説明

ブラシシール組立体

【課題】多数の修理サイクルにわたってブラシシールの再使用を可能とし、ガスタービンの保守コストを低減する。
【解決手段】ブラシシール組立体10であって、環状スロット14を定める一対の環状板11,12であって、スロットに対して開口した半径方向外側のチャンバ15を定める、一対の環状板と、環状ブラシシール13であって、毛16と毛を互いに溶接することで環状ブラシシールの外周に形成された拡張部17とを有し、ブラシシールは、拡張部がチャンバ内に保持された状態でスロットをとおって延び、一対の環状板の一方12の少なくとも一部は延長部を有し、他方の板11の上で変形されて、一対の板を互いに保持して組立体を形成し、一対の板の一方12がスロットの領域に平坦面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシシール組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシシールは、一般に、例えば、ガスタービンエンジンにおいて、ステータと回転シャフトとの間をシールするために使用される。ブラシシールの毛は、一対の板の間から自由端部が突出するように延びる場合が多く、通常、毛と板とを溶接して単一の組立体とする。この仕組みにより、取り扱い及び組み立てを容易にすることが可能となり、非常に正確な外径をユニットに提供できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、使用中には毛が磨耗し、時折、シールの交換が必要となる。板は相当に高価な合金で形成されるため、これは、非常に高いガスタービン所有コストを発生させる恐れがある。
【0004】
EP−A−0911554A号公報では、二枚の板間にブラシシール要素をクランプする可能性を示しているが、その後、取り付け手段により板を共に保持しており、これにより、組み立て及び交換の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下のような態様が提供される。すなわち、ブラシシール組立体であって、間に環状スロットを定める一対の環状板であって、前記スロットに対して開口した半径方向外側のチャンバを定める、一対の環状板と、環状ブラシシールであって、前記環状ブラシシールの外周に形成された拡張部と、を有する環状ブラシシールと、を含み、前記ブラシシールは、前記拡張部が前記チャンバ内に保持された状態で前記スロットをとおって延び、前記一対の板の一方の少なくとも一部は、他方の板の上で変形されて、前記一対の板を互いに保持して組立体を形成し、前記組立体は、前記一対の板の一方が前記スロットの領域に平坦面を有することを特徴とする。および/または、前記板の他方は、前記毛を前記平坦面領域に対して局所的に締め付けて前記毛を保持する部分を有する。または、拡張部は、前記毛に対して非対称である。
【0006】
一実施形態において、一方の板は、L字断面部材の第一の脚部により形成され、前記延長部は、他の部分により形成される。
【0007】
任意の実施形態において、一方の板の前記一部は、局所変形により形成してよく、好ましくは、少なくとも二部分を変形させる。
【0008】
したがって、一般には、多数のタブを、延長部の当初環状である部分から変形させ、二枚の板を共に配置及び保持する。ブラシシールを交換する必要がある時には、タブを機械加工により取り除き、新たなブラシシールを設置することができる。更に、タブは、その後、延長部の以前には変形されていない部分から形成可能である。これにより、他方の板を多数の修理サイクルにわたって再使用可能となり、変形部分又はタブを形成するのに十分な未変形材料が存在しなくなるまで、一枚の板を再使用できる。
【0009】
そして、別の態様によれば、本発明は、上記のように定義したシールを修復する方法であって、
(a)前記部分的な一部を除去または解放することにより前記一対の板を解放する工程と、
(b)新たなブラシシールを挿入する工程と、
(c)前記一方の板の少なくとも一つの異なる部分を前記他方の板上で変形させることにより、前記一対の板を共に保持する工程と、を含む方法を提供する。
【0010】
上述したように、殆どの事例では、除去のステップは、機械加工により行う必要があると考えられる。
【0011】
更に、一方の板は、必要な配置の度合いによっては、延長部の全周囲において変形可能であると理解される。そうした場合、一方の板は犠牲となるが、他方の板は、依然として再使用可能である。
【0012】
本発明は上記のように定義されているが、上述した特徴又は以下の説明における特徴の任意の発明的な組み合わせが含まれると理解するべきである。
【0013】
本発明は、多数の方法において実行し得るものであり、以下、具体的な実施形態を、一例として、以下の添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】環状ブラシシール組立体の一部を通る部分径方向断面図である。
【図2】別の実施形態の対応する図である。
【図3】第三の実施形態の対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
このように、おおまかには10により示すブラシシール組立体は、前板11と、後板12と、ブラシシール13とを含む。
【0016】
