説明

ブレーキダストカバー

【課題】車体重量の増加および車体のコストアップを招くことなく、車輪主要部から車両ボディに伝わる振動によるノイズを抑制する車両用の部品(ブレーキダストカバー)を提供する。
【解決手段】車両のブレーキ装置を構成するブレーキロータ132を車両内側から覆うように、ナックル140とブレーキロータ132との間に配置される環状のブレーキダストカバー10であって、中心部にハブが挿通される貫通孔14が形成された板状のカバー部20と、カバー部20の外周縁に沿って形成されている所定質量を有するマス部25とを備えている。また、カバー部20は、貫通孔14の近傍がナックル140に固定され、マス部材25とナックル140とを連結するバネとして機能するようになされ、マス部25と、バネとして機能するカバー部20とにより、ナックル140に取り付けられたダイナミックダンパとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキダストカバーに関し、例えば、路面から跳ね上げられる石等からブレーキロータを保護すると共に、タイヤやホイール等で構成されるブレーキの周辺部品から車両ボディに伝わる振動を軽減する機能を備えるブレーキダストカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている自動車の車輪主要部の構造が特許文献1に開示されている。
ここで、特許文献1に開示されている自動車の車輪主要部の構造について、図5及び図6を用いて説明する。
図5は、従来技術による車両の車輪主要部を示す側面図である。また、図6は、図5に示す車輪主要部のA−A断面図である。
【0003】
図示する車輪主要部では、車輪がハブ202(図6参照)により保持され、ハブ202には、車輪と共に回転するブレーキ装置130のブレーキロータ(ディスクロータ)132が固定されている。また、ハブ202には、ナックル140がベアリング204(図6参照)を介して回転可能に接続されている。
【0004】
また、図6に示すように、ナックル140は、ベアリング204のアウタレース205の外周面205aに嵌合される円筒状の周壁142を備え、車輪内のブレーキロータ132よりも車両内側に配設される。
また、図5に示すようにナックル140は、その中心部から径方向外側に延在する複数のアーム部140a、140bを備え、アーム部140a、140bには、サスペンションアーム(ナックルアーム141を含む)やタイロッド等の取り付け部が設けられている。そして、ナックル140は、サスペンションアームを介して車体に支持されると共に、コントロールアーム(図示せず)に接続されている。また、ナックル140には、ブレーキパッドやキャリパ136等を支持するマウンティング134が取り付けられている。
【0005】
また、前記車輪主要部において、車両内外方向のブレーキロータ132とナックル140との間に、ブレーキダストカバー100が設けられている(このブレーキダストカバー100は、ナックル140に取り付けられている)。
具体的には、ブレーキダストカバー100は、ブレーキロータ132の車両内側を覆うように配設され、車輪内側からブレーキロータ132への小石や異物の侵入を防止すると共に、ブレーキ作動時に、キャリパ136やブレーキロータ132から発生するダスト(塵)が、周囲に発散することを防止している。
そして、上述した従来技術の車輪主要部を備える車両では、車輪主要部から車両ボディに伝わる振動によるノイズを軽減させるために、一般的に、車両ボディに、ノイズ低減のための専用の吸音材や遮音材を取り付けてノイズの抑制が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−273789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術の車輪主要を備える車両の車両ボディに、専用部品である吸音材や遮音材を取り付けてノイズの低減を図る手法は、車体重量の増加および車体のコストアップを招くという技術的課題を有していた。
そのため、車体重量の増加および車体のコストアップを招くことなく、車輪主要部から車両ボディに伝わる振動によるノイズを抑制する技術が望まれているが、現在のところそのような機能を備えた車両用の部品は知られていない。
【0008】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、車体重量の増加および車体のコストアップを招くことなく、車輪主要部から車両ボディに伝わる振動によるノイズを抑制することができる車両用の部品を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、車両のブレーキ装置を構成するブレーキロータを車両内側から覆うように、ナックルと該ブレーキロータとの間に配置される環状のブレーキダストカバーであって、中心部にハブが挿通される貫通孔が形成された板状のカバー部と、前記カバー部の外周縁に沿って形成されている所定質量を有するマス部とを備え、前記カバー部は、前記貫通孔の近傍が前記ナックルに固定され、前記マス部と前記ナックルとを連結するバネとして機能するようになされ、前記マス部と、前記バネとして機能するカバー部とにより、該ナックルに取り付けられたダイナミックダンパとして機能することを特徴としている。
