説明

フローダンパ

【課題】一種類のフローダンパにて、仕様の異なる複数のエンジンに対応可能にする。
【解決手段】インジェクタに流れる燃料の流量が異常増加したときに燃料通路を閉じるフローダンパ20において、ピストン210を、摺動孔2002内で摺動する第1ピストン部材211と、弁部2123を有する第2ピストン部材212とに分割し、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212を螺合する。そして、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のピストン摺動方向の相対位置を調整して、ピストンリフトLを変更することにより、フローダンパ20の閉弁作動条件を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インジェクタに流れる燃料の流量が異常増加したときに燃料通路を閉じるフローダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフローダンパは、燃料通路を構成する摺動孔および摺動孔の下流側に位置する弁座を有するバルブボデーと、燃料通路を構成する絞り通路および弁座に着座することにより燃料通路を遮断する弁部を有するピストンと、ピストンを開弁向きに付勢するスプリングとを備え、絞り通路前後の燃料の差圧による流体力によってピストンがスプリングに抗して弁座側に向かってリフトするようになっている。
【0003】
そして、インジェクタに過剰燃料流出などの異常が生じて、コモンレールからフローダンパを通ってインジェクタに流れる燃料の流量が設定流量以上になると、流体力が増大してピストンのリフト量が増加し、これによりピストンが弁座に着座してコモンレールからインジェクタに至る燃料通路が閉じられるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4100393号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フローダンパが燃料通路を閉じるときの作動条件(以下、閉弁作動条件という)は、内燃機関(以下、エンジンという)の仕様に応じて異なるため、閉弁作動条件が異なる複数のフローダンパが必要であった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、一種類のフローダンパにて、仕様の異なる複数のエンジンに対応可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、インジェクタ(2)に流れる燃料の流量が異常増加したときに、インジェクタ(2)に至る燃料通路を閉じるフローダンパ(20)であって、フローダンパ(20)は、燃料通路を構成する摺動孔(2002)および摺動孔(2002)の下流側に位置する弁座(2003)を有するバルブボデー(200)と、摺動孔(2002)内に摺動自在に配置され、弁座(2003)に着座することにより燃料通路を遮断する弁部(2123)および燃料通路を構成する絞り通路(2124)を有するピストン(210)と、摺動孔(2002)内に配置され、ピストン(210)を開弁向きに付勢するスプリング(220)とを備え、ピストン(210)は、摺動孔(2002)内で摺動する第1ピストン部材(211)と、弁部(2123)を有する第2ピストン部材(212)とを備え、第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)は、ピストン摺動方向の相対位置が調整可能に螺合され、第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)のピストン摺動方向の相対位置に応じて、弁座(2003)と弁部(2123)との距離(L)が変化するように構成されていることを特徴とする。
【0008】
これによると、弁座(2003)と弁部(2123)との距離(L)を変化させることにより閉弁作動条件を変化させることができるため、一種類のフローダンパにて仕様の異なる複数のエンジンに対応することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、インジェクタ(2)に流れる燃料の流量が異常増加したときに、インジェクタ(2)に至る燃料通路を閉じるフローダンパ(20)であって、フローダンパ(20)は、燃料通路を構成する摺動孔(2002)および摺動孔(2002)の下流側に位置する弁座(2003)を有するバルブボデー(200)と、摺動孔(2002)内に摺動自在に配置され、弁座(2003)に着座することにより燃料通路を遮断する弁部(2123)および燃料通路を構成する絞り通路(2124)を有するピストン(210)と、摺動孔(2002)内に配置され、ピストン(210)を開弁向きに付勢するスプリング(220)とを備え、ピストン(210)は、摺動孔(2002)内で摺動する第1ピストン部材(211)と、絞り通路(2124)を有する第2ピストン部材(212)とを備え、第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)は、ピストン摺動方向の相対位置が調整可能に螺合され、絞り通路(2124)における下流側端部は、第1ピストン部材(211)により塞ぐことが可能であり、第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)のピストン摺動方向の相対位置に応じて、第1ピストン部材(211)により塞がされる絞り通路(2124)における下流側端部の面積が変化するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
