説明

ブレーキペダル機構

【課題】この発明は、コスト低減可能で小型化を図ることができるブレーキペダル機構を提供するものである。
【解決手段】減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッドと、車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なように配設されるとともに、アーム根元部に入力軸が接続されアーム先端部に前記ブレーキペダルパッドが設置される入力アームと、前記入力アームと同一の回転軸にて回転可能なように配設されるとともに、アーム先端部にマスターシリンダーへの出力軸が接続される出力アームと、前記入力アームの前記入力軸と前記出力アームの前記出力軸の間に角度差を発生させる差動機構を備え、前記差動機構により前記入力アームの前記入力軸と前記出力アームの前記出力軸の間の角度差を変化させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば差動機構を有するブレーキペダル機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に自動車に使用される油圧ブレーキ装置は、ブレーキペダルに接続されたマスターシリンダーと車両の各車輪に接続されるディスクブレーキとが油圧配管により接続され、ドライバーがブレーキペダルを踏み込むことでマスターシリンダー内のピストンにより配管内の油圧を加圧し、ディスクブレーキにおいて車輪に接続したディスクローターをブレーキディスクパッドが油圧により挟み込むことで、車両に制動をかかる仕組みとなっている。
【0003】
またブレーキペダルとマスターシリンダー間にブレーキ負圧ブースターを設置しドライバーのブレーキ踏力のアシストを行ったり、マスターシリンダーと各ディスクブレーキ間にABS(アンチロック・ブレーキ・システム)やESC(横滑り防止装置)といった装置を設置し、滑りやすい路面での直進制動距離短縮を行ったり同じく滑りやすい路面での旋回挙動安定を行ったりもしている。
【0004】
一方、近年普及してきているHEV (ハイブリット車両)・EV (電気自動車)といった回生可能な動力源を持つ車両では、減速時のエネルギーを回収するため前述の油圧ブレーキとは別に回生ブレーキ装置を有している。
【0005】
回生ブレーキ装置は、これらの車両において走行のために使用するモーターを用いて発電し、減速時のエネルギーを回生するとともに、モーターに接続した車輪を介し車両に制動力を伝え、車両を減速する仕組みとなっている。
【0006】
しかし、回生ブレーキ装置を備えるHEV・EV車両では、ドライバーのブレーキペダルの踏み込みにより前述の油圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置の両方において車両の減速を行うため、回生ブレーキ装置を備えない車両に比べ、車両に大きな制動力が働くことになりドライバーに違和感を与えてしまう恐れがある。
【0007】
また、回生ブレーキ装置によるエネルギー回収を効率よく行うためには、一時的に油圧ブレーキ装置の無効化を行い回生ブレーキ装置のみにより制動を行うことが必要である。さらに、回生ブレーキ装置は、減速時に得たエネルギーを電気的なエネルギーをHEV・EV車両に設置されたバッテリーに充電することでエネルギーの回収を行うが、バッテリーの充電量が満充電である場合それ以上エネルギーの回収を行うことができず、結果的に油圧ブレーキ装置のみで制動力を発生しなくてはならない場合もある。
【0008】
このようなことを鑑みて特許文献1では、油圧ブレーキ装置の油圧配管を通常動作時は切り離しておき、コンピューター制御可能な独立した油圧源により各輪のディスクブレーキを動作させる仕組みを別途構成することで、ドライバーのペダル踏み込みに応じて自動的に油圧ブレーキ装置と回生ブレーキ装置の作動割合を変更するシステムを構築している。
【0009】
また、特許文献2では、ブレーキペダルとブレーキ負圧ブースターの間にストローク量を変更する機構を挿入し、ブレーキペダルの踏み込みに対するマスターシリンダー内のピストンストロークを調整することで油圧ブレーキ装置の作動割合を変更し、回生ブレーキ装置との協調動作を行う仕組みとなっている。
【0010】
またさらに、特許文献3では、それまでのブレーキ負圧ブースターを廃し、電動モーターによりアシストを行いさらに遊星歯車を用いることでストローク量を変更する仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3321951号公報
【特許文献2】特開2007−22105号公報
【特許文献3】特開2007−160992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、上述した従来の特許文献1に記載されたシステムでは、油圧ブレーキ装置の油
圧配管を一時的に切り離すブレーキバイワイヤーの構成を用いているため、これまでの車両に装備された油圧ブレーキ装置とは、ブレーキ装置の構成や油圧配管の経路が異なり複雑かつエンジンルーム側に多くの機材が必要となるといった問題点があった。そのため、通常の油圧ブレーキ装置との共通化が難しく、通常の油圧ブレーキ装置に比べコストがかかる問題点もあった。
【0013】
一方、上述した従来の特許文献2に記載されたシステムでは、ブレーキ負圧ブースター以降においてこれまで通りの油圧ブレーキ装置を用いているため、ブレーキ負圧ブースター以降の油圧配管経路で専用の設計を必要とせず共通化が可能となっている。しかし、ブレーキペダルとブレーキ負圧ブースターの間のストローク量を変更する箇所において、直線運動のままストローク量を変更する機構を採用しているため、機構自体が大きくならざるを得なく、車室内の運転席足下が窮屈になってしまい、本装置を搭載する車両では運転席足下の空間再設計が必要になるという問題点があった。
【0014】
また、上述した従来の特許文献3に記載されたシステムにおいては、装置自体にそれまでブレーキ負圧ブースターが行っていたブレーキ力のアシスト機能が内包された構成となっている。そのため、本装置では装置自体の出力に車両を安全に停止するのに必要なブレーキ力のアシストが必要となっており、ブレーキアシストに必要な出力及び熱容量を確保した電動モーターが必要となり、エンジンルーム側に通常のブレーキ負圧ブースター以上の設置空間が必要であるという問題点があった。またそれ以外にも前述の特許文献1同様に、通常の油圧ブレーキ装置との共通化が難しく、通常の油圧ブレーキ装置に比べコストがかかる問題点も併せ持っていた。
