フルチカゾンの眼科処方物および使用方法
本発明は、点眼された場合に快適な処方物を提供し、ならびにアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性結膜炎の処置で有効であるフルチカゾンの眼科処方物を提供する。本発明は、さらに、アレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性結膜炎の処置方法であって、本発明のフルチカゾン処方物の眼への直接的な局所適用による、かかる処置を必要とする被験体におけるアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性結膜炎の処置方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2009年6月5日に出願された米国仮特許出願第61/184,484号の利益を主張し、この出願の内容はその全体が本明細書において参照として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、フルチカゾンを単独か1つまたは複数のさらなる活性薬剤と組み合わせて含む組成物、ならびにアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の処置のためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アレルギー性結膜炎(急性アレルギー症状(すなわち、季節性アレルギー)および遅発型炎症反応(すなわち、慢性、難治性、または持続性のアレルギー)の両方を呈する障害)およびアレルギー性鼻結膜炎を有効に処置するための局所用眼科医薬品が必要である。米国の成人アレルギー患者の46%(約7000万人)がアレルギー性結膜炎の急性および遅発型の容態の両方を罹患するのに対して、急性または遅発型のアレルギーのそれぞれのみを罹患するのはたった19%であると見積もられている。アレルギー患者の90%までがアレルギー性鼻結膜炎(眼および鼻の症状の組み合わせ)を生じ得ると見積もられる。アレルギー患者(20歳と40歳との間)の平均年齢は、労働人口の平均年齢および個体の生涯で最も生産性の高い期間と一致する。
【0004】
季節性および通年性アレルギー性結膜炎(眼アレルギー)の両方は、眼の痒み、充血眼、腫脹、およびなみだ眼によって特徴づけられる。アレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)は、鼻水、くしゃみ、鬱血、および類似の症状として現れる。医師はアレルギー性結膜炎とアレルギー性鼻結膜炎とを区別することが困難であり得る。何故なら、両アレルギー反応は同時に生じ得るか、同型の刺激によって誘発され得るからである。急性アレルギー症状とアレルギー性結膜炎の遅発型症状とを区別することがさらに困難である。何故なら、これらの各容態は任意の所与の個体において同時に持続し得るか、前後で変化し得るからである。アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の兆候および症状は、患者の生活の質(社会的相互作用、仕事および学校での生産性から看視作業(コンピュータでの作業または読書など)を行う能力に至るまで)に有意に影響を及ぼし得る。
【0005】
アレルギー性結膜炎の急性症状は、眼の痒み、発赤、および腫脹の臨床徴候および症状によって特徴づけられる。アレルギー性結膜炎の遅発型またはアレルギー性の炎症反応には発赤、眼瞼の腫脹、および流涙が含まれ、症例によっては、痒みおよび鼻内の顕著な鬱血が含まれる。急性アレルギー症状は、主に、アレルゲン(花粉、粉塵、鱗屑)によって刺激された場合にアレルギー性結膜炎の兆候および症状(痒み、発赤、腫脹、および流涙)を生じる多数の物質を放出する肥満細胞の活性化に原因する。ヒスタミンは放出される主なメディエーターであり、神経終末および血管上の受容体を刺激して痒みおよび発赤を生じる。2つのヒスタミン受容体が眼表面上で同定されている。神経終末上のH1受容体は痒みを生じ、血管上のH1およびH2受容体は、血管を拡張し、発赤を生じ、流動物を血管から周囲の組織に漏出させて腫脹を生じる。遅発型炎症反応は、炎症細胞の活性化によって媒介される。
【0006】
アレルギー性結膜炎と同様に、アレルギー性鼻結膜炎は、アレルゲン誘導性の肥満細胞媒介性応答である。反応は、大気中アレルゲンが眼および/または鼻内の肥満細胞表面に付着した抗体に結合した場合に誘発される。肥満細胞は、次いで、化学メディエーターを放出し、これは、アレルゲンに曝露された感作個体における即時型反応の主な原因となる。これらのメディエーターのうちのいくつか(ヒスタミンなど)は、血管および神経に直接影響を及ぼし、アレルギー疾患の兆候および症状を生じる。放出された他のメディエーターによって白血球が部位に流入し、それにより、重症例では症状、特に、鼻内の鬱血が持続する。
【0007】
アレルギー性結膜炎および鼻結膜炎はまた、他の外眼部の容態および疾患(眼乾燥症など)または汚染物質または他の原因による刺激と共存し得る。これにより、アレルゲンから眼表面を保護する働きをする涙液層を易感染性にする。
【0008】
現在利用可能な眼アレルギー処置には、眼表面からアレルゲンを洗い流し、且つ眼のバリア(例えば、人工涙液)として作用することができる液滴、ヒスタミンのヒスタミン受容体への結合を遮断する薬物(例えば、抗ヒスタミン薬)、ヒスタミンおよび他の物質の肥満細胞からの放出を遮断する薬物(例えば、肥満細胞安定剤)、複数の作用様式を有する薬物(例えば、抗ヒスタミン/肥満細胞安定剤)、および血管の能動的収縮によって発赤および腫脹を軽減することができる薬物(例えば、血管収縮薬)が含まれる。患者のための薬剤の妥当性の評価において考慮することができる基準には、作用開始時の有効性、作用の持続時間、眼アレルギーの各兆候および症状をいかに良く制御するか、および点眼した場合の液滴の快適さが含まれる。眼科用製品の快適さは、活性な薬剤成分自体ならびに製品を構成する処方物およびビヒクルの性質に依存する。例えば、経口抗ヒスタミン薬は、涙液産生の減少を誘導して眼表面を乾燥させ、眼が眼科用製品による刺激に影響されやすくなることが示されている。
【0009】
抗ヒスタミンまたは肥満細胞安定剤を含む現在利用可能な処置は、典型的には、急性アレルギー性結膜炎のみを低減し、遅発型炎症反応(すなわち、慢性、難治性、または持続性のアレルギー)の兆候および症状に取り組んでいない。
【0010】
現在利用可能なアレルギー性鼻結膜炎の処置には、点眼剤、鼻内噴霧、および経口剤の全身投与が含まれる。現在認可されている抗アレルギー点眼剤は眼アレルギーの治療に適応され、鼻内噴霧は鼻アレルギーを標的とする。薬剤の全身投与は、鼻および眼の症状の両方の治療に適用されるが、眼科標準に対して実施したいくつかの十分に管理された臨床試験では、抗ヒスタミン薬の全身投与が眼の兆候および症状の処置において点眼剤より劣っており(非特許文献1)、実際には眼アレルギーに対して臨床的に有効ではないことが示されており、客観的尺度によって眼上の涙液産生を50%減少させ、それによって眼球の乾燥が生じることが実際に示されている(非特許文献2)。さらなる研究は、点眼剤と鼻用ステロイドとの組み合わせが眼および鼻のアレルギーの兆候および症状の処置における薬剤の全身投与よりも有効であることが示されている(非特許文献3)。
【0011】
プロピオン酸フルチカゾン(S−(フルオロメチル)6α,9−ジフルオロ(difluro)−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル(methy)−1−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオアート,17−プロピオナート)は、特許文献1(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の抗炎症性コルチコステロイドである。大用量のコルチコステロイド(プロピオン酸フルチカゾンなど)の急性および慢性使用によって重篤な副作用を引き起こし得ることが当該分野で公知である。かかる兆候および症状は一般に用量依存性であり、筋骨格への影響(骨粗鬆症、筋障害、骨の無菌性壊死が含まれる)、眼への影響(後嚢下白内障、眼圧上昇、および感染リスクの増加が含まれる)、胃腸管への影響(潰瘍、膵炎、嘔気、嘔吐が含まれる)、心血管への影響(高血圧症、アテローム性動脈硬化症)、中枢神経系への影響(偽脳腫瘍、精神医学的反応)、皮膚科学的影響(男性型多毛、皮下脂肪の再分布、創傷治癒の障害、皮膚の菲薄化)、および視床下部−下垂体−副腎軸の抑制が含まれ得る。さらに、大用量のプロピオン酸フルチカゾンの慢性使用によって副腎皮質機能亢進を発症し得ることが当該分野で公知である。
【0012】
したがって、アレルギー性結膜炎(すなわち、急性期、後期の炎症またはその両方)およびアレルギー性鼻結膜炎の処置のための眼投与のための有効且つ安定で、さらに快適且つ安全なフルチカゾン処方物を開発することが必要である。眼への直接投与のためのかかる処方物は、直接的な局所効果、より迅速な作用、および全身投与に関連する全身性の副作用の回避の故に全身性の経口処方物および鼻内噴霧よりも有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,676,929号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Spanglerら,Clin.Ther.25(8),2245−2267(2003)
【非特許文献2】Ouslerら,Ann Allergy Asthma Immunol.Nov;93(5):460−4(2004)
【非特許文献3】Lanierら Clin.Ther.24(7),1161−1174(2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、アレルギー性結膜炎および鼻結膜炎の急性および遅発型の両兆候の処置のための快適な局所用眼科処方物を提供する。この処方物は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の兆候および症状(特に、眼の痒み)および/または鼻の症状(例えば、痒み、鼻汁、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血)を低減するためにフルチカゾンを単独か1つまたは複数のさらなる活性薬剤と組み合わせて含む(すなわち、フルチカゾンのみの処方物またはフルチカゾン組み合わせ処方物)。驚いたことに、本発明のフルチカゾン処方物の1日1回の投与が、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の症状(特に、眼の痒み)および/または鼻の症状(例えば、痒み、鼻汁、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血)の鎮静に有効である。より驚いたことに、本発明のフルチカゾン処方物は、反復使用後に(例えば、本明細書中に記載の研究集団において14日後)、眼圧を上昇させない。そのようなものとして、本発明のフルチカゾン処方物は眼への使用に安全である。
【0016】
本発明の処方物を使用したフルチカゾンの眼投与は、薬物の鼻投与または全身投与に通常関連する負の全身副作用が低く、眼内の薬物の有効性が増加し得る。したがって、本発明は、点眼した場合に快適であり、且つ眼アレルギーの症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹など)および眼アレルギーに関連する鼻の症状(例えば、鼻づまり、鼻水)の鎮静に有効であるフルチカゾンの局所用眼科処方物を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書中に記載の処方物は、直接点眼する場合に快適な眼科処方物中に眼科的使用に適切なフルチカゾンを唯一の活性薬剤として含む安定な処方物を提供する。本発明のフルチカゾンのみの処方物(すなわち、唯一の活性薬剤としてのフルチカゾン)は、驚いたことに、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎を処置するために典型的に使用される従来の抗ヒスタミンおよび/または肥満細胞安定剤よりも眼アレルギーの兆候および症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹など)および眼アレルギー/鼻結膜炎に関連する鼻の症状の鎮静により有効である。抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は、肥満細胞由来のすべてのアレルギー性および炎症促進性メディエーターを有効に遮断しない。抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は痒みを有効にマスキングすることができる一方で、これらは発赤、流涙、腫脹、および炎症に対する効果は最小である。いかなる理論にも拘束されることを意図しないが、フルチカゾンは、炎症性メディエーターの転写および産生を有効に停止させて抗炎症性メディエーターの産生を下方制御することができ、それにより、急性および遅発型のアレルギー性結膜炎の両方((すなわち、凝集疾患)の兆候および症状を処置することができる。
【0018】
1つの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、唯一の有効成分として0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度のフルチカゾンの安定な眼科処方物を含む。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは0.005%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは0.01%(w/v)の濃度で処方物中に存在し、さらに別の実施形態では、フルチカゾンは0.001%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。
【0019】
本発明はまた、1つまたは複数の有効成分(抗ヒスタミン(antihistimine)(セチリジン、アンタゾリン、アステミゾール、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、デスロラチジン、デクスブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボカバスチン、レボセチリジン、ロラチジン、メキタジン、ミゾラスチン、ノルケトチフェン、オロパタジン、オキサトミド、フェニダミン、フェニラミン、ピリラミン、テルフェニジン、およびトリプロリジンなど)、血管収縮薬(ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、またはテトラヒドゾリンなど)、またはその任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)と組み合わせたフルチカゾンの眼科処方物を提供する。
【0020】
フルチカゾン組み合わせ処方物は、眼アレルギーの症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹など)、眼アレルギーに関連する鼻の症状、およびアレルギー性鼻結膜炎のさらなる鎮静で有効である。
【0021】
より具体的には、本発明のフルチカゾン組み合わせ処方物(例えば、制限されないが、フルチカゾンとセチリジンとの組み合わせ)は、単一の抗アレルギー性または他の活性薬剤のみの使用によって達成することができないアレルギー性結膜炎の急性および遅発型の両反応の包括的処置による利点を提供する。先に述べたように、抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は、肥満細胞由来のすべてのアレルギー性および炎症促進性のメディエーターを有効に遮断するわけではない。抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は痒みを有効にマスキングすることができるが、これらは発赤、流涙、腫脹、および炎症に対する効果は最小である。しかし、抗ヒスタミンまたは肥満細胞安定剤を炎症性メディエーターの転写および産生を有効に停止させて抗炎症性メディエーターの産生を下方制御することができる別の活性薬剤(ステロイド(例えば、フルチカゾン)など)と組み合わせた場合、急性および遅発型のアレルギー性結膜炎((すなわち、凝集疾患)の兆候および症状が処置される。同様に、かかるフルチカゾン組み合わせ処方物により、これらの同一の理由で、単一の抗アレルギー剤または他の活性薬剤のみの使用によって達成することができない鼻結膜炎についての包括的処置の利点が得られる。
【0022】
1つの実施形態では、本発明のフルチカゾン組み合わせ処方物は、0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度のフルチカゾンの安定な眼科処方物を含む。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で組み合わせ処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは0.005%(w/v)の濃度で組み合わせ処方物中に存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは0.01%(w/v)の濃度で組み合わせ処方物中に存在する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、代用涙液を含む。特定の実施形態では、代用涙液はヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.1%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。1つの好ましい実施形態では、HPMC濃度は、約0.1%〜約1.0%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(例えば、0.1〜0.2%、0.2〜0.3%、0.3〜0.4%、0.4〜0.5%、0.5〜0.6%、0.6〜0.7%、0.7〜0.8%、0.8〜0.9%、0.9〜1.0%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.30%、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0024】
別の特定の実施形態では、代用涙液はカルボキシメチルセルロース(CMC)である。いくつかの実施形態によれば、CMC濃度は約0.1%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、CMC濃度は約0.1%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。1つの好ましい実施形態では、CMC濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0025】
さらに別の特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、粘膜付着性の高分子ビヒクルを含む。本発明の方法または処方物での使用に適切な粘膜付着性ビヒクルの例には、1つまたは複数の高分子懸濁剤(デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、ゲルライト(登録商標)、セルロースポリマー、およびカルボキシ含有ポリマー系が含まれるが、これらに限定されない)を含む水性高分子懸濁液が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、高分子懸濁剤は、架橋カルボキシ含有ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含む。別の特定の実施形態では、高分子懸濁剤はポリエチレングリコール(PEG)を含む。本発明の局所用安定性眼科フルチカゾン処方物での使用に適切な架橋カルボキシ含有ポリマー系の例には、NoveonAA−1、Carbopol(登録商標)、および/またはDuraSite(登録商標)(InSite Vision)が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
任意選択的に、本発明の処方物は防腐剤を含む。特定の実施形態では、防腐剤は、塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(例えば、Polyquad(登録商標))もしくは安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))、または過ホウ酸ナトリウム、またはソルベートである。
【0027】
一定の実施形態では、本発明のフルチカゾンのみおよびフルチカゾンの組み合わせの処方物を、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)(Dibasic Sodium Phosphate, Anhydrous, USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%〜1.8%グリセリン(または前記範囲内の任意の特定の値)(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含むビヒクル中に処方する。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.005%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.8%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0029】
別の好ましい実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.01%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、本発明の眼科処方物は、約10〜約150センチポアズ(cpi)、好ましくは約15〜約120cpi、さらにより好ましくは約20〜約90cpi(または前記範囲内の任意の特定の値)の範囲の粘度を有する。好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物は、約15cpi〜約30cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約15cpi、約16cpi、約17cpi、約18cpi、約19cpi、約20cpi、約20cpi、約22cpi、約23cpi、約24cpi、約25cpi、約26cpi、約27cpi、約28cpi、約29cpi、約30cpi)の粘度を有する。別の好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物は、約70cpi〜約90cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約70cpi、約71cpi、約72cpi、約73cpi、約74cpi、約75cpi、約76cpi、約77cpi、約78cpi、約79cpi、約80cpi、約81cpi、約82cpi、約83cpi、約84cpi、約85cpi、約86cpi、約87cpi、約88cpi、約89cpi、または約90cpi)の粘度を有する。
【0031】
本発明はまた、アレルギー性結膜炎の処置方法であって、かかる処置を必要とする被験体において、かかる処置または防止を必要とする被験体の眼に本発明のフルチカゾン処方物(すなわち、単独または1つまたは複数の有効成分との組み合わせ)を直接投与することによる、方法を提供する。好ましくは、本発明の処方物を、1日1回(q.d.)投与する。一定の実施形態では、本発明の方法(すなわち、本発明の処方物の眼への直接投与)はまた、アレルギー性結膜炎に関連する鼻の症状の処置に有効である。本発明はまた、アレルギー性鼻結膜炎の症状の処置または防止方法であって、かかる処置または防止を必要とする被験体の眼に本発明のフルチカゾン処方物(すなわち、フルチカゾン単独またはさらなる活性薬剤(抗ヒスタミン(例えば、制限されないが、セチリジンまたはケトチフェン)または血管収縮薬(例えば、制限されないが、ナファゾリンまたはオキシメタゾリン)など)との組み合わせ)を直接投与することによる、方法を提供する。点眼薬形態の処置選択肢を提供することにより、本発明は、アレルギー性鼻結膜炎/鼻炎患者の生活の質を改善するであろう(例えば、Bergerら,Ann.Allergy Asthma Immunol.Oct 95(4),361−71(2005)を参照のこと)。
【0032】
本発明はまた、眼科的使用のために処方したフルチカゾンの薬学的組成物を含むキットおよびかかる使用のための説明書を提供する。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】図1Aおよび1Bは、アレルギー性結膜炎モデルにおける眼アレルギーの眼および鼻の症状の軽減においてビヒクルと比較した場合のフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性試験のための研究デザイン(スクリーニングおよび評価)を示す。
【図1B】図1Aおよび1Bは、アレルギー性結膜炎モデルにおける眼アレルギーの眼および鼻の症状の軽減においてビヒクルと比較した場合のフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性試験のための研究デザイン(スクリーニングおよび評価)を示す。
【図2】図2は、経時的に0(痒み無し)〜4(重篤な痒み)のスケールで評価した眼の痒みの軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図3】図3は、経時的に0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した結膜発赤の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図4】図4は、経時的に0(腫脹なし)〜3(重篤な腫脹)のスケールで評価した眼瞼腫脹の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図5】図5は、経時的に0(鬱血なし)〜4(重篤な鬱血)のスケールで評価した鼻閉の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図6】図6は、図1〜5に示す結果をまとめた棒グラフである。
【図7】図7は、経時的に0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した毛様体発赤の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図8】図8は、経時的に0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した上強膜発赤の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図9】図9は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した結膜浮腫の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図10】図10は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価したなみだ眼の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図11】図11は、図7〜10に示す結果をまとめた棒グラフである。
【図12】図12は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した鼻漏の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図13】図13は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した耳または口蓋の掻痒症の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図14】図14は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した鼻の掻痒症の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図15】図15は、経時的に0(鼻の症状なし)〜16(複数の鼻の症状)のスケールで評価した総鼻スコアにおいてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図16】図16は、図12〜15に示す結果をまとめた棒グラフである。