【0010】
このように、本発明によれば、ナックルに固定されるブレーキダストカバーがダイナミックダンパとして機能するため、ブレーキダストカバーがナックルからの振動(タイヤやホイール等の振動)により発生する車両ボディのノイズを低減させることができる。
その結果、本発明によれば、従来技術のように、車両ボディにノイズ抑制のための専用の吸音材や遮音材を取り付ける必要がなくなるため、車両ボディの軽量化を図ると共に、車両ボディのコストの低減を図ることができる。
なお、本発明のブレーキダストカバーは、従来技術のものと同様、車輪内側からブレーキロータに小石等の異物が侵入することを防止すると共に、ブレーキ作動時において、キャリパやブレーキロータから発生するダスト(塵)が、周囲に発散することを防止する。
【0011】
また、前記カバー部には、補強リブが形成され、該補強リブにより、前記カバー部のバネ定数を設定できるようになされていることが望ましい。
また、前記マス部の質量と、前記カバー部の板厚寸法とにより前記ダイナミックダンパの周波数調整ができるようになされていることが望ましい。
このように、本発明によれば、補強リブやマス部の質量や、或いは、カバー部の板厚の設定により、ダイナミックダンパの周波数特性を調整できるようになされている。
そのため、本発明によれば、ブレーキダストカバーを搭載する車両の特性に応じて、補強リブやマス部の質量や、或いは、カバー部の板厚を調節することにより、車両ボディのノイズ対策を効果的に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブレーキダストカバーによれば、車体重量の増加および車体のコストアップを招くことなく、車輪主要部から車両ボディに伝わる振動によるノイズを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態のダイナミックダンパ機能を備えるブレーキダストカバーの平面図である。
【図2】図1に示すブレーキダストカバーのB-B断面を示した模式図である。
【図3】本発明の実施形態のブレーキダストカバーが有するダイナミックダンパ機能を説明するための模式図である。
【図4】本実施形態のブレーキダストカバーの変形例を示した模式図である。
【図5】従来技術による車両の車輪主要部を示す側面図である。
【図6】図5に示す従来技術の車輪主要部のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態のダイナミックダンパ機能を備えるブレーキダストカバーについて図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態のダイナミックダンパ機能を備えるブレーキダストカバーの平面図である。また、図2は、図1に示すブレーキダストカバーのB−B断面を示した模式図である。また、図3は、本発明の実施形態のブレーキダストカバーのダイナミックダンパとしての機能を説明するための模式図である。
なお、本実施形態は、ブレーキダストカバー10の構造に特徴があり、ブレーキダストカバー10以外の車両構成部品は、図5及び図6に示した従来技術のものと同じである。
そのため、以下では、ブレーキダストカバー10の構造および機能を中心に説明し、ブレーキダストカバー10以外の車両の構成部品の説明は、図5及び図6を用いて簡略化して説明する(車輪主要部のブレーキダストカバー10以外の構成部品については、図5及び図6に示したものと同じ符号を付して説明する)。
【0015】
本実施形態のブレーキダストカバー10は、上述した図5と同様、ブレーキロータ132とナックル140との間において、ブレーキロータ132の車両内側を覆うように配設され、ナックル140に固定されている(図2、図5参照)。
また、図1に示すように、ブレーキダストカバー10は、板状に形成され、その外形が車両のホイールの形状に対応した環状になされている。また、ブレーキダストカバー10は、ブレーキ装置130を構成するキャリパ136(図5参照)の配設位置に相当する位置に切り欠き部12が形成されている。
なお、ブレーキダストカバー10は、例えば、絞り成形を用いて板金から一体に成形されている。
【0016】
また、ブレーキダストカバー10の中心部には、ハブ202が挿通される貫通孔14が形成され、その貫通孔14のまわりには、板状のカバー部20が形成されている。
また、ブレーキダストカバー10は、カバー部20が、ボルト等によりナックル140に取り付けられている(ナックルへの固定は従来技術と同様である)。
【0017】
具体的には、図1に示すように、ブレーキダストカバー10は、貫通孔14のまわりに形成された板状のカバー部20と、カバー部20の外周縁に沿って形成されている所定質量を有するマス部25(図1において斜線で示す領域)とを備えている(なお、切り欠き部12には、マス部25は形成しないものとする)。また、図2に示すように、貫通孔14の近傍のカバー部20がナックル140に固定されている(図2には示さないが、ナックル140に、前記カバー部の複数箇所が固定される)。
【0018】
この構成により、ブレーキダストカバー10は、外周縁のマス部25がマス部材となり、板状のカバー部20が前記マス部材とナックル140とを連結するバネとなり、ブレーキダストカバー10全体がダイナミックダンパとして機能する。