【0015】
この発明はかかる問題点の解決を目的としてなされたものであり、ブレーキペダル機構をドライバーのブレーキペダルパッド踏み込み量が入力される入力アームと、ブレーキ負圧ブースターへストローク量が出力される出力アームに分離し、それら入出力アームの回転軸間に回転角を可変にする差動機構を設けることで、エンジンルーム内においては油圧配管等の経路変更を必要とせず従来の油圧ブレーキ装置と共通化が可能でコスト低減可能な、また車室内においては従来よりも小型で運転席足下の空間設計変更の必要がないブレーキペダル機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明に係るブレーキペダル機構は、車両の運転席足下において車体に固定されるブラケットと、減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッドと、車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なように配設されるとともに、アーム根元部に入力軸が接続されアーム先端部に前記ブレーキペダルパッドが設置される入力アームと、前記
入力アームと同一の回転軸にて回転可能なように配設されるとともに、アーム根元部に出力軸が接続されアーム先端部にブレーキ負圧ブースターの入力ロッドが接続される出力アームと、前記入力アームの前記入力軸と前記出力アームの前記出力軸の間に角度差を発生させる差動機構を備え、前記差動機構により前記入力アームの前記入力軸と前記出力アームの前記出力軸の間の角度差を変化させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、車両の運転席足下において車体に固定されるブラケットと、減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッドと、車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なように配設されるとともに、アーム根元部に入力軸が接続されアーム先端部にブレーキペダルパッドが設置される入力アームと、入力アームと同一の回転軸にて回転可能なように配設されるとともに、アーム根元部に出力軸が接続されアーム先端部にブレーキ負圧ブースターの入力ロッドが接続される出力アームと、入力アームの入力軸と出力アームの出力軸の間に角度差を発生させる差動機構を備え、差動機構により入力アームの入力軸と出力アームの出力軸の間の角度差を変化させるようにしたことで、通常のブレーキペダル機構の設置空間を大きく損ねることなく従来の油圧ブレーキ装置と部品を共通化し、かつ減速制動を行う際のブレーキペダルパッドへの踏み込み量とブレーキ負圧ブースターへの出力であるストローク量を可変にする機能を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1に係るブレーキペダル機構を含めた車両全体におけるブレーキ装置の概略図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るブレーキペダル機構の構成を示した図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るブレーキペダル機構に用いる差動機構の構成概念を示した図である。
【0019】
【図4】この発明の実施の形態2に係るブレーキペダル機構の構成を示した図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係るブレーキペダル機構に用いる差動機構の構成概念を示した図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るブレーキペダル機構の構成を示した図である。
【図7】この発明の実施の形態4に係るブレーキペダル機構の構成を示した図である。
【図8】この発明の実施の形態7に係るブレーキペダル機構の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1〜図3に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係るブレーキペダル機構を含めた車両全体におけるブレーキ装置の概略図である。図2はこの発明の実施の形態1に係るブレーキペダル機構の構成を示した図である。図3はこの発明の実施の形態1に係るブレーキペダル機構に用いる差動機構の構成概念を示した図である。
【0021】
図1に示すように、この発明の実施の形態1におけるブレーキペダル機構101は車室内Aの運転席足下に設置され、ドライバーが減速制動を行う際のブレーキペダルパッドの踏み込み量を入力する。入力されたブレーキペダルパッドの踏み込み量はブレーキペダル機構101の差動機構を介して可変に調整され、ブレーキ負圧ブースター102の入力ロ
ッドにストローク量として出力される。
【0022】
ブレーキ負圧ブースター102はエンジンルーム内Bに設置され、入力ロッドが前記ブレーキペダル機構101に接続できるよう一部車室内Aに挿入されている。ブレーキ負圧ブースター102は、入力されたストローク量に基づきアシスト力を決定し、マスターシリンダー104に出力する。
【0023】
マスターシリンダー104は、ブレーキ負圧ブースター102から伝達された力により、内部ピストンでブレーキフルードリザーバータンク103内のブレーキフルードを加圧し、車両の各車輪軸に装備されたディスクブレーキ装置106に油圧を伝達する。
【0024】
車両の各車輪軸に装備されたディスクブレーキ装置106は、入力される油圧を基に装置内のブレーキディスクをブレーキディスクパッドで挟み込み、摩擦摺動により各車輪に減速トルクを与え車両を減速する。
【0025】
なお、マスターシリンダー104とディスクブレーキ装置106の油圧配管上には近年ABS装置若しくはESC装置105が挿入され、滑りやすい路面での直進制動距離短縮を行ったり同じく滑りやすい路面での旋回挙動安定を行ったりする場合がある。