【図17】図17は、PNIFにおいてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図18】図18は、経時的に0(非常に快適)〜10(非常に不快)のスケールで評価したビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の液滴の快適さを比較した線グラフである。
【図19】図19は、経時的に0(非常に快適)〜10(非常に不快)のスケールで評価したビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の液滴の快適さを比較した線グラフである。
【図20】図20は、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の点眼に関連する有害事象の発生をまとめたチャートである。
【図21】図21は、ビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の眼圧に及ぼす影響をまとめた棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本発明は、その一部が、フルチカゾンのみの安定な局所用眼科処方物(すなわち、処方物中の唯一の活性薬剤としてのフルチカゾン)が眼に直接適用された場合に快適であり、且つアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の急性および遅発型の反応の両方を処置するのに有効であるという驚異的且つ予想不可能な(upredicatable)発見に基づく。なおさらに予想外の所見は、最も有効な用量が試験した最高濃度でなかったということであった。好ましくは、フルチカゾンは、プロピオン酸フルチカゾンまたはジプロピオン酸フルチカゾンの形態である。さらに、本発明の安定な局所用フルチカゾン処方物は反復使用後に眼圧を上昇させない。したがって、短期眼投与で安全である。
【0035】
本発明はまた、1つまたは複数のさらなる有効成分(抗ヒスタミン(例えば、制限されないが、セチリジンまたはケトチフェン)または血管収縮薬(例えば、制限されないが、オキシメタゾリンまたはナファゾリン)など)と組み合わせたフルチカゾンの眼科処方物を特徴とする。かかるフルチカゾン組み合わせ処方物は、アレルギー性結膜炎の急性および遅発型の兆候および症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹、および鼻の症状など)のさらなる鎮静で有効である。かかる処方物はまた、鼻結膜炎の兆候および症状(鼻水、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血および発赤、なみだ眼および/または眼の痒みなど)の鎮静で有効である。
【0036】
本発明の眼科処方物の快適さ、安全性、有効性、溶解性、および安定性は、当業者に予想できなかったかもしれない。公知のステロイドの作用機構に基づいて、当業者は、最高用量のステロイドがアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻炎の兆候および症状の軽減に最高の有効性を示すと予想するであろう。驚いたことに、本明細書中に示したデータは、フルチカゾンの範囲中央値(0.005%)がより低い用量のフルチカゾン(0.001%)およびより高い用量のフルチカゾン(0.01%)の両方よりもアレルギー性結膜炎に関連する眼および鼻の症状の軽減において一貫してより高い有効性を示したことを証明している(実施例1を参照のこと)。さらにより驚いたことに、フルチカゾンの範囲中央値(0.005%)は、より低い用量(0.001%)および最高用量(0.01%)よりも快適であり、眼圧に有害作用を及ぼさなかった。データは、眼において快適且つ安全であり、アレルギー性結膜炎および鼻炎に関連する眼および鼻の症状の両方の軽減で高度に有効である至適フルチカゾン濃度が存在することを予想外に証明している。かかる至適濃度は、日常的な至適化によって到達できなかった。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、1つまたは複数の代用涙液成分を含む。フルチカゾン成分はアレルギー性結膜炎の症状を低減し、1つまたは複数の代用涙液成分は、涙液層の増強(涙液層破壊時間の増加によって証明される)によって眼表面を保護し、眼表面上の滞留時間を増強するように作用することができ、したがって、活性の持続時間が増加し得る。有効量のかかる処方物を使用して、急性および/または遅発型アレルギー性結膜炎および/または一般的な眼の刺激に関連する兆候および症状を処置および/または防止することができ、これを使用して前述の障害のための薬物を含む場合に別の眼障害を処置することもできる。有効量のかかる処方物を使用して、アレルギー性鼻結膜炎の兆候および症状を処置および/または防止することもできる。かかる処方物は、点眼する場合の快適な眼科処方物を提供し、かかる他の薬剤と組み合わせないフルチカゾンの処方物を超える増強された有効性および/または作用持続時間を有する。
【0038】
フルチカゾン/代用涙液処方物の優れた有効性は、とりわけ、この処方物中の成分の組み合わせの相乗効果に寄与する。フルチカゾンと代用涙液との組み合わせが相乗的に作用して、眼表面上のフルチカゾンの滞留時間がより長くなり、それにより、作用の持続時間および有効性が増大し、涙液層の完全性が延長され、それにより、眼表面が保護される(例えば、涙液層破壊時間および/または眼保護指数の増加による)。そのようなものとして、本発明の組成物は点眼の際に快適であり、急性または慢性のアレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の低減のために使用することができ、特に断続的および長期の使用の両方に特に適切である。
【0039】
処方物
好ましくは、本発明の眼科組成物を、溶液、懸濁液、軟膏、乳濁液、ゲル、および局所投与のための他の投薬形態(点眼薬、眼軟膏、および眼用ゲルなど)として処方する。眼局所投与のために、眼科組成物の投薬形態には、溶液、軟膏、眼挿入剤、ゲル、乳濁液、懸濁液、および固体点眼薬などが含まれ、これらから適切に選択することができる。さらに、改変(徐放性、安定性、および易吸収性など)を、かかる調製物にさらに適用することができる。これらの投薬形態を、例えば、微生物分離フィルターによる濾過または乾熱滅菌などによって滅菌する。
【0040】
処方の容易さおよび患者が罹患眼への1〜2滴の液滴の点眼によってかかる組成物を容易に投与する能力に基づいて、水溶液が一般に好ましい。しかし、組成物はまた、懸濁液、粘性または半変性ゲル、または固体もしくは半固体組成物の他の型であり得る。1つの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は水性処方物である。本発明の水性処方物は、典型的には50重量%超、好ましくは75重量%超、もっと好ましくは90重量%超の水である。別の実施形態では、フルチカゾン処方物は凍結乾燥処方物である。
【0041】
特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物を、懸濁液として処方する。かかる処方物の粒径は、一般に、せいぜい30umほどである。当業者は、至適粒径をミル粉砕(ジェット、ボール、または他の機械的サイジング)によるか、貧溶媒添加晶析などの技術を使用して達成することができると認識するであろう。さらに、本発明の懸濁液処方物は、粒子の凝塊形成を防止するための懸濁剤および分散剤を含むことができる。例えば、制限されないが、本発明の懸濁液処方物は、プロピオン酸フルチカゾン、pH7.0を得るための一塩基と二塩基のリン酸塩との組み合わせを含むリン酸バッファー系、プロピレングリコール、ポリソルベート80、ヒプロメロース、エデト酸二ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムを含む。
【0042】
活性薬剤
好ましい実施形態によれば、治療有効量のフルチカゾンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む眼科組成物を提供する。本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物をその酸および塩基の塩によって修飾した開示の化合物の誘導体をいう。薬学的に許容可能な塩の例には、塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩(アミンなど);酸性残基のアルカリ塩または有機塩(カルボン酸など)が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性の塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、かかる従来の非毒性の塩には、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸など)から誘導した塩および有機酸(酢酸、フロイン酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、およびイセチオン酸など)から調製した塩が含まれる。
【0043】
プロピオン酸フルチカゾンは好ましい薬学的に許容可能な塩である。プロピオン酸フルチカゾン(S−フルオロメチル−6−α−9−ジフルオロ−11−β−ヒドロキシ−16−α−メチル−3−オキソアンドロスタ−l,4−ジエン−17−β−カルボチオアート,17−プロピオナートとしても公知)は、化学式C25H31F3O5Sを有する合成トリフッ化コルチコステロイドである。これは、白色からオフホワイトの粉末であり、分子量は500.6g/molである。プロピオン酸フルチカゾンは、実質的に水不溶性(0.14μg/ml)であり、ジメチルスルホキシドおよびジメチル−ホルムアミドに溶けやすく、メタノールおよび95%エタノールにわずかに溶解する。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、フルチカゾンは、本発明の処方物中の主な活性薬剤である。いくつかの実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、唯一の活性薬剤としてフルチカゾンを含む(または本質的にフルチカゾンからなる)。いくつかの実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、唯一の抗アレルギー剤としてフルチカゾンを含む(または本質的にフルチカゾンからなる)。好ましくは、フルチカゾンは、プロピオン酸フルチカゾンまたはジプロピオン酸フルチカゾンの形態である。本発明の一定の実施形態では、フルチカゾンを、0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方する。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは、0.005%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは、0.01%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。
【0045】
しかし、いくつかの実施形態によれば、フルチカゾンを、本明細書中に記載の他の活性薬剤を使用して処方することができる。例えば、フルチカゾンを、1つまたは複数のさらなる抗アレルギー剤を使用して処方することができる。用語「抗アレルギー剤」は、眼アレルギーを処置するか、眼アレルギーの症状を軽減する分子または組成物をいう。用語「眼アレルギー」は、眼の任意のアレルギー疾患(例えば、季節性/通年性眼アレルギー、春季角結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、通年性眼アレルギー、およびアトピー性角結膜炎)をいう。眼アレルギーの兆候および症状には、結膜浮腫、眼の痒み、流涙、発赤および腫脹、ならびに眼アレルギーに関連する鼻の症状(例えば、鼻づまり、鼻水)が含まれる。抗アレルギー剤の制限されない例には、「抗ヒスタミン薬」またはヒスタミンのヒスタミン受容体への結合を遮断する薬物、「肥満細胞安定剤」またはヒスタミンおよび肥満細胞由来の他の物質の放出を遮断する薬物、「複数の作用様式を有する薬物」または複数の作用様式を有する抗アレルギー剤である薬物(例えば、抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤である薬物、抗ヒスタミン、肥満細胞安定化活性、および抗炎症活性を有する薬物など)、ステロイド、および非ステロイド性抗炎症薬(すなわち「NSAID」)が含まれる。
【0046】
一定の実施形態では、フルチカゾンを、肥満細胞安定剤(ネドクロミル、ヨードキサミド、クロモリン、またはクロモリンナトリウムなど)、非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)(ジクロフェナックまたはケトロラックトロメタミン、ブロムフェナク、またはネパフェナクなど)、血管収縮薬(ナファゾリン、アントラジン、テトラヒドゾリン、またはオキシメタゾリンなど)、抗ヒスタミン(antihistimine)(アンタゾリン、アステミゾール、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、デスロラチジン、デクスブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボカバスチン、レボセチリジン、ロラチジン、メキタジン、ミゾラスチン、ノルケトチフェン、オロパタジン、オキサトミド、フェニダミン、フェニラミン、ピリラミン、テルフェニジン、およびトリプロリジンなど)、またはαアドレナリンアゴニスト(エピネフリン、フェノキサゾリン、インダナゾリン、ナファゾリン、オキセドリン、フェニレフリン、テファゾリン、テトリゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン、またはキシロメタゾリンなど)から選択される1つまたは複数のさらなる活性薬剤を使用して処方する。
【0047】
賦形剤
いくつかの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。用語「賦形剤」は、本明細書中で使用する場合、処方物の活性薬剤と組み合わせて使用される生物学的に不活性な物質を広くいう。賦形剤を、例えば、溶解補助剤、安定剤、界面活性剤、粘滑薬、粘性剤、希釈剤、不活性キャリア、防腐剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、香味物質、または着色剤として使用することができる。好ましくは、少なくとも1つの賦形剤を、処方物に対して1つまたは複数の有利な物理的性質(活性薬剤の安定性および/または溶解性の増加など)が提供されるように選択する。「薬学的に許容可能な」賦形剤は、動物における使用、好ましくはヒトにおける使用について州または連邦の規制当局によって承認されているか、動物における使用、好ましくはヒトにおける使用について米国薬局方(Pharmacopia)、欧州薬局方(Pharmacopia)、または別の一般に認識されている薬局方(pharmacopia)中に列挙されている賦形剤である。
【0048】
本発明の処方物中で使用することができるキャリアの例には、水、水と水混和性溶媒(C1〜C7−アルカノールなど)との混合物、植物油、または鉱物油(0.5〜5%非毒性水溶性ポリマーを含む)、天然物(ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカント、カラヤゴム、キサンタンガム、カラゲニン、寒天、およびアカシア、デンプン誘導体(酢酸デンプンおよびヒドロキシプロピルデンプンなど)など)、また、他の合成生成物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは架橋ポリアクリル酸(中性Carbopolなど)、またはこれらのポリマーの混合物など)が含まれる。キャリアの濃度は、典型的には、有効成分濃度の1〜100000倍である。
【0049】
賦形剤のさらなる例には、一定の不活性タンパク質(アルブミンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(アスパラギン酸(あるいは、アスパラギン酸塩ともいうことができる)、グルタミン酸(あるいは、グルタミン酸塩ともいうことができる)、リジン、アルギニン、グリシン、およびヒスチジンなど)、脂肪酸およびリン脂質(スルホン酸アルキルおよびカプリル酸塩など)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートなど)、非イオン性界面活性剤(ツウィーン(登録商標)、プルロニックス(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)200、300、400、または600など)、カーボワックス1000、1500、4000、6000、および10000、炭水化物(グルコース、スクロース、マンノース、マルトース、トレハロース、およびデキストリン(シクロデキストリンが含まれる)など)、ポリオール(マンニトールおよびソルビトールなど)、キレート剤(EDTAなど)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)が含まれる。
【0050】
特定の実施形態では、キャリアは粘膜付着性の高分子ビヒクルである。本発明の方法または処方物での使用に適切な粘膜付着性ビヒクルの例には、1つまたは複数の高分子懸濁剤(デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、ゲルライト(登録商標)、セルロースポリマー、およびカルボキシ含有ポリマー系が含まれるが、これらに限定されない)を含む水性高分子懸濁液が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、高分子懸濁剤は、架橋カルボキシ含有ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含む。別の特定の実施形態では、高分子懸濁剤はポリエチレングリコール(PEG)を含む。本発明の安定な局所用眼科フルチカゾン処方物での使用に適切な架橋カルボキシ含有ポリマー系の例には、NoveonAA−1、Carbopol(登録商標)、および/またはDuraSite(登録商標)(InSite Vision)が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
他の特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、以下から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む:代用涙液、張度増強剤、防腐剤、可溶化剤、粘性増強剤、粘滑薬、乳化剤、湿潤薬、金属イオン封鎖剤、および充填剤。賦形剤の添加量および型は、処方物の特定の要件に従い、一般に、約0.0001重量%〜90重量%の範囲である。
【0052】
好ましい実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、粘性増強剤または粘性増強剤の組み合わせ、等張化剤または等張化剤の組み合わせ、およびバッファーまたはバッファーの組み合わせを含む。
【0053】
好ましい実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、粘滑薬または緩和薬の組み合わせ、等張化剤または等張化剤の組み合わせ、およびバッファーまたはバッファーの組み合わせを含む。
【0054】
好ましい実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、粘滑薬または緩和薬の組み合わせを含む。
【0055】
代用涙液
いくつかの実施形態によれば、フルチカゾン処方物は、人工涙液代用物を含むことができる。用語「代用涙液」は、潤滑し、「湿らせ」、完全な内因性の涙に近づけ、天然の涙の構築を補助し、そうでなければ、眼乾燥症の兆候または症状および眼投与の際の容態を一過性に低減する分子または組成物をいう。種々の代用涙液が当該分野で公知であり、以下が含まれるが、これらに限定されない:単量体ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールなど)、高分子ポリオール(ポリエチレングリコールなど)、セルロースエステル(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロースなど)、デキストラン(デキストラン70など)、水溶性タンパク質(ゼラチンなど)、ビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポビドンなど)、およびカルボマー(カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、およびカルボマー974Pなど)。多数のかかる代用涙液は市販されており、セルロースエステル(Bion Tears(登録商標)、Celluvisc(登録商標)、Genteal(登録商標)、OccuCoat(登録商標)、Refresh(登録商標)、Systane(登録商標)、Teargen II(登録商標)、Tears Naturale(登録商標)、Tears Natural II(登録商標)、Tears Naturale Free(登録商標)、およびTheraTears(登録商標)など)およびポリビニルアルコール(Akwa Tears(登録商標)、HypoTears(登録商標)、Moisture Eyes(登録商標)、Murine Lubricating(登録商標)、およびVisine Tears(登録商標)、Soothe(登録商標)など)が含まれるが、これらに限定されない。代用涙液はまた、パラフィン(市販のLacri−Lube@軟膏など)から構成され得る。代用涙液として使用することができる他の市販の軟膏には、Lubrifresh PM(登録商標)、Moisture EyesPM(登録商標)、およびRefresh PM(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の1つの好ましい実施形態では、代用涙液はヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)を含む。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.1%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.5%〜約1.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.1%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.6%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。1つの好ましい実施形態では、HPMC濃度は、約0.1%〜約1.0%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、0.1〜0.2%、0.2〜0.3%、0.3〜0.4%、0.4〜0.5%、0.5〜0.6%、0.6〜0.7%、0.7〜0.8%、0.8〜0.9%、0.9〜1.0%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.30%、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0057】
例えば、制限されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む代用涙液は、GenTeal(登録商標)潤滑点眼薬である。GenTeal(登録商標)(CibaVision−Novartis)はヒドロキシプロピルメチルセルロース3mg/gを含む無菌の潤滑点眼薬であり、過ホウ酸ナトリウムを使用して保存する。HPMCベースの涙液の他の例を提供する。
【0058】
別の好ましい実施形態では、代用涙液はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。例えば、制限されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む代用涙液はRefresh(登録商標)涙液である。Refresh(登録商標)涙液は、通常の涙液に類似の潤滑処方物であり、使用した場合に最終的に天然の涙液の成分に変化する穏やかな非感作の防腐剤(安定化オキシクロロ複合体(Purite(商標)))を含む。
【0059】
好ましい実施形態では、代用涙液またはその1つまたは複数の成分は、かすみ眼、眼瞼の固化などを最小にしながら涙液層の支持有効性を最適にする範囲の粘性を有する水溶液である。好ましくは、代用涙液またはその1つまたは複数の成分の粘性は、約10〜約150センチポアズ(cpi)、好ましくは約15〜約120cpi、さらにより好ましくは約20〜約90cpiの範囲(または前記範囲内の任意の特定の値)である。好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物の粘性は、約15cpi〜約30cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約15cpi、約16cpi、約17cpi、約18cpi、約19cpi、約20cpi、約20cpi、約22cpi、約23cpi、約24cpi、約25cpi、約26cpi、約27cpi、約28cpi、約29cpi、約30cpi)である。特定の実施形態では、代用涙液またはその1つまたは複数の成分の粘性は約20cpiである。別の好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物の粘性は、約70cpi〜約90cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約70cpi、約71cpi、約72cpi、約73cpi、約74cpi、約75cpi、約76cpi、約77cpi、約78cpi、約79cpi、約80cpi、約81cpi、約82cpi、約83cpi、約84cpi、約85cpi、約86cpi、約87cpi、約88cpi、約89cpi、または約90cpi)である。
【0060】
粘性を、CP40または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ22.50+/−およそ10(1/秒)のBrookfield ConeおよびPlate粘度計モデルVDV−III Ultra+またはSC4−18または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ26+/−およそ10(1/秒)のBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、20℃+/−1℃で測定することができる。あるいは、粘性を、CP40または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ22.50+/−およそ10(1/秒)のBrookfield ConeおよびPlate粘度計モデルVDV−III Ultra+またはSC4−18または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ26+/−およそ10(1/秒)のBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、25℃+/−1℃で測定することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、代用涙液またはその1つまたは複数の成分を、適切な塩(例えば、リン酸塩)を用いてpH5.0〜9.0、好ましくはpH5.5〜7.5、より好ましくはpH6.0〜7.0(または前記範囲内の任意の特定の値)に緩衝化する。いくつかの実施形態では、代用涙液は、1つまたは複数の成分(グリセロール、プロピレングリセロール、グリシン、ホウ酸ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛が含まれるが、これらに限定されない)をさらに含む。
