説明

フレキシブル球状物体または該フレキシブル球状物体を具備した管内移動体

【課題】中空の変形可能な球体もしくは回転楕円体であるフレキシブル球状物体を提供する。また、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールあるいは該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体を提供する。
【解決手段】中空のボール状の球状体において、北緯np度、東経0度の座標を持つ地点N1と、南緯sp度、東経m度の座標を持つ地点S1と、北緯np度、東経(360/n+a)度の座標を持つ地点N2と、南緯sp度、東経(m+360/n+a)度の座標を持つ地点S2の、以上の四つの地点を地表を通って結ぶ線により囲まれた部分を切り取って1個の球状体エレメントとし、n個の球状体エレメントを、赤道に沿って東西方向に、360/n度間隔で並べて配置したことにより、フレキシブル球状物体が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟材料を素材とする中空のボール状の球体もしくは中空のボール状の回転楕円体において、変形可能な球体もしくは回転楕円体、すなわちフレキシブル球状物体に関する。
本発明は、また、フレキシブル球状物体の応用例として、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に用いることが出来る、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールに関する。
本発明は、更に、該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空のボール状の球体もしくは中空のボール状の回転楕円体などの球状物体において、その直径を伸縮させることにより変形可能な球状物体は無かった。例えば、蛇腹を伸縮させて変形する「ちょうちん」においても、その直径が変わるものでは無かった。
本発明においては、直径が伸縮して変形するフレキシブル球状物体を提案するものである。本発明のフレキシブル球状物体は各種の容器や装飾品として利用することが出来る。
一方、本発明のフレキシブル球状物体は、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に用いることが出来る、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールとして利用可能であり、以下に詳述する。
【0003】
給水用配管や排水用配管あるいはガス配管などの各種配管の内面に付着した錆や水棲生物などの異物を除去し、これらを除去した後に、例えば塗料や耐蝕合金などの被覆材料のコーティングを行うなど、配管内で走行しながら配管の保守作業を行うことができる装置に係る公知技術としては、特許公開2003−225626号公報に記載の「配管内作業方法および装置」が知られている。
また特許公開平6−66776号公報に記載の「管内検査ピグ」などが知られている。
【特許文献1】特許公開2003−225626号公報
【特許文献2】特許公開平6−66776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に係るこの種の公知の装置においては、管の内径が変化すると、そのたびに、当該内径に合致したシール部材に取り換える必要があり、異なった内径の管部材が混在する管においては、当該物体や装置が、シール部材を取り換えることなく、連続して管内を移動することは困難であった。
この種の公知の装置においては、本発明のごときセルフシール式フレキシブルシールを具備していれば、その適用範囲は飛躍的に拡大する。
すなわち、本発明においては、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に用いることが出来る管内面封止用シールであって、管の内径が変化してもフレキシブルに変形可能で、且つシールを包囲している流体の圧力を利用してその内壁に密着することが出来る、すなわちセルフシール機能を有した優れた管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールを提供するものである。
更に、本発明の管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールにおいては、該シールが管の軸線に沿って前方あるいは後方のどちらの方向へ移動する場合においても、全く同一のセルフシール機能とフレキシブル機能を付与するものである。
また、本発明においては更に、該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術的解決課題を達成するために、請求項1に係る本発明の第1の発明においては、
柔軟材料を素材とする中空のボール状の球体もしくは中空のボール状の回転楕円体において、該球体もしくは該回転楕円体を球状体と呼称し、且つ、説明を容易にするために該球状体を地球に例えて説明すると;
該球状体を、北緯np度の緯線と南緯sp度の緯線に沿って切断して両極部を切り離し、残った球状体において;