【0026】
また、図1及びこの実施の形態1では車両の各車輪に具備するブレーキ装置としてディスクブレーキ装置106にて説明を行っているが、適用する車両によっては一部若しくはすべてにおいてドラムブレーキを用いる場合もある。
【0027】
しかし、これらブレーキ負圧ブースター102からディスクブレーキ装置106の構成及び動作は、従来の油圧ブレーキ装置と同一であり本発明の効果には影響しないため、エンジンルーム内Bの構成変更を伴わない点がこの発明の特徴とするところである。
【0028】
次に、この発明の実施の形態1におけるブレーキペダル機構101の詳細について図2に基づいて説明する。図2は、この実施の形態1のブレーキペダル機構101の構成を示した図である。
【0029】
図2において、201は車両の運転席足下において車体に固定されるブラケット、202はドライバーが減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッド、203は車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット201につり下げられ、アーム根元で入力軸204に接続しアーム先端にブレーキペダルパッド202を有する入力アーム、204は入力アーム203の回転軸に接続される入力軸、205は円筒部材の片側に回転方向にねじれた突起を有するスライド部材、206は入力軸204とスライド部材205の軸回転方向のすべりを規制するスライドキー、207はスライド部材205に嵌合するようにねじれた切れ込みを有する出力軸である。
【0030】
208は入力アーム203と同じく車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット201につり下げられ、アーム根元で出力軸207に接続しアーム先端にてブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドに接続されストローク量を伝える出力アーム、209は回転に応じてスライド部材205を円筒垂直方向にスライドさせるスライドネジである。210はブラケット201に固定されスライドネジ209を回転させるモーターである。なお、モーター210とスライドネジ209にてアクチュエータが構成されている。また、入力軸204、スライド部材205、出力軸207、アクチュエータにより差動機構が構成されている。
【0031】
211は入力軸204の回転角を検出する入力軸回転角センサー、212は出力軸20
7の回転角を検出する出力軸回転角センサー、213は入力軸回転角センサー211及び出力軸回転角センサー212の取得値に基づきモーター210に回転指令を与える制御装置、214は入力軸204とブラケット201を接続しブレーキペダルパッド202の踏み込み量に対するブレーキ反力を再現する反力用バネである。
【0032】
図3を用いて、入力軸204と出力軸207により構成されるこの実施の形態1のブレーキペダル機構101における差動機構について説明する。図3の1段目は、スライド部材205と出力軸207の嵌合前の状態を示しており、右側奥のスライド部材205には円筒部材の片側にねじれた突起を、左側手前の出力軸207にはスライド部材205に嵌合する切れ込みを有している。これらをねじりながら嵌合させることで、差動前の初期状態となる2段目の状態にすることができる。
【0033】
なお、図3ではスライド部材205に4つのねじれた突起を有しているが、1つ以上の突起を有しそれぞれの突起の回転方向の傾きをそろえれば、突起の数は限定されるものではない。
【0034】
また、スライド部材205のそれぞれの突起の大きさ及び位置についても、出力軸207とねじりながら嵌合できるのであれば同じく限定されない。スライド部材205のこれら突起の本数及び傾き、大きさ等は、嵌合面にかかる力と使用する部材の強度等を考慮した上で選定すべきものである。
【0035】
この実施の形態1では、スライド部材205に対し、モーター210とスライドネジ209にて構成するアクチュエータにより回転軸垂直方向にスライド動作を行う。(モーター210及びスライドネジ209については図3には図示せず図2に記載)
【0036】
このとき、実際にはスライド部材205は入力軸204に連動して回転可能であるが、本説明では単純化のため入力軸204に対する角度入力がなく、スライド部材205が回転しないものとして説明する。
【0037】
この状況で前述のアクチュエータでスライド部材205を奥に引っ張ると、互いのねじれた嵌合面の摺動により図3の3段目及び4段目に描いているように、手前の出力軸207が嵌合面裏側から見て反時計回りに回転する。この仕組みによりこの実施の形態1記載のブレーキペダル機構101における差動機構は、スライド部材205と出力軸207の間において可変の差動角を作り出すことか可能となっている。
【0038】
なお、このときのスライド部材205片側に有する突起の回転角ねじり方向についてはどちらの回転方向にねじってあってもかまわない。例えば、図3では、スライド部材205を右に出力軸207を左に配置し、スライド部材205の突起は嵌合面から見て反時計回りにねじっている。
【0039】
この場合、スライド部材205の回転を規制しながら出力軸207から離れるようスライドさせることで、出力軸207は嵌合面裏側から見て反時計回りに回転する。その結果、入力アーム203に対し出力アーム208がドライバーに対し手前側に戻され、ブレーキ踏み込み量に対しストローク量を減少させることが可能となる。
【0040】
一方、スライド部材205の突起を嵌合面から見て時計回りにねじった場合、スライド部材205の回転を規制しながら出力軸207から離れるようスライドさせると、出力軸207は先ほどとは逆に嵌合面裏側から見て時計回りに回転する。
【0041】
しかし、スライド部材205と出力軸207を離した状態を差動機構の初期状態とし、
スライド部材205の回転を規制しながら出力軸207に押し込むようスライドさせると、出力軸207は嵌合面裏側から見て反時計回りに回転する。
【0042】
これにより先ほどと同様、入力アーム203に対し出力アーム208がドライバーに対し手前側に戻され、ブレーキ踏み込み量に対しストローク量を減少させることが可能となる。つまり突起の回転角ねじり方向が異なった場合でも、スライド部材205のスライド方向を変えることで同様の効果を得ることが可能である。
