説明

フロントモーアの伝動装置

【課題】 フロントモーアにおいて、ダクトへの集草送込作用乃至このダクトにおける搬送作用を円滑に行わせようとする。
【解決手段】機体フレーム16にエンジン2動力を入力するミッションケース3を支持し、このミッションケース3内に、HSTのポンプ軸32を連動する連動機構を後部に配置し、モーアデッキ17で刈取られる芝草を吸引搬送して後方上部のコレクタ23に搬送収容させるブロア5のファン軸8を連動する連動機構を前部に配置し、前後中間部には前輪12への伝動軸56,37を配置し、前記ミッションケース3の後側面にHSTケース1を取付けると共に、このミッションケース3の前側面に、スペーサ4を重合状態に介在してブロワ5を着脱可能に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トラクタ車体の前部にモーアデッキを装着するフロントモーアにおいて、このモーアデッキで刈取られた芝草を吸引搬送して車体後部のコレクタへ搬送収容するブロワを設けるもので、このブロワや、走行車輪等の伝動構成を簡単化する伝動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーアデッキとコレクタとの間をシュータとブロワで連結して、このモーアデッキで刈取られた芝草をブロワで吸引搬送して、コレクタに送込んで集送する技術や、このブロワを運転席の後部に配置する技術(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
【特許文献1】特開昭63−98313号公報(第1頁、図1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
フロントモーアや、ミッドモーアでは、トラクタ車体の横側や、腹部にシュータを設け、このシュータの後上部にブロワを連結して後方上部のコレクタへ刈取芝草の搬送を行わせる形態では、シュータや、該ブロワ等における芝草の搬送経路が長くなり、搬送詰まりを起し易く、この詰まりを起したときは、これらの搬送系の一部を開いて、詰まった芝草を除去する。又、このブロワの搬送能力を大きくするため、ブロワフアンの回転を高速にすると騒音が激しくなり、作業疲労度を増し易い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、機体フレーム16にエンジン2動力を入力するミッションケース3を支持し、このミッションケース3内に、HSTのポンプ軸32を連動する連動機構を後部に配置し、モーアデッキ17で刈取られる芝草を吸引搬送して後方上部のコレクタ23に搬送収容させるブロア5のファン軸8を連動する連動機構を前部に配置し、前後中間部には前輪12への伝動軸56,37を配置し、前記ミッションケース3の後側面にHSTケース1を取付けると共に、このミッションケース3の前側面に、スペーサ4を重合状態に介在してブロワ5を着脱可能に取付けるフロントモーアの伝動装置の構成とする。
【0005】
ミッションケース3の後側には、エンジン2からの入力伝動軸が軸受されると共に、HSTケース1が取付けられる。又、前側には、スペーサ4を重合状態に介在してブロワ5を取付ける。これらエンジン2側から駆動される入力伝動軸30を経てブロワ5を伝動すると共に、HSTケース1内のHSTを介して走行車輪12,13を駆動する。このブロワ5の駆動によって、モーアデッキ17で刈取られる芝草を吸引搬送して後方上部のコレクタ23に搬送収容させる。
【0006】
請求項2に記載の発明は、前記スペーサ4に油圧クラッチ操作用の切替弁6を取付けたものである。ブロワ5は、ミッションケース3内のブロワクラッチ42によって伝動入り・切りされる。このブロワクラッチ42は、スペーサ4に取付けられた油圧切替弁6を操作することによって入り、切りされる。この切替弁6は、ミッションケース3前側のスペーサ4に取付けられるため、ブロワクラッチ42との間の配管距離を短くし、ミッションケース3の形態による取付制限を受けることを少なくすることができ、構成、取付等を簡単にすることができる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記ブロワ5の吸込口7を前面に形成し、前記スペーサ4に軸受したフアン軸8に対して前側からブロワケース9、及びブロワフアン10を軸装して着脱可能に設けたものである。