説明

フロントウインドウ付き表示装置およびその製造方法

【課題】フロントウインドウと液晶表示パネルの接着を大気中で、気泡の発生が無く、かつ、効率的に行う。
【解決手段】下側支持機構110に配置された液晶表示パネル10を、上側支持機構140に配置されたフロントウインドウ20との間隔をストッパー120によって正確に決める。フロントウインドウ20の上には紫外線照射マスク130が配置され、紫外線を照射することによって、紫外線照射マスク130の透過パターン131に対応する部分の紫外線硬化樹脂30を仮硬化する。液晶表示パネル10とフロントウインドウ20が仮接着した状態のものを貼り合わせ装置から外し、トレイ等に所定時間放置し、紫外線硬化樹脂30が所定の面積、所定の厚さに達した状態で、紫外線硬化樹脂全面に紫外線を照射して本接着をする。貼り合わせ装置を占有する時間が短いので、装置の稼働率を向上することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロントウインドウ付き表示装置およびその製造方法に係り、特に、フロントウインドウを表示パネルの保護のために、表示パネルの前面に接着する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の表示装置では、画面は一定のサイズを保ったまま、セットの外形寸法を小さくしたいという要求と同時に表示パネルを薄くしたいという要求が強い。液晶表示パネルを薄くするには、液晶表示パネルを製作したあと、液晶表示パネルの外側を研磨して薄くしている。
【0003】
液晶表示パネルを薄くすると機械的強度が問題となる。液晶表示パネル10の表示面に機械的圧力が加わると液晶表示パネル10が破壊する危険がある。これを防止するために図23あるいは図24に示すように、液晶表示パネル10を携帯電話等のセットに組み込む際、液晶表示パネル10の画面側にフロントウインドウ20を取り付ける。
【0004】
図23および図24の例では、フロントウインドウ20に外力が加わった場合に液晶表示パネル10に力がおよばないようにするために、フロントウインドウ20は液晶表示パネル10と離して設置される。しかし、このような構成は次のような問題を生ずる。図23に示す問題は、像が2重になって見えるという問題である。図23はこの問題を反射型液晶表示パネルを例にとって説明している図である。図23において、外光Lが入射し、フロントウインドウ20を通過して液晶表示パネル10で反射し、再びフロントウインドウ20を通過して人間の目に入る。なお、外光Lはフロントウインドウ20で屈折するが、図23においては無視している。
【0005】
液晶表示パネル10の画面P1で反射した光の一部はフロントウインドウ20の下面Q1で反射し、液晶表示パネル10の画面P2に入射し、反射する。このP2で反射した光を人間が視認すると像が2重に見える現象を生ずる。図23は反射型の液晶表示パネル10を例にとって説明したものであるが、透過型の場合も同様である。すなわち、透過型において、液晶表示パネル10のP1での反射光と同じ角度で光が液晶表示パネル10を透過してくると、フロントウインドウ20の下面Q1で反射し、反射型の場合と同様の経路をたどる。このような、画像が2重に見える現象は画質を劣化させる。
【0006】
図24は、従来例における他の問題を示す図である。図24において、バックライトからの光Lは屈折率の違いによって、液晶表示パネル10の対向基板13と空気の界面で一部が反射する。また、光Lは空気層からフロントウインドウ20に入射する場合も、屈折率の違いによって、再び一部が反射する。この現象によって、画面輝度が低下するという問題があった。
【0007】
このような問題を対策するために、「特許文献1」では、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10との間に屈折率がガラスと同程度の接着材を形成し、界面での反射を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開008−158251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
「特許文献1」では、フロントウインドウと液晶表示パネルとを紫外線硬化樹脂を用いて接着している。「特許文献1」では、紫外線硬化樹脂内に気泡が発生することを防止するために、減圧雰囲気中において、フロントウインドウと液晶表示パネルを貼り合わせ、この状態で紫外線によって接着材を硬化している。
【0010】
しかし、「特許文献1」の技術では、接着工程を減圧雰囲気中で行う必要があり、装置のコストが嵩む。また、減圧雰囲気を形成するための排気プロセスも必要である。また、接着材を均一に塗布するために、減圧雰囲気中において、接着材が均一に広がるための時間も必要であり、スループットが低くなるという問題もある。