北緯np度、東経0度の座標を持つ地点N1と、南緯sp度、東経m度の座標を持つ地点S1の、以上の二つの地点を地表を通って結ぶ線D1に沿って、該球状体を切断し;
続いて、北緯np度、東経(360/n+a)度の座標を持つ地点N2と、南緯sp度、東経(m+360/n+a)度の座標を持つ地点S2の、以上の二つの地点を地表を通って結ぶ線D2に沿って、該球状体を切断し;
npあるいはspは90以下の任意の正の値とし、mは0以上の任意の値とし、nは2以上の任意の自然数とし、aは0以上かつ360/n以下の任意の値とし;
以上の切断により生じた、北緯np度の緯線、南緯sp度の緯線、線D1及び線D2によって囲まれた球状体エレメントと同じ形状の球状体エレメントをn個用意し;
該n個の球状体エレメントを、赤道に沿って東西方向に、360/n度間隔で並べて配置し、且つ、隣り合う球状体エレメントの配置の仕方において、それぞれの球状体エレメントの東の端部は東隣りの球状体エレメントの西の端部の下に潜り込んで重なっており、一方、西の端部は西隣りの球状体エレメントの東の端部の上に乗りあがって重なっており;
あるいは、該n個の球状体エレメントを、赤道に沿って東西方向に、360/n度間隔で並べて配置し、且つ、隣り合う球状体エレメントの配置の仕方において、それぞれの球状体エレメントの東の端部は東隣りの球状体エレメントの西の端部の上に乗りあがって重なっており、一方、西の端部は西隣りの球状体エレメントの東の端部の下に潜り込んで重なっており;
該球状体エレメントの上記の集合体において、北緯np度の緯線の部分で重なった部分及び南緯sp度の緯線の部分で重なった部分は、互いに接合されており;
あるいは、該球状体エレメントの上記の集合体において、北緯np度の緯線の部分及び南緯sp度の緯線の部分は、各々の緯線の部分のために用意された円環状または円板状の部材に、各々の緯線の部分が接合されており;
以上のように構成された、中空かつ両極部が開口している変形可能な球状物体を少なくとも具備している、ことを特徴とする、フレキシブル球状物体が提供される。
【0006】
請求項2に係る本発明の第2の発明においては、
請求項1に記載のフレキシブル球状物体から構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールと;管内移動体本体の外周部に、該セルフシール式フレキシブルシールが、その一方の開口部と他方の開口部との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部のうち少なくとも下流側の開口部と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている管内移動体本体;から少なくとも構成されていることを特徴とする管内移動体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明は下記の効果をもたらすものである。
本発明は、中空のボール状の球体もしくは中空のボール状の回転楕円体などの球状物体において、その直径を伸縮させることにより変形するフレキシブル球状物体であり、これまでに無かった機能や形状を具備しているため、各種の容器や装飾品など、いろいろな用途に利用することが出来る。
本発明においては、更に、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置に用いることが出来る、管の内径が変化してもフレキシブルに変形してその内壁に密着することが出来る管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールを提供するものである。
すなわち、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置において、本発明のごとき管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールを具備していれば、その適用範囲は飛躍的に拡大する。
また、本発明においては更に、該セルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に従って構成された装置の好適実施例について、添付図を参照して更に詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
図1乃至図2は、本発明の第1の発明に従って構成された好適実施例のフレキシブル球状物体20を図示している。
図1は、フレキシブル球状物体20を構成する球状体エレメント21の形状について説明するものであるが、説明を容易にするために、球状体エレメント21を作成するための基礎図形となる球状体200を地球に例えて説明するものである。
球状体200は、中空のボール状の球体もしくは中空のボール状の回転楕円体から成り、ポリウレタン、ゴムあるいはプラスティックなどの柔軟材料を素材としている。
球状体エレメント21の作成方法を以下に記載する。
先ず、球状体200を、北緯np度の緯線NLTと南緯sp度の緯線SLTに沿って切断して両極部を切り離す。なお、npあるいはspは90以下の任意の正の値であるが、図1におけるnpとspの値は両方とも45である。なお、npの値とspの値が異なっても良い。
