説明

ブラインド取付けのための密封栓

【課題】適当な穴にブラインド取付けをし、その穴を塞いで密封するための密封栓を提供する。
【解決手段】密封栓は、スリーブ2と、肩部8と頭部6を有するナットステム4と、を備え、頭部6の少なくとも一部はナットステム4の残りの部分に対して半径方向に拡大されており、ナットステム4は、スリーブ2の材料よりも硬い材料からなり、内側にねじ山18が付けられており、前記密封栓が適当な穴50に挿入され、穴50の中にスリーブ2が完全に入り、スリーブ2に対する増大する力がナットステム4に加えられたとき、軸方向の圧縮が肩部8によって肩部8に接しているスリーブ2の材料に加えられ、それにより、スリーブ2を変形させて半径方向外側に拡大させ、穴50の壁52と係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適当な穴にブラインド取付けをし、それによって、例えば高圧流体に対して、その穴を塞いで密封するための密封栓に関する。ブラインド取付けとは、穴の一方端のみを介するアクセスによって栓が取り付けられることを意味する。
【0002】
既知のタイプの密封栓(例えば、商標AVSEAL IIで入手可能なもの)は、中空のスリーブに貫通する軸部(stem)を備え、その軸部は、半径方向に拡大された頭部と破断首部(breakneck)とを備える。その頭部は、スリーブと軸部に隣接し、軸部は、被加工物のアクセス可能な側から外に延びており、破断首部で破断するまで引かれて、頭部をスリーブ内に引き込んでスリーブを半径方向に拡大させ、これによりスリーブが挿入された穴を密封する。
【0003】
このタイプの栓の不都合は、取り付け時に破棄する軸部の部分、すなわち、半径方向に拡大された頭部から最遠の、破断首部より向こうの部分が無駄になり、そのため、材料費及び廃棄手段を要する点で不利になることである。取り付け工具が十分な把持力を得られるように軸部の長さは常に十分でなければならないため、無駄になる量は、栓の直径が大きい程多くなる。
【0004】
もう1つの不都合は、栓径が大きくなると破断首部の強度が増すことである。これにより、栓の取り付けに用いられる工具の引き抜きジョーと筺体がより嵩張ったものになり、用途によっては工具のアクセスを制限することになる。また、衝撃負荷、騒音、及びスリーブ内で軸部が曲がってしまうことに特別な注意を要する。
【0005】
このタイプの栓のさらなる不都合は、製造時に耐食処理がされるが、その後の栓の取り付けでの鋼製軸部の破断が、腐食に耐えない面を露出させることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前述の問題を克服する密封栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、第1の態様において、適当な穴にブラインド取付け(blind installation)し、それによってその穴を塞いで密封するための密封栓(sealing plug)であって、
スリーブ(sleeve)と、
肩部(shoulder)と頭部(head)を有するナットステム(nut stem)と、を備え、該頭部の少なくとも一部は該ナットステムの残りの部分に対して半径方向に拡大されており、
前記ナットステムは、前記スリーブの材料よりも硬い材料からなり、
前記ナットステムは、内側にねじ山が付けられており、
前記密封栓が適当な穴に挿入され、該穴の中に前記スリーブが完全に入り、該スリーブに対する増大する力が前記ナットステムに加えられたとき、軸方向の圧縮が前記肩部によって該肩部に接している前記スリーブ材料に加えられ、それにより、前記スリーブを変形させて半径方向外側に拡大させ、前記穴の壁と係合させるものを提供する。
【0008】
本発明の効果は、材料が廃棄されず、このため、現在知られている密封栓よりもコスト節減をもたらすことである。
【0009】
本発明の別の効果は、ナットステムは、取り付け時に破断して耐食被覆されていない面を露出させることがないため、全面的に耐食性があることである。
【0010】
前記密封栓は、好ましくは、前記ナットステムに設けられた少なくとも1つの環状溝(annular groove)を有し、該プラグの穴への取付け時、前記環状溝にスリーブ材料が入る。環状溝にスリーブ材料が入る利点は、スリーブとナットステム間の確実なロックが得られ、栓の取り付け後のナットステムとスリーブ間の漏れの可能性が低減され、これにより、栓の性能が改善されることである。
【0011】