【0011】
一方、例えば、液晶表示パネルと貼り合わせる対象が、1枚のガラス板、あるいは、プラスチック板で形成されているフロントウインドウではなく、2枚の基板の間に配線が形成されたタッチパネルである場合がある。この場合、タッチパネルを減圧雰囲気中に配置すると、タッチパネルの内圧によってタッチパネルが膨らんでしまうという現象が生ずる。このような現象が生ずれば、正確な貼り合わせが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記従来例の問題点を克服するものであり、液晶表示パネルと、フロントウインドウ、タッチパネル等との接着を大気圧雰囲気中で行うことを可能にするものである。フロントウインドウと液晶表示パネルとの接着は紫外線硬化樹脂を用いるが、紫外線を用いて樹脂を硬化する場合、液晶表示パネルとフロントウインドウあるいはタッチパネルとの間隔を制御する貼り合わせ装置中における第1の紫外線照射によって紫外線硬化樹脂を仮硬化させる。第1の紫外線の照射は、紫外線照射マスクを用いて、紫外線硬化樹脂の一部のみに対して行い、マスクされた部分の紫外線硬化樹脂は硬化しておらず、流動性を保っている。
【0013】
紫外線硬化樹脂を仮硬化させた状態のフロントウインドウ等と液晶表示パネルの組立て体を貼り合わせ装置から取り出して大気中に放置し、フロントウインドウ等と液晶表示パネルの間の紫外線硬化樹脂が所定の面積、所定の厚さになったところで、第2の紫外線照射によって、紫外線硬化樹脂を完全硬化して、液晶表示パネルとフロントウインドウの接着を完了する。
【発明の効果】
【0014】
液晶表示パネルとフロントウインドウ等との接着を大気中で行うことが出来る。また、貼り合わせ装置において、紫外線硬化樹脂の一部を仮硬化させ、その後、仮接着したフロントウインドウ等と液晶表示パネルの組み立て体を所定の時間保持するので、個々の液晶表示装置が貼り合わせ装置を占有する時間が小さいため、装置の稼働率を上げることが出来る。
【0015】
液晶表示パネルとフロントウインドウ等とを仮接着した後、仮硬化した部分以外の紫外線硬化樹脂が流動性を持った状態で所定時間放置されるので、紫外線硬化樹脂の厚さ、面積を正確に設定することが出来る。また、仮に液晶表示パネルとフロントウインドウを貼り合わせるときに気泡が発生しても、外部に排出することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の液晶表示装置の平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】液晶表示パネルの平面図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】紫外線硬化樹脂を塗布したフロントウインドウの平面図である。
【図6】図5のC−C断面図である。
【図7】本発明における接着工程のフローチャートである。
【図8】貼り合わせ装置に液晶表示パネルとフロントウインドウをセットした断面模式図である。
【図9】貼り合わせ装置に液晶表示パネルとフロントウインドウをストッパーを用いて所定の間隔にセットした断面模式図である。
【図10】貼り合わせ装置において、紫外線硬化樹脂を部分的に仮硬化させるために紫外線を照射した図である。
【図11】紫外線照射マスクの例である。
【図12】紫外線照射マスクの他の例である。
【図13】紫外線照射マスクのさらの他の例である。
【図14】他の貼り合わせ装置に液晶表示パネルとフロントウインドウを所定の間隔にセットした断面模式図である。
【図15】他の貼り合わせ装置において、液晶表示パネルとフロントウインドウの間隔をステッピングモータを用いて設定した図である。
【図16】他の貼り合わせ装置において、紫外線硬化樹脂を部分的に仮硬化させるために紫外線を照射した図である。
【図17】実施例2の液晶表示装置の平面図である。
【図18】実施例2の液晶表示装置の断面図である。
【図19】紫外線硬化樹脂を塗布したタッチパネルの平面図である。
【図20】図19のD−D断面図である。
【図21】実施例3の液晶表示装置の平面図である。
【図22】実施例3の液晶表示装置の断面図である。
【図23】従来例の問題点を示す断面模式図である。