【0062】
塩、バッファー、および防腐剤
本発明の処方物はまた、薬学的に許容可能な塩、緩衝剤,または防腐剤を含むことができる。かかる塩の例には、以下の酸から調製された塩が含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸、ギ酸、マロン酸、およびコハク酸など。かかる塩を、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩など)として調製することもできる。緩衝剤の例には、リン酸、クエン酸、酢酸、および2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)が含まれる。
【0063】
本発明のフルチカゾン処方物は、バッファー系を含むことができる。本出願で使用する場合、用語「バッファー」または「バッファー系」は、通常は少なくとも1つの他の化合物と組み合わせて緩衝化能力(すなわち、元のpHの変化が比較的小さいか全く変化させずに酸または塩基(アルカリ)のいずれかを範囲内で中和する能力)を示す緩衝化系の溶液が得られる化合物を意味する。いくつかの実施形態によれば、緩衝化成分は、0.05%〜2.5%(w/v)または0.1%〜1.5%(w/v)存在する。
【0064】
好ましいバッファーには、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、カルシウムバッファー、ならびにその組み合わせおよび混合物が含まれる。ホウ酸バッファーには、例えば、ホウ酸およびその塩(例えば、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウム)が含まれる。ホウ酸バッファーには、溶液中にホウ酸またはその塩を生成する化合物(四ホウ酸カリウムまたはメタホウ酸カリウムなど)も含まれる。
【0065】
リン酸バッファー系には、好ましくは、1つまたは複数の一塩基性リン酸および二塩基性リン酸などが含まれる。特に有用なリン酸バッファーは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のリン酸塩から選択されるリン酸バッファーである。適切なリン酸バッファーの例には、1つまたは複数の二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、一塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO4)、および一塩基性リン酸カリウム(KH2PO4)が含まれる。リン酸バッファー成分を、頻繁に、リン酸イオンとして計算して0.01%〜0.5%(w/v)の量で使用する。
【0066】
好ましいバッファー系は、ホウ酸/ホウ酸塩、一塩基性および/または二塩基性リン酸塩/リン酸、またはホウ酸/リン酸バッファー系の組み合わせに基づく。例えば、ホウ酸/リン酸バッファー系の組み合わせを、ホウ酸ナトリウムとリン酸との混合物またはホウ酸ナトリウムと一塩基性リン酸塩との組み合わせから処方することができる。
【0067】
ホウ酸/リン酸バッファー系の組み合わせでは、溶液は、約0.05〜2.5%(w/v)のリン酸またはその塩および0.1〜5.0%(w/v)のホウ酸またはその塩を含む。リン酸バッファーを、(全部で)0.004〜0.2M(モル濃度)、好ましくは0.04〜0.1Mの濃度で使用する。ホウ酸バッファー(全部で)を、0.02〜0.8M、好ましくは0.07〜0.2Mの濃度で使用する。
【0068】
他の公知のバッファー化合物を、任意選択的に、レンズケア組成物に任意選択的に添加することができる(例えば、クエン酸塩、重炭酸ナトリウム、およびTRISなど)。溶液中の他の成分はまた、他の機能を有する一方で、バッファーの能力に影響を及ぼし得る。例えば、EDTA(しばしば錯化剤として使用される)は、溶液のバッファー能力に注目すべき影響を及ぼし得る。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、水性点眼剤のpHは生理学的pHまたはその付近である。好ましくは、水性点眼剤のpHは、約5.5〜約8.0または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、水性点眼剤のpHは、約6.5〜7.5または前記範囲内の任意の特定の値(例えば、6.5.、6.6.、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5)である。いくつかの実施形態によれば、水性点眼剤のpHは約7である。当業者は、処方物中に含まれる有効成分の安定性に応じてより最適なpHに調整することができることを認識しているであろう。いくつかの実施形態によれば、pHを、塩基(例えば、1N水酸化ナトリウム)または酸(例えば、1N塩酸)を使用して調整する。
【0070】
好ましくは生理学的pHへのpHの調整のために、バッファーは特に有用であり得る。本発明の溶液のpHを、5.5〜8.0、より好ましくは約6.0〜7.5、より好ましくは約6.5〜7.0の範囲内(または前記範囲内の任意の特定の値)に維持すべきである。適切なバッファー(ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、TRIS、および種々の混合したリン酸バッファー(Na2HPO4、NaH2PO4、およびKH2PO4の組み合わせが含まれる)、ならびにその混合物など)を添加することができる。ホウ酸バッファーが好ましい。一般に、バッファーを、約0.05〜2.5重量%、好ましくは0.1〜1.5%の範囲の量で使用するであろう。
【0071】
好ましい実施形態によれば、本発明の処方物は、防腐剤を含まない。一定の実施形態では、眼科処方物は、防腐剤をさらに含む。防腐剤を、典型的には、第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゾキソニウムなど)から選択することができる。塩化ベンザルコニウムは、より詳細にはN−ベンジル−N−(C8〜C18アルキル)−N,N−ジメチル塩化アンモニウムと記載される。防腐剤のさらなる例には、抗酸化剤(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、レチニルパルミタート、およびセレンなど)、アミノ酸(システインおよびメチオニン)、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、および合成防腐剤(チロメサールおよびアルキルパラベン(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベンが含まれる)など)が含まれる。他の防腐剤には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、m−クレゾール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀またはホウ酸フェニル水銀、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール(クロロブタノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、またはフェニルエタノールなど)、グアニジン誘導体(クロロヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアニドなど)、過ホウ酸ナトリウム、Germal(登録商標)II、ソルビン酸および安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))が含まれる。好ましい防腐剤は、第四級アンモニウム化合物、特に、塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(Polyquad(米国特許第4,407,791を参照のこと)など)、アルキル−水銀塩、パラベンおよび安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))である。必要に応じて、確実に細菌および真菌に原因する使用中の二次的汚染から保護するために十分な量の防腐剤を眼科組成物に添加する。
【0072】
特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、以下から選択される防腐剤を含む:塩化ベンザルコニウム、0.001%〜0.05%、塩化ベンゼトニウム(0.02%まで)、ソルビン酸(0.01%〜0.5%)、ポリヘキサメチレンビグアニド(0.1ppm〜300ppm)、ポリクオタニウム−1(Omamer M)−0.1ppm〜200ppm、次亜塩素酸塩化合物、過塩素酸塩化合物、または亜塩素酸塩化合物(500ppm以下、好ましくは10ppmと200ppmとの間)、安定化過酸化水素溶液(適切な安定剤と共に0.0001〜0.1重量%の過酸化水素が得られる過酸化水素供給源)、p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルおよびその混合物、好ましくはメチルパラベンおよびプロピルパラベン(0.01%〜0.5%)、クロルヘキシジン(0.005%〜0.01%)、クロロブタノール(0.5%まで)、および安定化オキシクロロ複合体(Purite(登録商標))(0.001%〜0.5%)。
【0073】
別の実施形態では、本発明の眼科処方物は防腐剤を含まない。かかる処方物は、コンタクトレンズを装着する患者またはいくつかの局所用点眼薬を使用する患者、および/または防腐剤への曝露の制限がより望ましいかもしれない既に易感染性の眼表面(例えば、眼乾燥症)を有する患者に有用であろう。
【0074】
粘性増強剤および緩和薬
一定の実施形態では、粘性増強剤を本発明のフルチカゾン処方物に添加することができる。かかる薬剤の例には、ポリサッカリド(ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの種々のポリマーなど)、ビニルポリマー、およびアクリル酸ポリマーが含まれる。
【0075】
種々の粘性増強剤が当該分野で公知であり、ポリオール(グリセロール、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール、およびエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポビドン、およびポリビニルピロリドンなど)、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースおよびHPMCとしても公知)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルセルロースなど)、デキストラン(デキストラン70など)、水溶性タンパク質(ゼラチンなど)、カルボマー(カルボマー934P、カルボマー941,カルボマー940、およびカルボマー974Pなど)、ゴム(HP−グアーなど)、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。他の化合物を、キャリアの粘性を増大させるために本発明の処方物に添加することもできる。粘性増強剤の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ポリサッカリド(ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの種々のポリマーなど)、ビニルポリマー、およびアクリル酸ポリマー。上記薬剤の組み合わせおよび混合物も適切である。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.5%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.5%〜約1.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.6%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0077】
一定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、眼科緩和薬および/または以下の1つまたは複数から選択される粘性増強ポリマーを含む:セルロース誘導体(カルボキシメチル(methy)セルロース(0.01〜5%)、ヒドロキシエチルセルロース(0.01%〜5%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒプロメロース(0.01%〜5%)、およびメチルセルロース(celluose)(0.02%〜5%)など)、デキストラン40/70(0.01%〜1%)、ゼラチン(0.01%〜0.1%)、ポリオール(グリセリン)(0.01%〜5%)、ポリエチレングリコール300(0.02%〜5%)、ポリエチレングリコール400(0.02%〜5%)、ポリソルベート80(0.02%〜3%)、プロピレングリコール(0.02%〜3%)、ポリビニルアルコール(0.02%〜5%)、およびポビドン(0.02%〜3%)など)、ヒアルロン酸(0.01%〜2%)、およびコンドロイチン硫酸(0.01%〜2%)。
【0078】
本発明の1つの好ましい実施形態では、粘性増強成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)を含む。HPMCは、所望の粘性レベルおよび粘滑活性が得られるように機能する。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0%〜約1.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0%〜約0.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。
【0079】
別の好ましい実施形態では、粘性増強成分はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0080】
本発明の眼科処方物の粘性を、当該分野で公知の標準的方法(粘度計またはレオメーターの使用など)に従って測定することができる。当業者は、温度およびずり速度などの要因が粘性測定に影響を及ぼし得ることを認識するであろう。特定の実施形態では、本発明の粘性眼科処方物の粘性を、CP40または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ22.50+/−およそ10(1/秒)のBrookfield ConeおよびPlate粘度計モデルVDV−III Ultra+またはSC4−18または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ26+/−およそ10(1/秒))のBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、20℃+/−1℃で測定する。
【0081】
張度増強剤
張度を、必要に応じて、典型的には張度増強剤によって調整する。かかる薬剤は、例えば、イオン型および/または非イオン型の薬剤であり得る。イオン性張度増強剤の例は、アルカリ金属ハライドまたはアルカリ土類金属ハライド(例えば、CaCl2、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBrまたはNaClなど)、Na2SO4、またはホウ酸である。非イオン性張度増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、またはデキストロースである。本発明の水溶液を、典型的には、等張化剤を使用して、0.9%塩化ナトリウム溶液または2.5%グリセロール溶液に等価な正常な涙液の浸透圧に近づけるように調整する。約200〜1000mOsm/kgの重量オスモル濃度が好ましく、200〜500mOsm/kgまたは前記範囲内の任意の特定の値(例えば、200mOsm/kg、210mOsm/kg、220mOsm/kg、230mOsm/kg、240mOsm/kg、250mOsm/kg、260mOsm/kg、270mOsm/kg、280mOsm/kg、290mOsm/kg、300mOsm/kg、310mOsm/kg、320mOsm/kg、330mOsm/kg、340mOsm/kg、350mOsm/kg、360mOsm/kg、370mOsm/kg、380mOsm/kg、390mOsm/kg、または400mOsm/kg)がより好ましい。特定の実施形態では、本発明の眼科処方物を、等張化剤を使用して、約240〜360mOsm/kgの範囲(例えば、300mOsm/kg)の重量オスモル濃度に調整する。
【0082】
本発明のフルチカゾン処方物は、等張化剤または等張化剤の組み合わせをさらに含むことができる。いくつかの実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、有効量の張度調整成分を含むことができる。そのうちで使用することができる適切な張度調整成分は、コンタクトレンズケア製品で慣習的に使用されている張度調整成分(種々の無機塩など)である。ポリオールおよびポリサッカリドを使用して、張度を調整することもできる。200mOsmol/kg〜1000mOsmol/kgまたは前記範囲内の任意の特定の値の重量オスモル濃度が得られる張度調整成分量が有効である。
【0083】
好ましくは、張度成分は、涙液のミネラル組成を模倣する生理学的平衡塩類溶液を含む。いくつかの実施形態によれば、張度を、張度増強剤(例えば、イオン型および/または非イオン型の薬剤が含まれる)によって調整することができる。イオン性張度増強剤の例は、アルカリ金属ハライドまたはアルカリ土類金属ハライド(例えば、CaCl2、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBr、またはNaClなど)、Na2SO4、またはホウ酸である。非イオン性張度増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、またはデキストロースである。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、張度成分は、上記の重量オスモル濃度が得られる比率で2つ以上のNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の処方物の重量オスモル濃度範囲は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgである。いくつかの実施形態によれば、張度成分は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率で3つ以上のNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、張度成分は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率で4つ以上のNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、張度成分は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率でNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、NaClは、約0.1〜約1%w/v、好ましくは約0.2〜約0.8%w/vの範囲、より好ましくは約0.39%w/vである。いくつかの実施形態によれば、KClは、約0.02〜約0.5%w/v、好ましくは約0.05〜約0.3%w/vの範囲、より好ましくは約0.14%w/vである。いくつかの実施形態によれば、CaCl2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%w/vである。いくつかの実施形態によれば、MgCl2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%W/Vである。いくつかの実施形態によれば、ZnCl2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%W/Vである。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、本発明の眼科処方物を、等張化剤を使用して、0.9%塩化ナトリウム溶液または2.5%グリセロール溶液に等価な正常な涙液の浸透圧に近づけるように調整することができる。約225〜400mOsm/kgの重量オスモル濃度が好ましく、280〜320mOsmがより好ましい。
【0086】
溶解補助剤
特に1つまたは複数の成分が懸濁液または乳濁液を形成する傾向がある場合、局所用処方物は、可溶化剤の存在がさらに必要であり得る。適切な可溶化剤には、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエーテル、シクロデキストリン(例えば、α−、β−、またはγ−シクロデキストリン(例えば、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化、またはアルキルオキシカルボニル−アルキル化誘導体、またはモノ−またはジグリコシル−α−、β−、またはγ−シクロデキストリン、モノ−またはジマルトシル−α−、β−、またはγ−シクロデキストリン、またはパノシル−シクロデキストリン))、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはこれら化合物の混合物が含まれる。好ましい実施形態では、可溶化剤は、ヒマシ油およびエチレンオキシドの反応生成物(例えば、市販品であるCremophor EL(登録商標)またはCremophor RH40(登録商標))である。ヒマシ油およびエチレンオキシドの反応性生物は、眼によって非常に十分に許容される特に良好な可溶化剤であることが立証されている。別の実施形態では、可溶化剤はチロキサポールまたはシクロデキストリンである。使用濃度は、特に、有効成分の濃度に依存する。添加量は、典型的には、有効成分を溶解するのに十分な量である。例えば、可溶化剤濃度は、有効成分濃度の0.1〜5000倍である。
【0087】
解乳化剤(Demulcifing agent)
本発明で使用される緩和薬を、解乳化効果を得るための(すなわち、粘膜表面を潤滑し、乾燥および刺激を低減するのに十分な)有効量(すなわち、「解乳化量))で使用する。適切な緩和薬の例には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールが含まれ得るが、具体的には、ポリエチレンオキシドおよびポリアクリル酸などの他の成分は排除される。さらに他の実施形態では、他のまたはさらなる緩和薬を、グリセリンおよびプロピレングリコールと組み合わせて使用することができる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールも使用することができる。
【0088】
本発明における緩和薬の特定の使用量は、適用に応じて変化するであろう。しかし、典型的には、以下にいくつかの緩和薬の範囲を提供する:グリセリン:約0.2〜約1.5%であるが、好ましくは約1%(w/w)、プロピレングリコール:約0.2〜約1.5%であるが、好ましくは約1%(w/w)、セルロース誘導体:約0.2〜約3%であるが、好ましくは約0.5%(w/w)。さらなる緩和薬を使用する場合、これらを、典型的には、上記で引用した一般的なモノグラフ中で特定された量で使用する。好ましいセルロース誘導体は、医薬品グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0089】
安定性
本発明の処方物により、処方されたフルチカゾンおよび処方物の他の任意選択的な活性薬剤が化学的に安定する。この文脈中の「安定性」および「安定な」は、フルチカゾンおよび他の任意選択的な活性薬剤の化学的分解および物理的変化(所与の製造条件、調製条件、輸送条件、および保存条件下での沈降または沈殿など)に対する耐性をいう。本発明の「安定な」処方物はまた、好ましくは、所与の製造条件、調製条件、輸送条件、および/または保存条件下での出発量または基準量の少なくとも90%、95%、98%、99%、または99.5%を保持する。フルチカゾンおよび他の任意選択的な活性薬剤の量を、任意の当該分野で認識されている方法(例えば、UV−可視分光光度法および高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)など)を使用して決定することができる。
【0090】
一定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、約20〜30℃の範囲の温度で、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、または少なくとも7週間安定である。他の実施形態では、処方物は、約20〜30℃の範囲の温度で、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、または少なくとも12ヶ月安定である。1つの実施形態では、処方物は、20〜25℃で少なくとも3ヶ月安定である。
【0091】
他の実施形態では、フルチカゾン処方物は、約2〜8℃の範囲の温度で、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも22ヶ月、または少なくとも24ヶ月安定である。1つの実施形態では、処方物は、2〜8℃で少なくとも2ヶ月安定である。
【0092】
他の実施形態では、フルチカゾン処方物は、約−20℃で、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも22ヶ月、または少なくとも24ヶ月安定である。1つの実施形態では、処方物は、−20℃で少なくとも6〜12ヶ月間安定である。
【0093】
特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、約20〜30℃にて0.10%までの濃度で少なくとも3ヶ月安定である。別の実施形態では、処方物は、約2〜8℃にて0.10%までの濃度で少なくとも6ヶ月安定である。
【0094】
処方物の例
好ましい実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾンを唯一の活性薬剤として処方物中に0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値で含む。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは、処方物中に濃度0.005%(w/v)で存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは、処方物中に濃度0.01%(w/v)で存在する。
【0095】
任意選択的に、フルチカゾン処方物は、1つまたは複数の代用涙液または粘膜付着性高分子化合物(例えば、Durasite(登録商標))を含む。処方物が1つまたは複数の代用涙液を含む場合、代用涙液は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースまたはその両方を含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.5%〜1%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)で存在し、得られた溶液の粘性は60〜80cpiである。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.7%〜0.9%で存在する。別の特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.1%〜0.7%で存在し、得られた溶液の粘性は10〜30cpiである。
【0096】
任意選択的に、処方物はまた、防腐剤、好ましくは濃度0.005%〜0.02%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)の塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(例えば、Polyquad(登録商標))もしくは安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))を含む。処方物のpHは5.0と7.5との間である。例えば、処方物のpHは5、5.5、6.0、6.5、または7.0である。
【0097】