【0043】
次に、図2を用いて、この実施の形態1における差動機構により差動を行わない場合の動作、つまりブレーキ踏み込み量とストローク量を変更しない場合の動作について説明する。ドライバーが車両を減速若しくは停止させようとする場合、自身の足によりブレーキペダルパッド202を踏み込む動作を行う。
【0044】
このときの踏み込み量は入力アーム203に伝わり、入力アーム203のブラケット201に対する固定点を回転軸とし、回転運動として接続する入力軸204に伝達される。入力軸204とスライド部材205はスライドキー206により回転軸方向のすべりが規制されているため、一体となり回転運動が伝達される。
【0045】
このとき、モーター210は通電されておらず、スライドネジ209は固定される。よって、スライド部材205と出力軸207は常に一定のかみ合わせ距離を保ったまま嵌合されるため、スライド部材205の回転運動は双方の部材の接合面を介してそのまま出力軸207に伝達される。出力軸207はさらに接続する出力アーム208をブラケット201に対する固定点を回転軸として回転する。
【0046】
出力アーム208のアーム先端にはブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドが接続されており、アーム先端の円弧状の回転運動はストローク量としてブレーキ負圧ブースター102に出力される。本機構にて差動機構により差動を行わない場合はこのように動作する。
【0047】
次に、この実施の形態1において、差動機構により差動を行う場合の動作、つまりブレーキ踏み込み量とストローク量を変更する場合の動作について説明する。ドライバーが車両を減速若しくは停止させようと自身の足でブレーキペダルパッド202を踏み込む動作から入力軸204の回転運動に変化するまでは前述の差動を行わない場合の動作と同一である。
【0048】
差動機構により差動を行う場合、制御装置213によりモーター210に通電し、スライドネジ209を回転させる。スライドネジ209は回転に伴いスライド部材205を回転軸垂直方向にスライドさせる。入力軸204とスライド部材205はスライドキー206により回転軸方向のすべりは規制されているが、回転軸垂直方向のスライドについては可能となっている。
【0049】
スライド部材205を回転軸垂直方向にスライドさせることにより、スライド部材205と出力軸207の嵌合面が変化し、スライド部材205と出力軸207の間に角度差が発生する。この入力軸204の回転運動に差動機構の角度差を含んだ出力軸207の回転運動は、出力アーム208に伝えられる。これにより、最終的にブレーキペダルパッド202の踏み込み量とブレーキ負圧ブースター102への出力であるストローク量を変更することができる。
【0050】
なお、この実施の形態1のブレーキペダル機構に用いる差動機構では、スライド部材205のスライド可能な範囲が、入力軸204及びブラケット202、出力軸207の配置
によりあらかじめ限定される。そのためスライド部材205と出力軸207の間に発生可能な差動角も、一定の範囲に限定されている。
【0051】
例えば、この実施の形態1のブレーキペダル機構の目的を、回生ブレーキ装置動作時における油圧ブレーキ装置の制動力低減に限定する場合、差動角の範囲を差動角0度から差動角10度程度に限定することが望ましい。差動角0度というのは差動機構により差動が行われず、この実施の形態1のブレーキペダル機構101が差動角の発生しない通常のブレーキペダルとして動作することを意味している。
【0052】
また、差動角10度というのは、入力アーム203に対し出力アーム208が運転席手前方向に10度引き戻される状態を意味している。このように差動の範囲を機構的に限定することにより、アクチュエータの誤作動により差動角がマイナス方向に減り続けた場合でも、差動角0度以下になることはなく、出力アーム208が入力アーム203以上ブレーキ負圧ブースター102側に押し込まれ、ドライバーの意思に反して制動がかかるといった心配がなくなる。
【0053】
また、同様に、アクチュエータの誤動作により差動角がプラス方向に増え続けた場合でも、あらかじめ最大の差動角を機構的に制限しておくことで、それ以上入力アーム203と出力アーム208の角度が広がることを防ぎ、差動機構が最大差動角から動かなくなった場合でも、ドライバーがさらにブレーキペダルパッド202を踏み込むことで、以降は差動角の発生しない通常のブレーキペダルとして動作することが可能となる。
【0054】
なお、本実施の形態1のブレーキペダル機構の目的を、回生ブレーキ装置動作時における油圧ブレーキ装置の制動力低減に限定する場合、差動角の範囲を差動角0度から差動角10度程度に限定することが望ましいとしたが、これは一般的な乗用車に使用するブレーキペダルでの一例であり、必ずしもこの値に限定される物ではなく、使用する車両の油圧ブレーキ装置の特性およびブレーキペダル動作範囲に応じて決定すべきである。
【0055】
また、本実施の形態1では本発明の使用目的を前記回生ブレーキ装置動作時における油圧ブレーキ装置の制動力低減としているが、これら以外の目的に使用する場合は前記差動角の範囲に限定する必要はない。例えば本発明と車両前方の車間距離を把握するカメラおよびミリ波レーザー等と組み合わせ、車間距離に応じて自動的に車両を減速する自動ブレーキとして使用する場合、差動角の範囲は負の方向へ限定するべきである。また、前記車間距離に応じた自動ブレーキと回生ブレーキ時の油圧ブレーキ装置の制動力低減の両方の機能を併せ持つ場合は、それら両方の作動範囲を互いに満たすように設定すべきである。
【0056】
次に、反力用バネ214について説明する。差動機構や反力用バネを有さない通常のブレーキペダルにおいて、ブレーキの踏み込み量とドライバーに伝わるブレーキ反力は式1のように示される。
【0057】
【数1】

【0058】
ここで、Tp はブレーキペダルパッド202からドライバーへ伝わる反力トルク、Kmcはブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104の内部に有するバネのバネ定数、θp は入力軸の回転角を示している。ドライバーに伝わる反力トルクTp は、単純にドライバーのブレーキペダルパッド202の踏み込み量である入力軸204の回転角θp にのみ比例する特性を持っている。