【図24】従来例の他の問題点を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例にしたがって、本発明の詳細な内容を開示する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の第1の実施例によって形成されたフロントウインドウ付き表示装置、特に、フロントウインドウ付き液晶表示装置の平面図であり、図2は、図1のA−A断面図である。図1および図2において、フロントウインドウ付き液晶表示装置は液晶表示パネル10にフロントウインドウ20が接着した状態となっている。本明細書では、TFT基板11と対向基板13とが接着し、TFT基板11に下偏光板12が貼り付けられ、対向基板13に上偏光板14が貼り付けられ、かつ、端子部15にICドライバ16を搭載し、フレキシブル配線基板17が接続されたものを液晶表示パネル10という。また、液晶表示パネル10に駆動回路であるドライバICを搭載したものや、それらとバックライトとを組み合わせたもの、後述するタッチパネルを組み合わせたものを液晶モジュールという。また、液晶表示パネル或いは液晶表示モジュールに追加してフロントウインドウ20等が貼り付けられたものをフロントウインドウ付き液晶表示装置という。図1および図2において、液晶表示パネル10にフロントウインドウ20が紫外線硬化樹脂30を介して接着している。液晶表示装置以外、有機ELパネル等の表示パネルや、有機ELパネル等の表示パネルに駆動回路である半導体素子を搭載したものである有機EL表示モジュール等の表示モジュールに追加してフロントウインドウ20等が貼り付けられたものをフロントウインドウ付き有機EL表示装置、或いはフロントウインドウ付き表示装置という。
【0019】
図3は図1に使用されている液晶表示パネル10の平面図であり、図4は図3のB−B断面図である。図3および図4において、TFT基板11には画素電極、TFT等がマトリクス状に形成されている。対向基板13には、TFT基板11に形成された画素電極に対応してカラーフィルタ等が形成されている。TFT基板11と対向基板13との間には、図示しない液晶層が挟持されている。液晶層が、バックライト等からの光を画素毎に制御することによって画像が形成される。液晶は偏光光のみを制御することが出来るので、下偏光板12によってバックライトからの光を偏光し、液晶層で制御した後、対向基板13に貼り付けられた上偏光板14によって再び偏光され、人間が画像を視認することが出来る。
【0020】
図3および図4において、TFT基板11と対向基板13とは、周辺において、図示しないシール材によって接着している。液晶表示パネル10の表示領域は上偏光板14とほぼ同じである。TFT基板11は対向基板13よりも大きく形成され、TFT基板11が大きくなっている部分には端子部15が形成されている。端子部15には、液晶表示パネル10を駆動するためのICドライバ16が搭載されている。また、端子部15には、液晶表示パネル10に電源、映像信号、走査信号等を外部から供給するためのフレキシブル配線基板17が接続されている。
【0021】
図5は液晶表示パネル10に接着されるフロントウインドウ20の平面図であり、図6は図5のC−C断面図である。フロントウインドウ20はアクリルあるいはポリカーボネート等のプラスチック板によって形成される場合もあるし、ガラスで形成される場合もある。本実施例では、フロントウインドウ20はガラスで形成されている。図5において、フロントウインドウ20の裏側に紫外線硬化樹脂30がディスペンサによって形成されている。ディスペンサから線状に吐出される紫外線硬化樹脂を位置を変えて往復させて塗布することによって紫外線硬化樹脂30を形成している。
【0022】
ディスペンサからの紫外線硬化樹脂30の吐出量は正確に制御し、液晶表示パネル10とフロントウインドウ20との接着後の気泡の発生、あるいは樹脂のはみ出しを防止している。ディスペンサからの紫外線硬化樹脂30の吐出量は、表示領域が対角3インチの場合、例えば、0.2gであるが、この場合の吐出量は±0.01g程度に制御することが出来る。
【0023】
図5および図6において、ディスペンサで形成された状態の紫外線硬化樹脂30は、量は正確に制御されているが、塗布面積、塗布厚さ等は正確には制御できていない。図5は紫外線硬化樹脂30の濡れ拡がり後のおおよその塗布面積を示す。紫外線硬化樹脂30の面積、塗布厚さは後で述べる、貼り合わせ装置における第1の紫外線照射において、仮設定され、貼り合わせ装置から取り外し、所定の時間放置した後の、第2の紫外線照射によって最終設定される。
【0024】
なお、図5および図6において、ディスペンサによって紫外線硬化樹脂30を塗布するときはフロントウインドウ20の上側に塗布し、その後、フロントウインドウ20を裏返す。フロントウインドウ20を裏返したときに、硬化前の紫外線硬化樹脂30が垂れたりしないように、紫外線硬化樹脂30の当初の粘度は、2300mPa・sec程度に制御されている。
【0025】
