説明

ブラスト用噴射ノズル

【課題】 本発明は、加工対象物を十分に且つ略均一に加工できるブラスト用噴射ノズルを提供する。
【解決手段】 ブラスト用噴射ノズル1は、加工用流体チャンバー21と、加工用流体チャンバー21の下部に連通した加工用流体導入路22と、加工用流体導入路22の下部に連通し且つ一方向に延びる細長状の加工用流体噴射口23と、を有するノズル本体2と;エアーチャンバー31と、エアーチャンバー31の下部に連通したエアー導入路32と、エアー導入路32の下部に連通し且つ加工用流体噴射口23と同じ方向に延びる細長状のエアー噴射口33と、を有し、加工用流体チャンバー21内に配置されたエアーノズル3と;を有し、エアー導入路32が、エアー噴射口33と同じ方向に延びる細長状で且つエアー噴射口33側に向かうに従って次第に幅狭とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物に加工用流体を噴射するブラスト用噴射ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラリーチャンバー、前記スラリーチャンバーの下部に連通したスラリー導入路、及び前記スラリー導入路の下部に連通し且つ細長状のスラリー噴射口を有するノズル本体と、エアーチャンバー、前記エアーチャンバーの下部に連通し且つ細長状のエアー導入路、及び前記エアー導入路の下部に連通し且つ細長状のエアー噴射口を有するエアーノズルと、を有し、前記スラリー導入路の上部に前記エアー噴射口が位置するように、前記エアーノズルが前記スラリーチャンバー内に配置されている湿式ブラスト用噴射ノズルが知られている(特許文献1及び2)。
【0003】
しかしながら、上記従来の湿式ブラスト用噴射ノズルにおいては、エアー噴射口から出るエアーの流速が遅くなる虞がある。エアーの流速が遅くなると、ノズル本体のスラリー噴射口から出るスラリーの勢いが小さくなるので、加工対象物を十分に研磨できない。
【0004】
さらに、従来の湿式ブラスト用噴射ノズルにおいては、エアー噴射口を長くすると、エアー噴射口から略均一にエアーが出ない虞がある。エアーがエアー噴射口から略均一に出ないと、ノズル本体のスラリー噴射口全体から略均一にスラリーが出ないので、加工対象物に加工ムラが生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3315672号公報
【特許文献2】実公平2−5899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、加工対象物を十分に加工できるブラスト用噴射ノズルを提供することである。
さらに、本発明の第2の目的は、加工対象物を十分に且つ略均一に加工できるブラスト用噴射ノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のブラスト用噴射ノズルは、加工用流体チャンバーと、前記加工用流体チャンバーの下部に連通した加工用流体導入路と、前記加工用流体導入路の下部に連通し且つ一方向に延びる細長状の加工用流体噴射口と、を有するノズル本体と、エアーチャンバーと、前記エアーチャンバーの下部に連通したエアー導入路と、前記エアー導入路の下部に連通し且つ前記加工用流体噴射口と同じ方向に延びる細長状のエアー噴射口と、を有し、前記加工用流体導入路に前記エアー噴射口が位置するようにして前記加工用流体チャンバー内に配置されたエアーノズルと、を有し、前記エアー導入路が、前記エアー噴射口と同じ方向に延びる細長状で且つ前記エアー噴射口側に向かうに従って次第に幅狭とされている。
【0008】
本発明の好ましいブラスト用噴射ノズルは、前記エアーチャンバーとエアー導入路の間に、エアー整流部材が設けられている。
【0009】
本発明の他の好ましいブラスト用噴射ノズルは、前記エアー整流部材が、前記エアーチャンバーとエアー導入路の間に設けられた仕切板と、前記仕切板の厚み方向に貫通された複数の貫通孔と、を有し、前記仕切板の中央部における単位面積当たりの貫通孔の開口面積が、前記仕切板の一方向両端部における単位面積当たりの貫通孔の開口面積よりも小さい。
【0010】
本発明の他の好ましいブラスト用噴射ノズルは、前記エアーチャンバーの下部内面と前記エアー導入路の上部内面が鈍角状に曲がって連続している。
