ブッシュ
【課題】片当たりを抑制することが可能なブッシュを実現する。
【解決手段】本体部11は、内周面12に形成された溝部13を備え、溝部13は、潤滑液の供給を受ける被供給部20と、被供給部20から内周面12の母線方向に対して斜めに延在する斜行部21と、斜行部21から流れてくる潤滑液の流れを規制する規制部と、を備える。
【解決手段】本体部11は、内周面12に形成された溝部13を備え、溝部13は、潤滑液の供給を受ける被供給部20と、被供給部20から内周面12の母線方向に対して斜めに延在する斜行部21と、斜行部21から流れてくる潤滑液の流れを規制する規制部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなブッシュとして、例えば下記の特許文献1、2に記載されたブッシュが既に知られている。特許文献1の図1から図3には、ブッシュとしてのすべり軸受1が、その内周面に円周方向と交差する多数の溝2を備える構成が開示されている。なお、溝2の配設ピッチ及び溝2の円周方向に対する交差角は、当該文献の段落〔0004〕に記載のように設定され、溝付すべり軸受1と被支持体との間の凝着の防止が図られている。
【0003】
また、特許文献2の図1には、ブッシュとしての軸受側摺動部材11が、その内周面に螺旋状溝12を備える構成が開示されている。このような螺旋状溝12を備えることで、被支持体が回転した際に螺旋状溝12内を流れる潤滑液としての水に対してポンプ作用が働き、軸受内を通過する水の量を増やすことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−303854号公報(段落0004、図1から図3等)
【特許文献2】実開昭62―131116号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブッシュの内周面と被支持体の外周面との間には所定のオイルクリアランスが設けられているため、ブッシュの軸心と被支持体の軸心とは、互いに偏心した状態となり得る。そして、ブッシュと被支持体との間の偏心の程度によっては、ブッシュの軸方向における一方側の端部と被支持体とが当接した状態でブッシュと被支持体とが互いに相対回転する(以下、単に「片当たり」という。)おそれがある。このような片当たりが発生している状態では、ブッシュと被支持体とが当接している部分には潤滑液が十分に供給されないため、当該部分の温度が上昇し、偏磨耗や焼き付きが発生するおそれがある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2には、このような片当たりに言及した記載はなく、当然ながら、片当たりを抑制するための手段について何ら示されていない。なお、上記特許文献1には、溝付すべり軸受1と被支持体との間の凝着の防止を図る技術が開示されているが、この技術は、当該文献の段落〔0003〕に記載のように、被支持体の外周面が所定の頻度以上で溝2を通過するように構成することで凝着を防止するものであり、片当たりを抑制することを目的とするものではない。
【0007】
そこで、片当たりを抑制することが可能なブッシュの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュの特徴構成は、前記本体部は、前記内周面に形成された溝部を備え、前記溝部は、潤滑液の供給を受ける被供給部と、前記被供給部から前記内周面の母線方向に対して斜めに延在する斜行部と、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流れを規制する規制部と、を備える点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、斜行部が内周面の母線方向に対して斜めに延在するため、斜行部の延在方向は、内周面と当該内周面により支持される被支持体との間の相対回転の方向(すなわち、周方向)の成分を有することになる。よって、内周面と被支持体とが互いに相対回転している際に、斜行部内の潤滑液を、当該斜行部の延在方向又は当該延在方向に対して逆方向に向けて流すことが容易な構成となっている。従って、当該相対回転の方向を、斜行部内の潤滑液の流れ方向が当該斜行部の延在方向と一致するような方向とすることで、被供給部から斜行部に供給された潤滑液を、所定の流速を有する状態で規制部に供給することができる。
ここで、規制部では潤滑液の流れが規制される。よって、規制部においては、潤滑液が溝部から出て内周面と被支持体との間の隙間に入り込もうとする力、すなわち、内周面と被支持体との間における潤滑膜の形成能力が、他の部位に比べて高くなる。従って、本体部の軸方向中央位置に対して軸方向の規制部側の端部において、内周面と被支持体との間の隙間がたとえ片当たりが発生し得る程度に小さくなっていたとしても、当該隙間に安定した潤滑膜を形成することが容易な構成となっている。これにより、本体部の軸方向端部における内周面と被支持体との間の潤滑液を介さない接触を抑制することができ、結果、片当たりを抑制することができる。
なお、規制部においては潤滑液の流れが乱され乱流が生じるため、本体部及び被支持体と潤滑液との間の熱交換効率の向上も可能な構成となっている。
【0010】
ここで、前記斜行部は、前記内周面により支持される被支持体の前記内周面に対する相対回転によって前記溝部における潤滑液の流れを形成する機能を備え、前記規制部は、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流速を低下させることで潤滑液の液圧を上昇させる機能を備えていると好適である。
【0011】
この構成によれば、斜行部により溝部における潤滑液の流れが形成されるため、被供給部に供給された潤滑液を規制部に供給することが容易となる。また、規制部において潤滑液の液圧が上昇されるため、規制部における潤滑膜の形成能力をより確実に向上させることができる。
【0012】
また、前記斜行部と前記規制部との接続領域における前記斜行部の延在方向を斜行部延在方向とし、前記斜行部を前記接続領域から更に前記斜行部延在方向に沿って前記規制部側へ延長した仮想の溝部を仮想斜行部として、前記規制部は、前記本体部の軸方向端部側へ向うに従って、径方向内側から見て前記仮想斜行部と重複する範囲が連続的又は段階的に減少するように形成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、規制部の形状を、斜行部延在方向へ流れ続けようとする(すなわち、斜行部延在方向への慣性力を有する)潤滑液の流れを阻害するような形状とすることができる。よって、規制部において潤滑液の流れをより確実に規制することができる。
【0014】
また、前記規制部は、前記斜行部における前記本体部の軸方向端部側を閉塞してなる閉塞部を備えて構成されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、規制部の形状を比較的簡素なものとして規制部を設けることによる製造コストの増大を抑制しつつ、規制部において潤滑液の液圧をより確実に高めることができる。よって、片当たりをより確実に抑制することができる。
【0016】
また、前記溝部は、前記本体部の軸方向端部に設けられて潤滑液を排出する排出部を更に備え、前記規制部は、前記斜行部の延在方向に対して屈曲形成された溝でなる屈曲溝部、及び前記斜行部に対して溝断面積を小さく形成されてなる絞り部のいずれか一方又は双方を備えて構成されている構成としても好適である。
【0017】
この構成によれば、規制部の形状を比較的簡素なものとして規制部を設けることによる製造コストの増大を抑制しつつ、規制部において潤滑液の流れを規制することができる。また、潤滑液を排出する排出部が設けられているため、溝部からの潤滑液の排出性が高まり、ブッシュや被支持体の冷却効率を高めることができる。
【0018】
また、前記斜行部は、前記内周面上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされていると好適である。
【0019】
この構成によれば、潤滑液を斜行部において円滑に流すことができる。よって、規制部へ向かって斜行部を流れる潤滑液の流速の低下を抑制することができ、規制部における潤滑液の液圧上昇効果を高めることができる。
【0020】
また、前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されていると好適である。
【0021】
この構成によれば、内周面と被支持体との間の相対回転の方向を、一方側斜行部内の潤滑液の流れ方向が当該一方側斜行部の延在方向と一致するような方向とした場合に、他方側斜行部に対しても、潤滑液の流れ方向が当該他方側斜行部の延在方向と一致するようになる。よって、一方側斜行部に接続された規制部と、他方側斜行部に接続された規制部との双方で潤滑膜の形成能力を高めることができ、これらの規制部を本体部の軸方向中央位置に対して軸方向の異なる側に配設することで、軸方向の両側端部において片当たりを抑制することができる。
【0022】
また、前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向他方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている構成としても好適である。
【0023】
この構成によれば、被支持体に対してブッシュを軸方向で逆に配置した場合でも、内周面と被支持体との間の相対回転の方向が同一であれば、潤滑液の流れ方向が延在方向と一致する斜行部が、被支持体に対して軸方向の同じ側に位置する。すなわち、被支持体に対してブッシュを軸方向で逆に配置した場合でも、被支持体に対して軸方向の同じ側で片当たりを抑制することができる。
【0024】
また、前記一方側斜行部が、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部が、周方向一方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている構成において、軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部を通る周方向に沿った直線を軸として互いに対称な形状或いは当該対称な形状を周方向に所定量ずらした形状とされていると好適である。
【0025】
この構成によれば、溝部の形状が簡素となり、製造コストを低く抑えることができる。
【0026】
また、前記一方側斜行部が、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部が、周方向他方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている構成において、軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされていると好適である。
【0027】
この構成によれば、溝部の形状を、本体部の軸方向中央部に位置する点を対称の中心として点対称なものとすることができる。そして、このように点対称な形状に溝部を形成した場合、ブッシュを軸方向に反転させても溝部が同一の形状となるため、ブッシュの向きに対する管理の厳密さを低減することが可能であり、当該ブッシュを用いて製造する装置の製造コストを抑制することができる。
【0028】
また、前記一方側斜行部と前記他方側斜行部とが、前記本体部の軸方向中央位置で連結されていると好適である。
【0029】
この構成によれば、一方側斜行部と他方側斜行部とで被供給部を共通化することができるため、溝部の形状を簡素なものとして製造コストを抑制することができる。また、被供給部が共通化される一方側斜行部と他方側斜行部とが位置する周方向範囲を狭く抑えることができるため、本体部の内周面に配置する斜行部の個数に対する自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るすべり軸受機構の模式図である。
【図2】支持体と被支持体とが偏心した状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第一の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第二の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第三の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第四の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第五の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第六の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図9】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第七の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図10】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第八の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図11】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第九の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図12】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第十の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図13】本発明の第二の実施形態に係るすべり軸受機構の一部模式図である。
【図14】本発明の第二の実施形態に係るブッシュを示す展開図及びその一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.第一の実施形態
本発明に係るブッシュの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るブッシュ10は、図1に示すように、支持体1の内周面に備えられた状態で、径方向内側R1に配置された被支持体2を回転可能に支持する。そして、本実施形態に係るブッシュ10は、図3等に示すように内周面12に溝部13を備え、当該溝部13が、被供給部20と、斜行部21と、規制部30と、を備える点に特徴を有する。これにより、ブッシュ10の片当たりを抑制することが可能となっている。以下、本実施形態に係るブッシュ10の構成について詳細に説明する。
【0032】
なお、以下の説明では、ブッシュ10の軸心を基準として、「軸方向L」、「周方向C」、「径方向R」を定義している。「軸方向一方側L1」及び「軸方向他方側L2」は、それぞれ、図1における左側及び右側を表す。「周方向一方側C1」及び「周方向他方側C2」は、それぞれ、軸方向他方側L2から軸方向一方側L1を見た場合における反時計回り方向側及び時計回り方向側を表す。
【0033】
また、以下の説明では、特に断らない限り、各方向(但し、軸方向L、周方向C、及び径方向Rを除く)は、向きを逆にしたものを含まない概念として用いている。すなわち、各方向は、大きさが任意のベクトルと同義である。
【0034】
そして、本実施形態では、溝部13は、斜行部21として一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとを備えるが、これらを特に区別する必要がない場合には、単に斜行部21という。同様に、後述する具体例の一部においては、溝部13は、排出部22として一方側排出部22aと他方側排出部22bとを備えるが、これらを特に区別する必要がない場合には、単に排出部22という。同様に、溝部13は、規制部30として一方側規制部30aと他方側規制部30bとを備えるが、これらを特に区別する必要がない場合には、単に規制部30という。
【0035】
1−1.すべり軸受機構の全体構成
まず、本実施形態に係るブッシュ10が備えられるすべり軸受機構の全体構成について図1を参照して説明する。本実施形態に係るすべり軸受機構は、ラジアル荷重を受けるすべり軸受機構とされ、内周面にブッシュ10が嵌合された支持体1と、外周面がブッシュ10とすべり接触する被支持体2と、を備えている。
【0036】
支持体1は、円筒状の内周面を有する回転軸として構成されている。被支持体2は、円筒状の外周面を有する回転軸として構成されている。すなわち、本例では、支持体1及び被支持体2の双方が回転可能に構成されている。支持体1及び被支持体2は、例えば、クラッチやブレーキ等の摩擦係合要素を含む変速装置(自動変速機等)を構成する回転軸とすることができる。なお、支持体1及び被支持体2のいずれか一方を非回転部材(固定部材)とすることもできる。そして、ブッシュ10は、圧入によるしまりばめにより支持体1の内周面に嵌合されており、支持体1に固定された状態で、径方向内側R1に配置された被支持体2を回転可能に支持する。すなわち、ブッシュ10は、被支持体2の外周面とすべり接触する。
【0037】
本実施形態では、被支持体2の内部には、潤滑液の流路として、軸方向Lに延びる軸方向流路51と、当該軸方向流路51と連通するとともに径方向Rに延びる径方向流路50とが形成されている。軸方向流路51及び径方向流路50を介して、ブッシュ10の内周面12に潤滑液が供給される。そして、支持体1や被支持体2の回転に伴いブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間には潤滑膜が形成され、当該潤滑膜により被支持体2がブッシュ10の内周面12から僅かに離間した位置に支持される。なお、潤滑液は、摩擦面の摩擦や磨耗を低減するための種々の液体を用いることができ、例えば油(潤滑油)とすることができる。
【0038】
1−2.ブッシュの構成
次にブッシュ10の構成について説明する。なお、ここでは、後に具体例として説明する各ブッシュ10に共通の構成を中心に図3等を参照して説明し、各具体例については第1−3節で詳細に説明する。ブッシュ10は、円筒状の本体部11を備え、本体部11の内周面12に潤滑液が供給されるように構成されている。本体部11は、例えば金属材料やセラミック材料等を用いて形成される。なお、本体部11の内周面12が、樹脂等からなる摺動部材により形成された構成とすることもできる。
【0039】
本体部11は、内周面12に形成された溝部13を備えている。すなわち、溝部13は、内周面12に対して径方向外側R2に引退して、言い換えれば、内周面12に対して径方向外側R2に窪んで形成されている。なお、内周面12の溝部13が形成されていない部分に、例えば球面状の窪み(ディンプル)が併せて形成されている構成とすることもできる。そして、溝部13は、被供給部20と、斜行部21と、規制部30と、を備えている。
【0040】
被供給部20は、潤滑液の供給を受ける部位である。本実施形態では、図1に示すように、内周面12に潤滑液を供給するための径方向流路50は、ブッシュ10の本体部11の軸方向中央位置L0(図3等参照)と同じ軸方向L位置に位置する。そのため、本実施形態では、径方向流路50から径方向外側R2に向けて供給される潤滑液を効率良く溝部13に導入すべく、被供給部20は、本体部11の軸方向中央位置L0に形成されている。また、本実施形態では、被供給部20は、斜行部21の端部に一体的に形成されている。