紫外線硬化樹脂30は、硬化後も所定の弾性特性をもち、液晶表示装置が衝撃を受けた場合にも衝撃を和らげる働きを持っている。紫外線硬化樹脂30の成分は、例えば、アクリル系の樹脂が使用され、例えば、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス社から、SVR1240H等として販売されている材料を使用することが出来る。SVR1240Hは紫外線硬化性と熱硬化性を兼ね備えている。以後の説明では、接着材は紫外線硬化樹脂30として説明するが、紫外線硬化性と熱硬化性を兼ね備えた樹脂でもよい。但し、紫外線硬化することは必須である。
【0026】
このようにして形成された液晶表示パネル10およびフロントウインドウ20を図7に示す接着プロセスによって接着する。図7において、フレキシブル配線基板17の接続まで終わった液晶表示パネル10を貼り合わせ装置にセットする。一方、フロントウインドウ20に紫外線硬化樹脂30をディスペンサで塗布し、その後フロントウインドウ20を反転して貼り合わせ装置にセットする。
【0027】
フロントウインドウ20の材質や汚染の状態によっては、紫外線硬化樹脂30の濡れ性が悪い場合がある。このような場合、紫外線硬化樹脂30をフロントウインドウ20に塗布する前に、Deep−UV照射によって、フロントウインドウ20の表面を清浄化しておく。なお、Deep−UVとは波長の短い紫外線であり、これを照射することによって、フロントウインドウ20の表面等に付着した汚染物質等を分解して炭酸ガスとして除去する。
【0028】
図8は貼り合わせ装置に液晶表示パネル10とフロントウインドウ20がセットされた状態の断面模式図である。図8に示す貼り合わせ装置において、フロントウインドウ20は接着面を下にして上側支持機構140にセットされている。液晶表示パネル10は下側支持機構110にセットされている、下側支持機構110はベース150に取り付けられたシリンダ100によって上下する。下側支持機構110には、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10の間隔、すなわち、紫外線硬化樹脂30の厚さを決定するためのストッパー120が形成されている。図8〜図10において、ストッパー120は下側支持機構110に形成されているが、上側支持機構140に形成されていてもよい。
【0029】
図8において、フロントウインドウ20の上には、紫外線照射マスク130が配置されている。紫外線照射マスク130には、所定の場所に紫外線を通す透過パターンが形成され、紫外線硬化樹脂30に部分的に紫外線を照射できるようになっている。透過パターンは例えば紫外線照射マスク130に形成された孔でもよい。
【0030】
この状態で、図8に示すシリンダ100を上昇させ、液晶表示パネル10とフロントウインドウ20を紫外線硬化樹脂30を介して接着する。これが図7における貼り合わせ工程であり、その状況が図9に示されている。図9は貼り合わせ工程の断面模式図である。図9において、下側支持機構110がシリンダ100によって持ち上げられ、下側支持機構110に形成されたストッパー120が上側支持機構140に接触するまで、上昇する。ストッパー120が存在することによって、上側支持機構140と下側支持機構110の間隔が正確に決定され、同時に上側支持機構140にセットされたフロントウインドウ20と下側支持機構110にセットされた液晶表示パネル10の間隔が正確に決まる。ストッパーは下側支持機構に形成されているが、上側支持機構に形成してもよく、上側と下側双方の支持機構に形成してもよい。
【0031】
この状態において、図10に示すように、第1の紫外線照射を行う。これが図7に示す第1UV照射(仮固定)のプロセスである。図10において、紫外線は紫外線照射マスク130を通して照射されるので、紫外線は、紫外線照射マスク130に形成された紫外線透過パターン131のみを介して紫外線硬化樹脂30に照射される。そうすると、紫外線硬化樹脂30のうち、紫外線透過パターン131の部分のみが仮硬化する。しかし、他の部分は所定の流動性を保っている。したがって、紫外線硬化樹脂30が部分的に仮硬化した後も紫外線硬化樹脂30全体としては、均一な膜厚になるよう流動することが出来、また、気泡を排出することが出来る。
【0032】
図11〜図13は紫外線照射マスク130に形成された紫外線透過パターン131の例である。図11〜図13において、斜線を施した部分が紫外線が透過する部分である。図11において、紫外線透過パターン131は9個の円である。したがって、紫外線硬化樹脂30は9個の円の部分に対応して円柱状に仮硬化する。図11において、紫外線透過パターン131は、9個あるが、液晶表示パネル10の面積が小さい場合は、対角周辺4個のみでよい。仮硬化する部分の数が少ない場合は、仮硬化する部分を周辺に配置したほうが効果的である。
【0033】