好ましくは、少なくとも2つの前記環状溝が設けられる。これは、ナットステムの製造時に有利となり、無地のナットステムに転造された環状溝を1つだけ有するものは、機械の中で捩れるかもしれないが、2つ以上の環状溝の転造は、そのような捩れを防ぐ。
【0012】
前記環状溝は、断面輪郭が好ましくは非対称である。非対称な環状溝の断面輪郭は、栓の取り付け時にスリーブ材料が環状溝に流入することを促進し、一旦栓が取り付けられると、スリーブとナットステム間のロックを改善する。
【0013】
半径方向に拡大された前記頭部は、テーパー状下面の肩部を有してもよい。これは、栓の取り付け時に、1番目の環状溝、すなわち頭部に最も近い環状溝へのスリーブ材料の流入を促進する効果を奏する。
【0014】
半径方向に拡大された前記頭部は、好ましくは、冷間鍛造により製造され、駆動凹部(drive recess)を有し、この駆動凹部が、ナットステムのその後の製造時に転造トルクに抵抗する役目を務める。
【0015】
本発明は、第2及び第3の態様において、請求項6及び請求項7に特徴づけられるような、栓を穴に取り付ける方法を提供する。
【0016】
スリーブに対する増大する力を、予め定められたレベルに達するまでナットステムに加えるように工具を設定すると、栓の性能に影響せずに、ナットステム材料の硬さの柔軟な対応が可能となる。
【0017】
これに替えて、増大する力を工具の設定ストロークまで加えるように工具を設定すると、ナットステムは、予め定められた値に変位することになり、これは、取り付けられた栓の位置が重要であるとき、例えば、ナットステムが被加工物のよりも下又は同一面である必要があるとき有利である。この同じ栓の設計が、これらいずれの取付け技術にも適する。
【0018】
本発明は、さらなる態様において、請求項8に特徴づけられるような密封栓の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の具体的な実施形態が、実施例及び付属する図面の参照によって記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係るスリーブの断面内のナットステムの正面を示す図。
【図1A】図1Aは、図1のナットステムの部分断面図。
【図2】図2は、図1の栓の正面と、被加工物の穴に取り付けられたスリーブの断面を示す図。
【図3】図3は、図1の栓の断面図。
【図4】図4は、図1の栓の断面と取り付け工具を示す図。
【図5】図5は、図1の栓の取り付けの順次的段階の断面図。
【図6】図6は、図1の栓の取り付けの順次的段階の断面図。
【図7】図7は、本発明に係る別のナットステムの平面図。
【図8】図8は、図7のナットステムの正面とスリーブの断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、栓は、アルミニウムのスリーブ2とナットステム4を備える。ナットステム4は、環状溝10と半径方向に拡大された頭部6が設けられており、頭部6の肩部8は、スリーブ2に接している。図3示されるように、頭部6の肩部8は、頭部6の半径方向の最外点から平坦な壁部26まで延びているテーパー状壁部24で定められた凹部22を有する。
【0022】
図3〜図6に示されるように、ナットステム4は、中空の中心部12を有し、内ねじ18が設けられている。中心部12は、部分的に頭部6内に延びており、円錐形状部14で端となっている。内ねじ18は、ナットステム4の開口端16から中心部12に延びている。
【0023】
スリーブは、アルミニウムのような比較的軟らかい材料から製造され、ナットステム4は、鍛造又は熱処理された鋼のように比較的硬い材料から作られ、耐食めっき仕上げが施される。
【0024】
環状溝10は、無地のナットステムに転造される。図7と図8の実施形態では、駆動凹部60が厚めの頭部6に設けられており、これにより、ナットステム4は、転造トルクに抗して回転しないようにすることができる。
【0025】
スリーブ2は、ナットステム4に押し込まれて嵌合され、場合により続いて、ナットステムの頭部6に接するスリーブの端に加えられるテーパー状の型押し付けによってナットステム4に圧接される。
【0026】
図4〜図6に示されるように、符号40で一般的に示される工具は、栓を穴50に取り付けるために用いられる。この工具は、ばね装着されたスリーブ44に囲まれたパイロットポイント(pilot point)48を有するねじ山付きのドライブスクリュー(drivescrew)42と、スリーブ44を囲むノーズチップ46(nose tip)を備える。
【0027】
取付け工程は、栓を工具に嵌めることと、その栓を穴50に挿入することと、栓を取り付けるために工具を駆動することと、栓から工具を外すことを含む。この工程は、下記に詳細に記載される。
