説明

フレキシブルな電気化学処理のための方法、装置、及びシステム

【課題】フレキシブルな電気化学処理のための方法、装置、及びシステムを提供する。
【解決手段】フレキシブルツールカソード400は、弾性的に変形可能なカソードを含み、該カソードは、2次元又は3次元で変形することができ、加工物がフレキシブルツールカソード400と相対的に移動している間は、加工物の輪郭に適応することができる。すなわち、フレキシブルツールカソードは、トレースを実施することができる。特定のフレキシブルツールカソードは、また、このようなコーナー及び縁部などの特別な構成に用いることができる。フレキシブルツールカソード400を用いて、電気化学プロセスにより加工物を研磨、仕上げ加工、又は整形することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1以上の態様は、フレキシブルな電気化学処理のための方法、装置、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、旋削、孔加工、及びフライス加工などの機械加工法は、機械的力の印加を伴う。これらの方法では、硬質のツールを用いて加工物を機械加工しており、従って、ツールは、加工物よりもより硬質である必要性がある。しかしながら、一部の用途では、加工物自体を硬質の材料で作ることが望ましい。例えば、タービンエンジンのブレードは、過酷な動作環境に曝されるので、硬度を含めた厳しい要件を有する。加工物自体が硬質であるときには、従来の機械加工は通常、実行可能ではない。
【0003】
硬質の加工物を機械加工する代替の方法として、一般的には電解加工(ECM)が使用される。ECMでは、導電性の硬質加工物がツールによって機械加工され、該ツールもまた導電性である。ECMの間、カソードとしての役割を果たすツールは、アノードとしての役割を果たす加工物に相対的に位置付けられてこれらの間にギャップが定められるようにし、該ギャップは、硝酸ナトリウム水溶液のような流動する電解質で満たされる。カソードであるツールとアノードである加工物との間に低電圧の高密度直流が印加され、加工物の電解溶解を生じさせる。溶解作用は、流動電解質により隔てられた、カソードであるツールとアノードである加工物とによって形成される電解槽において起こる。腐食材料又はスラッジは、金属水酸化物の形態で流動電解質によりギャップから除去される。アノードである加工物は一般に、カソードであるツールの輪郭に一致した輪郭を呈する。スラッジは、電解質から濾過することができ、清浄な電解質は再使用することができる。
【0004】
ECMでは、ツールは損耗することがない。また、加工速度は、加工物の硬度とは無関係である。従って、銅及び黄銅などの軟質材料をツールとして用いて、炭素鋼、インコネル、チタン、及びコバール又はこれらの合金のような硬質又は強靱な金属の加工物を整形することができ、ツールカソードは繰り返し用いることができる。このことは、軟質の金属の上に複雑な形状のものでも比較的容易に形成され、硬質の金属及び合金の加工物を整形するのに用いることができるので、有利である。
【0005】
ECMには幾つかの欠点がある。従来のECMにおいては、各所望の形状に対して専用のツールを構成しなくてはならない。発電のような産業では、1パーセントなどの小さな効率の向上でも運用コストの有意な節減に相当する。従って、タービン製造業者は、漸増の効率向上を達成するために、タービンブレード及び他のタービン部品を絶えず設計し直している。このような状況で従来のECMを用いるには、新規のツールを定期的に作り出す必要があり、これは極めて高価になる可能性がある。従って、異なる形状の加工物にフレキシブルに適応し、従来のECMに伴うコスト及び時間を低減する電気化学処理方法、装置、及びシステムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学プロセスを実施するフレキシブル電気化学ツールに関する。フレキシブル電気化学ツールは、2次元(2D)で弾性的に変形可能なストリップシートメタルと、機械ラムと、ストリップカソードの長さに沿って、上端部にて機械ラムと接続され下端部にてストリップカソードと接続された複数の支持コネクタと、を備えることができる。複数の支持コネクタは、機械ラムに対して横方向位置が固定される少なくとも1つの固定支持コネクタを含むことができる。各支持コネクタは、ストリップカソードが弾性的に変形したときにストロークが変わるように構成することができる。また、各支持コネクタは、支持コネクタの下端部を結合するよう構成され、且つストリップカソードが弾性的に変形したときに転回するよう構成された回転カプラを含むことができる。
【0007】
本発明の別の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学プロセスを実施する方法に関する。本方法において、フレキシブル電気化学ツールは、電解質が充填された作業タンク内にフレキシブル電気化学ツールカソードのフレキシブルカソードが浸漬される加工物の表面部分と係合するように位置付けることができる。加工物が係合された後、電力及び電解質流動を起動して電解加工プロセスを開始することができる。次に、フレキシブルカソードは、加工物の第1又は第2の端部に向かってトレースすることができる。トレースは、電力及び電解質流動を維持しながら、フレキシブルカソードが加工物と相対的に移動することを含むことができる。
【0008】
本発明の別の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学プロセスを実施するシステムに関する。本システムは、作業タンク、フレキシブルカソードを有するフレキシブル電気化学ツール、機械ラム、複数のクランプ、及びコントローラを含むことができる。作業タンクは電解質を充填させることができる。フレキシブルカソードは、加工物の表面輪郭に連続的に適応可能にすることができる。機械ラムは、ツールカソードを移動させるよう構成することができる。複数のクランプは、作業タンク内に加工物を固定するよう構成することができる。コントローラは、電解質で充填された作業タンク内に浸漬される加工物の表面部分とツールカソードが係合するように該ツールカソードを位置付けるよう構成することができる。或いは、ツールカソードは、加工物を浸漬することなく電解質を電解槽に供給する電解質チャンネルを含む。コントローラはまた、加工物が係合されてフレキシブル電気化学プロセスを開始した後に電力及び電解質流動を起動するよう構成することができる。コントローラは更に、第1又は第2の端部に向かってツールカソードをトレースするよう更に構成することができる。トレースは、電力及び電解質流動を維持しながら、ツールカソードが加工物と相対的に移動することを含むことができる。
【0009】
本発明の別の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学プロセスを実施するコーナリングフレキシブル電気化学ツールに関する。コーナリングフレキシブル電気化学ツールは、カソードと、機械ラムと、カソード及び機械ラム間にエラストマーとを含むことができ、該エラストマーは、カソードが加工物のコーナーの形状に適応するよう適応バッキングを提供する。加工物のコーナーは、コーナー角θで凹状面を形成する端点から実質的に直線方向に延びる2つの側面により形成することができる。カソードは、コーナー角に対してθよりも大きい角度αで予め撓むことができる。この差違は、加工物コーナーに対してコーナリングツールカソードの必要な圧縮を提供する。
【0010】
本発明の別の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学プロセスを実施するエッジングフレキシブル電気化学ツールに関する。エッジングフレキシブル電気化学ツールカソードは、ストリップカソードと、機械ラムと、カソード及び機械ラム間にエラストマーとを含むことができ、該エラストマーは、カソードが加工物の縁部の形状に適応するよう適応バッキングを提供する。加工物の縁部は、縁部角度φで凸面を形成する端点1060から実質的に直線方向に延びる2つの側面により形成することができる。ストリップカソードは、φよりも小さい縁部角度に対する角度βで予め撓むことができる。この差違は、加工物縁部に対する縁部カソードの必要な圧縮を提供する。
【0011】
本発明の別の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学プロセスを実施するフレキシブル電気化学ツールに関する。フレキシブル電気化学ツールは、シートカソード、機械ラム、及び複数の支持コネクタを含むことができる。シートカソードは、3次元(3D)で弾性的に変形可能に構成することができる。複数の支持コネクタは、シートカソードの上面に沿って、上端部で機械ラムと接続され、下端部でシートカソードと接続することができる。各支持コネクタは、ストロークを変えるよう構成することができる。各支持コネクタはまた、シートカソードが弾性的に変形するときに支持コネクタの下端部をフレキシブルシートカソードと結合するよう構成された下側カプラを含むことができる。
【0012】