【0041】
斜行部21は、被供給部20から内周面12の母線方向に対して斜めに延在する部位である。言い換えれば、斜行部21は、被供給部20から内周面12の母線方向に対して交差する方向に沿って延在する部位である。なお、図3等に示す展開図においては、内周面12の母線方向は軸方向Lに一致する。そのため、斜行部21は、径方向内側R1から見て、軸方向Lに対して斜めに延在、言い換えれば、軸方向Lに対して交差する方向に沿って延在するように形成されている。このように、斜行部21を形成することで、被供給部20から延出する斜行部21の延在方向(被供給部20から規制部30へ向う方向)又は当該延在方向に対して逆方向(規制部30から被供給部20へ向う方向。以下、「反延在方向」という。)は、本体部11の内周面12と被支持体2との間の相対回転の方向(すなわち、周方向Cのいずれか一方側)の成分を有することになる。よって、内周面12と被支持体2とが互いに相対回転している状態では、斜行部21内の潤滑液は、当該斜行部21に沿って延在方向又は反延在方向に向かって円滑に流れることになる。すなわち、斜行部21は、内周面12により支持される被支持体2の内周面12に対する相対回転によって溝部13における潤滑液の流れを形成する流れ形成機能を備える。そして、このように溝部13において潤滑液の円滑な流れを形成することで、潤滑液は内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間を円滑に流通することができる。これにより、ブッシュ10や被支持体2の潤滑や冷却を良好に行うことが可能であるとともに、過度な磨耗や焼き付きを抑制することが可能となっている。
【0042】
なお、本実施形態では、斜行部21は、内周面12上で直線状に、言い換えれば、径方向内側R1から見て直線状に形成されている。また、斜行部21は幅が一定の溝とされており、斜行部21を含む溝部13の全体は、深さが一定の溝とされている。
【0043】
ところで、斜行部21内の潤滑液の流れ方向は、支持体1(内周面12)と被支持体2との間の相対回転の方向に応じて定まる。具体的には、被支持体2が内周面12に対して周方向一方側C1に相対回転している状態、言い換えれば、内周面12が被支持体2に対して周方向他方側C2に相対回転している状態(以下、「第一相対回転状態」という。)では、潤滑液は内周面12に対して周方向一方側C1に移動するため、斜行部21内の潤滑液は、当該斜行部21に沿って周方向一方側C1の成分を含む方向に流れる。また、被支持体2が内周面12に対して周方向他方側C2に相対回転している状態、言い換えれば、内周面12が被支持体2に対して周方向一方側C1に相対回転している状態(以下、「第二相対回転状態」という。)では、潤滑液は内周面12に対して周方向他方側C2に移動するため、斜行部21内の潤滑液は、当該斜行部21に沿って周方向他方側C2の成分を含む方向に流れる。なお、後に参照する具体例を示す図面(図3〜12)においては、第一相対回転状態における潤滑液の流れを概略的に矢印で示している。
【0044】
ところで、本実施形態では、規制部30は本体部11の軸方向L両側に設けられている。ここで、軸方向一方側L1に設けられた規制部30を一方側規制部30aとし、軸方向他方側L2に設けられた規制部30を他方側規制部30bとする。本例では、一方側規制部30aは、本体部11の軸方向中央位置L0(図3等参照)に対して軸方向一方側L1に設けられ、他方側規制部30bは、本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向他方側L2に設けられている。そして、一方側規制部30aに接続される斜行部21を一方側斜行部21aとし、他方側規制部30bに接続される斜行部21を他方側斜行部21bとする。すなわち、溝部13は、斜行部21として、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとを備えている。
【0045】
ここで、説明の簡素化のため、後に説明する第八及び第九の具体例(図10及び図11)における第二溝部13bは、当該具体例を説明するときにのみ考慮し、ここでは第八及び第九の具体例における第二溝部13bを除いて考える。本実施形態では、一方側斜行部21aは全て、周方向一方側C1に向うに従って軸方向一方側L1に向う形状に形成されている。一方、他方側斜行部21bは、周方向他方側C2に向うに従って軸方向他方側L2に向う形状に形成されている構成(図3から図9)と、周方向一方側C1に向うに従って軸方向他方側L2に向う形状に形成されている構成(図10から図12)との何れかが採用される。
【0046】
前者の構成では、一方側斜行部21aの延在方向が周方向一方側C1の成分を含み、他方側斜行部21bの延在方向が周方向他方側C2の成分を含むことになる。すなわち、径方向内側R1から見て、一方側斜行部21aの延在方向を向くベクトルと他方側斜行部21bの延在方向を向くベクトルとの内積は負となる。以下では、このような関係で一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが形成されている構成を「延在方向負内積構成」という。この延在方向負内積構成では、第一相対回転状態において、潤滑液が一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れ、第二相対回転状態において、潤滑液が他方側斜行部21bの内部を当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れる。
【0047】
また、後者の構成では、一方側斜行部21aの延在方向と他方側斜行部21bの延在方向との双方が、周方向一方側C1の成分を含むことになる。すなわち、径方向内側R1から見て、一方側斜行部21aの延在方向を向くベクトルと他方側斜行部21bの延在方向を向くベクトルとの内積は正となる。以下では、このような関係で一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが形成されている構成を「延在方向正内積構成」という。この延在方向正内積構成では、第一相対回転状態において、潤滑液は、一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れるとともに、他方側斜行部21bの内部を当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れる。
【0048】
また、本実施形態では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが本体部11の軸方向中央位置L0で連結されている構成(図3から図6、図9〜図12)と、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが連結されていない構成(図7、図8)との何れかが採用される。以下では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが本体部11の軸方向中央位置L0で連結されている構成を「斜行部連結構成」といい、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが本体部11の軸方向中央位置L0で連結されていない構成を「斜行部非連結構成」という。なお、斜行部連結構成では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとで被供給部20を共通化することができる。
【0049】
ところで、図1に示すように、ブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間には、所定のオイルクリアランスが設けられている。そのため、ブッシュ10の軸心と被支持体2の軸心とは、互いに偏心した状態となり得る。例えば、支持体1や被支持体2が、駆動力源として内燃機関と回転電機とを備えるハイブリッド車両や、車両の停止中や減速中等に駆動力源としての内燃機関を停止させるアイドリングストップ車両等が備える変速装置を構成する回転軸である場合等には、支持体1や被支持体2が軸心を水平方向或いは水平方向に近い状態で配設され、回転を停止している状態において重力によって下方へ移動し或いは撓むことがある。特に、当該変速装置が備えるケース内に、ケース内の空間を軸方向Lに区画する壁部(中間壁)が設けられていない場合や当該壁部の個数が少ない場合には、支持体1や被支持体2或いはこれらの軸を支持する回転部材を、ケースに対して支持する軸受等の個数が少なくなり、上記の下方への移動や撓みの程度が大きくなり得る。そして、支持体1と被支持体2との間の偏心の程度によっては、本体部11の軸方向Lにおけるいずれか一方側の端部と被支持体2とが潤滑膜を介さずに当接した状態で、ブッシュ10と被支持体2とが互いに相対回転する状態、すなわち、片当たり状態が発生するおそれがある。
【0050】
なお、ブッシュ10(本体部11)の軸方向一方側L1端部と軸方向他方側L2端部との双方で片当たりが発生し得るが、支持体1や被支持体2の配置構成や使用状態等に応じて、軸方向一方側L1の端部において内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が片当たりを招来し得る程度に短くなり得るか否かや、軸方向他方側L2の端部において内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が片当たりを招来し得る程度に短くなり得るか否かを予め少なくともある程度予想することが可能である。ここでは、第一相対回転状態において、本体部11の軸方向一方側L1の端部で、図2に示すように内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が片当たりを招来し得る程度に短くなる場合を想定する。そして、このように内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が短くなった場合、内周面12と被支持体2の外周面との間に安定した潤滑膜が形成されていなければ片当たり状態となる。
【0051】
この片当たりの問題に対処すべく、本発明では、溝部13が、被供給部20及び斜行部21に加え、規制部30を備える構成を採用している。規制部30は、斜行部21に対して被供給部20とは反対側に設けられる。従って、支持体1(ブッシュ10)と被支持体2との間の相対回転の方向を、斜行部21内の潤滑液の流れ方向が当該斜行部21の延在方向と一致するような方向とすれば、被供給部20から斜行部21に供給された潤滑液は、所定の流速を有する状態で規制部30に供給される。
【0052】
規制部30は、斜行部21から流れてくる潤滑液の流れを規制する部位である。よって、このような潤滑液の流れを規制する規制部30を備えることで、規制部30においては潤滑液の流れが規制される。すなわち、規制部30においては、潤滑液が受ける抵抗が大きくなることで潤滑液の流速が低下し、当該流速の低下に伴い液圧が上昇する。よって、規制部30においては、潤滑液が溝部13から出て内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間に入り込もうとする力、すなわち、内周面12と被支持体2との間における潤滑膜の形成能力が、他の部位に比べて高くなる。このように、規制部30は、斜行部21から流れてくる潤滑液の流速を低下させることで潤滑液の液圧を上昇させる液圧上昇機能を備えている。なお、上記のように、本実施形態では、斜行部21は、内周面12上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされているため、規制部30へ向かって斜行部21を流れる潤滑液の流速の低下は抑制されており、規制部30における潤滑液の液圧上昇効果の向上が図られている。
【0053】
従って、このような規制部30を、片当たりが起こり得る部位の近くに配置すれば、内周面12と被支持体2との間の隙間がたとえ片当たりが発生し得る程度に小さくなっていたとしても、当該隙間に安定した潤滑膜を形成することが可能となり、当該部位における片当たりを抑制することができる。また、規制部30においては潤滑液の流れが乱され乱流が生じるため、ブッシュ10及び被支持体2と潤滑液との間の熱交換効率の向上も図ることができる。
【0054】
上記のように、ここでは、第一相対回転状態において、本体部11の軸方向一方側L1の端部で片当たりが発生し得る場合を想定している。そして、上記のように第一相対回転状態では、延在方向負内積構成であるか延在方向正内積構成であるかによらず、潤滑液は一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れる。よって、一方側斜行部21aに連結される一方側規制部30aを少なくとも本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向一方側L1に配置すれば、軸方向一方側L1端部における片当たりを抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、図3から図12に示すように、一方側規制部30aは、本体部11の軸方向中央位置L0と軸方向一方側L1端部との間におけるほぼ中央の位置に配置されている。なお、一方側規制部30aの軸方向L位置を、本体部11の軸方向一方側L1端部側に近づければ片当たりの抑制効果を向上させることが可能である。ここで、本体部11の軸方向一方側L1端部からの一方側規制部30aの軸方向L位置の距離をAとし、本体部11の軸方向中央位置L0から軸方向一方側L1端部までの距離をBとすると、一方側規制部30aの軸方向L位置を「A/B」で表すことができる。この「A/B」の値は任意に設定可能であり、例えば、「A/B」をnを1以上の整数として「1/n」に設定することができる。例えば、nを2、3、4とすることができる。また、「A/B」の値は、本体部11の軸方向L幅が広いほど小さな値を選択すると好適である。他方側規制部30bの軸方向L位置も同様に定めることができる。
【0056】
なお、一方側規制部30aの軸方向L位置は、例えば、一方側規制部30aと一方側斜行部21aとの接続領域90(図3等参照)の軸方向L位置とすることができる。なお本例では、一方側斜行部21aは内周面12上に直線状に形成されているとともに幅が一定に形成されているため、当該接続領域90は、溝部13の延在方向が一方側斜行部21aの延在方向に沿う直線から逸れ始める位置や、溝部13の幅が一方側斜行部21aの幅とは異なるものとなり始める位置とすることができる。
【0057】
本実施形態では、規制部30は、斜行部21の延在方向に対して屈曲形成された溝でなる屈曲溝部31、斜行部21に対して溝断面積を小さく形成されてなる絞り部32、及び斜行部21における本体部11の軸方向L端部側を閉塞してなる閉塞部33、のいずれか又はこれらの組み合わせにより構成されている。なお、本実施形態では、絞り部32は、溝幅を減少させることで溝断面積を小さくする構成となっている。このように規制部30を構成することで、規制部30の形状を比較的簡素なものとしつつ、規制部30において潤滑液の流れを規制することが可能となっている。
【0058】
規制部30が屈曲溝部31により構成されている具体例としては、図3、図4、図7、図8、図10、図11に示す例が該当する。また、規制部30が屈曲溝部31及び絞り部32により構成されている具体例としては、図5に示す例が該当する。また、規制部30が屈曲溝部31及び閉塞部33により構成されている具体例としては、図6に示す例が該当する。また、規制部30が絞り部32により構成されている具体例としては、図9に示す例が該当する。そして、規制部30が閉塞部33により構成されている具体例としては、図12に示す例が該当する。なお、規制部30が閉塞部33を備えている構成では、規制部30において潤滑液の液圧をより確実に高めることができ、片当たりをより確実に抑制することができる。
【0059】
なお、規制部30が閉塞部33を備えない構成において、溝部13は、本体部11の軸方向L端部に設けられて潤滑液を溝部13から排出する排出部22を備える。排出部22は、本体部11の軸方向L端縁において軸方向L外側に開口するように形成されるため、排出部22は、潤滑液を本体部11の軸方向L外側に排出する部位である。溝部13が排出部22を備える構成の具体例としては、図3〜図5、図7〜図11に示す例が該当する。なお、排出部22は、斜行部21に対して被供給部20とは反対側に設けられる。言い換えれば、排出部22は、被供給部20から延出する斜行部21の延在方向側の端部に設けられている。よって、支持体1(内周面12)と被支持体2との間の相対回転の方向を、斜行部21内の潤滑液の流れ方向が当該斜行部21の延在方向と一致するような方向とした場合には、被供給部20から斜行部21に供給された潤滑液は、斜行部21を延在方向に向かって流れた後、規制部30を介して、排出部22から溝部13の外側(本体部11の軸方向L外側)に排出される。なお、排出部22が本体部11の軸方向L両側の端部に設けられる構成においては、本体部11の軸方向一方側L1の端部に設けられた排出部22を一方側排出部22aとし、本体部11の軸方向他方側L2の端部に設けられた排出部22を他方側排出部22bとする。
【0060】
また、本実施形態では、一方側斜行部21aから一方側規制部30aに至る溝部13と、他方側斜行部21bから他方側規制部30bに至る溝部13とが、本体部11の軸方向中央部L0に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされている構成(例えば、図3〜図9に示す例)を採用することができる。以下では、このような対称関係で溝部13が形成されている構成を「点対称構成」という。このような構成では、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30bを含む溝部13の全体としての形状を、本体部11の軸方向中央部L0に位置する点を対称の中心として点対称なものとすることができる。そして、溝部13の全体としての形状を点対称なものとすれば、ブッシュ10を軸方向Lに反転させても溝部13が同一の形状となるため、ブッシュ10の向きに対する管理の厳密さを低減することが可能であり、当該ブッシュ10を用いて製造する装置の製造コストを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、一方側斜行部21aから一方側規制部30aに至る溝部13と、他方側斜行部21bから他方側規制部30bに至る溝部13とが、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を軸として互いに対称な形状或いは当該対称な形状を周方向Cに所定量ずらした形状とされている構成(例えば、図10〜図12に示す例)を採用することもできる。以下では、このような線対称或いは線対称に類似する関係で溝部13が形成されている構成を「線対称構成」という。このような構成では、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30bを含む溝部13の全体としての形状を、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとしたり、或いは、一方側斜行部21a及び一方側規制部30aを、他方側斜行部21b及び他方側規制部30bに対して周方向Cに相対移動させることで、溝部13の全体としての形状を、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとしたりすることができる。
