説明

ブラシ

【課題】ワークに発生したバリの切削等の表面処理を、良好な生産能率を維持して行うことができるブラシを提供する。
【解決手段】ブラシ1のブラシ毛2は、毛先のエッジ73の向きが正回転方向t1及び逆回転方向ht1に夫々向くエッジ正回転方向向きブラシ毛2a及びエッジ逆回転方向向きブラシ毛2bからなっている。エッジ正回転方向向きブラシ毛2a及びエッジ逆回転方向向きブラシ毛2bは、夫々、全体の約60%、約40%とされている。ブラシ1が正回転方向t1に回転することにより、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aのエッジ73が、左側バリについて確実に切削し、続いて行うブラシ1の逆回転方向ht1の回転により、正回転方向t1の回転時の切削で一部残されている右側バリを切削する。このため、1つのブラシ1でワークのバリを適切に切削して除去することができ、生産能率の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークのバリ取りやワークの付着物の切削などの表面処理に用いられるブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などに用いられる部品では、ポンチ加工などの処理工程において部品表面にバリを発生することがある。このバリは、例えばブラシ毛を有したブラシを用いて取り除かれる。このようなブラシの一例として、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、多数本のブラシ毛61と、外周面部に多数個の穴62が形成された円柱状保持部材63と、を備え、前記多数本のブラシ毛61を円柱状保持部材の穴に挿入してこれを保持させるようにしたブラシ60がある。
【0003】
このブラシ60は、例えば、図9に示すように、研磨剤を塗布した板材(以下、研磨板材という。)10に、ブラシ毛61の先端部(毛先)が当接するようにしてブラシ60を図9反時計方向(以下、研磨時回転方向という。)71に回転(以下、研磨時回転という。)させて、ブラシ毛61の先端部を研磨することにより、大部分のブラシ毛61(ブラシ毛全体の70〜100%のブラシ毛)の先端部におけるブラシ60の研磨時回転方向71の前方側部分に傾斜面72(先端面)を形成している(特許文献1参照)。この傾斜面72の形成により、ブラシ毛61の先端部における研磨時回転方向71の後方側に、エッジ73が形成されている。ここで、エッジ73は、傾斜面72(先端面)及びブラシ60の外周面で形成される外周縁部75における高レベル位置部分(外周縁部75におけるブラシ毛61の基端からの高さが最も高い最高レベル位置を含むその近傍部分)をいう。
また、エッジ73の向きとは、ブラシ毛61の外周面部76におけるエッジ73と反対側部分から、ブラシ毛61の外周面部におけるエッジ73が形成された部分に向かう方向をいう。
【0004】
そして、このブラシ60は、上述したようにブラシ毛61の先端部が研磨されたこと、換言すれば上述したようにブラシ毛61の先端部にエッジ73が形成されたことを利用し、図9及び図10に示すように、ブラシ60を研磨時回転方向71と反対方向(以下、バリ除去回転方向という。)71gに回転にしてブラシ毛61のエッジ73を部品W1のバリ発生部分に当接させてバリ80を切削して除去するようにしている。この場合、毛先のエッジ73の向きがバリ除去回転方向71gに向くようにして、ブラシ60を回転させてバリ80を切削するようにしている。
【特許文献1】特開昭61−209871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、ブラシ60を回転させる方向(研磨時回転方向71、バリ除去回転方向71g)によって、切削力が異なり、回転方向によってはバリ除去を適切には行えない。具体的には、ブラシ60は、バリ除去回転方向71gに回転する〔換言すれば、ブラシ毛61のエッジ73がバリ除去回転方向71gに向いて回転される)場合には、切削力を発揮する。一方、研磨時回転方向71に回転する場合には発揮できる切削力は極めて小さくなり、バリ除去を充分には行えない。
【0006】
