説明

フルオロ平滑化剤

本発明は、短鎖フッ素化アクリレートを含む塗料組成物、および着色および無着色の塗料組成物用の平滑化剤としての短鎖フッ素化アクリレートの使用に関する。塗料組成物は、a)膜形成バインダー樹脂、およびb)制御重合または従来のラジカル重合によって生成されるコポリマーであって、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリルアミドの群からの不飽和モノマーから選択されるモノマー(M1x)と、C1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマー(M2y)とを含むコポリマー[式中、xは、構造要素(M1x)内のモノマーM1の総数を表し、x>5であり、好ましくは10〜1000、最も好ましくは10〜500であり;yは、構造要素(M2y)内のモノマーM2の総数を表し、y>1であり、好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜10である](ここで、コポリマーは、少なくとも30質量%を超える(メタ)アクリレートを含む)、またc)場合により他の従来の塗料成分及び/または添加剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短鎖フッ素化アクリレートを含む塗料組成物、および着色および無着色の塗料組成物用の平滑化剤としての短鎖フッ素化アクリレートの使用に関する。
【0002】
滑らかでクレーターのない表面は、多数の塗料用途にとって重要である。これは、外観上の面だけでなく、表面塗料の保護の問題の理由からでもある。塗料が均一でなく、しかも表面の一部が被覆されていないか、または非常に薄くしか被覆されていない場合、保護も不十分である。それゆえに平滑化剤が、あらゆる種類の塗料に添加剤として使用される。液体塗料配合物の場合、非常に滑らかな塗面にするための平滑化剤が多数市販されている。さらに液体塗料配合物の場合、平滑化の問題はそれほど大きなものではない。それは、粘度が低いため、塗面が良好に平滑になるための十分な時間があるからである。ハイソリッド塗料の場合、または粉体塗料の場合であっても、大きな問題が観察されことがあるが、それらの場合には粘度の高い液体または溶融物を塗布するからである。特に、熱硬化性および放射線硬化性粉体塗料の場合、塗料の平滑化を改善する作用剤を求める強い要望があるのに気付くことができる。
【0003】
粉体塗料を含むあらゆる種類の塗料のために、様々な種類の物質が市販されている。しかし、依然として、向上した異なる特性バランス(例えば、平滑化性能、黄変傾向および取扱適性に関して)をもたらす、改善された平滑化剤が必要とされている。
【0004】
本発明の一態様は、制御フリーラジカル重合という特別な方法でそのような物質を合成することである。制御フリーラジカル重合とは、この場合、第一に、ニトロオキシド媒介制御フリーラジカル重合(NOR)、原子移動フリーラジカル重合(ATRP)、および可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)を意味する。アクリレート/メタクリレートモノマーのような様々なモノマーの直鎖状、分岐状およびグラフト構造を使用できる。制御フリーラジカル重合により、分子量分布が著しく低減されたそのような物質を合成することができる。
【0005】
市販されている一部の平滑化剤はフッ素化部分を含んでおり、フッ素化部分は、普通は、平均鎖長が4より長く、典型的には最低でも6〜8であるパーフルオロ基を有するモノマー[例えば、DuPontのZonylモノマーまたは3MのFluoradモノマー:Zonyl TA−N(C8〜C12パーフルオロ基)、Zonyl TM(C6〜C12パーフルオロ基)、Fluorad FX−189(平均パーフルオロ鎖長=8)参照]に基づいている。コポリマーに組み込まれたそのような長鎖パーフルオロ基により、液体塗料の表面張力および塗膜の硬化段階における表面張力を低下させることによって良好な表面活性を示す添加剤が提供されることが周知である(例:国際公開第03027155号(PPG);国際公開第0327159号(PPG);欧州特許第1316592号(Solutia))。典型的なパーフルオロ鎖長であるC8の長鎖パーフルオロ化学製品は、環境残留性が非常に高いパーフルオロオクタン酸(PFOA)のような分解生成物を形成することが知られている。パーフルオロオクタン酸(PFOA)を含むかまたは生物分解してパーフルオロオクタン酸になるフッ素系ポリマー製品に対する、米国、欧州およびアジアの行政当局の最近の環境上の関心、およびその結果としてそうした製品の多くが市場から取り除かれたことにより、環境に優しい代替製品の明確な必要性が生じてきた。短鎖フッ素化炭素(C1〜C3)を主成分とするフルオロケミカルを使用することを選択することもできる。これまで、短鎖のフッ素化アクリレートまたはメタクリレートは、平滑化剤の合成に使用されてこなかったが、それは、短鎖フルオロ基は、対応するコポリマーの表面張力を減少させる点で効率が高くないと考えられているためである。意外にも、本発明者は、かなり低いレベルの短鎖フルオロ基を含むアクリル系コポリマーが、塗料の平滑化剤として良好な性能を示すことを見出した。
【0006】
本発明の更なる態様は、こうした物質を用いることによる、塗布後の塗料の変色の著しい低減である。多数の市販の物質は、特にポリエステル/プリミド塗装系で、変色が激しい。
【0007】
国際公開第2005059048号(Ciba)は、ニトロキシル媒介制御重合によって製造される式In−[(M)x−(E)ynの平滑化剤を含む塗料組成物について記載している。Mは、フルオロまたはパーフルオロで置換されていてよいモノマーである。一例を挙げれば、Zonyl−TM(=2−(パーフルオロアルキル)メタクリル酸エチル)がある。国際公開第2005059048号は、短鎖フッ素化アクリレートについていかなる示唆もしていない。
【0008】
したがって本発明は、
a)膜形成バインダー樹脂、および
b)制御重合またはラジカル重合によって生成されるコポリマーであって、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリルアミドの群からの不飽和モノマーから選択されるモノマー(M1x)(ここで、コポリマーは少なくとも30質量%を超える(メタ)アクリレートを含む)と、
1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマー(M2y
[式中、
xは、構造要素(M1x)内のモノマーM1の総数を表し、x>5であり、好ましくは10〜1000、最も好ましくは10〜500であり;
yは、構造要素(M2y)内のモノマーM2の総数を表し、y>1であり、好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜10である]と、を含むコポリマー
を含む、塗料組成物に関する。
【0009】
場合により従来の他の塗料成分及び/または添加剤が存在する。
【0010】
括弧は常にアクリレート及び/またはメタクリレートを示す。
【0011】
構造要素(M1x)内には、可能なあらゆるポリマー鎖構造(例えば、直鎖状または分岐状)が含まれる。モノマーM1が化学的に異なるモノマーから選択される場合、可能なあらゆるモノマー配列構造、例えば、種々のモノマーのランダム配列、ブロック配列、複数ブロック配列、先細配列が構造要素(M1x)内に含まれる。
【0012】
構造要素(M2y)内には、可能なあらゆるポリマー鎖構造(例えば、直鎖状または分岐状)が含まれる。
【0013】
2種類の構造要素(M1x)と(M2y)との間には、例えば、種々のモノマーのランダム配列、ブロック配列、複数ブロック配列、先細配列など、可能なあらゆるモノマー配列構造が含まれる。
【0014】
M1は、好ましくは、C1〜C18(メタ)アクリレート、特に、(メタ)アクリル酸メチル(MMA)、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなど)、酸官能性(メタ)アクリル系モノマー(アクリル酸またはメタクリル酸など)、スルホン酸含有モノマー(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)など)、アミノ官能性(メタ)アクリレート(メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)など)、エポキシ官能性(メタ)アクリレート(メタクリル酸グリシジル(GMA)など)、シロキサン基を含む(メタ)アクリレートから選択される。
【0015】
M2は、C1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択され、好ましくは(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルであり、最も好ましくは(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルである。
【0016】
コポリマーは、少なくとも30質量%の(メタ)アクリレートモノマーM1、好ましくは少なくとも45質量%、最も好ましくは少なくとも60質量%の(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0017】
好ましくは、コポリマーは、全モノマーの質量に対して少なくとも30質量%のアクリル酸tert−ブチル及び/またはメタクリル酸tert−ブチルから構成される。
【0018】
一実施態様において、ポリマーは、無機および有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)など)から選択されるフリーラジカル開始剤の存在下でM1をM2と反応させることにより、従来のラジカル重合によって得られる。(請求項2)
【0019】
一つの実施態様において、ポリマーは制御重合によって製造される。(請求項3)
【0020】
制御重合の例として以下のものがある。
・官能基移動重合(GTP)(例えば、米国特許第4656226号に記載)。
・連鎖移動剤を使用する可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)。連鎖移動剤は、例えば、国際公開第98/01478号、国際公開第99/05099号または国際公開第99/31144号に記載の可逆的付加開裂連鎖移動によって反応する。
・原子移動ラジカル重合(ATRP)(例えば、国際公開第96/30421号に記載)
・アルコキシアミン開始剤/調整剤化合物の存在下での重合(例えば、米国特許第4,581,429号または欧州特許出願公開第0621878号に記載)または安定なニトロキシルフリーラジカルおよびラジカル開始剤(フリーラジカル発生源)の存在下での重合(例えば、国際公開第94/11412号に記載)(ニトロオキシド媒介制御重合)。
【0021】
RAFTは、可逆的付加開裂連鎖移動によって反応する連鎖移動剤を用いる、フリーラジカル発生源の存在下でのラジカル重合によるポリマー合成法を表す。連鎖移動剤は、例えば、
・2−フェニルプロプ−2−イルジチオベンゾエート(Ph−C(CH3,CH3)−S−C(S)−Ph)またはジチオ酢酸ベンジルPh−CH2−S−C(S)−CH3(国際公開第98/01478号に記載)、または
・カルバメート、例えば、国際公開第99/31144号に記載の1−ピロールカルボジチオ酸ベンジル
【化1】

