説明

ブラウザによる印刷機の操作方法

【課題】複数の操作面を備える複数の機器を、快適かつ確実に操作することのできる印刷機の操作方法を提供することである。
【解決手段】制御計算機(20)と表示装置(23)とを有する印刷機(1)を操作するための方法であって、第1のアプリケーションプログラムの第1の操作面(18)と、第2のアプリケーションプログラムの少なくとも1つの第2の操作面(19)とが表示装置(23)に表示される方法において、
第1の操作面(18)と第2の操作面(19)とが表示装置(23)上で、1つの共通の表示窓を形成する、ことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御計算機と、表示装置とを有する印刷機を操作するための方法に関するものであり、表示装置は、アプリケーションプログラムの第1の操作面および第2のアプリケーションプログラムの少なくとも1つの操作面を表示する。
【背景技術】
【0002】
Windows(登録商標)のような標準オペレーションシステムから、各アプリケーションプログラムを画面に固有の表示窓で表示することが公知である。第1のプログラムの操作面から第2のプログラムの操作面へ切り換える場合には、マウスのような対応する操作エレメントにより、第2のプログラムの窓を前面に切り換えるか、または第1のプログラムの操作面を閉じなければならない。
【0003】
さらに特許文献1から、操作面としてインターネットブラウザを装備した印刷機制御部が公知である。ここでは、Windowsで使用される一般的な標準インターネットブラウザが使用される。
【0004】
さらに特許文献2から、ブラウザの形の固有の操作面を装備した印刷機用の端末機器が公知である。これにより新たな端末機器のための操作面を既存の印刷機の操作システムに簡単かつフレキシブルに組み込むことができる。
【0005】
この公知技術は大きな欠点を有している。すなわち各使用される機器ごとに、操作面の形のブラウザアプリケーションを装備しなければならないことであり、そのため複数の機器が同時に操作される場合には、1つの操作面から別の操作面に切り換えなければならない。操作面表示窓をこのように頻繁に切り換えることは、Windowsからも既知であるが、ユーザにとって快適ではなく、ユーザが間違った窓を選択した場合には誤操作につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP1208979A1
【特許文献2】DE102007056879A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、複数の操作面を備える複数の機器を、快適かつ確実に操作することのできる印刷機の操作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明により、請求項1によって解決され、本発明の有利な構成は従属請求項および図面に示されている。
【0009】
本発明の方法は、プラグラム支援なしで確実な操作を可能にしなければならない機械の操作にとくに適する。これは、危険な機械状態をとり得る機械、たとえば印刷機の場合である。ここでは印刷機の制御計算機上で、それぞれ固有の操作面を有する少なくとも2つのアプリケーションプログラムが実行される。両方のアプリケーションプログラムは画面のような表示装置上に表示され、本発明によれば、第1の操作面と第2の操作面が画面上で1つの共通の表示窓を形成する。このことの利点は、2つの操作面を使用する際に操作者は2つの窓を、Windowsの場合のように切り換える必要がなく、常に1つの表示窓にだけ注意すればよいことである。ここで操作命令を実際に実行するための、バックグランドまたはフォアグランドの技術的な切換は、操作者には認識されずにバックグランドで行われる。したがって操作者には常に、2つの操作面の部分を備えるただ1つの表示窓が表示される。さらに一方の操作面のクラッシュが他方の操作面のクラッシュにつながらないという利点がある。なぜなら2つの別個のプログラムが並列で実行されているからである。これまでは、たとえば第2の操作面がブラウザとして機械操作面の直接的構成部分であり、ブラウザのクラッシュは必然的に機械操作面および印刷機全体のクラッシュを引き起こしていたが、本発明では機械操作部とブラウザが2つの別個のアプリケーションプログラムであり、したがって2つの操作面は影響し合わない。
【0010】
本発明によれば、2つの操作面は、とりわけHTMLベースのブラウザアプリケーションまたはJavaアプレットである。HTMLブラウザまたはJavaアプレットは、とりわけ端末機器に対して簡単にプログラミングできるので適する。さらに、ブラウザでのHTML標準規格およびJavaアプレットは、小さなアプリケーションプログラムでもスタンダードとして確立している。しかし操作者にとって、第2の操作面がどのような技術に基づいているかは重要でない。なぜなら第1の操作面とともに共通の表示窓に組み込むこと、操作者にはまったく認識できず、操作者は実際には2つの操作面だけを見るように行われるからである。このようにして、第1の操作面を介する印刷機の操作と、端末機器を操作するための第2の操作面としてのブラウザ操作面とが並列して共通の表示窓として実現される。これにより操作者は、印刷機と端末機器のための1つの共通の操作面を見ているという印象を受ける。
【0011】