なお、上述したように切削力を発揮するといっても、バリ80の形成位置によってはそのバリ80を切削し難い場合がある。例えば、図10に示すように、部品W1に対して図10下から上に向けてポンチ加工を施して孔81を形成した場合、孔81の図10上側の開口部分にはバリ80が発生することがある。そして、上述したように切削力を発揮するようにブラシ60を回転させても、図10の左側バリ80L(以下、適宜、左側バリ80Lという。)については切削して除去できるものの、図10の右側バリ80R(以下、適宜、右側バリ80Rという。)については適切には切削できないことがあった。
【0007】
上記問題の改善のために、ブラシ毛61の円柱状保持部材63の外周部への取付けについて、エッジ73の向きが一方向になるようにブラシ毛61を保持したブラシと、エッジ73の向きが前記一方向と反対方向になるようにブラシ毛61を保持したブラシとの2本のブラシを用意し、この2本のブラシでバリ除去を行うことが考えられる。しかし、この場合、ブラシ2本を用いることに伴い、生産能率が著しく低下する。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ワークに発生したバリの切削等の表面処理を、良好な生産能率を維持して行うことができるブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の形態)
本願の発明は、多数本のブラシ毛と、該ブラシ毛を保持する保持部材と、を備え、ワークに作用してその表面処理を行うブラシにおいて、前記ブラシの前記ワークの表面処理は、前記ブラシを前記ワークに対して一方向及び該一方向と反対方向である逆方向に作用させることにより行われ、毛先のエッジの向きが前記一方向に向くブラシ毛(以下、エッジ一方向向きブラシ毛という。)及び毛先のエッジの向きが前記逆方向に向くブラシ毛(以下、エッジ逆方向向きブラシ毛という。)が共に、前記多数本のブラシ毛の約半数とされることを特徴とする。
本発明に係るブラシによれば、ワークに発生したバリの切削等の表面処理を、良好な生産能率を維持して行うことができる。
【0010】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0011】
本発明は、次の(1)〜(6)項の態様で構成される。(1)、(3)〜(5)項の態様が夫々請求項1〜4に相当している。
(1)多数本のブラシ毛と、該ブラシ毛を保持する保持部材と、を備え、ワークに作用してその表面処理を行うブラシにおいて、前記ブラシの前記ワークの表面処理は、前記ブラシを前記ワークに対して一方向及び該一方向と反対方向である逆方向に作用させることにより行われ、毛先のエッジの向きが前記一方向に向くブラシ毛(以下、エッジ一方向向きブラシ毛という。)及び毛先のエッジの向きが前記逆方向に向くブラシ毛(以下、エッジ逆方向向きブラシ毛という。)が共に、前記多数本のブラシ毛の約半数とされることを特徴とするブラシ。
ここで、エッジは、ブラシ毛の先端面及び外周面で形成される外周縁部における高レベル位置部分(外周縁部におけるブラシ毛の基端からの高さが最も高い最高レベル位置を含むその近傍部分)をいう。また、毛先のエッジの向きは、ブラシ毛の外周面部における前記エッジと反対側部分から、ブラシ毛の外周面部における前記エッジが形成された部分に向かう方向をいう。
【0012】
(2)毛先のエッジの向きが一方向に向くブラシ毛は前記多数本のブラシ毛の50〜60パーセントとされ、毛先のエッジの向きが逆方向に向くブラシ毛は前記多数本のブラシ毛の50〜40パーセントとされるか、又は毛先のエッジの向きが一方向に向くブラシ毛は前記多数本のブラシ毛の50〜40パーセントであり、毛先のエッジの向きが逆方向に向くブラシ毛は前記多数本のブラシ毛の50〜60パーセントであることを特徴とする(1)項に記載のブラシ。
(3)前記保持部材は軸状をなし、前記多数本のブラシ毛は前記保持部材の外周面に配置され、前記一方向及び逆方向は夫々、前記保持部材の長手方向を中心にした一方の回転方向及び該一方の回転方向と反対である逆回転方向であることを特徴とする(1)又は(2)項に記載のブラシ。
【0013】
(4)前記保持部材は平面部を有する板状をなし、前記多数本のブラシ毛は、前記平面部に配置され、前記一方向及び逆方向は夫々、前記平面部に沿う一方向及び該一方向と反対方向であることを特徴とする(1)又は(2)項に記載のブラシ。
(5)前記ブラシ毛は、剛性材料製であることを特徴とする(1)から(4)項のいずれかに記載のブラシ。
(6)前記剛性材料は、鉄材であることを特徴とする(5)項に記載のブラシ。