など;または
・キサントゲン酸アルキル、例えば、国際公開第98/58974号に記載のエチルα(O−エチルザンチルプロピオネート)などである。
【0022】
国際公開第96/30421号(K.Matyjaszewski)は、原子移動ラジカル重合(ATRP)法を用いたエチレン性不飽和ポリマー(スチレンまたは(メタ)アクリレートなど)の制御重合方法を開示している。この方法により、ブロックコポリマーを含む、明確なオリゴマーのホモポリマーおよびコポリマーが生成される。種々の酸化状態の遷移金属(例えば、Cu(I)およびCu(II))の酸化還元系の存在下でラジカル原子(・Clなど)を生成する開始剤を使用して、「リビング」ラジカル重合または制御ラジカル重合を行わせる。
【0023】
ニトロオキシド媒介制御重合が好ましい。
【0024】
好ましい実施態様においては、本発明は、
a)膜形成バインダー樹脂、および
b)ニトロオキシド媒介制御重合によって生成される式Iのコポリマー:
In−[(M1x−M2y)−(E)zn
c)場合により他の従来の塗料成分及び/または添加剤
[式中、
M1は、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリルアミドの群からの不飽和モノマーから選択され(ここで、コポリマーは、少なくとも30質量%を超える(メタ)アクリレートを含む)、
xは、構造要素(M1x)内のモノマーM1の総数を表し、x>5であり、好ましくは10〜1000、最も好ましくは10〜500であり、
M2は、C1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択され、
yは、構造要素(M2y)内のモノマーM2の総数を表し、y>1であり、好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜10であり、
Inは、ラジカル重合を開始させることができる開始剤フラグメントであり、
Eは、酸素原子を介してポリマーまたはコポリマーに結合する少なくとも1個の安定なニトロキシルフリーラジカルを有する基、または結合した安定なニトロキシルフリーラジカルの置換反応または脱離反応によって生じる基であり、
z=≧1であり、
n=1〜20である]
を含む、塗料組成物に関する。(請求項4)
【0025】
好ましい条件
好ましくは、式Iにおいてzは1である。
【0026】
好ましくは、コポリマーb)は、n=1である式(I)の直鎖状ポリマーまたは直鎖状コポリマーである。(請求項5)
【0027】
開始剤IN−E
国際公開第2005059048号に開示されている開始剤
【化2】