1つの実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.001%〜1.0%(w/v)、グリセリン0.1%〜5%(v/v)(例えば、0.1%〜3%(v/v)または前記範囲内の任意の特定の値)、および水を含む。任意選択的に、処方物はまた、0.005%〜0.02%(w/v)の塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(例えば、Polyquad(登録商標))もしくは安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))を含む。特定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.005%、グリセリン1.2%〜3%(v/v)、および水を含む。別の特定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.01%(w/v)、グリセリン1.2%〜3%(v/v)、および水を含む。任意選択的に、フルチカゾン処方物はまた、塩化ベンザルコニウム0.01%(w/v)または安定化されたオキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))を含む。処方物のpHは、5.0と7.5との間である。例えば、処方物のpHは、5、5.5、6.0、6.5、または7.0である。
【0098】
さらに別の特定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.001%〜1.0%(w/v)、好ましくはフルチカゾン0.005%、および1つまたは複数の代用涙液または粘膜付着性高分子化合物(例えば、Durasite(登録商標))を含む。好ましくは、代用涙液は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースまたはその両方を含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.5%〜1%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)で存在し、得られた溶液の粘性は60〜80cpiである。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.7%〜0.9%で存在する。任意選択的に、処方物はまた、濃度0.005%〜0.02%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)の防腐剤(好ましくは塩化ベンザルコニウム)または安定化されたオキシクロロ複合体(Purite(登録商標))を含む。処方物のpHは、5.0と7.5との間である。例えば、処方物のpHは、5、5.5、6.0、6.5、または7.0である。
【0099】
さらに別の特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物を、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%〜1.8%グリセリン(または前記範囲内の任意の特定の値)(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含むビヒクル中に処方する。
【0100】
一定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.005%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.8%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0101】
さらに別の一定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.01%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0102】
使用方法
本発明のフルチカゾン処方物は、アレルギー性結膜炎の急性期(すなわち、季節性)および遅発型(すなわち、慢性、持続性、または難治性)の両方の炎症反応の兆候および症状(眼の痒み、発赤、および眼瞼の腫脹など)ならびに関連する鼻の症状の処置および防止に有用である。本発明の処方物はまた、アレルギー性鼻結膜炎の兆候および症状(痒み、鼻汁、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血、および発赤、なみだ眼および/または眼の痒みなど)の処置および防止に有用である。
【0103】
本発明は、有効量のフルチカゾンを含む眼科処方物を被験体の眼表面に直接局所投与する工程を含む、必要とする被験体におけるアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻結膜炎の処置または防止方法を提供する。一定の実施形態では、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止を必要とする被験体の眼へのフルチカゾンの直接投与はまた、いずれかのアレルギーに関連する1つまたは複数の鼻の症状(例えば、痒み、鼻汁、くしゃみおよび/または鼻/副鼻腔鬱血)の鎮静または軽減に有効である。被験体の眼への眼科処方物の直接的な局所投与により、鼻涙管を通した眼表面から鼻腔への排液を介して鼻の兆候および症状を有意に軽減するであろう(例えば、Abelsonら,Clin.Ther.25(3),931−947(2003);Spanglerら,Clin.Ther.25(8),2245−2267(2003);およびCramptonら,Clin Ther.Nov;24(11):1800−8(2002)を参照のこと)。さらに、被験体の眼を介して点眼する場合、被験体の鼻を介した投与と比較して、鼻の症状を処置するために有意に少ない活性薬剤が必要である。例えば、Flonase(登録商標)(フルチカゾンを含む市販の鼻内噴霧)の各噴霧は、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性鼻結膜炎を処置するために50マイクログラムのフルチカゾンを鼻腔に送達させる。対照的に、1滴の0.005%フルチカゾン眼科処方物(すなわち、500マイクロリットルの液滴中2.5マイクログラム)は、眼に直接的に局所投与した場合に眼アレルギーに関連する鼻の症状を有意に軽減することが示された(本明細書中の実施例1を参照のこと)。そのようなものとして、本発明の方法は、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の鼻の症状のために現在利用可能な処置の選択肢よりも最適である。
【0104】
被験体は、好ましくはヒトであるが、別の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、マウス、ラット、または非ヒト霊長類)であり得る。
【0105】
本発明の処方物は、フルチカゾンおよび任意選択的な1つまたは複数のさらなる有効成分(例えば、制限されないが、血管収縮薬(ナファゾリンまたはオキシメタゾリンなど)または抗ヒスタミン(セチリジンまたはケトチフェンなど))を意図する使用(すなわち、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の兆候および症状の鎮静)に有効な量で含む。一定の実施形態では、本発明の処方物の1日1回の投与がアレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の症状の鎮静に有効である。しかし、特定の投薬量はまた、多数の要因(被験体の年齢、性別、種、および条件が含まれる)に基づいて選択される。有効量を、in vitro試験系または動物モデルから誘導した用量−応答曲線から推定することもできる。
【0106】
用語「有効量」は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の症状を消失または軽減するのに十分なフルチカゾンの量である。一定の実施形態では、有効量は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止に十分な量である。この文脈中の「処置」は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の少なくとも1つの症状の軽減または改善をいう。この文脈中の「防止」は、組成物を投与しない被験体と比較したアレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎に関連する症状の頻度の軽減または発生の遅延をいう。処方物中のフルチカゾンおよび他の活性薬剤の有効量は、薬物の吸収、不活化、および排出率ならびに処方物からの化合物の送達速度に依存するであろう。特定の投薬量はまた、緩和すべき容態の重症度に応じて変化し得る。任意の特定の被験体のために、固体の要求および組成物を投与するか投与を監督する者の専門的判断にしたがって、特定の投薬レジメンを経時的に調整すべきであるとさらに理解すべきである。典型的には、投与レジメンを、当業者に公知の技術を使用して決定するであろう。
【0107】
本発明の方法で使用することができる投与レジメンの例には、1日1回、1日2回、1日3回、および1日4回が含まれるが、これらに限定されない。一定の実施形態では、本方法は、本発明のフルチカゾン処方物を被験体の眼に1日1回直接投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、投与は1日2回〜4回である。
【0108】
一定の実施形態では、1日1回の投与(q.d.)は、眼および/または鼻のアレルギーの症状を鎮静するのに有効である。しかし、特定の投薬量を、多数の要因(被験体の年齢、性別、種、および条件が含まれる)に基づいて選択することもできる。有効量を、in vitro試験系または動物モデルから誘導した用量−応答曲線から推定することもできる。
【0109】
本発明の組成物中に処方されたいくつかの活性薬剤の組み合わせ使用は、異なる成分の効果の発生および持続時間が補完的に作用し得る(complimentary)ので、任意の各成分に必要な投薬量を減少させることができる。かかる併用療法では、異なる活性薬剤を、一緒にまたは個別に、同時または当日の異なる時間に送達させることができる。
【0110】
特定の実施形態では、処方物中の唯一の活性薬剤としてフルチカゾンを含む処方物を、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止を必要とする被験体の眼に1日1回(q.d.)投与する。一定の実施形態では、フルチカゾン処方物を、1日2回〜4回投与する。
【0111】
驚いたことに、本明細書中に記載のフルチカゾンのみの処方物は、予想されるよりもアレルギー性結膜炎の眼の痒みおよび関連する鼻の症状の低減に有効であった。さらにより驚くべきことは、眼に直接投与した場合、低用量のフルチカゾンが高用量のフルチカゾンよりもアレルギー性結膜炎の眼の痒みおよび関連する鼻の症状の低減に有効であったという所見であった。例えば、実施例に記載のように、0.005%フルチカゾンの有効性は、より高い用量である0.01%フルチカゾンよりも有効であった。
【0112】
別の特定の実施形態では、セチリジンを、1つまたは複数のナファゾリン、オキシメタゾリンセチリジン、またはケトチフェンを使用して処方し、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止を必要とする被験体の眼に1日1回(q.d.)投与する。一定の実施形態では、組み合わせ処方物を、1日2回〜4回投与する。
【0113】
包装
本発明の処方物を、単回用量の製品または複数回用量の製品のいずれかとして包装することができる。単回用量の製品は、包装の開封前に無菌であり、包装中のすべての組成物は、患者の片眼または両眼への単回適用において消費されることを意図する。包装開封後の組成物の無菌性を維持するための抗菌防腐剤の使用は一般に必要ない。
【0114】
複数回用量の製品も包装開封前に無菌である。しかし、容器内のすべての組成物を消費する前に組成物の容器を何度も開封し得るので、複数回用量の製品は、確実に容器の反復開封および取り扱いの結果として組成物が微生物によって汚染されるようにならないように、十分な抗菌活性を持たなければならない。この目的のために必要な抗菌活性レベルは当業者に周知であり、公式刊行物(米国薬局方(「USP」)および他の国の対応する刊行物など)中に特定されている。微生物汚染に対する眼科医薬品の保存の仕様および特定の処方物の防腐剤の有効性の評価手順の詳細な説明は、これらの刊行物中に示されている。米国では、防腐剤の有効性の基準を、一般に、「USP PET」要件という(頭字語「PET」は、「防腐剤有効性試験)を示す)。
【0115】
単回用量包装の使用は組成物中に抗菌防腐剤を含める必要がなく、このことは、眼科組成物を保存するために使用される従来の抗菌薬(例えば、塩化ベンザルコニウム)が特に眼乾燥容態を罹患した患者における眼の刺激または既存の眼の刺激を引き起こし得るので、医学的見解から重要な利点である。しかし、現在利用可能な単回用量包装(「製袋充填包装」として公知の過程によって調製された少量プラスチックバイアルなど)は、製造者および消費者においていくつかの欠点を有する。単回用量包装システムの主な欠点は、莫大な量の包装材料が必要であること(無駄且つ高価)および消費者が不便であることである。また、指導された通りに眼に1滴または2滴を適用した後に消費者が単回用量の容器を破棄せず、その後に使用するために開封した容器および容器中に残存した任意の組成物を保存するというリスクがある。単回用量製品のこの不適切な使用により、単回用量製品の微生物汚染のリスクおよび汚染した組成物を眼に適用した場合の関連する眼の感染症のリスクが生じる。
【0116】
本発明の処方物を「調製済み」水溶液として処方することが好ましい一方で、本発明の範囲内で別の処方物が意図される。したがって、例えば、有効成分、界面活性剤、塩、キレート剤、または点眼剤の他の成分、またはその混合部物を凍結乾燥させるか、そうでなければ、水での(例えば、脱イオン水または蒸留水中での)溶解のために準備された乾燥粉末または錠剤として提供する。溶液の自己保存性のために、滅菌水は必要ない。
【0117】
無菌性または適切な抗菌保存性を、本発明の処方物の一部として提供することができる。本発明の一定の処方物が眼への投与を意図するので、処方物は病原性生物を含まないことが好ましい。無菌液体懸濁液の利点は、懸濁液処方物を眼に投与した場合に個体に夾雑物が導入される可能性が減少し、それにより、日和見感染の機会が減少することである。無菌性を見込むことができる過程は、当該分野で公知の任意の適切な滅菌工程を含むことができる。1つの実施形態では、製剤原料(例えば、フルチカゾン)を無菌条件下で生成し、無菌環境下で微粒子化し、無菌条件下で混合および包装を行う。別の実施形態では、本発明の処方物を濾過滅菌してバイアル(例えば、鼻内噴霧デバイスで使用される無菌単位用量が得られる単位用量バイアルが含まれる)に充填することができる。各単位用量バイアルは、無菌であり得、他のバイアルまたは次の用量が汚染することなく適切に投与される。1つの別の実施形態では、本発明の処方物中の1つまたは複数の成分を、蒸気、ガンマ線照射によって滅菌することができるか、必要に応じて無菌ステロイド粉末および他の無菌成分を使用するかこれらと混合して調製することができる。また、処方物を、無菌条件下で調製して取り扱うことができるか、包装の前または後に滅菌することができる。
【0118】
キット
本発明は、液体または凍結乾燥させた本発明のフルチカゾン処方物(すなわち、本明細書中に記載のフルチカゾンのみまたはさらなる活性薬剤との組み合わせを含む処方物)を充填した1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。1つの実施形態では、処方物はフルチカゾンの水性組成物である。1つの実施形態では、処方物を凍結乾燥させる。好ましい実施形態では、液体または凍結乾燥させた処方物は無菌である。1つの実施形態では、キットは、1つまたは複数の容器中に本発明の液体または凍結乾燥させた処方物およびアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻結膜炎の処置に有用な1つまたは複数の他の予防薬または治療薬(例えば、さらなる活性薬剤(ナファゾリン、オキシメタゾリン、セチリジン、またはケトチフェンなど)と組み合わせたフルチカゾン)を含む。1つまたは複数の他の予防薬または治療薬は、フルチカゾンと同一の容器中または1つまたは複数の他の容器中に存在し得る。好ましくは、フルチカゾンを、約0.05%(w/v)〜約1.0%(w/v)の濃度で処方し、この濃度は局所眼投与に適切である。いくつかの実施形態では、フルチカゾンを、本明細書中に記載のように、さらなる活性薬剤(オキシメタゾリン、ナファゾリン、セチリジン、またはケトチフェンなど)を使用して処方する。一定の実施形態では、キットは単位投薬形態のフルチカゾンを含む。
【0119】
一定の実施形態では、キットは、さらに、アレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻結膜炎の処置における使用(例えば、本発明のフルチカゾン処方物のみまたは別の予防薬または治療薬との組み合わせを使用)、副作用、および1つまたは複数の投与経路のための投薬量の情報についての説明書を含む。医薬品または生物由来製品の製造、使用、または販売(この通知は製造機関による承認を反映する)、ヒトへの投与のための使用または販売を規制する政府機関によって指示された形態での通知を任意選択的にかかる容器に付随させる。説明書は典型的には書面または印刷物を含むが、これらに制限されない。かかる説明書を保存し、最終使用者に説明書を伝達することができる任意の媒体が本発明によって意図される。かかる媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)および光学式の媒体(例えば、CD ROM)などが含まれるが、これらに限定されない。かかる媒体は、かかる説明書の資料が得られるインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0120】
別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載の処方物の包装および/または保存および/または使用のためのキットならびに本明細書中に記載の方法を実施するためのキットを提供する。キットを、輸送、使用、および保存の1つまたは複数の態様を容易にするようにデザインすることができる。
【0121】
本明細書中に言及したすべての刊行物および特許は、あたかも各刊行物または特許が参考として援用されることを具体的且つ個別に示されたかのようにその全体が本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0122】
本発明を、以下の実施例を参照してさらに定義する。実施例は、本発明の範囲を制限することを意味しない。材料および方法の両方に対する多数の修正形態を本発明の目的および利益を逸脱することなく実施することができることが当業者に明らかであろう。
【0123】
実施例1:フルチカゾンはアレルギー性結膜炎に関連する眼および鼻の症状を防止する
プラセボ対照二重盲検試験を、ビヒクルのみ(N=15)と比較したフルチカゾン0.001%(N=16)、フルチカゾン0.005%(N=16)、フルチカゾン0.01%(N=15)の有効性を評価するために行った。図1Aおよび1Bに示す研究デザインで示すように、被験体は、スクリーニング(アレルゲンの滴定および確認)のために2回訪問し、その後に薬物評価のために2回訪問した。薬物評価のための訪問時に、1滴のマスキングした試験薬を点眼し、眼のアレルギー評価を行った。8時間後、被験体をアレルゲンで攻撃誘発し、眼および鼻の主要および副次エンドポイントを評価し、処方物の安全性も評価した。結果を図2〜21に示す。
【0124】
眼の主要エンドポイント
眼の痒み、結膜発赤、眼瞼の腫脹、および鼻閉を、訪問4Bの間に各被験体において評価した。
【0125】
眼の痒みを、0(痒み無し)〜4(重篤な痒み)のスケールで主観的に評価した。図2に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、ビヒクルのみと比較して、7分間にわたる眼の痒みの軽減での有効性はほぼ等しかった。
【0126】
結膜発赤も、0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで主観的に評価した。図3に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる結膜発赤の軽減での有効性はほぼ等しかった。
【0127】
眼瞼腫脹を、0(眼瞼の腫脹なし)〜3(重篤な眼瞼の腫脹)のスケールで主観的に評価した。図4に示すように、フルチカゾン0.001%および0.005%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、フルチカゾン0.01%よりも20分間にわたる眼瞼の腫脹の軽減において有効であった。
【0128】
鼻閉を、0(鬱血なし)〜4(重篤な鬱血)のスケールで主観的に評価した。図5に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、ビヒクルのみと比較して、30分間にわたる鼻閉の軽減での有効性はほぼ等しかった。
【0129】
眼の主要エンドポイント評価の結果のまとめを図6に示す。図6に示すように、フルチカゾン0.005%および0.01%による結膜発赤の軽減ならびにフルチカゾン0.001%による眼瞼の腫脹の軽減はそれぞれ統計的に有意であった(p<0.05)。
【0130】
眼の副次エンドポイント
毛様体発赤、上強膜発赤、結膜浮腫、およびなみだ眼を、訪問4Bで各被験体において評価した。
【0131】
毛様体発赤を、0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した。図7に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる毛様体発赤の軽減で有意に有効であった(各フルチカゾン濃度についてp<0.05)。
【0132】
上強膜発赤を、0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した。図8に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる上強膜発赤を軽減する。
【0133】
結膜浮腫を、0(なし)〜4(重篤)のスケールで評価した。図9に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、20分間にわたる結膜浮腫の軽減で有意に有効であった。
【0134】
なみだ眼も、0(なみだ眼なし)〜4(重篤ななみだ眼)のスケールで主観的に評価した。図10に示すように、フルチカゾン0.001%および0.05%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたるなみだ眼の軽減においてフルチカゾン0.01%よりも有効であった。
【0135】
眼の副次エンドポイント評価のまとめを図11に示す。図10に示すように、3つすべての濃度のフルチカゾンによる毛様体発赤の軽減、フルチカゾン0.005%による上強膜発赤の軽減、およびフルチカゾン0.05%によるなみだ眼の軽減は、それぞれ、統計的に有意であった(p<0.05)。
【0136】
鼻の副次エンドポイント
鼻漏、耳または口蓋の掻痒症、鼻の掻痒症を、各エンドポイントについて0(なし)〜4(重篤)のスケールを使用して訪問4Bで各被験体において評価した。
【0137】
図12および14に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる鼻漏および鼻の掻痒症のそれぞれの軽減において臨床的に有意な結果を有していた。図13に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、耳および口蓋の掻痒症の軽減に効果を有していた。
【0138】
総鼻スコアを、0〜16のスケールで評価した。図15に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ驚くべきことに、各被験体の眼に直接投与した場合に総鼻スコアに臨床的に有意に影響を及ぼした。評価した鼻エンドポイントのまとめを、図16および17に示す。
【0139】
安全性
眼圧、液滴の快適さ、および有害事象(視界不良、結膜出血、眼乾燥症、部位の痛みおよび/または刺激、ならびに頭痛など)を、各被験体について評価した。
【0140】
液滴の快適さを、訪問2および訪問3の間に0(非常に快適)〜10(非常に不快)のスケールで主観的に評価した。図18および19に示すように、フルチカゾン0.01は、フルチカゾン0.001%および0.005%と比較した場合およびビヒクルのみと比較した場合に、点眼の際に非常に不快であった。フルチカゾン0.001%および0.005%の快適さは、ビヒクルコントロールの快適さと類似していた。
【0141】
有害事象(視界不良、結膜出血、眼乾燥症、部位の痛みおよび/または刺激、ならびに頭痛など)を経験した被験体の全比率のまとめを図20に示す。
【0142】
ビヒクルのみと比較した眼圧(IOP)に及ぼす各濃度のフルチカゾンの影響を、図21に示す。
【0143】
結果は、フルチカゾン0.001%、0.005%、または0.01%のいずれかの1滴がアレルギー性結膜炎に関連する眼および鼻の症状の両方の防止に有効であったことを証明している。しかし、すべての主要エンドポイントおよび副次エンドポイントを考慮した場合、中等度の強度のフルチカゾン0.005%が眼および鼻の症状の両方の低減に最も有効であり、眼圧に有害作用を生じることなくフルチカゾン0.001%およびフルチカゾン0.01%よりも快適であることを示した。
【0144】
等価物
当業者は、日常的実験法しか使用せずに本明細書中に記載の本発明の特定の実施形態の多数の等価物を認識するか確認することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2009年6月5日に出願された米国仮特許出願第61/184,484号の利益を主張し、この出願の内容はその全体が本明細書において参照として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、フルチカゾンを単独か1つまたは複数のさらなる活性薬剤と組み合わせて含む組成物、ならびにアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の処置のためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
アレルギー性結膜炎(急性アレルギー症状(すなわち、季節性アレルギー)および遅発型炎症反応(すなわち、慢性、難治性、または持続性のアレルギー)の両方を呈する障害)およびアレルギー性鼻結膜炎を有効に処置するための局所用眼科医薬品が必要である。米国の成人アレルギー患者の46%(約7000万人)がアレルギー性結膜炎の急性および遅発型の容態の両方を罹患するのに対して、急性または遅発型のアレルギーのそれぞれのみを罹患するのはたった19%であると見積もられている。アレルギー患者の90%までがアレルギー性鼻結膜炎(眼および鼻の症状の組み合わせ)を生じ得ると見積もられる。アレルギー患者(20歳と40歳との間)の平均年齢は、労働人口の平均年齢および個体の生涯で最も生産性の高い期間と一致する。
【0004】
季節性および通年性アレルギー性結膜炎(眼アレルギー)の両方は、眼の痒み、充血眼、腫脹、およびなみだ眼によって特徴づけられる。アレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)は、鼻水、くしゃみ、鬱血、および類似の症状として現れる。医師はアレルギー性結膜炎とアレルギー性鼻結膜炎とを区別することが困難であり得る。何故なら、両アレルギー反応は同時に生じ得るか、同型の刺激によって誘発され得るからである。急性アレルギー症状とアレルギー性結膜炎の遅発型症状とを区別することがさらに困難である。何故なら、これらの各容態は任意の所与の個体において同時に持続し得るか、前後で変化し得るからである。アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の兆候および症状は、患者の生活の質(社会的相互作用、仕事および学校での生産性から看視作業(コンピュータでの作業または読書など)を行う能力に至るまで)に有意に影響を及ぼし得る。