【0062】
1−3.具体例の説明
以下、上記のような構成を備えるブッシュ10の溝部13の具体例について、図3から図12を参照して順に説明する。なお、以下のそれぞれの具体例で開示される特徴構成は、その具体例でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の具体例で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0063】
1−3−1.第一の具体例
まず、第一の具体例について、図3を参照して説明する。本例では、溝部13は、延在方向負内積構成で形成されている。具体的には、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとは、径方向内側R1から見て、延在方向が互いに逆向きに配置されている。すなわち、図3(b)に示すように、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角とは、互いに等しくθとされている。また、溝部13は、軸方向L両側のそれぞれにおいて規制部30及び排出部22を備え、規制部30や排出部22は、軸方向L両側で同様に形成されている。そして、溝部13は、溝幅tが延在方向に沿って一様に形成されている。このように溝部13が形成されているため、本例では、溝部13は点対称構成となっている。なお、本例では、斜行部連結構成が採用されており、溝部13の形状は、被供給部20を対称の中心として点対称なものとなっている。すなわち、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30b、更には一方側排出部22a及び他方側排出部22bを含む溝部13の全体としての形状が、被供給部20を対称の中心として点対称なものとなっている。
【0064】
本例では、ブッシュ10の内周面12には、4つの溝部13が周方向Cに沿って等間隔で配置されている。なお、4つの溝部13は、互いに周方向Cに重ならないように配置されている。このように複数(本例では4つ)の溝部13を互いに周方向Cに重ねることなく配置することで、溝部13を形成することによって内周面12と被支持体2との間に安定した潤滑膜が形成されにくくなることが抑制されている。なお、内周面12に形成する溝部13の個数は適宜変更であり、また、異なる溝部13を互いに周方向Cに重なるように配置することも可能である。
【0065】
そして、上記のように、第一相対回転状態では、潤滑液は一方側斜行部21aを当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れ(図3(b)の破線矢印参照)、一方側規制部30aにおいて潤滑液の液圧が高められる。これにより、軸方向一方側L1端部における片当たりを抑制することが可能となっている。また、本体部11の軸方向一方側L1の端縁に開口するように第一排出部22aが形成されているため、溝部13から潤滑液が排出されやすい構成となっており、ブッシュ10や被支持体2の冷却を効率良く行うことが可能となっている。
【0066】
なお、第二相対回転状態では、潤滑液は他方側斜行部21bを当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れ、他方側規制部30bにおいて潤滑液の液圧が高められる。よって、仮に、第二相対回転状態において、軸方向他方側L2端部で片当たりが発生し得るような場合であっても、他方側規制部30bにおける潤滑液の液圧の上昇により、当該片当たりを抑制することができる。また、本例では点対称構成が採用され、溝部13の全体としての形状が点対称なものとされているため、上記のように、ブッシュ10を軸方向Lに反転させても溝部13は同一の形状となる。よって、仮にブッシュ10を軸方向Lに反転させて支持体1に配置したとしても、支持体1と被支持体2との間の相対回転の方向が同一であれば、被支持体2に対して軸方向Lの同じ側において片当たりが抑制される。
【0067】
本例では、規制部30は屈曲溝部31により構成されている。具体的には、屈曲溝部31は、屈曲後の溝部13の延在方向が、斜行部21の延在方向に対して直角より少し大きい角度で交差するように形成されている。なお、屈曲溝部31の屈曲角は任意に設定できるが、屈曲溝部31の屈曲角が大きい程、潤滑液の液圧上昇効果が高まり、屈曲溝部31の屈曲角が小さい程、溝部13からの潤滑液の排出性が高まり冷却効果が高まる。よって、屈曲溝部31の屈曲角は、これらの液圧上昇効果及び冷却効果を考慮して定めることができる。そして、このような屈曲溝部31を形成することで、当該屈曲溝部31を通過する潤滑液に対してその流れ方向を変えさせることができる。すなわち、斜行部21の延在方向へ流れ続けようとする(すなわち、斜行部21の延在方向への慣性力を有する)潤滑液の流れを阻害することができ、結果、潤滑液の液圧を高めることができる。
【0068】
ここで、屈曲溝部31が構成する規制部30の形状について、図3(b)に基づいて補足説明する。図3(b)には、斜行部21と規制部30との接続領域90における斜行部21の延在方向を斜行部延在方向とし、斜行部21を接続領域90から更に斜行部延在方向に沿って規制部30側へ延長した仮想の溝部である仮想斜行部100を示している。そして、規制部30の形状は、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的に減少するものとなっている。具体的には、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、仮想斜行部100と重複する範囲が一方側から漸次減少するように、規制部30が形成されている。このような形状とすることで、規制部30は、斜行部21の延在方向へ流れ続けようとする潤滑液の流れを確実に阻害することが可能となっている。
【0069】
なお、斜行部21の配置角度を決定する上記の角度θは、例えば、PV値(面圧と摺動速度との積により定まる指標)が高くなる場合においても潤滑液が円滑に流れるような角度として設定することができる。また、角度θが0度になるように斜行部21を形成することも可能である。
【0070】
1−3−2.第二の具体例
次に、第二の具体例について、図4を参照して説明する。本例では、ブッシュ10の内周面12に配置される溝部13の個数が、上記第一の具体例とは異なる。具体的には、本例では、ブッシュ10の内周面12には、2つの溝部13が形成されている。そして、図4を図3と比較すれば明らかなように、本例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ(他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角θ)が、上記第一の具体例に比べて小さくなっている。すなわち、斜行部21の延在方向と内周面12の母線方向との交差角が、上記第一の具体例に比べて大きくなっている。これにより、支持体1と被支持体2との間の相対回転の速度が同一であれば、上記第一の具体例に比べて斜行部21内を流れる潤滑液の流速を高くすることができる。よって、規制部30における液圧上昇効果を向上させることができ、片当たりをより確実に抑制することが可能となる。また、本例では、被供給部20における溝部13の周方向幅Cが上記第一の具体例に比べて広くなるため、より多くの潤滑液を溝部13に導入することも可能となっている。
【0071】
その他の構成は、基本的に上記第一の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第一の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
1−3−3.第三の具体例
次に、第三の具体例について、図5を参照して説明する。本例では、溝部13が備える規制部30が、屈曲溝部31に加えて絞り部32によっても形成されている点で、上記第二の具体例と相違している。図5(b)に示すように、斜行部21から排出部22へ向って、屈曲溝部31と絞り部32との順に配置されている。絞り部32は、本例では、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、連続的に溝幅を変化させながら連結している。なお、t2は、例えばt1の半分の値とすることができる。このような絞り部32を備えることで、当該絞り部32を通過する潤滑液に対して流れ抵抗を与えることができる。すなわち、潤滑液の流れを阻害することができ、潤滑液の液圧を高めることができる。
【0073】
このように、本例では、屈曲溝部31と絞り部32との双方が協働で潤滑液の液圧上昇効果を発揮するため、片当たりをより確実に抑制することができる。なお、本例においても、本体部11の軸方向L端縁に開口するように排出部22が形成されているため、潤滑液の排出性を確保しつつ、潤滑液の液圧上昇効果を高めることが可能となっている。
【0074】
その他の構成は、基本的に上記第二の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第二の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
1−3−4.第四の具体例
次に、第四の具体例について、図6を参照して説明する。本例では、溝部13が備える規制部30が、屈曲溝部31に加えて閉塞部33によっても形成されている点、及び排出部22を備えない点で、上記第二の具体例と相違している。図6(b)に示すように、斜行部21から被供給部20とは反対側へ向って、屈曲溝部31と閉塞部33との順に配置されている。閉塞部33は、本例では、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、連続的に溝幅を減少させて閉塞している。このような閉塞部33を備えることで、当該閉塞部33に到達した潤滑液に対して大きな流れ抵抗を与えることができる。すなわち、潤滑液の流れをより確実に阻害することができ、潤滑液の液圧をより確実に高めることができる。なお、本例のように規制部30が閉塞部33を備える構成では、ブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間の大きさ等によっては、斜行部21から供給されて閉塞部33に到達した潤滑液が当該隙間を介して溝部13の外側に排出される場合がある。このような場合には、規制部30を構成する閉塞部33が、ブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間と協働で、溝部13から潤滑液を排出するという意味での排出部として機能しているといえる。
【0076】
その他の構成は、基本的に上記第二の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第二の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
なお、ここでは、規制部30が屈曲溝部31及び閉塞部33により構成された場合を例として示したが、規制部30を閉塞部33のみにより構成することもできる。
【0078】
1−3−5.第五の具体例
次に、第五の具体例について、図7を参照して説明する。本例では、溝部13が点対称構成となっているものの、斜行部非連結構成が採用されているという点で上記第二の具体例と相違している。溝部13は、一方側斜行部21aを備える第一溝部13aと、他方側斜行部21bを備える第二溝部13bとを備えている。そして、第一溝部13aと第二溝部13bとは、内周面12の径方向内側R1端面により互いに分離されている。そのため、一方側斜行部21aに潤滑液を供給する被供給部20と、他方側斜行部21bに潤滑液を供給する被供給部20とは、互いに独立に形成されている。そして、本例では、溝部13は、本体部11の軸方向中央位置L0を通る周方向Cに沿った線分における、上記2つの被供給部20から互いに等しい距離だけ離れた位置(図7において符号Xで示す点)を対称の中心とする点対称形状となっている。
【0079】
そして、本例では、上記第二の具体例とは異なり、溝部13の個数、すなわち、一方側斜行部21a及び他方側斜行部21bの対の個数が少なく(本例では1つ)なっているため、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ(他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角θ)を、上記第二の具体例に比べて更に小さくすることができ、規制部30における液圧上昇効果並びに溝部13への潤滑液の導入量の更なる向上が図られている。
【0080】
その他の構成は、基本的に上記第二の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第二の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
なお、ここでは、規制部30が屈曲溝部31により構成された場合を例として示したが、上記第三の具体例(図5)のように規制部30を屈曲溝部31及び絞り部32により構成したり、上記第四の具体例(図6)のように規制部30を屈曲溝部31及び閉塞部33により構成したりすることもできる。また、後述する第七の具体例(図9)のように、規制部30を絞り部32のみにより構成したり、後述する第十の具体例(図12)のように、規制部30を閉塞部33のみにより構成したりすることもできる。また、規制部30を、絞り部32と閉塞部33とにより構成することもできる。なお、規制部30が閉塞部33を備えて構成される場合には、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0082】
1−3−6.第六の具体例
次に、第六の具体例について、図8を参照して説明する。本例では、屈曲溝部31及び排出部22の構成が、上記第五の具体例とは相違している。具体的には、図8(b)に示すように、屈曲溝部31は、当該部位において溝幅が広くなるような形状に形成されている。より具体的には、屈曲溝部31は、屈曲後の溝部13の延在方向が、斜行部21の延在方向に対して180度に近い角度で交差するように形成されているとともに、屈曲の中心点側の溝側壁を取り除いて2つの溝部を融合したような形状となっている。このような屈曲溝部31の形状に合わせ、本例では排出部22の延在方向は軸方向Lに沿う方向となっている。このような構成とすることで、図8(b)より明らかなように、屈曲溝部31により潤滑液を一時的に溜めることができる液溜りが形成される。よって、潤滑液は、屈曲溝部31が構成する規制部30に保持されやすくなり、当該部位における液圧上昇効果を高めることができる。
【0083】
その他の構成は、基本的に上記第五の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第五の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
1−3−7.第七の具体例
次に、第七の具体例について、図9を参照して説明する。本例では、規制部30が絞り部32のみにより構成されている点で、上記第三の具体例と相違する。具体的には、図9(b)に示すように、絞り部32が、斜行部21と排出部22との間に配置されている。絞り部32は、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、連続的に溝幅を変化させながら連結している。
【0085】
ここで、絞り部32が構成する規制部30の形状について、図9(b)に基づいて補足説明する。図9(b)には、図3(b)と同様、斜行部21を接続領域90から更に斜行部延在方向に沿って規制部30側へ延長した仮想の溝部である仮想斜行部100を示している。そして、本例でも、規制部30の形状は、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的に減少するものとなっているが、本例では、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、仮想斜行部100と重複する範囲が一方側ではなく両側から漸次減少するように、規制部30が形成されている。
【0086】
また、本例では、ブッシュ10の内周面12には、3つの溝部13が周方向Cに沿って等間隔で配置されている。その他の構成は、基本的に上記第三の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第三の具体例と同様の作用効果を奏することができる。なお、ここでは、規制部30が絞り部32により構成された場合を例として示したが、規制部30を絞り部32及び閉塞部33により構成することもできる。このような構成では、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0087】
1−3−8.第八の具体例
次に、第八の具体例について、図10を参照して説明する。本例では、溝部13が、延在方向負内積構成ではなく、延在方向正内積構成で形成されている点で、上記第一の具体例と相違する。なお、図10(a)に示すように、本例では、溝部13は、第一溝部13aと、第二溝部13bとを備え、これらの溝部13の形状は、径方向内側R1から見て、軸方向Lに平行な線分を対称軸として互いに線対称な関係となっている。なお、第一相対回転状態においては、第一溝部13aが片当たりの抑制効果を発揮するため、まず第一溝部13aの構成について説明する。
【0088】
第一溝部13aは、図10(b)に示すように、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが、径方向内側R1から見て、延在方向が周方向Cの同じ側(周方向一方側C1)を向くように配置されている。本例では、更に、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角とは、互いに等しくθとされている。また、第一溝部13aは、軸方向L両側のそれぞれにおいて規制部30及び排出部22を備え、規制部30や排出部22は、軸方向L両側で同様に形成されている。そして、第一溝部13aは、溝幅tが延在方向に沿って一様に形成されている。このように第一溝部13aが形成されているため、本例では、第一溝部13aは線対称構成となっている。なお、本例では、斜行部連結構成が採用され、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが直接連結されているため、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30b、更には一方側排出部22a及び他方側排出部22bを含む第一溝部13aの全体としての形状が、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとなっている。
【0089】