これによると、絞り通路(2124)における下流側端部の開口面積を変化させることにより閉弁作動条件を変化させることができるため、一種類のフローダンパにて仕様の異なる複数のエンジンに対応することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のフローダンパにおいて、ピストン(210)は、第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)のねじ弛みを防ぐロックナット(213)を備えることを特徴とする。これによると、使用中の閉弁作動条件の変化を防止することができる。
【0012】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフローダンパを備える燃料噴射装置を示す構成図である。
【図2】図1のフローダンパの断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るフローダンパの断面図である。
【図4】図3のピストンにおける要部のA矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態に係るフローダンパを備える燃料噴射装置を示す構成図、図2は図1のフローダンパの断面図である。
【0016】
図1に示すように、燃料噴射装置は、エンジン(例えばディーゼルエンジン:図示しない)の各気筒に燃料噴射を行うシステムであり、コモンレール1、インジェクタ2、サプライポンプ3、ECU4(エンジン制御ユニット)、EDU5(駆動ユニット)等から構成される。
【0017】
コモンレール1は、インジェクタ2に供給する高圧燃料を蓄圧室に蓄える蓄圧容器であり、燃料噴射圧に相当するコモンレール圧が蓄圧されるように高圧ポンプ配管6を介して高圧燃料を圧送するサプライポンプ3の吐出口と接続されるとともに、各インジェクタ2へ高圧燃料を供給する複数のインジェクタ配管7が接続されている。なお、コモンレール1とインジェクタ配管7の接続部分には、フローダンパ20が設けられており、フローダンパ20の詳細は後述する。
【0018】
コモンレール1から燃料タンク8へ燃料を戻すリリーフ配管9には、プレッシャリミッタ10が取り付けられている。このプレッシャリミッタ10は圧力安全弁であり、コモンレール圧が限界設定圧を超えた際に開弁して、コモンレール圧を限界設定圧以下に抑える。また、コモンレール1には、減圧弁11が取り付けられている。この減圧弁11は、ECU4から与えられる開弁指示信号によって開弁してリリーフ配管9を介してコモンレール圧を急速に減圧するものである。このように、コモンレール1に減圧弁11を搭載することによって、ECU4はコモンレール圧を車両走行状態に応じた圧力へ素早く低減制御できる。なお、この減圧弁11が設けられない機種もある。
【0019】
インジェクタ2は、エンジンの各気筒毎に搭載されて燃料を各気筒内に噴射供給するものであり、コモンレール1より分岐する複数のインジェクタ配管7の下流端に接続されて、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料を各気筒内に噴射供給する燃料噴射ノズル、およびこの燃料噴射ノズル内に収容されたニードルのリフト制御を行う電磁弁等を搭載している。なお、インジェクタ2からのリーク燃料も、リリーフ配管9を経て燃料タンク8に戻される。
【0020】
サプライポンプ3は、コモンレール1へ高圧燃料を圧送する高圧燃料ポンプであり、燃料タンク8内の燃料をフィルタ12を介してサプライポンプ3へ吸引するフィードポンプを搭載し、このフィードポンプによって吸い上げられた燃料を高圧に圧縮してコモンレール1へ圧送する。フィードポンプおよびサプライポンプ3は共通のカムシャフト13によって駆動される。なお、このカムシャフト13は、エンジンによって回転駆動されるものである。
【0021】
サプライポンプ3には、燃料を高圧に加圧する加圧室内に燃料を導く燃料流路に、その燃料流路の開度度合を調整するためのSCV14(吸入調量弁)が搭載されている。このSCV14は、ECU4からのポンプ駆動信号によって制御されることにより、加圧室内に吸入される燃料の吸入量を調整し、コモンレール1へ圧送する燃料の吐出量を変更するバルブであり、コモンレール1へ圧送する燃料の吐出量を調整することにより、コモンレール圧を調整するものである。即ち、ECU4はSCV14を制御することにより、コモンレール圧を車両走行状態に応じた圧力に制御するものである。
【0022】
