説明

フレキシブル配線基板の接続コネクタ

【課題】挿入タイプのFPCコネクタにFPCを挿入時に発生し得るFPCのめっきリード剥離を防止してFPCを破損させずに接続可能にする手段を提供する。
【解決手段】FPCコネクタ26は、モールド21を基盤とし、FPCの挿入口22には多数の金属性リード端子24が配列され、その上部にFPC挿入後のロック用アクチュエータ23が可動部として設けられている。金属性リード端子24の挿入口22に面する角部には角R27が形成されており、FPCが挿入される際にFPCのめっきリードが金属性リード端子24の角部と接触してこすれても、角部に形成された角RによりFPCのめっきリードを傷つける懸念が少ない為、剥離しためっきによるショートや断線等の不具合を防止し、接続信頼性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板(Flexible Printed Circuit:以下FPCという)を電気的・構造的に接続する際に用いる挿入タイプのコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機のような電子機器の小型化・軽量化・多機能化に伴い、これらの電子機器を構成する回路基板として、薄くて柔軟性があり、マイクロストリップライン構造を配置することが可能なFPCが多用されている。また現在、携帯電話機では折り畳み式が多数採用されており、その折り畳み部分(ヒンジ部分)はFPCにより電気的に接続されるのが一般的である。さらに、コンピューター端末やプリンタ及びカメラ等の電気製品の可動部配線や省スペース配線としてもFPCは多用されている。それらFPCを電気的・構造的に接続する一手段として、挿入タイプや積み重ねタイプ(スタッキング)のコネクタが用いられている(特許文献1〜3等参照)。
【0003】
従来の挿入タイプのFPCとFPCコネクタ、およびそれらを接続する方法について、図3〜図5を用いて説明する。
【0004】
図4は、挿入タイプのFPCコネクタに接続されるFPCの構成例を示す図であり、図4(a)はFPCコネクタの金属性リード端子と接触する箇所の平面図、図4(b)はFPCコネクタの金属性リード端子と接触する箇所におけるFPCの層構成を示す断面図である。
【0005】
FPC10のベースとなる絶縁フィルム12の表面には銅箔パターン配線13が接合されており、その銅箔パターン配線13上のFPCコネクタと接触する範囲16にはめっき14が施される。また、FPC先端部には電気めっきを施すのに必要なめっきリード14aが在る。FPCコネクタと接触する範囲16以外の銅箔パターン配線13が接合されている箇所は絶縁フィルム15により被覆されている。さらにベースとなる絶縁フィルム12の先端のFPCコネクタに挿入される部分の裏面には補強板11が接着剤により接合されている。このFPCの先端部の両端角部には角R17が設けられており、これによりFPCコネクタへの挿入性を容易にしている。
【0006】
図5は、従来のFPCコネクタの構成を示す概略斜視図である。
【0007】
FPCコネクタ20は、絶縁樹脂等からなるモールド21を基盤とし、FPCコネクタと接触するFPC10の範囲16が挿入されるFPC挿入口22を有する。挿入口22には多数の金属性リード端子24が配列されており、その上部にはFPC挿入後のロック用にアクチュエータ23が可動部として設けられている。なお、図5では金属性リード端子24を、接触端部を有するリード線で模式的に示しているが、実際の形状は、特許文献1〜3等に示されているように、例えば金属板から型抜き加工等により形成された形状を有している。また、従来のFPCコネクタは、金属性リード端子24のFPC挿入口22に面する角部の形状がエッジ形状25となっている。
【0008】
図6はFPCコネクタにFPCを挿入する動作を示す図であり、図6(a)はFPC10をFPCコネクタ20に挿入する際の上面図、図6(b)はFPC10をFPCコネクタ20に挿入後の状態示す上面図である。
【0009】
図4で示したFPC10は、補強板11の面を上方にしてFPCコネクタ20の挿入口22に挿入される。FPC10の銅箔パターン配線13上のめっき14と金属性リード端子24とを接触させた後、アクチュエータ23を閉じることにより、FPC10の接続部16を固定し、FPC10がFPCコネクタ20から抜けないようにしている。
【0010】
【特許文献1】特開平8−315928号公報
【特許文献2】特開2001−357918号公報
【特許文献3】特開2002−170641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の挿入タイプのFPCコネクタでは金属性のリード端子24の挿入口22に面している角部25がエッジ形状に形成されているため、FPC10をこのFPCコネクタ20に挿入する際に、FPC10のめっきリード14aがこのエッジ形状の角部25と当接することにより、FPCのめっきリード14aを傷つけ、そのため端子が破損して、FPCの接続信頼性を低くしてしまうという問題点がある。FPCは折り曲げやねじれに対して強い材質ではあるが、FPC端面のめっき剥離に対しては弱い為、一度、めっきに傷がつくなどのきっかけができてしまうと、簡単にめっきが剥離してFPCの接続端子を破損させてしまう。