はすべて好適である。
【0028】
E−Inは、好ましくは式A、BまたはO
【化3】

[式中、
Rは、水素、C1〜C18アルキル(1つ以上の酸素原子が介在しているかまたは介在していない)、シアノエチル、ベンゾイル、グリシジル、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の一価基、7〜15個の炭素原子を有する脂環式カルボン酸の一価基、3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸の一価基または7〜15個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸の一価基であり;
101は、C1〜C12アルキル、C5〜C7シクロアルキル、C7〜C8アラルキル、C2〜C18アルカノイル、C3〜C5アルケノイルまたはベンゾイルであり;
102は、C1〜C18アルキル、C5〜C7シクロアルキル、C2〜C8アルケニル(シアノ基、カルボニル基またはカルバミド基で置換されているかまたは置換されていない)、あるいはグリシジル、式−CH2CH(OH)−Zの基または式−CO−Zまたは−CONH−Zの基[式中、Zは水素、メチルまたはフェニルである]であり;
6は水素であり、
5は水素またはC1〜C4アルキルであり、
1およびG3はメチルであり、
2およびG4はエチルまたはプロピルであるか、またはG1およびG2がメチルであり、G3およびG4がエチルまたはプロピルであり;さらに
Xは、−CH2−フェニル、CH3CH−フェニル、(CH32C−フェニル、(C5〜C6シクロアルキル)2CCN、(CH32CCN、
【化4】

−CH2CH=CH2、CH3CH−CH=CH2(C1〜C4アルキル)CR20−C(O)−フェニル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−(C1〜C4)アルコキシ、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−N−ジ(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−NH(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−NH2[式中、R20は水素または(C1〜C4)アルキルである]よりなる群から選択される]のものである。(請求項7)
【0029】
上記の化合物およびその製造については、英国特許第2335190号および英国特許第2361235号に記載されている。
【0030】
好ましい開始剤は次のものである:
【化5】

【0031】
特に好ましい開始剤は
【化6】

【0032】
この場合、式(I)中の開始フラグメント(In)は
【化7】

であり、基(E)は
【化8】

である。
【0033】
開始剤IN−Eは、ニトロキシル基Eおよび開始剤フラグメントInを含み、ニトロキシル媒介制御重合である重合反応から得られる。
【0034】
基本的に2つ:
b1)構造要素
【化9】

を有するアルコキシアミン開始剤/調整剤化合物の存在下での重合、および
b2)構造要素
【化10】

を有する安定なニトロキシルフリーラジカルおよびラジカル開始剤(フリーラジカル発生源)の存在下での重合の好適な経路がある。請求項8
【0035】
構造要素
【化11】