【0005】
アレルギー性結膜炎の急性症状は、眼の痒み、発赤、および腫脹の臨床徴候および症状によって特徴づけられる。アレルギー性結膜炎の遅発型またはアレルギー性の炎症反応には発赤、眼瞼の腫脹、および流涙が含まれ、症例によっては、痒みおよび鼻内の顕著な鬱血が含まれる。急性アレルギー症状は、主に、アレルゲン(花粉、粉塵、鱗屑)によって刺激された場合にアレルギー性結膜炎の兆候および症状(痒み、発赤、腫脹、および流涙)を生じる多数の物質を放出する肥満細胞の活性化に原因する。ヒスタミンは放出される主なメディエーターであり、神経終末および血管上の受容体を刺激して痒みおよび発赤を生じる。2つのヒスタミン受容体が眼表面上で同定されている。神経終末上のH1受容体は痒みを生じ、血管上のH1およびH2受容体は、血管を拡張し、発赤を生じ、流動物を血管から周囲の組織に漏出させて腫脹を生じる。遅発型炎症反応は、炎症細胞の活性化によって媒介される。
【0006】
アレルギー性結膜炎と同様に、アレルギー性鼻結膜炎は、アレルゲン誘導性の肥満細胞媒介性応答である。反応は、大気中アレルゲンが眼および/または鼻内の肥満細胞表面に付着した抗体に結合した場合に誘発される。肥満細胞は、次いで、化学メディエーターを放出し、これは、アレルゲンに曝露された感作個体における即時型反応の主な原因となる。これらのメディエーターのうちのいくつか(ヒスタミンなど)は、血管および神経に直接影響を及ぼし、アレルギー疾患の兆候および症状を生じる。放出された他のメディエーターによって白血球が部位に流入し、それにより、重症例では症状、特に、鼻内の鬱血が持続する。
【0007】
アレルギー性結膜炎および鼻結膜炎はまた、他の外眼部の容態および疾患(眼乾燥症など)または汚染物質または他の原因による刺激と共存し得る。これにより、アレルゲンから眼表面を保護する働きをする涙液層を易感染性にする。
【0008】
現在利用可能な眼アレルギー処置には、眼表面からアレルゲンを洗い流し、且つ眼のバリア(例えば、人工涙液)として作用することができる液滴、ヒスタミンのヒスタミン受容体への結合を遮断する薬物(例えば、抗ヒスタミン薬)、ヒスタミンおよび他の物質の肥満細胞からの放出を遮断する薬物(例えば、肥満細胞安定剤)、複数の作用様式を有する薬物(例えば、抗ヒスタミン/肥満細胞安定剤)、および血管の能動的収縮によって発赤および腫脹を軽減することができる薬物(例えば、血管収縮薬)が含まれる。患者のための薬剤の妥当性の評価において考慮することができる基準には、作用開始時の有効性、作用の持続時間、眼アレルギーの各兆候および症状をいかに良く制御するか、および点眼した場合の液滴の快適さが含まれる。眼科用製品の快適さは、活性な薬剤成分自体ならびに製品を構成する処方物およびビヒクルの性質に依存する。例えば、経口抗ヒスタミン薬は、涙液産生の減少を誘導して眼表面を乾燥させ、眼が眼科用製品による刺激に影響されやすくなることが示されている。
【0009】
抗ヒスタミンまたは肥満細胞安定剤を含む現在利用可能な処置は、典型的には、急性アレルギー性結膜炎のみを低減し、遅発型炎症反応(すなわち、慢性、難治性、または持続性のアレルギー)の兆候および症状に取り組んでいない。
【0010】
現在利用可能なアレルギー性鼻結膜炎の処置には、点眼剤、鼻内噴霧、および経口剤の全身投与が含まれる。現在認可されている抗アレルギー点眼剤は眼アレルギーの治療に適応され、鼻内噴霧は鼻アレルギーを標的とする。薬剤の全身投与は、鼻および眼の症状の両方の治療に適用されるが、眼科標準に対して実施したいくつかの十分に管理された臨床試験では、抗ヒスタミン薬の全身投与が眼の兆候および症状の処置において点眼剤より劣っており(非特許文献1)、実際には眼アレルギーに対して臨床的に有効ではないことが示されており、客観的尺度によって眼上の涙液産生を50%減少させ、それによって眼球の乾燥が生じることが実際に示されている(非特許文献2)。さらなる研究は、点眼剤と鼻用ステロイドとの組み合わせが眼および鼻のアレルギーの兆候および症状の処置における薬剤の全身投与よりも有効であることが示されている(非特許文献3)。
【0011】
プロピオン酸フルチカゾン(S−(フルオロメチル)6α,9−ジフルオロ(difluro)−11β,17−ジヒドロキシ−16α−メチル(methy)−1−3−オキソアンドロスタ−1,4−ジエン−17β−カルボチオアート,17−プロピオナート)は、特許文献1(その全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の抗炎症性コルチコステロイドである。大用量のコルチコステロイド(プロピオン酸フルチカゾンなど)の急性および慢性使用によって重篤な副作用を引き起こし得ることが当該分野で公知である。かかる兆候および症状は一般に用量依存性であり、筋骨格への影響(骨粗鬆症、筋障害、骨の無菌性壊死が含まれる)、眼への影響(後嚢下白内障、眼圧上昇、および感染リスクの増加が含まれる)、胃腸管への影響(潰瘍、膵炎、嘔気、嘔吐が含まれる)、心血管への影響(高血圧症、アテローム性動脈硬化症)、中枢神経系への影響(偽脳腫瘍、精神医学的反応)、皮膚科学的影響(男性型多毛、皮下脂肪の再分布、創傷治癒の障害、皮膚の菲薄化)、および視床下部−下垂体−副腎軸の抑制が含まれ得る。さらに、大用量のプロピオン酸フルチカゾンの慢性使用によって副腎皮質機能亢進を発症し得ることが当該分野で公知である。
【0012】
したがって、アレルギー性結膜炎(すなわち、急性期、後期の炎症またはその両方)およびアレルギー性鼻結膜炎の処置のための眼投与のための有効且つ安定で、さらに快適且つ安全なフルチカゾン処方物を開発することが必要である。眼への直接投与のためのかかる処方物は、直接的な局所効果、より迅速な作用、および全身投与に関連する全身性の副作用の回避の故に全身性の経口処方物および鼻内噴霧よりも有利であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,676,929号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Spanglerら,Clin.Ther.25(8),2245−2267(2003)
【非特許文献2】Ouslerら,Ann Allergy Asthma Immunol.Nov;93(5):460−4(2004)
【非特許文献3】Lanierら Clin.Ther.24(7),1161−1174(2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明は、アレルギー性結膜炎および鼻結膜炎の急性および遅発型の両兆候の処置のための快適な局所用眼科処方物を提供する。この処方物は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の兆候および症状(特に、眼の痒み)および/または鼻の症状(例えば、痒み、鼻汁、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血)を低減するためにフルチカゾンを単独か1つまたは複数のさらなる活性薬剤と組み合わせて含む(すなわち、フルチカゾンのみの処方物またはフルチカゾン組み合わせ処方物)。驚いたことに、本発明のフルチカゾン処方物の1日1回の投与が、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の症状(特に、眼の痒み)および/または鼻の症状(例えば、痒み、鼻汁、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血)の鎮静に有効である。より驚いたことに、本発明のフルチカゾン処方物は、反復使用後に(例えば、本明細書中に記載の研究集団において14日後)、眼圧を上昇させない。そのようなものとして、本発明のフルチカゾン処方物は眼への使用に安全である。
【0016】
本発明の処方物を使用したフルチカゾンの眼投与は、薬物の鼻投与または全身投与に通常関連する負の全身副作用が低く、眼内の薬物の有効性が増加し得る。したがって、本発明は、点眼した場合に快適であり、且つ眼アレルギーの症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹など)および眼アレルギーに関連する鼻の症状(例えば、鼻づまり、鼻水)の鎮静に有効であるフルチカゾンの局所用眼科処方物を提供する。
【0017】
特定の実施形態では、本明細書中に記載の処方物は、直接点眼する場合に快適な眼科処方物中に眼科的使用に適切なフルチカゾンを唯一の活性薬剤として含む安定な処方物を提供する。本発明のフルチカゾンのみの処方物(すなわち、唯一の活性薬剤としてのフルチカゾン)は、驚いたことに、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎を処置するために典型的に使用される従来の抗ヒスタミンおよび/または肥満細胞安定剤よりも眼アレルギーの兆候および症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹など)および眼アレルギー/鼻結膜炎に関連する鼻の症状の鎮静により有効である。抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は、肥満細胞由来のすべてのアレルギー性および炎症促進性メディエーターを有効に遮断しない。抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は痒みを有効にマスキングすることができる一方で、これらは発赤、流涙、腫脹、および炎症に対する効果は最小である。いかなる理論にも拘束されることを意図しないが、フルチカゾンは、炎症性メディエーターの転写および産生を有効に停止させて抗炎症性メディエーターの産生を下方制御することができ、それにより、急性および遅発型のアレルギー性結膜炎の両方((すなわち、凝集疾患)の兆候および症状を処置することができる。
【0018】
1つの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、唯一の有効成分として0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度のフルチカゾンの安定な眼科処方物を含む。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは0.005%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは0.01%(w/v)の濃度で処方物中に存在し、さらに別の実施形態では、フルチカゾンは0.001%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。
【0019】
本発明はまた、1つまたは複数の有効成分(抗ヒスタミン(antihistimine)(セチリジン、アンタゾリン、アステミゾール、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、デスロラチジン、デクスブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボカバスチン、レボセチリジン、ロラチジン、メキタジン、ミゾラスチン、ノルケトチフェン、オロパタジン、オキサトミド、フェニダミン、フェニラミン、ピリラミン、テルフェニジン、およびトリプロリジンなど)、血管収縮薬(ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、またはテトラヒドゾリンなど)、またはその任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない)と組み合わせたフルチカゾンの眼科処方物を提供する。
【0020】
フルチカゾン組み合わせ処方物は、眼アレルギーの症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹など)、眼アレルギーに関連する鼻の症状、およびアレルギー性鼻結膜炎のさらなる鎮静で有効である。
【0021】
より具体的には、本発明のフルチカゾン組み合わせ処方物(例えば、制限されないが、フルチカゾンとセチリジンとの組み合わせ)は、単一の抗アレルギー性または他の活性薬剤のみの使用によって達成することができないアレルギー性結膜炎の急性および遅発型の両反応の包括的処置による利点を提供する。先に述べたように、抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は、肥満細胞由来のすべてのアレルギー性および炎症促進性のメディエーターを有効に遮断するわけではない。抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤は痒みを有効にマスキングすることができるが、これらは発赤、流涙、腫脹、および炎症に対する効果は最小である。しかし、抗ヒスタミンまたは肥満細胞安定剤を炎症性メディエーターの転写および産生を有効に停止させて抗炎症性メディエーターの産生を下方制御することができる別の活性薬剤(ステロイド(例えば、フルチカゾン)など)と組み合わせた場合、急性および遅発型のアレルギー性結膜炎((すなわち、凝集疾患)の兆候および症状が処置される。同様に、かかるフルチカゾン組み合わせ処方物により、これらの同一の理由で、単一の抗アレルギー剤または他の活性薬剤のみの使用によって達成することができない鼻結膜炎についての包括的処置の利点が得られる。
【0022】
1つの実施形態では、本発明のフルチカゾン組み合わせ処方物は、0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度のフルチカゾンの安定な眼科処方物を含む。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で組み合わせ処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは0.005%(w/v)の濃度で組み合わせ処方物中に存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは0.01%(w/v)の濃度で組み合わせ処方物中に存在する。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、代用涙液を含む。特定の実施形態では、代用涙液はヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.1%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。1つの好ましい実施形態では、HPMC濃度は、約0.1%〜約1.0%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(例えば、0.1〜0.2%、0.2〜0.3%、0.3〜0.4%、0.4〜0.5%、0.5〜0.6%、0.6〜0.7%、0.7〜0.8%、0.8〜0.9%、0.9〜1.0%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.30%、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0024】
別の特定の実施形態では、代用涙液はカルボキシメチルセルロース(CMC)である。いくつかの実施形態によれば、CMC濃度は約0.1%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、CMC濃度は約0.1%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。1つの好ましい実施形態では、CMC濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0025】
さらに別の特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、粘膜付着性の高分子ビヒクルを含む。本発明の方法または処方物での使用に適切な粘膜付着性ビヒクルの例には、1つまたは複数の高分子懸濁剤(デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、ゲルライト(登録商標)、セルロースポリマー、およびカルボキシ含有ポリマー系が含まれるが、これらに限定されない)を含む水性高分子懸濁液が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、高分子懸濁剤は、架橋カルボキシ含有ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含む。別の特定の実施形態では、高分子懸濁剤はポリエチレングリコール(PEG)を含む。本発明の局所用安定性眼科フルチカゾン処方物での使用に適切な架橋カルボキシ含有ポリマー系の例には、NoveonAA−1、Carbopol(登録商標)、および/またはDuraSite(登録商標)(InSite Vision)が含まれるが、これらに限定されない。
【0026】
任意選択的に、本発明の処方物は防腐剤を含む。特定の実施形態では、防腐剤は、塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(例えば、Polyquad(登録商標))もしくは安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))、または過ホウ酸ナトリウム、またはソルベートである。
【0027】
一定の実施形態では、本発明のフルチカゾンのみおよびフルチカゾンの組み合わせの処方物を、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)(Dibasic Sodium Phosphate, Anhydrous, USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%〜1.8%グリセリン(または前記範囲内の任意の特定の値)(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含むビヒクル中に処方する。
【0028】
1つの好ましい実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.005%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.8%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0029】
別の好ましい実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.01%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、本発明の眼科処方物は、約10〜約150センチポアズ(cpi)、好ましくは約15〜約120cpi、さらにより好ましくは約20〜約90cpi(または前記範囲内の任意の特定の値)の範囲の粘度を有する。好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物は、約15cpi〜約30cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約15cpi、約16cpi、約17cpi、約18cpi、約19cpi、約20cpi、約20cpi、約22cpi、約23cpi、約24cpi、約25cpi、約26cpi、約27cpi、約28cpi、約29cpi、約30cpi)の粘度を有する。別の好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物は、約70cpi〜約90cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約70cpi、約71cpi、約72cpi、約73cpi、約74cpi、約75cpi、約76cpi、約77cpi、約78cpi、約79cpi、約80cpi、約81cpi、約82cpi、約83cpi、約84cpi、約85cpi、約86cpi、約87cpi、約88cpi、約89cpi、または約90cpi)の粘度を有する。
【0031】
本発明はまた、アレルギー性結膜炎の処置方法であって、かかる処置を必要とする被験体において、かかる処置または防止を必要とする被験体の眼に本発明のフルチカゾン処方物(すなわち、単独または1つまたは複数の有効成分との組み合わせ)を直接投与することによる、方法を提供する。好ましくは、本発明の処方物を、1日1回(q.d.)投与する。一定の実施形態では、本発明の方法(すなわち、本発明の処方物の眼への直接投与)はまた、アレルギー性結膜炎に関連する鼻の症状の処置に有効である。本発明はまた、アレルギー性鼻結膜炎の症状の処置または防止方法であって、かかる処置または防止を必要とする被験体の眼に本発明のフルチカゾン処方物(すなわち、フルチカゾン単独またはさらなる活性薬剤(抗ヒスタミン(例えば、制限されないが、セチリジンまたはケトチフェン)または血管収縮薬(例えば、制限されないが、ナファゾリンまたはオキシメタゾリン)など)との組み合わせ)を直接投与することによる、方法を提供する。点眼薬形態の処置選択肢を提供することにより、本発明は、アレルギー性鼻結膜炎/鼻炎患者の生活の質を改善するであろう(例えば、Bergerら,Ann.Allergy Asthma Immunol.Oct 95(4),361−71(2005)を参照のこと)。
【0032】
本発明はまた、眼科的使用のために処方したフルチカゾンの薬学的組成物を含むキットおよびかかる使用のための説明書を提供する。本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】図1Aおよび1Bは、アレルギー性結膜炎モデルにおける眼アレルギーの眼および鼻の症状の軽減においてビヒクルと比較した場合のフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性試験のための研究デザイン(スクリーニングおよび評価)を示す。
【図1B】図1Aおよび1Bは、アレルギー性結膜炎モデルにおける眼アレルギーの眼および鼻の症状の軽減においてビヒクルと比較した場合のフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性試験のための研究デザイン(スクリーニングおよび評価)を示す。
【図2】図2は、経時的に0(痒み無し)〜4(重篤な痒み)のスケールで評価した眼の痒みの軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図3】図3は、経時的に0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した結膜発赤の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図4】図4は、経時的に0(腫脹なし)〜3(重篤な腫脹)のスケールで評価した眼瞼腫脹の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図5】図5は、経時的に0(鬱血なし)〜4(重篤な鬱血)のスケールで評価した鼻閉の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図6】図6は、図1〜5に示す結果をまとめた棒グラフである。
【図7】図7は、経時的に0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した毛様体発赤の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図8】図8は、経時的に0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した上強膜発赤の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図9】図9は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した結膜浮腫の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図10】図10は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価したなみだ眼の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図11】図11は、図7〜10に示す結果をまとめた棒グラフである。
【図12】図12は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した鼻漏の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図13】図13は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した耳または口蓋の掻痒症の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図14】図14は、経時的に0(なし)〜4(重症)のスケールで評価した鼻の掻痒症の軽減においてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図15】図15は、経時的に0(鼻の症状なし)〜16(複数の鼻の症状)のスケールで評価した総鼻スコアにおいてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図16】図16は、図12〜15に示す結果をまとめた棒グラフである。
【図17】図17は、PNIFにおいてビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の有効性を比較した線グラフである。
【図18】図18は、経時的に0(非常に快適)〜10(非常に不快)のスケールで評価したビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の液滴の快適さを比較した線グラフである。
【図19】図19は、経時的に0(非常に快適)〜10(非常に不快)のスケールで評価したビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の液滴の快適さを比較した線グラフである。
【図20】図20は、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の点眼に関連する有害事象の発生をまとめたチャートである。
【図21】図21は、ビヒクルと比較したフルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%の眼圧に及ぼす影響をまとめた棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本発明は、その一部が、フルチカゾンのみの安定な局所用眼科処方物(すなわち、処方物中の唯一の活性薬剤としてのフルチカゾン)が眼に直接適用された場合に快適であり、且つアレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の急性および遅発型の反応の両方を処置するのに有効であるという驚異的且つ予想不可能な(upredicatable)発見に基づく。なおさらに予想外の所見は、最も有効な用量が試験した最高濃度でなかったということであった。好ましくは、フルチカゾンは、プロピオン酸フルチカゾンまたはジプロピオン酸フルチカゾンの形態である。さらに、本発明の安定な局所用フルチカゾン処方物は反復使用後に眼圧を上昇させない。したがって、短期眼投与で安全である。
【0035】
本発明はまた、1つまたは複数のさらなる有効成分(抗ヒスタミン(例えば、制限されないが、セチリジンまたはケトチフェン)または血管収縮薬(例えば、制限されないが、オキシメタゾリンまたはナファゾリン)など)と組み合わせたフルチカゾンの眼科処方物を特徴とする。かかるフルチカゾン組み合わせ処方物は、アレルギー性結膜炎の急性および遅発型の兆候および症状(眼の痒み、発赤、結膜浮腫、眼瞼の腫脹、および鼻の症状など)のさらなる鎮静で有効である。かかる処方物はまた、鼻結膜炎の兆候および症状(鼻水、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血および発赤、なみだ眼および/または眼の痒みなど)の鎮静で有効である。
【0036】