【0059】
なお、本来ブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104に用いるバネは、コイルバネを垂直方向に伸縮させ反発力を得ている。そのため用いられるバネ定数も伸縮距離に対する反発力を示す係数となっている。
【0060】
一方、この実施の形態1に用いられる反力用バネ214はコイルバネを角度方向に伸縮させ反発力を得ている。そのため用いられるバネ定数は伸縮角度に対する反発力を示す係数となる。この実施の形態1では、計算を行いやすくするため、式1に用いているバネ係数Kmcは、本来伸縮距離に対する反発力の係数であるものを、角度方向への伸縮に対するバネ係数に変換して計算に用いている。このバネ係数の変換は、出力アーム208の腕の長さを用いて変換することができる。
【0061】
また、同様に、ブレーキペダルパッド202からドライバーの足へ伝わる反力は本来ブレーキペダルパッド202から足へ伝達される力で表されるが、ここでは座標系を一致させるため入力アーム203を含めた回転軸を中心とした回転力を示す反力トルクTp で扱っている。この反力トルクの変換は、入力アーム203の腕の長さを用いて変換することができる。
【0062】
一方、この実施の形態1において、反力用バネ214を設置しない場合、式2のように示される。
【0063】
【数2】

【0064】
ここで、θsub は差動機構による差動角を示している。差動角θsub は大きくなるほど、出力アーム208をドライバー手前方向に戻すとともに、ブレーキ負圧ブースター202への出力であるストローク量を減少させ、さらにブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104に用いるバネの反力を低下させることで、最終的に反力トルクTp が小さくなることがわかる。この反力トルクTp はドライバーに対するブレーキフィーリングを確保するだけでなく、ブレーキペダルパッド202を初期位置まで戻すために必要なトルクでもある。そのため最悪の場合、ペダルの踏み込み角度θp と差動角θsub が等しくなるよう差動機構を動作させると、ドライバーがブレーキペダルパッド202を離してもブレーキペダルパッド202が初期位置に戻らない事態となる。
【0065】
そこで、この実施の形態1では、入力軸204とブラケット201の間に反力用バネ214を有している。入力軸204とブラケット201の間に反力用バネ214を設置した場合の反力トルクの式を式3に示す。
【0066】
【数3】

【0067】
ここで、Kadd は反力用バネ214のバネ定数を示している。これによりペダルの踏み込み角度θp と差動角θsub が等しくなるよう差動機構を動作させた場合においても、反力用バネ214によりブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104とは独立した反力トルクTp が確保され、ブレーキペダルパッド202を初期位置に戻すことが可能となっている。
【0068】
このように、この実施の形態1において、車両の運転席足下のブレーキペダル機構をドライバーのブレーキペダルパッド202の踏み込み量が入力される入力アーム203と、ブレーキ負圧ブースター102へストローク量が出力される出力アーム208に分離し、それら入出力アームの回転軸間に回転角を可変にする差動機構を設けることで、エンジンルーム内Bおいては油圧配管等の経路変更を必要とせず従来の油圧ブレーキ装置と共通化が可能でコスト低減可能となるとともに、また、車室内Aにおいては従来よりも小型で運転席足下の空間設計変更の必要がない、ドライバーが減速制動を行う際の前記ブレーキペダルパッド202への踏み込み量と前記ブレーキ負圧ブースター102への出力であるストローク量を可変にできるブレーキペダル機構を提供することができる。
【0069】
実施の形態2.
この実施の形態2は上述した実施の形態1におけるブレーキペダル機構101の差動機構について、図4に示すように構成することにより、上述した実施の形態1と同様の効果を得るものである。
【0070】
図4は、この実施の形態2のブレーキペダル機構101の構成を示した図である。図4において、401は車両の運転席足下において車体に固定されるブラケット、402はドライバーが減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッド、403は車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット401につり下げられ、アーム根元で入力軸404に接続しアーム先端にブレーキペダルパッド402を有する入力アーム、404は入力アーム403の回転軸に接続される入力軸、408は入力アーム403と同じく車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット401につり下げられ、アーム根元で出力軸407に接続しアーム先端にてブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドに接続されストローク量を伝える出力アーム、407は、出力アーム408の回転軸に接続される出力軸である。
【0071】
405は、部材の円柱表面にガイド溝を有し、入力軸404と出力軸407の筒内において回転軸垂直方向にスライドするスライド部材、406a及び406bは、入力軸404とスライド部材405のガイド溝及び出力軸407とスライド部材405のガイド溝のそれぞれを接続する連結ピンA及び連結ピンB、409は回転に応じてスライド部材405を円筒垂直方向にスライドさせるスライドネジである。410はブラケット401に固定されスライドネジ409を回転させるモーターである。なお、モーター410とスライドネジ409にてアクチュエータが構成されている。また、入力軸404、スライド部材405、出力軸407、アクチュエータにより差動機構が構成されている。
【0072】
411は入力軸404の回転角を検出する入力軸回転角センサー、412は出力軸407の回転角を検出する出力軸回転角センサー、413は入力軸回転角センサー411及び出力軸回転角センサー412の取得値に基づきモーター410に回転指令を与える制御装置、414は入力軸404とブラケット401を接続しブレーキペダルパッド402の踏み込み量に対するブレーキ反力を再現する反力用バネである。
