107】
目またはそれ以外の外部組織(例えば皮膚)を治療するには、状況に合わせて組成物を局所用の溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液、軟膏、クリームのいずれかとして適用することができる。活性成分は、軟膏の形態にされている場合には、パラフィンとともに、または水と混和する軟膏ベースとともに用いることができる。あるいは活性成分は、水中油クリーム・ベースまたは油中水ベースを用いてクリームの形態にすることができる。
【0108】
目への局所投与に適した医薬組成物として、活性成分を適切な基剤(特に水性溶媒)に溶かすか懸濁させた点眼液などがある。
【0109】
口内への局所投与に適した医薬組成物として、ロゼンジ、トローチ、うがい液などがある。
【0110】
直腸投与に適した医薬組成物は、座薬または浣腸として提供することができる。
【0111】
基剤が固体で経鼻投与に適した医薬組成物として、粒径が例えば10〜500ミクロンの範囲にある粗い粉末などがある。この粗い粉末は、嗅ぐことによって、すなわち粉末が保持されている容器を鼻に近づけてこの容器から鼻腔を通じて吸入することによって投与される。鼻スプレーまたは点鼻液として投与するために基剤が液体である適切な組成物として、活性成分の水溶液または油溶液などがある。
【0112】
吸入による投与に適した医薬組成物として、さまざまなタイプの計量投与量加圧エーロゾル、噴霧器、散布器によって生成させることのできる細かい粒子のダストまたはミストなどがある。
【0113】
膣投与に適した医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、スプレー組成物として提供することができる。
【0114】
非経口投与に適した医薬組成物として、水性と非水性の減菌注射溶液(その中には、組成物を対象とするレシピエントの血液と等張にする酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、溶質が含まれていてよい);水性と非水性の減菌懸濁液(その中には、懸濁剤と増粘剤が含まれていてよい)などがある。組成物は、1回投与または多数回投与の容器(例えば密封したアンプルやバイアル)に入れて提供することができ、凍結乾燥条件で保管することが可能であり、使用の直前に減菌液体基剤(例えば注射用の水)を添加するだけでよい。
【0115】
その場で作る注射溶液と懸濁液は、殺菌した粉末、顆粒、錠剤から調製することができる。
【0116】
好ましい単位用量組成物は、活性成分の上に示した1日の投与量または分割投与量(すなわその適切な一部)を含むものである。
【0117】
一実施態様では、このような医薬組成物は、水性基剤を含んでいる。
【0118】
別の一実施態様では、このような医薬組成物は、有機基剤(例えば疎水性または親水性の有機材料)を含んでいる。
【0119】
適切な濃度は、全組成物の約0.001〜約10重量%(または約0.01〜約5重量%、または約0.01〜約2重量%、約0.01〜約1重量%、約0.001〜約1重量%、約0.05〜約1重量%、約0.05〜約2重量%約0.1〜約0.5重量%、約0.5〜約1重量%、約1〜約2重量%)の範囲であり、この濃度だと、感染症(例えばグラム陽性菌とグラム陰性菌の両方によって起こる細菌感染症)と闘う上で十分な治療効果を提供すると考えられる。
【0120】
一実施態様では、本発明の組成物は、懸濁液または分散液の形態である。別の一実施態様では、その懸濁液または分散液は、水溶液をベースとしている。例えば本発明の組成物は、ミクロンまたはナノメートルのサイズの活性成分の粒子を減菌生理食塩水の中に懸濁または分散された状態で含むことができる。別の一実施態様では、懸濁液または分散液は、疎水性媒体をベースにしている。例えばミクロンまたはナノメートルのサイズ(例えば約0.1〜約10μmの範囲)の活性成分(またはその塩、そのエステル)の粒子を、疎水性溶媒(例えばシリコーン油)、鉱物油や、目への送達に適した他の任意の非水性媒体に懸濁させることができる。さらに別の一実施態様では、ミクロンまたはナノメートルのサイズの活性成分(またはその塩、そのエステル)の粒子を生理学的に許容可能な界面活性剤(例を以下に示すが、それだけに限定されない)で被覆することができ、その後、その被覆された粒子を液体媒体に分散させる。被覆は、粒子を懸濁液の中に保持することを可能にする。このような液体媒体は、持続放出式の懸濁液を生成させるように選択することができる。例えば液体媒体は、懸濁液が投与されることになる目の環境にほとんど溶けないものにできる。さらに別の一実施態様では、活性成分(またはその塩、そのエステル)を疎水性媒体(例えば油)の中に懸濁または分散させる。さらに別の一実施態様では、このような媒体は、疎水性材料と水のエマルジョンを含んでいる。さらに別の一実施態様では、この明細書に開示した不溶性の活性成分(またはその塩、そのエステル)を通常の任意の薬送達用ビヒクルによって投与することができる。薬送達用ビヒクルとして、リポソーム組成物(リポソームの壁の内側と外側の両方、または厳密にリポソーム・コアの外側)の中の懸濁液、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンの連続相の中の懸濁液、エマルジョンの油相の中の懸濁液、帯電した界面活性剤または帯電していない界面活性剤を用いたミセル溶液の中の懸濁液などがあるが、これらに限定されない。界面活性剤がミセル形成剤であると同時にこの明細書に開示した活性成分(またはその塩、そのエステル)のアニオンであるミセル溶液が好ましかろう。
【0121】
別の特徴では、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート(ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル)などであり、これらは商品名Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)20として知られている)、ポロキサマー(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの合成ブロック・ポリマーであり、商品名Pluronic(登録商標)F127、Pluronic(登録商標)F108)などで知られている)、ポロキサミン(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの合成ブロック・ポリマーにエチレンジアミンが付加されたものであり、商品名Tetronic(登録商標)(例えばTetronic(登録商標)1508、Tetronic(登録商標)908など)で知られている))、他の非イオン性界面活性剤(例えばBrij(登録商標)、Myrj(登録商標))、約12個以上(例えば約12〜約24個)の炭素原子からなる炭素鎖を有する長鎖脂肪アルコール(すなわちオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコソヘキサノイルアルコールなど)をさらに含むことができる。このような化合物は、『あらゆる薬の参照事典』(第34版、S.C. Sweetman(編)、ファーマシューティカル・プレス社、ロンドン、2005年))の中のMartindaleによる1411〜1416ページと、Remington、『薬学の科学と実際』、第21版(リッピンコット・ウイリアムズ&ウイルキンス社、ニューヨーク、2006年)の291ページおよび第22章の中に列挙されている。非イオン性界面活性剤が存在している場合、本発明の組成物における濃度は、約0.001〜約5重量%(または約0.01〜約4重量%、または約0.01〜約2重量%、または約0.01〜約1重量%、または約0.01〜約0.5重量%)の範囲が可能である。上述のように、これら界面活性剤のうちの任意のものを用いてミクロンまたはナノメートルのサイズの粒子を被覆することができる。
【0122】
それに加え、本発明の組成物は、添加剤として、緩衝液、希釈剤、基剤、アジュバント、他の賦形剤などを含むことができる。医薬として許容可能で目に適用するのに適したあらゆる緩衝液を使用できる。さまざまな目的で他の添加剤を本発明の組成物で使用できる。例えば緩衝剤、保存剤、共溶媒、油、湿潤剤、緩和剤、安定剤、酸化防止剤を使用できる。
【0123】
使用できる水溶性保存剤として、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンズアルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、エチルアルコール、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、過酸化物(例えば過酸化水素、尿素過酸化水素、過酸化化合物を生成させる過ホウ化物などの供給源)、ビグアニド化合物、クアテルニウム化合物(例えばポリクワット-1、ポリクワット-10など)などがある。これらの保存剤は、個別に約0.001〜約5重量%の量で存在することができる(約0.01〜約2重量%が好ましい)。
【0124】
使用できる適切な水溶性緩衝剤は、望ましい投与経路に関してアメリカ合衆国食品医薬品局(“US FDA”)に認可されている炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどである。これらの緩衝剤は、系のpHを約5〜約8に維持するのに十分な量で存在することができる。そのため緩衝剤は、全組成物の約5重量%が可能である。電解質(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)も組成物に含まれていてよい。生理学的に許容可能な緩衝液としては、リン酸塩緩衝液、トリス-HCl緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとHClを含む)などが挙げられる。例えばpHが7.4のトリス-HCl緩衝液は、3g/リットルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと、0.76g/リットルのHClを含んでいる。さらに別の特徴では、緩衝液は、10×リン酸緩衝化生理食塩水(“PBS”)または5×PBS溶液である。
【0125】