図12は、仮硬化する部分を線状に形成した場合である。図12の特徴は、十字の仮硬化部分と周辺の線状の仮硬化部分によって未硬化の紫外線硬化樹脂30を囲むような形状となっている。このようなパターンは、未硬化の紫外線硬化樹脂30が比較的粘度が小さい場合に効果的である。図13は、線状の紫外線透過パターン131と円状の紫外線透過パターン131の組み合わせである。このように、紫外線透過パターン131は紫外線硬化樹脂30の粘度、液晶表示パネル10の面積等によって種々のパターンをとることが出来る。また、マスクに限定されるものでなく、マスクを使用せずに上述の紫外線透過パタンに対応する箇所に紫外線をスポットで照射するような構成であってもよい。
【0034】
図10における仮硬化のための紫外線は、500mJ〜1000mJのエネルギーが必要である。この場合、100Wの紫外線とすると、5〜10秒の照射でよい。すなわち、図10の状態を、5〜10秒保ち、その後、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10が仮接着した液晶表示装置を貼り合わせ装置から取り出すことが出来る。すなわち、各液晶表示装置が接着するために装置を占有する時間は非常に短くてよいので、装置の稼働率を向上させることが出来る。
【0035】
図7に戻り、このようにして仮接着されたフロントウインドウ20と液晶表示パネル10を貼り合わせ装置から取り外してトレイ等に放置する。この間に、仮硬化していない紫外線硬化樹脂30は流動性を維持しているので、紫外線硬化樹脂30が最適な厚さになるように、流動する。紫外線硬化樹脂30内に気泡が巻き込まれた場合であっても、紫外線硬化樹脂30が流動性を有しているうちに、該気泡は外部に拡散することが出来る。
【0036】
放置されている間に、紫外線硬化樹脂30は再流動し、紫外線硬化樹脂30は所定の厚さ、所定の面積になる。紫外線硬化樹脂30の最終面積は、上偏光板14の面積とほぼ同じである。この放置時間は30分程度である。放置は、トレイ等に放置するだけなので、貼り合わせ装置の稼動率を低下させることは無い。
【0037】
所定の時間放置されたあと、液晶表示装置はフロントウインドウ20側から本硬化をさせるために、第2の紫外線の照射を行う。この時は、紫外線照射マスク130は取り外されているので、第2の紫外線照射はフロントウインドウ20全面にわたって行われる。このようにしてフロントウインドウ20と液晶表示パネル10が接着し、液晶表示装置が完成する。
【0038】
以上説明したように、本実施例によれば、液晶表示パネル10とフロントウインドウ20の間を第1の紫外線照射によって部分的に仮硬化し、その後、装置から取り出して放置し、その後、第2の紫外線照射によって本効果させるので、装置の稼動率を向上させることが出来る。また、貼り合わせ装置におけるストッパー120によって、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10の間隔を正確にセットし、その後の放置によって、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10の間の紫外線硬化樹脂30の厚さ、面積をセルフアラインによって制御できるので、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10の間の紫外線硬化樹脂30層を正確に形成することが出来る。
【0039】
なお、図8〜図10で説明した貼り合わせ装置は、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10の間隔を下側支持機構110に形成されたストッパー120によって設定している。しかし、貼り合わせ装置において、フロントウインドウ20と液晶表示パネル10の間隔はストッパー120を用いずに、別な方法によっても設定することが出来る。例えば、図14〜図16に示す貼り合わせ装置の場合は、シリンダ100の代わりに、ステッピングモータ200によって下側支持機構110を上下移動させている。ステッピングモータ200は、下側支持機構110の移動距離を正確に制御することが出来るので、ストッパー120無しに下側支持機構110の位置、ひいては、液晶表示パネル10とフロントウインドウ20の間隔を正確に設定することが出来る。
【0040】
図14〜図16は、図8〜図10における貼り合わせ装置において、下側支持機構110の上下移動にシリンダ100を用いずに、ステッピングモータ200を用いた例である。図14〜図16では、下側支持機構110の移動にステッピングモータ200を用いている点が、図8〜図10と異なる点であり、その他の機構、工程は同じなので説明を省略する。
【0041】