ブロワ5等の着脱は、このブロワ5の吸込口7前方部のモーアデッキ17や、吸引筒21等を取外して広く開放した状態にして、この吸込口7の内側に手を差込んで、内側からブロワ5の着脱操作、メンテナンス等を行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、HSTケース1をミッションケース3の後側に取付て、ブロワ5を運転席11の下側の低い位置に設けるため、モーアデッキから後方コレクタへの搬送経路を短くする形態にして、前側のモーアデッキ17からの刈取芝草の吸引筒21による吸引搬送を円滑に行わせることができ、草詰まりを少なくする。又、ブロワ5前側の吸引筒等を外すことによって、このブロワ5の軸装、着脱を簡単、容易化することができる。しかもブロワ5をスペーサ4で支持するため、ブロワ5の軸受、取付構成を安定させることができ、メンテナンスを容易化することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、切替弁6をブロワ5用の油圧ブロワクラッチ42に近い位置に取付けるため、取付構成を簡潔化することができる。
請求項3に記載の発明は、ブロワ5前側の吸引筒を取外すことによって、吸込口7を開口して、スペーサ4に軸受したフアン軸8に対するブロワフアン10や、ブロワケース9等の着脱を簡単、容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図に基づいて、この発明の実施の形態を説明する。トラクタフロントモーアの車体フレーム16は、運転席11の下方に前輪12を配置し、後方に後輪13を配置し、この後輪13をステップフロア14前部のステアリングハンドル15で操向し、この後部に搭載のエンジン2によって駆動走行する乗用四輪走行形態に構成している。
【0011】
モーアデッキ17は、この車体フレーム16の前部でステップフロア14の下方にリフトリンクによって昇降可能に設けられ、車体16下部のフロントPTO軸18からモーア連動軸19を介して連動される。又、このモーアデッキ17の左右のブレード軸20の回転によって刈取られる芝草を吸引搬送する吸引筒21、及びブロワ5等を、この車体フレーム16の前側で、運転席11の下側に設け、このブロワ5によって、運転席11の後部横側の排出筒22を経て後方上部のコレクタ23に連通させる。このコレクタ23は、前記エンジン2ボンネットの上方位置に設けて、図外のリフトリンクや、リフトシリンダ、ダンプシリンダ等の伸縮によって昇降され、ダンプ作用することができ、後側の蓋27を開いて収容芝草を排出することができる。
【0012】
前記モーアデッキ17は、左右複数(例えば2連)のブレード軸20を配置して、ブレードの回転によって芝草を刈取ることができる。このモーアデッキ17の後側中央部に排出口24を形成し、各ブレード軸20の回転によってブレード部で刈取られた芝草をこの排出口24へ集送して、この排出口24に連結の吸引筒21を接続し集草させて搬送する。ブロワ5は運転席11の下側部に位置して設け、吸込口7を前側に向けて開口し、排出筒22を運転席11の後部一側部を経て上方へ伸ばしてコレクタ23に連通させる。エンジン2はこのブロワ5の後方部において左右後輪13間に搭載している。
【0013】
ここにおいて、この発明に係る伝動装置は、後側にHSTケース1を取付けると共にエンジン2動力を入力するミッションケース3の前側面に、スペーサ4を介在してブロワ5を着脱可能に取付ける。ミッションケース3の後側には、エンジン2からの入力伝動軸が軸受されると共に、HSTケース1が取付けられる。又、前側には、スペーサ4を重合介在してブロワ5を取付ける。これらエンジン2側から駆動される入力伝動軸を経てブロワ5を伝動すると共に、HSTケース3内のHSTを介して走行車輪を駆動する。このブロワ5の駆動によって、モーアデッキで刈取られる芝草を吸引搬送して後方上部のコレクタに搬送収容させる。
【0014】
又、前記スペーサ4に油圧クラッチ操作用の油圧切替弁6を取付けたものである。なお、この切替弁6は、ロータリ弁形態とし、油路を切り換えることによって圧油がブロアクラッチ42を支持する軸に形成した油路を介してクラッチピストンに作用すべく構成している。
【0015】
ブロワ5は、ミッションケース3内の上記ブロワクラッチ42によって伝動入り、切りされる。このブロワクラッチ42は、上記のようにスペーサ4に取付けられた油圧切替弁6を操作することによって入り、切りされる。この油圧切替弁6は、ミッションケース3前側のスペーサ4に取付けられるため、ブロワクラッチ42との間の配管距離を短くし、ミッションケース3の形態による取付制限を受けることを少なくすることができ、構成、取付等を簡単にすることができる。