本発明の眼科処方物の快適さ、安全性、有効性、溶解性、および安定性は、当業者に予想できなかったかもしれない。公知のステロイドの作用機構に基づいて、当業者は、最高用量のステロイドがアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻炎の兆候および症状の軽減に最高の有効性を示すと予想するであろう。驚いたことに、本明細書中に示したデータは、フルチカゾンの範囲中央値(0.005%)がより低い用量のフルチカゾン(0.001%)およびより高い用量のフルチカゾン(0.01%)の両方よりもアレルギー性結膜炎に関連する眼および鼻の症状の軽減において一貫してより高い有効性を示したことを証明している(実施例1を参照のこと)。さらにより驚いたことに、フルチカゾンの範囲中央値(0.005%)は、より低い用量(0.001%)および最高用量(0.01%)よりも快適であり、眼圧に有害作用を及ぼさなかった。データは、眼において快適且つ安全であり、アレルギー性結膜炎および鼻炎に関連する眼および鼻の症状の両方の軽減で高度に有効である至適フルチカゾン濃度が存在することを予想外に証明している。かかる至適濃度は、日常的な至適化によって到達できなかった。
【0037】
いくつかの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、1つまたは複数の代用涙液成分を含む。フルチカゾン成分はアレルギー性結膜炎の症状を低減し、1つまたは複数の代用涙液成分は、涙液層の増強(涙液層破壊時間の増加によって証明される)によって眼表面を保護し、眼表面上の滞留時間を増強するように作用することができ、したがって、活性の持続時間が増加し得る。有効量のかかる処方物を使用して、急性および/または遅発型アレルギー性結膜炎および/または一般的な眼の刺激に関連する兆候および症状を処置および/または防止することができ、これを使用して前述の障害のための薬物を含む場合に別の眼障害を処置することもできる。有効量のかかる処方物を使用して、アレルギー性鼻結膜炎の兆候および症状を処置および/または防止することもできる。かかる処方物は、点眼する場合の快適な眼科処方物を提供し、かかる他の薬剤と組み合わせないフルチカゾンの処方物を超える増強された有効性および/または作用持続時間を有する。
【0038】
フルチカゾン/代用涙液処方物の優れた有効性は、とりわけ、この処方物中の成分の組み合わせの相乗効果に寄与する。フルチカゾンと代用涙液との組み合わせが相乗的に作用して、眼表面上のフルチカゾンの滞留時間がより長くなり、それにより、作用の持続時間および有効性が増大し、涙液層の完全性が延長され、それにより、眼表面が保護される(例えば、涙液層破壊時間および/または眼保護指数の増加による)。そのようなものとして、本発明の組成物は点眼の際に快適であり、急性または慢性のアレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の低減のために使用することができ、特に断続的および長期の使用の両方に特に適切である。
【0039】
処方物
好ましくは、本発明の眼科組成物を、溶液、懸濁液、軟膏、乳濁液、ゲル、および局所投与のための他の投薬形態(点眼薬、眼軟膏、および眼用ゲルなど)として処方する。眼局所投与のために、眼科組成物の投薬形態には、溶液、軟膏、眼挿入剤、ゲル、乳濁液、懸濁液、および固体点眼薬などが含まれ、これらから適切に選択することができる。さらに、改変(徐放性、安定性、および易吸収性など)を、かかる調製物にさらに適用することができる。これらの投薬形態を、例えば、微生物分離フィルターによる濾過または乾熱滅菌などによって滅菌する。
【0040】
処方の容易さおよび患者が罹患眼への1〜2滴の液滴の点眼によってかかる組成物を容易に投与する能力に基づいて、水溶液が一般に好ましい。しかし、組成物はまた、懸濁液、粘性または半変性ゲル、または固体もしくは半固体組成物の他の型であり得る。1つの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は水性処方物である。本発明の水性処方物は、典型的には50重量%超、好ましくは75重量%超、もっと好ましくは90重量%超の水である。別の実施形態では、フルチカゾン処方物は凍結乾燥処方物である。
【0041】
特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物を、懸濁液として処方する。かかる処方物の粒径は、一般に、せいぜい30umほどである。当業者は、至適粒径をミル粉砕(ジェット、ボール、または他の機械的サイジング)によるか、貧溶媒添加晶析などの技術を使用して達成することができると認識するであろう。さらに、本発明の懸濁液処方物は、粒子の凝塊形成を防止するための懸濁剤および分散剤を含むことができる。例えば、制限されないが、本発明の懸濁液処方物は、プロピオン酸フルチカゾン、pH7.0を得るための一塩基と二塩基のリン酸塩との組み合わせを含むリン酸バッファー系、プロピレングリコール、ポリソルベート80、ヒプロメロース、エデト酸二ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムを含む。
【0042】
活性薬剤
好ましい実施形態によれば、治療有効量のフルチカゾンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルを含む眼科組成物を提供する。本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物をその酸および塩基の塩によって修飾した開示の化合物の誘導体をいう。薬学的に許容可能な塩の例には、塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩(アミンなど);酸性残基のアルカリ塩または有機塩(カルボン酸など)が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成された親化合物の従来の非毒性の塩または第四級アンモニウム塩が含まれる。例えば、かかる従来の非毒性の塩には、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、および硝酸など)から誘導した塩および有機酸(酢酸、フロイン酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、およびイセチオン酸など)から調製した塩が含まれる。
【0043】
プロピオン酸フルチカゾンは好ましい薬学的に許容可能な塩である。プロピオン酸フルチカゾン(S−フルオロメチル−6−α−9−ジフルオロ−11−β−ヒドロキシ−16−α−メチル−3−オキソアンドロスタ−l,4−ジエン−17−β−カルボチオアート,17−プロピオナートとしても公知)は、化学式C25H31F3O5Sを有する合成トリフッ化コルチコステロイドである。これは、白色からオフホワイトの粉末であり、分子量は500.6g/molである。プロピオン酸フルチカゾンは、実質的に水不溶性(0.14μg/ml)であり、ジメチルスルホキシドおよびジメチル−ホルムアミドに溶けやすく、メタノールおよび95%エタノールにわずかに溶解する。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、フルチカゾンは、本発明の処方物中の主な活性薬剤である。いくつかの実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、唯一の活性薬剤としてフルチカゾンを含む(または本質的にフルチカゾンからなる)。いくつかの実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、唯一の抗アレルギー剤としてフルチカゾンを含む(または本質的にフルチカゾンからなる)。好ましくは、フルチカゾンは、プロピオン酸フルチカゾンまたはジプロピオン酸フルチカゾンの形態である。本発明の一定の実施形態では、フルチカゾンを、0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方する。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは、0.005%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは、0.01%(w/v)の濃度で処方物中に存在する。
【0045】
しかし、いくつかの実施形態によれば、フルチカゾンを、本明細書中に記載の他の活性薬剤を使用して処方することができる。例えば、フルチカゾンを、1つまたは複数のさらなる抗アレルギー剤を使用して処方することができる。用語「抗アレルギー剤」は、眼アレルギーを処置するか、眼アレルギーの症状を軽減する分子または組成物をいう。用語「眼アレルギー」は、眼の任意のアレルギー疾患(例えば、季節性/通年性眼アレルギー、春季角結膜炎、巨大乳頭性結膜炎、通年性眼アレルギー、およびアトピー性角結膜炎)をいう。眼アレルギーの兆候および症状には、結膜浮腫、眼の痒み、流涙、発赤および腫脹、ならびに眼アレルギーに関連する鼻の症状(例えば、鼻づまり、鼻水)が含まれる。抗アレルギー剤の制限されない例には、「抗ヒスタミン薬」またはヒスタミンのヒスタミン受容体への結合を遮断する薬物、「肥満細胞安定剤」またはヒスタミンおよび肥満細胞由来の他の物質の放出を遮断する薬物、「複数の作用様式を有する薬物」または複数の作用様式を有する抗アレルギー剤である薬物(例えば、抗ヒスタミン薬および肥満細胞安定剤である薬物、抗ヒスタミン、肥満細胞安定化活性、および抗炎症活性を有する薬物など)、ステロイド、および非ステロイド性抗炎症薬(すなわち「NSAID」)が含まれる。
【0046】
一定の実施形態では、フルチカゾンを、肥満細胞安定剤(ネドクロミル、ヨードキサミド、クロモリン、またはクロモリンナトリウムなど)、非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)(ジクロフェナックまたはケトロラックトロメタミン、ブロムフェナク、またはネパフェナクなど)、血管収縮薬(ナファゾリン、アントラジン、テトラヒドゾリン、またはオキシメタゾリンなど)、抗ヒスタミン(antihistimine)(アンタゾリン、アステミゾール、アゼラスチン、ベポタスチン、ビラスチン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、デスロラチジン、デクスブロムフェニラミン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、レボカバスチン、レボセチリジン、ロラチジン、メキタジン、ミゾラスチン、ノルケトチフェン、オロパタジン、オキサトミド、フェニダミン、フェニラミン、ピリラミン、テルフェニジン、およびトリプロリジンなど)、またはαアドレナリンアゴニスト(エピネフリン、フェノキサゾリン、インダナゾリン、ナファゾリン、オキセドリン、フェニレフリン、テファゾリン、テトリゾリン、トラマゾリン、チマゾリン、オキシメタゾリン、またはキシロメタゾリンなど)から選択される1つまたは複数のさらなる活性薬剤を使用して処方する。
【0047】
賦形剤
いくつかの実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含む。用語「賦形剤」は、本明細書中で使用する場合、処方物の活性薬剤と組み合わせて使用される生物学的に不活性な物質を広くいう。賦形剤を、例えば、溶解補助剤、安定剤、界面活性剤、粘滑薬、粘性剤、希釈剤、不活性キャリア、防腐剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤、香味物質、または着色剤として使用することができる。好ましくは、少なくとも1つの賦形剤を、処方物に対して1つまたは複数の有利な物理的性質(活性薬剤の安定性および/または溶解性の増加など)が提供されるように選択する。「薬学的に許容可能な」賦形剤は、動物における使用、好ましくはヒトにおける使用について州または連邦の規制当局によって承認されているか、動物における使用、好ましくはヒトにおける使用について米国薬局方(Pharmacopia)、欧州薬局方(Pharmacopia)、または別の一般に認識されている薬局方(pharmacopia)中に列挙されている賦形剤である。
【0048】
本発明の処方物中で使用することができるキャリアの例には、水、水と水混和性溶媒(C1〜C7−アルカノールなど)との混合物、植物油、または鉱物油(0.5〜5%非毒性水溶性ポリマーを含む)、天然物(ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、トラガカント、カラヤゴム、キサンタンガム、カラゲニン、寒天、およびアカシア、デンプン誘導体(酢酸デンプンおよびヒドロキシプロピルデンプンなど)など)、また、他の合成生成物(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキシド、好ましくは架橋ポリアクリル酸(中性Carbopolなど)、またはこれらのポリマーの混合物など)が含まれる。キャリアの濃度は、典型的には、有効成分濃度の1〜100000倍である。
【0049】
賦形剤のさらなる例には、一定の不活性タンパク質(アルブミンなど)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど)、アミノ酸(アスパラギン酸(あるいは、アスパラギン酸塩ともいうことができる)、グルタミン酸(あるいは、グルタミン酸塩ともいうことができる)、リジン、アルギニン、グリシン、およびヒスチジンなど)、脂肪酸およびリン脂質(スルホン酸アルキルおよびカプリル酸塩など)、界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリソルベートなど)、非イオン性界面活性剤(ツウィーン(登録商標)、プルロニックス(登録商標)、またはポリエチレングリコール(PEG)200、300、400、または600など)、カーボワックス1000、1500、4000、6000、および10000、炭水化物(グルコース、スクロース、マンノース、マルトース、トレハロース、およびデキストリン(シクロデキストリンが含まれる)など)、ポリオール(マンニトールおよびソルビトールなど)、キレート剤(EDTAなど)、塩形成対イオン(ナトリウムなど)が含まれる。
【0050】
特定の実施形態では、キャリアは粘膜付着性の高分子ビヒクルである。本発明の方法または処方物での使用に適切な粘膜付着性ビヒクルの例には、1つまたは複数の高分子懸濁剤(デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、ゲルライト(登録商標)、セルロースポリマー、およびカルボキシ含有ポリマー系が含まれるが、これらに限定されない)を含む水性高分子懸濁液が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、高分子懸濁剤は、架橋カルボキシ含有ポリマー(例えば、ポリカルボフィル)を含む。別の特定の実施形態では、高分子懸濁剤はポリエチレングリコール(PEG)を含む。本発明の安定な局所用眼科フルチカゾン処方物での使用に適切な架橋カルボキシ含有ポリマー系の例には、NoveonAA−1、Carbopol(登録商標)、および/またはDuraSite(登録商標)(InSite Vision)が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
他の特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、以下から選択される1つまたは複数の賦形剤を含む:代用涙液、張度増強剤、防腐剤、可溶化剤、粘性増強剤、粘滑薬、乳化剤、湿潤薬、金属イオン封鎖剤、および充填剤。賦形剤の添加量および型は、処方物の特定の要件に従い、一般に、約0.0001重量%〜90重量%の範囲である。
【0052】
好ましい実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、粘性増強剤または粘性増強剤の組み合わせ、等張化剤または等張化剤の組み合わせ、およびバッファーまたはバッファーの組み合わせを含む。
【0053】
好ましい実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、粘滑薬または緩和薬の組み合わせ、等張化剤または等張化剤の組み合わせ、およびバッファーまたはバッファーの組み合わせを含む。
【0054】
好ましい実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、粘滑薬または緩和薬の組み合わせを含む。
【0055】
代用涙液
いくつかの実施形態によれば、フルチカゾン処方物は、人工涙液代用物を含むことができる。用語「代用涙液」は、潤滑し、「湿らせ」、完全な内因性の涙に近づけ、天然の涙の構築を補助し、そうでなければ、眼乾燥症の兆候または症状および眼投与の際の容態を一過性に低減する分子または組成物をいう。種々の代用涙液が当該分野で公知であり、以下が含まれるが、これらに限定されない:単量体ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールなど)、高分子ポリオール(ポリエチレングリコールなど)、セルロースエステル(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびヒドロキシプロピルセルロースなど)、デキストラン(デキストラン70など)、水溶性タンパク質(ゼラチンなど)、ビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポビドンなど)、およびカルボマー(カルボマー934P、カルボマー941、カルボマー940、およびカルボマー974Pなど)。多数のかかる代用涙液は市販されており、セルロースエステル(Bion Tears(登録商標)、Celluvisc(登録商標)、Genteal(登録商標)、OccuCoat(登録商標)、Refresh(登録商標)、Systane(登録商標)、Teargen II(登録商標)、Tears Naturale(登録商標)、Tears Natural II(登録商標)、Tears Naturale Free(登録商標)、およびTheraTears(登録商標)など)およびポリビニルアルコール(Akwa Tears(登録商標)、HypoTears(登録商標)、Moisture Eyes(登録商標)、Murine Lubricating(登録商標)、およびVisine Tears(登録商標)、Soothe(登録商標)など)が含まれるが、これらに限定されない。代用涙液はまた、パラフィン(市販のLacri−Lube@軟膏など)から構成され得る。代用涙液として使用することができる他の市販の軟膏には、Lubrifresh PM(登録商標)、Moisture EyesPM(登録商標)、およびRefresh PM(登録商標)が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の1つの好ましい実施形態では、代用涙液はヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)を含む。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.1%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.5%〜約1.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.1%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0.6%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。1つの好ましい実施形態では、HPMC濃度は、約0.1%〜約1.0%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、0.1〜0.2%、0.2〜0.3%、0.3〜0.4%、0.4〜0.5%、0.5〜0.6%、0.6〜0.7%、0.7〜0.8%、0.8〜0.9%、0.9〜1.0%、約0.2%、約0.21%、約0.22%、約0.23%、約0.24%、約0.25%、約0.26%、約0.27%、約0.28%、約0.29%、約0.30%、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0057】
例えば、制限されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む代用涙液は、GenTeal(登録商標)潤滑点眼薬である。GenTeal(登録商標)(CibaVision−Novartis)はヒドロキシプロピルメチルセルロース3mg/gを含む無菌の潤滑点眼薬であり、過ホウ酸ナトリウムを使用して保存する。HPMCベースの涙液の他の例を提供する。
【0058】
別の好ましい実施形態では、代用涙液はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。例えば、制限されないが、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む代用涙液はRefresh(登録商標)涙液である。Refresh(登録商標)涙液は、通常の涙液に類似の潤滑処方物であり、使用した場合に最終的に天然の涙液の成分に変化する穏やかな非感作の防腐剤(安定化オキシクロロ複合体(Purite(商標)))を含む。
【0059】
好ましい実施形態では、代用涙液またはその1つまたは複数の成分は、かすみ眼、眼瞼の固化などを最小にしながら涙液層の支持有効性を最適にする範囲の粘性を有する水溶液である。好ましくは、代用涙液またはその1つまたは複数の成分の粘性は、約10〜約150センチポアズ(cpi)、好ましくは約15〜約120cpi、さらにより好ましくは約20〜約90cpiの範囲(または前記範囲内の任意の特定の値)である。好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物の粘性は、約15cpi〜約30cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約15cpi、約16cpi、約17cpi、約18cpi、約19cpi、約20cpi、約20cpi、約22cpi、約23cpi、約24cpi、約25cpi、約26cpi、約27cpi、約28cpi、約29cpi、約30cpi)である。特定の実施形態では、代用涙液またはその1つまたは複数の成分の粘性は約20cpiである。別の好ましい実施形態によれば、本発明の眼科処方物の粘性は、約70cpi〜約90cpiの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約70cpi、約71cpi、約72cpi、約73cpi、約74cpi、約75cpi、約76cpi、約77cpi、約78cpi、約79cpi、約80cpi、約81cpi、約82cpi、約83cpi、約84cpi、約85cpi、約86cpi、約87cpi、約88cpi、約89cpi、または約90cpi)である。
【0060】
粘性を、CP40または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ22.50+/−およそ10(1/秒)のBrookfield ConeおよびPlate粘度計モデルVDV−III Ultra+またはSC4−18または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ26+/−およそ10(1/秒)のBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、20℃+/−1℃で測定することができる。あるいは、粘性を、CP40または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ22.50+/−およそ10(1/秒)のBrookfield ConeおよびPlate粘度計モデルVDV−III Ultra+またはSC4−18または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ26+/−およそ10(1/秒)のBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、25℃+/−1℃で測定することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、代用涙液またはその1つまたは複数の成分を、適切な塩(例えば、リン酸塩)を用いてpH5.0〜9.0、好ましくはpH5.5〜7.5、より好ましくはpH6.0〜7.0(または前記範囲内の任意の特定の値)に緩衝化する。いくつかの実施形態では、代用涙液は、1つまたは複数の成分(グリセロール、プロピレングリセロール、グリシン、ホウ酸ナトリウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛が含まれるが、これらに限定されない)をさらに含む。
【0062】
塩、バッファー、および防腐剤
本発明の処方物はまた、薬学的に許容可能な塩、緩衝剤,または防腐剤を含むことができる。かかる塩の例には、以下の酸から調製された塩が含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸、ギ酸、マロン酸、およびコハク酸など。かかる塩を、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩など)として調製することもできる。緩衝剤の例には、リン酸、クエン酸、酢酸、および2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)が含まれる。
【0063】
本発明のフルチカゾン処方物は、バッファー系を含むことができる。本出願で使用する場合、用語「バッファー」または「バッファー系」は、通常は少なくとも1つの他の化合物と組み合わせて緩衝化能力(すなわち、元のpHの変化が比較的小さいか全く変化させずに酸または塩基(アルカリ)のいずれかを範囲内で中和する能力)を示す緩衝化系の溶液が得られる化合物を意味する。いくつかの実施形態によれば、緩衝化成分は、0.05%〜2.5%(w/v)または0.1%〜1.5%(w/v)存在する。
【0064】
好ましいバッファーには、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、カルシウムバッファー、ならびにその組み合わせおよび混合物が含まれる。ホウ酸バッファーには、例えば、ホウ酸およびその塩(例えば、ホウ酸ナトリウムまたはホウ酸カリウム)が含まれる。ホウ酸バッファーには、溶液中にホウ酸またはその塩を生成する化合物(四ホウ酸カリウムまたはメタホウ酸カリウムなど)も含まれる。
【0065】
リン酸バッファー系には、好ましくは、1つまたは複数の一塩基性リン酸および二塩基性リン酸などが含まれる。特に有用なリン酸バッファーは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のリン酸塩から選択されるリン酸バッファーである。適切なリン酸バッファーの例には、1つまたは複数の二塩基性リン酸ナトリウム(Na2HPO4)、一塩基性リン酸ナトリウム(NaH2PO4)、および一塩基性リン酸カリウム(KH2PO4)が含まれる。リン酸バッファー成分を、頻繁に、リン酸イオンとして計算して0.01%〜0.5%(w/v)の量で使用する。
【0066】
好ましいバッファー系は、ホウ酸/ホウ酸塩、一塩基性および/または二塩基性リン酸塩/リン酸、またはホウ酸/リン酸バッファー系の組み合わせに基づく。例えば、ホウ酸/リン酸バッファー系の組み合わせを、ホウ酸ナトリウムとリン酸との混合物またはホウ酸ナトリウムと一塩基性リン酸塩との組み合わせから処方することができる。
【0067】
ホウ酸/リン酸バッファー系の組み合わせでは、溶液は、約0.05〜2.5%(w/v)のリン酸またはその塩および0.1〜5.0%(w/v)のホウ酸またはその塩を含む。リン酸バッファーを、(全部で)0.004〜0.2M(モル濃度)、好ましくは0.04〜0.1Mの濃度で使用する。ホウ酸バッファー(全部で)を、0.02〜0.8M、好ましくは0.07〜0.2Mの濃度で使用する。
【0068】