場合によっては他の緩衝液も適切であるか望ましい可能性がある。それは例えば、25℃におけるpKaが7.5でpHが約6.8〜8.2の範囲のHEPES(N-{2-ヒドロキシエチル}ピペラジン-N'-{2-エタンスルホン酸})をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.1でpHが約6.4〜7.8の範囲のBES(N,N-ビス{2-ヒドロキシエチル}-2-アミノエタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.2でpHが約6.5〜7.9の範囲のMOPS(3-{N-モルホリノ}プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.4でpHが約6.8〜8.2の範囲のTES(N-トリス{ヒドロキシメチル}-メチル-2-アミノエタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.6でpHが約6.9〜8.3の範囲のMOBS(4-{N-モルホリノ}ブタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.52でpHが約7〜8.2の範囲のDIPSO(3-(N,N-ビス{2-ヒドロキシエチル}アミノ)-2-ヒドロキシプロパン)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.61でpHが約7〜8.2の範囲のTAPSO(2-ヒドロキシ-3{トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ}-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが8.4でpHが約7.7〜9.1の範囲のTAPS({(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ}-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが8.9でpHが約8.2〜9.6の範囲のTABS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-4-アミノブタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが9.0でpHが約8.3〜9.7の範囲のAMPSO(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが9.5でpHが約8.6〜10.0の範囲のCHES(2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが9.6でpHが約8.9〜10.3の範囲のCAPSO(3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが10.4でpHが約9.7〜11.1の範囲のCAPS(3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液である。
【0126】
1つの特徴では、組成物は、例えば組成物を非刺激性にするため、対象への投与に適したpHを持つ。例えば目への局所投与では、望ましいpHは約5〜約8(または約6〜約7、または約6.4〜約6.8)の範囲である。
【0127】
1つの特徴では、組成物は約7のpHを持つ。あるいは組成物は、約7〜約7.5の範囲のpHを持つ。
【0128】
別の特徴では、組成物は、約7.4のpHを持つ。
【0129】
さらに別の特徴では、組成物は、対象への組成物の投与が容易になるように、または対象の体内での生物学的利用能を向上させるように設計した粘性率変更化合物も含むことができる。さらに別の特徴では、その粘性率変更化合物は、目の環境(例えば目の表面、結膜、硝子体)に投与した後に組成物が容易に分散しないように選択することができる。そのような化合物は、組成物の粘性率を増大させることができ、例として、モノマー・ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコールなど);ポリマー・ポリオール(ポリエチレングリコールなど);セルロース・ファミリーのさまざまなポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(“HPMC”)、カルボキシメチルセルロース(“CMC”)ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(“HPC”)など);多糖類(ヒアルロン酸とその塩、硫酸コンドロイチンとその塩、デキストラン(例えばデキストラン70)など);水溶性タンパク質(ゼラチンなど);ビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドンなど);カルボマー(カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974Pなど);アクリル酸ポリマーなどがある。一般に、望む粘性率は、約1〜約400センチポアズ(“cp”またはmPa秒)の範囲が可能である。
【0130】
別の特徴では、本発明により、ベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を含む組成物を製造する方法として、(a)ベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を用意し;(b)ある量のそのベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を十分な量の媒体に分散させて組成物を製造して、その媒体中のそのベシフロキサシンを所定の濃度にする操作を含む方法が提供される。あるいは一部のベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)は、そのベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を媒体と接触させてから2日、または1週間、または1ヶ月、または2ヶ月、または3ヶ月、または4ヶ月、または5ヶ月、または6ヶ月、または1年、または2年よりも長い期間にわたって固相に留まる。一実施態様では、この方法は、場合によってはベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を媒体の中に分散させる前にそのベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)のサイズを小さくするステップを含むことができる。
【0131】
さらに別の特徴では、本発明により、ベシフロキサシンの分子結晶を製造する方法が提供される。この方法は、(a)ベシフロキサシンの可溶性の塩を溶媒(例えば水)に望む量溶かして溶液を形成し;(b)その溶液のpHを約6.2〜約6.8の範囲の値に調節し;(c)ベシフロキサシンの分子結晶が形成されるのに十分な時間放置する操作を含んでいる。この方法はさらに、ベシフロキサシンの分子結晶を回収してその分子結晶をさらに乾燥させる、または乾燥させない操作を含むことができる。この方法はさらに、回収した分子結晶のサイズを小さくしてナノメートルまたはマイクロメートルのサイズの粒子にする操作を含むことができる。
【0132】
本発明のいくつかの組成物を以下の実施例に開示する。列挙した諸成分の割合は個々の状況に合わせて変えられることを理解されたい。
【実施例1】
【0133】
【表15】
【0134】
適切な割合のEDTA(例えば表13に示した量)を、撹拌機構を備えるジャケット付きステンレス鋼製容器の中の精製水に添加する。適量のカルボポール934P NFを5〜10分間かけて添加し、実質的に一様な分散液を形成する。得られた混合物にプロピレングリコールを添加し、3〜10分間にわたって混合する。次に、適量のベシフロキサシン(あらかじめ微粉化しておくことができる)を3〜5分間かけて容器の内容物に添加し、化合物が実質的に分散されるまで混合を続ける。1NのNaClを用いてこの混合物のpHを6.4〜6.7に調節する。最終組成物を例えば熱または照射線を利用して殺菌し、適切な容器の中に包装する。
【実施例2】
【0135】
実施例1に開示したのと同様の手続きを利用して表14に列挙した諸成分を含む本発明の組成物を製造する。
【0136】
【表16】
【実施例3】
【0137】
実施例1に開示したのと同様の手続きを利用して表15に列挙した諸成分を含む本発明の組成物を製造する。
【0138】
【表17】
【実施例4】
【0139】
実施例1に開示した手続きを利用して表16に列挙した諸成分を含む本発明の組成物を製造する。
【0140】
適切な割合のポリソルベート80(例えば表4に示した量)を、撹拌機構を備えるジャケット付きステンレス鋼製容器の中にある望む最終体積の約20%の精製水に添加する。次に、この混合物にグリセリンとプロピレングリコールを添加し、さらに5分間にわたって混合を続ける。撹拌機構を備えていて約80℃に加熱された殺菌した第2の容器に望む最終体積の約70%の精製水が含まれている中に、適量のCMC-MVを3〜5分間かけて添加し、CMCが実質的に一様な溶液を形成するまで混合を続ける。この第2の容器の内容物をほぼ室温まで冷却した後、第1の容器の内容物を第2の容器に移す。望む体積の残量の精製水を第2の容器に添加する。次に、適量のベシフロキサシンと第2の抗感染症薬(例えばシプロフロキサシン)を第2の容器の内容物に3〜5分間かけて添加し、これらの薬が実質的に一様に分散されるまで混合を続ける。1NのNaOHを用いて混合物のpHを6.5〜6.7に調節する。最終組成物を例えば熱または照射線を利用して殺菌し、適切な容器の中に包装する。
【0141】
【表18】
【実施例5】
【0142】
実施例1と同様の手続きを利用して表17に列挙した諸成分を含む組成物を製造する。
【0143】
【表19】
【実施例6】
【0144】
実施例4と同様の手続きを利用して表18に列挙した諸成分を含む組成物を製造する。
【0145】
【表20】
【実施例7】
【0146】
実施例1と同様の手続きを利用して表19に列挙した諸成分を含む組成物を製造する。
【0147】
【表21】
【0148】
あるいは精製水の代わりに油(例えば魚の肝油、ピーナツ油、ゴマ油、ココナツ油、ヒマワリ油、コーン油、オリーブ油)を用い、ベシフロキサシンの分子結晶を含む油ベースの組成物を製造してもよい。
【0149】
本発明の特別な実施態様をこれまで説明してきたが、当業者には、添付の請求項に規定されている本発明の精神と範囲から逸脱することなく、多くの等価物、変更、置き換え、バリエーションが可能であることがわかるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロキノロンカルボン酸分子結晶に関する。本発明は特に、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸分子結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
合成抗菌剤(例えばナリジクス酸、ピロミド酸など)は、グラム陰性菌によって起こる感染症の治療薬として知られている。しかし合成抗菌剤は、緑膿菌感染症などの難治性疾患に対しては不十分な効果しか示さない。
【0003】
その一方で、6位がフッ素原子で置換されたキノロンカルボン酸誘導体(例えばノルフロキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン)または8位が塩素原子で置換されたキノロンカルボン酸誘導体が開発され(日本国特開第225181/1986号、第90183/1984号)、その強い抗菌活性のために臨床で利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来からあるこれら合成抗菌剤は、生体内での吸収率が十分でないために小さな生物学的利用能しか提供しないという欠点と、グラム陽性菌に対する抗菌活性が低いという欠点を持っていた。
