説明

ブリスクまたはブリングの製造方法、該製造方法により製造された構成部品、及びタービンブレード

本発明はガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)の製造方法に関し、この製造方法は、a)タービンブレード(10)の翼根を構成するための部材であり溶融溶接に適した金属材料から成るアダプタ部材(16)に翼体形成部材(12)を接合することによって、少なくとも1個のタービンブレード(10)を製作するステップと、b)前記タービンブレード(10)を溶融溶接に適した金属材料から成るロータディスク(22)または溶融溶接に適した金属材料から成るロータリングに一体結合して、該タービンブレード(10)を該ロータディスク(22)または該ロータリングの外周部(26)に配設するステップとを含んでいる。本発明は更に例えばブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)などのガスタービンまたは高圧コンプレッサまたは低圧コンプレッサの構成部品に関する。本発明によれば、この構成部品(30)は、各々が別個に製作された複数個のタービンブレード(10)または各々が別個に製作された複数個のタービンブレード(10)から製作されたタービンブレード環状集合体(28)と、前記複数個のタービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)と一体結合された溶融溶接に適した金属材料から成るロータディスク(22)、または、前記複数個のタービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)と一体結合された溶融溶接に適した金属材料から成るロータリングとで構成されており、前記複数個のタービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)は前記ロータディスク(22)または前記ロータリングの外周部(26)に配設されており、前記複数個のタービンブレード(10)は、その各々が、翼体形成部材(12)と、該翼体形成部材(12)に固定された溶融溶接に適した金属材料から成るアダプタ部材(16)とで構成されており、前記アダプタ部材(16)は前記タービンブレード(10)の翼根を構成するように形成されている。本発明は更に、新規なタービンブレードに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)の製造方法に関する。本発明は更に、該製造方法により製造された構成部品、並びに、翼体形成部材と翼根形成部材とで構成されたタービンブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
ブリスク(ブレード付きディスク)及びブリング(ブレード付きリング)は、ロータの構成を示し、これらブレードは、支持ディスクあるいは支持リングと一体的に構成される。これらロータの構成の利点は、ディスクないしリングの周縁部に発生する応力が小さくなるようにディスクないしリングの形状を最適化できること、それに、これらロータ構成部品を用いて構成する構造全体の重量を軽減できることにある。この場合、コンプレッサ段のブリスクの製造には材料としてチタン系合金またはニッケル系合金が用いられ、特に、フライス加工によって、また、ときには更に直動摩擦圧接法や電気化学的蝕刻法なども用いて製造される。コンプレッサ段のブリスクでは、通常、ディスクの材料とタービンブレードの材料とは同一材料である。一方、タービン段では、機械的条件及び熱的条件を満足するためには、ディスクの材料とタービンブレードの材料とを異なった材料にせざるを得ない。鋳造法を用いて製作するタービンブレードは、その組織が多結晶一方向性凝固組織または単結晶組織となるため、材料中のγ’相の割合が高く、そのため溶融溶接には適さないものとなる。一方、タービン段のディスクは、溶融溶接に適した材料で製作することが多く、例えば「インコネル718」(登録商標)などの材料が用いられる。従って、タービン段のブリスクを製造する上では、それら異なった材料を互いに接合しなければならない。これに関して考慮すべきことは、例えば直動摩擦圧接法などの接合方法は、圧接力を加える必要があることから、このようなタービン段のブリスクを製造するための接合方法としては、全く若しくは非常に不適当な方法であることである。ブリングについても同じことがいえる。かかる制約があるため、公知の製造方法は適用対象が限られていた。更に加えて、公知の製造方法は往々にして手順が非常に複雑であり、そのため高コストとなっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の目的は、ガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)の製造方法であって、比較的容易に、そして低コストで実施することのできる製造方法を提供することにある。
【0004】
また、本発明の目的は、比較的容易に、そして低コストで製造することのできる構成部品を提供することにある。
【0005】
また、本発明の目的は、比較的容易に、そして低コストで製造することのできるタービンブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、夫々、請求項1に記載の特徴を備えた方法、請求項14に記載の特徴を備えた構成部品、それに、請求項21に記載の特徴を備えたタービンブレードによって達成される。