ECU4には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、スタンバイRAMまたはEEPROM、RAM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路等の機能を含んで構成される周知構造のマイクロコンピュータが設けられている。そして、ECU4に読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、エンジンの運転状態等に応じた信号)に基づいて各種の演算処理を行うようになっている。なお、ECU4には、運転状態等を検出する手段として、コモンレール圧を検出するレール圧センサ15の他に、アクセル開度を検出するアクセルセンサ、エンジン回転数を検出する回転数センサ、エンジンの冷却水温度を検出する水温センサ等のセンサ類が接続されている。
【0023】
ECU4における具体的な演算の一例を示すと、ECU4は、インジェクタ2の駆動制御を行うインジェクタ制御系、およびSCV14の駆動制御を行うレール圧制御系の制御を実施する。インジェクタ制御系は、燃料の噴射毎に、ROMに記憶されたプログラムと、RAMに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ)とに基づいて、噴射形態、目標噴射量、噴射開始時期を算出し、インジェクタ開弁信号を算出する。レール圧制御系は、ROMに記憶されたプログラムと、RAMに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ)とに基づいて、目標レール圧を算出し、レール圧センサ15から算出される実レール圧を目標レール圧に一致させるためのSCV駆動信号を算出する。
【0024】
EDU5は、ECU4から与えられるインジェクタ開弁信号に基づいてインジェクタ2の電磁弁へ開弁駆動電流を与えるインジェクタ駆動回路と、ECU4から与えられるSCV駆動信号(デューティ信号)に基づいてSCV14へ駆動電流値を与えるポンプ駆動回路とを備える。なお、このEDU5は、ECU4と同一のケース内に搭載されるものであっても良い。
【0025】
フローダンパ20は、コモンレール1とインジェクタ配管7の接続部分に設けられ、コモンレール1からインジェクタ2に流れる燃料の流量が異常増加したときに、コモンレール1からインジェクタ2に至る燃料通路を閉じる機能を有するものである。
【0026】
図2に示すように、フローダンパ20は、コモンレール1(図1参照)に締結される略円筒状のバルブボデー200と、このバルブボデー200の内部で往復動するピストン210と、このピストン210を開弁向きに付勢するスプリング220と、ピストン210の開弁向きへの移動範囲を規制するストッパ230とを備えている。
【0027】
バルブボデー200は、鉄系金属よりなり、その外周部の一端側には、コモンレール1と螺合されるねじ2000が形成され、外周部の他端側には、インジェクタ配管7(図1参照)と螺合されるねじ2001が形成されている。
【0028】
バルブボデー200の内部には、ピストン210を摺動自在に保持する燃料通路としての摺動孔2002が形成されている。また、バルブボデー200の内部には、摺動孔2002の燃料流れ下流側に、ピストン210が接離するテーパ状の弁座2003が形成され、この弁座2003の燃料流れ下流側に、燃料通路としてのボデー燃料通路2004が形成されている。
【0029】
ピストン210は、摺動孔2002に摺動自在に保持される略円筒状の第1ピストン部材211と、第1ピストン部材211と螺合されるとともに、弁座2003と接離する有底円筒状の第2ピストン部材212と、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のねじ弛みを防ぐロックナット213とを備えている。第1ピストン部材211、第2ピストン部材212、およびロックナット213は、鉄系金属よりなる。
【0030】
第1ピストン部材211は、軸方向に貫通する孔内に雌ねじ2110が形成されている。
【0031】
第2ピストン部材212は、外周部の一端側に形成された雄ねじ2120、一端側端部に形成された溝2121、第1ピストン部材211よりも小径で第1ピストン部材211よりも燃料流れ下流側に向かって第1ピストン部材211の孔から突出する有底円筒状の突出筒部2122、および、この突出筒部2122における燃料流れ下流側の端部に形成され、弁座2003に着座することにより燃料通路を遮断する弁部2123を備えている。
【0032】
さらに、第2ピストン部材212の内部には、第2ピストン部材212における燃料流れ上流側端面と突出筒部2122の外周面とを連通する燃料通路としての絞り通路2124が形成されている。この絞り通路2124は、第2ピストン部材212における燃料流れ上流側端面から軸方向中間部まで延びるピストン燃料通路2124a、および、このピストン燃料通路2124aと突出筒部2122の外周面とを連通するピストンオリフィス2124bで構成される。なお、ピストンオリフィス2124bは、フローダンパ20内の燃料通路における最小通路面積になっている。
【0033】
そして、第1ピストン部材211の雌ねじ2110と第2ピストン部材212の雄ねじ2120を螺合させ、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のピストン摺動方向の相対位置を調整した後に、雄ねじ2120にロックナット213を螺合させて、ピストン210を形成する。この際、第2ピストン部材212の溝2121に係合する治具、およびロックナット213の一端側端部に形成された溝2130に係合する治具を利用して、第2ピストン部材212とロックナット213の締め付けを行う。