図14〜図16は、ステッピングモータ200は下側支持機構110を上下させているが、ステッピングモータ200によって上側支持機構140を上下させることによって、液晶表示パネル10とフロントウインドウ20との間隔を設定してもよい。この場合は、下側支持機構110は固定し、上側支持機構140をステッピングモータ200によって上下動させることになる。
【0042】
以上の説明では、紫外線硬化樹脂30はフロントウインドウ20に形成しているとして説明した。しかし、場合によっては液晶表示パネル10の上偏光板14に形成することも出来る。この場合も以上で説明したプロセスをそのまま使用することが出来る。なお、この場合も。紫外線の照射は、液晶表示パネル10の側ではなく、フロントウインドウ20側から行うのがよい。液晶表示パネル10側には、走査信号線、映像信号線等の不透明な配線が形成されているので、紫外線を均一に照射することが難しいからである。
【実施例2】
【0043】
図17および図18は本発明によって形成された第2の実施例にかかり、液晶表示パネルとタッチパネルとから構成される液晶表示モジュールの平面図および断面図である。図17および図18において、液晶表示パネル10の上にはタッチパネル40が配置されている。液晶表示パネル10の上偏光板14とタッチパネル40とが、紫外線硬化樹脂30によって接着している。
【0044】
図19はタッチパネル40の平面図であり、図20は、図19のD−D断面図である。図19および図20に示すタッチパネル40には、タッチパネル40用フレキシブル配線基板41が接続されている。図19において、図5に示す実施例1のフロントウインドウ20と同様にしてディスペンサによってタッチパネル40に紫外線硬化樹脂30が塗布される。紫外線硬化樹脂30はタッチパネル40が上向きの状態で塗布され、その後、図20のように裏返すことは実施例1と同様である。
【0045】
タッチパネル40は、静電式と抵抗式とがあるが、特に抵抗式のものは、2枚の基板を使用して内側に配線を形成する場合が多い。このようなタッチパネル40を減圧雰囲気中で液晶表示パネル10に接着しようとすると、タッチパネル40の内部の空気が膨張して、タッチパネル40が膨らんだ形になり、正確な接着が出来なくなる。この点本発明の接着方法は、大気中で行うことが出来るので、本実施例に対しては特に有用である。
【0046】
図19および図20に示すタッチパネル40を図3および図4に示す液晶表示パネル10に接着する。接着方法は、図7において、フロントウインドウ20の代わりに、タッチパネル40を使用する他は実施例1と同様であるので、その他の説明は省略する。実施例2によって液晶表示パネル10とタッチパネル40を効率よく、紫外線樹脂によって正確に接着することが出来る。
【実施例3】
【0047】
図21および図22は本発明によって形成された第3の実施例にかかるフロントウインドウ付き液晶表示装置の平面図および断面図である。図21および図22において、液晶表示パネル10の上にはタッチパネル40が配置され液晶モジュールが構成され、タッチパネル40の上にはフロントウインドウ20が配置されている。液晶表示パネル10の上偏光板14とタッチパネル40とが、紫外線硬化樹脂30によって接着している。また、タッチパネル40とフロントウインドウ20とは紫外線硬化樹脂30によって接着されている。
【0048】
図21および図22において、まず、フロントウインドウ20とタッチパネル40が紫外線硬化樹脂30によって接着される、この場合、実施例1の、図5および図6に示すように、フロントウインドウ20に紫外線硬化樹脂30がディスペンサによって塗布される。紫外線硬化樹脂30が塗布されたフロントウインドウ20とタッチパネル40とを実施例1の図7と同じ工程によって接着する。
【0049】
すなわち、図7において、液晶表示パネル10の代わりにタッチパネル40が配置される。図8〜図10において、下側支持機構110には液晶表示パネル10の代わりにタッチパネル40が配置される他は、フロントウインドウ20とタッチパネル40の接着は、実施例1におけるフロントウインドウ20と液晶表示パネル10の接着とまったく同様にして行うことが出来る。
【0050】
上記説明では、フロントウインドウ20側に紫外線硬化樹脂30をディスペンサによって形成したが、タッチパネル40側に紫外線硬化樹脂30をディスペンサによって形成してもよい。また、紫外線の照射はフロントウインドウ20側から行うことが望ましいが、タッチパネル40側から紫外線照射を行ってもよい。
【0051】
このようにして、フロントウインドウ20とタッチパネル40が紫外線硬化樹脂30によって接着した組み立て体を液晶表示パネル10に接着する。この場合も実施例1の図7における工程と同じである。図7において、フロントウインドウ20の代わりに、フロントウインドウ20とタッチパネル40の組み立て体が配置される。また、図8〜図10において、上側支持機構140にはフロントウインドウ20の代わりにフロントウインドウ20とタッチパネル40の組み立て体が配置される他は、フロントウインドウ20とタッチパネル40の組み立て体と液晶表示パネル10の接着は実施例1におけるフロントウインドウ20と液晶表示パネル10の接着と全く同様にして行うことが出来る。