さらに第1の操作面と第2の操作面は共通の表示窓で、上位のプログラムによって制御される。この上位のプログラムは、第1の操作面と第2の操作面を互いに独立してスタートし、終了することができる。これにより、1つの操作面のクラッシュが別の操作面に関係しない。また、操作者は操作面のスタートまたは停止に煩わされることがない。なぜなら、操作者にはただ1つの共通の表示窓が表示されるだけであり、操作者は操作面を個別のアプリケーションとして認識することができないからである。Windowsの場合のような窓技術が放棄されるから、エラー源もなくなり、ユーザは窓を意識せずに閉じることにより、自分が操作するアプリケーションを終了する。アプリケーションの終了とスタートは、本発明ではユーザの義務ではなく、第1の操作面と第2の操作面を監視し、制御する上位プログラムの義務である。
【0012】
本発明の別の構成では、第1の操作面が技術的に表示装置のバックグランドで、第2の操作面が技術的に表示装置のフォアグランドで実行される。ここでバックグランドおよびフォアグランドとは、アクティブな操作面がフォアグランドで実行され、使用されない操作面がバックグランドで実行されると理解すべきである。しかし表示装置上で操作者は光学的に差異を認識することができない。なぜなら、フォアグランドまたはバックグランドに切り換えなければならない窓が存在しないので表示が変化しないからである。したがってここでは、バックグランドおよびフォアグランドとは技術的な実行であり、アクティブなプログラムフォアグランドで実行され、パッシブなプログラムがバックグランドで実行される。ここでは技術的観点から、機械操作がバックグランドで実行され、第2の操作面はブラウザアプリケーションの形で、画面上でフォアグランドで実行される。しかしブラウザがフォアグランドにあっても、ブラウザが再びバックグランドに消えることなしに機械の操作ができなければならない。ここではバックグランドにある機械操作をいわゆるポップアップ窓に切り換えることができる。しかしこれは、機械操作のバックグランドで実行される第1の操作面に依然として所属する。このポップアップ窓は、第2の操作面のブラウザ面より小さくすることができ、フォアグランドに、すなわちブラウザを介して表示される。このことを実現するために、操作面をフォアグランドに切り換えなければならず、その上にポップアップ窓が現れる。
【0013】
ここで本発明によれば、第1の操作面をフォアグランドに切り換える際に、表示装置上の第2の操作面の位置に静止画像がフェードインされる。この静止画像は、第2の操作面のスクリーンショットを含むものであり、第2の操作面の個所にフェードインされる。それ以外の場合、以前に第2の操作面のブラウザがフェードインされていた個所にはブラックホールが現れる。したがって印刷者はこれらすべての過程から何も認識せず、第2の操作面のブラウザからポップアップ窓に切り換える前に、第1の操作面と同じ個所に機械操作用のスクリーンショットがフェードインされる。第2の操作面のこのスクリーンショットの上に、第1の操作面のポップアップ窓が置かれる。第2の操作面のブラウザはバックグランドで不可視となる。
【0014】
さらに本発明によれば、第1の操作面のポップアップ窓が、フェードインされたスクリーンショットの上に置かれ、第1の操作面のポップアップ窓を閉じる際に、第2の操作面が再びフォアグランドで、スクリーンショットの個所にフェードインされる。第1の操作面のポップアップ窓を閉じた後に、第2の操作面のブラウザが再びフォアグランドに切り換えられ、ちょうどスクリーンショットの個所に現れる。これにより操作者は、スクリーンショットの代わりにブラウザの第2の操作面を再び見ていることを認識しない。
【0015】
本発明を以下、2つの図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】制御コンポーネントを備える操作機械の外観図である。
【図2】1つの窓に少なくとも2つの操作面が表示された表示窓を備える本発明の表示装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、5つの印刷機6と、後置接続されたラッカー機構7を備える枚葉紙印刷機1を示す。枚葉紙の形の印刷材料は、紙送り装置2で送り紙積層体5から取り出され、吸引ベルトテーブル15を介して第1の印刷機構6に引き渡される。印刷機構6はほとんど同じように構成されており、印刷ドラム10、ブランケットシリンダ13およびプレートシリンダ14ならびにそれぞれのインキ機構11と湿し機構12を有する。印刷機構6の間で枚葉紙は搬送ドラム9により、印刷機構6とラッカー機構7を通して搬送される。ラッカー機構7の出口には色測定装置17が設けられており、この色測定装置17は印刷材料の印刷品質を検出し、通信接続16を介して印刷機1の制御計算機20に通知する。完成した印刷材料は、紙取り出し装置3にある取り出しチェーン8により、取り出し紙積層体4の上に積み重ねられる。
【0018】
制御計算機20は、印刷機1のメイン駆動部と、印刷機構6にある種々の調整モータを制御し、さらにこれらに所属する端末機器、たとえば印刷空気供給部または紙取り出し装置3にあるパウダー機構も制御する。制御計算機20は、この制御計算機20とやはり通信接続16を介して接続されている所属の計算機を備える画面23を介して操作される、とりわけ制御計算機20には、テーブル色測定装置22の形の別の色測定装置が接続されている。このテーブル色測定装置22により、取り出し紙積層体4から取り出された印刷材料の印刷品質を検査することができる。ここでは印刷機1と端末機器の操作のために種々の操作面が設けられている。たとえばここでは2つの操作面18,19が設けられているが、それ以上でも良い。
【0019】