本発明の別の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学プロセスを実施するフレキシブル電気化学ツールに関する。フレキシブル電気化学ツールは、シートカソード、機械ラム、弾性バッキング、及び少なくとも1つのセンサを含むことができる。シートカソードは、3Dで弾性的に変形することができる。機械ラムは、フレキシブル電気化学ツールを移動させ、圧縮力を加えるよう構成することができる。弾性バッキングは、シートカソードに弾性バッキングを提供するよう構成することができる。センサは、フレキシブル電気化学ツールが加工物と係合するときに加工物の表面高度を測定するよう構成することができる。シートカソードは、加工物と係合しながら移動するときに、加工物の輪郭に連続的に適応することができる。
【0013】
本発明の別の非限定的な態様は、フレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスを実施する方法に関する。本方法において、フレキシブル電気化学ツールは、電解質が充填され又はツールカソードから電解質がスプレーされた作業タンク内に浸漬される加工物の表面部分と係合するように位置付けることができる。加工物が係合された後、電力及び電解質流動が起動され、フレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスを開始することができる。加工物は、フレキシブル電気化学ツールが加工物の第1及び第2の端部に向かって移動されるときにフレキシブル電気化学仕上げ加工をすることができる。フレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスは、加工物の表面誤差を修正するよう加工物を仕上げ加工する段階を含むことができ、該表面誤差は、表面部分の所定の許容限度の外にある表面部分の表面高度の偏差として定められる。フレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスは、ツールカソードが加工物と係合されて加工物と相対的に移動しているときに実施することができる。
【0014】
本発明の別の非限定的な態様は、加工物にフレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスを実施するシステムに関する。本システムは、作業タンク、フレキシブルカソードを含むフレキシブル電気化学ツール、機械ラム、複数のクランプ、及びコントローラを備えることができる。作業タンクは、電解質で充填することができ、或いは、加工物は、ツールカソードから電解質がスプレーされる。フレキシブル電気化学ツールは、ストリップカソードを含むことができ、フレキシブル電気化学ツールは、加工物の表面輪郭に連続的に適応可能にすることができる。機械ラムは、フレキシブル電気化学ツールを移動させるよう構成することができる。複数のクランプは、作業タンク内に加工物を固定するよう構成することができる。コントローラは、電解質が充填され又はフレキシブル電気化学ツールから電解質がスプレーされた作業タンク内に浸漬される加工物の表面部分と係合するように、フレキシブル電気化学ツールを位置付けるよう構成することができる。コントローラはまた、加工物が係合されてフレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスを開始した後に、電力及び電解質流動を起動するよう構成することができる。コントローラは、更に、加工物の第1及び第2の端部を仕上げ加工するよう構成することができる。フレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスは、加工物の表面誤差を修正するよう加工物を仕上げ加工する段階を含むことができ、該表面誤差は、表面部分の所定の許容限度の外にある表面部分の表面高度の偏差として定められる。加工物は、フレキシブル電気化学ツールが加工物と係合されて加工物と相対的に移動している間に、フレキシブル電気化学仕上げ加工を実施することができる。
【0015】
ここで、以下に示された図面に関して本発明をより詳細に説明する。
【0016】
本発明のこれら及び他の特徴は、添付図面を参照しながら例示的な実施形態に関する以下の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】従来の電解加工システムを示す図。
【図2】関連出願のツールカソードの1つの実施例を示す図。
【図3】加工物に適用される関連出願のツールカソードを示す図。
【図4a】本発明の一実施形態に係る圧縮状態の2Dフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図4b】本発明の一実施形態に係る非圧縮状態の2Dフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図5】本発明の一実施形態に係るフレキシブルストリップカソードの構造を示す図。
【図6】本発明の別の実施形態に係る2Dフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図7】本発明の一実施形態に係るフレキシブル電気化学研磨プロセスを実施するシステムを示す図。
【図8】本発明の一実施形態に係るフレキシブル電気化学研磨プロセスを実施する方法のフローチャート。
【図9a】本発明の別の実施形態に係るコーナリングフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図9b】本発明の別の実施形態に係るコーナリングフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図10a】本発明の別の実施形態に係るエッジングフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図10b】本発明の別の実施形態に係るエッジングフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図11a】本発明の一実施形態に係る3Dフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図11b】本発明の一実施形態に係る3Dフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図12a】本発明の別の実施形態に係る3Dフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図12b】本発明の別の実施形態に係る3Dフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図13a−b】本発明の別の実施形態に係るセンサを備えたフレキシブル電気化学ツールを示す図。
【図14】本発明の1つの態様による、フレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスを実施する方法のフローチャート。
【図15】本発明の1つの態様による、加工物トレース中に実施される例示的なフレキシブル電気化学的仕上げ加工プロセスのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で説明されるように、本出願の実施形態に係るフレキシブル電気化学プロセスは、加工物の仕上げ加工、研磨、及び/又は整形を行う比較的高速な方法を提供することができる。1以上の非限定的な態様において、様々な加工物の全体的な輪郭に適応できるフレキシブル電気化学ツールが提供される。
【0019】
図1には、従来のECMシステムが示されている。ECMシステム100は、電源102、それぞれ電解槽のカソード及びアノードとしての役割を果たすツール104及び加工物106、電解質ポンプ108、及び電解質タンク110を含む。ツール104の形状は固定である。作動時には、ツール104及び加工物106は、これらの間のスペースにより比較的狭い電極間ギャップ112が定められるように位置決めされる。電源102を用いて、加工物106及びツール104の両端に電圧を印加する。
【0020】
システム100は、加圧電解質の連続したストリームをギャップ112に圧送する電解質システムを含み、該ギャップ112において、電解質がポンプ108により電解質タンク110から圧送され、ツール104内に形成された中空電解質チャンネル114に送給される。チャンネル114は、電解質を加工物106に配向する。電解質は、チャンネル114によりツールカソード104から出て、比較的高速高圧でギャップ112を通過する。
【0021】
加工物106は、アノード分極した加工物106の電気化学的溶解による加工物金属の金属除去で整形される。ECM工程中、ギャップ112を通って移動する電解質は、加工物106から電気化学的溶解材料を除去し、加工物106の形状誤差を減少させる。金属除去速度は、一般に、カソードとアノードとの間の離隔距離に反比例する。ツール104が加工物106に近づくと、ツール104及び加工物106の長さに沿ったカソードであるツール104とアノードである加工物106との間の離隔距離すなわちギャップ112は定常値になる傾向があり、加工物106は一般に、ツールカソード104の輪郭を呈する。
【0022】
上述のように、ツール104は、従来のECMにおいては、対応する加工物106を作製するよう固有に整形される。各々が固有の形状を有し且つ必要な電解質チャンネルが構成された多くのツール104の作製は、高コストになる可能性がある。比較的少数の対応する加工物106を作製するのにツール104を使用すると、コスト問題が悪化する可能性がある。
【0023】