【0052】
本実施例の構成では、紫外線硬化樹脂30によって接着する箇所が、フロントウインドウ20とタッチパネル40、タッチパネル40と液晶表示パネル10というように2箇所ある。本発明では、減圧工程を使用せずに、大気中で接着できること、また、貼り合わせ装置を長時間占有する必要がないことから、接着工程の短縮化、装置の低コスト化、装置の稼働率の向上に特に効果がある。尚、ここでは、液晶表示パネル10に駆動回路であるドライバICやバックライト、更にタッチパネルとを組み合わせたものを液晶モジュールといい、液晶表示パネル或いは液晶表示モジュールに追加してフロントウインドウ20等が貼り付けられたものをフロントウインドウ付き液晶表示装置という。
【0053】
以上説明した本発明では、第1の紫外線照射によって紫外線硬化樹脂30の一部を仮硬化させ、所定の時間経過後に第2の紫外線照射によって、紫外線硬化樹脂30全体を本効果させる。したがって、第1の紫外線照射によって部分的に仮硬化した部分と他の部分とで樹脂の架橋状況、ストレス、樹脂の強度等に差が出る。
【0054】
例えば、紫外線硬化樹脂30による液晶表示パネル10へのストレスが、仮硬化を行った部分とその他の部分とで異なる場合、液晶表示パネル10の透過率に差がでる可能性がある。つまり、液晶表示装置を薄くするために、液晶表示パネル10は研磨して薄くなっている場合が多い。このような場合、樹脂によるストレスの差によって液晶表示パネル10におけるTFT基板11と対向基板13との間のギャップが部分的に変化するという影響を生ずる。ギャップが部分的に変化すると透過率の微妙な差が生じ、具体的には、部分的に色度に差が生ずる場合がある。
【0055】
しかし、このような着色現象は常温付近で発生せず、40℃付近でも観測されなかった。一方、液晶表示装置を70℃程度まで加熱した場合は若干の着色現象が観察された。つまり、本実施例のフロントウインドウ付き表示装置では、表示パネルのうち、紫外線硬化樹脂が形成された箇所を第1の領域とした場合、それら第1の領域の中には、上述した通り、マスクを用いて仮硬化を行った島状の第2の領域が存在することとなる。その第2の領域の樹脂の架橋状況や強度、透過率等は、第1の領域のそれとは異なることとなる。
【符号の説明】
【0056】
10…液晶表示パネル、 11…TFT基板、 12…下偏光板、 13…対向基板、 14…上偏光板、 15…端子部、 16…ICドライバ、 17…フレキシブル配線基板、 18…LED、 19…封止材、 20…フロントウインドウ、 30…紫外線硬化樹脂、 40…タッチパネル、 41…タッチパネル用フレキシブル配線基板、 100…シリンダ、 110…下側支持機構、 120…ストッパー、 130…紫外線照射マスク、 140…上側支持機構、 131…紫外線透過パターン、 150…ベース、 200…ステッピングモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と表示パネルとが紫外線硬化樹脂によって接着されているフロントウインドウ付き表示装置の製造方法であって、
前記表示パネルと前記基板との間に紫外線硬化樹脂を形成し、
前記基板の側から部分的に紫外線を照射し前記紫外線硬化樹脂を部分的に仮硬化させ、所定の時間放置した後、
前記基板側から紫外線を照射することによって前記紫外線硬化樹脂を本硬化させることによって前記基板と前記表示パネルとを接着することを特徴とするフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記表示パネルを貼り合わせ装置の第1の支持機構にセットし、前記基板を前記液晶表示パネルに向かいあうように前記貼り合わせ装置の第2の支持機構にセットし、
前記液晶表示パネルと前記液晶表示パネルとを前記紫外線硬化樹脂を介して所定の間隔で配置し、