【0007】
従属請求項は、本発明の特に有利な実施の形態に関する特徴を記載したものである。
【0008】
本発明に係る製造方法はガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)の製造方法であって、この製造方法は、a)タービンブレードの翼根を構成するための部材であり溶融溶接に適した金属材料から成るアダプタ部材に翼体形成部材を接合することによって、少なくとも1個のタービンブレードを製作するステップと、b)前記タービンブレードを溶融溶接に適した金属材料から成るロータディスクまたは溶融溶接に適した金属材料から成るロータリングに一体結合して、該タービンブレードを該ロータディスクまたは該ロータリングの外周部に配設するステップとを含むものである。本発明によれば、溶融溶接に適した金属材料から成るアダプタ部材に翼体形成部材を接合してタービンブレードを製作するため、ブリスクまたはブリングを製造する際に、公知の製造方法で用いられている例えば圧接法、高温ロウ付け法、拡散ロウ付け法などの接合方法を使用せずに済むことが利点となる。また、ブリスクまたはブリングの製造における最大の問題点である、鋳造品のタービンブレードを鍛造品のディスクまたはリングに接合する接合工程に関して、その工程数が格段に低減されることから、本発明の方法は容易に、そして低コストで実施し得るものとなっている。尚、前記ステップa)における前記タービンブレードの製作は、圧接法、低周波または高周波による電磁誘導圧接法、直動摩擦圧接法、または拡散接合法を用いて行うとよい。
【0009】
本発明の特に有利な1つの実施の形態では、前記ステップb)の実行に先立って、前記ステップa)において製作した複数個の前記タービンブレードからタービンブレード環状集合体を製作し、続いて、前記ステップb)において、前記タービンブレード環状集合体を、溶融溶接に適した金属材料から成る前記ロータディスク、または、溶融溶接に適した金属材料から成る前記ロータリングに一体結合して、該タービンブレード環状集合体を該ロータディスクまたは該ロータリングの外周部に配設するようにしている。こうすることにより、製作技術的に比較的簡明で、しかも低コストの、ガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)の製造方法が得られる。前記タービンブレード環状集合体の製作は、前記複数個の前記タービンブレードの夫々の翼根を構成している複数個の前記アダプタ部材を連接させて接合することにより行うようにするとよい。前記アダプタ部材は溶融溶接に適した金属材料から成るものであるため、前記アダプタ部材どうしを接合する方法としては、例えば電子ビーム溶接法などの溶融溶接法を用いることができる。前記タービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体を前記ロータディスクまたは前記ロータリングに一体結合するための接合についても同様のことがいえ、なぜならば、前記ロータディスク及び前記ロータリングもまた、溶融溶接に適した金属材料から成るものだからである。本発明においては、この一体結合のための接合技法にも同じ接合技法を用いることができ、即ち、例えば電子ビーム溶接法などの溶融溶接法を用いることができる。本発明の更なる実施の形態として、前記アダプタ部材の材料と前記ロータディスクまたは前記ロータリングの材料とを同一材料とするのもよい。その場合に、その材料は、例えば耐熱ニッケル合金などの鍛造用合金とするとよい。一方、前記翼体形成部材の材料は、例えば耐熱ニッケル合金などの鋳造用合金とするとよい。
【0010】
本発明に係る方法の更なる実施の形態では、前記タービンブレード環状集合体を前記ロータディスクまたは前記ロータリングに焼嵌めにより装着するようにしている。これを確実に行えるようにするには、前記タービンブレード環状集合体の内径寸法、前記ロータディスクの外径寸法、及び前記ロータリングの外径寸法を所要の寸法にしておく。焼嵌めにより装着することによって、前記ブリスクまたは前記ブリングの構成部品どうしが密着して締結される。
【0011】
本発明に係る方法の特に有利な更なる実施の形態では、前記タービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体を前記ロータディスクまたは前記ロータリングに一体結合した後に、前記タービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体の、互いに隣り合う前記タービンブレードどうしの間の領域に部分的な削り取り加工を施し、それによって夫々の前記タービンブレードの翼根の部分だけが、前記ロータディスクまたは前記ロータリングに一体結合して残るようにしている。一方、次のようにすることも可能であり、それは、前記タービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体を前記ロータディスクまたは前記ロータリングに一体結合した後に、前記タービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体の、互いに隣り合う前記タービンブレードどうしの間の領域に部分的な削り取り加工を施し、それによって前記タービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体と前記ロータディスクまたは前記ロータリングとの間に形成されている接合面を部分的に削り取り、該接合面を断続的な面にするというものである。前記タービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体の前記タービンブレード間領域の削り取り加工、及び/または、前記ロータディスクまたは前記ロータリングの削り取り加工は、例えば、電気化学的蝕刻加工、及び/または、放電加工などによって行うとよい。ただし例えばボーリング加工やフライス加工などの、その他の方法によって行うことも可能である。
