説明

フードロックの支持構造

【課題】 エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、該衝撃力を吸収でき、ラジエータコアサポートアッパが剛体として作用するのを防止できるフードロックの支持構造の提供。
【解決手段】 エンジンフード6に対して下方への衝撃力Fが入力された際に、固定手段8がフードロックサポート4とフードロックステイ1eの固定支持を解除すると共に、両ブラケット2,3が圧縮変形してフードロックサポート4の下方への変位を許容することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フードロックの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンフードとラジエータコアサポートを着脱自在に固定するフードロックの支持構造の技術が公知になっている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2003−306168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のフードロックの支持構造にあっては、フードロックがラジエータコアサポートアッパに直接且つ堅固に固定されているため、エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、ラジエータコアサポートアッパが剛体として作用してしまうという虞があった。
【0004】
また、通常、ラジエータコアサポートは一体的に形成されているため、ラジエータコアサポートアッパが破損した場合に部分的な修理を行うことができず、ラジエータコアサポート全体の交換作業となって修理費用が高く付くという問題点があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、該衝撃力を吸収でき、ラジエータコアサポートアッパが剛体として作用するのを防止できると同時に、修理費用を低く抑えることができるフードロックの支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明では、ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートアッパの上方に離間して並設され、且つ、車幅方向略中央にエンジンフードと脱着自在に固定されたフードロックが設けられたフードロックサポートと、前記フードロックサポートとラジエータコアサポートアッパの両端部同士を固定支持するブラケットと、前記フードロックサポートの略中央と、ラジエータコアサポートのフードロックステイまたはラジエータコアサポートアッパの略中央とを着脱自在に固定支持する固定手段を備え、前記エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、固定手段がフードロックサポートと、フードロックステイまたはラジエータコアサポートアッパの略中央部との固定支持を解除すると共に、両ブラケットが圧縮変形してフードロックサポートの下方への変位を許容することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1記載の発明にあっては、ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートアッパの上方に離間して並設され、且つ、車幅方向略中央にエンジンフードと脱着自在に固定されたフードロックが設けられたフードロックサポートと、前記フードロックサポートとラジエータコアサポートアッパの両端部同士を固定支持するブラケットと、前記フードロックサポートの略中央と、ラジエータコアサポートのフードロックステイまたはラジエータコアサポートアッパの略中央とを着脱自在に固定支持する固定手段を備え、前記エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、固定手段がフードロックサポートと、フードロックステイまたはラジエータコアサポートアッパの略中央部との固定支持を解除すると共に、両ブラケットが圧縮変形してフードロックサポートの下方への変位を許容するため、エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、該衝撃力を両ブラケットの圧縮変形により吸収でき、ラジエータコアサポートアッパが剛体として作用するのを防止できると同時に、修理費用を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
以下、実施例1を説明する。
なお、車両前後方向及び車幅方向を前後方向及び左右方向と称して説明する。
図1は本発明の実施例1のフードロックの支持構造を示す全体正面図、図2は作用を説明する図である。
【0010】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、本実施例1のフードロックの支持構造では、ラジエータコアサポート1と、ブラケット2,3と、フードロックサポート4と、フードロック5と、エンジンフード6が備えられている。
【0011】
ラジエータコアサポート1は、左右方向に延設された板状のラジエータコアサポートアッパ1aと、このラジエータコアサポートアッパ1aと並行する板状のラジエータコアサポートロア1bと、ラジエータコアサポートアッパ1aとラジエータコアサポートロア1bの両端部同士を結合する板状のラジエータコアサポートサイド1c,1dと、ラジエータコアサポートアッパ1aとラジエータコアサポートロア1bの略中央部同士を結合する板状のフードロックステイ1eが備えられ、全体が樹脂製となっている。