(1)〜(6)項に記載のブラシによれば、ブラシをワークに対して一方向及び逆方向に作用させることにより、前記一方向作用時には、エッジ一方向向きブラシ毛がバリ切削力などのワークに対する大きな表面処理能力を発揮してワークの表面処理を行い、前記逆方向作用時には、エッジ逆方向向きブラシ毛がバリ切削力などのワークに対する大きな表面処理能力を発揮してワークの表面処理を行う。このため、1つのブラシにより、ワークの表面処理を適切に行え、エッジ一方向向きブラシ毛を備えたブラシ及びエッジ逆方向向きブラシ毛を備えたブラシの2個のブラシを用意する場合に比べて、生産能率を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜4に記載の発明によれば、ワークに発生したバリの切削等の表面処理を、良好な生産能率を維持して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施の形態に係るブラシを図面に基づいて説明する。
図1〜図3において、ブラシ1は、多数本の鉄製のブラシ毛2と、ブラシ毛2を保持する鋼製の軸状保持部材3(保持部材)と、から大略構成されており、ワークW(図5参照)に作用して、ワークWに発生したバリ80(図5参照)を取除く(表面処理を行う)ようになっている。軸状保持部材3は、その外周部には多数個の穴4(図4参照)が形成されている。軸状保持部材3の中心部には、ホルダ5(図4参照)を介して駆動機構に連接される軸6が挿通されている。
軸状保持部材3ひいてはブラシ1は、モータ等の駆動機構の作動によりホルダ5を介して正回転方向t1〔一方向〕及び逆回転方向ht1に回転するようになっている。軸状保持部材3の穴4にブラシ毛2が挿入して保持されている。
【0016】
多数本のブラシ毛2は、各毛先にエッジ73が形成されている。このエッジ73の形成は、研磨板材10(図9参照)を、ブラシ毛2の先端部(毛先)が当接するようにしてブラシ1を正回転方向t1及び逆回転方向ht1に回転させ、ブラシ毛2の先端部を研磨することにより、行われている。そして、このブラシ1では、上記エッジ73の形成により、毛先のエッジ73の向きが正回転方向t1に向くブラシ毛2(以下、便宜上、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aという。)及び毛先のエッジ73の向きが逆回転方向ht1に向くブラシ毛2(以下、便宜上、エッジ逆回転方向向きブラシ毛2bという。)が共に、前記多数本のブラシ毛2の約半数とされている。具体的には、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aはブラシ毛2全体の約60%とされ、エッジ逆回転方向向きブラシ毛2bはブラシ毛2全体の約40%とされている。
【0017】
ブラシ毛2の先端部の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、本第1実施の形態においては、ブラシ毛2として、例えば、図6(a1)及び(a2)に示すもの、図6(b1)及び(b2)に示すもの、図6(e1)及び(e2)に示すもの、図6(f1)及び(f2)に示すものが含まれていてもよい。なお、後述するようにブラシ毛2にエッジ73を形成し、エッジ73を形成したブラシ毛2をブラシ1の軸状保持部材3に装着する場合には、図6(c1)及び(c2)に示すように、傾斜面72に凹部30が形成されるようにしたブラシ毛2を含んでいてもよい。また、同様に、エッジ73を形成したブラシ毛2をブラシ1の軸状保持部材3に装着する場合には、図6(d1)及び(d2)に示すように、ブラシ毛2の外周面におけるエッジ73形成側に切欠部31を有するようにしたブラシ毛2を含んでいてもよい。なお、図6において、(a1)〜(f1)は、各タイプのブラシ毛2の平面図、(a2)〜(f2)は、(a1)〜(f1)夫々に対応して示したブラシ毛2の正面断面図である。
【0018】
このブラシ1では、上述したように、正回転方向t1及び逆回転方向ht1に回転し、この回転によりワークWのバリ80を切削して取除くようにしている。