残った球状体200において、北緯np度、東経0度の座標を持つ地点N1と、南緯sp度、東経m度の座標を持つ地点S1の、以上の二つの地点を地表を通って結ぶ線D1に沿って、該球状体を切断し、続いて、北緯np度、東経(360/n+a)度の座標を持つ地点N2と、南緯sp度、東経(m+360/n+a)度の座標を持つ地点S2の、以上の二つの地点を地表を通って結ぶ線D2に沿って、該球状体を切断する。
なお、mは0以上の任意の値であるが、図1におけるmの値は45である。
また、nは2以上の任意の自然数であるが、図1におけるnの値は8である。
また、aは0以上かつ360/n以下の任意の値であるが、図1におけるaの値は22.5である。
地点N1と地点S1とを地表を通って結ぶ線D1について、線D1は、地点N1と地点S1とを地表を通って最短で結ぶ大円の一部であっても良いし、曲がりくねった線であっても良い。
また、地点N2と地点S2とを地表を通って結ぶ線D2について、線D2は、地点N2と地点S2とを地表を通って最短で結ぶ大円の一部であっても良いし、曲がりくねった線であっても良い。
次に、以上の切断により生じた、北緯np度の緯線NLT、南緯sp度の緯線SLT、線D1及び線D2によって囲まれた球状体エレメント21と同じ形状の球状体エレメントをn個用意する必要があるが、例えば金型にポリウレタン樹脂の原液を流し込んで加熱成型しても良い。
次に、図2を参照して説明する。
n個の球状体エレメント21を、赤道EQに沿って東西方向に、360/n度間隔で並べて配置し、且つ、隣り合う球状体エレメント21の配置の仕方において、それぞれの球状体エレメント21の東の端部は東隣りの球状体エレメント21の西の端部の下に潜り込んだ状態で重ね、一方、西の端部は西隣りの球状体エレメント21の東の端部の上に乗りあがった状態で重ねる。
あるいは、隣り合う球状体エレメント21の重ね方について別の方法を述べると、n個の球状体エレメント21を、赤道EQに沿って東西方向に、360/n度間隔で並べて配置し、且つ、隣り合う球状体エレメント21の配置の仕方において、それぞれの球状体エレメント21の東の端部は東隣りの球状体エレメント21の西の端部の上に乗りあがった状態で重ね、一方、西の端部は西隣りの球状体エレメント21の東の端部の下に潜り込んだ状態で重ねることもできる。
球状体エレメント21の上記の集合体において、北緯np度の緯線NLTの部分で重なった部分及び南緯sp度の緯線SLTの部分で重なった部分は、溶着や接着などの接合手段により互いに接合されても良い。
あるいは、球状体エレメント21の上記の集合体において、北緯np度の緯線NLTの部分及び南緯sp度の緯線SLTの部分は、各々の緯線の部分のために用意された円環状の部材214(想像線で示す)に、溶着や接着などの接合手段により接合されても良い。
あるいは、図示していないが、球状体エレメント21の上記の集合体において、北緯np度の緯線NLTの部分及び南緯sp度の緯線SLTの部分は、各々の緯線の部分のために用意された円板状の部材(図示せず)に、溶着や接着などの接合手段により接合されても良い。
すなわち、該円板状の部材は、フレキシブル球状物体20の両極部に在る開口部212を塞ぐ部材でもある。
【0010】
以上のように構成されたフレキシブル球状物体20が変形する原理について、図2を参照して説明すると、フレキシブル球状物体20に対して両極部から押しつぶす方向に力が作用すると、n個の球状体エレメント21の互いに重なっている部分がずれて移動し、而して赤道部分が膨らんで変形する。
また、フレキシブル球状物体20に対して両極部から引張る方向に力が作用すると、n個の球状体エレメント21の互いに重なっている部分がずれて移動し、而して赤道部分が縮んで変形するものである。
【0011】
上記に述べたフレキシブル球状物体は、その応用例として、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置において、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールとして用いることが出来る。
図3乃至図6は、該セルフシール式フレキシブルシール20を具備し、且つ、本発明に従って構成された第1の好適実施例の管内移動体2、および管内移動体2に付帯する装置類の構成を図示している。
図3において、本発明に従って構成された第1の好適実施例の管内移動体2およびそれに付帯の装置は;
配管1の内部に配置された管内移動体2と;上流側の端部が管内移動体2に連結され、下流側の端部が固体・流体分離装置4の上流側入口に連結されたホース5と;上流側の入口が固体・流体分離装置4の下流側出口に連結され、下流側の出口が配管1を包囲している空間に開放された、容積型ポンプの一種であるルーツ式真空ポンプ3と;配管1の2箇所の端部において、ホース5が配置されていない側の端部に接続されたバキュームブレーカ6;により少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、配管1の内部の空間を、セルフシール式フレキシブルシール20を境界として、空間A:A0と空間B:B0の二つの空間に分割しており、バキュームブレーカ6に連通された空間を空間Aと呼称し、ホース5が配置された空間を空間Bと呼称する。
