説明

フレキシブルダクト及びその形状保持材

【課題】従来、フレキシブルダクトは柔軟であるが故に、屈曲状態を保持するためには、予め屈曲された補強部材を用意して取り付けたり、吊り間隔を狭く取らざるを得ないなど、施工において手間がかかりコストが増すという問題がある。本発明の目的とするところは、フレキシブルダクトの屈曲状態を容易に保持し、吊り間隔を広く取れる技術を提供することにある。
【解決手段】フレキシブルダクト13は、コア1を断熱材2で被い、さらに外装材3を被せたものに、線材4が同梱された袋体5を粘着テープ6を用いて貼り付けて構成されている。線材4は、鉄線、ビニール被覆された金属線、鍍金された金属線、銅線、ステンレス線など、環境に応じて選択され、また、その径はフレキシブルダクトの大きさにより適宜選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設物の空調・換気設備に使用されるフレキシブルダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
空気搬送路として使用されるフレキシブルダクトは、ポリエステルや不織布等を基材とする円筒状のコアと呼ばれる内面材を有し、その外周に円筒状の断熱材を被せ、さらにビニールやアルミ箔等を外装材としたもので、柔軟な形状変化が可能である。このフレキシブルダクトは本体に吊り下げ具係止袋体を備え、また、フレキシブルダクト外周に所定の間隔でバンドを巻いて支持をとる。しかし、柔軟なために吊り間隔を狭く取らざるを得ず、施工に多大な労力を要する。また、その柔軟な形状変化に起因して自重で垂れ下がることにより、他の建築設備に影響を及ぼす等の問題がある。そこで、このような問題を解決するために、例えば、特許文献1の技術が開示されている。提案されるフレキシブルダクトは、波打ち現象と自重による垂れ下がりを防止するもので、屈曲自由なダクト本体と、予め用意した補強部材を取り付けることで波打ち現象が防止される。また、特許文献2では、伸縮及び弾性変形自在に構成されるダクト及びステーにより問題を解決する手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-174035号公報
【特許文献2】特開平7−208798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているフレキシブルダクトは、屈曲状態を保持するためには予め屈曲された補強部材を用意し取り付けなければならず、施工において手間がかかりコストが増すという問題がある。また、特許文献2に開示されている技術は、形状保持を目的としているが、ダクトルートを補正するための副木効果に期待するものであり、吊り間隔が狭く屈曲状態の保持に問題がある。本発明は、従来技術が有する上記の問題点に鑑みそれを解決すべく草案されたものであって、その目的とするところは、フレキシブルダクトの屈曲状態を保持し、吊り間隔を広く取れる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コイル状に形成された芯材と、当該芯材の外周に中間材とし配設された断熱材と、当該断熱材の外周に配設された外装材と、からなるフレキシブルダクトにおいて、線材を内設した袋体を、前記外装材の外周及び/又は前記芯材と前記断熱材の間に、長手方向に、所定の数を所定の位置に、粘着テープを用いて貼付け、自在に形状を保持しうることを特徴とする。また、前記線材は、鉄線、ビニール被覆された金属線、鍍金された金属線、銅線、ステンレス線から、使用環境の腐食性に応じて選択されることを特徴とする。さらに、形状保持材において、コイル状に形成された芯材と、当該芯材の外周に中間材とし配設された断熱材と、当該断熱材の外周に配設された外装材と、からなるフレキシブルダクトに貼り付け、前記フレキシブルダクトを自在に形状保持し剛性を高め支持間隔を広く取ることを目的とする、線材及び袋体、粘着テープからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記の手段により、フレキシブルダクトの屈曲状態を保持し、吊り間隔を広く取れ、施工における手間とコストを大幅に削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のフレキシブルダクトの(a)斜視図及び(b)A−A断面図である。
【図2】本発明のフレキシブルダクトへの線材の接着状況を示す。
【図3】本発明のフレキシブルダクトの屈曲状態を示す。
【図4】本発明のフレキシブルダクトの支持状態を示す。
【図5】本発明のフレキシブルダクトへの線材の配置状態の一例を示す。
【図6】本発明のフレキシブルダクトへの線材の接着状態の一例を示す。
【図7】本発明のフレキシブルダクトへの線材の配置状態の一例を示す。
【図8】本発明のフレキシブルダクトの施工状態の一例を示す。
【図9】本発明のフレキシブルダクトの施工状態の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。図1に示すように、フレキシブルダクト13は、コア1を断熱材2で被い、さらに外装材3を被せたものに、線材4が同梱された袋体5を粘着テープ6を用いて貼り付けて構成されている。線材4は、鉄線、ビニール被覆された金属線、鍍金された金属線、銅線、ステンレス線など、環境に応じて選択される。図1(b)はA−A断面図であるが、外装材3を円とした場合その中心から垂直方向に十字に延ばした線がその円と接する位置に配置した図1(a)に示すように線材4をフレキシブルダクト13の長手方向に平行に貼り付ける。また、その径はフレキシブルダクトの大きさにより適宜選択する。たとえばコア1の直径が100〜200mmにおいては、線材4は直径1〜1.6mmを用いる。しかしながらこの径は線材の材質により選択しうるものであり、限定するものではない。