すなわち、ブラシ1が正回転方向t1に回転することにより、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aのエッジ73が、図5(b)の左側、右側のバリ80(以下、左側、右側バリ80L,80Rという。)を切削する。この際、図5の右側バリ80Rについては、その切削が充分には行われず一部残されることもあるが、図5の左側バリ80Lについては確実に切削される。続いて、ブラシ1が逆回転方向ht1に回転されることにより、エッジ逆回転方向向きブラシ毛2bのエッジ73が、正回転方向t1の回転時の切削で一部残されている右側バリ80Rを切削する。
このため、1つのブラシ1でワークWのバリ80〔図5の左側、右側バリ80L,80R〕を適切に切削して除去することができ、生産能率の向上を図ることができる。
【0019】
上述した、毛先のエッジ73が一方向のみにあり、当該一方向にブラシ1を回転させてワークW1のバリ80の切削・除去を行う上記従来技術(図8〜図10)では、充分なバリ除去を行えない場合があるのに対して、本実施形態によれば、上記従来技術が惹起する上記問題を回避でき、良好にバリ80の除去を行うことができる。
また、バリ80の適切な切削・除去を行うために、毛先のエッジ73が一方向であるブラシ及び毛先のエッジ73が一方向と反対方向であるブラシの2本のブラシを用いる場合に比して、ブラシの本数が少なくて済み、生産能率が向上する。
本第1実施の形態では、ブラシ1を、ワークW1のバリ80の切削・除去を行う表面処理に用いる場合を例にしたが、ブラシ1の使用態様としては、これに限らず、ワークに付着したものの除去など、他の表面処理に用いてもよい。
【0020】
本願発明者等は、本実施形態について、ワークWとして、図4、図5に示すように、オートマチックトランスミッションの変速機に用いられる部品(以下、ワーク)を対象にして検証を行った。
ワークWは、図4(a)、(b)、図5(a)、(b)に示すように、小径部20及び大径部21を段差をもって連接し、小径部20に周方向に所定数(この実施形態では13個)の孔22を形成している。ワークWの孔22は、ポンチ加工により小径部20の外方から内方に向けて打抜かれて形成されている。図5(b)には、13個の孔22のうち3個のみを記載している。
孔22は、図5(b)に示すように、ワークWの軸方向に延びる長孔となっており、各孔22の2つの長辺縁部がワークWの高さ方向〔図5(b)の上下方向〕に延びるように配置されている。各孔22の2つの長辺縁部について、図5(b)に示すように、小径部20を見たとき、左、右側のものを夫々、左、右側長辺縁部23L,23Rという。図5(b)には、当該図に表示した3個の孔22のうち中央の孔22のみを対象にして左、右側長辺縁部23L,23Rを記載している。また、左側、右側バリ80L,80Rについても、これと同様に中央の孔22のみを対象にして記載している。
【0021】
左、右側長辺縁部23L,23Rの内側〔図5(b)紙面向こう側〕には、図5(c)、(d)に示すように、小径部20の外方から内方に向けて行われるポンチ加工に伴いバリ80が形成されている。
図5に示す検証例では、図4(a)、(b)に示すように、ホルダ5を介して駆動機構に連接されたブラシ1がワークWの内周側に配置され正回転方向t1に自転しつつ正回転方向t1に対応する公転正方向t2に公転し、さらに逆回転方向ht1に自転しつつ逆回転方向ht1に対応する公転逆方向ht2に公転してワークWに対する加工(コンタリング加工)が行われる。
この場合、ブラシ1の毛先がワークWのバリ80に接触し得るように、ブラシ1の軸6をワークWの内周壁の中心C1より内周面側に偏心させて、ブラシ1を正回転方向t1及び逆回転方向ht1に自転させ、合わせて、ワークWの内周面に沿うようにブラシ1を公転させる。
【0022】
図5に示す検証例では、ブラシ1が、図4時計方向(正回転方向t1、公転正方向t2)の自転・公転を行うことにより、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aのエッジ73が左側長辺縁部23Lのバリ80Lを切削してこれを除去する。この後、ブラシ1が、図4反時計方向(逆回転方向ht1、公転逆方向ht2)の自転・公転を行うことにより、エッジ逆回転方向向きブラシ毛2bのエッジ73が右側長辺縁部23Rのバリ80Rを切削してこれを除去した。このように図4時計方向(正回転方向t1、公転正方向t2)及び反時計方向(逆回転方向ht1、公転逆方向ht2)にブラシ1の自転・公転を行うことにより、左、右側長辺縁部23L,23Rの夫々のバリ80L,80Rを共に除去することを検証することができた。
【0023】