なお、配管1の2箇所の端部において、ホース5が配置されている側の端部は配管1を包囲している空間に開放されている。
【0012】
図4において、管内移動体2の構成について述べると、
管内移動体2は、本発明に従って構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール20と、管内移動体本体23から少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、管内移動体本体23の外周部に、該シール部材が、その一方の開口部212と他方の開口部212との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部212のうち少なくとも下流側の開口部212と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている。
より具体的に述べると、管内移動体本体23の外周部は、円筒状に形成された筒状体と、筒状体の二つの端部の各々に形成されたフランジ状の突起から構成されており、セルフシール式フレキシブルシール20は該二つのフランジ状の突起の間に配置されており、且つ、セルフシール式フレキシブルシール20の二つの開口部212の内縁部は筒状体の外表面上を自在に摺動可能なように配置されている。
管内移動体2は、ホース5を介して負圧生成手段としてのルーツ式真空ポンプ3に連結され、管の上流側の端部にバキュームブレーカ6が設置されている。
【0013】
以上のように構成されたセルフシール式フレキシブルシール20および第1の好適実施例の管内移動体の作用について、図3乃至図4を参照して説明する。
吸引風量が十分にあるルーツ式真空ポンプ3が作動すると、
配管1の内部の空間A:A0に在る大気は下流側の方向、すなわちルーツ式真空ポンプ3の方向に吸引されるが、この時、配管1の内壁に接触しているセルフシール式フレキシブルシール20の作用により、空間B:B0に在る大気の空間A:A0への流入が阻害されるので、空間A:A0の圧力は減少する。
次に、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203の圧力(大気圧)と空間A:A0の圧力(負圧)の圧力差に起因して、セルフシール式フレキシブルシール20の自由端部202(接触部202)は、小矢印91で示す方向に強い力を受け、而して、自由端部202(接触部202)は配管1の内壁へ強く押し付けられて配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間は僅かなものになる。
かくして、空間A:A0はバキュームブレーカ6の設定圧力(仮に−200mmHgとする)まで減圧される。
なお、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203に在る大気は、球状体エレメント21と球状体エレメント21との間の僅かな隙間から空間A:A0へ吸い出されようとするが、球状体エレメント21には小矢印91で示す強い力が作用しているので球状体エレメント21と球状体エレメント21との密着力は強固であり、而して該吸い出しは極力阻止される。
一方、空間B:B0に在る大気は、球状体エレメント21を空間203の方向に押して容易に変形させることが可能で、而して、空間B:B0に在る大気は該変形により生じた隙間より容易に空間203へ侵入することができる。よって、空間203の圧力は常に大気圧に近い圧力に維持されている。
図中の黒矢印82は大気が空間203へ侵入する方向を示している。
空間A:A0の減圧に伴い、空間B:B0に在る大気は、図4において、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との接触部202に在る隙間を通って空間A:A0へ流入する。
なお、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間について、球状体エレメント21と球状体エレメント21の重なりにより生じた段差に起因する隙間がある。
また、実際の配管1の内壁には錆などにより腐食された凹凸があり、セルフシール式フレキシブルシール20の表面にも細かい傷が有るので、これ等の凹凸や傷に起因する僅かな隙間を通って、空間B:B0から空間A:A0へ高速の空気流が流入するものである。
該高速空気流は、配管1の内面に付着する汚れを吸引清掃し、あるいは、配管1の内面に付着する水分を乾燥させるために大変効果的である。
図3に図示のバキュームブレーカ6の構造は、図6に図示のバキュームブレーカ6の構造と同一であり、公知の装置でもあるので、図6のバキュームブレーカ6の構造を参照しながら図3に図示のバキュームブレーカ6の作用を説明する。
空間A:A0の圧力が−200mmHg以下になると、大気の圧力が圧縮コイルバネ66の力に打ち勝って弁板64を押し開くので大気がバキュームブレーカ6の内部へ流入し、而して空間A:A0の圧力は−200mmHgに維持される。
【0014】
図3において、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して、管内移動体2は白矢印で示す右方向へ移動させようとする強い力を受けるものであるが、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするために、例えば巻取り方向と巻取り速度を任意に変更可能なウインチに巻取られたワイヤロープ70の端部が管内移動体2に連結されている。