【0012】
本発明に係る構成部品は例えばブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)などのガスタービンの構成部品であり、この構成部品は、各々が別個に製作された複数個のタービンブレードまたは各々が別個に製作された複数個のタービンブレードから製作されたタービンブレード環状集合体と、前記複数個のタービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体と一体結合された溶融溶接に適した金属材料から成るロータディスク、または、前記複数個のタービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体と一体結合された溶融溶接に適した金属材料から成るロータリングとで構成されており、前記複数個のタービンブレードまたは前記タービンブレード環状集合体は前記ロータディスクまたは前記ロータリングの外周部に配設されており、前記複数個のタービンブレードは、その各々が、翼体形成部材と、該翼体形成部材に固定された溶融溶接に適した金属材料から成るアダプタ部材とで構成されており、前記アダプタ部材は前記タービンブレードの翼根を構成するように形成されている。本発明に係る構成部品は、その構成が以上の通りのものであるため、また特に、前記タービンブレードが以上のように構成されているため、比較的容易に、そして低コストで製作することができるものとなっている。また特に、この構成部品を製造する際の接合工程に関して、その工程数が従来の製造方法と比べて格段に低減されている。更に、前記タービンブレードの翼根を構成する前記アダプタ部材を溶融溶接に適した金属材料から成るものとしているため、複数個の前記タービンブレードから成る前記タービンブレード環状集合体を製作する際に、前記アダプタ部材どうしを例えば電子ビーム溶接法などの溶融溶接法により接合することが可能となっている。個々の前記タービンブレードを、または、前記タービンブレード環状集合体を、対応する前記ロータディスクまたは前記ロータリングに一体結合するのにも、同様の接合技法を用いることができ、それは、前記ロータディスク及び前記ロータリングもまた、溶融溶接に適した金属材料から成るものとしているからである。また、前記アダプタ部材の材料は、前記ロータディスクまたは前記ロータリングの材料と同一材料とするとよい。本発明の特に有利な1つの実施の形態では、その材料を、例えば耐熱ニッケル合金などの鍛造用合金としている。前記翼体形成部材を前記アダプタ部材に接合するための接合技法としては、通常、圧接法、低周波または高周波による電磁誘導圧接法、直動摩擦圧接法、または拡散接合法を用いるとよく、なぜならば、翼体形成部材の材料は通常、溶融溶接に適さない、例えば耐熱ニッケル合金などの鋳造用合金だからである。
【0013】
本発明に係る構成部品の特に有利な1つの実施の形態においては、その構成部品が、前記ロータディスクまたは前記ロータリングを覆う少なくとも1つのシュラウドバンドを備えている。また、このシュラウドバンドは特に、ガスタービン内の高温ガスを遮蔽するものである。更に、その構成部品が、アウターシュラウドバンドを備えているようにするのもよい。
【0014】
また特に、本発明に係る構成部品は、先に記載した方法により製造されるものである。
【0015】
本発明に係るタービンブレードは翼体形成部材と翼根形成部材とで構成されたガスタービンのタービンブレードであり、前記翼体形成部材は溶融溶接に適さない金属材料から成り、前記翼根形成部材は溶融溶接に適した金属材料から成るものである。本発明に係るタービンブレードは、互いに異なった金属材料から成る2個の部材で構成されるものであるため、容易に、そして低コストで製作することができる。更に、翼根形成部材を溶融溶接に適した金属材料から成るものとしているため、このタービンブレードを用いる場合に、また特に、複数個のタービンブレードから成るタービンブレード環状集合体を製作する場合に、更なる利点が得られ、それは、個々のタービンブレードどうしの接合を、例えば圧接法や従来のロウ付け法などを用いることなく行えることである。このように個々のタービンブレードどうしを容易に接合できることは、公知のタービンブレードとは対照的な点である。また特に、前記翼根形成部材が個別のアダプタ部材として形成されているようにし、互いに接合された複数個の前記アダプタ部材によってタービンブレード環状集合体のリング部が形成されるようにするとよい。本発明の特に有利な1つの実施の形態においては、前記翼体形成部材は鋳造用合金から成り、前記アダプタ部材は鍛造用合金から成る。また、前記鍛造用合金及び/または前記鋳造用合金は、耐熱ニッケル合金とするとよい。
【0016】
以上に説明した本発明に係る方法、本発明に係る構成部品、及び本発明に係るタービンブレードは、ガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)を補修するために用い得るものである。
【0017】