【0012】
本発明の目的は、挿入タイプのFPCコネクタにおいて、挿入時に発生し得るFPCのめっきリード剥離を防止してFPCを破損させずに接続することを可能にする手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、絶縁樹脂モールドを基盤とし、フレキシブル配線基板が挿入される挿入口側に複数の金属製リード端子が配列されている挿入タイプのフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、前記金属製リード端子の前記挿入口に面しているエッジ部に、角Rを形成したことを特徴としている。
【0014】
また、本発明の他の実施形態では、絶縁樹脂モールドを基盤とし、フレキシブル配線基板が挿入される挿入口側に複数の金属製リード端子が配置されている挿入タイプのフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、前記金属性リード端子の前記挿入口に面しているエッジ部周辺を前記絶縁樹脂モールドに形成された溝の中に埋め込むことにより前記エッジ部分と前記フレキシブル配線基板が直接接触しないように構成するとともに、前記絶縁樹脂モールドの前記挿入口に面しているエッジ部に、角RまたはCカットを形成したことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の更に別の実施形態では、絶縁樹脂モールドを基盤とし、フレキシブル配線基板が挿入される挿入口側に複数の金属製リード端子が配置されている挿入タイプのフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、前記金属性リード端子の前記挿入口に面しているエッジ部分周辺を前記絶縁樹脂モールドに形成された溝の中に埋め込むとともに、前記埋め込まれた金属性リード端子のエッジ部および前記絶縁樹脂モールドの前記挿入口に面しているエッジ部にそれぞれ角Rを形成することにより、前記挿入口に面しているエッジ部に前記金属性リード端子および前記モールド樹脂によって前記角Rを有する単一の面を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、挿入口側に金属製リード端子が配置されている挿入タイプのFPCコネクタにおいて前記金属製リード端子の前記挿入口に面している角部に、角Rが形成されているので、FPCコネクタ挿入時にFPCのめっきリードと金属製リード端子の角部との接触によるめっきリードの傷つきを回避することができ、それによりFPCの接続信頼性を高めることができる。
【0017】
また本発明では、FPCコネクタとFPCの接続信頼性を向上させる為に、FPCコネクタ、FPCとも現在の材料を変更する必要はないので、材料コストを上昇させることなくFPCコネクタとFPCの接続信頼性の向上を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態を示すFPCコネクタの概略斜視図である。
【0019】
本実施形態は、従来のFPCコネクタの形状を一部改良したものであって、本実施形態のFPCコネクタ26も、モールド21を基盤とし、FPCの挿入口22には多数の金属性リード端子24が配列され、その上部にFPC挿入後のロック用アクチュエータ23が可動部として設けられている点では、図4に示す従来のFPCコネクタと同様である。
【0020】
本実施形態のFPCコネクタ26では、金属性リード端子24の挿入口22に面する角部には角R27が形成されている。本実施形態のFPCコネクタ26にFPCが挿入される場合、従来のFPCコネクタ20のようなエッジ形状25を有する金属性リード端子と比較して、挿入する際にFPCが金属性リード端子24の角部と接触してこすれても、角部に形成された角RによりFPCのめっきリード14aを傷つける懸念が少ない為、剥離しためっきのショートや断線等の不具合を防止し、接続信頼性の向上を図ることができる。
【0021】
このように、本実施形態では、従来のFPCコネクタにおける金属性リード端子の挿入口に面する角部(エッジ部)に角Rを形成する極めて簡単な構成を付加するだけであり、低コストで、FPCコネクタと接続されるFPC端部の不具合の発生を防止して接続信頼性の向上を図ることが可能である。
【0022】
図2は、本発明の第2の実施形態を示すFPCコネクタの概略斜視図である。
【0023】
本実施形態のFPCコネクタ28も、モールド21を基盤とし、FPCの挿入口22には多数の金属性リード端子24が配列され、その上部にFPC挿入後のロック用アクチュエータ23が可動部として設けられている点では、図4に示す従来のFPCコネクタと同様である。
【0024】
本実施形態のFPCコネクタ28では、金属性リード端子24はFPCコネクタのモールド21の溝に埋め込まれ、金属性リード端子24のエッジとFPCが直接接触しないようにするとともに、更にモールド自身も角RもしくはCカット29を形成している。このように構成したFPCコネクタ28にFPCを挿入する場合も前述の通り、FPCが挿入口22と接触してもFPCのめっきリード14aを傷つける懸念が少なく、接続信頼性の向上を図ることが可能である。