他の公知のバッファー化合物を、任意選択的に、レンズケア組成物に任意選択的に添加することができる(例えば、クエン酸塩、重炭酸ナトリウム、およびTRISなど)。溶液中の他の成分はまた、他の機能を有する一方で、バッファーの能力に影響を及ぼし得る。例えば、EDTA(しばしば錯化剤として使用される)は、溶液のバッファー能力に注目すべき影響を及ぼし得る。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、水性点眼剤のpHは生理学的pHまたはその付近である。好ましくは、水性点眼剤のpHは、約5.5〜約8.0または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、水性点眼剤のpHは、約6.5〜7.5または前記範囲内の任意の特定の値(例えば、6.5.、6.6.、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5)である。いくつかの実施形態によれば、水性点眼剤のpHは約7である。当業者は、処方物中に含まれる有効成分の安定性に応じてより最適なpHに調整することができることを認識しているであろう。いくつかの実施形態によれば、pHを、塩基(例えば、1N水酸化ナトリウム)または酸(例えば、1N塩酸)を使用して調整する。
【0070】
好ましくは生理学的pHへのpHの調整のために、バッファーは特に有用であり得る。本発明の溶液のpHを、5.5〜8.0、より好ましくは約6.0〜7.5、より好ましくは約6.5〜7.0の範囲内(または前記範囲内の任意の特定の値)に維持すべきである。適切なバッファー(ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、TRIS、および種々の混合したリン酸バッファー(Na2HPO4、NaH2PO4、およびKH2PO4の組み合わせが含まれる)、ならびにその混合物など)を添加することができる。ホウ酸バッファーが好ましい。一般に、バッファーを、約0.05〜2.5重量%、好ましくは0.1〜1.5%の範囲の量で使用するであろう。
【0071】
好ましい実施形態によれば、本発明の処方物は、防腐剤を含まない。一定の実施形態では、眼科処方物は、防腐剤をさらに含む。防腐剤を、典型的には、第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゾキソニウムなど)から選択することができる。塩化ベンザルコニウムは、より詳細にはN−ベンジル−N−(C8〜C18アルキル)−N,N−ジメチル塩化アンモニウムと記載される。防腐剤のさらなる例には、抗酸化剤(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、レチニルパルミタート、およびセレンなど)、アミノ酸(システインおよびメチオニン)、クエン酸およびクエン酸ナトリウム、および合成防腐剤(チロメサールおよびアルキルパラベン(例えば、メチルパラベンおよびプロピルパラベンが含まれる)など)が含まれる。他の防腐剤には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノール、m−クレゾール、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀またはホウ酸フェニル水銀、過ホウ酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム、アルコール(クロロブタノール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、またはフェニルエタノールなど)、グアニジン誘導体(クロロヘキシジンまたはポリヘキサメチレンビグアニドなど)、過ホウ酸ナトリウム、Germal(登録商標)II、ソルビン酸および安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))が含まれる。好ましい防腐剤は、第四級アンモニウム化合物、特に、塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(Polyquad(米国特許第4,407,791を参照のこと)など)、アルキル−水銀塩、パラベンおよび安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))である。必要に応じて、確実に細菌および真菌に原因する使用中の二次的汚染から保護するために十分な量の防腐剤を眼科組成物に添加する。
【0072】
特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、以下から選択される防腐剤を含む:塩化ベンザルコニウム、0.001%〜0.05%、塩化ベンゼトニウム(0.02%まで)、ソルビン酸(0.01%〜0.5%)、ポリヘキサメチレンビグアニド(0.1ppm〜300ppm)、ポリクオタニウム−1(Omamer M)−0.1ppm〜200ppm、次亜塩素酸塩化合物、過塩素酸塩化合物、または亜塩素酸塩化合物(500ppm以下、好ましくは10ppmと200ppmとの間)、安定化過酸化水素溶液(適切な安定剤と共に0.0001〜0.1重量%の過酸化水素が得られる過酸化水素供給源)、p−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステルおよびその混合物、好ましくはメチルパラベンおよびプロピルパラベン(0.01%〜0.5%)、クロルヘキシジン(0.005%〜0.01%)、クロロブタノール(0.5%まで)、および安定化オキシクロロ複合体(Purite(登録商標))(0.001%〜0.5%)。
【0073】
別の実施形態では、本発明の眼科処方物は防腐剤を含まない。かかる処方物は、コンタクトレンズを装着する患者またはいくつかの局所用点眼薬を使用する患者、および/または防腐剤への曝露の制限がより望ましいかもしれない既に易感染性の眼表面(例えば、眼乾燥症)を有する患者に有用であろう。
【0074】
粘性増強剤および緩和薬
一定の実施形態では、粘性増強剤を本発明のフルチカゾン処方物に添加することができる。かかる薬剤の例には、ポリサッカリド(ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの種々のポリマーなど)、ビニルポリマー、およびアクリル酸ポリマーが含まれる。
【0075】
種々の粘性増強剤が当該分野で公知であり、ポリオール(グリセロール、グリセリン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリソルベート80、プロピレングリコール、およびエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポビドン、およびポリビニルピロリドンなど)、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースおよびHPMCとしても公知)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびメチルセルロースなど)、デキストラン(デキストラン70など)、水溶性タンパク質(ゼラチンなど)、カルボマー(カルボマー934P、カルボマー941,カルボマー940、およびカルボマー974Pなど)、ゴム(HP−グアーなど)、またはその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。他の化合物を、キャリアの粘性を増大させるために本発明の処方物に添加することもできる。粘性増強剤の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:ポリサッカリド(ヒアルロン酸およびその塩、コンドロイチン硫酸およびその塩、デキストラン、セルロースファミリーの種々のポリマーなど)、ビニルポリマー、およびアクリル酸ポリマー。上記薬剤の組み合わせおよび混合物も適切である。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.5%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.5%〜約1.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.5%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.6%〜約1%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、粘性増強剤または薬剤の組み合わせの濃度は、約0.7%〜約0.9%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値(すなわち、約0.70%、約0.71%、約0.72%、約0.73%、約0.74%、約0.75%、約0.76%、約0.77%、約0.78%、約0.79%、約0.80%、約0.81%、約0.82%、約0.83%、約0.84%、約0.85%、約0.86%、約0.87%、約0.88%、約0.89%、または約0.90%)である。
【0077】
一定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、眼科緩和薬および/または以下の1つまたは複数から選択される粘性増強ポリマーを含む:セルロース誘導体(カルボキシメチル(methy)セルロース(0.01〜5%)、ヒドロキシエチルセルロース(0.01%〜5%)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒプロメロース(0.01%〜5%)、およびメチルセルロース(celluose)(0.02%〜5%)など)、デキストラン40/70(0.01%〜1%)、ゼラチン(0.01%〜0.1%)、ポリオール(グリセリン)(0.01%〜5%)、ポリエチレングリコール300(0.02%〜5%)、ポリエチレングリコール400(0.02%〜5%)、ポリソルベート80(0.02%〜3%)、プロピレングリコール(0.02%〜3%)、ポリビニルアルコール(0.02%〜5%)、およびポビドン(0.02%〜3%)など)、ヒアルロン酸(0.01%〜2%)、およびコンドロイチン硫酸(0.01%〜2%)。
【0078】
本発明の1つの好ましい実施形態では、粘性増強成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロースまたはHPMC)を含む。HPMCは、所望の粘性レベルおよび粘滑活性が得られるように機能する。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0%〜約2%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0%〜約1.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。いくつかの実施形態によれば、HPMC濃度は、約0%〜約0.5%w/vの範囲または前記範囲内の任意の特定の値である。
【0079】
別の好ましい実施形態では、粘性増強成分はカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む。
【0080】
本発明の眼科処方物の粘性を、当該分野で公知の標準的方法(粘度計またはレオメーターの使用など)に従って測定することができる。当業者は、温度およびずり速度などの要因が粘性測定に影響を及ぼし得ることを認識するであろう。特定の実施形態では、本発明の粘性眼科処方物の粘性を、CP40または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ22.50+/−およそ10(1/秒)のBrookfield ConeおよびPlate粘度計モデルVDV−III Ultra+またはSC4−18または等価なスピンドルを備えたずり速度およそ26+/−およそ10(1/秒))のBrookfield粘度計モデルLVDV−Eを使用して、20℃+/−1℃で測定する。
【0081】
張度増強剤
張度を、必要に応じて、典型的には張度増強剤によって調整する。かかる薬剤は、例えば、イオン型および/または非イオン型の薬剤であり得る。イオン性張度増強剤の例は、アルカリ金属ハライドまたはアルカリ土類金属ハライド(例えば、CaCl2、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBrまたはNaClなど)、Na2SO4、またはホウ酸である。非イオン性張度増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、またはデキストロースである。本発明の水溶液を、典型的には、等張化剤を使用して、0.9%塩化ナトリウム溶液または2.5%グリセロール溶液に等価な正常な涙液の浸透圧に近づけるように調整する。約200〜1000mOsm/kgの重量オスモル濃度が好ましく、200〜500mOsm/kgまたは前記範囲内の任意の特定の値(例えば、200mOsm/kg、210mOsm/kg、220mOsm/kg、230mOsm/kg、240mOsm/kg、250mOsm/kg、260mOsm/kg、270mOsm/kg、280mOsm/kg、290mOsm/kg、300mOsm/kg、310mOsm/kg、320mOsm/kg、330mOsm/kg、340mOsm/kg、350mOsm/kg、360mOsm/kg、370mOsm/kg、380mOsm/kg、390mOsm/kg、または400mOsm/kg)がより好ましい。特定の実施形態では、本発明の眼科処方物を、等張化剤を使用して、約240〜360mOsm/kgの範囲(例えば、300mOsm/kg)の重量オスモル濃度に調整する。
【0082】
本発明のフルチカゾン処方物は、等張化剤または等張化剤の組み合わせをさらに含むことができる。いくつかの実施形態によれば、本発明のフルチカゾン処方物は、有効量の張度調整成分を含むことができる。そのうちで使用することができる適切な張度調整成分は、コンタクトレンズケア製品で慣習的に使用されている張度調整成分(種々の無機塩など)である。ポリオールおよびポリサッカリドを使用して、張度を調整することもできる。200mOsmol/kg〜1000mOsmol/kgまたは前記範囲内の任意の特定の値の重量オスモル濃度が得られる張度調整成分量が有効である。
【0083】
好ましくは、張度成分は、涙液のミネラル組成を模倣する生理学的平衡塩類溶液を含む。いくつかの実施形態によれば、張度を、張度増強剤(例えば、イオン型および/または非イオン型の薬剤が含まれる)によって調整することができる。イオン性張度増強剤の例は、アルカリ金属ハライドまたはアルカリ土類金属ハライド(例えば、CaCl2、KBr、KCl、LiCl、NaI、NaBr、またはNaClなど)、Na2SO4、またはホウ酸である。非イオン性張度増強剤は、例えば、尿素、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、プロピレングリコール、またはデキストロースである。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、張度成分は、上記の重量オスモル濃度が得られる比率で2つ以上のNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、本発明の処方物の重量オスモル濃度範囲は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgである。いくつかの実施形態によれば、張度成分は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率で3つ以上のNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、張度成分は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率で4つ以上のNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、張度成分は、約100〜約1000mOsm/kg、好ましくは約500〜約1000mOsm/kgの重量オスモル濃度範囲が得られる比率でNaCl、KCl、ZnCl2、CaCl2、およびMgCl2を含む。いくつかの実施形態によれば、NaClは、約0.1〜約1%w/v、好ましくは約0.2〜約0.8%w/vの範囲、より好ましくは約0.39%w/vである。いくつかの実施形態によれば、KClは、約0.02〜約0.5%w/v、好ましくは約0.05〜約0.3%w/vの範囲、より好ましくは約0.14%w/vである。いくつかの実施形態によれば、CaCl2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%w/vである。いくつかの実施形態によれば、MgCl2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%W/Vである。いくつかの実施形態によれば、ZnCl2は、約0.0005〜約0.1%w/v、好ましくは約0.005〜約0.08%w/vの範囲、より好ましくは約0.06%W/Vである。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、本発明の眼科処方物を、等張化剤を使用して、0.9%塩化ナトリウム溶液または2.5%グリセロール溶液に等価な正常な涙液の浸透圧に近づけるように調整することができる。約225〜400mOsm/kgの重量オスモル濃度が好ましく、280〜320mOsmがより好ましい。
【0086】
溶解補助剤
特に1つまたは複数の成分が懸濁液または乳濁液を形成する傾向がある場合、局所用処方物は、可溶化剤の存在がさらに必要であり得る。適切な可溶化剤には、例えば、チロキサポール、脂肪酸グリセロールポリエチレングリコールエステル、脂肪酸ポリエチレングリコールエステル、ポリエチレングリコール、グリセロールエーテル、シクロデキストリン(例えば、α−、β−、またはγ−シクロデキストリン(例えば、アルキル化、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化、またはアルキルオキシカルボニル−アルキル化誘導体、またはモノ−またはジグリコシル−α−、β−、またはγ−シクロデキストリン、モノ−またはジマルトシル−α−、β−、またはγ−シクロデキストリン、またはパノシル−シクロデキストリン))、ポリソルベート20、ポリソルベート80、またはこれら化合物の混合物が含まれる。好ましい実施形態では、可溶化剤は、ヒマシ油およびエチレンオキシドの反応生成物(例えば、市販品であるCremophor EL(登録商標)またはCremophor RH40(登録商標))である。ヒマシ油およびエチレンオキシドの反応性生物は、眼によって非常に十分に許容される特に良好な可溶化剤であることが立証されている。別の実施形態では、可溶化剤はチロキサポールまたはシクロデキストリンである。使用濃度は、特に、有効成分の濃度に依存する。添加量は、典型的には、有効成分を溶解するのに十分な量である。例えば、可溶化剤濃度は、有効成分濃度の0.1〜5000倍である。
【0087】
解乳化剤(Demulcifing agent)
本発明で使用される緩和薬を、解乳化効果を得るための(すなわち、粘膜表面を潤滑し、乾燥および刺激を低減するのに十分な)有効量(すなわち、「解乳化量))で使用する。適切な緩和薬の例には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールが含まれ得るが、具体的には、ポリエチレンオキシドおよびポリアクリル酸などの他の成分は排除される。さらに他の実施形態では、他のまたはさらなる緩和薬を、グリセリンおよびプロピレングリコールと組み合わせて使用することができる。例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールも使用することができる。
【0088】
本発明における緩和薬の特定の使用量は、適用に応じて変化するであろう。しかし、典型的には、以下にいくつかの緩和薬の範囲を提供する:グリセリン:約0.2〜約1.5%であるが、好ましくは約1%(w/w)、プロピレングリコール:約0.2〜約1.5%であるが、好ましくは約1%(w/w)、セルロース誘導体:約0.2〜約3%であるが、好ましくは約0.5%(w/w)。さらなる緩和薬を使用する場合、これらを、典型的には、上記で引用した一般的なモノグラフ中で特定された量で使用する。好ましいセルロース誘導体は、医薬品グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。
【0089】
安定性
本発明の処方物により、処方されたフルチカゾンおよび処方物の他の任意選択的な活性薬剤が化学的に安定する。この文脈中の「安定性」および「安定な」は、フルチカゾンおよび他の任意選択的な活性薬剤の化学的分解および物理的変化(所与の製造条件、調製条件、輸送条件、および保存条件下での沈降または沈殿など)に対する耐性をいう。本発明の「安定な」処方物はまた、好ましくは、所与の製造条件、調製条件、輸送条件、および/または保存条件下での出発量または基準量の少なくとも90%、95%、98%、99%、または99.5%を保持する。フルチカゾンおよび他の任意選択的な活性薬剤の量を、任意の当該分野で認識されている方法(例えば、UV−可視分光光度法および高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)など)を使用して決定することができる。
【0090】
一定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、約20〜30℃の範囲の温度で、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、または少なくとも7週間安定である。他の実施形態では、処方物は、約20〜30℃の範囲の温度で、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、または少なくとも12ヶ月安定である。1つの実施形態では、処方物は、20〜25℃で少なくとも3ヶ月安定である。
【0091】
他の実施形態では、フルチカゾン処方物は、約2〜8℃の範囲の温度で、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも22ヶ月、または少なくとも24ヶ月安定である。1つの実施形態では、処方物は、2〜8℃で少なくとも2ヶ月安定である。
【0092】
他の実施形態では、フルチカゾン処方物は、約−20℃で、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも16ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、少なくとも22ヶ月、または少なくとも24ヶ月安定である。1つの実施形態では、処方物は、−20℃で少なくとも6〜12ヶ月間安定である。
【0093】
特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物は、約20〜30℃にて0.10%までの濃度で少なくとも3ヶ月安定である。別の実施形態では、処方物は、約2〜8℃にて0.10%までの濃度で少なくとも6ヶ月安定である。
【0094】
処方物の例
好ましい実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾンを唯一の活性薬剤として処方物中に0.001%〜1.0%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値で含む。好ましくは、フルチカゾンは、0.001%および0.2%(w/v)または前記範囲内の任意の特定の値の濃度で処方物中に存在する。例えば、フルチカゾンを、0.001%、0.005%、0.01%、0.015%、0.025%、または0.2%(w/v)の濃度で処方する。特定の実施形態では、フルチカゾンは、処方物中に濃度0.005%(w/v)で存在する。別の特定の実施形態では、フルチカゾンは、処方物中に濃度0.01%(w/v)で存在する。
【0095】
任意選択的に、フルチカゾン処方物は、1つまたは複数の代用涙液または粘膜付着性高分子化合物(例えば、Durasite(登録商標))を含む。処方物が1つまたは複数の代用涙液を含む場合、代用涙液は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースまたはその両方を含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.5%〜1%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)で存在し、得られた溶液の粘性は60〜80cpiである。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.7%〜0.9%で存在する。別の特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.1%〜0.7%で存在し、得られた溶液の粘性は10〜30cpiである。
【0096】
任意選択的に、処方物はまた、防腐剤、好ましくは濃度0.005%〜0.02%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)の塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(例えば、Polyquad(登録商標))もしくは安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))を含む。処方物のpHは5.0と7.5との間である。例えば、処方物のpHは5、5.5、6.0、6.5、または7.0である。
【0097】
1つの実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.001%〜1.0%(w/v)、グリセリン0.1%〜5%(v/v)(例えば、0.1%〜3%(v/v)または前記範囲内の任意の特定の値)、および水を含む。任意選択的に、処方物はまた、0.005%〜0.02%(w/v)の塩化ベンザルコニウムまたはその誘導体(例えば、Polyquad(登録商標))もしくは安定化オキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))を含む。特定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.005%、グリセリン1.2%〜3%(v/v)、および水を含む。別の特定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.01%(w/v)、グリセリン1.2%〜3%(v/v)、および水を含む。任意選択的に、フルチカゾン処方物はまた、塩化ベンザルコニウム0.01%(w/v)または安定化されたオキシクロロ複合体(例えば、Purite(登録商標))を含む。処方物のpHは、5.0と7.5との間である。例えば、処方物のpHは、5、5.5、6.0、6.5、または7.0である。
【0098】
さらに別の特定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、フルチカゾン0.001%〜1.0%(w/v)、好ましくはフルチカゾン0.005%、および1つまたは複数の代用涙液または粘膜付着性高分子化合物(例えば、Durasite(登録商標))を含む。好ましくは、代用涙液は、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースまたはその両方を含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.5%〜1%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)で存在し、得られた溶液の粘性は60〜80cpiである。特定の実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースは、濃度0.7%〜0.9%で存在する。任意選択的に、処方物はまた、濃度0.005%〜0.02%(w/v)(または前記範囲内の任意の特定の値)の防腐剤(好ましくは塩化ベンザルコニウム)または安定化されたオキシクロロ複合体(Purite(登録商標))を含む。処方物のpHは、5.0と7.5との間である。例えば、処方物のpHは、5、5.5、6.0、6.5、または7.0である。
【0099】
さらに別の特定の実施形態では、本発明のフルチカゾン処方物を、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%〜1.8%グリセリン(または前記範囲内の任意の特定の値)(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含むビヒクル中に処方する。
【0100】
一定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.005%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.8%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0101】