【発明の効果】
【0011】
本発明のブラスト用噴射ノズルは、細長状の加工用流体噴射口から加工用流体を勢いよく噴射させることができる。かかるブラスト用噴射ノズルを用いれば、加工用流体によって加工対象物を十分に加工できる。
さらに、本発明の好ましいブラスト用噴射ノズルは、細長状の加工用流体噴射口から加工用流体を略均一に噴射させることができるので、加工ムラが生じ難い。かかるブラスト用噴射ノズルを用いれば、加工用流体によって加工対象物を十分に且つ略均一に加工できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】1つの実施形態に係るブラスト用噴射ノズルの正面図。
【図2】同底面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】図1のIV−IV線断面図。
【図5】図3のV−V線断面図。
【図6】図4のブラスト用噴射ノズルの中からエアー整流部材を取り除いた状態の断面図。
【図7】各種のエアー整流部材の平面図。
【図8】変形例に係るブラスト用噴射ノズルの正面図。
【図9】図8のIX−IX線断面図。
【図10】図9のX−X線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ただし、便宜上、ブラスト用噴射ノズルの加工用流体噴射口を下に向けた状態を基準にして、「上」及び「下」という方向を示す用語を使用する。
また、図4の破線矢印は、エアーの流れを示し、実線矢印は、加工用流体の流れを示す。
【0014】
図1〜図5において、1は、本発明のブラスト用噴射ノズルを示す。
ブラスト用噴射ノズル1は、ノズル本体2と、エアーノズル3と、を有する。
前記ノズル本体2は、加工用流体チャンバー21と、前記加工用流体チャンバー21の下部に連通した加工用流体導入路22と、前記加工用流体導入路22の下部に連通し且つ一方向に延びる細長状の加工用流体噴射口23と、を有する。
なお、前記一方向は、噴射ノズル1の上下方向に直交する方向であって、細長状の加工用流体噴射口23の長手方向である(以下、一方向を「長手方向」という場合がある)。
【0015】
前記エアーノズル3は、エアーチャンバー31と、前記エアーチャンバー31の下部に連通し且つ加工用流体噴射口23と同じ方向に延びる細長状のエアー導入路32と、前記エアー導入路32の下部に連通し且つ前記加工用流体噴射口23と同じ方向に延びる細長状のエアー噴射口33と、を有する。
前記エアーノズル3は、前記加工用流体導入路22に前記エアー噴射口33が位置するように、前記ノズル本体2の加工用流体チャンバー21内に配置されている。
【0016】
具体的には、ノズル本体2は、耐圧性のある複数の板材(例えば金属板や硬質合成樹脂板など)を適宜接合することにより中空状に形成されたケース体からなる。前記複数の板材は、ボルト(図示せず)を介して気密状態で固定されているが、接着剤や溶着などで気密状態で固定されていてもよい。
【0017】
ノズル本体2の加工用流体チャンバー21は、長手方向に延びる細長い略直方体状の空間である。この加工用流体チャンバー21には、これに加工用流体を供給するための加工用流体供給管24が連通されている。本実施形態では、前記加工用流体供給管24は、加工用流体チャンバー21を形成する前板の上方に取り付けられている。この加工用流体供給管24を通じて、タンク(図示せず)に貯留された加工用流体が加工用流体チャンバー21内に流入される。
加工用流体は、流動体であれば特に限定されず、例えば、研磨材を含む液状体(例えば、水と研磨材を含む液状体)などのスラリー;エッチング液などの液体;研磨材又はその他の微粒子などの粉体;などが用いられる。
【0018】
加工用流体導入路22は、加工用流体チャンバー21の下部に設けられている。加工用流体導入路22は、加工用流体チャンバー21を形成する底板21cとエアーノズル3のエアー導入路32を形成する一対の側板32a,32bの外面の間に確保された通路である。従って、図4に示すように、エアーノズル3を基準にして、その左右側に加工用流体導入路22,22がそれぞれ形成されている。前記左右一対の加工用流体導入路22,22は、加工用流体チャンバー21と略同じ長さで長手方向に延び且つ上下方向において略均等な幅を有する細長状の通路であり、その上部は加工用流体チャンバー21に連通している。前記一対の加工用流体導入路22,22は、下方に向かうに従って互いに近づくように傾斜しており、一対の加工用流体導入路22,22の下部は、エアーノズル3のエアー噴射口33の下部において繋がっている。
