説明

フレーム材用プリント装置

【課題】一定の断面形状を持ったアルミニウム押出形材であるフレーム材の表面に、組立作業等に用いる情報を正確に印刷することができるフレーム材用プリント装置を提供する。
【解決手段】アルミニウム押出形材であるフレーム材12が載置され、フレーム材12をその長手方向であるX軸方向に移送可能なローラコンベア14と、フレーム材12表面に所定の印刷を施すプリンタヘッド17と、プリンタヘッド17が移動可能に設けられたプリンタユニット16と、プリンタユニット16の動作を制御する制御ユニット18を備える。制御ユニット18は、フレーム材12から成るパーツ同士が互いに当接配置される表面位置に、相手方パーツが当接する位置を示す位置特定マークと、相手方パーツを識別する相手方特定マークとを印刷するようにプリンタユニット16を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、長尺の構造材である金属フレーム材の表面に印刷を施すフレーム材用プリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウム押出形材のフレーム材は、所定の長さに切断してパーツ単位に加工された後、複数のパーツを組み付けて立体的な構造体を構成し、各種装置や機械のマシン架台、ドアユニット、コンベア等のレールフレーム等として使用される。このアルミニウム押出形材は、加熱されたアルミニウム合金のインゴットを、ダイス金型を通して押し出すことにより成形される。従って、アルミニウム押出形材の表面には、ダイキャスト成形のように金型に文字等の凹凸を施して、成形品表面に文字等を形成することはできず、成形の段階でマークや識別文字等を形成することはできない。
【0003】
一方、各種ワークに印字する装置としては、例えば、特許文献1に開示されているように、板材加工機で加工されたパーツを集積する集積装置の後段に印字装置を配置し、集積装置から搬入されたパーツに、X軸方向とY軸方向に印字する板材加工機用パーツ印字装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−71709公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アルミニウム押出形材は、一般に表面の状態が一様であるため、何らかの識別マーク等がないと種々の部材の区別がしにくい場合がある。例えば、組立作業者が複数本のパーツで構造体を組み立てるとき、パーツの区別や各パーツの取付位置の設定を、その都度測定等して確認しなければならず、これらの作業を短時間で正確に行うことは難しく、作業の効率化の妨げとなっていた。また、同一のフレーム材から長さが僅かに異なる2種類のパーツを切り出すと、その2種類のパーツの識別を誤ったりするという問題もあった。
【0006】
これに対して、フレーム材の成形後、表面に何らかの識別マーク等を印刷する方法も考えられるが、特許文献1の板材加工機用パーツ印字装置の場合、板材から加工された小形パーツの集積装置の後段に印字装置を配置して印刷を行う構造のため、アルミニウム押出形材のように非常に長い外形のフレーム材には、適用できないものである。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みてなされたもので、一定の断面形状を持ったアルミニウム押出形材であるフレーム材の表面に、組立作業等に用いる情報を正確に印刷することができるフレーム材用プリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、アルミニウム押出形材であるフレーム材が載置され、当該フレーム材をその長手方向であるX軸方向に移送可能な移送機構と、前記フレーム材表面に所定の印刷を施すプリンタヘッドと、前記プリンタヘッドが前記移送機構の上方をX軸と直角なY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられたプリンタユニットと、前記プリンタユニットの動作を制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記フレーム材から成るパーツ同士が互いに当接配置される表面位置に、相手方パーツが当接する位置を示す位置特定マークと相手方パーツを識別する相手方特定マークとを印刷するように前記プリンタユニットを制御するフレーム材用プリント装置である。
【0009】
またこの発明は、アルミニウム押出形材であるフレーム材表面に所定の印刷を施すプリンタヘッド有し、本体の下面側に前記プリンタヘッドが取り付けられ、前記フレーム材の表面に形成されたレール状の溝又は外側面に係合することによって前記本体の幅方向の位置決めが成される走行ガイド部が設けられ、前記本体が前記フレーム材の上面を長手方向に自走移動可能なプリンタユニットと、前記プリンタユニットの動作を制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記フレーム材から成るパーツ同士が互いに当接配置される表面位置に、相手方パーツが当接する位置を示す位置特定マークと相手方パーツを識別する相手方特定マークとを印刷するように前記プリンタユニットを制御するフレーム材用プリント装置である。
【0010】
前記相手方特定マークは、例えば相手方の前記フレーム材の断面形状を示すものである。
【0011】
前記制御ユニットは、前記フレーム材表面の取付固定用のボルトの取付位置の近傍に、使用するボルトを示すボルト特定マークと、使用する取付金具の取付位置を示す金具位置マークとを印刷するように前記プリンタユニットを制御するものである。
【0012】
また、前記プリンタヘッドに使用されるインクは、前記構造体を構成後に拭き取り除去可能な、熱硬化型インク又は紫外線硬化型インク等である。
【発明の効果】
【0013】
この発明のフレーム材用プリント装置によれば、長い形状のフレーム材やパーツであっても、表面への印刷を容易に行うことができる。また、印刷された情報を参照すれば、構造体の組み立てがしやすい。
【0014】
さらに、請求項2記載のフレーム材用プリント装置によれば、上述の効果に加えて、フレーム材の移送機構が必要ないため、装置自体の設置場所を取らない。また、プリントユニットは、一定の断面形状を持ったフレーム材の外形上の特質を利用して任意の位置に自在に移動し、正確に印刷をすることができる。
【0015】
また、請求項5記載のフレーム材用プリント装置によれば、構造体を組み立てた後でインクを拭き取れば、使用時に不必要な表示が除去され、構造体の見栄えをよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の第一の実施形態のフレーム材用プリント装置を示す斜視図である。
【図2】一般的なフレーム材を示す平面図(a)と正面図(b)である。
【図3】第一の実施形態のフレーム材用プリント装置によってパーツAに印刷される図柄及び文字を示す平面図(a)と側面図(b)である。
【図4】第一の実施形態のフレーム材用プリント装置によってパーツBに印刷される図柄又は文字を示す平面図(a)、側面図(b)、背面図(c)である。
【図5】組み立てられた構造体を示す平面図である。
【図6】パーツA,Bの取付固定方法を説明する斜視図である。
【図7】この発明の第二の実施形態のフレーム材用プリント装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の第一の実施形態のフレーム材用プリント装置10について、図1〜図6を基にして説明する。フレーム材用プリント装置10は、描画又は印字などの印刷が施されるワークである細長のフレーム材12が載置され、フレーム材12を長手方向であるX軸方向に移送可能な移送機構であるローラコンベア14を備えている。さらに、ローラコンベア14上方をX軸と直角のY軸方向及びZ軸方向に移動可能なプリンタヘッド17が設けられたプリンタユニット16と、プリンタユニット16の動作を制御する制御ユニット18を備えている。
【0018】
フレーム材12は、アルミニウム押出形材であり、図2に示すように、全長Lで、断面は、一辺が長さDの正方形の形状を有している。断面の中心部と4方の角部には、中空の孔20が設けられ、さらに、四辺から断面中心部に向けてT溝22が設けられている。T溝22の開口部22aは寸法αの幅を有し、開口部22aから内側に入った溝部22bは、寸法αよりも広い寸法βの幅を有している。
【0019】
ローラコンベア14は、コンベア本体14aを下方から支持する4つの支持脚14bと、コンベア本体14aに水平に軸着されフレーム材12を下方から支持する移送面を形成する多数のローラ14cと、少なくとも後述するプリンタヘッド17の下方のローラ14cの回転を制御する図示しない駆動装置を備えたものである。また、ローラコンベア14は、ローラ14cで形成した移送面の移送方向の長さが、フレーム材12の全長Lの2.5倍程度に設定されている。なお、ローラコンベア14にフレーム材12を載置する位置を規定するため、ローラコンベア14に図示しない位置決めガイドを設けてもよい。また、ローラコンベア14は、同様の機能を備えたベルトコンベアなどに置き換えてもよく、ローラコンベアをフリーローラとして、後述するプリンタユニット16側に、フレーム材12の送り機構を設けても良い。
【0020】
プリンタユニット16は、図示しない昇降機構によってZ軸方向に上下動可能に設けられた支柱24と、支柱24の上端からほぼ水平に設けられ、ローラコンベア14の幅と同程度の長さを有したヘッド取付部26を備えている。ヘッド取付部26の内部には、印刷用のインクが充填された図示しないインクタンク、Y軸スライドレール及びヘッド駆動機構が設けられている。そして、プリンタヘッド17は、ヘッド取付部26から下向きに配置され、ヘッド駆動機構によりY軸スライドレール上を移動自在に取り付けられ、インクタンクからインクの供給を受けてフレーム材12に所定の印刷を行うことができる。
【0021】
インクは、例えば速乾性の熱硬化型インク、又は紫外線ランプを設けて紫外線硬化型インクが選択されている。これにより、作業効率がよく、また、描画又は印字後のフレーム材12の取り扱いも容易である。さらに、硬化した後も、アルコールや溶剤などを塗布して拭き取ることが可能なインクである。
【0022】
プリンタユニット16は、ローラコンベア14のほぼ中央部の上方に配置されている。従って、フレーム材12がローラコンベア14上を端から端まで移動することによって、プリンタヘッド17は、フレーム材12の上面の全ての領域に印刷を行うことができる。
【0023】
制御ユニット18は、作業者が操作可能な端末を備えたコンピュータ等で構成され、予め登録されたプログラムや作業者が入力した個別命令に基づいて、プリンタユニット16の動作を制御する。なお、制御ユニット18は、ローラコンベア14の動作制御も同時に行うものであってもよい。
【0024】
この制御ユニット18がフレーム材12の表面に印刷する図柄は、フレーム材12を切断加工して製作された複数のパーツを組み立てて構造体を形成するとき、特定のパーツ同士が互いに当接配置される位置を示す位置特定マーク、相手方パーツを識別する相手方特定マーク、取付固定用のボルトの取付位置の近傍に記すボルト特定マーク等である。
【0025】
具体的な図柄の例を図3、図4に示す。ここでは、全長Lのフレーム材12から、比較的長い2本の縦パーツ28,30と比較的短い4本の横パーツ32,34,36,38を切り出し、これらを格子状に組み付けて構造体40を形成する場合について説明する。構造体40は、図5の平面図に示すような格子状に配置され、組み立て状態で、横パーツ32,34,36,38の左側端面が縦パーツ28の右側面の所定箇所に当接し、右側端面が縦パーツ30の左側面の所定箇所に当接する。
【0026】
例えば、縦パーツ28の場合、図3(a)に示すように、縦パーツ28の上面に相手方の横パーツ32,34,36,38を示す相手方特定マークの「1A」「2A」「3A」「4A」の文字が印字される。また、この相手方特定マークは、その印字位置によって相手方の横パーツが当接する位置の目印にもなるので、当接位置を示す位置特定マークとして兼用することも可能であるが、ここでは、より分かりやすい位置特定マークとして、複数の短い横線が描画される。
【0027】
縦パーツ28の右側面には、図3(b)に示すように、相手方の横パーツ32,34,36,38の端面が当接する領域(当接範囲)に、位置特定マークである横パーツ断面の図が描画される。このような図柄とすれば、横パーツの断面形状が非対称で方向性を考慮して取り付けなければならない場合でも視覚的に判断しやすい。さらに、位置特定マークの側方には、後述する取付金具42が取り付けられる領域を囲む金具位置マークが描画され、さらに、相手方の横パーツを取付金具42を介して締め付け固定するために使用するボルト44の種類を示すボルト特定マーク「M6」の文字が印字される。
【0028】
横パーツ34の場合、横パーツ34の上面に、図4(a)に示すように、相手方の縦パーツ28,30を示す相手方特定マークである「2A」「2B」の文字が印字されている。また、この相手方特定マークは、その印字位置によって相手方の縦パーツ28,30の当接位置を特定する目印にもなる。
【0029】
さらに、縦パーツ28の正面と背面には、図4(b)(c)に示すように、後述する取付金具42が取り付けられる領域を囲む金具位置マークが描画され、さらに、相手方の縦パーツを取付金具42を介して締め付け固定するために使用するボルト44の種類を示すボルト特定マーク「M6」の文字が印字される。
【0030】
他の縦パーツ30、横パーツ32,36,38も同様に、位置特定マーク、相手方特定マーク、ボルト特定マーク、金具位置マークが所定の場所に印刷される。
【0031】
以上のように構成されたフレーム材用プリント装置10を用いれば、長さの長いフレーム材12に、所定の図柄を容易に印刷することができる。また、その結果、構造体40の組み立てがしやすくなる。
【0032】
さらに、フレーム材12に上述のような所定の印刷を施すことにより、以下のような効果を有する。まず、所定のマークが印刷された6本のパーツは、図5に示すような格子状に配置される。このとき、各パーツは、互いの位置特定マークや相手方特定マーク同士が対応して現れるように配置すればよいので、簡単かつ正確に行うことができる。
【0033】
また、各パーツの取付固定は、2つの面に透孔が形成されたL字形の取付金具42、ボルト特定マークで指定された仕様のボルト44、各パーツのT溝22の開口部22aの幅寸法αよりも大きく、溝部22bの幅寸法βよりも小さな外形のナット46及びナットホルダ48を用いて、図6に示す方法で行われる。このとき、ボルト特定マークにより、使用するボルト44を正確に認識することができ、また、金具位置マークにより、取付金具42の取付位置が一目で分かり取り付け漏れがあっても一目で気付くことができる。
【0034】