本例では、第一溝部13aが延在方向正内積構成で構成されているため、図10(b)に示すように、第一相対回転状態において、潤滑液は、一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れるとともに、他方側斜行部21bの内部を当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れる。よって、本例では、軸方向一方側L1端部だけでなく軸方向他方側L2端部においても片当たりを抑制することができる。
【0090】
第二溝部13bは、上記のように、第一溝部13aを軸方向Lに平行な線分を対称軸として対称移動したものに対応する。よって、第二溝部13bの構成は、第一溝部13aの構成を周方向Cに反転させたものに対応する。従って、第二溝部13bは、第二相対回転状態において片当たりの抑制効果を発揮する。具体的には、第二相対回転状態において、軸方向Lの両側で片当たりが抑制される。
【0091】
このように、本例では、第一相対回転状態において、軸方向Lの両側で片当たりが抑制されるとともに、第二相対回転状態においても、軸方向Lの両側で片当たりが抑制される。また、第一溝部13aと第二溝部13bとは、本体部11の軸方向中央位置L0に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされているため、本例においても、ブッシュ10を軸方向Lに反転させても溝部13は同一の形状となる。
【0092】
また、本例では、上記第一の具体例と同様、本体部11の内周面12には4つの溝部13が形成されているが、上記第一の具体例とは異なり、2種類の溝部(第一溝部13a及び第二溝部13b)が形成されている。具体的には、2つの第一溝部13aと2つの第二溝部13bとが、本体部11の内周面12に形成されている。
【0093】
その他の構成は、基本的に上記第一の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第一の具体例と同様の作用効果を奏することができる。なお、ここでは、溝部13が斜行部連結構成で形成されている場合を例として説明したが、上記第五の具体例(図7)のように、溝部13を斜行部非連結構成で構成することもできる。また、ここでは、規制部30が屈曲溝部31により構成されている場合を例として示したが、規制部30を屈曲溝部31に加えて絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方を用いて構成することもできる。また、規制部30を、絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方により構成することもできる。なお、規制部30が閉塞部33を備えて構成される場合には、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0094】
1−3−9.第九の具体例
次に、第九の具体例について、図11を参照して説明する。本例では、ブッシュ10の内周面12に配置される溝部13の個数が、上記第八の具体例とは異なる。具体的には、本例では、ブッシュ10の内周面12には、2つの溝部13、言い換えれば、1つの第一溝部13aと1つの第二溝部13bとが形成されている。そして、第一溝部13aについてみると、図11を図10と比較すれば明らかなように、本例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ(他方側斜行部21bの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ)が、上記第八の具体例に比べて小さくなっている。すなわち、斜行部21の延在方向と内周面12の母線方向との交差角が、上記第八の具体例に比べて大きくなっている。第二溝部13bについても、周方向一方側C1と周方向他方側C2とが逆になるだけで同様である。これにより、支持体1と被支持体2との間の相対回転の速度が同一であれば、上記第八の具体例に比べて斜行部21内を流れる潤滑液の流速を高くすることができる。よって、規制部30における液圧上昇効果を向上させることができ、片当たりをより確実に抑制することが可能となる。また、本例では、被供給部20における溝部13の周方向幅Cが上記第八の具体例に比べて広くなるため、より多くの潤滑液を溝部13に導入することも可能である。
【0095】
その他の構成は、基本的に上記第八の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第八の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
1−3−10.第十の具体例
次に、第十の具体例について、図12を参照して説明する。本例では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが後述する基幹部23を介して連結されている点と、規制部30が屈曲溝部31ではなく閉塞部33により構成されており排出部22を備えないという点で、上記第八の具体例(図10)とは相違する。本例では、線対称構成とはなっているものの、上記第八の具体例とは異なり、一方側斜行部21a及び一方側規制部30aを、他方側斜行部21b及び他方側規制部30bに対して周方向Cに相対移動させることで、溝部13の全体としての形状が、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとなる。
【0097】
具体的には、本体部11の内周面には、3つの一方側斜行部21aと、3つの他方側斜行部21bとが形成されている。そして、これらの一方側斜行部21a及び他方側斜行部21bは、周方向Cに沿って所定の間隔毎に交互に配置されている。そのため、各一方側斜行部21aに潤滑液を供給する被供給部20と、各他方側斜行部21bに潤滑液を供給する被供給部20とは、周方向Cに互いに異なる位置にある。そして、これらの被供給部20を連通するように、本体部11の軸方向中央位置L0には、周方向Cに沿って延びる溝である基幹部23が形成されている。すなわち、本例では、溝部13は、被供給部20、斜行部21、及び規制部30に加えて、基幹部23を備えている。このような基幹部23を備えることで、径方向流路50から供給された潤滑液を効率良く溝部13に導入することが可能となっている。なお、本例では、基幹部23の溝幅tと、斜行部21の溝幅tとは、互いに等しく設定されている。
【0098】
また、本例では、規制部30が閉塞部33により形成されている。ここで、閉塞部33が構成する規制部30の形状について、図12(b)に基づいて補足説明する。図12(b)には、図3(b)と同様、斜行部21を接続領域90から更に斜行部延在方向に沿って規制部30側へ延長した仮想の溝部である仮想斜行部100を示している。そして、本例でも、規制部30の形状は、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的に減少するものとなっているが、本例では、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、仮想斜行部100と重複する範囲が一方側ではなく両側から漸次減少するように、規制部30が形成されている。
【0099】
その他の構成は、基本的に上記第八の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第八の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
2.第二の実施形態
次に、本発明に係るブッシュの第二の実施形態について説明する。本実施形態に係るブッシュ10は、ブッシュ10の内周面12に対して軸方向L外側から潤滑液が供給される点で、上記第一の実施形態とは異なる。以下、本実施形態に係るブッシュ10の構成について上記第一の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0101】
図13に示すように、本実施形態では、被支持体2は、ブッシュ10の内周面12に対して径方向内側から潤滑液を供給するための径方向流路50を備えておらず、ブッシュ10に対して軸方向他方側L2から、被支持体2の外周面に沿って潤滑液が供給される。このような潤滑液の供給構成に合わせて、ブッシュ10の内周面12に形成される溝部13の形状は、上記第一の実施形態とは異なっている。具体的には、図14に示すように、本実施形態では、溝部13は、被供給部20を本体部11の軸方向他方側L2端部に備え、排出部22を本体部11の軸方向一方側L1の端部に備える。また、溝部13は、規制部30を本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向一方側L1に備えている。これにより、軸方向他方側L2から供給された潤滑液を効率良く被供給部20を介して斜行部21に導入することが可能であり、本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向一方側L1に配設された規制部30において、潤滑液の液圧を上昇させることが可能となっている。すなわち、本実施形態においても、第一相対回転状態において、軸方向一方側L1における片当たりを抑制することが可能である。
【0102】
本例では、図14に示すように、被供給部20は、本体部11の軸方向他方側L2の端縁において軸方向L外側に開口するように形成されている。また、規制部30は、屈曲溝部31により構成されている。なお、被供給部20の軸方向他方側L2の端部が、本体部11の軸方向他方側L2の端縁に対して軸方向一方側L1に位置するように被供給部20を形成し、本体部の軸方向他方側L2の端縁において被供給部20の開口部が形成されない構成とすることもできる。また、規制部30は、上記第一の実施形態と同様、屈曲溝部31に加えて絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方を用いて構成することもでき、また、規制部30を、絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方により構成することもできる。なお、規制部30が閉塞部33を備えて構成される場合には、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0103】
3.その他の実施形態
(1)上記第一及び第二の実施形態では、斜行部21が、内周面12上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、規制部30において潤滑液の液圧を適切に上昇させることができるという条件のもとで斜行部21の形状は適宜変更可能である。例えば、斜行部21の幅を延在方向に沿って一様ではない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。例えば、斜行部21の幅が、延在方向に向かって漸次狭くなるような構成や、延在方向に向かって漸次広くなるような構成、或いは、延在方向に向かって増加と減少とを繰り返すような構成とすることができる。同様に、斜行部21の深さが延在方向に沿って一様ではない構成とすることもできる。また、斜行部21を、蛇行状に形成したり、円弧状に形成したりすることもできる。
【0104】
(2)上記第一の実施形態における第一から第七の具体例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角とが、互いに等しく設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、これらの角度を互いに異なる値に設定することも可能である。
【0105】
(3)上記第一の実施形態における第八から第十の具体例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角とが、互いに等しく設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、これらの角度を互いに異なる値に設定することも可能である。
【0106】
(4)上記第一の実施形態では、一方側規制部30aと他方側規制部30bとが同様の構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、一方側規制部30aと他方側規制部30bとを互いに異なる構成とすることもできる。例えば、一方側規制部30aを屈曲溝部31とし、他方側規制部30bを絞り部32とすることができる。
【0107】
(5)上記第一の実施形態における第三及び第七の具体例では、絞り部32が、溝幅を減少させることで、斜行部21に対して溝断面積を小さくする場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、溝幅に加えて深さを減少させることで溝断面積を小さくする構成や、深さのみを減少させることで溝断面積を小さくする構成とすることもできる。
【0108】
(6)上記第一の実施形態における第三及び第七の具体例では、絞り部32が、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、連続的に溝幅を変化させながら連結している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、絞り部32を、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、不連続的(段階的)に溝幅を変化させながら連結するように構成することもできる。また、絞り部32を、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、所定の位置で不連続的に接続するように構成することもできる。これらの場合、絞り部32は、溝部13の延在方向に直交する面を有して形成される。
【0109】
(7)上記第一の実施形態における第四及び第十の具体例では、閉塞部33が、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、連続的に溝幅を減少させて閉塞している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、閉塞部33を、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、不連続的(段階的)に溝幅を減少させて閉塞するように構成することもできる。また、閉塞部33を、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、所定の位置で不連続的に閉塞するように形成することもできる。これらの場合、閉塞部33は、溝部13の延在方向に直交する面を有して形成される。
【0110】
(8)上記第一及び第二の実施形態では、規制部30が、屈曲溝部31、絞り部32、及び閉塞部33、のいずれか又はこれらの組み合わせにより構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。本発明に係る規制部30の形状は、例えば、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的又は段階的に減少するという条件を満たす任意のものを採用することができる。
【0111】
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
2:被支持体
10:ブッシュ
11:本体部
12:内周面
13:溝部
20:被供給部
21:斜行部
21a:一方側斜行部
21b:他方側斜行部
22:排出部
30:規制部
30a:一方側規制部
30b:他方側規制部
31:屈曲溝部
32:絞り部
33:閉塞部
90:接続領域
100:仮想斜行部
L:軸方向
L1:軸方向一方側
L2:軸方向他方側
L0:軸方向中央位置
C:周方向
C1:周方向一方側
C2:周方向他方側
R:径方向
R1:径方向内側
R2:径方向外側
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなブッシュとして、例えば下記の特許文献1、2に記載されたブッシュが既に知られている。特許文献1の図1から図3には、ブッシュとしてのすべり軸受1が、その内周面に円周方向と交差する多数の溝2を備える構成が開示されている。なお、溝2の配設ピッチ及び溝2の円周方向に対する交差角は、当該文献の段落〔0004〕に記載のように設定され、溝付すべり軸受1と被支持体との間の凝着の防止が図られている。
【0003】
また、特許文献2の図1には、ブッシュとしての軸受側摺動部材11が、その内周面に螺旋状溝12を備える構成が開示されている。このような螺旋状溝12を備えることで、被支持体が回転した際に螺旋状溝12内を流れる潤滑液としての水に対してポンプ作用が働き、軸受内を通過する水の量を増やすことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−303854号公報(段落0004、図1から図3等)
【特許文献2】実開昭62―131116号公報(図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブッシュの内周面と被支持体の外周面との間には所定のオイルクリアランスが設けられているため、ブッシュの軸心と被支持体の軸心とは、互いに偏心した状態となり得る。そして、ブッシュと被支持体との間の偏心の程度によっては、ブッシュの軸方向における一方側の端部と被支持体とが当接した状態でブッシュと被支持体とが互いに相対回転する(以下、単に「片当たり」という。)おそれがある。このような片当たりが発生している状態では、ブッシュと被支持体とが当接している部分には潤滑液が十分に供給されないため、当該部分の温度が上昇し、偏磨耗や焼き付きが発生するおそれがある。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2には、このような片当たりに言及した記載はなく、当然ながら、片当たりを抑制するための手段について何ら示されていない。なお、上記特許文献1には、溝付すべり軸受1と被支持体との間の凝着の防止を図る技術が開示されているが、この技術は、当該文献の段落〔0003〕に記載のように、被支持体の外周面が所定の頻度以上で溝2を通過するように構成することで凝着を防止するものであり、片当たりを抑制することを目的とするものではない。
【0007】
そこで、片当たりを抑制することが可能なブッシュの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュの特徴構成は、前記本体部は、前記内周面に形成された溝部を備え、前記溝部は、潤滑液の供給を受ける被供給部と、前記被供給部から前記内周面の母線方向に対して斜めに延在する斜行部と、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流れを規制する規制部と、を備える点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、斜行部が内周面の母線方向に対して斜めに延在するため、斜行部の延在方向は、内周面と当該内周面により支持される被支持体との間の相対回転の方向(すなわち、周方向)の成分を有することになる。よって、内周面と被支持体とが互いに相対回転している際に、斜行部内の潤滑液を、当該斜行部の延在方向又は当該延在方向に対して逆方向に向けて流すことが容易な構成となっている。従って、当該相対回転の方向を、斜行部内の潤滑液の流れ方向が当該斜行部の延在方向と一致するような方向とすることで、被供給部から斜行部に供給された潤滑液を、所定の流速を有する状態で規制部に供給することができる。