【0073】
図5を用いて、入力軸404と出力軸407、スライド部材405、連結ピンA406aと連結ピンB406bにより構成されるこの実施の形態2のブレーキペダル機構における差動機構について説明する。入力軸404及び出力軸407は円筒状のスライド部材405にかぶさる形で配置され、スライド部材405を軸に回転することが可能となっている。スライド部材405の表面には、円筒軸方向平行なガイド溝を1本、さらに先ほどの
平行なガイド溝に対し入力軸404側では距離が広く出力軸407側では距離が狭くなるよう斜めのガイド溝をもう1本刻んでいる。
【0074】
そして、連結ピンA406aを入力軸404側からスライド部材405の平行なガイド溝に対して垂直に、連結ピンB406bを出力軸407側からスライド部材405の斜めの溝に対して垂直に、それぞれ接続する。それにより、入力軸404に入力される回転運動は、連結ピンA406aを介し一度スライド部材405に伝えられ、さらにスライド部材405から連結ピンB406bを経由する形で出力軸407に出力される。
【0075】
図5では入力軸404を右側奥に出力軸407を左側手前に配置し、スライド部材405の表面の斜めのガイド溝は手前側から奥に進むにつれ平行なガイド溝に対する間隔が広がるように刻まれている。図5の1段目のように、スライド部材405が手前方向に引き出されている状態を差動機構の初期状態とすると、初期状態では連結ピンB406bの地点における平行なガイド溝と斜めのガイド溝の間隔が広く設定されており、連結ピンA406aの垂直軸と連結ピンB406bの垂直軸の成す角度が最大の角度を持って設置されることになる。
【0076】
スライド部材405は図2に記載するモーター410とスライドネジ409により円柱軸垂直方向にスライド可能であり、図5の2段目及び3段目に示すように、スライド部材405を奥へ押し出すと、連結ピンB406bの地点における平行なガイド溝と斜めのガイド溝の間隔が狭くなってくる。
【0077】
そのため、連結ピンA406aの垂直軸と連結ピンB406bの垂直軸の成す角度が小さくなり、最終的には入力軸404に対し出力軸407が部材左側から見て反時計回りに回転する。この仕組みにより、この実施の形態2のブレーキペダル機構101における差動機構は、入力軸404と出力軸407の間において可変の差動角を作り出すことが可能となっている。
【0078】
なお、このときのスライド部材405の表面に有する斜めのガイド溝の傾きは平行なガイド溝に対し入力軸404側では距離が広く、出力軸407側では距離が狭くなるように刻まれているが、この傾きは反対であってもかまわない。その場合、前述の実施の形態1のブレーキペダル機構における差動機構のように、スライド部材405のスライド方向を逆にすることで同様の結果を得られるからである。
【0079】
また、前述の斜めのガイド溝は直線である必要もなく、一部に曲線を用いてもかまわない。またさらに平行なガイド溝においても必ずしも平行である必要はなく、最終的にスライド部材405のスライドによりもう一方のガイド溝との間に距離が変化するような刻み方であれば、この実施の形態2のブレーキペダル機構における差動機構において差動角を発生させることが可能となる。
【0080】
図4を用いてこの実施の形態2における差動機構により差動を行わない場合の動作、つまりブレーキ踏み込み量とストローク量を変更しない場合の動作について説明する。ドライバーが車両を減速若しくは停止させようとする場合、自身の足によりブレーキペダルパッド402を踏み込む動作を行う。このときの踏み込み量は入力アーム403に伝わり、入力アーム403のブラケット401に対する固定点を回転軸とし、回転運動として接続する入力軸404に伝達される。
【0081】
このとき、モーター410は通電されておらずスライドネジ409は固定されるため、スライド部材405の回転軸垂直方向の位置も固定される。スライド部材405には前述の通り部材表面に平行のガイド溝と斜めのガイド溝が刻まれている。スライド部材405の回転軸垂直方向の位置が変わらないため、連結ピンA406aと連結ピンB406bのそれぞれがガイド溝に接する部分も変わらず、連結ピンA406aの垂直軸と連結ピンB406bの垂直軸の成す角度が変わらない。
【0082】
よって、入力軸404と出力軸407の回転角度差が発生せず、入力軸404に入力された回転運動はそのまま出力軸407に伝達される。出力軸407はさらに接続する出力アーム408をブラケット401に対する固定点を回転軸として回転する。出力アーム408のアーム先端にはブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドが接続されており、アーム先端の円弧状の回転運動はストローク量としてブレーキ負圧ブースター102に出力される。本機構にて差動機構により差動を行わない場合はこのように動作する。
【0083】
次に、この実施の形態2において差動機構により差動を行う場合、つまりブレーキの踏み込み量とストローク量を変更する場合について説明する。ドライバーが車両を減速若しくは停止させようと自身の足でブレーキペダルパッド402を踏み込む動作から入力軸404の回転運動に変化するまでは前述の差動を行わない場合の動作と同一である。差動機構により差動を行う場合、制御装置413によりモーター410に通電し、スライドネジ409を回転させる。スライドネジ409は回転に伴いスライド部材405を回転軸垂直方向にスライドさせる。
【0084】
スライド部材405には前述の通り部材表面に平行のガイド溝と斜めのガイド溝が刻まれている。アクチュエータによりスライド部材405の回転軸垂直方向の位置が変えられるため、連結ピンA406aと連結ピンB406bのそれぞれがガイド溝に接する位置が変化し、連結ピンA406aの垂直軸と連結ピンB406bの垂直軸の成す角度が変わる。
【0085】
よって、入力軸404と出力軸407の回転角度差が発生する。この入力軸404の回転運動に差動機構の角度差を含んだ出力軸407の回転運動は、出力アーム408に伝えられる。これにより、最終的にブレーキペダルパッド402のブレーキ踏み込み量とブレーキ負圧ブースター102への出力であるストローク量を変更することができる。