【0005】
したがって、グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方(その中には耐性菌も含まれる)に対する強い抗菌活性を持つとともに、生体内でより優れた吸収率を持つ抗菌剤の開発が、以前から望まれている。
【0006】
活性医薬成分(“API”)はしばしば有機分子であり、製造法に応じて異なる有機結晶形で存在できる。このように異なる分子結晶形は、これらAPIを含む医薬組成物の加工性、物理的特性、化学的特性、安定性などに、実際に影響を与える可能性がある。
【0007】
したがって、APIの分子結晶形で有利な特性を有するものを提供することが望ましい。特に、フルオロキノロンカルボン酸の分子結晶形で新規な抗感染症用医薬組成物の製造に有利な特性を有するものを提供することが非常に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、本発明により、フルオロキノロンカルボン酸の特別な分子形態が提供される。
【0009】
1つの特徴では、本発明により、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の特別な分子形態が提供される。
【0010】
別の特徴では、本発明により、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の安定な分子形態が提供される。
【0011】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0012】
さらに別の特徴では、本発明により、DSC(示差走査熱量測定)の融点のピークが288℃にあることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0013】
別の特徴では、本発明により、23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0014】
さらに別の特徴では、本発明により、pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形が提供される。
【0015】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトル;またはDSCの融点のピークが288℃にあること;または23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトル;またはpKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物が提供される。
【0016】
別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物が提供される。
【0017】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物が提供される。
【0018】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明、請求項、添付の図面から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下に示す各図面には簡単な説明が伴っている。
【0020】
【図1】ベシフロキサシンHClの構造を示す。
【図2】ロット050956330のベシフロキサシンHClに関するpH-溶解度の挙動を示す。
【図3】ロット050956330のベシフロキサシンHCl塩の水分吸収を示す。
【図4】ロット2325-288のベシフロキサシン遊離塩基の水分吸収を示す。
【図5A】ロット051157469のベシフロキサシンHClに関する示差走査熱量測定の結果を示す。
【図5B】ロット051157469のベシフロキサシンHClに関する熱重量測定分析の結果を示す。
【図6A】ロット2325-282-0のベシフロキサシン遊離塩基に関する示差走査熱量測定の結果を示す。
【図6B】ロット2325-282-0のベシフロキサシン遊離塩基に関する熱重量測定分析の結果を示す。
【図7A】ロット051157469のベシフロキサシンHCl塩に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図7B】ロット051157469のベシフロキサシンHCl塩に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図8A】ロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図8B】ロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析結果のまとめを示している。
【図9】ベシフロキサシンHCl塩とベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析結果を重ね合わせて示してある。
【図10】有機溶媒平衡サンプル(ベシフロキサシンHCl塩)から得られた過剰な固体に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図11】有機溶媒平衡サンプル(ベシフロキサシン遊離塩基)から得られた過剰な固体に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図12】ベシフロキサシン眼科用懸濁液製剤(0.6%)に含まれるベシフロキサシン遊離塩基を粉末X線回折分析で同定した結果を示している。
【図13】ISV-403薬製品に含まれるベシフロキサシンHClを検出するための粉末X線回折分析の感度を示してい
【図14】第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準(ロット14104J)に関する2〜40°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図15】第2の実験室で製造したベシフロキサシンHClとボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基に関する3〜40°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図16】第1の実験室で製造したベシフロキサシンHClロットと、第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準と、ボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基に関する4〜16°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図17】第2の実験室で製造したベシフロキサシンHClロットとボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基に関する4〜16°2θでの粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図18】ベシフロキサシン遊離塩基(ロット2325-293)を第1の実験室で製造したベシフロキサシンHCl(BL8/R&D/07/001ロット2)の中に入れたスパイキング研究用サンプルに関する粉末X線回折の分析パターンを示しており、遊離塩基の含有量が増加していることを示すピークが見られる。
【図19】ベシフロキサシン遊離塩基(ロット2325-293)を第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準の中に入れたスパイキング研究用サンプルに関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図20A】ベシフロキサシンHCl塩とベシフロキサシン遊離塩基の13C NMRスペクトルを示している。
【図20B】ベシフロキサシンHCl塩とベシフロキサシン遊離塩基の13C NMRスペクトルを示している。
【図21】3つのロットのベシフロキサシン遊離塩基を平均した粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図22A】ベシフロキサシンHCl参照基準とベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図22B】ベシフロキサシンHCl参照基準とベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の分析パターンを示している。
【図23】ロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の結果を分析して得られたピークの表を示している。
【図24】ベシフロキサシンHCl参照基準とロット2325-293のベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の結果を比較して示している。
【図25】ベシフロキサシン遊離塩基に関する粉末X線回折の結果を分析して得られた主要なピークの表を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この明細書では、“制御”という用語に、軽減、緩和、改善、予防も含まれる。
【0022】
この明細書では、“安定な”という用語は、材料を最初に調製してから2週間後の時点で、XRPDパターンにおける複数のピークによってわかる結晶構造が変化できないことを意味する。
【0023】
一般に、本発明により、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の安定な分子結晶が提供される。
【0024】
この明細書と請求項の全体を通じ、(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸をベシフロキサシンとも呼ぶ。
【0025】
(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の合成はアメリカ合衆国特許第5,447,926号に開示されており、その全体が参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0026】