【0009】
図2は線材の接着状況を示している。また、コア1、断熱材2、外装材3からなるフレキシブルダクト13と、粘着テープ6が付いた袋体5に同梱された形状保持部材である線材4を分離させた状態では、フレキシブルダクト13は、保管・運搬に際して丸めたり長手方向に縮めることが可能になる。線材4及び袋体5、粘着テープ6からなる形状保持材は運搬時は別々に梱包し、施工時に貼り付ける。
【0010】
図3はフレキシブルダクト13の屈曲状態を示している。線材4の作用により屈曲状態を保持し、フレキシブルダクト13の剛性を高めることにより、自重による垂れ下がりを防止し吊り間隔を広げることが出来る。
【0011】
図4はフレキシブルダクト13の支持状態を示している。フレキシブルダクト13の支持をとる際は、外装材3に支持用吊りバンド7を巻き、締結ボルト10、締結ナット11を用いて支持用吊りバンド7が外れないように締結し、さらに、支持用吊りバンド7に予め空いている穴に吊りボルト9を通し、ナット8にて留めて支持をとる。これにより支持間隔を広く取ることが出来る。
【0012】
図5はフレキシブルダクトへの線材の配置状態を示す。線材4及び袋体5は、フレキシブルダクトの直径に応じて、取り付け数と位置の選択が可能である。通常の配置状態は(b)のように四本の線材を等間隔で配置したものであるが、線材4の径を細くした場合においては(c)のように本数を増やすことも可能である。また、太くした場合には(a)もしくは(b)のように本数を減らしてもよい。
【0013】
図6はフレキシブルダクトへの線材の接着状態のその一例を示す。線材4及び袋体5は、コア1と断熱材2の間に予め取り付けられる。線材4、袋体5は製造時に取り付けられるものとする。
【0014】
図7は図6A’−A’断面図でありフレキシブルダクトへの線材の配置状態の一例を示す。線材4及び袋体5は、コア1と断熱材2の間に予め取り付けられるが、その数と位置は外装材3の外側に取り付けた場合と同じであり任意に選択可能である。
【0015】
図8はフレキシブルダクトの施工状態の一例を示す。周囲に障害物12があって、線材4及び袋体5が取り付けられた状態でのフレキシブルダクト13の取り付けに手間のかかる恐れがある場合は、障害物12に近接する部分には線材4及び袋体5を取り付けず、フレキシブルダクトの特徴である柔軟な形状の変化を生かして施工する。一方、線材4及び袋体5が取り付けられた部分は、剛性が高まり自重による垂れ下がりが防止されるため、フレキシブルダクトの支持間隔を広く取ることが出来る。
【0016】
図9はフレキシブルダクトの施工状態の一例を示す。吊りボルト9、及びナット8にて支持された制気口ボックス14と、丸ダクト15の間に接続されるフレキシブルダクト13を取り付ける場合について説明する。フレキシブルダクト13の長さが短い場合や、制気口ボックス14と、丸ダクト15の支持間隔が短く、フレキシブルダクト13の支持をとる必要が無い場合は、屈曲状態の保持をする部分を除いて、線材4及び袋体5を省略することも可能である。
【符号の説明】
【0017】
1コア
2断熱材
3外装材
4線材
5袋体
6粘着テープ
7支持用吊りバンド
8ナット
9吊りボルト
10締結ボルト
11締結ナット
12障害物
13フレキシブルダクト
14制気口ボックス
15丸ダクト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル状に形成された芯材と、当該芯材の外周に中間材とし配設された断熱材と、当該断熱材の外周に配設された外装材と、からなるフレキシブルダクトにおいて、線材を内設した袋体を、前記外装材の外周及び/又は前記芯材と前記断熱材の間に、長手方向に、所定の数を所定の位置に、粘着テープを用いて貼付け、自在に形状を保持しうることを特徴とするフレキシブルダクト。
【請求項2】
前記線材は、鉄線、ビニール被覆された金属線、鍍金された金属線、銅線、ステンレス線から、使用環境の腐食性に応じて選択されることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルダクト。
【請求項3】
コイル状に形成された芯材と、当該芯材の外周に中間材とし配設された断熱材と、当該断熱材の外周に配設された外装材と、からなるフレキシブルダクトに貼り付け、前記フレキシブルダクトを自在に形状保持し剛性を高め支持間隔を広く取ることを目的とする、 線材及び袋体、粘着テープからなることを特徴とする形状保持材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−261627(P2010−261627A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111705(P2009−111705)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(309010911)黒澤工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】