上述の関連出願では、有意なレベルの互換性を提供するカソードツールが記載されている。図2は、従来のツールとは異なり、フレキシブルであることにより様々な加工物の形状に用いることができる関連ツール300の1つの実施例を示している。図2に示すツール300は、カソード302、スペーサパッド304、弾性バッキング306、導電性ストリップ308、及び電解質チャンネル310を含む。機械ラム312は、加工物を所望の方法で係合するようにツールカソード300を移動又は位置決めすることができる。
【0024】
カソード302は、比較的薄肉で且つフレキシブルな導電性材料である。図3に示すように、弾性バッキング306は、カソード302が変形し、従って、加工物106の表面輪郭と共形にすることができる形状コンプライアンスを提供する。弾性変形は、カソード302の外面が加工物106の表面から所望の距離にあり、効率的なECMプロセスを実施できるようにするものである。このようにして、関連のツール300は、多数のカソードダイを必要とすることなく、全体的に3次元の表面を研磨することができる。
【0025】
加工物106がツール300よりも大きな表面積を有するときには、ツール300は、加工物106の様々な部分に対して一度に一部分ずつ適用される。例えば、ツール300、より具体的にはカソード302は、下向きに圧縮されて、加工物106の表面部分を囲む。表面部分が囲まれた後、電解質及び電源がオンにされ、カソード302の真下の係合した表面部分を研磨する。表面部分が研磨された後、ツール300は引き上げられ移動されて新しい表面部分を囲み、該新しい表面部分が研磨される。この断続的研磨のサイクルは、加工物の表面全体が研磨されるまで継続する。
【0026】
図4a及び4bは、2次元(2D)のフレキシブル電気化学ツール(FECツール)400を示しており、これを用いて、本発明の一実施形態に係るフレキシブル電気化学プロセス(FECプロセス)を実施することができる。参照を容易にするために、これらの図には方向X、Y、及びZが示されている。「X」は左右方向又は横方向を指し、「Y」は上下方向又は垂直方向を指し、「Z」は内外方向を指す。構成要素又は実施形態が特定の位置にあるか又は特定の方向に移動しているように記載される場合、これらは便宜上のものであり、限定を意味するものではない点を理解されたい。例えば、FECツールのような構成要素が垂直方向に移動しているように記載されるときには、これは、実際の実施において、必ずしも構成要素が重力方向に移動しなければならないことを意味する訳ではない。
【0027】
本発明の複数の主題の1つは、加工物をトレースできるようにすることである。本明細書で使用される場合、トレースとは、加工物及びFECツールが相対的に移動中であるときにフレキシブル電気化学プロセスを実施する能力を意味する。一例として、加工物は、トレースにより研磨することができる。関連出願に関して上述された断続的研磨プロセスと比較すると、連続研磨プロセスはより迅速になる点は理解されたい。トレースはまた、本明細書全体にわたって示すように、他の望ましい性質を有する。
【0028】
語句「フレキシブル電気化学プロセス」(同様にFECプロセス)が上記段落で導入されている。FECプロセスは、とりわけ、研磨、仕上げ加工、及び整形などのプロセスを広範囲に含む。FECプロセスは、加工物からかなりの量の金属を除去するのに固定カソードダイが使用される従来のECMプロセスとは区別されるべきである。本明細書で説明されるFECプロセスは、別途指示されない限り、一般にはフレキシブル電気化学ツールを用いた加工物の金属表面からの金属の1又は複数の層の除去を指す。
【0029】
また、加工物及びFECツールは、一方又は他方、もしくは両方を移動させることにより相対的に移動可能である点を理解されたい。従って、明示的にそうでないことを示していない限り、「AがBに対して移動した」などの表現は、「BがAに対して移動した」及び「A及びBは互いに対して移動した」などの表現と同等と解釈すべきであり、従って、相対移動の全ての可能性を含むものと解釈すべきである。また、「AがBに向かって/Bから離れて移動した」及び「A及びBが互いに向かって/互いから離れて移動した」もまた、相対移動を示していると解釈すべきである。
【0030】
平滑なトレースの動きを可能にするために、ある程度の横方向剛直性があることが望ましい。横方向剛直性は、湾曲した部品表面上でより安定した横方向の動きを提供する。図4a及び4bに示すFECツールの実施形態は、このような横方向剛直性と、垂直方向のフレキシビリティを提供する。図4aは、FECツール400の非圧縮状態を示し、図4bは、圧縮状態を示す。FECツール400は、ストリップカソード402、機械ラム412、及び複数の支持コネクタ420を含むことができる。以下でより詳細に説明するように、複数の支持コネクタ420は、少なくとも1つの固定支持コネクタと、少なくとも1つの非固定支持コネクタとを含むことができる。機械ラム412は、支持コネクタ420の上端部にて該支持コネクタ420と接続することができる。支持コネクタ420の下端部は、ストリップカソード402の長さに沿ってストリップカソード402と接続することができる。
【0031】
ストリップカソード402は、2Dで弾性的に変形可能すなわちフレキシブルであるのが好ましい。これは以下のように説明される。図4aにおいて、非圧縮状態のストリップカソード402は、横方向の縦に位置付けられる。すなわち、ストリップカソード402は、非圧縮状態でX方向に直線状である。図4bに示すような圧縮状態において、ストリップカソード402は、横方向の長さに沿って異なる点で垂直方向に弾性変形又は屈曲し、Y方向の変形量は、ストリップカソード402が加工物106の表面輪郭に共形であるように異なるX位置に沿って異なることができる。
【0032】
これに類似したものは、ワイパーとフロントガラスが相対的に動く車両フロントガラスの曲率に共形なワイパーである。FECツール400の複数の利点の1つは、ストリップカソード402が2D湾曲線に対してより容易に撓むことができることである。また、ストリップカソード402は、加工物106表面の形状が変化したときに、容易に跳ね返ることができる。
【0033】
FECツール400が図4bに示すように圧縮状態であるときには、異なる支持コネクタ420の垂直長さが異なり、すなわち加工物106の曲率を調整するためにストロークが異なることが分かる。従って、支持コネクタ420は、ストリップカソード402が2Dで弾性的に変形すると、これらのコネクタのストロークを変えることができる。しかしながら、ストロークに関係なく、支持コネクタ420は均一な圧力を加えることが好ましい。これは、ストリップカソード402が加工物106の湾曲表面に適応できるように垂直方向のフレキシビリティを提供する。
【0034】
一実施形態において、支持コネクタ420はエアシリンダーであり、各シリンダー420は、垂直滑り軸受427及びバネ428を含むことができる。軸受427及びバネ428は、フレキシブルストリップカソード402が加工物106の表面輪郭に共形にできるように、シリンダー420が弾性支持を提供可能にする。
【0035】
空気シリンダー420は更に、何らかの公知の駆動機構により垂直方向に移動できるピストン429を含むことができ、シリンダー420内の空気圧は、例えば、コントローラ(図4a及び4bに図示せず)を通って正確に制御することができる。一定の空気圧及び駆動機構を用いると、各シリンダー420のストロークは、加工物106の輪郭に応じて設定することができ、その結果、ストリップカソード402の変形を制御できるようになる。以下で更に立証されるように、ストリップカソード402を整形する能力は、加工物106を仕上げ加工する有利な機能を提供する。駆動機構は、機械ラム412に組み込むことができる。シリンダー420は、駆動機構を介して、加工物輪郭に基づいてストロークを変えて、ストリップカソード402を弾性的に変形させ且つ加工物表面を囲むようにすることができる。
【0036】
上述のように、複数のシリンダー420すなわち複数の支持コネクタ420によって作用される圧力を実質的に等しくすることが好ましい。すなわち、支持コネクタ420は、可変のストローク及び実質的に一定の圧力を有することができ、これによりシリンダー内の空気圧が一定に確保される。或いは、とりわけ液圧又は電磁機構を支持コネクタ420として用いてもよい。
【0037】
各支持コネクタ420は、対応する支持コネクタ420の下端部をストリップカソード402に結合する回転カプラ450を含むことができる。回転カプラ450の実施例はジャーナル軸受である。図4bで分かるように、ジャーナル軸受450が転回し、垂直方向に延びる支持コネクタ420を弾性バッキングストリップ445と共に湾曲ストリップカソード402と結合する。
【0038】
トリップカソード402が2Dで弾性的に変形すると横方向で短くなる。外側支持コネクタ420の上の滑りカプラ430により、シリンダー並進部460が、垂直方向に延びる支持コネクタ420を湾曲して横方向に短くなったストリップカソード402とリンクさせることができるようになる。滑りカプラ430に接続された支持コネクタ420は、
好ましくはある限度内で機械ラム412に対して横方向への滑動が許容されるので、非固定支持コネクタと呼ばれる。
【0039】
他方、横方向位置が機械ラム412に対して固定される少なくとも1つの固定支持コネクタ420が存在することが好ましいとすることができる。図4a及び4bでは、機械412への固定接続部440によって横方向位置が固定された中央支持コネクタ420が図示されている。これは単に1つの実施例に過ぎず、限定ではない。非中央支持コネクタを含む支持コネクタ420の何れかを固定することができる。