なお、本明細書おいて、幅とは、噴射ノズル1の上下方向及び一方向にそれぞれ直交する方向(以下、この方向を「幅方向」という場合がある)における長さを言う。
【0019】
この加工用流体導入路22の下部には、加工用流体導入路22と略同じ長さで長手方向に延び且つ上下方向において略均等な幅を有する細長状の流路25が設けられている。この流路25の下部における開口が、加工用流体噴射口23である。
加工用流体噴射口23の長手方向における長さは、特に限定されないが、本実施形態の加工用流体噴射口23は、比較的長く形成されている。加工用流体噴射口23の長さが余りに長いと、それに応じてブラスト用噴射ノズル1が大型化するので取扱い性が悪くなる。この点を考慮すると、加工用流体噴射口23の長さは、例えば、40mm〜300mm程度が好ましく、80mm〜300mmがより好ましい。
加工用流体チャンバー21内の加工用流体は、一対の加工用流体導入路22に導入され、加工用流体導入路22の下部においてエアーノズル3から出るエアーによって加速された後、流路25を通じて加工用流体噴射口23から噴射される。
【0020】
次に、エアーノズル3は、図4に示すように、前記加工用流体チャンバー21内の中央部に配置されている。
エアーノズル3は、耐圧性のある複数の板材(例えば金属板や硬質合成樹脂板など)を適宜接合することにより中空状に形成されたケース体からなる。前記複数の板材は、ボルト(図示せず)を介して気密状態で固定されているが、接着剤や溶着などで気密状態で固定されていてもよい。
エアーノズル3のエアーチャンバー31は、長手方向に延びる細長い略直方体状の空間である。エアーチャンバー31を形成する一対の側板31a,31bの各内面はそれぞれ平坦状であり、両内面間の長さ(幅)は、上下方向において略均等である。
【0021】
このエアーチャンバー31には、これにエアーを供給するためのエアー供給管34が連通されている。本実施形態では、加工用流体チャンバー21を形成する一方の側板21aの外面に、エアー供給用のケース体が気密状態で取り付けられている。このケース体の内部には、長手方向に延びる分岐路35が形成され、且つこのケース体の中央上方部に前記分岐路35に連通するエアー供給管34が取り付けられている。さらに、前記分岐路35の長手方向両側には、前記側板21a及び加工用流体チャンバー21を貫通し且つエアーチャンバー31に連通する左右一対の連通管36,36が設けられている。
前記一対の連通管36,36は、エアーチャンバー31の長手方向長さの約3等分の位置に設けられている。
ポンプによって加圧されたエアーは、エアー供給管34から分岐路35に入り、この分岐路35から連通管36,36を通じて、エアーチャンバー31内に流入される。
エアーは、特に限定されず、一般的には、空気(大気)が用いられるが、特定のガス(窒素ガスなど)を用いてもよい。
【0022】
エアー導入路32は、エアーチャンバー31の下部に連通して設けられ、エアーチャンバー31と略同じ長さで長手方向に延びる細長状である。このエアー導入路32の下部には、長手方向に延びる細長状のエアー噴射口33が連通している。エアー噴射口33の直下には、加工用流体導入路22を介在して、流路25が位置している。
エアー導入路32は、エアーチャンバー31を形成する一対の側板31a,31bに一体的に連設された一対の側板32a,32bの間に確保された空間である。
エアー導入路32を形成する一対の側板32a,32bの各内面は、それぞれ平坦状であり、その両内面は下方に向かうに互いに近づくように傾斜している。従って、前記エアー導入路32は、エアー噴射口33側に向かうに従って次第に幅狭とされている。
【0023】
さらに、エアーチャンバー31の下部内面とエアー導入路32の上部内面とは鈍角状に曲がって連続している。
具体的には、エアーチャンバー31を形成する一対の側板31a,31bの内面とエアー導入路32を形成する一対の側板32a,32bの内面とは、その境界において鈍角状に曲がった状態で連続している。すなわち、エアーチャンバー31を形成する側板31a,31bの内面とエアー導入路32を形成する側板32a,32bの内面との境界には実質的に段差がなく、両側板の内面は連続面を形成している(ただし、側板31a,31bの内面と側板32a,32bの内面の境界部分には、エアー整流部材5が介在している)。