ここで、規制部では潤滑液の流れが規制される。よって、規制部においては、潤滑液が溝部から出て内周面と被支持体との間の隙間に入り込もうとする力、すなわち、内周面と被支持体との間における潤滑膜の形成能力が、他の部位に比べて高くなる。従って、本体部の軸方向中央位置に対して軸方向の規制部側の端部において、内周面と被支持体との間の隙間がたとえ片当たりが発生し得る程度に小さくなっていたとしても、当該隙間に安定した潤滑膜を形成することが容易な構成となっている。これにより、本体部の軸方向端部における内周面と被支持体との間の潤滑液を介さない接触を抑制することができ、結果、片当たりを抑制することができる。
なお、規制部においては潤滑液の流れが乱され乱流が生じるため、本体部及び被支持体と潤滑液との間の熱交換効率の向上も可能な構成となっている。
【0010】
ここで、前記斜行部は、前記内周面により支持される被支持体の前記内周面に対する相対回転によって前記溝部における潤滑液の流れを形成する機能を備え、前記規制部は、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流速を低下させることで潤滑液の液圧を上昇させる機能を備えていると好適である。
【0011】
この構成によれば、斜行部により溝部における潤滑液の流れが形成されるため、被供給部に供給された潤滑液を規制部に供給することが容易となる。また、規制部において潤滑液の液圧が上昇されるため、規制部における潤滑膜の形成能力をより確実に向上させることができる。
【0012】
また、前記斜行部と前記規制部との接続領域における前記斜行部の延在方向を斜行部延在方向とし、前記斜行部を前記接続領域から更に前記斜行部延在方向に沿って前記規制部側へ延長した仮想の溝部を仮想斜行部として、前記規制部は、前記本体部の軸方向端部側へ向うに従って、径方向内側から見て前記仮想斜行部と重複する範囲が連続的又は段階的に減少するように形成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、規制部の形状を、斜行部延在方向へ流れ続けようとする(すなわち、斜行部延在方向への慣性力を有する)潤滑液の流れを阻害するような形状とすることができる。よって、規制部において潤滑液の流れをより確実に規制することができる。
【0014】
また、前記規制部は、前記斜行部における前記本体部の軸方向端部側を閉塞してなる閉塞部を備えて構成されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、規制部の形状を比較的簡素なものとして規制部を設けることによる製造コストの増大を抑制しつつ、規制部において潤滑液の液圧をより確実に高めることができる。よって、片当たりをより確実に抑制することができる。
【0016】
また、前記溝部は、前記本体部の軸方向端部に設けられて潤滑液を排出する排出部を更に備え、前記規制部は、前記斜行部の延在方向に対して屈曲形成された溝でなる屈曲溝部、及び前記斜行部に対して溝断面積を小さく形成されてなる絞り部のいずれか一方又は双方を備えて構成されている構成としても好適である。
【0017】
この構成によれば、規制部の形状を比較的簡素なものとして規制部を設けることによる製造コストの増大を抑制しつつ、規制部において潤滑液の流れを規制することができる。また、潤滑液を排出する排出部が設けられているため、溝部からの潤滑液の排出性が高まり、ブッシュや被支持体の冷却効率を高めることができる。
【0018】
また、前記斜行部は、前記内周面上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされていると好適である。
【0019】
この構成によれば、潤滑液を斜行部において円滑に流すことができる。よって、規制部へ向かって斜行部を流れる潤滑液の流速の低下を抑制することができ、規制部における潤滑液の液圧上昇効果を高めることができる。
【0020】
また、前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されていると好適である。
【0021】
この構成によれば、内周面と被支持体との間の相対回転の方向を、一方側斜行部内の潤滑液の流れ方向が当該一方側斜行部の延在方向と一致するような方向とした場合に、他方側斜行部に対しても、潤滑液の流れ方向が当該他方側斜行部の延在方向と一致するようになる。よって、一方側斜行部に接続された規制部と、他方側斜行部に接続された規制部との双方で潤滑膜の形成能力を高めることができ、これらの規制部を本体部の軸方向中央位置に対して軸方向の異なる側に配設することで、軸方向の両側端部において片当たりを抑制することができる。
【0022】
また、前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向他方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている構成としても好適である。
【0023】
この構成によれば、被支持体に対してブッシュを軸方向で逆に配置した場合でも、内周面と被支持体との間の相対回転の方向が同一であれば、潤滑液の流れ方向が延在方向と一致する斜行部が、被支持体に対して軸方向の同じ側に位置する。すなわち、被支持体に対してブッシュを軸方向で逆に配置した場合でも、被支持体に対して軸方向の同じ側で片当たりを抑制することができる。
【0024】
また、前記一方側斜行部が、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部が、周方向一方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている構成において、軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部を通る周方向に沿った直線を軸として互いに対称な形状或いは当該対称な形状を周方向に所定量ずらした形状とされていると好適である。
【0025】
この構成によれば、溝部の形状が簡素となり、製造コストを低く抑えることができる。
【0026】
また、前記一方側斜行部が、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部が、周方向他方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている構成において、軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされていると好適である。
【0027】
この構成によれば、溝部の形状を、本体部の軸方向中央部に位置する点を対称の中心として点対称なものとすることができる。そして、このように点対称な形状に溝部を形成した場合、ブッシュを軸方向に反転させても溝部が同一の形状となるため、ブッシュの向きに対する管理の厳密さを低減することが可能であり、当該ブッシュを用いて製造する装置の製造コストを抑制することができる。
【0028】
また、前記一方側斜行部と前記他方側斜行部とが、前記本体部の軸方向中央位置で連結されていると好適である。
【0029】
この構成によれば、一方側斜行部と他方側斜行部とで被供給部を共通化することができるため、溝部の形状を簡素なものとして製造コストを抑制することができる。また、被供給部が共通化される一方側斜行部と他方側斜行部とが位置する周方向範囲を狭く抑えることができるため、本体部の内周面に配置する斜行部の個数に対する自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るすべり軸受機構の模式図である。
【図2】支持体と被支持体とが偏心した状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第一の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第二の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第三の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第四の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第五の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図8】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第六の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図9】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第七の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図10】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第八の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図11】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第九の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図12】本発明の第一の実施形態に係るブッシュの第十の具体例を示す展開図及びその一部拡大図である。
【図13】本発明の第二の実施形態に係るすべり軸受機構の一部模式図である。
【図14】本発明の第二の実施形態に係るブッシュを示す展開図及びその一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
1.第一の実施形態
本発明に係るブッシュの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るブッシュ10は、図1に示すように、支持体1の内周面に備えられた状態で、径方向内側R1に配置された被支持体2を回転可能に支持する。そして、本実施形態に係るブッシュ10は、図3等に示すように内周面12に溝部13を備え、当該溝部13が、被供給部20と、斜行部21と、規制部30と、を備える点に特徴を有する。これにより、ブッシュ10の片当たりを抑制することが可能となっている。以下、本実施形態に係るブッシュ10の構成について詳細に説明する。
【0032】
なお、以下の説明では、ブッシュ10の軸心を基準として、「軸方向L」、「周方向C」、「径方向R」を定義している。「軸方向一方側L1」及び「軸方向他方側L2」は、それぞれ、図1における左側及び右側を表す。「周方向一方側C1」及び「周方向他方側C2」は、それぞれ、軸方向他方側L2から軸方向一方側L1を見た場合における反時計回り方向側及び時計回り方向側を表す。
【0033】
また、以下の説明では、特に断らない限り、各方向(但し、軸方向L、周方向C、及び径方向Rを除く)は、向きを逆にしたものを含まない概念として用いている。すなわち、各方向は、大きさが任意のベクトルと同義である。
【0034】
そして、本実施形態では、溝部13は、斜行部21として一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとを備えるが、これらを特に区別する必要がない場合には、単に斜行部21という。同様に、後述する具体例の一部においては、溝部13は、排出部22として一方側排出部22aと他方側排出部22bとを備えるが、これらを特に区別する必要がない場合には、単に排出部22という。同様に、溝部13は、規制部30として一方側規制部30aと他方側規制部30bとを備えるが、これらを特に区別する必要がない場合には、単に規制部30という。
【0035】
1−1.すべり軸受機構の全体構成
まず、本実施形態に係るブッシュ10が備えられるすべり軸受機構の全体構成について図1を参照して説明する。本実施形態に係るすべり軸受機構は、ラジアル荷重を受けるすべり軸受機構とされ、内周面にブッシュ10が嵌合された支持体1と、外周面がブッシュ10とすべり接触する被支持体2と、を備えている。
【0036】
支持体1は、円筒状の内周面を有する回転軸として構成されている。被支持体2は、円筒状の外周面を有する回転軸として構成されている。すなわち、本例では、支持体1及び被支持体2の双方が回転可能に構成されている。支持体1及び被支持体2は、例えば、クラッチやブレーキ等の摩擦係合要素を含む変速装置(自動変速機等)を構成する回転軸とすることができる。なお、支持体1及び被支持体2のいずれか一方を非回転部材(固定部材)とすることもできる。そして、ブッシュ10は、圧入によるしまりばめにより支持体1の内周面に嵌合されており、支持体1に固定された状態で、径方向内側R1に配置された被支持体2を回転可能に支持する。すなわち、ブッシュ10は、被支持体2の外周面とすべり接触する。
【0037】
本実施形態では、被支持体2の内部には、潤滑液の流路として、軸方向Lに延びる軸方向流路51と、当該軸方向流路51と連通するとともに径方向Rに延びる径方向流路50とが形成されている。軸方向流路51及び径方向流路50を介して、ブッシュ10の内周面12に潤滑液が供給される。そして、支持体1や被支持体2の回転に伴いブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間には潤滑膜が形成され、当該潤滑膜により被支持体2がブッシュ10の内周面12から僅かに離間した位置に支持される。なお、潤滑液は、摩擦面の摩擦や磨耗を低減するための種々の液体を用いることができ、例えば油(潤滑油)とすることができる。
【0038】
1−2.ブッシュの構成
次にブッシュ10の構成について説明する。なお、ここでは、後に具体例として説明する各ブッシュ10に共通の構成を中心に図3等を参照して説明し、各具体例については第1−3節で詳細に説明する。ブッシュ10は、円筒状の本体部11を備え、本体部11の内周面12に潤滑液が供給されるように構成されている。本体部11は、例えば金属材料やセラミック材料等を用いて形成される。なお、本体部11の内周面12が、樹脂等からなる摺動部材により形成された構成とすることもできる。
【0039】
本体部11は、内周面12に形成された溝部13を備えている。すなわち、溝部13は、内周面12に対して径方向外側R2に引退して、言い換えれば、内周面12に対して径方向外側R2に窪んで形成されている。なお、内周面12の溝部13が形成されていない部分に、例えば球面状の窪み(ディンプル)が併せて形成されている構成とすることもできる。そして、溝部13は、被供給部20と、斜行部21と、規制部30と、を備えている。
【0040】
被供給部20は、潤滑液の供給を受ける部位である。本実施形態では、図1に示すように、内周面12に潤滑液を供給するための径方向流路50は、ブッシュ10の本体部11の軸方向中央位置L0(図3等参照)と同じ軸方向L位置に位置する。そのため、本実施形態では、径方向流路50から径方向外側R2に向けて供給される潤滑液を効率良く溝部13に導入すべく、被供給部20は、本体部11の軸方向中央位置L0に形成されている。また、本実施形態では、被供給部20は、斜行部21の端部に一体的に形成されている。
【0041】
斜行部21は、被供給部20から内周面12の母線方向に対して斜めに延在する部位である。言い換えれば、斜行部21は、被供給部20から内周面12の母線方向に対して交差する方向に沿って延在する部位である。なお、図3等に示す展開図においては、内周面12の母線方向は軸方向Lに一致する。そのため、斜行部21は、径方向内側R1から見て、軸方向Lに対して斜めに延在、言い換えれば、軸方向Lに対して交差する方向に沿って延在するように形成されている。このように、斜行部21を形成することで、被供給部20から延出する斜行部21の延在方向(被供給部20から規制部30へ向う方向)又は当該延在方向に対して逆方向(規制部30から被供給部20へ向う方向。以下、「反延在方向」という。)は、本体部11の内周面12と被支持体2との間の相対回転の方向(すなわち、周方向Cのいずれか一方側)の成分を有することになる。よって、内周面12と被支持体2とが互いに相対回転している状態では、斜行部21内の潤滑液は、当該斜行部21に沿って延在方向又は反延在方向に向かって円滑に流れることになる。すなわち、斜行部21は、内周面12により支持される被支持体2の内周面12に対する相対回転によって溝部13における潤滑液の流れを形成する流れ形成機能を備える。そして、このように溝部13において潤滑液の円滑な流れを形成することで、潤滑液は内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間を円滑に流通することができる。これにより、ブッシュ10や被支持体2の潤滑や冷却を良好に行うことが可能であるとともに、過度な磨耗や焼き付きを抑制することが可能となっている。
【0042】
なお、本実施形態では、斜行部21は、内周面12上で直線状に、言い換えれば、径方向内側R1から見て直線状に形成されている。また、斜行部21は幅が一定の溝とされており、斜行部21を含む溝部13の全体は、深さが一定の溝とされている。
【0043】
ところで、斜行部21内の潤滑液の流れ方向は、支持体1(内周面12)と被支持体2との間の相対回転の方向に応じて定まる。具体的には、被支持体2が内周面12に対して周方向一方側C1に相対回転している状態、言い換えれば、内周面12が被支持体2に対して周方向他方側C2に相対回転している状態(以下、「第一相対回転状態」という。)では、潤滑液は内周面12に対して周方向一方側C1に移動するため、斜行部21内の潤滑液は、当該斜行部21に沿って周方向一方側C1の成分を含む方向に流れる。また、被支持体2が内周面12に対して周方向他方側C2に相対回転している状態、言い換えれば、内周面12が被支持体2に対して周方向一方側C1に相対回転している状態(以下、「第二相対回転状態」という。)では、潤滑液は内周面12に対して周方向他方側C2に移動するため、斜行部21内の潤滑液は、当該斜行部21に沿って周方向他方側C2の成分を含む方向に流れる。なお、後に参照する具体例を示す図面(図3〜12)においては、第一相対回転状態における潤滑液の流れを概略的に矢印で示している。
【0044】
ところで、本実施形態では、規制部30は本体部11の軸方向L両側に設けられている。ここで、軸方向一方側L1に設けられた規制部30を一方側規制部30aとし、軸方向他方側L2に設けられた規制部30を他方側規制部30bとする。本例では、一方側規制部30aは、本体部11の軸方向中央位置L0(図3等参照)に対して軸方向一方側L1に設けられ、他方側規制部30bは、本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向他方側L2に設けられている。そして、一方側規制部30aに接続される斜行部21を一方側斜行部21aとし、他方側規制部30bに接続される斜行部21を他方側斜行部21bとする。すなわち、溝部13は、斜行部21として、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとを備えている。