は、例えば、
【化12】

である。
【0036】
開始剤IN−Eは、原子移動ラジカル重合(ATRP)からも得られる。
【0037】
したがって、本発明の更なる態様は、
a)膜形成バインダー樹脂、および
b)制御ATRP重合によって生成される、次の構造:
X−[(M1x−M2y)−(Y)znを有するコポリマー、
c)場合により他の従来の塗料成分及び/または添加剤
[式中、
M1は、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリルアミドの群からの不飽和モノマーから選択され(ここで、コポリマーは、少なくとも30質量%を超える(メタ)アクリレートを含む)、
xは、構造要素(M1x)内のモノマーM1の総数を表し、x>5であり、好ましくは10〜1000、最も好ましくは10〜500であり、
M2は、C1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択され、
yは、構造要素(M2y)内のモノマーM2の総数を表し、y>1であり、好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜10であり、
Xは、ATRP重合反応を開始させる開始剤フラグメントであり、
Yは、Cl、Br、あるいはClまたはBrの求核置換によって導入される基であり、
z=≧1であり、
n=1〜20である]
を含む、塗料組成物である。(請求項9)
【0038】
原子移動ラジカル重合(ATRP)は、例えば、国際公開第96/30421号に記載されている。国際公開第96/30421号は、ATRP法を用いた、スチレンまたは(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和モノマーの制御重合方法または「リビング」重合方法を開示している。この方法に従って、種々の酸化状態の遷移金属(例えば、Cu(I)およびCu(II))の酸化還元系の存在下で、ラジカル原子(・Clなど)を生成する開始剤を使用して、「リビング」ラジカル重合または制御ラジカル重合を行わせる。
【0039】
好適な開始化合物は、式(XI):
【化13】

(ラジカル移動性の原子または基・Halを有する)の化合物であるが、それは、国際公開第96/30421号および国際公開第98/01480号に記載されている。好ましいラジカル移動性原子または基・Halは、・Clまたは・Brであり、これはラジカルとして開始剤分子から切り離される。
【0040】
Xは、重合開始剤のフラグメントを表し、好ましくはC,〜C8ハロゲン化アルキル、C6〜C15ハロゲン化アラルキル、C2〜C8ハロアルキルエステル、ハロゲン化アレーンスルホニル、α−ハロアルカンニトリルおよびハロラクトンよりなる群から選択される。
【0041】
より好ましい開始剤としては、1−フェニルエチルクロリド、1−フェニルエチルブロミド、2−クロロプロピオン酸メチル、2−クロロプロピオン酸エチル、2−ブロモプロピオン酸メチル、2−ブロモイソ酪酸エチル、α,α’−ジクロロキシレン、α,α’−ジブロモキシレンおよびヘキサキス(α−ブロモメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0042】
ATRPポリマーは、国際公開第9630421号に従い、上述の開始剤の存在下で、かつ遷移金属化合物(例えばCuCl)および配位子(例えば、ビピリジン)の存在下で、M1とM2を重合させてコポリマーを形成するステップを含む方法によって、製造する。
【0043】
モデル触媒としてのCuClおよびビピリジン
膜形成バインダーa)は、溶剤系樹脂、水性樹脂、エマルジョンポリマー、溶液ポリマーから選択する。樹脂は、あらゆる種類の架橋メカニズム、ならびに1成分(1p)系さらに2p系および多成分系の塗膜系(例えば、熱硬化性樹脂、室温硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂)を包含する。熱可塑性アクリル樹脂のような物理乾燥塗膜系も含まれる。
【0044】
樹脂は、塗料に用いられる最新技術の高分子化学製品、例えば、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、ポリアクリレート、スチレン−アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ニトロセルロース樹脂、混合系(ポリエステル/ポリウレタン、ポリアクリレート/ポリウレタン、アルキド/メラミン、ポリエステル/CAB/メラミン、ポリアクリレート/CAB/メラミンなど)を含む。
【0045】
最も好ましい樹脂a)は、粉体塗料樹脂、すなわち、室温で固体であり、液体担体を含まない樹脂系、例えば、熱硬化性粉体塗料または放射線硬化性粉体塗料(ポリエステル/PRIMID、ポリエステル/TGIC、酸性架橋剤成分を有するエポキシ官能性ポリアクリレートなど)などを含む。
【0046】
平滑化剤ポリマーb)
好ましくは、平滑化剤ポリマーb)は、保存安定性のある非発塵性の粉末またはペレットを得るために、固体担体、すなわちシリカ粉末、高分子ワックスまたは自社製の固体平滑化剤と一緒に用いる。
【0047】
好ましい平滑化剤ポリマーb)は、分子量がMn=1,000〜100,000、より好ましくは3,000〜50,000の直鎖状ポリマー(すなわち、n=1)である。
【0048】
好ましい平滑化剤ポリマーb)は、フッ素化短鎖(C1〜C4)を有するモノマー(M2)を、0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%含む。
【0049】
平滑化剤ポリマーb)の量は、全バインダーa)に対して0.1〜15%、より好ましくは0.1〜10%、最も好ましくは0.1〜3%である。
【0050】
使用するモノマーであるアクリル酸t−ブチル(t−BA)、アクリル酸n−ブチル(n−BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA)、メタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(PFPMA)およびメタクリル酸2,2,3,4,4,4ヘキサフルオロブチル(HFBMA)は、市販のモノマーである。
【0051】
使用する溶媒の酢酸エチルへキシルも市販の化合物である。
【0052】
平滑化剤b)は、あらゆる種類の塗膜系で使用できる。
【0053】
粉体塗料、ハイソリッド塗料、放射線硬化性塗料または水性塗料が好ましい。
【0054】
従来の塗料成分及び/または添加剤には、顔料;架橋剤;市販の平滑化剤;光開始剤;光増感剤;脱気剤;蛍光増白剤;ベンゾイン;流れ調整剤;粘着防止剤;紫外線吸収剤;静電防止剤;酸化防止剤;耐引掻性改良剤などがある。
【0055】
本発明はさらに、請求項1に記載の塗料組成物の平滑化を改善するための方法であって、塗料組成物を基材に塗布し、均一な固体塗膜を得るためにそれを熱エネルギーまたは電磁放射線にさらすことを含む方法に関する。
【0056】
したがって、本発明はまた、着色および無着色の塗料組成物での平滑化剤としての請求項1に記載の式(I)のコポリマーの使用に関する。
【0057】
本発明を実施例によりさらに説明する。
【0058】
例1
アクリル酸n−ブチル(nBA)とメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA)との直鎖状ブロックコポリマーの合成−MOE3044.1
【化14】