そのため、ナックル140に本実施形態のブレーキダストカバー10を取り付けることにより、ナックル140からの振動(タイヤやホイール等の振動)により発生する車両ボディのノイズ(例えば、ロードノイズ等)を低減させることができる。
【0019】
すなわち、図3に示すように、本実施形態のダイナミックダンパの機能を備えるブレーキダストカバー10をタイヤ50及びホイール55を支持するナックル140(図3には示さず)に取り付けることにより、ナックル140(図3に示さず)からコントロールアーム57を介して、車両ボディWに伝わる振動レベルを低減させることができる。
なお、本実施形態のブレーキダストカバー10は、従来技術のものと同様、車輪内側からブレーキロータ132に小石等の異物が侵入することを防止する。また、ブレーキダストカバー10は、ブレーキ作動時において、キャリパ136やブレーキロータ132から発生するダスト(塵)が周囲に発散することを防止する。
【0020】
また、ブレーキダストカバー10のマス部25は、ブレーキダストカバー10の外周縁部(図1の斜線で示す領域)をマス部材として機能させることができれば、どのように形成されていてもかまわない。
例えば、前記マス部25の板厚寸法を、マス部25以外の領域(カバー部20)の板厚寸法よりも大きくなすことにより、マス部25に所定の質量を持たせるようにしてもよい。
また、前記ブレーキダストカバー10の外周縁部(図1の斜線で示す領域)に沿って、所定の質量を有する重りを装着して、マス部25を形成させるようにしてもよい。
【0021】
また、ブレーキダストカバー10が有するダイナミックダンパ機能の周波数調整は、マス部25の質量を調節したり、カバー部20の板厚寸法を調節したりすることにより行うことができる(カバー部20の板厚寸法を変更することでバネ定数を変更できる)。そのため、マス部25の質量およびカバー部20の板厚寸法は、ブレーキダストカバー10を搭載する車両に応じて、最適なものを選定して設定することが望ましい。
また、図4に示すように、カバー部20に補強リブ20aを設けて、この補強リブ20aによりバネ定数を調節するようにしてもよい。この場合、補強リブ20aの本数によりバネ定数を調節することもできる。
【0022】
以上説明したように、本実施形態では、一般的に用いられているブレーキダストカバー(例えば、図5に示すブレーキダストカバー100)の構造を改良することにより、ブレーキダストカバー10に、従来技術の機能に加えて、ダイナミックダンパの機能を持たせるようにしている。その結果、本実施形態によれば、ブレーキダストカバー10が、車輪主要部から車両ボディに伝わる振動によるノイズ低減するダイナミックダンパの役割を果たす。
すなわち、本実施形態のブレーキダストカバー10によれば、車両ボディにノイズ抑制のための専用の吸音材や遮音材を取り付ける必要がなくなるため、車体重量の増加および車体のコストアップを招くことなく、車輪主要部から車両ボディに伝わる振動によるノイズを抑制することができる。
【符号の説明】
【0023】
W 車両ボディ
10 ブレーキダストカバー
12 切り欠き部(ブレーキダストカバー)
14 貫通孔(ブレーキダストカバー)
20 カバー部(ブレーキダストカバー)
20a 補強リブ(カバー部(ブレーキダストカバー)
25 マス部(ブレーキダストカバー)
50 タイヤ
55 ホイール
57 コントロールアーム
130 ブレーキ装置
132 ブレーキロータ(ブレーキ装置)
136 キャリパ(ブレーキ装置)
134 マウンティング(ブレーキ装置)
140 ナックル
140a、140b アーム部(ナックル)
141 サスペンションアーム(ナックル)
202 ハブ
204 ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のブレーキ装置を構成するブレーキロータを車両内側から覆うように、ナックルと該ブレーキロータとの間に配置される環状のブレーキダストカバーであって、
中心部にハブが挿通される貫通孔が形成された板状のカバー部と、
前記カバー部の外周縁に沿って形成されている所定質量を有するマス部とを備え、
前記カバー部は、前記貫通孔の近傍が前記ナックルに固定され、前記マス部と前記ナックルとを連結するバネとして機能するようになされ、
前記マス部と、前記バネとして機能するカバー部とにより、該ナックルに取り付けられたダイナミックダンパとして機能することを特徴とするブレーキダストカバー。
【請求項2】
前記カバー部には、補強リブが形成され、該補強リブにより、前記カバー部のバネ定数を設定できるようになされていることを特徴とする請求項1に記載のブレーキダストカバー。
【請求項3】
前記マス部の質量と、前記カバー部の板厚寸法とにより前記ダイナミックダンパの周波数調整ができるようになされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブレーキダストカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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