【0045】
ここで、説明の簡素化のため、後に説明する第八及び第九の具体例(図10及び図11)における第二溝部13bは、当該具体例を説明するときにのみ考慮し、ここでは第八及び第九の具体例における第二溝部13bを除いて考える。本実施形態では、一方側斜行部21aは全て、周方向一方側C1に向うに従って軸方向一方側L1に向う形状に形成されている。一方、他方側斜行部21bは、周方向他方側C2に向うに従って軸方向他方側L2に向う形状に形成されている構成(図3から図9)と、周方向一方側C1に向うに従って軸方向他方側L2に向う形状に形成されている構成(図10から図12)との何れかが採用される。
【0046】
前者の構成では、一方側斜行部21aの延在方向が周方向一方側C1の成分を含み、他方側斜行部21bの延在方向が周方向他方側C2の成分を含むことになる。すなわち、径方向内側R1から見て、一方側斜行部21aの延在方向を向くベクトルと他方側斜行部21bの延在方向を向くベクトルとの内積は負となる。以下では、このような関係で一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが形成されている構成を「延在方向負内積構成」という。この延在方向負内積構成では、第一相対回転状態において、潤滑液が一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れ、第二相対回転状態において、潤滑液が他方側斜行部21bの内部を当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れる。
【0047】
また、後者の構成では、一方側斜行部21aの延在方向と他方側斜行部21bの延在方向との双方が、周方向一方側C1の成分を含むことになる。すなわち、径方向内側R1から見て、一方側斜行部21aの延在方向を向くベクトルと他方側斜行部21bの延在方向を向くベクトルとの内積は正となる。以下では、このような関係で一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが形成されている構成を「延在方向正内積構成」という。この延在方向正内積構成では、第一相対回転状態において、潤滑液は、一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れるとともに、他方側斜行部21bの内部を当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れる。
【0048】
また、本実施形態では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが本体部11の軸方向中央位置L0で連結されている構成(図3から図6、図9〜図12)と、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが連結されていない構成(図7、図8)との何れかが採用される。以下では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが本体部11の軸方向中央位置L0で連結されている構成を「斜行部連結構成」といい、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが本体部11の軸方向中央位置L0で連結されていない構成を「斜行部非連結構成」という。なお、斜行部連結構成では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとで被供給部20を共通化することができる。
【0049】
ところで、図1に示すように、ブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間には、所定のオイルクリアランスが設けられている。そのため、ブッシュ10の軸心と被支持体2の軸心とは、互いに偏心した状態となり得る。例えば、支持体1や被支持体2が、駆動力源として内燃機関と回転電機とを備えるハイブリッド車両や、車両の停止中や減速中等に駆動力源としての内燃機関を停止させるアイドリングストップ車両等が備える変速装置を構成する回転軸である場合等には、支持体1や被支持体2が軸心を水平方向或いは水平方向に近い状態で配設され、回転を停止している状態において重力によって下方へ移動し或いは撓むことがある。特に、当該変速装置が備えるケース内に、ケース内の空間を軸方向Lに区画する壁部(中間壁)が設けられていない場合や当該壁部の個数が少ない場合には、支持体1や被支持体2或いはこれらの軸を支持する回転部材を、ケースに対して支持する軸受等の個数が少なくなり、上記の下方への移動や撓みの程度が大きくなり得る。そして、支持体1と被支持体2との間の偏心の程度によっては、本体部11の軸方向Lにおけるいずれか一方側の端部と被支持体2とが潤滑膜を介さずに当接した状態で、ブッシュ10と被支持体2とが互いに相対回転する状態、すなわち、片当たり状態が発生するおそれがある。
【0050】
なお、ブッシュ10(本体部11)の軸方向一方側L1端部と軸方向他方側L2端部との双方で片当たりが発生し得るが、支持体1や被支持体2の配置構成や使用状態等に応じて、軸方向一方側L1の端部において内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が片当たりを招来し得る程度に短くなり得るか否かや、軸方向他方側L2の端部において内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が片当たりを招来し得る程度に短くなり得るか否かを予め少なくともある程度予想することが可能である。ここでは、第一相対回転状態において、本体部11の軸方向一方側L1の端部で、図2に示すように内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が片当たりを招来し得る程度に短くなる場合を想定する。そして、このように内周面12と被支持体2の外周面との間の離間距離が短くなった場合、内周面12と被支持体2の外周面との間に安定した潤滑膜が形成されていなければ片当たり状態となる。
【0051】
この片当たりの問題に対処すべく、本発明では、溝部13が、被供給部20及び斜行部21に加え、規制部30を備える構成を採用している。規制部30は、斜行部21に対して被供給部20とは反対側に設けられる。従って、支持体1(ブッシュ10)と被支持体2との間の相対回転の方向を、斜行部21内の潤滑液の流れ方向が当該斜行部21の延在方向と一致するような方向とすれば、被供給部20から斜行部21に供給された潤滑液は、所定の流速を有する状態で規制部30に供給される。
【0052】
規制部30は、斜行部21から流れてくる潤滑液の流れを規制する部位である。よって、このような潤滑液の流れを規制する規制部30を備えることで、規制部30においては潤滑液の流れが規制される。すなわち、規制部30においては、潤滑液が受ける抵抗が大きくなることで潤滑液の流速が低下し、当該流速の低下に伴い液圧が上昇する。よって、規制部30においては、潤滑液が溝部13から出て内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間に入り込もうとする力、すなわち、内周面12と被支持体2との間における潤滑膜の形成能力が、他の部位に比べて高くなる。このように、規制部30は、斜行部21から流れてくる潤滑液の流速を低下させることで潤滑液の液圧を上昇させる液圧上昇機能を備えている。なお、上記のように、本実施形態では、斜行部21は、内周面12上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされているため、規制部30へ向かって斜行部21を流れる潤滑液の流速の低下は抑制されており、規制部30における潤滑液の液圧上昇効果の向上が図られている。
【0053】
従って、このような規制部30を、片当たりが起こり得る部位の近くに配置すれば、内周面12と被支持体2との間の隙間がたとえ片当たりが発生し得る程度に小さくなっていたとしても、当該隙間に安定した潤滑膜を形成することが可能となり、当該部位における片当たりを抑制することができる。また、規制部30においては潤滑液の流れが乱され乱流が生じるため、ブッシュ10及び被支持体2と潤滑液との間の熱交換効率の向上も図ることができる。
【0054】
上記のように、ここでは、第一相対回転状態において、本体部11の軸方向一方側L1の端部で片当たりが発生し得る場合を想定している。そして、上記のように第一相対回転状態では、延在方向負内積構成であるか延在方向正内積構成であるかによらず、潤滑液は一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れる。よって、一方側斜行部21aに連結される一方側規制部30aを少なくとも本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向一方側L1に配置すれば、軸方向一方側L1端部における片当たりを抑制することができる。
【0055】
本実施形態では、図3から図12に示すように、一方側規制部30aは、本体部11の軸方向中央位置L0と軸方向一方側L1端部との間におけるほぼ中央の位置に配置されている。なお、一方側規制部30aの軸方向L位置を、本体部11の軸方向一方側L1端部側に近づければ片当たりの抑制効果を向上させることが可能である。ここで、本体部11の軸方向一方側L1端部からの一方側規制部30aの軸方向L位置の距離をAとし、本体部11の軸方向中央位置L0から軸方向一方側L1端部までの距離をBとすると、一方側規制部30aの軸方向L位置を「A/B」で表すことができる。この「A/B」の値は任意に設定可能であり、例えば、「A/B」をnを1以上の整数として「1/n」に設定することができる。例えば、nを2、3、4とすることができる。また、「A/B」の値は、本体部11の軸方向L幅が広いほど小さな値を選択すると好適である。他方側規制部30bの軸方向L位置も同様に定めることができる。
【0056】
なお、一方側規制部30aの軸方向L位置は、例えば、一方側規制部30aと一方側斜行部21aとの接続領域90(図3等参照)の軸方向L位置とすることができる。なお本例では、一方側斜行部21aは内周面12上に直線状に形成されているとともに幅が一定に形成されているため、当該接続領域90は、溝部13の延在方向が一方側斜行部21aの延在方向に沿う直線から逸れ始める位置や、溝部13の幅が一方側斜行部21aの幅とは異なるものとなり始める位置とすることができる。
【0057】
本実施形態では、規制部30は、斜行部21の延在方向に対して屈曲形成された溝でなる屈曲溝部31、斜行部21に対して溝断面積を小さく形成されてなる絞り部32、及び斜行部21における本体部11の軸方向L端部側を閉塞してなる閉塞部33、のいずれか又はこれらの組み合わせにより構成されている。なお、本実施形態では、絞り部32は、溝幅を減少させることで溝断面積を小さくする構成となっている。このように規制部30を構成することで、規制部30の形状を比較的簡素なものとしつつ、規制部30において潤滑液の流れを規制することが可能となっている。
【0058】
規制部30が屈曲溝部31により構成されている具体例としては、図3、図4、図7、図8、図10、図11に示す例が該当する。また、規制部30が屈曲溝部31及び絞り部32により構成されている具体例としては、図5に示す例が該当する。また、規制部30が屈曲溝部31及び閉塞部33により構成されている具体例としては、図6に示す例が該当する。また、規制部30が絞り部32により構成されている具体例としては、図9に示す例が該当する。そして、規制部30が閉塞部33により構成されている具体例としては、図12に示す例が該当する。なお、規制部30が閉塞部33を備えている構成では、規制部30において潤滑液の液圧をより確実に高めることができ、片当たりをより確実に抑制することができる。
【0059】
なお、規制部30が閉塞部33を備えない構成において、溝部13は、本体部11の軸方向L端部に設けられて潤滑液を溝部13から排出する排出部22を備える。排出部22は、本体部11の軸方向L端縁において軸方向L外側に開口するように形成されるため、排出部22は、潤滑液を本体部11の軸方向L外側に排出する部位である。溝部13が排出部22を備える構成の具体例としては、図3〜図5、図7〜図11に示す例が該当する。なお、排出部22は、斜行部21に対して被供給部20とは反対側に設けられる。言い換えれば、排出部22は、被供給部20から延出する斜行部21の延在方向側の端部に設けられている。よって、支持体1(内周面12)と被支持体2との間の相対回転の方向を、斜行部21内の潤滑液の流れ方向が当該斜行部21の延在方向と一致するような方向とした場合には、被供給部20から斜行部21に供給された潤滑液は、斜行部21を延在方向に向かって流れた後、規制部30を介して、排出部22から溝部13の外側(本体部11の軸方向L外側)に排出される。なお、排出部22が本体部11の軸方向L両側の端部に設けられる構成においては、本体部11の軸方向一方側L1の端部に設けられた排出部22を一方側排出部22aとし、本体部11の軸方向他方側L2の端部に設けられた排出部22を他方側排出部22bとする。
【0060】
また、本実施形態では、一方側斜行部21aから一方側規制部30aに至る溝部13と、他方側斜行部21bから他方側規制部30bに至る溝部13とが、本体部11の軸方向中央部L0に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされている構成(例えば、図3〜図9に示す例)を採用することができる。以下では、このような対称関係で溝部13が形成されている構成を「点対称構成」という。このような構成では、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30bを含む溝部13の全体としての形状を、本体部11の軸方向中央部L0に位置する点を対称の中心として点対称なものとすることができる。そして、溝部13の全体としての形状を点対称なものとすれば、ブッシュ10を軸方向Lに反転させても溝部13が同一の形状となるため、ブッシュ10の向きに対する管理の厳密さを低減することが可能であり、当該ブッシュ10を用いて製造する装置の製造コストを抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、一方側斜行部21aから一方側規制部30aに至る溝部13と、他方側斜行部21bから他方側規制部30bに至る溝部13とが、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を軸として互いに対称な形状或いは当該対称な形状を周方向Cに所定量ずらした形状とされている構成(例えば、図10〜図12に示す例)を採用することもできる。以下では、このような線対称或いは線対称に類似する関係で溝部13が形成されている構成を「線対称構成」という。このような構成では、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30bを含む溝部13の全体としての形状を、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとしたり、或いは、一方側斜行部21a及び一方側規制部30aを、他方側斜行部21b及び他方側規制部30bに対して周方向Cに相対移動させることで、溝部13の全体としての形状を、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとしたりすることができる。
【0062】
1−3.具体例の説明
以下、上記のような構成を備えるブッシュ10の溝部13の具体例について、図3から図12を参照して順に説明する。なお、以下のそれぞれの具体例で開示される特徴構成は、その具体例でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の具体例で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0063】
1−3−1.第一の具体例
まず、第一の具体例について、図3を参照して説明する。本例では、溝部13は、延在方向負内積構成で形成されている。具体的には、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとは、径方向内側R1から見て、延在方向が互いに逆向きに配置されている。すなわち、図3(b)に示すように、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角とは、互いに等しくθとされている。また、溝部13は、軸方向L両側のそれぞれにおいて規制部30及び排出部22を備え、規制部30や排出部22は、軸方向L両側で同様に形成されている。そして、溝部13は、溝幅tが延在方向に沿って一様に形成されている。このように溝部13が形成されているため、本例では、溝部13は点対称構成となっている。なお、本例では、斜行部連結構成が採用されており、溝部13の形状は、被供給部20を対称の中心として点対称なものとなっている。すなわち、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30b、更には一方側排出部22a及び他方側排出部22bを含む溝部13の全体としての形状が、被供給部20を対称の中心として点対称なものとなっている。
【0064】
本例では、ブッシュ10の内周面12には、4つの溝部13が周方向Cに沿って等間隔で配置されている。なお、4つの溝部13は、互いに周方向Cに重ならないように配置されている。このように複数(本例では4つ)の溝部13を互いに周方向Cに重ねることなく配置することで、溝部13を形成することによって内周面12と被支持体2との間に安定した潤滑膜が形成されにくくなることが抑制されている。なお、内周面12に形成する溝部13の個数は適宜変更であり、また、異なる溝部13を互いに周方向Cに重なるように配置することも可能である。
【0065】
そして、上記のように、第一相対回転状態では、潤滑液は一方側斜行部21aを当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れ(図3(b)の破線矢印参照)、一方側規制部30aにおいて潤滑液の液圧が高められる。これにより、軸方向一方側L1端部における片当たりを抑制することが可能となっている。また、本体部11の軸方向一方側L1の端縁に開口するように第一排出部22aが形成されているため、溝部13から潤滑液が排出されやすい構成となっており、ブッシュ10や被支持体2の冷却を効率良く行うことが可能となっている。
【0066】
なお、第二相対回転状態では、潤滑液は他方側斜行部21bを当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れ、他方側規制部30bにおいて潤滑液の液圧が高められる。よって、仮に、第二相対回転状態において、軸方向他方側L2端部で片当たりが発生し得るような場合であっても、他方側規制部30bにおける潤滑液の液圧の上昇により、当該片当たりを抑制することができる。また、本例では点対称構成が採用され、溝部13の全体としての形状が点対称なものとされているため、上記のように、ブッシュ10を軸方向Lに反転させても溝部13は同一の形状となる。よって、仮にブッシュ10を軸方向Lに反転させて支持体1に配置したとしても、支持体1と被支持体2との間の相対回転の方向が同一であれば、被支持体2に対して軸方向Lの同じ側において片当たりが抑制される。