上記第1実施の形態では、ブラシ1が、軸状保持部材3にブラシ毛2を直接設ける場合を例にしたが、これに代えて、略V字形に折り曲げられた多数本のブラシ毛と、該ブラシ毛についてその折り曲げ部で挟み付ける帯状体と、前記ブラシ毛の毛先が外方に向くようにして前記帯状体を巻回してこれを保持する軸状体と、から構成した、いわゆるチャンネルタイプのロールブラシとしてもよい。
上記第1実施形態では、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aはブラシ毛2全体の約60%とされ、エッジ逆回転方向向きブラシ毛2bはブラシ毛2全体の約40%とされているが、これに限らず、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aを全体の50〜60%、エッジ逆回転方向向きブラシ毛2bを50〜40%としてもよい。また、これとは反対に、エッジ正回転方向向きブラシ毛2aを全体の50〜40%、エッジ逆回転方向向きブラシ毛2bを50〜60%としてもよい。
【0024】
上記第1実施の形態では、ブラシ毛2のエッジ73の形成を、ブラシ毛2を装着した状態のブラシ1を研磨板材10に正、逆回転させることにより行った場合を例にしたが、本発明はこれに限らない。例えば、予め、ブラシ毛2にエッジ73を形成し、エッジ73を形成したブラシ毛2をブラシ1の軸状保持部材3に装着するようにしてもよい。このことは後述する第2実施形態にも同様にいえることである。なお、このようにエッジ73を形成したブラシ毛2を軸状保持部材3に装着してブラシ1を構成する場合には、エッジ73の向きの管理(本数)を精度高く行うことができる。
また、上記実施形態では、エッジ正回転方向向きブラシ毛2a及びエッジ逆回転方向向きブラシ毛2bがランダムに配置されているが、所定数のエッジ正回転方向向きブラシ毛2a及び所定数のエッジ逆回転方向向きブラシ毛2bを夫々セットにし、各セットをランダム又は所定の位置関係で配置するようにしてもよい。このことは後述する第2実施形態にも同様にいえることである。
【0025】
次に、本発明の第2実施の形態に係るブラシを図7(a)、(b)、(c)に基づき、図10を参照して説明する。
第1実施の形態のブラシ1は、軸状保持部材3を有し、その外周面部に多数本のブラシ毛2を放射状に装着し、ブラシ1を回転して用い、一方向及び逆方向が、夫々、正回転方向t1〔図4(b)時計方向〕、逆回転方向ht1〔図4(b)反時計方向〕とされている。これに対して、第2実施の形態に係るブラシ1Aは、以下のように構成されている。すなわち、第2実施の形態に係るブラシ1Aは、図7に示すように、長方形の平面部40を有する直方体状(板状)の板状保持部材41(保持部材)を有し、多数本の鉄製のブラシ毛2を板状保持部材41の平面部40に植設している。板状保持部材41には軸42が取付けられている。ブラシ1Aは、軸42がリニアモータ等の駆動機構の駆動力を受けることにより、図7(c)左右方向(便宜上、夫々、第1、第2方向gL,gRという。)に移動し、第1、第2方向gL,gRの移動時にワーク(この実施形態では、ワークとしては、便宜上、図10に示すワークW1を対象にする。)に作用し、ワークW1のバリ80(図10)を切削して取除くようにしている。この第2実施の形態では、図10右から左に向く方向及び左から右に向く方向が、夫々第1、第2方向gL,gRに相当する。
図7(a)、(b)、(c)において、多数本のブラシ毛2は、毛先のエッジ73の向きが軸42と反対方向を向くブラシ毛(以下、エッジ軸反対向きブラシ毛という。)2c、及び毛先のエッジ73の向きが軸42に向くブラシ毛(以下、エッジ軸向きブラシ毛という。)2dを含んでいる。
エッジ軸反対向きブラシ毛2cはブラシ毛2全体の約60%とされ、エッジ軸向きブラシ毛2dはブラシ毛2全体の約40%とされている
【0026】
この第2実施形態では、ブラシ1Aを第1、第2方向gL,gRに移動し、この移動によりワークW1のバリ80(図10)を切削して取除くようにしている。この際、ブラシ1Aが第1方向gLに移動することにより、エッジ軸反対向きブラシ毛2cが、図10左側、右側バリ80L,80Rを切削する。この際、図10の右側バリ80Rについては、その切削が充分には行われず一部が残される虞もあるが、図10の左側バリ80Lについては確実に切削される。続いて、ブラシ1が第2方向gRに移動することにより、エッジ軸向きブラシ毛2dのエッジ73が、前記第1方向gLの移動時の切削で一部残されている図10の右側バリ80Rを切削する。