前記仮硬化した前記基板と前記液晶表示パネルとを前記貼り合わせ装置から外した後、前記所定の時間放置し、前記本硬化させることを特徴とする請求項1のフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記仮硬化は、紫外線照射マスクを介して紫外線を照射することで行うことを特徴とする請求項1のフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板と前記表示パネルとを前記紫外線硬化樹脂を介して所定の間隔で配置するときの前記所定の間隔は、前記第1の支持機構または前記第2の支持機構に形成されたストッパーによって設定されることを特徴とする請求項2に記載のフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記基板と前記表示パネルとを前記紫外線硬化樹脂を介して所定の間隔で配置するときの前記所定の間隔は、前記第1または前記第2の支持機構を移動させるステッピングモータによって設定されることを特徴とする請求項2に記載のフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記基板と前記表示パネルとの前記仮接着および前記本接着は、大気中で行われることを特徴とする請求項1に記載のフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項7】
表示パネルとタッチパネルとが一体化した表示モジュールと基板とが紫外線硬化樹脂によって接着されているフロントウインドウ付き表示装置の製造方法であって、
前記表示モジュールと前記基板との間に紫外線硬化樹脂を形成し、
前記基板の側から部分的に紫外線を照射し前記紫外線硬化樹脂を部分的に仮硬化させ、所定の時間放置した後、
前記基板側から紫外線を照射することによって前記紫外線硬化樹脂を本硬化させることによって前記基板と前記表示モジュールとを接着することを特徴とするフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記仮硬化は、紫外線照射マスクを介して紫外線を照射することで行うことを特徴とする請求項7のフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記基板と前記表示モジュールとの前記仮接着および前記本接着は、大気中で行われることを特徴とする請求項1に記載のフロントウインドウ付き表示装置の製造方法。
【請求項10】
基板と表示パネルとが紫外線硬化樹脂によって接着されているフロントウインドウ付き表示装置であって、
前記紫外線硬化樹脂は、第一の領域と、前記第1の領域内に形成された第2の領域とを有し、
前記第1の領域と前記第2の領域とでは、前記紫外線硬化樹脂の架橋状況或いは強度、又は、表示パネルからの透過率が異なることを特徴とするフロントウインドウ付き表示装置。
【請求項11】
前記第1の領域は、仮硬化が行われない状態で本硬化された領域であり、前記第2の箇所は、仮硬化がされた後に本硬化された領域であることを特徴とするフロントウインドウ付き表示装置。
【請求項12】
基板と、表示パネルとタッチパネルとからなる表示モジュールとが紫外線硬化樹脂によって接着されているフロントウインドウ付き表示装置であって、
前記紫外線硬化樹脂は、第一の領域と、前記第1の領域内に形成された第2の領域とを有し、
前記第1の領域と前記第2の領域とでは、前記紫外線硬化樹脂の架橋状況或いは強度、又は、表示パネルからの透過率が異なることを特徴とするフロントウインドウ付き表示装置。
【請求項13】
前記第1の領域は、仮硬化が行われない状態で本硬化された領域であり、前記第2の箇所は、仮硬化がされた後に本硬化された領域であることを特徴とするフロントウインドウ付き表示装置。
【請求項14】
基板と表示パネルとを紫外線硬化樹脂によって接着されたフロントウインドウ付き表示装置の貼り合わせ装置であって、
前記表示パネルがセットされる第1の支持機構と、前記基板がセットされる第2の支持機構とを有し、
前記基板と前記表示パネルとを前記紫外線硬化樹脂を介して所定の間隔で保持し、
前記基板の側から部分的に紫外線を照射し前記紫外線硬化樹脂を部分的に硬化させることを特徴とするフロントウインドウ付き表示装置の貼り合わせ装置。
【請求項15】
前記紫外線の照射は、マスクを介して行われることを特徴とする請求項14に記載のフロントウインドウ付き表示装置の貼り合わせ装置。
【請求項16】
前記所定の間隔での保持は、前記第1の支持機構または前記第2の支持機構に形成されたストッパーによって設定されることを特徴とする請求項15に記載のフロントウインドウ付き表示装置の貼り合わせ装置。
【請求項17】
前記所定の間隔での保持は、前記第1または前記第2の支持機構を移動させるステッピングモータによって設定されることを特徴とする請求項15に記載のフロントウインドウ付き表示装置の貼り合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−145534(P2011−145534A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7065(P2010−7065)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】