【0028】
図4〜図6に示されるように、工具40のねじ山付きのドライブスクリュー42は、ナットステム4の内ねじ18に螺入される。工具40のスリーブ44は、小さなばね力によってナットステム4の表面28に接するように配置され、ノーズチップ46は、スリーブ2の表面30に接する。
【0029】
栓を取り付けるため、図4に示されるように、栓は、塞ぐべき穴50に、ノーズチップ46が被加工物の外面に接する位置まで挿入される。
【0030】
図5に示されるように、工具40が駆動された時、ドライブスクリュー42とスリーブ44は、X方向、すなわち穴50から軸方向に離れる方向に引かれる。この引っぱり力は、中心部12の内ねじ18を介してナットステムに伝達され、ナットステムもX方向に引かれることになる。したがって、この力は、さらにナットステム4の頭部6の肩部8を介してスリーブ2に伝達される。
【0031】
工具40のドライブスクリュー42とスリーブ44が引かれるとき、ノーズチップ46は静止したままであり、それゆえ、スリーブ2の隣接端部がX方向に動くことを防ぐ。したがって、スリーブ2の材料は、半径方向外側に押し付けられて塞ぐ穴50の壁52と係合し、半径方向内側にナットステム4の環状溝10に押し付けられる。図2、図5及び図6は、環状溝10がスリーブ2の材料で詰められていることを示す。環状溝10の断面輪郭の曲線部が、環状溝への材料の流入を促進する。1番目の環状溝、すなわち頭部6に最も近い環状溝への材料の流入は、頭部6の肩部8のテーパー状壁部24によっても促進される。
【0032】
スリーブ2の材料は、穴50の壁52とナットステム4の頭部6との間にも押し流される。これは、図5における領域32に示されている。
【0033】
工具40は、工具の設定ストローク長、すなわちナットステム及び/又はスリーブの材料の設定変位、或いは予め設定された負荷までドライブスクリュー42を引く操作がされる。
【0034】
栓が取り付けられると、ドライブスクリュー42は、内ねじ18から回し外される。
【0035】
取り付けられた栓の中心部12の開口を覆う必要があれば、キャップが設けられる。
【0036】
上記の断面輪郭以外の非対称な環状溝断面輪郭を用いてもよい。例えば、環状溝は、非対称な三角形又は部分的な楕円形状の断面輪郭を有してもよい。
【0037】
また、ナットステムは、ステンレス鋼で鍛造されても旋盤削り出しされてもよい。
【0038】
塞ぎべき穴の寸法に応じた寸法範囲の栓が用いられてもよい。ナットステム及び/又はスリーブの材料の変位量が重要であるとき、例えば、被加工物の表面と少なくとも同一面である必要があるとき、短い栓が用いられてもよい。栓の長さは、ナットステムに螺入される工具のねじ山を十分提供するのに十分であればよいだけである。
【0039】
栓が使用時に固定箇所として用いられるのを防ぐために、ナットステムの内ねじは、細かいピッチのねじ山又は標準でない直径であってもよい。
【0040】
栓の取り付け時に螺入する工具の応力は、細かいピッチのねじ山と大きなねじ底半径を有する特別なねじ山形状とを用いて低減してもよい。
【0041】
栓を小さな抑制された力で取り付けることは、穴の中の栓の半径方向の拡大圧力を抑制することを可能にする。これは、従来技術の取り付けの応力が被加工物の亀裂を起こすことがわかっている応用例において有利となろう。
【0042】
ドライブスクリューを導く助けとし、ナットステム4が引き戻される時にスリーブ2の材料がスリーブ44とナットステム4の間の半径方向内側に流れるのを防ぐため、取付け工具は、ばね付のスリーブ44を有してもよい。
【0043】
別の実施形態(図示せず)は、中空の中心部と内ねじを有さず、替わりに、オスねじのステム、環状溝付きステム、又は工具が係合してその後に取り外すことができる他の突出形状などの、外側の引っぱり手段を有してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適当な穴にブラインド取付けし、それによってその穴を塞いで密封するための密封栓であって、
スリーブと、
肩部と頭部を有するナットステムと、を備え、該頭部の少なくとも一部は該ナットステムの残りの部分に対して半径方向に拡大されており、
前記ナットステムは、前記スリーブの材料よりも硬い材料からなり、
前記ナットステムは、内側にねじ山が付けられており、
前記密封栓が適当な穴に挿入され、該穴の中に前記スリーブが完全に入り、該スリーブに対する増大する力が前記ナットステムに加えられたとき、軸方向の圧縮が前記肩部によって該肩部に接している前記スリーブの材料に加えられ、それにより、前記スリーブを変形させて半径方向外側に拡大させ、前記穴の壁と係合させることを特徴とする密封栓。