ベシフロキサシンHCl塩(ベシフロキサシンのHCl添加塩)は、水にはほとんど溶けず、メタノールとエタノールにはわずかに溶け、アセトニトリルとイソプロパノールには溶けないことが観察された。ベシフロキサシンは、pHが2〜12の範囲全体でイオン化可能な2つの官能基、すなわちカルボン酸と第一級アミンを有する。これら官能基をpH5.5〜9.0でイオン化すると両性イオンが形成され、その両性イオンは、非常にわずかだけ溶ける(約0.1mg/ml)固体として結晶化する。したがってベシフロキサシンHClは、水性媒体(pH>4)の中で、対イオンのない新しい結晶相(今後は“遊離塩基”と呼ぶ)に変換されることが観察された。独立な分光学的研究から、この遊離塩基は両性イオン性分子結晶であることが確認される。pH>9とpH<5では、ベシフロキサシンの溶解度は、pHの関数として最大で約10mg/ml(pH3)まで上昇した。固有溶解度が0.074mg/mlであると仮定してpH-溶解度の挙動をヘンダーソン-ハッセルバッハ式にフィットさせると、カルボン酸基と第一級アミン基のpKaはそれぞれ5.65と9.91であると見積もられた。
【0027】
ベシフロキサシン遊離塩基とベシフロキサシンHCl塩の両方で独自の粉末X線回折(XRPD)パターンが同定された。これらの形態は、DSC(示差走査熱量測定)によって検出される独自の融点も持っていた。遊離塩基は融点のピークが288℃であるのに対し、HCl塩のほうは321.5℃である。両方の固体の融解には分解が伴っていた。薬製品のXRPD分析に基づくと、HCl塩の証拠は観察されなかったが、遊離塩基に付随するピークが常に存在していた。pH6.5の溶液(製品のpH)では、ベシフロキサシンの遊離塩基は最低の溶解度であった。したがって、製品の製造中にすべてのHCl塩が遊離塩基に変換されたようである。これらの研究は、ベシフロキサシンの遊離塩基が薬製品の中で優勢な結晶相であることを示している。
【0028】
ベシフロキサシンは、目の感染症を治療するための抗生剤として現在開発されているフルオロクロロキノロンである。医薬製品は、活性医薬成分(“API”)の出発材料としてベシフロキサシンのHCl添加塩を用いて製造される。ベシフロキサシンHCl塩は分子量が430である。ベシフロキサシンHClの構造を図1に示す。ベシフロキサシンHCl塩の物理化学的特性を研究し、医薬組成物の中にベシフロキサシンを含む固相を明らかにした。
【0029】
ロット050956330とロット051157469のベシフロキサシンHCl塩を用いて医薬組成物を調製した。どちらのロットも、多くの研究で使用する薬製品の製造に用いる材料を代表していると考えられ、あらゆる仕様を満たしていた。それに加え、以下に記載する方法を利用し、遊離塩基の実験室ロットをいくつか調製した。これらのバッチに2325-293、2325-288、2325-282の番号を付けた。
【0030】
装置
【0031】
バーレル社のリスト・アクション・シェイカー、モデル75
クロマトグラフィ・システム:フォトダイオード・アレイ検出器を備えるHP 1100。HPケムステーション・ソフトウエア
示差走査熱量測定器(DSC)、パーキン・エルマー社のピリス
メトラー社の天秤、モデルAE160
アキュメット社の925 pH/イオン・メーター
リガク社のミニフレックスXRPDユニットCuKアルファ線源(30kV/15mA)
熱重量分析器、TAインスツルメンツ社
水分吸収分析器、モデルMB-300W、VTIコーポレーション社
【0032】
高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)法
【0033】
逆相勾配HPLC法を利用し、ベシフロキサシンの溶解度を調べるサンプルを分析した。条件を以下に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
ベシフロキサシンHClの溶解度をいくつかの有機溶媒の中で調べた。小さな磁気撹拌器またはバーレル社のリスト・アクション・シェイカーを用い、各溶媒を10ml用いて過剰な薬物質を24〜48時間にわたって周囲温度(24±3℃)で平衡させた。サンプルを目で調べ、必要な場合には、撹拌後に過剰な固体が残るまで、より多くの薬物質を添加した。次にサンプルを0.45μmのナイロン製フィルタまたはPVDF製フィルタで濾過するか、10,000rpmで15分間にわたって遠心分離した。濾液または上清を必要に応じてHPLC希釈液を用いて希釈し、HPLCで分析した。溶解度が100mg/mlよりも大きい場合には、平衡溶解度を決定するのに何もせず、USPの定義にあるように、その化合物を“自由に溶ける”と記述した。
【0036】
ロット050956330のベシフロキサシンHClの溶解度を、1NのNaClを用いてpHを調節することにより、蒸留水の中でpHの関数として決定した。薬物質の懸濁液(10mlの蒸留水に約50〜150mg)をバーレル社のシェイカーを用いて72〜96時間かけて平衡させた。実験室の温度は22±2℃であった。懸濁液のpHは、サンプリングの前に過剰な固体が存在している状態で測定した。サンプルは、エンプロテック社のISS-I13遠心分離機の中で15分間にわたって10,000rpmで遠心分離するか、0.45μmのナイロン製フィルタまたはPVDF製フィルタで濾過した。サンプルを濾過した場合には、フィルタが飽和するよう、ある体積の濾液を廃棄した。上清または濾液を必要に応じてHPLC希釈液を用いて希釈した後、分析した。サンプルの濃度をさまざまな時間間隔でモニタし、完全に平衡していることを確認した。また、サンプルの濃度は、ベシフロキサシンHClの濃度ではなくベシフロキサシン遊離塩基の濃度として記録した。
【0037】
pKaが観察された溶解度の挙動と整合していることを確認するため、pHに依存する溶解度を以下の式にフィットさせた。
S=S0×(10pKa1-pH+10pH-PKa2+1)
ただし、S=溶解度
S0=固有溶解度(両性イオンと中性化学種の合計)
pKa1=カルボン酸部分の解離定数
pKa2=第一級アンモニウム・イオン部分の解離定数
【0038】
示差走査熱量測定(DSC)と熱重量分析(TGA)
【0039】
DSC実験をパーキン・エルマー社のピリス7 DSCで実施し、結果をピリス・ソフトウエア、バージョン7.0.0.0110を用いて分析した。少量の細かく粉砕した粉末を正確に計量し(約1.5〜3mg)、50μlのアルミニウム・パンの中に入れた。このパンをピンホール・カバーのクリンピングによって封止した。サンプルは、50℃から340℃まで20℃/分で走査した。固体の融解が始まる温度を融解曲線から外挿した。それに加え、この材料の特徴を明らかにするため、他の事象(発熱、分解)も記録した。
【0040】
熱重量分析を行なうため、TAインスツルメンツ社のモデルQ50を使用した。風袋を計量した白金製ホルダに重さ約15mgのサンプルを装填した。このサンプルを室温から350℃まで10℃/分で加熱した。加熱の間、サンプルに40ml/分で窒素を吹き付けた。サンプルの重量損失を温度の関数としてモニタした。
【0041】
水分吸収分析
【0042】
VTI社の水分吸収天秤を用い、水分の取り込みと損失を相対湿度の関数としてモニタした。風袋を計量したガラス製サンプル・ホルダに30〜40mgのサンプルを装填した。サンプルの初期重量を正確に記録した。次に、一定の窒素流のもとで40℃にてサンプルを2時間にわたって乾燥させた。最初の乾燥の後、25℃の乾燥窒素を用いてサンプルの重量を平衡させ、次いでサンプルを、制御された条件下で湿度を階段状に徐々に増加させている中に曝露した。サンプルは、新しいそれぞれの相対湿度で2時間にわたって平衡させた。水分を吸収する挙動は、10%から90%RHまで10%RHの間隔でモニタし、脱水は、90%から10%RHまでモニタした。%水分利得/損失を%RHに対して記録した。
【0043】
固体ベシフロキサシン遊離塩基の調製
【0044】
ベシフロキサシンの遊離塩基の分離を、HCl塩を水に溶かし、1NのNaClを用いてpHを10超に調節することによって行なった。1NのNaClを用いて溶液のpHをわずかに小さい約9〜10にした。得られたスラリーを室温にて1時間にわたって撹拌し、膜フィルタを用いた濾過によって沈殿物を分離した。その固体を真空炉の中で室温にて24〜48時間にわたって乾燥させた。
【0045】
粉末X線回折
【0046】
約20〜100mgの粉末を低バックグラウンドのサンプル・ホルダに装填した。サンプルをリガク社のミニフレックス(走査式の設計)で分析し、5〜60°2θの範囲において1°2θ/分の速度でサンプリング速度を0.02秒にして走査した。マテリアルズ・データ社から提供されたジェイド・ソフトウエアのバージョン7.5を用いてパターンを分析した。
【0047】
ベシフロキサシン眼科用懸濁液に含まれる結晶性固体(0.6mg/g)の分析
【0048】
ベシフロキサシン懸濁製剤は、水和したポリカルボフィルの中に固体の薬粒子が懸濁状態で含まれる粘性溶液である。濾過または遠心分離によって固体を分離する試みはうまくいかなかった。懸濁製剤中のベシフロキサシンの結晶相を決定するため、約5gの懸濁液を真空炉の中で室温にて乾燥させた。サンプルを多数のバッチ(ISVロットJ04Q、E06Q、965701、E04Q、D05Q)から採取し、バッチ間の整合性を調べた。乾燥後、材料を乳鉢の中ですりつぶし、XRPDによって分析した。固体ベシフロキサシンHClに関するこの方法の感度は、乾燥させたプラセボ(ロットAAP-020)に5〜20%w/wのベシフロキサシンHCl塩を入れることによって調べた。これら混合物をXRPDによって分析し、検出可能なベシフロキサシンHClの最低濃度を決定した。
【0049】
結果
【0050】
溶解度
【0051】
ベシフロキサシンのHCl塩と遊離塩基(ロット2325-293)を表1に示す。平衡したサンプルから過剰な固体を分離し、XRPDによって分析した。有機溶媒中では、いかなる形態の変換も観察されなかった。しかし水性pH可溶化サンプルでは、過剰な固体ベシフロキサシンHClが3.5〜4.0よりも大きなpHで異なる結晶相へと変換された。以下に議論するように(XRPDの項)、この相は、結晶ベシフロキサシン遊離塩基であると同定された。
【0052】
ベシフロキサシンはイオン化可能な化合物であり、カルボン酸と第一級アミンの両方を含んでいる。これらイオン化可能な基の両方が、水性媒体において観察される溶解度の挙動に寄与する。溶解度の値をpHの関数として表2に示す。このデータは、ヘンダーソン-ハッセルバッハ式にうまくフィットした。最良のフィットを実現するため、カルボン酸基と第一級アンモニウム基のpKa値をそれぞれ5.65と9.91と見積もり、固有溶解度(S0)を0.074mg/mlと見積もった。実験データにフィットさせた曲線を図2に示す。図2からわかるように、この分子の溶解度は、pHが5.5〜9の範囲全体で比較的一定であり(約0.1mg/ml)、この範囲ではカルボン酸基と第一級アミン基の両方がイオン化されている。ベシフロキサシンの“遊離塩基”は、実際には、ベシフロキサシンHClに含まれるカルボン酸の脱プロトン化から得られるほとんど溶けない両性イオンから沈殿する固体である。ベシフロキサシン遊離塩基にとって、カルボン酸の脱プロトン化は、約3.5を超えるpHの水溶液中で溶解度の平衡を支配する上で十分に意味を持つようになる。酸性pH(pH<5)とアルカリ性pH(pH>9)の両方において、二重に帯電しているが中性である両性イオンが、一重にイオン化した化学種と平衡しているため、ベシフロキサシン遊離塩基の溶解度は、カルボン酸または第一級アミンのpKa付近の範囲でpHの関数として上昇する。