本発明の更なる利点、特徴、及び細部構成については、図面に示した実施の形態についての以下の説明を通して明らかにして行く。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る構成部品を製造するための部品である本発明に係るタービンブレードを示した模式図である。
【図2】本発明に従って接合を行って製作したタービンブレード環状集合体を示した模式図である。
【図3】本発明に従って接合を行って製造した第1の実施の形態に係る構成部材を示した模式図である。
【図4】本発明に従って接合を行って製造した第2の実施の形態に係る構成部材を示した模式図である。
【図5】本発明に従って接合を行って製造した第3の実施の形態に係る構成部材を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に模式図で示したのはガスタービンの一部としての、特に、ブリスクまたはブリングの一部としてのタービンブレード10である。図から明らかなように、このタービンブレード10は2個の部材を接合した構造を有する。翼体形成部材12は、溶融溶接に適さない材料から成り、第1接合面18においてアダプタ部材16に接合されている。アダプタ部材16はタービンブレード10の翼根を構成する部材である。翼体形成部材12とアダプタ部材16とは圧接法により接合してあり、その圧接法としては、例えば、直動摩擦圧接法、または高周波誘導圧接法、または拡散接合法などが用いられる。翼体形成部材12は鋳造用合金から成り、この鋳造用合金は例えば耐熱ニッケル合金などである。アダプタ部材16も同じく耐熱ニッケル合金から成り、ただしこの耐熱ニッケル合金は、鍛造用合金として調製された耐熱ニッケル合金である。タービンブレード10は更にインナーシュラウドバンド14を備えている。
【0020】
図2に模式図で示したのは、図1に示したタービンブレード10を複数個、互いに接合して構成したタービンブレード環状集合体28である。図から明らかなように、互いに接合された複数個のアダプタ部材16によって、このタービンブレード環状集合体28のリング部が形成されている。アダプタ部材16どうしは夫々に第2接合面20において接合されている。この接合は溶融溶接法によって行うことができ、例えば電子ビーム溶接法などの溶融溶接法により接合すればよい。図から明らかなように、第2接合面は放射方向に延在しており、それら第2接合面によってアダプタ部材16の側面どうしが接合されている。低圧タービン段のロータブレードは一般的に、アウターシュラウドバンドを備えると共にインナーシュラウドバンド14を備えているため、電子ビーム溶接法による接合はインナー側からアウター側へ向けて行わねばならない。更に、回転軸心に対する電子ビームの角度が90°以下になるため、アダプタ部材16の径方向高さ寸法をtとし、回転軸心と電子ビームとの成す角度をαとするとき、その溶接深さはt/sinαになる。またこれも図から明らかなように、接合を行ってタービンブレード環状集合体28が完成した状態では、図中に示した部分14によって、周方向に一周して延在するインナーシュラウドバンド14が形成されている。
【0021】
図3に模式図で示したのは、接合を行って製造した構成部品30である。この構成部品30はブリスクであり、ロータディスク22と、このロータディスク22の外周部26に接合されたタービンブレード環状集合体28とで構成されている。この構成部品30を製造するには、先ず、タービンブレード環状集合体28をロータディスク22に装着し、この装着は焼嵌めによって行うことが望ましい。続いて、タービンブレード環状集合体28をロータディスク22に一体結合し、その一体結合のための接合技法としては、例えば電子ビーム溶接法などの溶融溶接法を用いる。この接合により形成される第3接合面24は円筒面または僅かなテーパの付いた円錐面となる。第1の具体例では(図3参照)、これから接合しようとする接合面24の上方の固定位置に電子ビーム射出源を設置する。第2の具体例では、回転軸心の上方に電子ビーム射出源を設置する。この場合、電子ビームの高速ステアリングを行って複数本の電子ビームを形成するようにし、形成する電子ビームの本数を例えば3本とするのであれば、それら電子ビームが周方向に120°間隔で離隔するようにする。そして、構成部品30を回転テーブル上で360°回転させる。この方法を用いることによって、軸心方向の歪みを最小限にとどめることができる。図3は構成部品30の第1の実施の形態を示したものである。この実施の形態において、タービンブレード10の翼根を構成するアダプタ部材16は、以上のように接合した後に更に仕上加工を施す必要のない形状に予め形成されている。
【0022】
図4に示したのは、第2の実施の形態に係る構成部品30である。この第2の実施の形態に係る構成部品30もまたブリスクである。ただし図3に示した実施の形態と異なり、この実施の形態は、タービンブレード環状集合体28をロータディスク22に一体結合した後に、そのタービンブレード環状集合体28の、互いに隣り合うタービンブレード10どうしの間の領域に部分的な削り取り加工を施し、それによって夫々のタービンブレード10の翼根の部分32だけがロータディスク22に一体結合して残るようにしたものである。このタービンブレード環状集合体28のタービンブレード間領域の削り取り加工は、フライス加工、及び/または、電気化学的蝕刻加工、及び/または、放電加工などによって行うとよい。
【0023】