【0059】
上部に撹拌機、温度計、冷却器および隔壁を備えた350mLの五つ口円筒型丸底フラスコ中で、250.0gのアクリル酸n−ブチル(nBA、128.17g/mol)および4.035gのCGPS 345(317.48g/mol)を混合し、N2/真空で3回脱気し、N2下において125℃で6時間重合させた。残存モノマーを105℃および20mbarで留去した。
【0060】
収率:48.9%; GPC(THF、PS−標準、Mn=7,650g/mol; PD=1.313)、粘稠液。
【0061】
【化15】

【0062】
100mLのスチール製オートクレーブ中で、40gのポリnBA(WS 050072; Mn 7,650g/mol)と6.81gのメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA;168.11g/mol)とを混合し、アルゴン/真空で5回脱気し、145℃で4時間重合させた。この間、オートクレーブ中の圧力は2バールを超えなかった。残存モノマーを105℃および20mbarで留去した。
【0063】
収率:45%; GPC(THF、PS−標準、Mn=8,170g/mol; PD=1.312)、粘稠液。
【0064】
例2
アクリル酸n−ブチル(nBA)とメタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(PFPMA)との直鎖状ブロックコポリマーの合成−MOE 3040.2
【化16】

【0065】
ポリnBAを例1に従って製造した。
【0066】
上部に撹拌機、温度計および冷却器を備えた250mLの三つ口丸底フラスコ中で、60gのポリnBA(WS 050072; Mn 7,650g/mol)、13.31gのメタクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(PFPMA;218.12g/mol)および30gの酢酸エチルヘキシルを混合し、N2/真空で3回脱気し、N2雰囲気下において135℃で5時間重合させた。残存モノマーおよび溶媒を120℃および10mbarで留去した。
【0067】
収率:41%; GPC(THF、PS−標準、Mn=8,720g/mol; PD=1.292)、粘稠液。
【0068】
例3
アクリル酸n−ブチル(nBA)とメタクリル酸2,2,3,4,4,4ヘキサフルオロブチル(HFBMA)との直鎖状ブロックコポリマーの合成−MOE 3041.2
【化17】

【0069】
ポリnBAを例1に従って製造した。
【0070】
上部に撹拌機、温度計および冷却器を備えた250mLの三つ口丸底フラスコ中で、60gのポリnBA(WS 050072; Mn 7,650g/mol)、15.26gのメタクリル酸2,2,3,4,4,4ヘキサフルオロブチル(HFBMA;250.14g/mol)および30gの酢酸エチルヘキシルを混合し、N2/真空で3回脱気し、N2雰囲気下において135℃で5時間重合させた。残存モノマーおよび溶媒を120℃および10mbarで留去した。
【0071】
収率:42%; GPC(THF、PS−標準、Mn=10,360g/mol; PD=1.38)、粘稠液。
【0072】
例4
アクリル酸tert−ブチル(tBA)とメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA)との直鎖状ブロックコポリマーの合成−MOE 3039.1
【化18】

【0073】
上部に撹拌機、温度計、冷却器および隔壁を備えた500mLの五つ口円筒型丸底フラスコ中で、300.0gのアクリル酸tert−ブチル(tBA、128.17g/mol)および7.716gのCGPS 345(317.48g/mol)を混合し、N2/真空で3回脱気し、N2下において115℃で12時間重合させた。残存モノマーを105℃および20mbarで留去した。
【0074】
収率:61%; GPC(THF、PS−標準、Mn=7,150g/mol; PD=1.32)、固体。
【0075】
【化19】

【0076】
上部に撹拌機、温度計および冷却器を備えた250mLの三つ口丸底フラスコ中で、60gのポリtBA(MOE 3004.58; Mn 7,150g/mol)、15.74gのメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA;168.11g/mol)および30gの酢酸エチルヘキシルを混合し、N2/真空で3回脱気し、N2雰囲気下において125℃で5時間重合させた。残存モノマーおよび溶媒を120℃および10mbarで留去した。
【0077】
収率:38%; GPC(THF、PS−標準、Mn=7,470g/mol; PD=1.33)、固体。
【0078】
例5
アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)とメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA)との直鎖状ブロックコポリマーの合成−MOE 3049.4
【化20】