【0053】
ベシフロキサシンHClの水分吸収分析:
【0054】
ロット050956330のベシフロキサシンHClとロット2325-288のベシフロキサシン遊離塩基の水分吸収データをそれぞれ図3と図4に示す。ベシフロキサシンHClは吸湿性ではなかった。ベシフロキサシン遊離塩基はすべてのRH条件で水分を吸収し、90%RHでは5%w/wになった。
【0055】
ベシフロキサシンHClとベシフロキサシン遊離塩基の熱分析
【0056】
ベシフロキサシンHClの典型的なサンプル(ロット051157469)に関するDSC(示差走査熱量測定)の結果を図5Aに示す。この挙動は、外挿による315.7℃という温度で融解が始まることに対応する吸熱を示す。融点のピークと融解熱の積分値は決定できなかった。なぜなら融解の吸熱が、突然の不規則な発熱/吸熱によって中断されたからである。これは、融解相に伴う分解から生じたように見えた。
【0057】
図5Bに示してあるように、開放したパンの中でのTGAから、HCl形では融解する前に著しい重量損失があることがわかった。予想通り、溶媒和化した固体または水和した固体に付随すると思われる突然の重量損失事象は存在していなかった。融点よりも高温で起こった重量損失は、融解に分解が伴うという過程と整合していた。融点よりも低温の重量損失には、脱塩化水素が伴っている可能性がある。
【0058】
結晶ベシフロキサシン遊離塩基をpH溶解度実験(ロット2325-282)で分離し、DSCによって分析した。図6Aからわかるように、この材料は、外挿した融解開始温度が279.0℃であり、融点のピークは288.1℃であった。融点のピークよりも高温での追加の熱事象が存在していた。これは、おそらく熱分解の結果であろう。この熱事象を融解転移から分離できなかったため、融解熱の積分値は決まらなかった。図6Bに示した熱重量測定のデータから、融解の前にわずかな重量損失があったことがわかった。この重量損失は、試行ごとに0.3〜0.6%で変化した。この重量損失の挙動は、大きさと開始温度に関しては、吸収された水のほうを特徴としており、化学量論的水和物に付随する重量損失のタイプには典型的ではなかった。
【0059】
粉末X線回折分析(“XRPD”)
【0060】
独自のXRPDパターンが、ベシフロキサシンHCl(ロット051154769)とベシフロキサシン遊離塩基(ロット2325-293)で観察された。これらサンプルのそれぞれについてのピークのリストを図7と図8に示す。これらの回折パターンを重ね合わせたものを図9に示す。
【0061】
メタノール、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、水の中で平衡した過剰な固体のXRPDパターンを、ベシフロキサシンHClについては図10に、ベシフロキサシン遊離塩基については図11に示す。
【0062】
ベシフロキサシン眼科用懸濁液(0.6%)からの固体のXRPD
【0063】
ロット965701、J04Q、E04Q、E06Q、D05Qのベシフロキサシン眼科用懸濁液(0.6%)のXRPD分析結果から、ベシフロキサシン遊離塩基に対応する回折のピークが常に存在し、ベシフロキサシンHClからの検出可能なピークは存在していないことがわかった。回折パターンを図12に示す。分析時のこれらバッチの保管期間は、表3にまとめてあるように、17〜25ヶ月であった。この情報は、薬製品が古くなるとき、薬製品の中で遊離塩基の形態が安定であることを示している。
【0064】
図13に示してあるように、XRPDにより、プラセボに含まれるベシフロキサシンHCl塩を合計で5〜10%w/w検出できることが明らかになった。この感度に基づくと、合計で25〜50%以下のベシフロキサシンが固体塩化水素塩として製品中に存在できよう。固体HCl塩は、pH6.5では製剤中に存在しない可能性が大きい。なぜならpH6.5でこの塩は溶けるが、固体遊離塩基は、製剤の公称w/w濃度よりもはるかに小さな溶解度を持つからである。HCl塩から遊離塩基への素早い変換が、pH溶解度実験において中性〜アルカリ性のpHで観察された。したがって製品のXRPD分析結果と、中性pHにおいてベシフロキサシンHCl塩で観察された水中での挙動に基づくと、ベシフロキサシン眼科用懸濁液の中では遊離塩基が固体薬の優勢な形態である可能性が大きい。
【0065】
結論
【0066】
ベシフロキサシンHCl眼科用懸濁液の調製に用いる出発API形であるベシフロキサシンHCl塩に関して1つの結晶形が観察された。このHCl塩は水性媒体(pH>4)に溶けること、そして異なる結晶形では沈殿することが観察された。この新しい形態は、結晶ベシフロキサシン遊離塩基を特徴とする。分光測定から、固体ベシフロキサシン遊離塩基は基本的な分子構成要素として両性イオン性ベシフロキサシンを含んでいることがわかる。ベシフロキサシンの固体遊離塩基とHCl塩の両方で独自のXRPDパターンが同定された。これらの形態はDSCによって検出される独自の融点を持っていたが、融解によって急速に分解するように見えた。ベシフロキサシン遊離塩基の水和形態の存在に関してTGAからの証拠はなかった。
【0067】
ベシフロキサシンHCl塩は水にはほとんど溶けず、メタノールとエタノールにはわずかに溶け、アセトニトリルとイソプロパノールには溶けなかった。この化合物は、イオン化可能な2つの官能基、すなわちカルボン酸と第一級アミンを持っていた。これら官能基のイオン化状態が原因でpH5.5〜9.0では両性イオンが支配的になり、この両性イオンはほんのわずかに溶ける(約0.1mg/ml)。pH>9とpH<5では、ベシフロキサシンの溶解度がpHの関数として最大で約10mg/ml(pH3)まで上昇した。pH-溶解度の挙動をヘンダーソン-ハッセルバッハ式にフィットさせることにより、両性イオンの固有溶解度が0.074mg/mlに決定され、カルボン酸基と第一級アミン基のpKはそれぞれ5.65と9.91であると見積もられた。
【0068】
薬製品のXRPD分析に基づくと、固体懸濁粒子はベシフロキサシン遊離塩基であり、ベシフロキサシンHClではなかった。この観察結果は、pH6.5(製品のpH)における溶液中の溶解度の挙動と一致している。このpH6.5では、ベシフロキサシンの遊離塩基は水性媒体の中で約0.1mg/mlの溶解度を持つ。この値は、ベシフロキサシンHCl眼科用懸濁液中の6mg/mlという公称濃度よりもはるかに小さい。固体HCl塩は、懸濁液の製造中に遊離塩基の形態に変換されるようである。これらの研究は、ベシフロキサシン眼科用懸濁液(0.6%)の中でベシフロキサシンの固体遊離塩基が優勢な薬相であることを示している。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
ベシフロキサシンHClが2つ以上の結晶形で存在できるかどうかを調べる研究を行なった。ベシフロキサシンHClの結晶形とベシフロキサシン遊離塩基の結晶形が、結晶形をスクリーニングする研究と、ベシフロキサシンHClを製造するための化学的方法と、ベシフロキサシン薬製品の製造法で観察された。図9からわかるように、これら2つの結晶形は、独自のX線回折パターンを有することが見いだされた。
【0073】
薬製品を製造するための出発材料として、微粉化したベシフロキサシンHClを使用する。製造プロセスの間にHCl塩はベシフロキサシン遊離塩基に変換される。製品のpHが約6.5の溶液中では、ベシフロキサシン遊離塩基が、好まれる形態である。乾燥した薬製品の粉末X線回折の結果から、HCl塩では回折ピークが欠けていることと、遊離塩基の特徴的な回折ピークが存在していることが明らかになる。
【0074】
実験
【0075】
【表5】
【0076】
瑪瑙製の乳鉢と乳棒を用いてベシフロキサシンHClとベシフロキサシン遊離塩基のサンプルをわずかに粉砕することで、各サンプルでAPIが似た粒子サイズになるようにするとともに、好まれる方向になることを回避した。サンプルの粉末を、長方形の“ゼロ・バックグラウンド”サンプル・ホルダの中にあるサンプル用ウエルの中心近くに置いた。適切な高さの平坦な粉末用床を実現するため、粉末をウエルの中心部に広げた後、計量紙で覆われたガラス製スライドを下向きに動かして圧縮した。
【0077】
粉末X線回折
【0078】
リガク社のミニフレックス・デスクトップ式X線回折装置(シリアル番号CD016610)を用いて粉末X線回折パターンを採取した。ミニフレックスは、鉛直方向を向いたゴニオメータ(半径150mm)と、30kV/15mAで作動し、テイクオフ角が6°である、銅で密封したX線管を備えている。この装置は、可変(θ補償用)発散スリット・システムとニッケルKβフィルタを利用している。シンチレーション・カウンタを検出器として用いる。マテリアルズ・データ社からのジェイド・バージョン7.5ソフトウエアをパターンの評価と図面の作成に用いた。
【0079】
サンプルを、2〜40°2θの領域全体にわたって1.5°/分でステップのサイズを0.005°/ステップにして走査するか、7〜23°2θの領域全体にわたって0.5°/分でステップのサイズを0.003°/ステップにして走査した。ニューランド社で製造したロットに関する物理的形態の定性的決定を、各ロットの回折パターンをベシフロキサシンHCl参照基準およびベシフロキサシン遊離塩基の回折パターンと比較することによって行なった。
【0080】
シリコン製の基準を28〜29°2θの範囲全体にわたって1.0°/分でステップのサイズを0.02°/ステップにして毎日測定することにより、ミニフレックスX線回折装置についてシステムの適合性を確認した。システムの適合性は、シリコン製の基準に関するd111回折の頂点を測定して28.44±0.02°2θであるときに実現された。
【0081】
サンプルの調製
【0082】
瑪瑙製の乳鉢と乳棒を用いてベシフロキサシンHClとベシフロキサシン遊離塩基のサンプルをわずかに粉砕することで、各サンプルでAPIが似た粒子サイズになるようにするとともに、好まれる方向になることを回避した。サンプルの粉末を、長方形の“ゼロ・バックグラウンド”サンプル・ホルダの中にあるサンプル用ウエルの中心近くに置いた。適切な高さの平坦な粉末用床を実現するため、粉末をウエルの中心部に広げた後、計量紙で覆われたガラス製スライドを下向きに動かして圧縮した。
【0083】
結果
【0084】
第1の実験室で製造したベシフロキサシンHClと、第2の実験室で製造したベシフロキサシンHCl参照基準と、ボシュ&ロム社で製造したベシフロキサシン遊離塩基のX線回折パターンを表4〜表7と図14に示す。第1の実験室のロットR&D/BL/07/001、BL8/R&D/07/001 ロット1、BL8/R&D/07/001 ロット2の主要な回折ピークは、ボシュ&ロム社のベシフロキサシンHCl参照基準(ロット14104J)の主要な回折ピークと一致しているため、第1の実験室のロットはベシフロキサシンHCl参照基準と結晶形が同じであることが確認される。第1の実験室で製造したロットのX線回折パターンは、第2の実験室に由来する他のすべてのベシフロキサシンHClロットのパターンともよく一致している(表8〜表11と図15)。