図5に示したのは、第3の実施の形態に係る構成部品30である。この第3の実施の形態に係る構成部品30もまたブリスクである。ただし図4に示した実施の形態と異なり、この実施の形態は、タービンブレード10をロータディスク22に直接的に、即ち、タービンブレード環状集合体28を製作するという過程を経ずに、一体結合したものである。更に、それらタービンブレード10をロータディスク22に一体結合した後に、それらタービンブレード10の、互いに隣り合うタービンブレード10どうしの間の領域に部分的な削り取り加工を施し、それによってタービンブレード10とロータディスク22との間に形成されている接合面24を部分的に削り取り、この接合面24を断続的な面にしたものである。
【0024】
図示した実施の形態はいずれも、図から明らかなように、製造過程において形成される接合領域は、公知の非破壊試験技術によって試験することが100%可能である。更に、考えられるあらゆる溶接ビードから外れた機械加工でさえ、容易な方法で可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)の製造方法において、
a)タービンブレード(10)の翼根を構成するための部材であり溶融溶接に適した金属材料から成るアダプタ部材(16)に翼体形成部材(12)を接合することによって、少なくとも1個のタービンブレード(10)を製作するステップと、
b)前記タービンブレード(10)を溶融溶接に適した金属材料から成るロータディスク(22)または溶融溶接に適した金属材料から成るロータリングに一体結合して、該タービンブレード(10)を該ロータディスク(22)または該ロータリングの外周部(26)に配設するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ステップb)の実行に先立って、前記ステップa)において製作した複数個の前記タービンブレード(10)からタービンブレード環状集合体(28)を製作し、続いて、前記ステップb)において、前記タービンブレード環状集合体(28)を、溶融溶接に適した金属材料から成る前記ロータディスク(22)、または、溶融溶接に適した金属材料から成る前記ロータリングに一体結合して、該タービンブレード環状集合体(28)を該ロータディスク(22)または該ロータリングの外周部(26)に配設することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップa)における前記タービンブレード(10)の製作を、圧接法、低周波または高周波による電磁誘導圧接法、直動摩擦圧接法、または拡散接合法を用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記タービンブレード環状集合体(28)の製作を、前記複数個の前記タービンブレード(10)の夫々の翼根を構成している複数個の前記アダプタ部材(16)を連接させて接合することにより行うことを特徴とする請求項2又は3記載の方法。
【請求項5】
前記接合を行う方法が、例えば電子ビーム溶接法などの溶融溶接法であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記タービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)を前記ロータディスク(22)または前記ロータリングに一体結合するために、接合技法を用いることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の方法。
【請求項7】
前記接合技法は、例えば電子ビーム溶接法などの溶融溶接法であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記タービンブレード環状集合体(28)を前記ロータディスク(22)または前記ロータリングに焼嵌めにより装着することを特徴とする請求項2乃至7の何れか1項記載の方法。
【請求項9】
前記タービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)を前記ロータディスク(22)または前記ロータリングに一体結合した後に、前記タービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)の、互いに隣り合う前記タービンブレード(10)どうしの間の領域に部分的な削り取り加工を施し、それによって夫々の前記タービンブレード(10)の翼根の部分(32)だけが、前記ロータディスク(22)または前記ロータリングに一体結合して残るようにすることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の方法。
【請求項10】
前記タービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)を前記ロータディスク(22)または前記ロータリングに一体結合した後に、前記タービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)の、互いに隣り合う前記タービンブレード(10)どうしの間の領域に部分的な削り取り加工を施し、それによって前記タービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)と前記ロータディスク(22)または前記ロータリングとの間に形成されている接合面(24)を部分的に削り取り、該接合面(24)を断続的な面にすることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の方法。