【0040】
回転カプラ450及び滑りカプラ430により、非固定支持コネクタは、機械ラム412から実質的に垂直方向に真っ直ぐに延び又は接触し、湾曲して横方向に短くなったストリップカソード402とリンクすることができるようになる。固定支持コネクタは、その固定接続部により装着ラム312から実質的に垂直方向に真っ直ぐに延び又は接触する。回転カプラ450により、固定及び非固定の支持コネクタ420の両方が、図4bで分かるように加工物表面輪郭に実質的に法線方向に適応できるようになる。
【0041】
フレキシブルECプロセス工程の間、FECツール400は加工物106に対してZ方向(図4a及び4bにおいて紙面の内外方向)で移動すると仮定する。FECツール400は、Z方向に沿って加工物106の表面をトレースすることができる。FECツール400がZ方向で駆動されると、固定及び非固定両方の全ての支持コネクタ420は、変化するストロークを取り、駆動力に対する横方向剛直性並びにカソードのフレキシビリティに対する垂直自由度を提供することができる。明確にするために、電解質及び電源接続部は図示していない。
【0042】
図5は、底面から見た、ストリップカソード402を含む例示的なフレキシブルカソード構造を示している。図5では、底面からの矢視であるので、ここではY方向は、図のように紙面の内外である点に留意されたい。好ましくは、ストリップカソード402は、平坦で、比較的長く薄肉である。相対寸法は必ずしも縮尺通りではない。構造体500は、好ましくは、実際には、カソード402がストリップ、すなわち線カソードとみなすことができるように、その幅よりも遙かに長さが長い。カソード402は、ゴムストリップバッキングを備えたフレキシブルなシートメタルから形成することができる。
【0043】
構造体500はまた、電解質を供給するための複数の入口510と、電解質を流出させることができる複数の出口520とを含むことができる。複数の絶縁スペーサ530間のスペースは、本実施形態において出口520を定める。構造体500はまた、1以上の絶縁スタンドオフ535を含む。スタンドオフ535及びスペーサ530は、入口510から出口520に電解質を誘導し、側部及び後部への電解質の漏洩及び放出を阻止する。好ましくは、絶縁スタンドオフ535及び絶縁スペーサ530は全て、所定の厚み(ページの内外に)があり、カソード402と加工物106との間に明確に定められた電極間ギャップを提供するようにする。
【0044】
電解質流動が安定していない区域には、絶縁コーティング540が施工されるのが好ましい。不安定な電解質流動は、望ましくない表面粗面化を生じる可能性がある。これらの区域は通常、電解質入口510及び出口520を含む。従って、図5に示すように、絶縁コーティング540は、入口510及び出口520に対応する区域において施工され、電解質が比較的安定している構造体500の中央は露出される。
【0045】
図6は、本発明の別の実施形態に係るフレキシブル2D FECツール600を示している。FECツール600は、ストリップカソード構造体500及び機械ラム612など、FECツール400として多くの同様の構成要素を含むことができる。FECツール600はまた、少なくとも1つの固定支持コネクタ(回転カプラ630に接続される)及び少なくとも1つの非固定コネクタ(固定コネクタ640に接続される)を備えた複数の支持コネクタ620を含むことができる。支持コネクタ620は、回転カプラ650、例えば、ジャーナル軸受を通ってその下端部にてカソード構造体500に結合することができる。更に、支持コネクタ620は、そのストロークが変化し、更に、ストロークが変化している間に均一な圧力を加えることができる。
【0046】
しかしながら、滑りカプラの代わりに、回転カプラ630が上端部にて非固定支持コネクタ620を結合することができる。参照を容易にするために、回転カプラ650及び630は、それぞれ、下側及び上側回転カプラと呼ばれる。上側回転カプラ630により、外側非固定支持コネクタが回転し、弾性変形したときに横方向に短くなったストリップカソード402を収容することが可能になる。非固定支持コネクタは、必ずしも、機械ラム612から垂直方向に真っ直ぐに延び、又は接触しなくてもよい。下側回転カプラ650により、固定及び非固定支持コネクタの両方が加工物表面輪郭に対して実質的に法線方向に適応することが可能になる。
【0047】
動作の点では、FECツール400及び600は両方とも、連続EC研磨プロセスなどの連続ECプロセスを実施するのに優れたものである。加工物106の表面をトレースするのにFECツール400、600が移動している間、FECツール400、600は加工物106の表面輪郭に連続的に適応し、EC研磨プロセスを実施する。
【0048】
図7は、本発明の一実施形態に係る研磨、仕上げ加工、及び/又は整形などのフレキシブルECプロセスを実施するシステムを示している。システム700は、電解質が作業タンク720を充填し、蒸気タービンバケット及びFECツール704などの加工物106がECプロセス中に浸漬されるようにする電解質システムに関する実施例として説明することができる。或いは、FECツール704及び加工物106を浸漬することなく、電解質を流体導管を介してカソード入口に、及びFECツール704のカソード出口から外に供給することができる。FECツール704は、機械ラム712に接続することができる。加工物106は、左右クランプ732、734により作業タンク720内で支持することができる。コントローラ760は、システムの動作を自動的に又はオペレータからの手動命令により制御することができる。コントローラ760は、コンピュータ、記憶装置、通信ユニット、及び多数の制御プログラムなど、ハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアの種々の組み合わせによって実施することができる。
【0049】
明瞭にするために、電解質リザーバ、電解質ポンプ、電解質フィルタ、電源、コントローラ、駆動機構、パイプ、ホース、及び取付具などの構成要素は図示していない。また、コントローラ760と他の構成要素間の接続部は、情報を曖昧にするのを軽減するために図示していない。
【0050】
図8は、本発明の1つの態様による、フレキシブルEC研磨プロセスを実施する例示的な方法のフローチャートを示す。方法800において、ステップ810では、コントローラ760は、加工物106の表面部分に係合するようFECツール704を位置決めすることができる。例えば、FECツール704は、右クランプ734又は左クランプ732付近の加工物106の右端部又は左端部など、既知の開始位置に位置決めすることができる。ステップ820において、コントローラ760は、電源及び電解質流動を起動してEC研磨プロセスを開始することができる。
【0051】
ステップ830において、FECツール704は、加工物106の末端側に達するまでコントローラ760の制御下で加工物106をトレースする。例えば、FECツール704が最初に右クランプ734付近で加工物106を係合している場合、第1のトレースの動きは、FECツール704が左クランプ732に到達するまで左クランプ732に向かってFECツール704を移動させる。FECツール704が動いている間、コントローラ760によって電源及び電解質が維持され、すなわち、EC研磨プロセスが連続して実施される。また、FECツール704が移動すると、該ツール704は、加工物106の表面輪郭に連続的に適応する。
【0052】
末端側に到達すると、コントローラ760は、ステップ840においてEC研磨プロセスが完了したか否かを判定することができる。ECM研磨が終了したか否かを判定する基準は、特定の状況に依存することができる。一例として、加工物106の表面全体をトレースした時点で完了したとみなすことができる。別の状況では、表面全体のうちの一部だけのトレースで十分である場合もある。極めて滑らかな表面が望まれる場合、加工物106を2回以上トレースすることができる。
【0053】
ステップ840において、EC研磨プロセスが完了していないと判定されると、ステップ850において、コントローラ760は、FECツール704の再配置を行うことができる。例えば、コントローラ760は、右及び左クランプ734、423に指示して、「w」方向に加工物106を回転させることができる。FECツール704が再配置されると、ステップ830は、他端に到達するまで加工物106のトレースを繰り返すことができる。トレースステップの間、EC研磨プロセスは、連続して実施することができる。コントローラ760は、ステップ840において、EC研磨プロセスが完了したと判定されるときまで、ステップ830、840、及び850のループを継続することができる。次に、ステップ860において、コントローラ760は、FECツール704を加工物106から係合解除させることができる。
【0054】
FECツール400及び600は極めて有用であるが、コーナー及び縁部のように、加工物輪郭が非常に厳しい状況がある。このような状況においては、フレキシブルFECツールの代替設計が望ましいとすることができる。図9a及び9bは、本発明の別の実施形態に係るフレキシブルFECツール900を示している。FECツール900は、コーナーリングFECツール900と呼ぶことができる。図9aは、FECツール900の側面図を示し、図9bは、図9aの位置Aから見たFECツール900を示している。
【0055】