なお、ラジエータコアサポート1は、全体を金属製としても良いし、部位に応じて金属製部分と樹脂製部分に分けても良い。
さらに、ラジエータコアサポート1の各部は、前方側または後方側へ開口したコ字状断面に形成しても良く、その断面形状については適宜設定できる。
【0012】
ラジエータコアサポートアッパ1aの両端部には、上方へ突出する板状のブラケット2,3の一端部が図外のボルト等の締結手段により固定されると共に、各ブラケット2,3の他端部はフードロックサポート4の両端部に図外のボルト等の締結手段により固定されている。
また、ブラケット2,3の中途部には、左右方向内側へ切欠された屈折部2a,3aが形成されている。
【0013】
フードロックサポート4は、ラジエータコアサポートアッパ1aの上方に離間して左右方向に延在し、全体が樹脂製で略板状に形成されている。
また、フードロックサポート4の両端部は、上記ブラケット2,3を介してラジエータコアサポートロア1bの両端部に固定支持される他、その略中央の上部前面にはフードロック5の左右下部がボルト等の締結手段5aにより固定支持されている。
なお、フードロック5とフードロックサポート4との固定位置、固定数は適宜設定できる。
さらに、フードロック5には、図示を簡略化する係合部5bによってエンジンフード6の下部に設けられたストライカ7が着脱自在に係合され、これによって、エンジンフード6が開閉自在となっている。
【0014】
そして、フードロックサポート4の略中央の下部前面は、下方へ板状に突出され、ここに前方へ突出する円柱状の係止ピン4aが設けられると共に、この係止ピン4aは後述する固定手段8によってラジエータコアサポート1のフードロック5に固定支持されている。
【0015】
具体的には、固定手段8は、後端部がフードロック5の前面に対し、中心位置Oを中心として図中A方向に回動可能に固定され、且つ、前方へ突出する円柱状の枢軸部8aと、この枢軸部8aの中途部に一体的に固定され、図中左側に切欠開口された嵌合溝8bに上記係止ピン4aが嵌合される回動部8cと、上記枢軸部8aの前端部に一体的に固定される歯車8dと、上記歯車8dの枢軸部8aと略直交する軸を有して嵌合する螺子軸8eと、この螺子軸8eを周方向(矢印B方向)に回転可能なモータ8fで構成されている。なお、モータ8fの回転軸の実際の径は図示よりも大幅に小さい。
【0016】
従って、本実施例1のフードロック5の支持構造では、フードロック5が、フードロックサポート4に設けられると共に、このフードロックサポート4は、ブラケット2,3を介してラジエータコアサポートアッパ1aに固定支持され、さらに、回動部8c、枢軸部8aを介してフードロックステイ1eに固定支持されることとなる。
【0017】
そして、本実施例1では、エンジンフード6の底面にモータ8fの駆動を制御する図外のコントロールユニットに電気的に接続され、且つ、エンジンフード6の変位を検出するセンサ9が設けられている。
なお、センサ9の種類としては加速度センサや歪みセンサ等を適宜選択して設定でき、その設置位置や設置数についても適宜設定できる。
【0018】
その他、本実施例1ではラジエータコアサポート1の後方から熱交換器10が搭載されると共に、この熱交換器10は左右に配置された一対のタンク10a,10bと、偏平管状のチューブ10cと波状のフィン10dが交互に複数配置されたコア部10eとから構成されるラジエータが採用されている。
また、熱交換器10は、ラジエータコアサポート1に対してタンク10a,10bの左右上端部に設けられた車両搭載ピンP1がラジエータコアサポートアッパ1aに図外の金属製から成るブラケット及び弾性素材から成るマウント部材を介して固定される一方、タンク10a,10bの左右下端部に設けられた車両搭載ピンP2がラジエータコアサポートロア1bに対して弾性素材から成るマウント部材を介して固定されている。なお、熱交換器10はラジエータに限らず、コンデンサやその他の熱交換器でも良い。
【0019】
次に、作用を説明する。
このように構成されたフードロックの支持構造では、エンジンフード6のストライカ7が、フードロック5、フードロックサポート4、ブラケット2,3、固定手段8を介して車体側(ラジエータコアサポート1)に固定されることにより、通常走行時等における閉じた状態を維持するための必要剛性を得ることができる。
また、エンジンルームの整備点検時等には、エンジンフード6のストライカ7が係合部5bから解放されることにより、エンジンフード6を開けることができる。
【0020】
そして、図1、2に示すように、車両衝突時に障害物がエンジンフード6に衝突し、下方へ向かって所定の衝撃力Fが発生した際には、コントロールユニットがセンサ9を介して衝撃力Fを検知してモータ8fを駆動し、螺子軸8eが図1中矢印B方向に所定だけ回転することにより、歯車8dを介して枢軸部8a及び回動部8cが図1中矢印A方向に回動し、これによって、回動部8cの嵌合溝8bと係止ピン4aの嵌合が解除されると同時に、該衝撃力Fの応力によって両ブラケット2,3が屈折部2a,3aで左右方向内側へ屈折するように圧縮変形することにより、フードロックサポート4が下方へ変位する。
【0021】
従って、ブラケット2,3が圧縮変形することによりフードロックサポート4の下方への変位を許容できると同時に、上記衝撃力Fを吸収でき、ラジエータコアサポート1、特にラジエータコアサポートアッパ1aが亀裂・破損するのを防止できる。