【0067】
本例では、規制部30は屈曲溝部31により構成されている。具体的には、屈曲溝部31は、屈曲後の溝部13の延在方向が、斜行部21の延在方向に対して直角より少し大きい角度で交差するように形成されている。なお、屈曲溝部31の屈曲角は任意に設定できるが、屈曲溝部31の屈曲角が大きい程、潤滑液の液圧上昇効果が高まり、屈曲溝部31の屈曲角が小さい程、溝部13からの潤滑液の排出性が高まり冷却効果が高まる。よって、屈曲溝部31の屈曲角は、これらの液圧上昇効果及び冷却効果を考慮して定めることができる。そして、このような屈曲溝部31を形成することで、当該屈曲溝部31を通過する潤滑液に対してその流れ方向を変えさせることができる。すなわち、斜行部21の延在方向へ流れ続けようとする(すなわち、斜行部21の延在方向への慣性力を有する)潤滑液の流れを阻害することができ、結果、潤滑液の液圧を高めることができる。
【0068】
ここで、屈曲溝部31が構成する規制部30の形状について、図3(b)に基づいて補足説明する。図3(b)には、斜行部21と規制部30との接続領域90における斜行部21の延在方向を斜行部延在方向とし、斜行部21を接続領域90から更に斜行部延在方向に沿って規制部30側へ延長した仮想の溝部である仮想斜行部100を示している。そして、規制部30の形状は、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的に減少するものとなっている。具体的には、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、仮想斜行部100と重複する範囲が一方側から漸次減少するように、規制部30が形成されている。このような形状とすることで、規制部30は、斜行部21の延在方向へ流れ続けようとする潤滑液の流れを確実に阻害することが可能となっている。
【0069】
なお、斜行部21の配置角度を決定する上記の角度θは、例えば、PV値(面圧と摺動速度との積により定まる指標)が高くなる場合においても潤滑液が円滑に流れるような角度として設定することができる。また、角度θが0度になるように斜行部21を形成することも可能である。
【0070】
1−3−2.第二の具体例
次に、第二の具体例について、図4を参照して説明する。本例では、ブッシュ10の内周面12に配置される溝部13の個数が、上記第一の具体例とは異なる。具体的には、本例では、ブッシュ10の内周面12には、2つの溝部13が形成されている。そして、図4を図3と比較すれば明らかなように、本例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ(他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角θ)が、上記第一の具体例に比べて小さくなっている。すなわち、斜行部21の延在方向と内周面12の母線方向との交差角が、上記第一の具体例に比べて大きくなっている。これにより、支持体1と被支持体2との間の相対回転の速度が同一であれば、上記第一の具体例に比べて斜行部21内を流れる潤滑液の流速を高くすることができる。よって、規制部30における液圧上昇効果を向上させることができ、片当たりをより確実に抑制することが可能となる。また、本例では、被供給部20における溝部13の周方向幅Cが上記第一の具体例に比べて広くなるため、より多くの潤滑液を溝部13に導入することも可能となっている。
【0071】
その他の構成は、基本的に上記第一の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第一の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
1−3−3.第三の具体例
次に、第三の具体例について、図5を参照して説明する。本例では、溝部13が備える規制部30が、屈曲溝部31に加えて絞り部32によっても形成されている点で、上記第二の具体例と相違している。図5(b)に示すように、斜行部21から排出部22へ向って、屈曲溝部31と絞り部32との順に配置されている。絞り部32は、本例では、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、連続的に溝幅を変化させながら連結している。なお、t2は、例えばt1の半分の値とすることができる。このような絞り部32を備えることで、当該絞り部32を通過する潤滑液に対して流れ抵抗を与えることができる。すなわち、潤滑液の流れを阻害することができ、潤滑液の液圧を高めることができる。
【0073】
このように、本例では、屈曲溝部31と絞り部32との双方が協働で潤滑液の液圧上昇効果を発揮するため、片当たりをより確実に抑制することができる。なお、本例においても、本体部11の軸方向L端縁に開口するように排出部22が形成されているため、潤滑液の排出性を確保しつつ、潤滑液の液圧上昇効果を高めることが可能となっている。
【0074】
その他の構成は、基本的に上記第二の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第二の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
1−3−4.第四の具体例
次に、第四の具体例について、図6を参照して説明する。本例では、溝部13が備える規制部30が、屈曲溝部31に加えて閉塞部33によっても形成されている点、及び排出部22を備えない点で、上記第二の具体例と相違している。図6(b)に示すように、斜行部21から被供給部20とは反対側へ向って、屈曲溝部31と閉塞部33との順に配置されている。閉塞部33は、本例では、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、連続的に溝幅を減少させて閉塞している。このような閉塞部33を備えることで、当該閉塞部33に到達した潤滑液に対して大きな流れ抵抗を与えることができる。すなわち、潤滑液の流れをより確実に阻害することができ、潤滑液の液圧をより確実に高めることができる。なお、本例のように規制部30が閉塞部33を備える構成では、ブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間の大きさ等によっては、斜行部21から供給されて閉塞部33に到達した潤滑液が当該隙間を介して溝部13の外側に排出される場合がある。このような場合には、規制部30を構成する閉塞部33が、ブッシュ10の内周面12と被支持体2の外周面との間の隙間と協働で、溝部13から潤滑液を排出するという意味での排出部として機能しているといえる。
【0076】
その他の構成は、基本的に上記第二の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第二の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
なお、ここでは、規制部30が屈曲溝部31及び閉塞部33により構成された場合を例として示したが、規制部30を閉塞部33のみにより構成することもできる。
【0078】
1−3−5.第五の具体例
次に、第五の具体例について、図7を参照して説明する。本例では、溝部13が点対称構成となっているものの、斜行部非連結構成が採用されているという点で上記第二の具体例と相違している。溝部13は、一方側斜行部21aを備える第一溝部13aと、他方側斜行部21bを備える第二溝部13bとを備えている。そして、第一溝部13aと第二溝部13bとは、内周面12の径方向内側R1端面により互いに分離されている。そのため、一方側斜行部21aに潤滑液を供給する被供給部20と、他方側斜行部21bに潤滑液を供給する被供給部20とは、互いに独立に形成されている。そして、本例では、溝部13は、本体部11の軸方向中央位置L0を通る周方向Cに沿った線分における、上記2つの被供給部20から互いに等しい距離だけ離れた位置(図7において符号Xで示す点)を対称の中心とする点対称形状となっている。
【0079】
そして、本例では、上記第二の具体例とは異なり、溝部13の個数、すなわち、一方側斜行部21a及び他方側斜行部21bの対の個数が少なく(本例では1つ)なっているため、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ(他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角θ)を、上記第二の具体例に比べて更に小さくすることができ、規制部30における液圧上昇効果並びに溝部13への潤滑液の導入量の更なる向上が図られている。
【0080】
その他の構成は、基本的に上記第二の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第二の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
なお、ここでは、規制部30が屈曲溝部31により構成された場合を例として示したが、上記第三の具体例(図5)のように規制部30を屈曲溝部31及び絞り部32により構成したり、上記第四の具体例(図6)のように規制部30を屈曲溝部31及び閉塞部33により構成したりすることもできる。また、後述する第七の具体例(図9)のように、規制部30を絞り部32のみにより構成したり、後述する第十の具体例(図12)のように、規制部30を閉塞部33のみにより構成したりすることもできる。また、規制部30を、絞り部32と閉塞部33とにより構成することもできる。なお、規制部30が閉塞部33を備えて構成される場合には、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0082】
1−3−6.第六の具体例
次に、第六の具体例について、図8を参照して説明する。本例では、屈曲溝部31及び排出部22の構成が、上記第五の具体例とは相違している。具体的には、図8(b)に示すように、屈曲溝部31は、当該部位において溝幅が広くなるような形状に形成されている。より具体的には、屈曲溝部31は、屈曲後の溝部13の延在方向が、斜行部21の延在方向に対して180度に近い角度で交差するように形成されているとともに、屈曲の中心点側の溝側壁を取り除いて2つの溝部を融合したような形状となっている。このような屈曲溝部31の形状に合わせ、本例では排出部22の延在方向は軸方向Lに沿う方向となっている。このような構成とすることで、図8(b)より明らかなように、屈曲溝部31により潤滑液を一時的に溜めることができる液溜りが形成される。よって、潤滑液は、屈曲溝部31が構成する規制部30に保持されやすくなり、当該部位における液圧上昇効果を高めることができる。
【0083】
その他の構成は、基本的に上記第五の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第五の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0084】
1−3−7.第七の具体例
次に、第七の具体例について、図9を参照して説明する。本例では、規制部30が絞り部32のみにより構成されている点で、上記第三の具体例と相違する。具体的には、図9(b)に示すように、絞り部32が、斜行部21と排出部22との間に配置されている。絞り部32は、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、連続的に溝幅を変化させながら連結している。
【0085】
ここで、絞り部32が構成する規制部30の形状について、図9(b)に基づいて補足説明する。図9(b)には、図3(b)と同様、斜行部21を接続領域90から更に斜行部延在方向に沿って規制部30側へ延長した仮想の溝部である仮想斜行部100を示している。そして、本例でも、規制部30の形状は、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的に減少するものとなっているが、本例では、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、仮想斜行部100と重複する範囲が一方側ではなく両側から漸次減少するように、規制部30が形成されている。
【0086】
また、本例では、ブッシュ10の内周面12には、3つの溝部13が周方向Cに沿って等間隔で配置されている。その他の構成は、基本的に上記第三の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第三の具体例と同様の作用効果を奏することができる。なお、ここでは、規制部30が絞り部32により構成された場合を例として示したが、規制部30を絞り部32及び閉塞部33により構成することもできる。このような構成では、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0087】
1−3−8.第八の具体例
次に、第八の具体例について、図10を参照して説明する。本例では、溝部13が、延在方向負内積構成ではなく、延在方向正内積構成で形成されている点で、上記第一の具体例と相違する。なお、図10(a)に示すように、本例では、溝部13は、第一溝部13aと、第二溝部13bとを備え、これらの溝部13の形状は、径方向内側R1から見て、軸方向Lに平行な線分を対称軸として互いに線対称な関係となっている。なお、第一相対回転状態においては、第一溝部13aが片当たりの抑制効果を発揮するため、まず第一溝部13aの構成について説明する。
【0088】
第一溝部13aは、図10(b)に示すように、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが、径方向内側R1から見て、延在方向が周方向Cの同じ側(周方向一方側C1)を向くように配置されている。本例では、更に、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角とは、互いに等しくθとされている。また、第一溝部13aは、軸方向L両側のそれぞれにおいて規制部30及び排出部22を備え、規制部30や排出部22は、軸方向L両側で同様に形成されている。そして、第一溝部13aは、溝幅tが延在方向に沿って一様に形成されている。このように第一溝部13aが形成されているため、本例では、第一溝部13aは線対称構成となっている。なお、本例では、斜行部連結構成が採用され、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが直接連結されているため、一方側斜行部21a、他方側斜行部21b、一方側規制部30a、及び他方側規制部30b、更には一方側排出部22a及び他方側排出部22bを含む第一溝部13aの全体としての形状が、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとなっている。
【0089】
本例では、第一溝部13aが延在方向正内積構成で構成されているため、図10(b)に示すように、第一相対回転状態において、潤滑液は、一方側斜行部21aの内部を当該一方側斜行部21aの延在方向に向かって流れるとともに、他方側斜行部21bの内部を当該他方側斜行部21bの延在方向に向かって流れる。よって、本例では、軸方向一方側L1端部だけでなく軸方向他方側L2端部においても片当たりを抑制することができる。
【0090】
第二溝部13bは、上記のように、第一溝部13aを軸方向Lに平行な線分を対称軸として対称移動したものに対応する。よって、第二溝部13bの構成は、第一溝部13aの構成を周方向Cに反転させたものに対応する。従って、第二溝部13bは、第二相対回転状態において片当たりの抑制効果を発揮する。具体的には、第二相対回転状態において、軸方向Lの両側で片当たりが抑制される。
【0091】
このように、本例では、第一相対回転状態において、軸方向Lの両側で片当たりが抑制されるとともに、第二相対回転状態においても、軸方向Lの両側で片当たりが抑制される。また、第一溝部13aと第二溝部13bとは、本体部11の軸方向中央位置L0に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされているため、本例においても、ブッシュ10を軸方向Lに反転させても溝部13は同一の形状となる。
【0092】
また、本例では、上記第一の具体例と同様、本体部11の内周面12には4つの溝部13が形成されているが、上記第一の具体例とは異なり、2種類の溝部(第一溝部13a及び第二溝部13b)が形成されている。具体的には、2つの第一溝部13aと2つの第二溝部13bとが、本体部11の内周面12に形成されている。
【0093】
その他の構成は、基本的に上記第一の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第一の具体例と同様の作用効果を奏することができる。なお、ここでは、溝部13が斜行部連結構成で形成されている場合を例として説明したが、上記第五の具体例(図7)のように、溝部13を斜行部非連結構成で構成することもできる。また、ここでは、規制部30が屈曲溝部31により構成されている場合を例として示したが、規制部30を屈曲溝部31に加えて絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方を用いて構成することもできる。また、規制部30を、絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方により構成することもできる。なお、規制部30が閉塞部33を備えて構成される場合には、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0094】
1−3−9.第九の具体例
次に、第九の具体例について、図11を参照して説明する。本例では、ブッシュ10の内周面12に配置される溝部13の個数が、上記第八の具体例とは異なる。具体的には、本例では、ブッシュ10の内周面12には、2つの溝部13、言い換えれば、1つの第一溝部13aと1つの第二溝部13bとが形成されている。そして、第一溝部13aについてみると、図11を図10と比較すれば明らかなように、本例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ(他方側斜行部21bの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角θ)が、上記第八の具体例に比べて小さくなっている。すなわち、斜行部21の延在方向と内周面12の母線方向との交差角が、上記第八の具体例に比べて大きくなっている。第二溝部13bについても、周方向一方側C1と周方向他方側C2とが逆になるだけで同様である。これにより、支持体1と被支持体2との間の相対回転の速度が同一であれば、上記第八の具体例に比べて斜行部21内を流れる潤滑液の流速を高くすることができる。よって、規制部30における液圧上昇効果を向上させることができ、片当たりをより確実に抑制することが可能となる。また、本例では、被供給部20における溝部13の周方向幅Cが上記第八の具体例に比べて広くなるため、より多くの潤滑液を溝部13に導入することも可能である。
【0095】
その他の構成は、基本的に上記第八の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第八の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0096】