なお、当該機能を備えたワイヤロープ70の代わりに、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするための公知の管内自走装置(図示せず)が管内移動体2に連結されても良い。
【0015】
本発明に従って構成された管内移動体2においては、管内移動体2が配管1の内部を移動するのに伴い、管内移動体2に装着され且つ配管1の内壁に密着したセルフシール式フレキシブルシール20が配管1の内壁を擦り、而して、該内壁に付着した錆などの異物が剥離される。該剥離された異物は、バキュームブレーカ6から空間A:A0、空間B:B0、ホース5、固体・流体分離装置4を経由してルーツ式真空ポンプ3に至る空気流の作用により、吸引移送され、固体・流体分離装置4にて異物が分離された後の清浄な空気はルーツ式真空ポンプ3の出口から大気中へ放出される。
【0016】
図5乃至図6は、本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシール20を具備し、且つ、本発明に従って構成された第2の好適実施例の管内移動体2、および管内移動体2に付帯する装置類の構成を図示している。
図5において、本発明に従って構成された第2の好適実施例の管内移動体2およびそれに付帯の装置は;
配管1の内部に配置された、バキュームブレーカ6を具備する管内移動体2と;上流側の端部が配管1の端部に連結され、下流側の端部が固体・流体分離装置4の上流側入口に連結されたホース5と;上流側の入口が固体・流体分離装置4の下流側出口に連結され、下流側の出口が配管1を包囲している空間に開放された、容積型ポンプの一種であるルーツ式真空ポンプ3;により少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、配管1の内部の空間を、セルフシール式フレキシブルシール20を境界として、空間A:A0と空間B:B0の二つの空間に分割しており、ルーツ式真空ポンプ3に連通された空間を空間Aと呼称し、配管1を包囲している空間に開放されている空間を空間Bと呼称する。
【0017】
図6において、管内移動体2の構成について述べると、
管内移動体2は、本発明に従って構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシール20と、管内移動体本体23から少なくとも構成されている。
セルフシール式フレキシブルシール20は、管内移動体本体23の外周部に、該シール部材が、その一方の開口部212と他方の開口部212との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部212のうち少なくとも下流側の開口部212と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている。
より具体的に述べると、管内移動体本体23の外周部は、円筒状に形成された筒状体と、筒状体の二つの端部の各々に形成されたフランジ状の突起から構成されており、セルフシール式フレキシブルシール20は該二つのフランジ状の突起の間に配置されており、且つ、セルフシール式フレキシブルシール20の二つの開口部212の内縁部は筒状体の外表面上を自在に摺動可能なように配置されている。
管内移動体本体23には、バキュームブレーカ6が装着されている。
【0018】
図6において、公知のバキュームブレーカ6の構成について述べると;
バキュームブレーカ6は、上流側の弁穴61と下流側の継手62を備えた弁ケース63と、弁ケース63の内部に配置された弁板64と、弁板64に固定された摺動自在な弁ロッド65と、弁板64を弁穴に強く押し当てるための圧縮コイルバネ66、から構成されている。
【0019】
以上のように構成されたセルフシール式フレキシブルシール20および第2の好適実施例の管内移動体の作用について、図5乃至図6を参照して説明する。
吸引風量が十分にあるルーツ式真空ポンプ3が作動すると、
配管1の内部の空間B:B0に在る大気は下流側の方向、すなわちルーツ式真空ポンプ3の方向に吸引されるが、この時、配管1の内壁に接触しているセルフシール式フレキシブルシール20の作用により、空間B:B0に在る大気の空間A:A0への流入が阻害されるので、空間A:A0の圧力は減少する。
次に、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203の圧力(大気圧)と空間A:A0の圧力(負圧)の圧力差に起因して、セルフシール式フレキシブルシール20の自由端部202(接触部202)は、小矢印91で示す方向に強い力を受け、而して、自由端部202(接触部202)は配管1の内壁へ強く押し付けられて配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間は僅かなものになる。
かくして、空間A:A0はバキュームブレーカ6の設定圧力(仮に−200mmHgとする)まで減圧される。