【0022】
ここで、従来の発明にあっては、フードロックがラジエータコアサポートアッパに直接且つ堅固に固定されているため、エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、ラジエータコアサポートアッパが剛体として作用してしまうという虞があった。
【0023】
これに対し、本実施例1では、ラジエータコアサポートアッパ1aが剛体として作用せず、エンジンフード6に対する下方への衝撃力Fを吸収できる。
【0024】
また、修理交換部品をエンジンフード6とブラケット2,3に留めることができ、ラジエータコアサポート1全体を交換する場合に比べて、修理費用を低く抑えることができる。
【0025】
さらに、車両衝突時にフードロック5がフードロックサポート4と共に下方へ変位することで、フードロック5がストライカ7を保持したまま破壊されてエンジンフード6が開けられなくなる可能性を低くできる。
【0026】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、本実施例1のフードロック5の支持構造にあっては、ラジエータコアサポート1のラジエータコアサポートアッパ1aの上方に離間して並設され、且つ、車幅方向略中央にエンジンフード6と脱着自在に固定されたフードロックが設けられたフードロックサポート4と、フードロックサポート4とラジエータコアサポートアッパ1aの両端部同士を固定支持するブラケット2,3と、フードロックサポート4の略中央と、ラジエータコアサポート1のフードロックステイ1eを着脱自在に固定支持する固定手段8を備え、エンジンフード6に対して下方への衝撃力Fが入力された際に、固定手段8がフードロックサポート4とフードロックステイ1eの固定支持を解除すると共に、両ブラケット2,3が圧縮変形してフードロックサポート4の下方への変位を許容するため、エンジンフード6に対して下方への衝撃力Fが入力された際に、該衝撃力Fを両ブラケット2,3の圧縮変形により吸収でき、ラジエータコアサポートアッパ1aが剛体として作用するのを防止できると同時に、修理費用を低く抑えることができる。
【0027】
以上、本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、固定手段8の具体的な構成については適宜設定でき、液圧、空圧、火薬等を利用したアクチュエータを使用しても良く、要はエンジンフード6に対して下方への衝撃力Fが入力された際に、フードロックサポート4とフードロックステイ1eの固定支持を解除できる構成であれば良い。
【0028】
また、本実施例1では、フードロックサポート4の係止ピン4aを固定手段8を介してフードロックステイ1eに固定したが、フードロックステイ1eが省略される場合には係止ピン4aをラジエータコアサポートアッパ1aの略中央に固定する。
【0029】
さらに、センサ9を車両用エアバック装置の作動の検出に用いられる加速度センサと兼用しても良く、この場合、新たにセンサを設ける必要がなくなる。
【0030】
さらに、固定手段8を、衝撃力Fの応力を利用してフードロックサポート4とフードロックステイ1eの固定支持を解除できる構成とすればセンサを省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1のフードロックの支持構造を示す全体正面図である。
【図2】作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0032】
P1、P2 車両搭載ピン
1 ラジエータコアサポート
1a ラジエータコアサポートアッパ
1b ラジエータコアサポートロア
1c、1d ラジエータコアサポートサイド
1e フードロックステイ
2、3 ブラケット
2a、3a 屈折部
4 フードロックサポート
4a 係止ピン
5 フードロック
5a 締結手段
5b 係合部
6 エンジンフード
7 ストライカ
8 固定手段
8a 枢軸部
8b 嵌合溝
8c 回動部
8d 歯車
8e 螺子軸
8f モータ
9 センサ
10 熱交換器
10a、10b タンク
10c チューブ
10d フィン
10e コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータコアサポートのラジエータコアサポートアッパの上方に離間して並設され、且つ、車幅方向略中央にエンジンフードと脱着自在に固定されたフードロックが設けられたフードロックサポートと、
前記フードロックサポートとラジエータコアサポートアッパの両端部同士を固定支持するブラケットと、
前記フードロックサポートの略中央と、ラジエータコアサポートのフードロックステイまたはラジエータコアサポートアッパの略中央とを着脱自在に固定支持する固定手段を備え、
前記エンジンフードに対して下方への衝撃力が入力された際に、固定手段がフードロックサポートと、フードロックステイまたはラジエータコアサポートアッパの略中央部との固定支持を解除すると共に、両ブラケットが圧縮変形してフードロックサポートの下方への変位を許容することを特徴とするフードロックの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−276658(P2007−276658A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106261(P2006−106261)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】