1−3−10.第十の具体例
次に、第十の具体例について、図12を参照して説明する。本例では、一方側斜行部21aと他方側斜行部21bとが後述する基幹部23を介して連結されている点と、規制部30が屈曲溝部31ではなく閉塞部33により構成されており排出部22を備えないという点で、上記第八の具体例(図10)とは相違する。本例では、線対称構成とはなっているものの、上記第八の具体例とは異なり、一方側斜行部21a及び一方側規制部30aを、他方側斜行部21b及び他方側規制部30bに対して周方向Cに相対移動させることで、溝部13の全体としての形状が、本体部11の軸方向中央部L0を通る周方向Cに沿った直線を対称軸とする線対称なものとなる。
【0097】
具体的には、本体部11の内周面には、3つの一方側斜行部21aと、3つの他方側斜行部21bとが形成されている。そして、これらの一方側斜行部21a及び他方側斜行部21bは、周方向Cに沿って所定の間隔毎に交互に配置されている。そのため、各一方側斜行部21aに潤滑液を供給する被供給部20と、各他方側斜行部21bに潤滑液を供給する被供給部20とは、周方向Cに互いに異なる位置にある。そして、これらの被供給部20を連通するように、本体部11の軸方向中央位置L0には、周方向Cに沿って延びる溝である基幹部23が形成されている。すなわち、本例では、溝部13は、被供給部20、斜行部21、及び規制部30に加えて、基幹部23を備えている。このような基幹部23を備えることで、径方向流路50から供給された潤滑液を効率良く溝部13に導入することが可能となっている。なお、本例では、基幹部23の溝幅tと、斜行部21の溝幅tとは、互いに等しく設定されている。
【0098】
また、本例では、規制部30が閉塞部33により形成されている。ここで、閉塞部33が構成する規制部30の形状について、図12(b)に基づいて補足説明する。図12(b)には、図3(b)と同様、斜行部21を接続領域90から更に斜行部延在方向に沿って規制部30側へ延長した仮想の溝部である仮想斜行部100を示している。そして、本例でも、規制部30の形状は、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的に減少するものとなっているが、本例では、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、仮想斜行部100と重複する範囲が一方側ではなく両側から漸次減少するように、規制部30が形成されている。
【0099】
その他の構成は、基本的に上記第八の具体例と同様である。よって、本例の構成においても、上記第八の具体例と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
2.第二の実施形態
次に、本発明に係るブッシュの第二の実施形態について説明する。本実施形態に係るブッシュ10は、ブッシュ10の内周面12に対して軸方向L外側から潤滑液が供給される点で、上記第一の実施形態とは異なる。以下、本実施形態に係るブッシュ10の構成について上記第一の実施形態との相違点を中心に説明する。なお、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0101】
図13に示すように、本実施形態では、被支持体2は、ブッシュ10の内周面12に対して径方向内側から潤滑液を供給するための径方向流路50を備えておらず、ブッシュ10に対して軸方向他方側L2から、被支持体2の外周面に沿って潤滑液が供給される。このような潤滑液の供給構成に合わせて、ブッシュ10の内周面12に形成される溝部13の形状は、上記第一の実施形態とは異なっている。具体的には、図14に示すように、本実施形態では、溝部13は、被供給部20を本体部11の軸方向他方側L2端部に備え、排出部22を本体部11の軸方向一方側L1の端部に備える。また、溝部13は、規制部30を本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向一方側L1に備えている。これにより、軸方向他方側L2から供給された潤滑液を効率良く被供給部20を介して斜行部21に導入することが可能であり、本体部11の軸方向中央位置L0に対して軸方向一方側L1に配設された規制部30において、潤滑液の液圧を上昇させることが可能となっている。すなわち、本実施形態においても、第一相対回転状態において、軸方向一方側L1における片当たりを抑制することが可能である。
【0102】
本例では、図14に示すように、被供給部20は、本体部11の軸方向他方側L2の端縁において軸方向L外側に開口するように形成されている。また、規制部30は、屈曲溝部31により構成されている。なお、被供給部20の軸方向他方側L2の端部が、本体部11の軸方向他方側L2の端縁に対して軸方向一方側L1に位置するように被供給部20を形成し、本体部の軸方向他方側L2の端縁において被供給部20の開口部が形成されない構成とすることもできる。また、規制部30は、上記第一の実施形態と同様、屈曲溝部31に加えて絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方を用いて構成することもでき、また、規制部30を、絞り部32及び閉塞部33の一方又は双方により構成することもできる。なお、規制部30が閉塞部33を備えて構成される場合には、溝部13は排出部22を備えずに構成される。
【0103】
3.その他の実施形態
(1)上記第一及び第二の実施形態では、斜行部21が、内周面12上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、規制部30において潤滑液の液圧を適切に上昇させることができるという条件のもとで斜行部21の形状は適宜変更可能である。例えば、斜行部21の幅を延在方向に沿って一様ではない構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。例えば、斜行部21の幅が、延在方向に向かって漸次狭くなるような構成や、延在方向に向かって漸次広くなるような構成、或いは、延在方向に向かって増加と減少とを繰り返すような構成とすることができる。同様に、斜行部21の深さが延在方向に沿って一様ではない構成とすることもできる。また、斜行部21を、蛇行状に形成したり、円弧状に形成したりすることもできる。
【0104】
(2)上記第一の実施形態における第一から第七の具体例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向他方側C2を向く方向とが成す角とが、互いに等しく設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、これらの角度を互いに異なる値に設定することも可能である。
【0105】
(3)上記第一の実施形態における第八から第十の具体例では、一方側斜行部21aの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角と、他方側斜行部21bの延在方向と周方向一方側C1を向く方向とが成す角とが、互いに等しく設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、これらの角度を互いに異なる値に設定することも可能である。
【0106】
(4)上記第一の実施形態では、一方側規制部30aと他方側規制部30bとが同様の構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、一方側規制部30aと他方側規制部30bとを互いに異なる構成とすることもできる。例えば、一方側規制部30aを屈曲溝部31とし、他方側規制部30bを絞り部32とすることができる。
【0107】
(5)上記第一の実施形態における第三及び第七の具体例では、絞り部32が、溝幅を減少させることで、斜行部21に対して溝断面積を小さくする場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、溝幅に加えて深さを減少させることで溝断面積を小さくする構成や、深さのみを減少させることで溝断面積を小さくする構成とすることもできる。
【0108】
(6)上記第一の実施形態における第三及び第七の具体例では、絞り部32が、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、連続的に溝幅を変化させながら連結している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、絞り部32を、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、不連続的(段階的)に溝幅を変化させながら連結するように構成することもできる。また、絞り部32を、斜行部21側に位置する溝幅がt1の溝と、排出部22側に位置する溝幅がt2の溝とを、所定の位置で不連続的に接続するように構成することもできる。これらの場合、絞り部32は、溝部13の延在方向に直交する面を有して形成される。
【0109】
(7)上記第一の実施形態における第四及び第十の具体例では、閉塞部33が、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、連続的に溝幅を減少させて閉塞している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、閉塞部33を、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、不連続的(段階的)に溝幅を減少させて閉塞するように構成することもできる。また、閉塞部33を、斜行部21側に位置する溝幅がtの溝を、所定の位置で不連続的に閉塞するように形成することもできる。これらの場合、閉塞部33は、溝部13の延在方向に直交する面を有して形成される。
【0110】
(8)上記第一及び第二の実施形態では、規制部30が、屈曲溝部31、絞り部32、及び閉塞部33、のいずれか又はこれらの組み合わせにより構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。本発明に係る規制部30の形状は、例えば、本体部11の軸方向L端部側へ向うに従って、径方向内側R1から見て仮想斜行部100と重複する範囲が連続的又は段階的に減少するという条件を満たす任意のものを採用することができる。
【0111】
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0113】
2:被支持体
10:ブッシュ
11:本体部
12:内周面
13:溝部
20:被供給部
21:斜行部
21a:一方側斜行部
21b:他方側斜行部
22:排出部
30:規制部
30a:一方側規制部
30b:他方側規制部
31:屈曲溝部
32:絞り部
33:閉塞部
90:接続領域
100:仮想斜行部
L:軸方向
L1:軸方向一方側
L2:軸方向他方側
L0:軸方向中央位置
C:周方向
C1:周方向一方側
C2:周方向他方側
R:径方向
R1:径方向内側
R2:径方向外側
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュであって、
前記本体部は、前記内周面に形成された溝部を備え、
前記溝部は、潤滑液の供給を受ける被供給部と、前記被供給部から前記内周面の母線方向に対して斜めに延在する斜行部と、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流れを規制する規制部と、を備えるブッシュ。
【請求項2】
前記斜行部は、前記内周面により支持される被支持体の前記内周面に対する相対回転によって前記溝部における潤滑液の流れを形成する機能を備え、
前記規制部は、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流速を低下させることで潤滑液の液圧を上昇させる機能を備えている請求項1に記載のブッシュ。
【請求項3】
前記斜行部と前記規制部との接続領域における前記斜行部の延在方向を斜行部延在方向とし、前記斜行部を前記接続領域から更に前記斜行部延在方向に沿って前記規制部側へ延長した仮想の溝部を仮想斜行部として、
前記規制部は、前記本体部の軸方向端部側へ向うに従って、径方向内側から見て前記仮想斜行部と重複する範囲が連続的又は段階的に減少するように形成されている請求項1又は2に記載のブッシュ。
【請求項4】
前記規制部は、前記斜行部における前記本体部の軸方向端部側を閉塞してなる閉塞部を備えて構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項5】
前記溝部は、前記本体部の軸方向端部に設けられて潤滑液を排出する排出部を更に備え、
前記規制部は、前記斜行部の延在方向に対して屈曲形成された溝でなる屈曲溝部、及び前記斜行部に対して溝断面積を小さく形成されてなる絞り部のいずれか一方又は双方を備えて構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項6】
前記斜行部は、前記内周面上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされている請求項1から5のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項7】
前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、
前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項8】
前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、
前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向他方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項9】
軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、
前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部を通る周方向に沿った直線を軸として互いに対称な形状或いは当該対称な形状を周方向に所定量ずらした形状とされている請求項7に記載のブッシュ。
【請求項10】
軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、
前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされている請求項8に記載のブッシュ。
【請求項11】
前記一方側斜行部と前記他方側斜行部とが、前記本体部の軸方向中央位置で連結されている請求項7から10のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項1】
円筒状の本体部を備え、内周面に潤滑液が供給されるブッシュであって、
前記本体部は、前記内周面に形成された溝部を備え、
前記溝部は、潤滑液の供給を受ける被供給部と、前記被供給部から前記内周面の母線方向に対して斜めに延在する斜行部と、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流れを規制する規制部と、を備えるブッシュ。
【請求項2】
前記斜行部は、前記内周面により支持される被支持体の前記内周面に対する相対回転によって前記溝部における潤滑液の流れを形成する機能を備え、
前記規制部は、前記斜行部から流れてくる潤滑液の流速を低下させることで潤滑液の液圧を上昇させる機能を備えている請求項1に記載のブッシュ。
【請求項3】
前記斜行部と前記規制部との接続領域における前記斜行部の延在方向を斜行部延在方向とし、前記斜行部を前記接続領域から更に前記斜行部延在方向に沿って前記規制部側へ延長した仮想の溝部を仮想斜行部として、
前記規制部は、前記本体部の軸方向端部側へ向うに従って、径方向内側から見て前記仮想斜行部と重複する範囲が連続的又は段階的に減少するように形成されている請求項1又は2に記載のブッシュ。
【請求項4】
前記規制部は、前記斜行部における前記本体部の軸方向端部側を閉塞してなる閉塞部を備えて構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項5】
前記溝部は、前記本体部の軸方向端部に設けられて潤滑液を排出する排出部を更に備え、
前記規制部は、前記斜行部の延在方向に対して屈曲形成された溝でなる屈曲溝部、及び前記斜行部に対して溝断面積を小さく形成されてなる絞り部のいずれか一方又は双方を備えて構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項6】
前記斜行部は、前記内周面上で直線状であって、幅及び深さが一定の溝とされている請求項1から5のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項7】
前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、
前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項8】
前記溝部は、前記斜行部として、軸方向一方側に設けられた前記規制部に接続される一方側斜行部と、軸方向他方側に設けられた前記規制部に接続される他方側斜行部と、を備え、
前記一方側斜行部は、周方向一方側に向うに従って軸方向一方側に向う形状に形成されるとともに、前記他方側斜行部は、周方向他方側に向うに従って軸方向他方側に向う形状に形成されている請求項1から6のいずれか一項に記載のブッシュ。
【請求項9】
軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、
前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部を通る周方向に沿った直線を軸として互いに対称な形状或いは当該対称な形状を周方向に所定量ずらした形状とされている請求項7に記載のブッシュ。
【請求項10】
軸方向一方側の端部に設けられた前記規制部を一方側規制部とするとともに、軸方向他方側の端部に設けられた前記規制部を他方側規制部とし、
前記一方側斜行部から前記一方側規制部に至る前記溝部と、前記他方側斜行部から前記他方側規制部に至る前記溝部とが、前記本体部の軸方向中央部に位置する点を基準とする互いに点対称な形状とされている請求項8に記載のブッシュ。
【請求項11】
前記一方側斜行部と前記他方側斜行部とが、前記本体部の軸方向中央位置で連結されている請求項7から10のいずれか一項に記載のブッシュ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−214672(P2011−214672A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83693(P2010−83693)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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