【0086】
なお、この実施の形態2のブレーキペダル機構に用いる差動機構では、上述した実施の形態1と同様に差動機構の差動角の範囲があらかじめ限定される。これはスライド部材405のスライド可能な範囲が、入力軸404及び出力軸407、ブラケット401の配置によりあらかじめ限定されるからである。このことによる効果は上述した実施の形態1と同様で、差動の範囲を限定することでアクチュエータの誤作動が起きた場合においても、可能な限り通常のブレーキペダルとして動作することができる。
【0087】
また、この実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様に反力用バネ414を有する。反力用バネ414の効果については上述した実施の形態1と同様であるため省略する。
【0088】
このように、実施の形態2のブレーキペダルにおいて、上述した実施の形態1と同様の効果がある差動機構を入力アーム403と出力アーム408の間に有することで、上述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0089】
なお、本実施の形態2の差動機構においては、スライド部材405に2本のガイド溝を刻み、入力軸404及び出力軸407から連結ピンA406a及び連結ピンB406bを接続する構成としたが、これらの関係はそれぞれ逆の場合であっても問題なく、例えば、入力軸404と出力軸407の内側にガイド溝を有するようにし、スライド部材405側から連結ピンA406a及び連結ピンB406bを接続させても同様の効果を得ることができる。
【0090】
さらに、前述の2本のガイド及び2本の連結ピンは効果を実現するために最低限必要な
本数であり、これら連結ピンとガイド溝の本数は、入力軸404とスライド部材405の間及び出力軸407とスライド部材405の間にかかる力(せん断力)と連結ピンA406a及び連結ピンB406bの強度等を考慮した上で選定すべきものである。
【0091】
実施の形態3.
この実施の形態3は、上述した実施の形態1におけるブレーキペダル機構101において、反力用バネ214とブラケット201間に、さらに、上述した実施の形態1で使用した差動機構を反力用差動機構として有することを特徴としている。
【0092】
図6は、この実施の形態3のブレーキペダル機構101の構成を示した図である。図6において、601は車両の運転席足下において車体に固定されるブラケット、602はドライバーが減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッド、603は車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット601につり下げられ、アーム先端にブレーキペダルパッド602を有する入力アーム、604は入力アーム603の回転軸に接続される入力軸、605は円筒部材の片側に回転方向にねじれた突起を有するスライド部材、606は入力軸604とスライド部材605の軸回転方向のすべりを規制するスライドキー、607はスライド部材605に嵌合するようにねじれた切れ込みを有する出力軸である。
【0093】
608は入力アーム603と同じく車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット601につり下げられ、アーム根元で出力軸607に接続しアーム先端にてブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドに接続されストローク量を伝える出力アーム、609は回転に応じてスライド部材605を円筒垂直方向にスライドさせるスライドネジである。610はブラケット601に固定されスライドネジ609を回転させるモーターである。なお、モーター610とスライドネジ609にてアクチュエータが構成されている。また、入力軸604、スライド部材605、出力軸607、アクチュエータにより差動機構が構成されている。
【0094】
611は入力軸604の回転角を検出する入力軸回転角センサー、612は出力軸607の回転角を検出する出力軸回転角センサー、613は入力軸回転角センサー611及び出力軸回転角センサー612の取得値に基づきモーター610に回転指令を与える制御装置である。
【0095】
ここまでの構成については上述した実施の形態1のブレーキペダル機構の差動機構と同一である。この実施の形態3では、さらに、反力用差動機構の構成として、以下の部材を有する。615はブラケット601に接続される反力用入力軸、616は円筒部材の片側にスライド部材605と同一形状のねじれた突起を有する反力用スライド部材、617は反力用入力軸615と反力用スライド部材616の軸回転方向のすべりを規制する反力用スライドキー、618は反力用スライド部材616に嵌合するようねじれた切れ込みを有する反力用出力軸、614は入力軸604と反力用出力軸618を接続しブレーキペダルパッド602の踏み込み量に対するブレーキ反力を再現する反力用バネである。
【0096】
この実施の形態3では、ブレーキペダル機構101に有する差動機構及び反力用差動機構ともに、上述した実施の形態1において使用した差動機構を用いている。よって、この実施の形態3の差動機構及び反力用差動機構の仕組みについての説明は省略する。なお、この実施の形態3の差動機構及び反力用差動機構は同一のアクチュエータにより動作する。そのため、差動機構のスライド部材605と反力用差動機構のスライド部材616のスライド距離は同じ距離となり、この実施の形態3の差動機構に発生する差動角と反力用差動機構に発生する反力用差動角は同一の値となる。
【0097】
この実施の形態3の効果について説明する。上述した実施の形態1及び実施の形態2では、反力用バネ614を入力軸604とブラケット601間に接続し、差動機構により差動角を発生した場合においても、反力用バネ614により反力トルクを発生させブレーキペダルパッド602を初期位置まで復帰させることができるようにしていた。
しかし、反力用バネ614による反力トルクはブレーキペダルパッド602を踏み込むだけで発生し、差動機構を用いない場合にはさらに反力トルクが強まる懸念があった。そこで、この実施の形態3では、新たに反力用差動機構を追加し反力用差動機構の反力用出力軸618と入力軸604を反力用バネ614で接続し、差動機構の差動角により反力トルクが変化しないようにしている。