【0079】
上部に撹拌機、温度計、冷却器および隔壁を備えた350mLの五つ口円筒型丸底フラスコ中で、250.0gのアクリル酸2−エチルヘキシル(EHA、184.28g/mol)および4.035gのCGPS 345(317.48g/mol)を混合し、N2/真空で3回脱気し、N2下において125℃で6時間重合させた。残存モノマーを105℃および20mbarで留去した。
【0080】
収率:48.9%; GPC(THF、PS−標準、Mn=10,200g/mol; PD=1.29)、粘稠液。
【0081】
【化21】

【0082】
100mLのスチール製オートクレーブ中で、30gのポリEHA(WS 07001; Mn 10,200g/mol)と1.76gのメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA;168.11g/mol)とを混合し、アルゴン/真空で5回脱気し、145℃で4時間重合させた。この間、オートクレーブ中の圧力は1.5バールを超えなかった。残存モノマーを105℃および20mbarで留去した。
【0083】
収率:43%; GPC(THF、PS−標準、Mn=10,400g/mol; PD=1.32)、粘稠液。
【0084】
例6
アクリル酸n−ブチル(nBA)とメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA)との直鎖状コポリマーの合成−MOE 3048.8
【化22】

【0085】
上部に撹拌機、温度計、冷却器および隔壁を備えた750mLの五つ口円筒型丸底フラスコ中で、380.0gのアクリル酸n−ブチル(nBA、128.17g/mol)と31.81gのメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA;168.11g/mol)と6.95gのCGPS 345(317.48g/mol)を混合し、N2/真空で3回脱気し、N2下において135℃で8時間重合させた。残存モノマーを120℃および10mbarで留去した。
【0086】
収率:43%; GPC(THF、PS−標準、Mn=8,290g/mol; PD=1.246)、粘稠液。
【0087】
例7
アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)とメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA)との直鎖状コポリマーの合成−MOE 3049.13
【化23】

【0088】
上部に撹拌機、温度計、冷却器および隔壁を備えた750mLの五つ口円筒型丸底フラスコ中で、380.0gのアクリル酸2−エチルヘキシル(EHA、184.28g/mol)と22.13gのメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(TFEMA;168.11g/mol)と4.84gのCGPS 345(317.48g/mol)とを混合し、N2/真空で3回脱気し、N2下において135℃で7時間重合させた。残存モノマーを120℃および10mbarで留去した。
【0089】
収率:49%; GPC(THF、PS−標準、Mn=9,550g/mol; PD=1.451)、粘稠液。
【0090】
例8
従来のラジカル重合で生成する、アクリル酸とアクリル酸n−ブチル(nBA)とメタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルとの直鎖状ブロックコポリマーの合成
【化24】

【0091】
中間体A
窒素雰囲気下で、マレイン酸無水物(10.40g)、Zonyl BA−L(40.60g)、酢酸ブチル(5.00g)およびTinstab BL−277(触媒として)を反応器に入れ、90℃まで加熱した。3時間後にイソプロパノール(44.00g)を加えた。
【0092】
参考物質EFKA3666
【化25】

【0093】
MPEG 350(15.39g)および中間体A(22.04g)を窒素雰囲気下で反応器に入れて、120℃まで加熱した。アクリル酸n−ブチル(17.15g)、アクリル酸(6.44g)およびペルオキシ安息香酸tert−ブチル(2.81g)からなるプレミックスを、180分にわたって計量しながら入れた。添加後に、混合物を120℃で1時間攪拌した。MPEG 350(0.60g)とペルオキシ安息香酸tert−ブチル(0.20g)を添加し、混合物を120℃で2時間攪拌した。イソプロパノールを真空下で留去した。混合物を60℃まで冷却し、KOH水溶液(15%、35.53g)および水(8.66g)を加えた。
【0094】
例9
MPEG 350(17.63g)を窒素雰囲気下で反応器に入れ、120℃まで加熱した。メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル(9.93g)、アクリル酸n−ブチル(13.72g)、アクリル酸(6.09g)およびペルオキシ安息香酸tert−ブチル(2.25g)からなるプレミックスを、100分間にわたって計量しながら入れた。添加後に、混合物を120℃で1時間攪拌した。MPEG 350(0.60g)とペルオキシ安息香酸tert−ブチル(0.20g)を添加し、混合物を120℃で2時間攪拌した。混合物を60℃まで冷却し、KOH水溶液(15%、31.53g)および水(6.93g)を加えた。
【0095】
NOX媒介制御重合によって生成されたポリマーの塗布例
塗布例1
カルボキシル官能性ポリエステルおよび硬化剤であるヒドロキシアルキルアミドを主成分とする、白色に着色した粉体塗料の平滑化性能
粉体塗料を調製し、それらのパラメーターを以下に記載するようにして求めた。配合物を第1表に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
遊星撹拌機を用いて成分を混合する。その後、混合物をプリズム押出機(Prism extruder)によって110℃において300回転/分で押し出し、圧延して送り出した。粉体塗料組成物は卓上カッターを用いて粗く粉砕してから、0.75mmの環状穿孔スクリーンを有するRetsch ZM−1超遠心粉砕器を用いて15,000回転/分で粉砕する。最後に、平均粒径が30〜50μmである粉末を遠心篩分け機の125μmのふるいに通す。
【0098】
完成した粉体塗料組成物を、ESB−Wagnerコロナカップガンを用いて60kVでアルミニウムパネルに静電スプレーして、塗膜の厚さを70〜80μmにする。電気オーブン中で、被覆されたパネルを180℃で10分間硬化させた。
【0099】
以下のパラメーターを求める:
1)黄色度:b*ISO 7724(ASTM D 2244)。b*の値が大きいことは、黄変が激しいことを表す。
2)製造業者が提案した操作方法に従ってBYK Gardnerヘーズ−光沢で測定した光沢(20°)。大きな光沢値は、塗膜の反射率が大きいことを示す。
3)製造業者の提案した操作方法に従ったBYK Gardner波形スキャンDOIによるDOI(BYK)。DOI値がゼロである場合、完全拡散であり、DOI値が100である場合、非常に平滑な面を示す完全な鏡像を意味する。
4)製造業者の提案した操作方法に従ったBYK Gardner波形スキャンDOIによる長波。長波値の大きさが小さくなると、塗膜の外観が滑らかになることを表す。
【0100】
【表2】