なお、セルフシール式フレキシブルシール20の内側の空間203に在る大気は、球状体エレメント21と球状体エレメント21との間の僅かな隙間から空間A:A0へ吸い出されようとするが、球状体エレメント21には小矢印91で示す強い力が作用しているので球状体エレメント21と球状体エレメント21との密着力は強固であり、而して該吸い出しは極力阻止される。
一方、空間B:B0に在る大気は、球状体エレメント21を空間203の方向に押して容易に変形させることが可能で、而して、空間B:B0に在る大気は該変形により生じた隙間より容易に空間203へ侵入することができる。よって、空間203の圧力は常に大気圧に近い圧力に維持されている。
図中の黒矢印82は大気が空間203へ侵入する方向を示している。
空間A:A0の減圧に伴い、空間B:B0に在る大気は、図6において、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との接触部202に在る隙間を通って空間A:A0へ流入する。
なお、配管1の内壁とセルフシール式フレキシブルシール20との間の隙間について、球状体エレメント21と球状体エレメント21の重なりにより生じた段差に起因する隙間がある。
また、実際の配管1の内壁には錆などにより腐食された凹凸があり、セルフシール式フレキシブルシール20の表面にも細かい傷が有るので、これ等の凹凸や傷に起因する僅かな隙間を通って、空間B:B0から空間A:A0へ高速の空気流が流入するものである。
該高速空気流は、配管1の内面に付着する汚れを吸引清掃し、あるいは、配管1の内面に付着する水分を乾燥させるために大変効果的である。
図5乃至図6に図示のバキュームブレーカ6の作用を説明する。
空間A:A0の圧力が−200mmHg以下になると、大気の圧力が圧縮コイルバネ66の力に打ち勝って弁板64を押し開くので大気がバキュームブレーカ6の内部へ流入し、而して空間A:A0の圧力は−200mmHgに維持される。
【0020】
図5において、空間A:A0と空間B:B0の圧力差(200mmHg)に起因して、管内移動体2は白矢印で示す左方向へ移動させようとする強い力を受けるものであるが、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするために、例えば巻取り方向と巻取り速度を任意に変更可能なウインチに巻取られたワイヤロープ70の端部が管内移動体2に連結されている。
なお、当該機能を備えたワイヤロープ70の代わりに、管内移動体2の該移動を規制し、且つ、管内移動体2の移動速度をコントロールするための公知の管内自走装置(図示せず)が管内移動体2に連結されても良い。
【0021】
以上に本発明の装置の好適実施例について説明したが、本発明の装置は該好適実施例の他にも特許請求の範囲に従って種々実施例を考えることができる。
また、本発明の好適実施例の装置の説明においては、装置も配管も大気中にあるものとして説明を行ったが、装置と配管が水中にある場合においても本発明の装置を適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
従来、中空のボール状の球体もしくは中空のボール状の回転楕円体などの球状物体において、その直径を伸縮させることにより変形可能な球状物体は無かった。例えば、蛇腹を伸縮させて変形する「ちょうちん」においても、その直径が変わるものでは無かった。
本発明においては、直径が伸縮して変形するフレキシブル球状物体を提案するものである。本発明のフレキシブル球状物体は各種の容器や装飾品として利用することが出来る。
一方、本発明のフレキシブル球状物体は、その応用例として、管内の点検や清掃を目的として管内を移動する物体や装置において、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールとして用いることが出来る。
すなわち、本発明は、例えば給水用配管や排水用配管あるいはガス配管などの各種配管の内面に付着した錆や水棲生物などの異物を除去し、これらを除去した後に、例えば塗料や耐蝕合金などの被覆材料のコーティングを行うなど、配管内で走行しながら配管の保守作業を行う管内移動体などに具備されるセルフシール式フレキシブルシールとして好都合に用いることができる。
また、本発明は更に、管の内径が変化してもフレキシブルにその内壁に密着することが出来るセルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体として好都合に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に従って構成されたフレキシブル球状物体を構成する球状体エレメントの形状を説明する地球に模した立体図。
【図2】本発明に従って構成されたフレキシブル球状物体の立体図。
【図3】本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体、および該管内移動体に付帯する装置類の構成を示す、第1の好適実施例の全体図。
【図4】図3に示す管内移動体の拡大断面図。
【図5】本発明に従って構成されたセルフシール式フレキシブルシールを具備した管内移動体、および該管内移動体に付帯する装置類の構成を示す、第2の好適実施例の全体図。
【図6】図5に示す管内移動体の拡大断面図。