FECツール900の構造は、図5に示す構造体500と同様とすることができる。FECツール900は、複数の入口910、複数の出口920、複数の絶縁スペーサ930及びスタンドオフ935、絶縁コーティング940、並びに、図9bで分かるようにストリップ又はシートカソードとすることができるカソード902を含むことができる。これらの構成要素は、図5に示す構造体500の構成要素と同様の機能を果たすことができ、従って、これ以上説明しない。
【0056】
しかしながら、図9aで分かるように、FECツール900はエラストマー950を含み、FECツール900が加工物106のコーナーに適応できるように適応バッキングを提供する。図9bにおいて、エラストマー950は、中央よりもカソード902の縁部付近においてより多く裏込めされるようなものである点に留意されたい。これは、コーナー適応において電解質及び加工物圧力に対する緊密シールを提供することを可能にする。
【0057】
一般に、加工物106のコーナーは、凹状面を形成する端点960から実質的に直線方向に延びる2つの側面962及び964として見なすことができ、コーナー角θは、側面962及び964により形成された角度とみなすことができる。コーナー角θは、図9bに示すように直角とすることができ、或いは、他の角度であってもよい。角度θは具体的には限定されない。多くの場合、コーナー角は、80度と100度の間の範囲が一般的である。
【0058】
FECツール900の下層は、コーナー角θと必ずしも同じである必要はなく、鈍角まで予め撓ませることができる。好ましくは、予撓み角度αは、加工物のコーナー角θと少なくとも実質的に等しく、すなわち、α−θ≒0である。しかしながら、関係α−θ>0が成り立つことが更に好ましく、すなわち、FECツール900の鈍角αは、加工物のコーナー角θよりも大きいことが好ましい。
【0059】
作動時には、このコーナーリングFECツール900は、最初に加工物コーナー部分内に押し込まれ、機械ラム912の力を受けて締まり嵌めすることができる。FECツール900が加工物コーナー内に押し込まれると、カソード902の縁部に沿った圧縮は、α−θ≒0、すなわちαとθが実質的に同じ角度であるときには、カソードの中央における圧縮よりも小さくなる可能性が高い。α−θ>0であるときには、縁部に沿った圧縮が増大することになり、これによりカソード902の縁部と中央との間の圧縮差が最小となる。すなわち、差分α−θが増大すると、圧縮差はゼロになる傾向がある。α−θが引き続き増大すると、最終的には、縁部の圧縮が中央よりも大きくなる可能性がある。
【0060】
従って、1つの態様において、コーナリングツール900は、差分α−θは最小角度差よりも大きいか又は実質的に等しく、最大角度差よりも小さいか又は実質的に等しいようにされる。最小及び最大角度差は、FECツールの縁部とコーナーとの間の圧力差が所定の許容可能な範囲内に留まる角度差の範囲にあると判定することができる。あるECプロセスにおいて、それぞれ10度と45度である最大角度差及び最小角度差が適合する。
【0061】
図10a及び10bは、本発明の別の実施形態に係るFECツール1000を示している。FECツール1000は、エッジングFECツール1000と呼ぶことができる。図10aは、FECツール1000の側面図を示す。図10bは、線A−Aに沿って位置Aから見たときのFECツール1000の構造断面図を示す。一般に、加工物106の縁部は、凸面を形成する端点1060から実質的に直線方向に延びる2つの側面1062及び1064とみなすことができ、縁部角度は、側面1062及び1064により形成される角度φとみなすことができる。
【0062】
エッジングFECツール1000は、複数の入口1010、複数の出口1020、複数の絶縁スペーサ1030及びスタンドオフ1035、絶縁コーティング1040、並びに、図10bで分かるようにストリップ又はシートカソードとすることができるカソード1002を含むことができる。これらの構成要素は、図5及び9bの同様の構成要素に関して説明したのと同様の機能を果たすことができ、従って、これ以上説明しない。
【0063】
コーナーリングFECツール900と同様に、エッジングFECツール1000は、エラストマー1050を含むことができ、加工物106の縁部に適応するように適応バッキングを提供する。縁部は、撓みが生じる中央よりもより多く裏込めすることができる。カソード1002は予め撓められている。しかしながら、予撓み角度βは、関係β−φ≒0が成り立つように、加工物106の縁部角度φよりもより厳しいのが好ましい。関係β−φ<0が成り立つことが更に好ましい。
【0064】
作動時には、このエッジングFECツール1000は、最初に、加工物縁部分内に押し込まれ、フレキシブルカソード1002と部分縁部との間を締まり嵌めすることができる。FECツール1000が縁部を通って掃引されると、FECツールの開口及び側部曲率は、縁部区域付近の部品表面と気密接触を維持するよう変化する。
【0065】
カソード1002の予撓み角度βにおいて、FECツール1000は、φ0からφ1の範囲、すなわち、φ0≦φ≦φ1である角度φの縁部上で用いることができ、縁部角度範囲φ1からφ0内で、カソード1002の何れかの部品間の圧縮差は、所定の許容限度内にあるようにする。例えば、範囲φ1からφ0は、好ましくは10度以下である。すなわち、公称的に特定の角度φに対して設計されるエッジングツール1000は、角度が2,3度の公称角度内にあるエッジング表面に用いることができる。範囲φ1からφ0は、2度以下であることが更に好ましい。
【0066】
ゼロツール角には超鋭角を提供できる点に留意されたい。ゼロ角のエッジングツール1000では、側面1062及び1064により形成される端点106からのツール1000の予撓み角βは、ツール1000が加工物106と係合していないときに、少なくとも1つの部品についてゼロにすることができる。エラストマー1050により提供される裏込めは、必要とされる予撓み角及び嵌め込みを提供するよう適宜に変形する。エッジングFECツール1000は、加工物106がFECツール1000に対して駆動されるときに連続的又は断続的研磨に用いることができる。
【0067】
ここまでは、2D FECツールの実施例を例証し説明してきた。図11a及び11bは、本発明の一実施形態に係るフレキシブル3次元(3D)FECツールを示している。FECツール1100は、シートメタル1102、機械ラム1112、及び複数の支持コネクタ1120を含むことができる。機械ラム1112は、上端部にて支持コネクタ1120と接続することができる。支持コネクタ1120の下端部は、シートカソード1102の上面に沿って種々の部品にてシートカソード1102と接続することができる。
【0068】
シートカソード1102は、3Dで弾性的に変形可能であるのが好ましい。図11a及び11bでは、シートカソード1102は、XZ平面において弾性バッキング1145を含む層状構造の一部とすることができる。加工物106(図示せず)の表面部分が、様々なXZ点に沿って層状カソード1102を圧縮すると、シートカソード1102は、Y方向で弾性的に変形し、凹面状又は凸面状の何れかで加工物106の表面輪郭に共形にすることができる。シートカソード1102は、3D加工物106の表面輪郭に連続的に共形にするように変形され、加工物106の表面がシートカソード1102に関連して移動するときにトレースされるようにすることができる。このようにして、加工物106は連続的に研磨することができる。
【0069】
支持コネクタ1120は、シートカソード1102が3Dで弾性的に変形したときに、コネクタのストロークを変えることができる。但し、ストロークに関係なく、支持コネクタ1120は、均一な圧力を加え、従って、シートカソード1102が加工物の湾曲面に適応することができるような垂直方向のフレキシビリティを提供するのが好ましい。一実施形態において、支持コネクタ1120は、図4aに示すシリンダー420と類似の空気シリンダーを含む。すなわち、図11a及び11bに示していないが、各シリンダー1120は、垂直滑り軸受1127と、弾性的支持を提供するバネ1128とを含むことができ、更にシリンダー1120のストロークを変えるよう移動することができるピストン1129を含むことができる。ピストン移動量、及びその結果、ストローク量は、圧縮時の加工物輪郭の表面硬度による。
【0070】
駆動機構は、機械ラム1112に組み込むことができる。更に、複数の支持コネクタ1120により加わる圧力は、ストロークの長さに関係なく実質的に等しいことが好ましい。
【0071】
少なくとも1つの支持コネクタ1120は、その上端部において、ボールジョイントのような2つの直交方向で回転可能な上側カプラ1130により機械ラム1112に結合することができる。その下端部において、各指示コネクタ1120は、シートカソード1102を支持コネクタ1120と接続する下側カプラ1150を有することができる。
【0072】
一実施形態において、下側カプラ150は、パッドに接続され、2つの直交方向に回転可能な機構を含むことができ(例えば、ボールジョイント)、パッドは、シートカソード1102に取り付けることができる。このような回転可能な下側カプラ1150により、支持コネクタ1120が加工物表面輪郭に対して実質的に法線方向に適応することが可能になる。
【0073】