なお、エアー導入路32を形成する一対の側板32a,32bの各内面は、上述のように傾斜しているので、エアー導入路32を形成する側板32a,32bの内面は、エアーチャンバー31を形成する側板の内面31a,31bに対して鈍角状に曲がって連続している。
【0024】
なお、図6は、エアーチャンバー31を形成する一対の側板31a,31bの内面とエアー導入路32を形成する一対の側板32a,32bの内面とが鈍角状に曲がって連続していることを判りやすく示すため、図4からエアー整流部材を省略した断面図である。図6において、前記側板31a,31bと側板32a,32bの境界部分には、凹状部が形成されているが、これは、エアー整流部材の側部を嵌め入れるための嵌合溝9である。エアー整流部材の側面とこれら側板31a,…の内面を面接合してもよいので、この嵌合溝9は形成されていなくてもよい。
【0025】
エアー導入路32の下部に連通されたエアー噴射口33は、エアー導入路32と略同じ長さで長手方向に延びる細長状であり、エアー噴射口33の幅は、エアー導入路32の下部の幅(エアー導入路32の最小幅)に略等しい。
エアー噴射口33及び加工用流体噴射口23の幅は、従来の噴射ノズルと同程度に設定でき、例えば、エアー噴射口33の幅は、0.2mm〜2mm程度であり、加工用流体噴射口23の幅は、1mm〜5mm程度である。
エアー噴射口33、一方の加工用流体導入路22及び加工用流体噴射口23の各幅の大小関係も適宜設定できる。本実施形態では、エアー噴射口33の幅<加工用流体導入路22の幅<加工用流体噴射口23の幅、に設定されている。
【0026】
さらに、前記エアーチャンバー31とエアー導入路32の間には、エアー整流部材5が設けられている。エアー整流部材5は、例えば、エアーチャンバー31とエアー導入路32の境界部分に設けられている。
このエアー整流部材5は、エアーチャンバー31及びエアー導入路32を通じてエアー噴射口33から出るエアーを、エアー噴射口33の長手方向全体において略均一に噴射させる作用を有する。
上記エアーチャンバー31は細長状であるため、このエアーチャンバー31に供給されたエアーは、エアー噴射口33の長手方向中央部においては強く噴射されるが、長手方向両端部においてはこれよりも弱くなる。従って、エアー整流部材5は、エアーチャンバー31からエアー導入路32に流れるエアーを、その長手方向中央部において通過し難く且つ長手方向両端部側に向かうに従って通過し易くなるように構成されている。
【0027】
具体的には、エアー整流部材5は、エアーチャンバー31とエアー導入路32の間に気密状態で取り付けられ且つ両者31,32の空間を仕切るための仕切板51と、前記仕切板51の厚み方向(取り付けられた状態では上下方向)に貫通する複数の貫通孔52と、を有する。仕切板51は、長手方向に延びる帯状体である。貫通孔52は、エアーを通過させるための開口であり、その平面視形状は特に限定されず、略円形状、略矩形状などが挙げられる。
【0028】
各貫通孔52は、前記仕切板51の中央部における単位面積当たりの開口面積が、仕切板51の長手方向両端部における単位面積当たりの開口面積よりも小さくなるように形成され、好ましくは、単位面積当たりの貫通孔52の開口面積が、長手方向中央部から両端部に向かうに従って小さくなるように形成されている。
単位面積当たりの貫通孔の開口面積とは、単位面積(例えば、1cm×1cm)の中に含まれる貫通孔の開口面積であり、その単位面積中に複数の貫通孔が含まれている場合には、その単位面積で囲われる範囲内の貫通孔の開口面積の総和である。
このように仕切板51の中央部における単位面積当たりの貫通孔の開口面積が、その長手方向両端部における単位面積当たりの貫通孔の開口面積よりも小さい、エアー整流部材5としては、例えば、図7(a)〜(d)に示すようなものが挙げられる。
【0029】
図7(a)に示すエアー整流部材5は、仕切板51に形成された各貫通孔52について、仕切板51の長手方向中央部の貫通孔52の大きさ(開口面積)が最も小さく且つ両端部側に向かうに従ってその大きさ(開口面積)が大きい。