【0085】
第1の実験室の3つのロットに関してX線回折パターンをベシフロキサシンHCl参照基準と比較したとき、X線回折パターンのわずかな違いが、約10.3°2θの非常に小さなピークとして観察された(図16)。この小さな回折ピークは、第2の実験室で製造したいくつかのロットにも存在しているように見える(図15と図17)。ベシフロキサシン遊離塩基を第1の実験室で製造したベシフロキサシンHClのサンプル(BL8/R&D/07/001 ロット2)に入れ、粉末の遊離塩基含有量が増えるにつれて10.3°2θの回折ピークの強度が増加するかどうかを調べた。図18は、この第1のスパイキング研究からのサンプルに関するX線回折パターンを示している。このスパイキング研究のサンプルでベシフロキサシン遊離塩基のレベルを大きくすると、10.3°2θ(d=8.6)、12.0°2θ(d=7.4)、21.2°2θ(d=21.2)で回折ピークの強度が増大した。したがって10.3°2θの小さな回折ピークは、ベシフロキサシン遊離塩基が存在していることの1つの指標であることが確認される。ベシフロキサシン遊離塩基をベシフロキサシンHCl参照基準に入れて第2スパイキング研究を実施した。図19は、第2のスパイキング研究のサンプルに関するX線回折パターンである。“そのままの”ベシフロキサシンHCl参照基準は、10.3°2θに検出可能な回折ピークを示さない。わずか5%のベシフロキサシン遊離塩基をベシフロキサシンHCl参照基準に添加した後には、10.3°2θに小さなピークを検出することができる。第2の研究からの2つのスパイキング・レベル(5%と10%の遊離塩基)だけを利用し、ベシフロキサシンHCl参照基準とベシフロキサシン遊離塩基が純粋であると仮定することで、第1の実験室の3つのロットに含まれる遊離塩基の量を大まかに見積もった。表12に第2のスパイキング研究の結果をまとめてあり、ここには第1の実験室の微粉化したベシフロキサシンHClロットに含まれる遊離塩基の大まかな推定値が記載されている。10.2〜10.3°2θの回折ピークの高さを用いると、第1の実験室で製造した微粉化されたロットであるBL8/R&D/07/001 ロット1とBL8/R&D/07/001 ロット2は、5〜9%のベシフロキサシン遊離塩基を含んでいると推定される。第2の実験室で製造したロットでは、粉砕していないバッチ#10だけが検出可能な遊離塩基を含んでいた。しかし第2の実験室の微粉化したロット05126J、03063J、01085Jはすべて、10.3°2θの領域に基線からの小さな増加を示す。これは、これらのロットがベシフロキサシン遊離塩基をいくらか含んでいるがおそらく5%以下であることを示している可能性が大きい。
【0086】
【表6】
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
【表10】
【0091】
【表11】
【0092】
【表12】
【0093】
【表13】
【0094】
【表14】
【0095】
別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0096】
さらに別の特徴では、本発明により、DSC(示差走査熱量測定)の融点のピークが288℃にあることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0097】
別の特徴では、本発明により、23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0098】
さらに別の特徴では、本発明により、pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0099】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトル;またはDSCの融点のピークが288℃にあること;または23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトル;またはpKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0100】
別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0101】
さらに別の特徴では、本発明により、2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶を含む医薬組成物が提供される。
【0102】
本発明の医薬組成物は、対象にこのような組成物を投与することによって感染症(例えば細菌感染症)を治療するのに使用できる。
【0103】
このような医薬組成物は、適切な経路での投与に適したようにすることができる。例えば経口経路(頬、舌下が含まれる)、直腸経路、経鼻経路、局所経路(頬、舌下、経皮が含まれる)、膣経路、非経口経路(皮下、筋肉内、静脈内、皮内が含まれる)がある。このような組成物は、薬学で知られている任意の方法で調製することができ、例えばベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を基剤または賦形剤と組み合わせる。
【0104】
経口投与に適した医薬組成物は、離散した単位として提供することができ、その例として、カプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;水性液体または非水性液体への溶液または懸濁液;食用の泡またはホイップ;水中油エマルジョンまたは油中水エマルジョンなどがある。
【0105】
経皮投与に適した医薬組成物は、レシピエントの表皮と長期にわたって密に接触した状態に留まるようにする離散したパッチとして提供することができる。例えば活性成分をイオン泳動によってパッチから送達することができる。これに関する一般的な事柄は、Pharmaceutical Research、第3巻(6)、318ページ、1986年に記載されている。
【0106】
局所投与に適した医薬組成物は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エーロゾル、油の形態にすることができる。
【0107】
目またはそれ以外の外部組織(例えば皮膚)を治療するには、状況に合わせて組成物を局所用の溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液、軟膏、クリームのいずれかとして適用することができる。活性成分は、軟膏の形態にされている場合には、パラフィンとともに、または水と混和する軟膏ベースとともに用いることができる。あるいは活性成分は、水中油クリーム・ベースまたは油中水ベースを用いてクリームの形態にすることができる。
【0108】
目への局所投与に適した医薬組成物として、活性成分を適切な基剤(特に水性溶媒)に溶かすか懸濁させた点眼液などがある。
【0109】
口内への局所投与に適した医薬組成物として、ロゼンジ、トローチ、うがい液などがある。
【0110】
直腸投与に適した医薬組成物は、座薬または浣腸として提供することができる。
【0111】
基剤が固体で経鼻投与に適した医薬組成物として、粒径が例えば10〜500ミクロンの範囲にある粗い粉末などがある。この粗い粉末は、嗅ぐことによって、すなわち粉末が保持されている容器を鼻に近づけてこの容器から鼻腔を通じて吸入することによって投与される。鼻スプレーまたは点鼻液として投与するために基剤が液体である適切な組成物として、活性成分の水溶液または油溶液などがある。
【0112】
吸入による投与に適した医薬組成物として、さまざまなタイプの計量投与量加圧エーロゾル、噴霧器、散布器によって生成させることのできる細かい粒子のダストまたはミストなどがある。
【0113】
膣投与に適した医薬組成物は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、スプレー組成物として提供することができる。
【0114】
非経口投与に適した医薬組成物として、水性と非水性の減菌注射溶液(その中には、組成物を対象とするレシピエントの血液と等張にする酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、溶質が含まれていてよい);水性と非水性の減菌懸濁液(その中には、懸濁剤と増粘剤が含まれていてよい)などがある。組成物は、1回投与または多数回投与の容器(例えば密封したアンプルやバイアル)に入れて提供することができ、凍結乾燥条件で保管することが可能であり、使用の直前に減菌液体基剤(例えば注射用の水)を添加するだけでよい。
【0115】
その場で作る注射溶液と懸濁液は、殺菌した粉末、顆粒、錠剤から調製することができる。
【0116】
好ましい単位用量組成物は、活性成分の上に示した1日の投与量または分割投与量(すなわその適切な一部)を含むものである。
【0117】
一実施態様では、このような医薬組成物は、水性基剤を含んでいる。
【0118】
別の一実施態様では、このような医薬組成物は、有機基剤(例えば疎水性または親水性の有機材料)を含んでいる。
【0119】
適切な濃度は、全組成物の約0.001〜約10重量%(または約0.01〜約5重量%、または約0.01〜約2重量%、約0.01〜約1重量%、約0.001〜約1重量%、約0.05〜約1重量%、約0.05〜約2重量%約0.1〜約0.5重量%、約0.5〜約1重量%、約1〜約2重量%)の範囲であり、この濃度だと、感染症(例えばグラム陽性菌とグラム陰性菌の両方によって起こる細菌感染症)と闘う上で十分な治療効果を提供すると考えられる。
【0120】
一実施態様では、本発明の組成物は、懸濁液または分散液の形態である。別の一実施態様では、その懸濁液または分散液は、水溶液をベースとしている。例えば本発明の組成物は、ミクロンまたはナノメートルのサイズの活性成分の粒子を減菌生理食塩水の中に懸濁または分散された状態で含むことができる。別の一実施態様では、懸濁液または分散液は、疎水性媒体をベースにしている。例えばミクロンまたはナノメートルのサイズ(例えば約0.1〜約10μmの範囲)の活性成分(またはその塩、そのエステル)の粒子を、疎水性溶媒(例えばシリコーン油)、鉱物油や、目への送達に適した他の任意の非水性媒体に懸濁させることができる。さらに別の一実施態様では、ミクロンまたはナノメートルのサイズの活性成分(またはその塩、そのエステル)の粒子を生理学的に許容可能な界面活性剤(例を以下に示すが、それだけに限定されない)で被覆することができ、その後、その被覆された粒子を液体媒体に分散させる。被覆は、粒子を懸濁液の中に保持することを可能にする。このような液体媒体は、持続放出式の懸濁液を生成させるように選択することができる。例えば液体媒体は、懸濁液が投与されることになる目の環境にほとんど溶けないものにできる。さらに別の一実施態様では、活性成分(またはその塩、そのエステル)を疎水性媒体(例えば油)の中に懸濁または分散させる。さらに別の一実施態様では、このような媒体は、疎水性材料と水のエマルジョンを含んでいる。さらに別の一実施態様では、この明細書に開示した不溶性の活性成分(またはその塩、そのエステル)を通常の任意の薬送達用ビヒクルによって投与することができる。薬送達用ビヒクルとして、リポソーム組成物(リポソームの壁の内側と外側の両方、または厳密にリポソーム・コアの外側)の中の懸濁液、エマルジョンまたはマイクロエマルジョンの連続相の中の懸濁液、エマルジョンの油相の中の懸濁液、帯電した界面活性剤または帯電していない界面活性剤を用いたミセル溶液の中の懸濁液などがあるが、これらに限定されない。界面活性剤がミセル形成剤であると同時にこの明細書に開示した活性成分(またはその塩、そのエステル)のアニオンであるミセル溶液が好ましかろう。