【0034】
ストッパ230は、鉄系金属よりなり、ピストン210よりも燃料流れ上流側に配置されている。また、ストッパ230は、摺動孔2002に挿入されるとともにピストン210における燃料流れ上流側端面と対向する円筒状のストッパ筒部2300、および、コモンレール1とバルブボデー200とに挟持されるストッパフランジ部2301を備えている。さらに、ストッパ230の内部には、ストッパフランジ部2301における燃料流れ上流側端面とストッパ筒部2300における燃料流れ下流側端面とを連通する燃料通路としてのストッパ燃料通路2302が形成されている。
【0035】
ピストン210は、摺動孔2002内に配置されたスプリング220によって、弁部2123が弁座2003から離れる向きに(すなわち開弁向きに)付勢されている。そして、燃料が流れていないときや微少流量のときには、ピストン210における燃料流れ上流側端面がストッパ230に当接して、ピストン210の開弁向きの移動範囲が規制されるようになっている。
【0036】
上記構成において、コモンレール1からフローダンパ20に導入された燃料は、フローダンパ20のストッパ燃料通路2302、絞り通路2124、およびボデー燃料通路2004を通り、インジェクタ配管7を介してインジェクタ2に供給される。
【0037】
このインジェクタ2への燃料供給に伴い、絞り通路2124の前後に差圧が発生し、この差圧による流体力により、ピストン210は弁座2003側に向かって(すなわち閉弁向きに)付勢される。
【0038】
そして、微少噴射などインジェクタ2に流れる燃料の流量が少ない場合は、流体力によるピストン付勢力がスプリング220のセット荷重よりも小さいため、図2に示すように、ピストン210はスプリング220に付勢されてストッパ230に当接した位置に保持される。すなわち、弁部2123は弁座2003から離れた状態であり、フローダンパ20は開弁状態である。
【0039】
大噴射などインジェクタ2に流れる燃料の流量が正常範囲で増加した場合、絞り通路2124の前後の差圧が増加し、流体力によるピストン付勢力も増加する。そして、流体力によるピストン付勢力がスプリング220のセット荷重よりも大きくなると、ピストン210が弁座2003側に向かってリフト(移動)する。この状態では、流体力によるピストン付勢力とスプリング220のばね荷重とがバランスする位置にピストン210がある。
【0040】
インジェクタ2に過剰燃料流出などの異常が生じるなどして、インジェクタ2に流れる流量が異常増加し、絞り通路2124の前後の差圧が予め設定された差圧以上になると、ピストン210が弁座2003側に向かってさらにリフトし、弁部2123が弁座2003に着座し、ボデー燃料通路2004を閉塞する。このようにして、フローダンパ20は、何らかの不具合が生じて、コモンレール1からインジェクタ2に流れる燃料の流量が設定流量(すなわち、閉弁作動条件)以上に増加すると、コモンレール1からインジェクタ2に至る燃料通路を閉じて高圧燃料の流出を停止させる。
【0041】
ここで、ピストン210がストッパ230に当接した位置にあるときの、弁部2123と弁座2003との間のピストン摺動方向の距離L(以下、ピストンリフトLという)が大きいほど、フローダンパ20は閉弁し難くなり、フローダンパ20の閉弁作動条件である設定流量が大きくなる。
【0042】
したがって、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のピストン摺動方向の相対位置を調整して、ピストンリフトLを変更することにより、フローダンパ20の閉弁作動条件を変化させることができる。これにより、一種類のフローダンパ20にて仕様の異なる複数のエンジンに対応することができる。
【0043】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。図3は第2実施形態に係るフローダンパの断面図、図4は図3のピストンにおける要部のA矢視図である。以下、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0044】
図3、図4に示すように、ピストン210とストッパ230との間に、環状のリフト調整シム240が挟持されている。
【0045】
第2ピストン部材212は、溝2121(図2参照)が廃止され、この溝2121の代わりに、外周部に二面幅2125が形成されている。また、第1ピストン部材211は、環状のセット荷重調整シム2126を備えている。
【0046】
絞り通路2124の下流側端部であるピストンオリフィス2124bは、ピストン摺動方向に長い長穴の開口になっている。また、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のピストン摺動方向の相対位置に応じて、第1ピストン部材211により塞がされるピストンオリフィス2124bの面積、換言すると、ピストンオリフィス2124bの開口面積が変化するように構成されている。なお、上記開口の形状は、丸穴、三角穴、四角穴、切り欠き、複数の小孔等であっても良い。
【0047】