【0101】
第2表は、例6および7による流動剤では、フルオロ基を持たない市販の平滑化剤と比べて、黄変が少なく面が滑らかになることを示している。
【0102】
パーフルオロ基を有する平滑化剤は、市販の平滑化剤としていっそう適さない。以下は第2a表を示す。
【0103】
【表3】

【0104】
パーフルオロ剤X
【化26】

【0105】
塗布例2
焼付エナメルでの滑り性能試験
【表4】

【0106】
滑り試験は、例1、6および7およびEFKA3666(参考物質)に基づく3種類の異なる添加剤を加えた上記の焼付エナメル配合物のドローダウンで実施した。
【0107】
【化27】

【0108】
焼付エナメルをガラス板上に60μmアプリケーターで引き延ばした。室温での20分間のフラッシュオフタイム後に塗膜を135℃で30分間硬化させた。測定を実施する前に、塗膜を室温で24時間安定化させた。滑りの測定は、Ray Ranマイクロプロセッサー・システムで実施した。この機械では、塗膜の端から端まで200グラム重を引っ張り、静摩擦係数および動摩擦係数(N単位)を求める。
【0109】
【表5】

【0110】
結果は、新規のポリマーの性能が一般的に、参考物質よりも優れていたことを示している。
【0111】
塗布例3
アクリル系でのクレーター防止試験
【表6】

【0112】
クレーター防止試験は、添加剤の平滑化性能の指標となるものである。この試験では、上記の2成分アクリル系を使用した。クレーターがいっそうよく見えるようにするために、数滴のRMPC(Laropal A81/EFKA−4330/Heliogen blue L 7072D)を加えた。50グラムの物質を生成し、すぐに5×10グラムに分けた。この混合物を生成後すぐに、0.25%、0.50%および1.00%の添加剤(作用物質を基準にして計算)をそれぞれ10グラムに加えた。
【0113】
試料を75μmのワイヤーバーでPETに引き延ばし、室温で数時間乾燥させてから、塗膜を判定した。
【0114】
結果
【表7】

【0115】
試験した物質は、参考物質と比べて低い濃度で性能が優れていた。例1および7は、性能が最も優れている物質であった。
【0116】
塗布例4
2Kエポキシ系でのクレーター防止試験
【表8】

【0117】
この試験では、上記の2成分エポキシ系を使用した。クレーターがいっそうよく見えるようにするために、数滴のRFPC(EFKA−4550/Heliogen blue L 7072D)を加えた。50グラムの物質を生成し、すぐに5×10グラムに分けた。この混合物を生成後すぐに、0.25%、0.50%および1.00%の添加剤(作用物質を基準にして計算)をそれぞれ10グラムに加えた。
【0118】
試料を75μmのワイヤーバーでPETに引き延ばし、室温で数時間乾燥させてから、塗膜を判定した。
【0119】
【表9】

【0120】
試験した物質は、参考物質と比べて低い濃度で性能が優れている。例6は、性能が最も優れている物質であった。
【0121】
従来のラジカル重合で生成したポリマーの塗布例
塗布例5
水性アクリル系エマルジョンのクレーター防止試験
【表10】