【請求項2】
前記ナットステムは、少なくとも1つの環状溝を備え、前記肩部に加えられた軸方向の圧縮は、さらに、前記スリーブを半径方向内側に変形させて少なくとも1つの前記環状溝に入れることを特徴とする請求項1に記載の密封栓。
【請求項3】
少なくとも1つの前記環状溝は、非対称な断面輪郭を有することを特徴とする請求項2に記載の密封栓。
【請求項4】
半径方向に拡大された前記頭部は、テーパー状下面の肩部を有することを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の密封栓。
【請求項5】
半径方向に拡大された前記頭部は、駆動凹部を備えることを特徴とする前記いずれかの請求項に記載の密封栓。
【請求項6】
前記いずれかの請求項に記載の密封栓を適当な穴に取り付ける方法であって、該方法は、前記穴に前記密封栓を挿入する工程と、前記スリーブに対する増大する力を、その力が予め定められたレベルに達するまで前記ナットステムに加える工程と、を備える。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5に記載の密封栓を適当な穴に取付ける方法であって、該方法は、前記穴に前記密封栓を挿入する工程と、前記スリーブに対する増大する力を、前記ナットステムが予め定められた値に変位するまで該ナットステムに加える工程と、を備える。
【請求項8】
密封栓を作る方法であって、該方法は、
ナットステムに環状溝が転造される工程と、
前記ナットステムに内ねじを形成する工程と、
前記ナットステムに耐腐食めっきを施す工程と、
前記ナットステムの材料よりも低い硬さを有する材料からなるスリーブを前記ナットステムに圧接する工程と、を備える。
【請求項9】
適当な穴にブラインド取付けし、それによってその穴を塞いで密封するための密封栓であって、
スリーブと、
肩部と頭部を有するナットステムと、を備え、該頭部の少なくとも一部は該ナットステムの残りの部分に対して半径方向に拡大されており、
前記ナットステムは、前記スリーブの材料よりも硬い材料からなり、
前記ナットステムは、内側にねじ山が付けられており、
工具のねじ山の付いたドライブスクリューが前記ナットステムの内ねじに螺入され、前記密封栓が適当な穴に挿入され、前記スリーブが完全に前記穴に入り、前記スリーブに対する増大する力が前記ナットステムに加えられたとき、軸方向の圧縮が前記肩部によって該肩部に接している前記スリーブの材料に加えられ、それにより、前記スリーブを変形させて半径方向外側に拡大させ、前記穴の壁と係合させることを特徴とする密封栓。
【請求項10】
適当な穴にブラインド取付けし、それによってその穴を塞いで密封するための密封栓であって、
スリーブと、
肩部と頭部を有するナットステムと、を備え、該頭部の少なくとも一部は該ナットステムの残りの部分に対して半径方向に拡大されており、
前記ナットステムは、前記スリーブの材料よりも硬い材料からなり、
前記ナットステムは、外側にねじ山が付けられており、
前記密封栓が適当な穴に挿入され、該穴の中に前記スリーブが完全に入り、該スリーブに対する増大する力が前記ナットステムに加えられたとき、軸方向の圧縮が前記肩部によって該肩部に接している前記スリーブの材料に加えられ、それにより、前記スリーブを変形させて半径方向外側に拡大させ、前記穴の壁と係合させることを特徴とする密封栓。
【請求項11】
前記ナットステムは、少なくとも1つの環状溝を備え、前記肩部に加えられた軸方向の圧縮は、さらに、前記スリーブを半径方向内側に変形させて少なくとも1つの前記環状溝に入れることを特徴とする請求項10に記載の密封栓。
【請求項12】
添付の図面を参照して実質的にこの明細書に記載されている密封栓。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−511134(P2010−511134A)
【公表日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−538762(P2009−538762)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003862
【国際公開番号】WO2008/065327
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(507158215)アブデル ユーケー リミテッド (7)
【Fターム(参考)】