このため、1つのブラシ1AでワークWのバリ80〔図10〕を適切に切削して除去することができ、生産能率の向上を図ることができる。
【0027】
上記第2実施形態では、エッジ軸反対向きブラシ毛2cはブラシ毛2全体の約60%とされ、エッジ軸向きブラシ毛2dはブラシ毛2全体の約40%とされているが、これに限らず、エッジ軸反対向きブラシ毛2cを全体の50〜60%、エッジ軸向きブラシ毛2dを50〜40%としてもよい。また、これとは反対に、エッジ軸反対向きブラシ毛2cを全体の50〜40%、エッジ軸向きブラシ毛2dを50〜60%としてもよい。
【0028】
上記各実施形態において、ブラシ毛2は鉄製である場合を例にしたが、鉄以外の他の剛性材料や他の部材(ワークW、W1の硬度より高い硬度の材料であることが望ましい。)で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るブラシを模式的に示す平面図である。
【図2】図1のA矢視の図である。
【図3】図1のB矢視の図である。
【図4】第1実施の形態に係るブラシの検証例を示し、(a)はブラシ及びワークを模式的に示す断面図、(b)はそのブラシ及びワーク示す平面図である。
【図5】図4の検証例におけるブラシ及びワークを示し、(a)はワークの平面図、(b)はワークの側面図、(c)は(b)の左側バリ形成部分を拡大して示す斜視図、(d)は(b)の右側バリ形成部分を拡大して示す斜視図である。
【図6】第1実施の形態などで用いられる先端部の形状が異なる種々のタイプのブラシ毛を(a1)及び(a2)、(b1)及び(b2)、(c1)及び(c2)、(d1)及び(d2)、(e1)及び(e2)、並びに(f1)及び(f2)に夫々示す図である。
【図7】本発明の第2実施の形態に係るブラシを示し、(a)はその正面図、(b)はその平面図、(c)はその部分拡大の正面図である。
【図8】従来の一例のブラシを示し、(a)はその平面図、(b)はその正面図、(c)はそのブラシに用いられるブラシ毛の平面図、(d)はブラシ毛の正面図である。
【図9】図8のブラシのブラシ毛自体の研磨及びブラシによるバリの切削を説明するための模式図である。
【図10】図8のブラシによるバリの切削方法を説明するための部分断面の図である。
【符号の説明】
【0030】
1…ブラシ、2…ブラシ毛、2a…エッジ正回転方向向きブラシ毛、2b…エッジ逆回転方向向きブラシ毛、2c…エッジ軸反対向きブラシ毛、2d…エッジ軸向きブラシ毛、3…軸状保持部材(保持部材)、41…板状保持部材(保持部材)、80…バリ、W、W1…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数本のブラシ毛と、該ブラシ毛を保持する保持部材と、を備え、ワークに作用してその表面処理を行うブラシにおいて、
前記ブラシの前記ワークの表面処理は、前記ブラシを前記ワークに対して一方向及び該一方向と反対方向である逆方向に作用させることにより行われ、
毛先のエッジの向きが前記一方向に向くブラシ毛及び毛先のエッジの向きが前記逆方向に向くブラシ毛が共に、前記多数本のブラシ毛の約半数とされることを特徴とするブラシ。
【請求項2】
前記保持部材は軸状をなし、前記多数本のブラシ毛は前記保持部材の外周面に配置され、前記一方向及び逆方向は夫々、前記保持部材の長手方向を中心にした一方の回転方向及び該一方の回転方向と反対である逆回転方向であることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項3】
前記保持部材は平面部を有する板状をなし、前記多数本のブラシ毛は、前記平面部に配置され、前記一方向及び逆方向は夫々、前記平面部に沿う一方向及び該一方向と反対方向であることを特徴とする請求項1に記載のブラシ。
【請求項4】
前記ブラシ毛は、剛性材料製であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−28801(P2009−28801A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192053(P2007−192053)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】