なお、この図示例において、各貫通孔52の形成間隔(長手方向において隣接する貫通孔52の中心間の距離)は、同じであるが、この例においても、後述するものと同様に、各貫通孔52の形成間隔が両端部に向かうに従って短くなっていてもよい。
この図示例において、貫通孔52は、幅方向に2列形成されているが、1列でもよいし、或いは3列以上でもよい。また、貫通孔52は、円形状であるが、これ以外の形状でもよい。
【0030】
同図(b)に示すエアー整流部材5は、仕切板51に形成された各貫通孔52の大きさは同じであるが、各貫通孔52の形成間隔(長手方向において隣接する貫通孔52の中心間の距離)が両端部に向かうに従って短くなっている。
この図示例において、貫通孔52は、幅方向に2列形成されているが、1列でもよいし、或いは3列以上でもよい。また、貫通孔52は、円形状であるが、これ以外の形状でもよい。
【0031】
同図(c)に示すエアー整流部材5は、各貫通孔52の形状が長方形状であること及び貫通孔52が幅方向に1列で形成されていることを除いて、上記(b)に示すエアー整流部材5と同様である。
なお、この図示例において、貫通孔52は、幅方向に2列以上形成することもできる。
【0032】
同図(d)に示すエアー整流部材5は、貫通孔52が仕切板51の長手方向に延びる細長状であって、その貫通孔52の幅が中央部において最も狭く且つ両端部に向かうに従って次第に広くなっている。
この図示例において、細長状の貫通孔52は、幅方向に2列形成されているが、1列でもよいし、或いは3列以上でもよい。
【0033】
上記ブラスト用噴射ノズル1は、次にようにして使用される。
加工用流体供給管24から加工用流体が加工用流体チャンバー21に入れられ、同時に、エアーがエアー供給管34からエアーチャンバー31に圧入される。
加工用流体チャンバー21に入った加工用流体は、加工用流体チャンバー21を形成する両側板21a,21bの内面とエアーチャンバー31を形成する両側板31a,31bの外面の間を通り、加工用流体導入路22に流れる。
【0034】
一方、エアーチャンバー31に入ったエアーは、エアー整流部材5の各貫通孔52を通過して、エアー導入路32に流れる。このエアー整流部材5により、エアーは、エアー導入路32の長手方向全体に略均一に流入される。
エアー導入路32に流れたエアーは、エアー導入路32内で乱れることなく下方に流れてエアー噴射口33から出て、加工用流体導入路22の加工用流体を加速させる。エアーによって加速された加工用流体は、流路25を通じて加工用流体噴射口23から噴射される。
【0035】
このエアー導入路32はエアー噴射口33側に向かうに従って次第に幅狭とされているので、エアー導入路32を通過している間にエアーの速度が低下し難い。従って、エアー供給管34から入れられたエアーの流速と殆ど同程度の速度で、エアー噴射口33からエアーが噴射され得るので、加工用流体噴射口23の長手方向全体から均一に且つ勢いよく加工用流体を噴射することができる。よって、上記ブラスト用噴射ノズル1を用いれば、加工対象物を略均一に且つ十分に加工することができる。
【0036】
本発明のブラスト用噴射ノズルは、上記実施形態に限られず、本発明の意図する範囲で様々に設計変更できる。
例えば、上記実施形態においては、加工用流体噴射口23が比較的長いブラスト用噴射ノズルを例示したが、これよりも加工用流体噴射口23が短いブラスト用噴射ノズルに適用することも可能である。
【0037】
図8〜10は、加工用流体噴射口23の長手方向長さが比較的短い(例えば、40mm〜80mm)、変形例に係るブラスト用噴射ノズル10を示している。
この変形例のブラスト用噴射ノズル10においては、エアーチャンバー31内にエアーを入れる連通管36が、エアーチャンバー31の長手方向中央部に1箇所設けられている。
また、このブラスト用噴射ノズル10においては、エアー整流部材5は設けられていない。加工用流体噴射口23が比較的短い(それに対応してエアー噴射口33が比較的短い)ので、エアー整流部材5を設けなくても、エアーが、上記実施形態と同様に、エアーチャンバー31からエアー導入路32の長手方向全体に略均一に流入した後、エアー噴射口33の長手方向全体から略均一に噴射される。