さらに別の一定の実施形態では、フルチカゾン処方物は、0.01%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.2%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウム(NF、(pH7.0))を含む。
【0102】
使用方法
本発明のフルチカゾン処方物は、アレルギー性結膜炎の急性期(すなわち、季節性)および遅発型(すなわち、慢性、持続性、または難治性)の両方の炎症反応の兆候および症状(眼の痒み、発赤、および眼瞼の腫脹など)ならびに関連する鼻の症状の処置および防止に有用である。本発明の処方物はまた、アレルギー性鼻結膜炎の兆候および症状(痒み、鼻汁、くしゃみ、鼻/副鼻腔鬱血、および発赤、なみだ眼および/または眼の痒みなど)の処置および防止に有用である。
【0103】
本発明は、有効量のフルチカゾンを含む眼科処方物を被験体の眼表面に直接局所投与する工程を含む、必要とする被験体におけるアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻結膜炎の処置または防止方法を提供する。一定の実施形態では、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止を必要とする被験体の眼へのフルチカゾンの直接投与はまた、いずれかのアレルギーに関連する1つまたは複数の鼻の症状(例えば、痒み、鼻汁、くしゃみおよび/または鼻/副鼻腔鬱血)の鎮静または軽減に有効である。被験体の眼への眼科処方物の直接的な局所投与により、鼻涙管を通した眼表面から鼻腔への排液を介して鼻の兆候および症状を有意に軽減するであろう(例えば、Abelsonら,Clin.Ther.25(3),931−947(2003);Spanglerら,Clin.Ther.25(8),2245−2267(2003);およびCramptonら,Clin Ther.Nov;24(11):1800−8(2002)を参照のこと)。さらに、被験体の眼を介して点眼する場合、被験体の鼻を介した投与と比較して、鼻の症状を処置するために有意に少ない活性薬剤が必要である。例えば、Flonase(登録商標)(フルチカゾンを含む市販の鼻内噴霧)の各噴霧は、アレルギー性鼻炎およびアレルギー性鼻結膜炎を処置するために50マイクログラムのフルチカゾンを鼻腔に送達させる。対照的に、1滴の0.005%フルチカゾン眼科処方物(すなわち、500マイクロリットルの液滴中2.5マイクログラム)は、眼に直接的に局所投与した場合に眼アレルギーに関連する鼻の症状を有意に軽減することが示された(本明細書中の実施例1を参照のこと)。そのようなものとして、本発明の方法は、アレルギー性結膜炎およびアレルギー性鼻結膜炎の鼻の症状のために現在利用可能な処置の選択肢よりも最適である。
【0104】
被験体は、好ましくはヒトであるが、別の哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、マウス、ラット、または非ヒト霊長類)であり得る。
【0105】
本発明の処方物は、フルチカゾンおよび任意選択的な1つまたは複数のさらなる有効成分(例えば、制限されないが、血管収縮薬(ナファゾリンまたはオキシメタゾリンなど)または抗ヒスタミン(セチリジンまたはケトチフェンなど))を意図する使用(すなわち、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の兆候および症状の鎮静)に有効な量で含む。一定の実施形態では、本発明の処方物の1日1回の投与がアレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の症状の鎮静に有効である。しかし、特定の投薬量はまた、多数の要因(被験体の年齢、性別、種、および条件が含まれる)に基づいて選択される。有効量を、in vitro試験系または動物モデルから誘導した用量−応答曲線から推定することもできる。
【0106】
用語「有効量」は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の症状を消失または軽減するのに十分なフルチカゾンの量である。一定の実施形態では、有効量は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止に十分な量である。この文脈中の「処置」は、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の少なくとも1つの症状の軽減または改善をいう。この文脈中の「防止」は、組成物を投与しない被験体と比較したアレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎に関連する症状の頻度の軽減または発生の遅延をいう。処方物中のフルチカゾンおよび他の活性薬剤の有効量は、薬物の吸収、不活化、および排出率ならびに処方物からの化合物の送達速度に依存するであろう。特定の投薬量はまた、緩和すべき容態の重症度に応じて変化し得る。任意の特定の被験体のために、固体の要求および組成物を投与するか投与を監督する者の専門的判断にしたがって、特定の投薬レジメンを経時的に調整すべきであるとさらに理解すべきである。典型的には、投与レジメンを、当業者に公知の技術を使用して決定するであろう。
【0107】
本発明の方法で使用することができる投与レジメンの例には、1日1回、1日2回、1日3回、および1日4回が含まれるが、これらに限定されない。一定の実施形態では、本方法は、本発明のフルチカゾン処方物を被験体の眼に1日1回直接投与する工程を含む。いくつかの実施形態では、投与は1日2回〜4回である。
【0108】
一定の実施形態では、1日1回の投与(q.d.)は、眼および/または鼻のアレルギーの症状を鎮静するのに有効である。しかし、特定の投薬量を、多数の要因(被験体の年齢、性別、種、および条件が含まれる)に基づいて選択することもできる。有効量を、in vitro試験系または動物モデルから誘導した用量−応答曲線から推定することもできる。
【0109】
本発明の組成物中に処方されたいくつかの活性薬剤の組み合わせ使用は、異なる成分の効果の発生および持続時間が補完的に作用し得る(complimentary)ので、任意の各成分に必要な投薬量を減少させることができる。かかる併用療法では、異なる活性薬剤を、一緒にまたは個別に、同時または当日の異なる時間に送達させることができる。
【0110】
特定の実施形態では、処方物中の唯一の活性薬剤としてフルチカゾンを含む処方物を、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止を必要とする被験体の眼に1日1回(q.d.)投与する。一定の実施形態では、フルチカゾン処方物を、1日2回〜4回投与する。
【0111】
驚いたことに、本明細書中に記載のフルチカゾンのみの処方物は、予想されるよりもアレルギー性結膜炎の眼の痒みおよび関連する鼻の症状の低減に有効であった。さらにより驚くべきことは、眼に直接投与した場合、低用量のフルチカゾンが高用量のフルチカゾンよりもアレルギー性結膜炎の眼の痒みおよび関連する鼻の症状の低減に有効であったという所見であった。例えば、実施例に記載のように、0.005%フルチカゾンの有効性は、より高い用量である0.01%フルチカゾンよりも有効であった。
【0112】
別の特定の実施形態では、セチリジンを、1つまたは複数のナファゾリン、オキシメタゾリンセチリジン、またはケトチフェンを使用して処方し、アレルギー性結膜炎および/または鼻結膜炎の処置または防止を必要とする被験体の眼に1日1回(q.d.)投与する。一定の実施形態では、組み合わせ処方物を、1日2回〜4回投与する。
【0113】
包装
本発明の処方物を、単回用量の製品または複数回用量の製品のいずれかとして包装することができる。単回用量の製品は、包装の開封前に無菌であり、包装中のすべての組成物は、患者の片眼または両眼への単回適用において消費されることを意図する。包装開封後の組成物の無菌性を維持するための抗菌防腐剤の使用は一般に必要ない。
【0114】
複数回用量の製品も包装開封前に無菌である。しかし、容器内のすべての組成物を消費する前に組成物の容器を何度も開封し得るので、複数回用量の製品は、確実に容器の反復開封および取り扱いの結果として組成物が微生物によって汚染されるようにならないように、十分な抗菌活性を持たなければならない。この目的のために必要な抗菌活性レベルは当業者に周知であり、公式刊行物(米国薬局方(「USP」)および他の国の対応する刊行物など)中に特定されている。微生物汚染に対する眼科医薬品の保存の仕様および特定の処方物の防腐剤の有効性の評価手順の詳細な説明は、これらの刊行物中に示されている。米国では、防腐剤の有効性の基準を、一般に、「USP PET」要件という(頭字語「PET」は、「防腐剤有効性試験)を示す)。
【0115】
単回用量包装の使用は組成物中に抗菌防腐剤を含める必要がなく、このことは、眼科組成物を保存するために使用される従来の抗菌薬(例えば、塩化ベンザルコニウム)が特に眼乾燥容態を罹患した患者における眼の刺激または既存の眼の刺激を引き起こし得るので、医学的見解から重要な利点である。しかし、現在利用可能な単回用量包装(「製袋充填包装」として公知の過程によって調製された少量プラスチックバイアルなど)は、製造者および消費者においていくつかの欠点を有する。単回用量包装システムの主な欠点は、莫大な量の包装材料が必要であること(無駄且つ高価)および消費者が不便であることである。また、指導された通りに眼に1滴または2滴を適用した後に消費者が単回用量の容器を破棄せず、その後に使用するために開封した容器および容器中に残存した任意の組成物を保存するというリスクがある。単回用量製品のこの不適切な使用により、単回用量製品の微生物汚染のリスクおよび汚染した組成物を眼に適用した場合の関連する眼の感染症のリスクが生じる。
【0116】
本発明の処方物を「調製済み」水溶液として処方することが好ましい一方で、本発明の範囲内で別の処方物が意図される。したがって、例えば、有効成分、界面活性剤、塩、キレート剤、または点眼剤の他の成分、またはその混合部物を凍結乾燥させるか、そうでなければ、水での(例えば、脱イオン水または蒸留水中での)溶解のために準備された乾燥粉末または錠剤として提供する。溶液の自己保存性のために、滅菌水は必要ない。
【0117】
無菌性または適切な抗菌保存性を、本発明の処方物の一部として提供することができる。本発明の一定の処方物が眼への投与を意図するので、処方物は病原性生物を含まないことが好ましい。無菌液体懸濁液の利点は、懸濁液処方物を眼に投与した場合に個体に夾雑物が導入される可能性が減少し、それにより、日和見感染の機会が減少することである。無菌性を見込むことができる過程は、当該分野で公知の任意の適切な滅菌工程を含むことができる。1つの実施形態では、製剤原料(例えば、フルチカゾン)を無菌条件下で生成し、無菌環境下で微粒子化し、無菌条件下で混合および包装を行う。別の実施形態では、本発明の処方物を濾過滅菌してバイアル(例えば、鼻内噴霧デバイスで使用される無菌単位用量が得られる単位用量バイアルが含まれる)に充填することができる。各単位用量バイアルは、無菌であり得、他のバイアルまたは次の用量が汚染することなく適切に投与される。1つの別の実施形態では、本発明の処方物中の1つまたは複数の成分を、蒸気、ガンマ線照射によって滅菌することができるか、必要に応じて無菌ステロイド粉末および他の無菌成分を使用するかこれらと混合して調製することができる。また、処方物を、無菌条件下で調製して取り扱うことができるか、包装の前または後に滅菌することができる。
【0118】
キット
本発明は、液体または凍結乾燥させた本発明のフルチカゾン処方物(すなわち、本明細書中に記載のフルチカゾンのみまたはさらなる活性薬剤との組み合わせを含む処方物)を充填した1つまたは複数の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。1つの実施形態では、処方物はフルチカゾンの水性組成物である。1つの実施形態では、処方物を凍結乾燥させる。好ましい実施形態では、液体または凍結乾燥させた処方物は無菌である。1つの実施形態では、キットは、1つまたは複数の容器中に本発明の液体または凍結乾燥させた処方物およびアレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻結膜炎の処置に有用な1つまたは複数の他の予防薬または治療薬(例えば、さらなる活性薬剤(ナファゾリン、オキシメタゾリン、セチリジン、またはケトチフェンなど)と組み合わせたフルチカゾン)を含む。1つまたは複数の他の予防薬または治療薬は、フルチカゾンと同一の容器中または1つまたは複数の他の容器中に存在し得る。好ましくは、フルチカゾンを、約0.05%(w/v)〜約1.0%(w/v)の濃度で処方し、この濃度は局所眼投与に適切である。いくつかの実施形態では、フルチカゾンを、本明細書中に記載のように、さらなる活性薬剤(オキシメタゾリン、ナファゾリン、セチリジン、またはケトチフェンなど)を使用して処方する。一定の実施形態では、キットは単位投薬形態のフルチカゾンを含む。
【0119】
一定の実施形態では、キットは、さらに、アレルギー性結膜炎および/またはアレルギー性鼻結膜炎の処置における使用(例えば、本発明のフルチカゾン処方物のみまたは別の予防薬または治療薬との組み合わせを使用)、副作用、および1つまたは複数の投与経路のための投薬量の情報についての説明書を含む。医薬品または生物由来製品の製造、使用、または販売(この通知は製造機関による承認を反映する)、ヒトへの投与のための使用または販売を規制する政府機関によって指示された形態での通知を任意選択的にかかる容器に付随させる。説明書は典型的には書面または印刷物を含むが、これらに制限されない。かかる説明書を保存し、最終使用者に説明書を伝達することができる任意の媒体が本発明によって意図される。かかる媒体には、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)および光学式の媒体(例えば、CD ROM)などが含まれるが、これらに限定されない。かかる媒体は、かかる説明書の資料が得られるインターネットサイトのアドレスを含むことができる。
【0120】
別の実施形態では、本発明は、本明細書中に記載の処方物の包装および/または保存および/または使用のためのキットならびに本明細書中に記載の方法を実施するためのキットを提供する。キットを、輸送、使用、および保存の1つまたは複数の態様を容易にするようにデザインすることができる。
【0121】
本明細書中に言及したすべての刊行物および特許は、あたかも各刊行物または特許が参考として援用されることを具体的且つ個別に示されたかのようにその全体が本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0122】
本発明を、以下の実施例を参照してさらに定義する。実施例は、本発明の範囲を制限することを意味しない。材料および方法の両方に対する多数の修正形態を本発明の目的および利益を逸脱することなく実施することができることが当業者に明らかであろう。
【0123】
実施例1:フルチカゾンはアレルギー性結膜炎に関連する眼および鼻の症状を防止する
プラセボ対照二重盲検試験を、ビヒクルのみ(N=15)と比較したフルチカゾン0.001%(N=16)、フルチカゾン0.005%(N=16)、フルチカゾン0.01%(N=15)の有効性を評価するために行った。図1Aおよび1Bに示す研究デザインで示すように、被験体は、スクリーニング(アレルゲンの滴定および確認)のために2回訪問し、その後に薬物評価のために2回訪問した。薬物評価のための訪問時に、1滴のマスキングした試験薬を点眼し、眼のアレルギー評価を行った。8時間後、被験体をアレルゲンで攻撃誘発し、眼および鼻の主要および副次エンドポイントを評価し、処方物の安全性も評価した。結果を図2〜21に示す。
【0124】
眼の主要エンドポイント
眼の痒み、結膜発赤、眼瞼の腫脹、および鼻閉を、訪問4Bの間に各被験体において評価した。
【0125】
眼の痒みを、0(痒み無し)〜4(重篤な痒み)のスケールで主観的に評価した。図2に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、ビヒクルのみと比較して、7分間にわたる眼の痒みの軽減での有効性はほぼ等しかった。
【0126】
結膜発赤も、0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで主観的に評価した。図3に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる結膜発赤の軽減での有効性はほぼ等しかった。
【0127】
眼瞼腫脹を、0(眼瞼の腫脹なし)〜3(重篤な眼瞼の腫脹)のスケールで主観的に評価した。図4に示すように、フルチカゾン0.001%および0.005%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、フルチカゾン0.01%よりも20分間にわたる眼瞼の腫脹の軽減において有効であった。
【0128】
鼻閉を、0(鬱血なし)〜4(重篤な鬱血)のスケールで主観的に評価した。図5に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、ビヒクルのみと比較して、30分間にわたる鼻閉の軽減での有効性はほぼ等しかった。
【0129】
眼の主要エンドポイント評価の結果のまとめを図6に示す。図6に示すように、フルチカゾン0.005%および0.01%による結膜発赤の軽減ならびにフルチカゾン0.001%による眼瞼の腫脹の軽減はそれぞれ統計的に有意であった(p<0.05)。
【0130】
眼の副次エンドポイント
毛様体発赤、上強膜発赤、結膜浮腫、およびなみだ眼を、訪問4Bで各被験体において評価した。
【0131】
毛様体発赤を、0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した。図7に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる毛様体発赤の軽減で有意に有効であった(各フルチカゾン濃度についてp<0.05)。
【0132】
上強膜発赤を、0(発赤なし)〜4(重篤な発赤)のスケールで評価した。図8に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる上強膜発赤を軽減する。
【0133】
結膜浮腫を、0(なし)〜4(重篤)のスケールで評価した。図9に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、20分間にわたる結膜浮腫の軽減で有意に有効であった。
【0134】
なみだ眼も、0(なみだ眼なし)〜4(重篤ななみだ眼)のスケールで主観的に評価した。図10に示すように、フルチカゾン0.001%および0.05%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたるなみだ眼の軽減においてフルチカゾン0.01%よりも有効であった。
【0135】
眼の副次エンドポイント評価のまとめを図11に示す。図10に示すように、3つすべての濃度のフルチカゾンによる毛様体発赤の軽減、フルチカゾン0.005%による上強膜発赤の軽減、およびフルチカゾン0.05%によるなみだ眼の軽減は、それぞれ、統計的に有意であった(p<0.05)。
【0136】
鼻の副次エンドポイント
鼻漏、耳または口蓋の掻痒症、鼻の掻痒症を、各エンドポイントについて0(なし)〜4(重篤)のスケールを使用して訪問4Bで各被験体において評価した。
【0137】
図12および14に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、20分間にわたる鼻漏および鼻の掻痒症のそれぞれの軽減において臨床的に有意な結果を有していた。図13に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ、ビヒクルのみと比較して、耳および口蓋の掻痒症の軽減に効果を有していた。
【0138】
総鼻スコアを、0〜16のスケールで評価した。図15に示すように、フルチカゾン0.001%、0.005%、および0.01%は、それぞれ驚くべきことに、各被験体の眼に直接投与した場合に総鼻スコアに臨床的に有意に影響を及ぼした。評価した鼻エンドポイントのまとめを、図16および17に示す。
【0139】
安全性
眼圧、液滴の快適さ、および有害事象(視界不良、結膜出血、眼乾燥症、部位の痛みおよび/または刺激、ならびに頭痛など)を、各被験体について評価した。
【0140】
液滴の快適さを、訪問2および訪問3の間に0(非常に快適)〜10(非常に不快)のスケールで主観的に評価した。図18および19に示すように、フルチカゾン0.01は、フルチカゾン0.001%および0.005%と比較した場合およびビヒクルのみと比較した場合に、点眼の際に非常に不快であった。フルチカゾン0.001%および0.005%の快適さは、ビヒクルコントロールの快適さと類似していた。
【0141】
有害事象(視界不良、結膜出血、眼乾燥症、部位の痛みおよび/または刺激、ならびに頭痛など)を経験した被験体の全比率のまとめを図20に示す。
【0142】
ビヒクルのみと比較した眼圧(IOP)に及ぼす各濃度のフルチカゾンの影響を、図21に示す。
【0143】
結果は、フルチカゾン0.001%、0.005%、または0.01%のいずれかの1滴がアレルギー性結膜炎に関連する眼および鼻の症状の両方の防止に有効であったことを証明している。しかし、すべての主要エンドポイントおよび副次エンドポイントを考慮した場合、中等度の強度のフルチカゾン0.005%が眼および鼻の症状の両方の低減に最も有効であり、眼圧に有害作用を生じることなくフルチカゾン0.001%およびフルチカゾン0.01%よりも快適であることを示した。
【0144】
等価物
当業者は、日常的実験法しか使用せずに本明細書中に記載の本発明の特定の実施形態の多数の等価物を認識するか確認することができるであろう。かかる等価物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所用眼科処方物であって、
フルチカゾンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルであって、該フルチカゾンが0.001%と1.0%(w/v)との間の濃度で存在し、フルチカゾンが該組成物中の唯一の抗アレルギー剤である、フルチカゾンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、
0.2%と5.0%(w/v)との間の濃度の解乳化剤、
グリセリン、および
1つまたは複数のホウ酸バッファー、リン酸バッファー、またはカルシウムバッファーを含むバッファー系を含む、局所用眼科処方物。
【請求項2】
フルチカゾンが0.001%〜0.2%(w/v)の濃度で前記処方物中に存在する、請求項1に記載の眼科処方物。
【請求項3】
前記フルチカゾンの濃度が0.005%(w/v)である、請求項2に記載の眼科処方物。
【請求項4】
前記解乳化剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項5】
前記組成物が防腐剤を含む、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項6】
前記防腐剤が塩化ベンザルコニウムもしくはその誘導体または安定化オキシクロロ複合体である、請求項5に記載の眼科処方物。
【請求項7】
前記組成物が防腐剤を含まない、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項8】
前記組成物がpH5〜7.0である、請求項1に記載の眼科処方物。
【請求項9】
前記処方物が水性組成物、軟膏、オイル、懸濁液、または乳濁液であるか、薬物送達デバイス中に組み込まれている、請求項1に記載の眼科処方物。
【請求項10】
前記処方物が水性組成物中に存在する、請求項9に記載の眼科処方物。
【請求項11】
0.005%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.8%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウムを含む局所用眼科処方物であって、該処方物がpH7.0である、局所用眼科処方物。
【請求項12】
アレルギー性結膜炎の処置方法であって、請求項1に記載の眼科処方物を含む眼科処方物をかかる処置を必要とする被験体の眼に局所投与することによる、方法。
【請求項13】
アレルギー性鼻結膜炎の処置方法であって、請求項1に記載の眼科処方物を含む眼科処方物をかかる処置を必要とする被験体の眼に局所投与することによる、方法。
【請求項1】
局所用眼科処方物であって、
フルチカゾンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステルであって、該フルチカゾンが0.001%と1.0%(w/v)との間の濃度で存在し、フルチカゾンが該組成物中の唯一の抗アレルギー剤である、フルチカゾンまたはその薬学的に許容可能な塩もしくはエステル、
0.2%と5.0%(w/v)との間の濃度の解乳化剤、
グリセリン、および
1つまたは複数のホウ酸バッファー、リン酸バッファー、またはカルシウムバッファーを含むバッファー系を含む、局所用眼科処方物。
【請求項2】
フルチカゾンが0.001%〜0.2%(w/v)の濃度で前記処方物中に存在する、請求項1に記載の眼科処方物。
【請求項3】
前記フルチカゾンの濃度が0.005%(w/v)である、請求項2に記載の眼科処方物。
【請求項4】
前記解乳化剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項5】
前記組成物が防腐剤を含む、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項6】
前記防腐剤が塩化ベンザルコニウムもしくはその誘導体または安定化オキシクロロ複合体である、請求項5に記載の眼科処方物。
【請求項7】
前記組成物が防腐剤を含まない、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項8】
前記組成物がpH5〜7.0である、請求項1に記載の眼科処方物。
【請求項9】
前記処方物が水性組成物、軟膏、オイル、懸濁液、または乳濁液であるか、薬物送達デバイス中に組み込まれている、請求項1に記載の眼科処方物。
【請求項10】
前記処方物が水性組成物中に存在する、請求項9に記載の眼科処方物。
【請求項11】
0.005%フルチカゾン、1%ポリエチレングリコール400(NF)、0.2%リン酸二ナトリウム(無水物、USP)、0.25%ヒプロメロース(USP)、0.1%ポリソルベート80(NF)、1.8%グリセリン(USP)、0.025%エデト酸二ナトリウム(USP)、および0.01%塩化ベンザルコニウムを含む局所用眼科処方物であって、該処方物がpH7.0である、局所用眼科処方物。
【請求項12】
アレルギー性結膜炎の処置方法であって、請求項1に記載の眼科処方物を含む眼科処方物をかかる処置を必要とする被験体の眼に局所投与することによる、方法。
【請求項13】
アレルギー性鼻結膜炎の処置方法であって、請求項1に記載の眼科処方物を含む眼科処方物をかかる処置を必要とする被験体の眼に局所投与することによる、方法。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2012−528889(P2012−528889A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514178(P2012−514178)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/037426
【国際公開番号】WO2010/141834
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508221866)アーシエックス セラピューティックス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2010/037426
【国際公開番号】WO2010/141834
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508221866)アーシエックス セラピューティックス, インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】
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