【0025】
なお、本実施形態において、FPCコネクタのモールド21の溝に埋め込まれた金属性リード端子24の角部に角Rを形成し、モールド樹脂の挿入口22角部にも角Rを形成することにより、金属性リード端子24とモールド樹脂の挿入口22が同一面を形成するように構成することもでき、同様の作用効果を得ることができる。
【0026】
なお、上記の実施形態では、FPC10を補強板つきの片面配線FPCとして層構成した場合について説明したが、両面配線FPCへも適用可能である。その場合には、FPCの挿入口の上下の角部に対して、本実施形態の構成が設けられる。
【0027】
図3は、両面配線FPCへも適用可能にした本発明の第3の実施形態を示すFPCコネクタの概略断面図である。
【0028】
本実施形態のFPCコネクタ30も絶縁樹脂モールドを基盤としているが、本実施形態では、FPCの挿入口の下部及び上部にそれぞれ多数の金属性リード端子31及び32が配列されている。これらの金属性リード端子31、32の挿入口に面する角部には角R33、34が形成されているので、本実施形態のFPCコネクタ30にFPCが挿入される場合も、FPCが金属性リード端子31,32の角部と接触してこすれても、角部に形成された角RによりFPCの両面に形成されためっきリードを傷つける懸念が少ない為、剥離しためっきのショートや断線等の不具合を防止し、接続信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すFPCコネクタの概略斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示すFPCコネクタの概略斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施形態を示すFPCコネクタの概略斜視図である。
【図4】挿入タイプのFPCコネクタに接続されるFPCの構成例を示す図である。
【図5】従来のFPCコネクタの構成を示す概略斜視図である。
【図6】FPCコネクタにFPCを挿入する動作を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 FPC
11 補強板
12 絶縁フィルム12
13 銅箔パターン配線
14 めっき
14a めっきリード
15 絶縁フィルム
16 銅箔パターン配線上のFPCコネクタと接触する範囲
17 角R
20,26,28 FPCコネクタ
21 モールド
22 FPCの挿入口
23 アクチュエータ
24 金属性リード端子
25 エッジ形状
27 角R
29 角RもしくはCカット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁樹脂モールドを基盤としフレキシブル配線基板が挿入される挿入口側に複数の金属製リード端子が配列されている挿入タイプのフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、前記金属製リード端子の前記挿入口に面しているエッジ部に、角Rを形成したことを特徴とするフレキシブル配線基板用コネクタ。
【請求項2】
絶縁樹脂モールドを基盤としフレキシブル配線基板が挿入される挿入口側に複数の金属製リード端子が配置されている挿入タイプのフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、前記金属性リード端子の前記挿入口に面しているエッジ部周辺を前記絶縁樹脂モールドに形成された溝の中に埋め込むことにより前記エッジ部分と前記フレキシブル配線基板が直接接触しないように構成するとともに、前記絶縁樹脂モールドの前記挿入口に面しているエッジ部に、角RまたはCカットを形成したことを特徴とするフレキシブル配線基板用コネクタ。
【請求項3】
絶縁樹脂モールドを基盤としフレキシブル配線基板が挿入される挿入口側に複数の金属製リード端子が配置されている挿入タイプのフレキシブル配線基板用コネクタにおいて、前記金属性リード端子の前記挿入口に面しているエッジ部分周辺を前記絶縁樹脂モールドに形成された溝の中に埋め込むとともに、前記埋め込まれた金属性リード端子のエッジ部および前記絶縁樹脂モールドの前記挿入口に面しているエッジ部にそれぞれ角Rを形成することにより、前記挿入口に面しているエッジ部に前記金属性リード端子および前記モールド樹脂によって前記角Rを有する単一の面を形成したことを特徴とするフレキシブル配線基板用コネクタ。
【請求項4】
前記フレキシブル配線基板用コネクタは、前記フレキシブル配線基板が挿入される挿入口の上部及び下部に前記金属製リード端子が配置されて両面配線型のフレキシブル配線基板に適用可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフレキシブル配線基板用コネクタ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate