説明

フロアインシュレータの取付構造

【課題】きわめて簡単な構造で重量が小さく且つ低コストの構造で、堅牢な構造のフロアインシュレータの取付構造を提供する。
【解決手段】キャブフロア4の下面に取り付けられて、該キャブフロア4の下方に配置されるエンジンからの遮熱、遮音を行うフロアインシュレータ2の取付構造において、キャブフロア4の前端部を前面キャブフロア3の後端部3cに接続し、接続部7に前面キャブフロア3の後端部を下方に曲げて支持部3aを形成し、該支持部3aの曲げ部分にてフロアインシュレータの前端部2bを包み込むように形成し、該支持部3aにおいて、前記キャブフロアの前端部4bと前面キャブフロアの後端部3cとフロアインシュレータの前端部2bとを合わせて固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブフロアの下面に取り付けられ、キャブフロア下方に配置されるエンジンからの遮熱、遮音を行うフロアインシュレータの取り付け構造に関し、特に、キャブフロアの前面に前面キャブフロアを接続し、該接続部にフロアインシュレータの前端部が固定されるフロアインシュレータの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は自動車のフロアインシュレータを備えたキャブフロアを裏返した状態の斜視図であり、車体下方からの斜視図である。図4において車体を1で示し、キャブフロア4の下面に太実線の形状を有するフロアインシュレータ2が取り付けられている。
図3は前記図4のA−A断面図でフロアインシュレータ取付部の断面図である。図3において、フロアインシュレータ2はグラスウール等の断熱材からなり、該フロアインシュレータ2の下方に配置されるエンジンからの熱や音を遮断する。
前記フロアインシュレータ2の上面は、薄い板金材からなるキャブフロア4で覆われており、適当な接続個所5a(この例では車体前後方向2箇所)においてクリップ5によってキャブフロア4の下面側から、該クリップ5を挿入して固定している。
【0003】
前記フロアインシュレータ2の前面は、下方に傾斜した傾斜面2aとなっており、また前記キャブフロア4の前面4aも前記フロアインシュレータ2の傾斜面2に沿って下方に傾斜している。そして前記キャブフロア4の前面4aに続いて水平な前端部4bが形成されている。
接続部7は、前記前面キャブフロア3の後端部と、前記キャブフロア4の前端部とを接続した上で、これに前記フロアインシュレータ2の傾斜面2aの前端部を、結合するものである。
即ち前記接続部7は、前記前面キャブフロア3の後端部と、前記キャブフロア4の前端部と、前記フロアインシュレータ2の前端部とを、下方からキャブフロア当て板6を当てて支持している。
【0004】
また、特許文献1(実公昭61−9827号公報)には、キャブオーバー型トラックにおいて、キャブフロア9の下面にフロアインシュレータ17が取り付けられ、フロアインシュレータ17は車体前方が下方に傾斜した傾斜面となっており、また前記キャブフロア9の前面も前記フロアインシュレータ17の傾斜面に沿って下方に傾斜した構造が示されている。
【0005】
【特許文献1】実公昭61−9827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の図4に示される自動車のフロアインシュレータの取付構造においては、前記接続部7は、前記前面キャブフロア3の後端部と前記キャブフロア4の前端部と前記フロアインシュレータ2の前端部との連結部を、下方からキャブフロア当て板6を当てて支持している。
このため、キャブフロア当て板6を新たに前面キャブフロア3に設けて接続部7に供する必要があり、このため、部品点数及び重量が増加し、また高コストとなる。
【0007】
また、特許文献1(実公昭61−9827号公報)は、キャブフロア9の下面にフロアインシュレータ17が取り付けられ、フロアインシュレータ17は車体前方が下方に傾斜した傾斜面となっており、また前記キャブフロア9の前面も前記フロアインシュレータ17の傾斜面に沿って下方に傾斜している点は、共通しているが、フロアインシュレータ1の先端部を支持するために別部材を取り付けているものであり、キャブフロア9とキャブフロア9の前方側に接続する前面キャブフロアとの接合部を延長し、それを利用してフロアインシュレータ1の先端部を支持する技術ではない。
【0008】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、きわめて簡単な構造で重量が小さく且つ低コストの構造で、堅牢な構造のフロアインシュレータの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる目的を達成するもので、第1発明は、キャブフロアの下面に取り付けられて、該キャブフロアの下方に配置されるエンジンからの遮熱、遮音を行うフロアインシュレータの取付構造において、前記キャブフロアの前端部を前面キャブフロアの後端部に接続し、該接続部には前記前面キャブフロアの後端部を下方に曲げて支持部を形成し、該支持部の曲げ部分にて前記フロアインシュレータの前端部を包み込むように形成して構成されるとともに、前記支持部において、前記キャブフロアの前端部と前面キャブフロアの後端部とフロアインシュレータの前端部とを合わせて固定したことを特徴とする。
【0010】
また、第2発明は、前記フロアインシュレータの取付構造において、前記キャブフロアの前端部を前面キャブフロアの後端部に接続し、該接続部より前記前面キャブフロア後端部を直状に伸ばし、該直状の先端部に支持部を形成し、前記フロアインシュレータの前端部を前記支持部と前記キャブフロアの傾斜前端部とで形成される隙間内に位置させて、前記支持部と前記キャブフロアの傾斜前端部とフロアインシュレータの前端部とを合わせて固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明は、キャブフロアの下面に取り付けられて、該キャブフロアの下方に配置されるエンジンからの遮熱、遮音を行うフロアインシュレータの取付構造において、前記キャブフロアの前端部を前面キャブフロアの後端部に接続し、該接続部には前記前面キャブフロアの後端部を下方に曲げて支持部を形成し、該支持部の曲げ部分にて前記フロアインシュレータの前端部を包み込むように形成して構成されるとともに、前記支持部において、前記キャブフロアの前端部と前面キャブフロアの後端部とフロアインシュレータの前端部とを合わせて固定している。
従って、前面キャブフロアにキャブフロアを連結し、前面キャブフロアの後端部を下方に曲げて支持部を形成し、該支持部の曲げ部分に前記フロアインシュレータの前端部を挿入して突き当てて位置決めし、該前端部を包み込むように支持することにより、フロアインシュレータを確実に支持できることとなって、従来のようなキャブフロア当て板を設ける必要がない。
【0012】
従って、かかるキャブフロア当て板の省略によって、部品点数の減少及び重量が減少し、これにより低コスト化できる。
また、前面キャブフロア後端部の支持部の曲げ部分に前記フロアインシュレータの前端部を包み込んで支持した状態で、クリップを下側から挿入するので、クリップ止め作業が簡単にでき、取り付け作業工数が低減される。
【0013】
また、第2発明によれば、前記キャブフロアの前端部を前面キャブフロアの後端部に接続し、該接続部より前記前面キャブフロア後端部を直状に伸ばし、該直状の先端部に支持部を形成し、前記フロアインシュレータの前端部を前記支持部と前記キャブフロアの傾斜前端部とで形成される隙間内に位置させて、前記支持部と前記キャブフロアの傾斜前端部とフロアインシュレータの前端部とを合わせて固定したので、フロアインシュレータの先端部分を前記支持部と前記キャブフロアの傾斜前端部とで形成される隙間内に挿入して突き当てて位置決めするので、フロアインシュレータの取付作業工数が低減される。
また、従来のキャブフロア当て板を省略できて、部品点数の減少及び重量が減少しこれにより低コスト化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【実施例1】
【0015】
図4は自動車のフロアインシュレータを備えたキャブフロアを裏返した状態の斜視図であり、車体下方からの斜視図である。図4において車体を1で示し、キャブフロア4の下面に太実線の形状を有するフロアインシュレータ2が取り付けられている状態を示す。
図1は本発明の第1実施例を示す前記図4のA−A断面図でフロアインシュレータ2の取付部の断面図である。
図1において、フロアインシュレータ2はグラスウール等の断熱材からなり、該フロアインシュレータ2の下部に配置されるエンジンからの熱を遮断する。
前記フロアインシュレータ2は、薄い板金材からなるキャブフロア4の下面を覆うもので、フロアインシュレータ2の前端部2b以外の個所においては適当な接続個所5a(図1では車体前後方向2箇所のみ図示)においてクリップ5によってフロアインシュレータ2の下面側から、該クリップ5を挿入してキャブフロア2に固定している。
【0016】
前記フロアインシュレータ2の前面は、下方に傾斜した傾斜面2aとなっており、また前記キャブフロア4の前面4aも前記フロアインシュレータ2の傾斜面2に沿って下方に傾斜している。そして前記キャブフロア4の前面4aに続いて水平な前端部4bが形成されている。
【0017】
接続部7には、前記前面キャブフロア3後端部を延長させて、さらに下方に曲げて支持部3aを形成し、該支持部3aの曲げ部分3bに前記フロアインシュレータ2の前端部2bを当てるようして位置決めして、該前端部2bの部分を水平な前端部4b、曲げ部分3b、支持部3aによって包み込むようにして形成している。
そして、前記キャブフロア4の前端部4bを前記前面キャブフロア3の前記接続部7で接続し、前記接続部7の部分に形成される前記キャブフロア4の前端部4bと前面キャブフロア3の後端部3c(前記支持部3a及び曲げ部分3b)との合わせ部分にフロアインシュレータ2の前端部を挿入して、これらキャブフロア4の前端部4bと前面キャブフロア3の支持部3aとの隙間にフロアインシュレータ2の前端部2bを固定している。
【0018】
かかる第1実施例によれば、フロアインシュレータ2の前端部2bを包み込むようにして、前面キャブフロア3後端部を下方に曲げて支持部3aを形成し、該支持部3aの曲げ部分3bに前記フロアインシュレータ2の前端部2bを突き当てて位置決めし、フロアインシュレータ2の前端部2bが支持されることにより、フロアインシュレータ2を確実に支持できることとなって、従来のようなキャブフロア当て板6(図3参照)を設ける必要がない。