図2によれば、第1の操作面18と第2の操作面19が、タッチスクリーンとして実施された画面23上で1つの共通の窓に表示される。これによりユーザは、異なる操作面のために異なる表示窓を、たとえばWindowsの場合のように切り換える必要がない。図2で第1の操作面18はバックグランドに切り換えられたアクティブでない操作面として図示されており、一方、第2の操作面19はフォアグランドに切り換えられたアクティブな操作面として表示されている。操作者が第1の操作面18にアクセスしようとするとき、操作者は第2の操作面19の周りにある対応する領域にタッチするか、またはマウスでクリックする。しかしこれにより差し当たり光学的には何も変化しない。ここでは、第1の操作面19がいわゆるポップアップ窓を発生することが頻繁に生じる。このポップアップ窓は第2の操作面19の上にフェードインされる。しかしポップアップ窓は面積的に第2の操作面19より小さいから、第1の操作面18がフォアグランドに切り換えられる際にブラックホールが生じる。しかしこのブラックホールは本発明では第2の操作面19のバックグランド画像21により回避される。バックグランド画像21は第2の操作面19のスクリーンショットである。したがって操作者は、第2の操作面19がバックグランドに切り換えられたことを認識しない。
【0020】
この形式の操作の利点は、2つの操作面18,19が画面23上で1つの共通の表示窓に表示されることであり、そのため操作者は、これが2つの異なる操作面18,19であり、1つの共通の操作面ではないことをまったく認識しない。操作面18,19の1つがクラッシュした場合、これを他方とは関係なく制御計算機20により再びスタートすることができる。したがって端末機器を操作するための操作面である第2の操作面19がクラッシュした場合でも、好ましくは機械操作面である第1の操作面18はクラッシュしない。ここでもクラッシュした操作面が再び実行可能になるまでスクリーンショット21がフェードインされる。したがって操作者はクラッチについてほとんど認識しない。本発明は、操作が快適であるだけでなく、印刷機1の信頼性のある確実な操作が可能であるという利点を有する。ここで第2の操作面19は好ましくは、HTMLブラウザまたはJavaアプレットとして実施されている。
【符号の説明】
【0021】
1 印刷機
2 紙送り装置
3 紙取り出し装置
4 取り出し紙積層体
5 送り紙積層体
6 印刷機構
7 ラッカー機構
8 取り出しチェーン
9 搬送ドラム
10 印刷ドラム
11 インキ機構
12 湿し機構
13 ブランケットシリンダ
14 プレートシリンダ
15 吸引ベルトテーブル
16 通信接続
17 色測定装置
18 第1の操作面
19 第2の操作面
20 制御計算機
21 バックグランド画像
22 テーブル色測定装置
23 画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御計算機(20)と表示装置(23)とを有する印刷機(1)を操作するための方法であって、第1のアプリケーションプログラムの第1の操作面(18)と、第2のアプリケーションプログラムの少なくとも1つの第2の操作面(19)とが表示装置(23)に表示される方法において、
第1の操作面(18)と第2の操作面(19)とが表示装置(23)上で、1つの共通の表示窓を形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
第2の操作面(19)は、HTMLベースのブラウザアプリケーションまたはJavaアプレットである、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の操作面(19)は、印刷機(1)の端末機器(2,3,17)の操作のためのものである、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の操作面(18)と第2の操作面(19)とは、1つの共通の表示窓で上位のプログラムによって制御される、ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の操作面(18)は、印刷機(1)の操作のための面である、ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の操作面(18)はバックグランドで、第2の操作面(19)はフォアグランドで表示装置(23)上で実行される、ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の操作面(18)と第2の操作面(19)とは、表示に光学的変化なしで操作される、ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の操作面(18)が少なくとも1つのポップアップ窓を発生し、該ポップアップ窓は第2の操作面(19)より小さい、ことを特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
第1の操作面(18)をフォアグランドに切り換える際に、表示装置(23)上の第2の操作面の位置に静止画像がフェードインされ、該静止画像は、第2の操作面(19)のスクリーンショットを含み、第2の操作面(19)の個所にフェードインされる、ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の操作面(18)のポップアップ窓が、フェードインされたスクリーンショットの上に置かれ、第1の操作面(18)のポップアップ窓を閉じる際に、第2の操作面(19)が再びフォアグランドで、スクリーンショットの個所にフェードインされる、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−104118(P2012−104118A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246410(P2011−246410)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】