【0121】
別の特徴では、本発明の組成物は、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート(ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸エステル)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル)、ポリソルベート20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル)などであり、これらは商品名Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)60、Tween(登録商標)20として知られている)、ポロキサマー(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの合成ブロック・ポリマーであり、商品名Pluronic(登録商標)F127、Pluronic(登録商標)F108)などで知られている)、ポロキサミン(エチレンオキシドとプロピレンオキシドの合成ブロック・ポリマーにエチレンジアミンが付加されたものであり、商品名Tetronic(登録商標)(例えばTetronic(登録商標)1508、Tetronic(登録商標)908など)で知られている))、他の非イオン性界面活性剤(例えばBrij(登録商標)、Myrj(登録商標))、約12個以上(例えば約12〜約24個)の炭素原子からなる炭素鎖を有する長鎖脂肪アルコール(すなわちオレイルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコソヘキサノイルアルコールなど)をさらに含むことができる。このような化合物は、『あらゆる薬の参照事典』(第34版、S.C. Sweetman(編)、ファーマシューティカル・プレス社、ロンドン、2005年))の中のMartindaleによる1411〜1416ページと、Remington、『薬学の科学と実際』、第21版(リッピンコット・ウイリアムズ&ウイルキンス社、ニューヨーク、2006年)の291ページおよび第22章の中に列挙されている。非イオン性界面活性剤が存在している場合、本発明の組成物における濃度は、約0.001〜約5重量%(または約0.01〜約4重量%、または約0.01〜約2重量%、または約0.01〜約1重量%、または約0.01〜約0.5重量%)の範囲が可能である。上述のように、これら界面活性剤のうちの任意のものを用いてミクロンまたはナノメートルのサイズの粒子を被覆することができる。
【0122】
それに加え、本発明の組成物は、添加剤として、緩衝液、希釈剤、基剤、アジュバント、他の賦形剤などを含むことができる。医薬として許容可能で目に適用するのに適したあらゆる緩衝液を使用できる。さまざまな目的で他の添加剤を本発明の組成物で使用できる。例えば緩衝剤、保存剤、共溶媒、油、湿潤剤、緩和剤、安定剤、酸化防止剤を使用できる。
【0123】
使用できる水溶性保存剤として、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンズアルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、エチルアルコール、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、過酸化物(例えば過酸化水素、尿素過酸化水素、過酸化化合物を生成させる過ホウ化物などの供給源)、ビグアニド化合物、クアテルニウム化合物(例えばポリクワット-1、ポリクワット-10など)などがある。これらの保存剤は、個別に約0.001〜約5重量%の量で存在することができる(約0.01〜約2重量%が好ましい)。
【0124】
使用できる適切な水溶性緩衝剤は、望ましい投与経路に関してアメリカ合衆国食品医薬品局(“US FDA”)に認可されている炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどである。これらの緩衝剤は、系のpHを約5〜約8に維持するのに十分な量で存在することができる。そのため緩衝剤は、全組成物の約5重量%が可能である。電解質(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)も組成物に含まれていてよい。生理学的に許容可能な緩衝液としては、リン酸塩緩衝液、トリス-HCl緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンとHClを含む)などが挙げられる。例えばpHが7.4のトリス-HCl緩衝液は、3g/リットルのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと、0.76g/リットルのHClを含んでいる。さらに別の特徴では、緩衝液は、10×リン酸緩衝化生理食塩水(“PBS”)または5×PBS溶液である。
【0125】
場合によっては他の緩衝液も適切であるか望ましい可能性がある。それは例えば、25℃におけるpKaが7.5でpHが約6.8〜8.2の範囲のHEPES(N-{2-ヒドロキシエチル}ピペラジン-N'-{2-エタンスルホン酸})をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.1でpHが約6.4〜7.8の範囲のBES(N,N-ビス{2-ヒドロキシエチル}-2-アミノエタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.2でpHが約6.5〜7.9の範囲のMOPS(3-{N-モルホリノ}プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.4でpHが約6.8〜8.2の範囲のTES(N-トリス{ヒドロキシメチル}-メチル-2-アミノエタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.6でpHが約6.9〜8.3の範囲のMOBS(4-{N-モルホリノ}ブタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.52でpHが約7〜8.2の範囲のDIPSO(3-(N,N-ビス{2-ヒドロキシエチル}アミノ)-2-ヒドロキシプロパン)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが7.61でpHが約7〜8.2の範囲のTAPSO(2-ヒドロキシ-3{トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ}-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが8.4でpHが約7.7〜9.1の範囲のTAPS({(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ}-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが8.9でpHが約8.2〜9.6の範囲のTABS(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-4-アミノブタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが9.0でpHが約8.3〜9.7の範囲のAMPSO(N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが9.5でpHが約8.6〜10.0の範囲のCHES(2-(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが9.6でpHが約8.9〜10.3の範囲のCAPSO(3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液;25℃におけるpKaが10.4でpHが約9.7〜11.1の範囲のCAPS(3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸)をベースとした緩衝液である。
【0126】
1つの特徴では、組成物は、例えば組成物を非刺激性にするため、対象への投与に適したpHを持つ。例えば目への局所投与では、望ましいpHは約5〜約8(または約6〜約7、または約6.4〜約6.8)の範囲である。
【0127】
1つの特徴では、組成物は約7のpHを持つ。あるいは組成物は、約7〜約7.5の範囲のpHを持つ。
【0128】
別の特徴では、組成物は、約7.4のpHを持つ。
【0129】
さらに別の特徴では、組成物は、対象への組成物の投与が容易になるように、または対象の体内での生物学的利用能を向上させるように設計した粘性率変更化合物も含むことができる。さらに別の特徴では、その粘性率変更化合物は、目の環境(例えば目の表面、結膜、硝子体)に投与した後に組成物が容易に分散しないように選択することができる。そのような化合物は、組成物の粘性率を増大させることができ、例として、モノマー・ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコールなど);ポリマー・ポリオール(ポリエチレングリコールなど);セルロース・ファミリーのさまざまなポリマー(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(“HPMC”)、カルボキシメチルセルロース(“CMC”)ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース(“HPC”)など);多糖類(ヒアルロン酸とその塩、硫酸コンドロイチンとその塩、デキストラン(例えばデキストラン70)など);水溶性タンパク質(ゼラチンなど);ビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポビドンなど);カルボマー(カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、カルボマー974Pなど);アクリル酸ポリマーなどがある。一般に、望む粘性率は、約1〜約400センチポアズ(“cp”またはmPa秒)の範囲が可能である。