そして、ピストンオリフィス2124bの開口面積が大きいほど、フローダンパ20は閉弁し難くなり、フローダンパ20の閉弁作動条件である設定流量が大きくなる。したがって、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のピストン摺動方向の相対位置を調整して、ピストンオリフィス2124bの開口面積を変更することにより、フローダンパ20の閉弁作動条件を変化させることができる。これにより、一種類のフローダンパ20にて仕様の異なる複数のエンジンに対応することができる。
【0048】
ここで、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のピストン摺動方向の相対位置の調整に伴って、ピストンリフトLが変化してしまうため、リフト調整シム240の選択により、第1ピストン部材211と第2ピストン部材212のピストン摺動方向の相対位置に拘わらずピストンリフトLを所定値に調整する。
【0049】
また、選択したリフト調整シム240の厚みに応じてスプリング220のセット荷重が変化してしまうため、セット荷重調整シム2126の選択により、リフト調整シム240の厚みに拘わらずスプリング220のセット荷重を一定値に調整する。
【0050】
なお、上記各実施形態は、実施可能な範囲で任意に組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0051】
2 インジェクタ
20 フローダンパ
200 バルブボデー
210 ピストン
211 第1ピストン部材
212 第2ピストン部材
220 スプリング
2002 摺動孔
2003 弁座
2123 弁部
2124 絞り通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジェクタ(2)に流れる燃料の流量が異常増加したときに、前記インジェクタ(2)に至る燃料通路を閉じるフローダンパ(20)であって、
前記フローダンパ(20)は、
前記燃料通路を構成する摺動孔(2002)および前記摺動孔(2002)の下流側に位置する弁座(2003)を有するバルブボデー(200)と、
前記摺動孔(2002)内に摺動自在に配置され、前記弁座(2003)に着座することにより前記燃料通路を遮断する弁部(2123)および前記燃料通路を構成する絞り通路(2124)を有するピストン(210)と、
前記摺動孔(2002)内に配置され、前記ピストン(210)を開弁向きに付勢するスプリング(220)とを備え、
前記ピストン(210)は、前記摺動孔(2002)内で摺動する第1ピストン部材(211)と、前記弁部(2123)を有する第2ピストン部材(212)とを備え、
前記第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)は、ピストン摺動方向の相対位置が調整可能に螺合され、
前記第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)のピストン摺動方向の相対位置に応じて、前記弁座(2003)と前記弁部(2123)との距離(L)が変化するように構成されていることを特徴とするフローダンパ。
【請求項2】
インジェクタ(2)に流れる燃料の流量が異常増加したときに、前記インジェクタ(2)に至る燃料通路を閉じるフローダンパ(20)であって、
前記フローダンパ(20)は、
前記燃料通路を構成する摺動孔(2002)および前記摺動孔(2002)の下流側に位置する弁座(2003)を有するバルブボデー(200)と、
前記摺動孔(2002)内に摺動自在に配置され、前記弁座(2003)に着座することにより前記燃料通路を遮断する弁部(2123)および前記燃料通路を構成する絞り通路(2124)を有するピストン(210)と、
前記摺動孔(2002)内に配置され、前記ピストン(210)を開弁向きに付勢するスプリング(220)とを備え、
前記ピストン(210)は、前記摺動孔(2002)内で摺動する第1ピストン部材(211)と、前記絞り通路(2124)を有する第2ピストン部材(212)とを備え、
前記第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)は、ピストン摺動方向の相対位置が調整可能に螺合され、
前記絞り通路(2124)における下流側端部は、前記第1ピストン部材(211)により塞ぐことが可能であり、
前記第1ピストン部材(211)と前記第2ピストン部材(212)のピストン摺動方向の相対位置に応じて、前記第1ピストン部材(211)により塞がされる前記絞り通路(2124)における下流側端部の面積が変化するように構成されていることを特徴とするフローダンパ。
【請求項3】
前記ピストン(210)は、前記第1ピストン部材(211)と第2ピストン部材(212)のねじ弛みを防ぐロックナット(213)を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のフローダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96390(P2013−96390A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243230(P2011−243230)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】