【0016】
又、前記ブロワ5の吸込口7を前面に形成し、前記スペーサ4に軸受したフアン軸8に対して前側からブロワケース9、及びブロワフアン10を軸装して着脱可能に設けたものである。ブロワ5等の着脱は、このブロワ5の吸込口7前方部のモーアデッキ17や、吸引筒21等を取外して広く開放した状態にして、この吸込口7の内側に手を差込んで、内側からブロワ5の着脱操作、メンテナンス等を行うことができる。
【0017】
このエンジン2は前側にラジエータ28、出力軸29を設け、このエンジン2と前記ブロワ5との間にミッションケース3や、HST(油圧無段変速装置)内装のHSTケース1等を設ける。ミッションケース3内にはHSTの油圧モータからの伝動によって前記走行車輪である前輪12及び後輪13を連動する走行伝動機構や、ブロワ5を伝動するブロワ伝動機構等を配置する。
【0018】
このミッションケース3の後部に入力軸30を軸受してエンジン2の出力軸29との間を連動軸31で連結すると共に、前記HSTケース1を取付けて、このHSTのポンプ軸32を該入力軸30からギヤ33によって連動し、モータ軸34から後方の後輪13の車軸35を連動する。シッションケース3の略中央部にはデフギヤ36、及び左右デフ軸37を設け、該モータ軸34の前端部からギヤ38連動する。
【0019】
この左右のデフ軸37の外端部から、車輪伝動ケース39のチエン40を介して前輪12の車軸41を伝動する構成としている。デフギヤ36の上部には、前記入力軸30から伝動される連動軸44上に油圧多盤形態のブロワクラッチ42を設ける。このブロワクラッチ42からミッションケース3の前側壁部43に軸受するフアン軸8をギヤ45連動する。
【0020】
このミッションケース3の前側壁部43には、適宜厚さ、及び断面形態の方形状プレートからなるスペーサ4を重合させてボルト46締めによって取付ける。このスペーサ4の中央部にフアン軸8をベアリング47により軸受している。このスペーサ4の前面にブロワケース9の後面を重合させてボルト48締めによって取付ける。ブロワケース9の後壁部49の中央部には取付ディスク50を取付け、この取付ディスク50の中央部に形成のボス穴51を、前記スペーサ4から前側へ突出する軸受ボス部52周りに嵌合させる。
【0021】
このブロワケース9の前面に吸込口7を形成して、前記モーアデッキ17の排出口24との間を吸引筒21で連結する。この吸込口7には図外ボルト締めによって連結案内筒53を揺動可能、かつ着脱可能に設け、この案内筒53に吸引筒21の後端部を嵌合させて連通させる。この案内筒53を取外した状態の吸引口7はブロワフアン10の回転径よりも大きく形成して、このブロワフアン10を吸引口7から前側へ取出したり、ブロワケース9内へ嵌合させて、着脱することができる。前記ブロワフアン10のフアン軸8に対して前側から嵌合するフアンボス54は、このフアン軸8の前端部から螺挿するロックボルト55によって取付固定される。このブロワフアン10の着脱はこのロックボルト55の操作で行い、ブロワケース9の着脱は、このブロワフアン10を取外した状態で前記セットボルト48の操作で行うことができる。
【0022】
前記左右の車輪伝動ケース39は、前端部を車体フレーム16の前部に対してブラケット60を介して支持させる。又、ミッションケース3の左右両側のデフ軸37の上側部を覆うカバー61、及びこのカバー61を取付ける取付ブラケット62をうを設ける。前記フロントモーアデッキ17へ連動するPTO軸18は、後端部をHSTケース1の外側部に位置させてプーリ63を有し、前記入力軸30のプーリ64との間にベルト65を掛けわたして伝動する。
【0023】
このPTO軸18の前部には、左側の車輪伝動ケース39の内側部に取付た軸受メタル66に軸受して、前方のモーアデッキ17の入力軸へ連動させる。前記モータ軸34とデフ軸37との間のカウンタ軸56には、デフギヤ36の手前伝動行程で制動するデフ前ブレーキ57を設ける。又、左右のデフ軸37の周りには、デフギヤ36の下手側の各デフ軸37を制動するデフ後ブレーキ58を設ける。
【0024】
これらミッションケース3、HSTケース1、及びブロワ5等の上部にはシートカバー67を設けて、このシートカバー67の上に運転席11を設けている。このシートカバー67の後部下側には、左右両側部にわたる燃料タンク68を設ける。この燃料タンク68の左端底部を底上げして、この下方には、コレクタ23昇降用のリフトバルブや、ダンプ用のダンプバルブ等のバルブ69、及びHSTチャージ用のオイルフィルター70等を配置している。このオイルフィルター70、及び前記PTO軸18のプーリ63部の外側に、バッテリー71ブラケット72を設けて、このオイルフィルター70を保護している。