−1と2を2000rpmで5分間混合する
−5分間待ち、泡を減少させる。
−配合の3と4を2000rpmで15分間混合する。
【0122】
結果
【表11】

【0123】
塗布
ドローダウン:75μm、ポリエステル膜
クレーター試験の結果
【表12】

【0124】
塗布試験の結果によれば、メタクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルがモノマーである場合、テロメアアルコールがモノマーである場合と比べて、(添加剤としての)滑り剤および平滑化剤として結果が同じになることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)膜形成バインダー樹脂、および
b)制御重合またはラジカル重合によって生成されるコポリマーであって、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリルアミドの群からの不飽和モノマーから選択されるモノマー(M1x)(ここで、コポリマーは少なくとも30質量%を超える(メタ)アクリレートを含む)と、
1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択されるモノマー(M2y)とを含むコポリマー
[式中、
xは、構造要素(M1x)内のモノマーM1の総数を表し、x>5であり、
yは、構造要素(M2y)内のモノマーM2の総数を表し、y>1である]
を含む、塗料組成物。
【請求項2】
前記コポリマーb)が、無機および有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩またはアゾ化合物から選択されるフリーラジカル開始剤の存在下でM1をM2と反応させることにより、ラジカル重合によって得られる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記コポリマーb)が制御重合によって得られる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
a)膜形成バインダー樹脂、および
b)ニトロオキシド媒介制御重合によって生成され、次の構造:
In−[(M1x−M2y)−(E)zn
[式中、
M1は、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリルアミドの群からの不飽和モノマーから選択され(ここで、前記コポリマーは、少なくとも30質量%を超える(メタ)アクリレートを含む)、
xは、前記構造要素(M1x)内のモノマーM1の総数を表し、x>5であり、
M2は、C1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択され、
yは、前記構造要素(M2y)内のモノマーM2の総数を表し、y>1であり、
Inは、ラジカル重合を開始させることができる開始剤フラグメントであり、
Eは、酸素原子を介してポリマーまたはコポリマーに結合する少なくとも1個の安定なニトロキシルフリーラジカルを有する基、または結合した安定なニトロキシルフリーラジカルの置換反応または脱離反応によって生じる基であり、
z=≧1であり、
n=1〜20である]を有するコポリマー
を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記コポリマーb)が、式(I)[式中、nは1である]の直鎖状コポリマーである、請求項4に記載の塗料組成物。
【請求項6】
M2が、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルから選択され、好ましくは(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチルである、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記開始剤IN−Eが、次式A、BまたはO:
【化1】

[式中、
Rは、水素、C1〜C18アルキル(1つ以上の酸素原子が介在しているかまたは介在していない)、シアノエチル、ベンゾイル、グリシジル、2〜18個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸の一価基、7〜15個の炭素原子を有する脂環式カルボン酸の一価基、3〜5個の炭素原子を有するα,β−不飽和カルボン酸の一価基または7〜15個の炭素原子を有する芳香族カルボン酸の一価基であり;
101は、C1〜C12アルキル、C5〜C7シクロアルキル、C7〜C8アラルキル、C1〜C18アルカノイル、C3〜C5アルケノイルまたはベンゾイルであり;
102は、C1〜C18アルキル、C5〜C7シクロアルキル、C2〜C8アルケニル(シアノ基、カルボニル基またはカルバミド基で置換されているかまたは置換されていない)、あるいはグリシジル、式−CH2CH(OH)−Zの基または式−CO−Zまたは−CONH−Zの基[式中、Zは水素、メチルまたはフェニルである]であり;
6は水素であり、
5は水素またはC1〜C4アルキルであり、
1およびG3はメチルであり、
2およびG4はエチルまたはプロピルであるか、またはG1およびG2がメチルであり、G3およびG4がエチルまたはプロピルであり;さらに
Xは、−CH2−フェニル、CH3CH−フェニル、(CH32C−フェニル、(C5〜C6シクロアルキル)2CCN、(CH32CCN、
【化2】

−CH2CH=CH2、CH3CH−CH=CH2(C1〜C4アルキル)CR20−C(O)−フェニル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−(C1〜C4)アルコキシ、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−N−ジ(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−NH(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルキル−CR20−C(O)−NH2、[式中、R20は、水素または(C1〜C4)アルキルである]よりなる群から選択される]
の化合物である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項8】
式(I)のコポリマーが、
b1)構造要素
【化3】

[式中、Xは請求項7に記載された通りである]を有するアルコキシアミン開始剤/調整剤の存在下での重合か、または
b2)構造要素
【化4】

を有する安定なニトロキシルフリーラジカルおよびラジカル開始剤の存在下での重合によって得られる、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項9】
a)膜形成バインダー樹脂、および
b)制御ATRP重合によって生成され、次の構造:
X−[(M1x−M2y)−(Y)zn
[式中、
M1は、(メタ)アクリレート、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリルアミドの群からの不飽和モノマーから選択され(ここで、前記コポリマーは、少なくとも30質量%を超える(メタ)アクリレートを含む)、
xは、構造要素(M1x)内のモノマーM1の総数を表し、x>5であり、
M2は、C1〜C4−フルオロアルキル(メタ)アクリレートから選択され、
yは、構造要素(M2y)内のモノマーM2の総数を表し、y>1であり、
Xは、ATRP重合反応を開始させる開始剤フラグメントであり、
Yは、Cl、BrあるいはClまたはBrの求核置換によって導入される基であり、
z=≧1であり、
n=1〜20である]を有するコポリマー
を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項10】
着色および無着色の塗料組成物での平滑化剤としての請求項1に記載の式(I)のコポリマーの使用。

【公表番号】特表2011−514920(P2011−514920A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547141(P2010−547141)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051180
【国際公開番号】WO2009/103613
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】