別の実施形態において、下側カプラ150は、パッドを含むことができるが、回転機構は含まない。シートカソード1102が層状構造体とすることができることは、上記で説明されている。構造体は、好ましくは、シートメタル1102上に弾性バッキング1145(例えば、エラストマー裏込め又はゴムバッキング)を含み、パッドは、弾性バッキング1145に取り付けられる。従って、下側カプラ150が回転機構を含まない場合でも、支持コネクタ1120とシートカソード1102との接続は、必ずしも剛直である必要はなく、加工物輪郭に垂直なある程度の適応を生じさせることができる。
【0074】
回転機構を含まない実施形態においても、シートカソード1102は依然として弾性バッキング1145を含むのが好ましい点に留意されたい。
【0075】
フレキシブルECの作動時には、FECツール1100は、下にある加工物106と上にある機械ラム1112との間で圧縮することができる。同じ圧力の支持コネクタ1120は、加工物106の表面部分に応じた異なるストロークをとることができる。下側カプラ1150は、FECツール1102を支持コネクタ1120と接続することができ、上側カプラ1130は、支持コネクタ1120と機械ラム1112との間で適切な接触角を維持可能にすることができる。FECツール1100が表面部分をトレースすると、支持コネクタ1120は、異なるストロークをとり、駆動力に対する横方向剛直性を提供することができる。電解質及び電力接続部は、明確にするために省略されている。空気シリンダーを備えた中央支持コネクタは、上部にボールジョイントを有する必要はない点に留意されたい。この中央支持コネクタは、主要横方向剛直性を提供する。しかしながら、これは以下で図示するように厳密な要件ではない。
【0076】
上側カプラ1130は、2つの直交方向で所定の限定的な回転角度範囲を有するのが好ましい。この場合、各支持コネクタ1120は、全て非固定支持コネクタ1124であるように対応する上側カプラ1130を有することができる。しかしながら、少なくとも1つの支持コネクタ1120は、その上端部にて固定接続部1140を含み、支持コネクタ1120が機械ラム1112に対してXZ位置で固定されるようにすることも可能である。図11aにおいて、固定支持コネクタ1120は、中央支持コネクタとすることができる。但し、これは単なる実施例に過ぎず、限定ではない。支持コネクタ1120のどれもが固定にすることができる。
【0077】
図4aから11bに示されるフレキシブルFECツールの実施形態は、フレキシブルEC研磨プロセスにおいて加工物106をトレースする優れた選択肢である。換言すると、図8に示すフレキシブルEC研磨法で使用されるFECツール704は、FECツール400、600、及び1100の何れかとすることができる。コーナー及び縁部などの浸食性の表面をEC研磨する必要があるときには、加工物900及び1000を用いることができる。
【0078】
しかしながら、FECツールの実施形態の全てではないにしてもほとんどが、フレキシブルEC仕上げ加工用にも用いることができる。本明細書において、仕上げ加工は、加工物の表面誤差が修正されるプロセスを指す。この関連において、表面誤差は、当該表面部分に許容される所定の許容差範囲を超える、加工物の表面部分の輪郭の偏差、例えば、表面高度の偏差として定義される。
【0079】
仕上げ加工は、正確なニアネットシェイプ形成を実施する方法を提供している。鋳造又は鍛造のような形成プロセスを用いると、表面仕上げ加工を必要とすることなく最終加工物形状を提供する。最終機械加工の必要性を軽減又は排除するとプロセスが簡素化され、コストが低減されるので、このために正確な形成によってニアネットシェイプを達成することは数十年にわたって求められてきた。
【0080】
インベストメント鋳造及びネット鍛造などのプロセスは、0.001インチ又は1ミルほどの厳しい許容誤差に適合するための正確な形成を提供することができる。しかしながら、これは、多大なコストで達成され、限定的な部品サイズにしか実施できない。形成プロセスが表面精密度を維持しながらバルク材料を処理することは、基本的に困難なことある。一般に、バルク材料が変位すると、表面精度を維持するのが困難になる。また、形成コストは、部品許容誤差が厳しくなり、部品サイズが大きくなるほど指数関数的に大きくなる。厳しい許容誤差を得るために最終機械加工が依然として必要とされる場合、ネットシェイプの当初の目的は得られないか又は縮小される。除去されるストックが減少するにも関わらず、3D表面の輪郭を形成するために、正確且つ高価な5軸コンピュータ数値制御(CNC)機械加工が依然として必要とされる場合がある。
【0081】
加えて、形成プロセスからの表面品質は通常、ほとんどの部品仕様に適合することができない。表面部分が直接固化又は鍛造された後は、通常は表面粗度が高い。ほとんどの場合、表面冷却速度が緩慢であることに起因して、あらゆる鋳造又は鍛造上に粗い表面粒の層が存在する。仕上げ加工無しの場合、表面酸化が問題となることが多い。
【0082】
厳しい形成精度のコスト圧力を軽減し、同時にバルク材料及び表面を経済的に処理可能にするために、ニアネットシェイプ後の表面仕上げ加工を効率的に実施する必要がある。このようにして、ニアネット形成により粗加工の必要性が排除されるので、大型のストック除去の従来の機械加工は、表面材料のみを処理するよう簡素化され、大幅に改善することができる。粗く迅速な処理は通常、材料及びエネルギーを節減するよう形成することにより良好に実施することができる。
【0083】
本発明の1つの態様において、ニアネット形成後に加工物をフレキシブルEC仕上げ加工するのに用いることができるフレキシブルFECツールが設けられる。例えば、タービンのノズル又はバケットなどの加工物106は、最初に、インベストメント鋳造によってニアネット形成することができる。上述のFECツール400、600、900、1000、及び1100と極めて類似したフレキシブルFECツールは、CNC動作無しでニアネット形成された翼形部表面に適応することができる。フレキシブルカソードが加工物表面を通ってトレースすると、FECプロセスが表面を研磨することができ、また、残留誤差を修正することができ、すなわち表面を仕上げ処理することができる。
【0084】
フレキシブルEC仕上げ加工を可能にするために、FECツールは、好ましくは、加工物の表面高度を検出できるセンサを含む。コントローラは、検出した高度を記憶されている部品幾何形状と比較することができる。必要な補正に応じて、コントローラは、電圧、トレース速度、電解質流動、及びパルス電力が印加される場合にはパルスパラメータなど、材料除去に影響を及ぼす要因のあらゆる組み合わせを制御することができる。
【0085】
フレキシブルEC仕上げ加工の数多くの利点がある。例えば、フレキシブルEC仕上げ加工は、強力な機械スピンドルを提供する必要性を排除することができる。また、硬質で耐久性のあるインコネルに対してもツール損耗が皆無か又はそれに近い。高い構造的精度を提供しながら、機械的負荷を小さくすることができる。更に、比較的少ないフレキシブルFECツールを用いて、迅速な研磨及び仕上げ加工を達成することができる。
【0086】
図12a及び12bは、本発明の別の実施形態に係るフレキシブル3D FECツール1200を示している。FECツール1200は、FECツール1100のようなフレキシブルEC研磨に用いることができる。但し、これに加えて、FECツール1200はまた、フレキシブルEC仕上げ加工にも用いることができる。図12aは、FECツール1200の側面図であり、図12bは、FECツール1200の底面図である。
【0087】
FECツール1200は、シートカソード1202、スペーサ1230、弾性バッキング1250、及び電解質入口チャンネル1210を含むことができる。機械ラム1212は、加工物を所望の方法で係合するようFECツール1200を位置決めすることができる。好ましくは、カソード1202は、銅及びスレンレス鋼のような、比較的薄肉でフレキシブルな導電性材料である。弾性バッキング1250は、カソード1202を変形させ、すなわち加工物の表面輪郭に共形にすることを可能にする弾性バッキングを提供することができる。弾性変形は、カソード1202の外面が加工物106の表面から所望の距離にあり、効率的なECMプロセスを実施できるようにすることができる。このようにして、FECツール1200は、多数のカソードダイを必要とすることなく、ほぼ3D表面を連続的に研磨することができる。
【0088】
図12bは、FECツール1200のカソード構造を示している。複数の絶縁スペーサ1230間のスペーサは、入口チャンネル1210から流入する電解質が流出することができる複数の出口1220を定める。スペーサ1230は、電解質を入口1210から出口1220に誘導する。スペーサ1230は、カソード1202と加工物との間に電極間ギャップを形成する。この特定の実施形態において、中央に近接したスペーサ1230は、縁部又は周辺に近接したスペーサ1230よりも厚肉に形成され、中央からのより良好な電解質流動を可能にする。絶縁コーティング1240は、スペーサ1230に対応する区域内に形成することができ、ここでは電解質流動が安定的である可能性が低い。
【0089】
FECツール1200は、図7及び8に示すECM研磨工程で使用することができる。すなわち、FECツール1200は、加工物106の様々な部分に適用することができ、ツール構造は、下にある加工物表面部分と上にある機械ラムとの間で圧縮することができる。弾性バッキング1250は、加工物の表面に共形の電解槽をシールするのに必要な弾性圧縮を提供することができる。加工物106及びツールカソード1200が相対移動すると、シートカソード1202は、シートカソード1202と係合する表面部分の輪郭に共形にすることができ、ECM研磨は、加工物表面とシートカソード1202との間のギャップ間を導通させて電解質を流すことにより実施することができる。