【0130】
別の特徴では、本発明により、ベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を含む組成物を製造する方法として、(a)ベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を用意し;(b)ある量のそのベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を十分な量の媒体に分散させて組成物を製造して、その媒体中のそのベシフロキサシンを所定の濃度にする操作を含む方法が提供される。あるいは一部のベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)は、そのベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を媒体と接触させてから2日、または1週間、または1ヶ月、または2ヶ月、または3ヶ月、または4ヶ月、または5ヶ月、または6ヶ月、または1年、または2年よりも長い期間にわたって固相に留まる。一実施態様では、この方法は、場合によってはベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)を媒体の中に分散させる前にそのベシフロキサシン(またはその塩、そのエステル)のサイズを小さくするステップを含むことができる。
【0131】
さらに別の特徴では、本発明により、ベシフロキサシンの分子結晶を製造する方法が提供される。この方法は、(a)ベシフロキサシンの可溶性の塩を溶媒(例えば水)に望む量溶かして溶液を形成し;(b)その溶液のpHを約6.2〜約6.8の範囲の値に調節し;(c)ベシフロキサシンの分子結晶が形成されるのに十分な時間放置する操作を含んでいる。この方法はさらに、ベシフロキサシンの分子結晶を回収してその分子結晶をさらに乾燥させる、または乾燥させない操作を含むことができる。この方法はさらに、回収した分子結晶のサイズを小さくしてナノメートルまたはマイクロメートルのサイズの粒子にする操作を含むことができる。
【0132】
本発明のいくつかの組成物を以下の実施例に開示する。列挙した諸成分の割合は個々の状況に合わせて変えられることを理解されたい。
【実施例1】
【0133】
【表15】
【0134】
適切な割合のEDTA(例えば表13に示した量)を、撹拌機構を備えるジャケット付きステンレス鋼製容器の中の精製水に添加する。適量のカルボポール934P NFを5〜10分間かけて添加し、実質的に一様な分散液を形成する。得られた混合物にプロピレングリコールを添加し、3〜10分間にわたって混合する。次に、適量のベシフロキサシン(あらかじめ微粉化しておくことができる)を3〜5分間かけて容器の内容物に添加し、化合物が実質的に分散されるまで混合を続ける。1NのNaClを用いてこの混合物のpHを6.4〜6.7に調節する。最終組成物を例えば熱または照射線を利用して殺菌し、適切な容器の中に包装する。
【実施例2】
【0135】
実施例1に開示したのと同様の手続きを利用して表14に列挙した諸成分を含む本発明の組成物を製造する。
【0136】
【表16】
【実施例3】
【0137】
実施例1に開示したのと同様の手続きを利用して表15に列挙した諸成分を含む本発明の組成物を製造する。
【0138】
【表17】
【実施例4】
【0139】
実施例1に開示した手続きを利用して表16に列挙した諸成分を含む本発明の組成物を製造する。
【0140】
適切な割合のポリソルベート80(例えば表4に示した量)を、撹拌機構を備えるジャケット付きステンレス鋼製容器の中にある望む最終体積の約20%の精製水に添加する。次に、この混合物にグリセリンとプロピレングリコールを添加し、さらに5分間にわたって混合を続ける。撹拌機構を備えていて約80℃に加熱された殺菌した第2の容器に望む最終体積の約70%の精製水が含まれている中に、適量のCMC-MVを3〜5分間かけて添加し、CMCが実質的に一様な溶液を形成するまで混合を続ける。この第2の容器の内容物をほぼ室温まで冷却した後、第1の容器の内容物を第2の容器に移す。望む体積の残量の精製水を第2の容器に添加する。次に、適量のベシフロキサシンと第2の抗感染症薬(例えばシプロフロキサシン)を第2の容器の内容物に3〜5分間かけて添加し、これらの薬が実質的に一様に分散されるまで混合を続ける。1NのNaOHを用いて混合物のpHを6.5〜6.7に調節する。最終組成物を例えば熱または照射線を利用して殺菌し、適切な容器の中に包装する。
【0141】
【表18】
【実施例5】
【0142】
実施例1と同様の手続きを利用して表17に列挙した諸成分を含む組成物を製造する。
【0143】
【表19】
【実施例6】
【0144】
実施例4と同様の手続きを利用して表18に列挙した諸成分を含む組成物を製造する。
【0145】
【表20】
【実施例7】
【0146】
実施例1と同様の手続きを利用して表19に列挙した諸成分を含む組成物を製造する。
【0147】
【表21】
【0148】
あるいは精製水の代わりに油(例えば魚の肝油、ピーナツ油、ゴマ油、ココナツ油、ヒマワリ油、コーン油、オリーブ油)を用い、ベシフロキサシンの分子結晶を含む油ベースの組成物を製造してもよい。
【0149】
本発明の特別な実施態様をこれまで説明してきたが、当業者には、添付の請求項に規定されている本発明の精神と範囲から逸脱することなく、多くの等価物、変更、置き換え、バリエーションが可能であることがわかるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項2】
示差熱量測定(“DSC”)の融点のピークが288℃にあることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項3】
23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項4】
pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項5】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物。
【請求項7】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物。
【請求項8】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物。
【請求項9】
対象の細菌感染症を治療する方法であって、請求項6〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物のある量をその対象に投与する操作を含んでいて、その量が十分であり、前記細菌感染症を治療するのに十分な頻度で前記投与を行なう方法。
【請求項10】
(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を製造する方法であって、(a)ベシフロキサシンの可溶性の塩を溶媒(例えば水)に望む量溶かし;(b)その溶液のpHを約6.2〜約6.8の範囲の値に調節し;(c)ベシフロキサシンの分子結晶が形成されるのに十分な時間放置する操作を含む方法。
【請求項11】
ベシフロキサシンの分子結晶を回収する操作をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
回収した前記分子結晶のサイズを小さくしてナノメートルまたはミクロンの粒子にするステップ、請求項11に記載の方法。
【請求項1】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項2】
示差熱量測定(“DSC”)の融点のピークが288℃にあることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項3】
23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項4】
pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項5】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物。
【請求項7】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物。
【請求項8】
2θ角のピークを10.6、15、19.7、21.1、22°±0.2°に含む粉末X線回折(“XRPD”)スペクトルと;DSCの融点のピークが288℃にあることと;23.3、27.7、41.1、54.5、116.6、153.5ppmにピークを持つ13C NMRスペクトルと;pKa値が5.65と9.91であることを特徴とする(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を含む医薬組成物。
【請求項9】
対象の細菌感染症を治療する方法であって、請求項6〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物のある量をその対象に投与する操作を含んでいて、その量が十分であり、前記細菌感染症を治療するのに十分な頻度で前記投与を行なう方法。
【請求項10】
(R)-(+)-7-(3-アミノ-2,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-1H-アゼピン-1-イル)-1,4-ジヒドロ-4-オキソキノリン-3-カルボン酸の分子結晶形を製造する方法であって、(a)ベシフロキサシンの可溶性の塩を溶媒(例えば水)に望む量溶かし;(b)その溶液のpHを約6.2〜約6.8の範囲の値に調節し;(c)ベシフロキサシンの分子結晶が形成されるのに十分な時間放置する操作を含む方法。
【請求項11】
ベシフロキサシンの分子結晶を回収する操作をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
回収した前記分子結晶のサイズを小さくしてナノメートルまたはミクロンの粒子にするステップ、請求項11に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2012−521433(P2012−521433A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502123(P2012−502123)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027812
【国際公開番号】WO2010/111116
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/027812
【国際公開番号】WO2010/111116
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】
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