【請求項11】
前記タービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)の前記タービンブレード間領域の削り取り加工、及び/または、前記ロータディスク(22)または前記ロータリングの削り取り加工を、フライス加工、及び/または、電気化学的蝕刻加工、及び/または、放電加工によって行うことを特徴とする請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
前記アダプタ部材(16)の材料と前記ロータディスク(22)または前記ロータリングの材料とが同一材料であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の方法。
【請求項13】
前記材料は、例えば耐熱ニッケル合金などの鍛造用合金であることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
例えばブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)などのガスタービンの構成部品において、
該構成部品(30)は、各々が別個に製作された複数個のタービンブレード(10)または各々が別個に製作された複数個のタービンブレード(10)から製作されたタービンブレード環状集合体(28)と、前記複数個のタービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)と一体結合された溶融溶接に適した金属材料から成るロータディスク(22)、または、前記複数個のタービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)と一体結合された溶融溶接に適した金属材料から成るロータリングとで構成されており、
前記複数個のタービンブレード(10)または前記タービンブレード環状集合体(28)は前記ロータディスク(22)または前記ロータリングの外周部(26)に配設されており、
前記複数個のタービンブレード(10)は、その各々が、翼体形成部材(12)と、該翼体形成部材(12)に固定された溶融溶接に適した金属材料から成るアダプタ部材(16)とで構成されており、前記アダプタ部材(16)は前記タービンブレード(10)の翼根を構成するように形成されている、
ことを特徴とする構成部品。
【請求項15】
前記構成部品(30)は、前記ロータディスク(22)または前記ロータリングを覆うシュラウドバンド(14)を備えていることを特徴とする請求項14記載の構成部品。
【請求項16】
前記アダプタ部材(16)の材料と前記ロータディスク(22)または前記ロータリングの材料とが同一材料であることを特徴とする請求項14又は15記載の構成部品。
【請求項17】
前記材料は、例えば耐熱ニッケル合金などの鍛造用合金であることを特徴とする請求項16記載の構成部品。
【請求項18】
前記翼体形成部材(12)の材料は、例えば耐熱ニッケル合金などの鋳造用合金であることを特徴とする請求項14乃至17の何れか1項記載の構成部品。
【請求項19】
前記構成部品(30)は、アウターシュラウドバンドを備えていることを特徴とする請求項14乃至18の何れか1項記載の構成部品。
【請求項20】
請求項1乃至11の何れか1項記載の方法により製造されたことを特徴とする請求項14乃至19の何れか1項記載の構成部品。
【請求項21】
翼体形成部材(12)と翼根形成部材とで構成されたガスタービンのタービンブレードにおいて、前記翼体形成部材(12)は溶融溶接に適さない金属材料から成り、前記翼根形成部材は溶融溶接に適した金属材料から成ることを特徴とするタービンブレード。
【請求項22】
前記翼根形成部材は個別のアダプタ部材(16)として形成されており、互いに接合された複数個の前記アダプタ部材(16)によってタービンブレード環状集合体(28)のリング部が形成されるようにしてあることを特徴とする請求項21記載のタービンブレード。
【請求項23】
前記翼体形成部材(12)は鋳造用合金から成り、前記アダプタ部材(16)は鍛造用合金から成ることを特徴とする請求項21又は22記載のタービンブレード。
【請求項24】
前記鍛造用合金及び/または前記鋳造用合金は耐熱ニッケル合金であることを特徴とする請求項21記載のタービンブレード。
【請求項25】
ガスタービンのブリスク(ブレード付きディスク)またはブリング(ブレード付きリング)を補修するために用いることを特徴とする、請求項1乃至13の何れか1項記載の方法、請求項14乃至20の何れか1項記載の構成部品、または請求項21乃至24の何れか1項記載のタービンブレードの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−501019(P2011−501019A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529229(P2010−529229)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001667
【国際公開番号】WO2009/049596
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(391028384)エムテーウー・アエロ・エンジンズ・ゲーエムベーハー (26)
【住所又は居所原語表記】DACHAUER STRASSE 665,80995 MUENCHEN,GERMANY
【Fターム(参考)】