また、上記実施形態と同様に、エアーチャンバー31及びエアー導入路32を形成する一対の側板31a,31b,32a,32bの各内面は、それぞれ平坦状であり、エアーチャンバー31の下部内面とエアー導入路32の上部内面は鈍角状に曲がって連続している。
なお、変形例のブラスト用噴射ノズル10は、エアー整流部材を設けないので、上記実施形態のように、側板31a,31bと側板32a,32bの境界部分にエアー整流部材の側部を嵌め入れるための嵌合溝が形成されていない。従って、エアーチャンバー31を形成する側板31a,31bの内面とエアー導入路32を形成する側板32a,32bの内面との境界には段差がなく、両側板の内面は円滑な連続面を形成している。
このように、エアーチャンバー31の下部内面とエアー導入路32の上部内面は、何れも平坦状で且つ両内面間には段差がなく連続しているので、エアーの圧力損失も小さく、エアーが円滑に流れる。従って、エアー噴射口33から出るエアーの圧力も低下し難いので、より強く加工対象物を加工できる。
【0038】
変形例のブラスト用噴射ノズル10のその他の構成は、上記実施形態のブラスト用噴射ノズル1と同様である。以下、それらの構成の説明を省略し、図8〜10において、上記実施形態と同様の構成を示す部分に同一符号を付す。
この変形例のブラスト用噴射ノズル10を用いても、上記実施形態のブラスト用噴射ノズル1と同様に、加工対象物を略均一に且つより強い勢いを以て加工することができる。
なお、変形例に係るブラスト用噴射ノズル10においては、エアー整流部材5が設けられていないが、これを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のブラスト用噴射ノズルは、スラリーなどの加工用流体を加工対象物に噴射するために利用できる。ブラスト用噴射ノズルを用いて噴射する加工用流体がスラリーである場合には、加工対象物を十分に研磨できる。
【符号の説明】
【0040】
1,10…ブラスト用噴射ノズル
2…ノズル本体
21…加工用流体チャンバー
22…加工用流体導入路
23…加工用流体噴射口
3…エアーノズル
31…エアーチャンバー
32…エアー導入路
33…エアー噴射口
5…エアー整流部材
51…仕切板
52…貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工用流体チャンバーと、前記加工用流体チャンバーの下部に連通した加工用流体導入路と、前記加工用流体導入路の下部に連通し且つ一方向に延びる細長状の加工用流体噴射口と、を有するノズル本体と;
エアーチャンバーと、前記エアーチャンバーの下部に連通したエアー導入路と、前記エアー導入路の下部に連通し且つ前記加工用流体噴射口と同じ方向に延びる細長状のエアー噴射口と、を有し、前記加工用流体導入路に前記エアー噴射口が位置するようにして前記加工用流体チャンバー内に配置されたエアーノズルと;を有し、
前記エアー導入路が、前記エアー噴射口と同じ方向に延びる細長状で且つ前記エアー噴射口側に向かうに従って次第に幅狭とされていることを特徴とするブラスト用噴射ノズル。
【請求項2】
前記エアーチャンバーとエアー導入路の間に、エアー整流部材が設けられている、請求項1に記載のブラスト用噴射ノズル。
【請求項3】
前記エアー整流部材が、前記エアーチャンバーとエアー導入路の間に設けられる仕切板と、前記仕切板の厚み方向に貫通された複数の貫通孔と、を有し、前記仕切板の中央部における単位面積当たりの貫通孔の開口面積が、前記仕切板の一方向両端部における単位面積当たりの貫通孔の開口面積よりも小さい、請求項2に記載のブラスト用噴射ノズル。
【請求項4】
前記エアーチャンバーの下部内面と前記エアー導入路の上部内面が鈍角状に曲がって連続している、請求項1に記載のブラスト用噴射ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−245597(P2011−245597A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122198(P2010−122198)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(501449528)イワタニエレクトロニクス株式会社 (4)
【出願人】(510149286)株式会社富士精工 (1)
【Fターム(参考)】