【0090】
但し、これに加えて、FECツール1200はまた、トレース中、すなわち連続移動中に加工物106の表面高度を検知するセンサを含むことができる。図12a及び12bにおいて、センサ1260は、スタイラス1262、線形スケール1264、及びバネ1266の組み合わせとして実施される。但し、この組み合わせは、センサ1260を実施する多くの方法のうちの1つに過ぎない。センサの他の実施は、LVDT、すなわち線形可変差動変圧器と、容量センサとを含む。
【0091】
スタイラス1262は、図示のようにFECツール1200の実質的に中央に配置することができるが、これは限定ではない。スタイラス1262は、他の場所に置いてもよい。例えば、スタイラス1262は、トレース方向においてカソード1202の「正面」に置くことができる。更に、センサの数は1つに限定されず、すなわち、複数のセンサを設けることができる。例えば、2つのスタイラス1262をトレース方向においてカソード1202の各側部に1つずつ設けることができる。
【0092】
センサは、図13a及び13bに示すようにフレキシブルEC仕上げ加工で使用するためFECツール400、600、及び/又は1100に加えることができる点に留意されたい。図13aにおいて、カソード構造体500が再現され、図13bでは、FECツール1100の底面図が再現されている。これらの図において、二重方形として描かれたセンサ1360は、各カソード構造の周りに分布される。入口、スペーサ、カプラ、及び出口などの他の構成要素は、明確にするために参照符号を付与していない。センサ1360がより多くあるのが望ましいが、実際に配備できるセンサの数を考慮に入れることができる、コストなどの幾つかの実際上の考慮事項が存在する場合がある。図13a及び13bに示すタイプの修正形態では、FECツール400、600及び1100はまた、フレキシブルEC仕上げ加工の加工物において用いることができると言えば十分である。
【0093】
図14は、本発明の1つの態様による、フレキシブルEC仕上げ加工.を実施する方法のフローチャートを示している。フレキシブルEC仕上げ加工.を実施する方法1400は、図8に示すフレキシブルEC研磨方法800と共通したステップ中の多くを共用している点に留意されたい。フレキシブルEC研磨プロセスと同様に、フレキシブルEC仕上げ加工プロセスは、加工物表面の輪郭に適応することができる。但し、既存の表面輪郭に単に共形であるのではなく、加工物が所望の最終形状に輪郭形成されるように、カソードのツールの弾性変形を能動的に制御することができる。図14では、蒸気タービンのバケットのような加工物106は、最初に、インベストメント鋳造又は鍛造などの別のプロセス、或いは固定形状FECツールを用いた従来のECMによって、ニアネットシェイプされていると仮定する。図7に示すシステム700は、例示的なフレキシブルEC仕上げ加工法1400を説明するのに併せて用いられ、ここでFECツール704は、センサを備えた
FECツール400、600、1100、及び1200の何れかとすることができる。
【0094】
方法1400では、ステップ1410においてコントローラ760は、加工物106の表面部分と係合するようFECツール704を位置決めすることができる。ステップ1420において、コントローラ760は、電源及び電解質流動を起動して、ECMプロセスを始動することができる。
【0095】
ステップ1430において、コントローラ760は、加工物106の末端側に到達するまでFECツール704に加工物106をトレースさせることができる。トレース中、加工物106は、フレキシブルEC仕上げ加工プロセスを受ける。図15はステップ1430を実施して、本発明の1つの態様による、加工物のトレース中にフレキシブルEC仕上げ加工プロセスを実行する例示的なプロセスのフローチャートを示している。図15に示すプロセスは、FECツール704が加工物106の一方端から他方端に移動したときに、FECツール704として連続的に実施することができる。
【0096】
ステップ1510において、センサ1260、1360のようなセンサによって表面部分の高度を検出することができる。センサ1260、1360は、検出結果をコントローラ760に提供することができる。ステップ1520において、コントローラ760は、検出した表面高度を当該特定の加工物106の表面部分についての記憶されたモデルと比較することができる。ステップ1530において、コントローラ760は、検出高度と記憶されたモデル高度との間の差異が許容限度内にあるか否かを判定することができる。
【0097】
加工物の許容誤差は、極めて一般的から極めて特異的な範囲にわたることができる点に留意されたい。ある事例では、同じ許容限度は、加工物の表面全体又は幾つかの加工物にわたって適用することができる。別の事例では、ある加工物内の様々な表面部分は、特定の表面部分にのみ適用される許容限度を有することができる。実際に、異なる許容限度は、異なる状況下で同じ加工物に適用することができる。例えば、加工物製造業者は、同じ加工物について異なるレベルの保証を提示することができる。最高の価格に値する最高の保証レベルにおいて、加工物の仕上げ加工において極めて厳しい許容誤差を適用することができる。他の保証レベルでは、記憶されているモデルから適宜より大きな偏差を許容
することができる。
【0098】
差違が許容限度内である場合、プロセスは、1550に進み、このトレースが完了したか否かを判定することができ、例えば、コントローラ760は、加工物106の末端側に到達したか否かを判定することができる。トレースが完了していない場合、プロセスは、ステップ1510を繰り返すことができる。
【0099】
しかしながら、ステップ153において、検出された高度が許容限度の外にあると判定された場合、コントローラ760は、ステップ154において、修正措置又は措置の組み合わせを取ることができる。修正措置の非網羅的なリストには以下のものを含む。第1に、カソード1202の形状を変更することができる。上述のように、FECツール400、600及び1100は、支持コネクタ420、620及び1120のストロークを変えるよう制御可能な駆動機構を含むことができる。必要とされる修正に応じて、コントローラ760は、カソードの異なる部分下で行われるEC処理の量が変化するように支持コネクタのストロークを変更することができる。例えば、比較的により多くの又はより少ない材料除去を必要とする表面部分では、支持コネクタ420、620、1120のストロークは、電極間ギャップを減少又は増大させるよう制御することができる。加工物が既にニアネットシェイプされているので、フレキシブルカソードの大幅な能動的整形が必要となる可能性は低い。
【0100】
第2に、トレース移動を変更することができる。例えば、コントローラ760は、FECツール704を必要に応じてより緩慢に、又は更に迅速に移動させることができる。移動速度は、表面部分高度を許容限度内にするのに必要な材料除去量に対応することができる。一般に、より緩慢な速度により、表面部分に対しより多くのEC処理を実施することが可能となる。実際には、これは、元のトレース検出に処理が戻る前にトレース方向を短い距離だけ反転させることであってもよい。
【0101】
第3に、必要に応じて電流を増減させることができる。表面部分が比較的より多くの又はより少ないEC処理を必要としている場合、FECツール704が表面部分を通り越すときに、コントローラ760により、電源が電流フローを増大又は減少させることができる。コントローラ760はまた、必要に応じて電解質流動を増大又は減少させるよう電解質ポンプを制御することができる。
【0102】
勿論、コントローラ760は、上述の修正措置の何れかを組み合わせて、ECM仕上げ加工を達成することができる。ステップ1540において修正措置が行われた後、コントローラ760はステップ1550に進むことができる。
【0103】
ステップ1550において、特定のトレースが完了したことが判定された場合、プロセス1430が起動され、本方法は、図14のステップ114から再開される。このステップにおいて、コントローラ760は、全体のフレキシブルEC仕上げ加工プロセスが完了したか否かを判定することができる。図8のフレキシブルEC研磨方法に関して上述したように、フレキシブルEC仕上げ加工プロセスが完了したか否かを判定する基準は、特定の状況に応じて決まる。
【0104】
ステップ144において、コントローラ760が、フレキシブルEC仕上げ加工が完了していないと判定すると、ステップ145において、コントローラ760は、例えば、クランプ732、734が加工物106を回転させることによって、FECツール704を再度位置決めすることができる。FECツール704が再度位置決めされた後、コントローラ760は、ステップ1430に進み、FECツール704が他の方向に移動したときにフレキシブルEC仕上げ加工を繰り返すことができる。コントローラ760は、ステップ144において、フレキシブルEC仕上げ加工が完了したと判定されるまで、ステップ1430、1440、及び1450のループを繰り返すことができる。ステップ146において、FECツール704を加工物106から係合解除することができる。
【0105】