しかも、表面に露出した位置特定マーク、相手方特定マーク、ボルト特定マーク、金具位置マークは、構造体40の組み立てが完了した後、アルコールや溶剤などを塗布して拭き取り除去することができるので、構造体40を見栄えよく仕上げることができる。
【0035】
次に、この発明の第二の実施形態のフレーム材用プリント装置50について、図7に基づいて説明する。ここで、フレーム材用プリント装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。フレーム材用プリント装置50は、ワークであるフレーム材12上を自走して、フレーム材12表面に描画又は印字を行うプリンタユニット52を備えている。従って、フレーム材用プリント装置10が有するローラコンベア14のようなフレーム材12の移送機構を備えていない。
【0036】
プリンタユニット52は、略矩形の本体54と、本体54の下面中央に下向きに設けられた図示しないプリンタヘッド17と、フレーム材12の左右側面の外側に係合する左右一対に設けられた走行ガイド部56と、本体54をフレーム材12上を長手方向に移動させる図示しない自走機構とを備えている。その他の構成は、フレーム材用プリント装置10と同様である。
【0037】
このような構成のため、プリンタユニット52は、任意の位置に自在に移動し、正確に描画又は印字をすることができる。また、フレーム材12の移送機構が必要ないため、装置自体の設置に広いスペースを要しない。また、制御ユニット18による作用効果は、フレーム材用プリント装置10の場合と同様である。
【0038】
なお、走行ガイド56は、所定の断面形状を持った金属製の連続体であるフレーム材の外形上の特質を利用し、例えば、フレーム材12表面に形成されたレール状の溝であるT溝22に係合する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10,50 フレーム材用プリント装置
12 フレーム材
14 ローラコンベア
14a コンベア本体
14b 支持脚
14c ローラ
16 プリンタユニット
17,52 プリンタヘッド
18 制御ユニット
24 支柱
26 ヘッド取付部
28,30 縦パーツ
32,34,36,38 横パーツ
40 構造体
42 取付金具
44 ボルト
46 ナット
54 本体
56 走行ガイド部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム押出形材であるフレーム材が載置され、当該フレーム材をその長手方向であるX軸方向に移送可能な移送機構と、前記フレーム材表面に所定の印刷を施すプリンタヘッドと、前記プリンタヘッドが前記移送機構の上方をX軸と直角なY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられたプリンタユニットと、前記プリンタユニットの動作を制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記フレーム材から成るパーツ同士が互いに当接配置される表面位置に、相手方パーツが当接する位置を示す位置特定マークと相手方パーツを識別する相手方特定マークとを印刷するように前記プリンタユニットを制御することを特徴とするフレーム材用プリント装置。
【請求項2】
アルミニウム押出形材であるフレーム材表面に所定の印刷を施すプリンタヘッド有し、本体の下面側に前記プリンタヘッドが取り付けられ、前記フレーム材の表面に形成されたレール状の溝又は外側面に係合することによって前記本体の幅方向の位置決めが成される走行ガイド部が設けられ、前記本体が前記フレーム材の上面を長手方向に自走移動可能なプリンタユニットと、
前記プリンタユニットの動作を制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記フレーム材から成るパーツ同士が互いに当接配置される表面位置に、相手方パーツが当接する位置を示す位置特定マークと相手方パーツを識別する相手方特定マークとを印刷するように前記プリンタユニットを制御することを特徴とするフレーム材用プリント装置。
【請求項3】
前記相手方特定マークは、相手方の前記フレーム材の断面形状である請求項1又は2記載のフレーム材用プリント装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記フレーム材表面の取付固定用のボルトの取付位置の近傍に、使用するボルトを示すボルト特定マークと、使用する取付金具の取付位置を示す金具位置マークとを印刷するように前記プリンタユニットを制御することを特徴とする請求項1又は2記載のフレーム材用プリント装置。
【請求項5】
前記プリンタヘッドに使用されるインクは、前記フレーム材による構造体の組み立て後に、拭き取り除去可能なインクである請求項1乃至4のいずれか記載のフレーム材用プリント装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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