【符号の説明】
【0024】
地球の中心O
地軸AX
北極NP
経線LG
赤道EQ
北緯np度の緯線NLT
南緯sp度の緯線SLT
空間A:A0
空間B:B0
配管1
配管端部栓101
管内移動体2
ルーツ式真空ポンプ3
固体・流体分離装置4
ホース5
バキュームブレーカ6
上流側の弁穴61
下流側の継手62
弁ケース63
弁板64
弁板に固定された弁ロッド65
圧縮コイルバネ66
球状体200
フレキシブル球状物体もしくはセルフシール式フレキシブルシール20
接触部202
セルフシール式フレキシブルシールの内側の空間203
球状体エレメント21
シール本体部211
開口部212
円環状部材214
管内移動体本体23
ワイヤロープ70
ルーツ式ポンプへ向かう流体の流れ81
セルフシール式フレキシブルシールの内側の空間へ流入する流体の流れ82

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟材料を素材とする中空のボール状の球体もしくは中空のボール状の回転楕円体において、該球体もしくは該回転楕円体を球状体と呼称し、且つ、説明を容易にするために該球状体を地球に例えて説明すると;
該球状体を、北緯np度の緯線と南緯sp度の緯線に沿って切断して両極部を切り離し、残った球状体において;
北緯np度、東経0度の座標を持つ地点N1と、南緯sp度、東経m度の座標を持つ地点S1の、以上の二つの地点を地表を通って結ぶ線D1に沿って、該球状体を切断し;
続いて、北緯np度、東経(360/n+a)度の座標を持つ地点N2と、南緯sp度、東経(m+360/n+a)度の座標を持つ地点S2の、以上の二つの地点を地表を通って結ぶ線D2に沿って、該球状体を切断し;
npあるいはspは90以下の任意の正の値とし、mは0以上の任意の値とし、nは2以上の任意の自然数とし、aは0以上かつ360/n以下の任意の値とし;
以上の切断により生じた、北緯np度の緯線、南緯sp度の緯線、線D1及び線D2によって囲まれた球状体エレメントと同じ形状の球状体エレメントをn個用意し;
該n個の球状体エレメントを、赤道に沿って東西方向に、360/n度間隔で並べて配置し、且つ、隣り合う球状体エレメントの配置の仕方において、それぞれの球状体エレメントの東の端部は東隣りの球状体エレメントの西の端部の下に潜り込んで重なっており、一方、西の端部は西隣りの球状体エレメントの東の端部の上に乗りあがって重なっており;
あるいは、該n個の球状体エレメントを、赤道に沿って東西方向に、360/n度間隔で並べて配置し、且つ、隣り合う球状体エレメントの配置の仕方において、それぞれの球状体エレメントの東の端部は東隣りの球状体エレメントの西の端部の上に乗りあがって重なっており、一方、西の端部は西隣りの球状体エレメントの東の端部の下に潜り込んで重なっており;
該球状体エレメントの上記の集合体において、北緯np度の緯線の部分で重なった部分及び南緯sp度の緯線の部分で重なった部分は、互いに接合されており;
あるいは、該球状体エレメントの上記の集合体において、北緯np度の緯線の部分及び南緯sp度の緯線の部分は、各々の緯線の部分のために用意された円環状または円板状の部材に、各々の緯線の部分が接合されており;
以上のように構成された、中空かつ両極部が開口している変形可能な球状物体を少なくとも具備している、ことを特徴とする、フレキシブル球状物体。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブル球状物体から構成された管内面封止用セルフシール式フレキシブルシールと;管内移動体本体の外周部に、該セルフシール式フレキシブルシールが、その一方の開口部と他方の開口部との距離が自由に変化できるように装着されており、且つ、該二つの開口部のうち少なくとも下流側の開口部と、該外周部の二つの端部のうち少なくとも下流側の端部とが、気密に接するように装着されている管内移動体本体;から少なくとも構成されていることを特徴とする管内移動体。
【請求項3】
管内移動体本体の外周部は、円筒状もしくは角筒状に形成された筒状体と、該筒状体の二つの端部の各々に形成されたフランジ状の突起から構成されており、該セルフシール式フレキシブルシールは該二つのフランジ状の突起の間に配置されており、且つ、該セルフシール式フレキシブルシールの二つの開口部の内縁部は該筒状体の外表面上を自在に摺動可能なように配置されている、ことを特徴とする請求項2に記載の管内移動体。
【請求項4】
管内移動体にホースを介して負圧生成手段が連結され、管の上流側の端部にバキュームブレーカが設置された、ことを特徴とする請求項2乃至請求項3に記載の管内移動体。
【請求項5】
管内移動体にバキュームブレーカが具備され、管の下流側の端部に負圧生成手段が連結された、ことを特徴とする請求項2乃至請求項3に記載の管内移動体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−136313(P2011−136313A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2(P2010−2)
【出願日】平成22年1月1日(2010.1.1)
【出願人】(710006367)ウラカミ合同会社 (9)
【Fターム(参考)】