フレキシブルEC研磨及び仕上げ加工プロセスに加えて、フレキシブルトレースを用いて、加工物を更に最終整形することができる。発電などの産業においては、効率の更なる漸次的向上により有意なコスト節減を示すことができると説明してきた。また、従来のECMでは、ツール再編成は高価なプロセスであると説明してきた。ツール再編成、すなわち新規のFECツールを製作することはまた、大幅な時間を要する可能性がある。
【0106】
上述のフレキシブルECプロセスを用いると、このようなコスト及び時間を軽減することができる。例えば、有効な効率改善をもたらすために、既存の加工物の設計の比較的小さな変更が示される状況が存在する場合がある。このような状況において、加工物は、最初に、既存のモールド、ダイ、又はFECツールを用いて構築することができる。最初に構築される加工物は、新設計のフレキシブルEC整形プロセスを受けることができる。実際には、新旧設計間の変更は、フレキシブルEC仕上げ加工プロセスを通じて修正されるべき誤差として処理される場合がある。このようなプロセスを用いて、新規の設計加工物の製作を開始することができると共に、新設計に固有のモールド、ダイ、及びFECツールが出現することができる。これは、「早期市場参入」への製造者の機会を高めることができる。
【0107】
また、このようなプロセスを用いて、新規設計を比較的迅速に試験することができる。例えば、コンピュータモデルは、微調整設計が期待できることを示すことができるが、現実の試験には検証が必要とされる。試験のために再編成の時間及び費用が生じる代わりに、フレキシブルEC仕上げ加工プロセスを用いて、試験加工物を作製することができる。
【0108】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、更に、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること並びにあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0109】
106 加工物
300,400,600,704,900,1000,1100,1200 電気化学的ツール
302,402,902,1002,1102,1202 カソード
304 スペーサパッド
308 導電ストリップ
310 電解質チャンネル
312,412,612,712,912,1012,1112,1212 機械ラム
420,620,1120 支持コネクタ
427,1127 滑り軸受
428,1128 バネ
429,1129 ピストン
430 滑りカプラ
445,1145,1250 エアラストマーバッキング
450,650 下側回転カプラ
500 フレキシブルカソード
510,910,1010,1210 入口
520,920,1020,1220 出口
530,930,1030,1230 絶縁スペーサ
535,935,1035,1235 絶縁スタンドオフ
540,940,1240 絶縁コーティング
630 上側回転カプラ
950,1050,1150 エラストマー
960 端点
962,964,1062,1064 側面
1060 端点
1130 上側カプラ
1140 固定接続部
1260,1360 センサ
1262 スタイラスセンサ
1264 スケールセンサ
1266 バネセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物(106)にフレキシブル電気化学プロセスを実施するのに用いるフレキシブル電気化学ツール(400、600)であって、
2次元(2D)で弾性的に変形可能なストリップカソード(402)と、
機械ラム(412、612)と、
ストリップカソード(402)の長さに沿って、上端部にて機械ラム(412、612)と接続され、下端部にてストリップカソード(402)と接続された複数の支持コネクタ(420、620)と、
を備え、
前記複数の支持コネクタ(420、620)が、前記機械ラム(412、612)に対して横方向位置が固定される少なくとも1つの固定支持コネクタ(420、620)を含み、
該各支持コネクタ(420、620)は、前記ストリップカソード(402)が弾性的に変形したときにストロークが変わるように構成され、
前記各支持コネクタ(420、620)は、前記支持コネクタ(420、620)の下端部を結合するよう構成され、且つ前記ストリップカソード(402)が弾性的に変形したときに転回するよう構成された回転カプラ(450、650)を含む、フレキシブル電気化学ツール(400、600)。
【請求項2】
前記複数の支持コネクタ(420)はまた、滑りカプラ(430)を介して上端部にて前記機械ラム(412)に滑動可能に結合された少なくとも1つの非固定支持コネクタ(420)を含み、前記ストリップカソード(402)が弾性的に変形したときに前記非固定支持コネクタ(420)が前記機械ラム(412)に対して横方向に移動することが可能となり、前記非固定支持コネクタ(420、620)が前記機械ラム(412)から実質的に垂直方向に延びるか又は接触するようになる、請求項1記載のフレキシブル電気化学ツール(400)。
【請求項3】
前記回転カプラ(650)が下側回転カプラ(650)であり、前記複数の支持コネクタ(620)はまた、上側回転カプラ(630)を介して上端部にて前記機械ラム(612)に回転可能に結合された少なくとも1つの非固定支持コネクタ(620)を含み、前記ストリップカソード(402)が弾性的に変形したときに前記非固定支持コネクタ(620)が回転可能になる、請求項1記載のフレキシブル電気化学ツール(600)。
【請求項4】
前記ストリップカソード(402)が弾性的に変形して、前記加工物(106)の2D表面輪郭に連続的に共形になり、前記加工物(106)が前記ストリップカソード(402)に関連して移動したときに前記加工物(106)の表面がトレースされ、前記各支持コネクタ(420、620)は、前記ストリップカソード(402)の弾性変形に連続的に適応するようストロークを変えると共に、該ストロークの変化に関係なく実質的に一定の圧力を加えるように構成される、請求項1記載のフレキシブル電気化学ツール(400、600)。
【請求項5】
前記各支持コネクタ(420、620)は、制御信号に基づいてストロークを能動的に変化させ、前記ストリップカソード(402)を弾性的に変形させるように構成される、請求項1記載のフレキシブル電気化学ツール(400、600)。
【請求項6】
加工物(106)にフレキシブル電気化学プロセスを実施するためのフレキシブル電気化学ツール(1100)であって、
3次元(3D)で弾性的に変形するよう構成されるシートカソード(1102)と、
機械ラム(1112)と、
前記シートカソード(1102)の上面に沿って、上端部にて前記機械ラム(1112)と接続され、下端部にて前記シートカソード(1102)と接続された複数の支持コネクタ(1120)と、
を備え、前記各支持コネクタ(1120)は、前記シートカソード(1102)が弾性的に変形したときにストロークが変わるように構成され、
前記各支持コネクタ(1120)は、前記シートカソード(1102)が弾性的に変形したときに前記各支持コネクタ(1120)の下端部を前記シートカソード(1102)に結合するよう構成された下側コネクタ(1150)を含む、フレキシブル電気化学ツール(1100)。
【請求項7】
前記複数の支持コネクタ(1120)は、全て非固定支持コネクタであり、該非固定支持コネクタは各々、前記非固定支持コネクタ(1120)を前記機械ラム(1112)と結合するよう上端部にて上側カプラ(1130)を含み、該上側カプラ(1130)は所定の角度範囲内で直交方向に回転可能である、請求項6記載のフレキシブル電気化学ツール(1100)。
【請求項8】
前記複数の支持コネクタ(1120)は、前記機械ラム(1112)に対してその上端部の固定接続部を介して横方向位置が固定される少なくとも1つの固定支持コネクタ(1120)を含み、前記各非固定支持コネクタ(1120)が、前記非固定支持コネクタ(420、620、1120)を前記機械ラム(1112)に結合するため上端部にて上側カプラ(1130)を含み、該上側カプラ(1130)は所定の角度範囲内で直交方向に回転可能である、請求項6記載のフレキシブル電気化学ツール(1100)。
【請求項9】
前記シートカソード(1102)が弾性的に変形して、前記加工物(106)の3D表面輪郭に連続的に共形になり、前記加工物(106)が前記シートカソード(1102)に関連して移動したときに前記加工物(106)の表面がトレースされ、前記各支持コネクタ(1102)は、前記シートカソード(1102)の弾性変形に連続的に適応するようストロークを変えると共に、該ストロークの変化に関係なく実質的に一定の圧力を加えるように構成される、請求項6記載のフレキシブル電気化学ツール(1100)。
【請求項10】
前記加工物(106)の表面高度を検出するよう構成された少なくとも1つのセンサ(1360)を更に備える、請求項6記載のフレキシブル電気化学ツール(1100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a−b】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−16813(P2012−16813A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−143631(P2011−143631)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】