それらの板は、半径方向内側端部(図示なし)において開口した、半径方向に延びるスロット14と、スロット14に対して開口した外周環状チャンバ15とを定める。これは、機械加工コストを低減すると共に、特に、以下に述べるクランプ機能に適したものとなる。ブラシシール13の毛16は、毛の端部を共に溶接することで形成された拡張非対称根状部17により互いに接合される。根状部17は、おおまかには断面が長方形であり、スロット14の外周部を形成する開口部14aを通過しないように寸法を定める。チャンバ15内では、根状部17が開口部を介して引き出しが可能となるほどに回転するのを防止するために、開口部14aの何れかの側に座部18及び19が形成されることに留意されたい。
【0017】
板11及び12のそれぞれは、全体にL字形の径方向断面を有し、板11は、板12上に形成された傾斜肩部21に係合するタブ20aを形成するために局所的に内側へ変形させることが可能な環状延長部、すなわち脚部20を有するようになる。この固定により、板11の突起部22は、毛16を板12に対して締め付けることで板12に対してクランプする。タブ20aは、約120°の間隔をあけて配されると好都合となり得る。
【0018】
その後、毛16が磨耗した時には、組立体10をガスタービンから取り外し、タブ20aを機械加工により除去して組立体を分解できる。新たなブラシシール13を挿入し、脚部20の未形成部に新たなタブ20aを形成することで板を再結合させることができる。最終的には新たな前板11を提供する必要が生じるが、後板は、更に再利用できる。板11及び12が作成される合金は高価であり、シールは通常1メートル以上の直径を有し得るため、この再利用は、ブラシシール組立体の所有コストを大幅に低減する。
【0019】
図2及び3は、後板12の面12aが毛固定領域と、スロット14の領域との両方で平坦となる別の実施形態を示す。これらの場合、スロット14により定められるチャンバ15は、完全に前板11内に存在し、後板12は単純に一枚の壁を定める状態となる。この手法は、ブラシシール13を保持するのが困難であるように思われることから意外な手法といえる。しかしながら、毛のクランプにより、この手法は特に有効となる。
【0020】
単に局所的なタブ20aを有する代わりに、板11、12は、延長部20全体で回転させることにより、全周囲に渡って互いに接合できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシシール組立体であって、
間に環状スロットを定める一対の環状板であって、前記スロットに対して開口した半径方向外側のチャンバを定める、一対の環状板と、環状ブラシシールであって、毛と、前記毛を互いに溶接することで前記環状ブラシシールの外周に形成された拡張部と、を有する環状ブラシシールと、を含み、
前記ブラシシールは、前記拡張部が前記チャンバ内に保持された状態で前記スロットをとおって延び、前記一対の板の一方の少なくとも一部は延長部を有し、前記延長部は、他方の板の上で変形されて、前記一対の板を互いに保持して組立体を形成し、前記組立体は、前記一対の板の一方が前記スロットの領域に平坦面を有することを特徴とする、ブラシシール組立体。
【請求項2】
前記板の他方は、前記毛を前記平坦面領域に対して局所的に締め付けて前記毛を保持する部分を有するブラシシール組立体。
【請求項3】
請求項1又は2記載のブラシシール組立体であって、
拡張部は、前記毛に対して非対称である、ブラシシール組立体。
【請求項4】
前記各請求項のいずれかに記載の組立体であって、
前記一方の板は、L字断面部材の第一の脚部により形成され、前記延長部は他の部分により形成される、組立体。
【請求項5】
前記各請求項のいずれかに記載の組立体であって、
前記一方の板の前記一部は、局所変形により形成される、組立体。
【請求項6】
前記各請求項のいずれかに記載のシールを修復する方法であり、
(a)一または複数の前記一部をレビューしまたは解放することにより前記一対の板を解放する工程と、
(b)新たなブラシシールを挿入する工程と、
(c)前記一方の板の少なくとも一つの異なる部分を前記他方の板上で変形させることにより、前記一対の板を共に保持する工程と、を含む方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、
少なくとも二つの部分が異なる、方法。
【請求項8】
請求項6記載の方法であって、
前記除去の工程は、機械加工により実行される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−32844(P2013−32844A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−187520(P2012−187520)
【出願日】平成24年8月28日(2012.8.28)
【分割の表示】特願2009−530930(P2009−530930)の分割
【原出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(509093624)クロス・マニュファクチャリング・カンパニー・(1938)・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CROSS MANUFACTURING COMPANY (1938) LIMITED
【Fターム(参考)】