【0025】
次いで、図4、図8、図9に基づいて、前記デフ前ブレーキ57のブレーキリンク75を連動するリンク軸76を、前記ブロワ5を取り付けるスペーサ4の側端部のボス部77に回動自在に支持して、ブロワ5の前側部に迂回させる。このリンク軸76の外側端を、一側のデフ後ブレーキ58部に接近させて、各々のブレーキアーム78、79に、ブレーキペダル80との間を並設のブレーキロッド82、83で連結する。又、他側のデフ後ブレーキ58のブレーキアーム79をブレーキロッド83に連動している。81はHSTペダルで、HSTを前、後進し、及び増、減速するものである。
【0026】
次いで、図10、図11に基づいて、前記油圧切替弁6を操作してブロワクラッチ42を入り・切りする操作レバー85と、モーアデッキ17のブレード軸20連動のモーアクラッチのモーアクラッチレバーとを単一形態として、運転席11左手側のクランク形態のレバーガイド86に案内させる。この操作レバー85をレバーガイド86の中央部Nに位置させると、ブロワクラッチ42を入りにすると共に、モーアクラッチを切りにし、後側部Rに位置するとブロワクラッチ42を切りとすることができる。又、前側部Fに位置するとモーアクラッチを入りとする。このため、操作レバー85を前側へ操作することにより、ブロワ5を駆動した後にモーアデッキ17のブレード軸20を駆動することにより、刈取芝草の搬送詰まりを少なくすることができる。90はモーアデッキ17を昇降する昇降レバーで、前記操作レバー85に隣接して設けている。
【0027】
前記車体フレーム16の左側には、燃料タンク68の給油口87と、バッテリー71と、ラジエータ28のリザーブタンク88と、エンジンオイルゲージ89と等を配置して、これらのメンテナンス性を良好にしている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】ミッションケース部の左側面図。
【図2】その伝動機構の左側面図。
【図3】そのフロントモーアの外観左側面図。
【図4】そのトラクタ車体部1の左側面図。
【図5】フロントモーアの正面図。
【図6】ブロワ部の正面図。
【図7】燃料タンク部の正面図
【図8】ミッションケース部の右側面図。
【図9】そのブレーキ部の正断面図。
【図10】フロントモーアの平面図。
【図11】その操作レバー部の斜視図。
【符号の説明】
【0029】
1 HSTケース
2 エンジン
3 ミッションケース
4 スペーサ
5 ブロワ
6 切替弁
7 吸込口
8 フアン軸
9 ブロワケース
10 ブロワフアン
11 運転席
21 吸引筒


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(16)にエンジン(2)動力を入力するミッションケース(3)を支持し、このミッションケース(3)内には、HSTのポンプ軸(32)を連動する連動機構を後部に配置し、モーアデッキ(17)で刈取られる芝草を吸引搬送して後方上部のコレクタ(23)に搬送収容させるブロア(5)のファン軸(8)を連動する連動機構を前部に配置し、前後中間部には前輪(12)への伝動軸(56,37)を配置し、前記ミッションケース(3)の後側面にHSTケース(1)を取付けると共に、このミッションケース(3)の前側面に、スペーサ(4)を重合状態に介在してブロワ(5)を着脱可能に取付けるフロントモーアの伝動装置。
【請求項2】
前記スペーサ(4)に油圧クラッチ操作用の切替弁(6)を取付けたことを特徴とする請求項1に記載のフロントモーアの伝動装置。
【請求項3】
前記ブロワ(5)の吸込口(7)を前面に形成し、前記スペーサ(4)に軸受したフアン軸(8)に対して前側からブロワケース(9)、及びブロワフアン(10)を軸装して着脱可能に設けたことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のフロントモーアの伝動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−212008(P2008−212008A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50708(P2007−50708)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】