【0019】
また、支持部3aの曲げ部分3bに前記フロアインシュレータ2の前端部2bを当てるようして位置決めして支持するので、フロアインシュレータ2の取り付け精度を簡単な構造で向上できる。また、フロアインシュレータ2の前端部2bを接続部7に係合させる作業時に、該前端部2bの部分をキャブフロア4の前面4aの傾斜面に沿って挿入できるため、取り付け作業が容易となり、作業効率が向上する。
【0020】
従って、かかるキャブフロア当て板6の省略によって、該キャブフロアあて板bの取り付け精度を管理する必要が無くなると共に、部品点数の減少及び重量が減少し、これにより低コスト化できる。
また、前面キャブフロア3後端部の支持部3aの曲げ部分3bに前記フロアインシュレータ2の前端部2bを包み込んで支持した状態で、クリップ5でクリップ止めをするので、作業が簡単にでき、作業工数が低減される。
【実施例2】
【0021】
図2は(a)本発明の第2実施例を示す前記図4のA−A断面図でフロアインシュレータ取付部の断面図である。また、図2(b)はその変形例である。
この第2実施例においては、キャブフロア4の前端部4bを前面キャブフロア3の後端部3cに接続部8で接続し、該接続部8より前記前面キャブフロア4の後端部を直状に伸ばし、該直状の先端部に支持部10を形成し、フロアインシュレータ2の前端部2bを支持部10とキャブフロア4の前面4aの傾斜前端部4dとで形成される隙間S内に位置させ、該隙間Sの先細になっている方向にフロアインシュレータ2の前端部2bを押当てて位置決めして、支持部10とキャブフロア4の傾斜前端部4dとの間にフロアインシュレータ2の前端部2bを挟むようにして保持して前端部2bを固定する。
【0022】
従って、かかる第2実施例によれば、前面キャブフロア3の後端部3cを直状に伸ばし、該直状の先端部に支持部10を形成し、フロアインシュレータ2の前端部2bを支持部10とキャブフロア4の前面4aの傾斜前端部4dとで形成される隙間S内に位置させて、該隙間Sに押当てて位置決めして、支持部10とキャブフロア4の傾斜前端部4dとの間にフロアインシュレータ2の前端部2bを挟むようにして保持するので、作業工数が低減される。
また、従来のキャブフロア当て板6(図3参照)を省略できて、部品点数の減少及び重量が減少しこれにより低コスト化できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、きわめて簡単な構造で重量が小さく且つ低コストの構造で、堅牢な構造のフロアインシュレータの取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例を示す前記図4のA−A断面図でフロアインシュレータ取付部の断面図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す前記図4のA−A断面図でフロアインシュレータ取付部の断面図である。
【図3】従来技術を示す図4のA−A断面図でフロアインシュレータ取付部の断面図である。
【図4】自動車のフロアインシュレータを備えたキャブフロアの上方斜視図である。
【符号の説明】
【0025】
1 車体
2 フロアインシュレータ
2a 傾斜面
2b 前端部
3 前面キャブフロア
3a 支持部
3b 曲げ部分
3c 後端部
4 キャブフロア
4b 前端部
4d 傾斜前端部
5 取付ビス
5a 接続部
7、8 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブフロアの下面に取り付けられて、該キャブフロアの下方に配置されるエンジンからの遮熱、遮音を行うフロアインシュレータの取付構造において、
前記キャブフロアの前端部を前面キャブフロアの後端部に接続し、該接続部には前記前面キャブフロアの後端部を下方に曲げて支持部を形成し、該支持部の曲げ部分にて前記フロアインシュレータの前端部を包み込むように形成して構成されるとともに、前記支持部において、前記キャブフロアの前端部と前面キャブフロアの後端部とフロアインシュレータの前端部とを合わせて固定したことを特徴とするフロアインシュレータの取付構造。
【請求項2】
キャブフロアの下面に取り付けられて、該キャブフロアの下方に配置されるエンジンからの遮熱、遮音を行うフロアインシュレータの取付構造において、
前記キャブフロアの前端部を前面キャブフロアの後端部に接続し、該接続部より前記前面キャブフロア後端部を直状に伸ばし、該直状の先端部に支持部を形成し、前記フロアインシュレータの前端部を前記支持部と前記キャブフロアの傾斜前端部とで形成される隙間内に位置させて、前記支持部と前記キャブフロアの傾斜前端部とフロアインシュレータの前端部とを合わせて固定したことを特徴とするフロアインシュレータの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−137679(P2010−137679A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315163(P2008−315163)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】