【0098】
この実施の形態3における反力トルクの式を、式4に示す。
【0099】
【数4】

【0100】
ここで、θsub1は差動機構による差動角、θsub2は反力用差動機構による差動角を示している。一見、差動角が差動機構による差動角θsub1と反力用差動機構による差動角θsub2の2つに増え、式が複雑になっている。しかし、前述の通り差動機構と反力用差動機構は同一の構成を用いており、差動機構による差動角θsub1と反力用差動機構による差動角θsub2は等しく、差動機構による差動角θsub1と反力用差動機構による差動角θsub2を同じθsub で表すことができる。置き換えた結果を式5に示す。
【0101】
【数5】

【0102】
さらに、反力用バネ614に、ブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104の内部に有するバネのバネ定数Kmcと等しいバネを使用すると、式5は式6のように置き換えることができる。
【0103】
【数6】

【0104】
これら式5を整理すると最終的に式7とすることができる。
【0105】
【数7】

【0106】
つまり最終的には、上述した実施の形態1をこの実施の形態3のようにすることで、差動角θsub関する項がなくなり、ドライバーへの反力トルクTp は差動角θsub の影響を
受けないようになる。
【0107】
よって、この実施の形態3では、ドライバーに伝わる反力トルクが差動角に影響されることがなく、上述した実施の形態1と同様にドライバーが減速制動を行う際の前記ブレーキペダルパッド602への踏み込み量と前記ブレーキ負圧ブースター102への出力であるストローク量を可変にできるブレーキペダル機構を実現することができる。
【0108】
なお、現状では、ブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104の内部に有するバネのバネ定数Kmcは変更せず、反力用バネ614に同じバネ係数を持ったバネを使用するようにしており、最終的に通常のブレーキペダル機構に比べ2倍の傾きを持って反力トルクが再現される。
【0109】
しかし、ブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104の内部に有するバネと反力用バネ614のバネ係数を、従来の半分のバネ係数を持つバネへ変更することで、最終的に従来ブレーキペダル機構と同じ傾きを持った反力トルクを再現することができる。
【0110】
実施の形態4.
この実施の形態4は、上述した実施の形態2におけるブレーキペダル機構101において、反力用バネ414とブラケット401の間に、さらに、上述した実施の形態2で使用した差動機構を反力用差動機構として有することを特徴としている。
【0111】
図7は、この実施の形態4のブレーキペダル機構の構成を示した図である。図7において、701は車両の運転席足下において車体に固定されるブラケット、702はドライバーが減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッド、703は車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット701につり下げられ、アーム先端にブレーキペダルパッド702を有する入力アーム、704は入力アーム703の回転軸に接続される入力軸、708は入力アーム703と同じく車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット701につり下げられ、アーム先端にてブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドに接続されストローク量を伝える出力アーム、707は、出力アーム708の回転軸に接続される出力軸である。
【0112】
705は、部材の円柱表面にガイド溝を有し、入力軸704と出力軸707の筒内において回転軸垂直方向にスライドするスライド部材、706a及び706bは、入力軸704とスライド部材705のガイド溝及び出力軸707とスライド部材705のガイド溝のそれぞれを接続する連結ピンA及び連結ピンB、709は回転に応じてスライド部材705を円筒垂直方向にスライドさせるスライドネジである。710はブラケット701に固定されスライドネジ709を回転させるモーターである。なお、モーター710とスライドネジ709にてアクチュエータが構成されている。また、入力軸704、スライド部材705、出力軸707、アクチュエータにより差動機構が構成されている。
【0113】
711は入力軸704の回転角を検出する入力軸回転角センサー、712は出力軸707の回転角を検出する出力軸回転角センサー、713は入力軸回転角センサー711及び出力軸回転角センサー712の取得値に基づきモーター710に回転指令を与える制御装置である。
【0114】
ここまでの構成については上述した実施の形態2のブレーキペダル機構の差動機構と同一である。この実施の形態4では、さらに、反力用差動機構の構成として、以下の部材を有する。715はブラケット701に接続される反力用入力軸、718は反力用出力軸、716は、部材の円柱表面にスライド部材705と同一のガイド溝を有し、反力用入力軸
715と反力用出力軸718の筒内において回転軸垂直方向にスライドする反力用スライド部材、717a及び717bは、反力用入力軸715と反力用スライド部材716のガイド溝及び反力用出力軸718と反力用スライド部材716のガイド溝のそれぞれを接続する連結ピンA及び連結ピンB、714は入力軸704と反力用出力軸718を接続しブレーキペダルパッド702の踏み込み量に対するブレーキ反力を再現する反力用バネである。
【0115】
この実施の形態4では、ブレーキペダル機構101に有する差動機構及び反力用差動機構ともに、上述した実施の形態2において使用した差動機構を用いている。よって、この実施の形態4の差動機構及び反力用差動機構の仕組みについての説明は省略する。
【0116】
なお、この実施の形態4の差動機構及び反力用差動機構は同一のアクチュエータにより動作する。そのため差動機構のスライド部材705と反力用差動機構のスライド部材718のスライド距離は同じ距離となり、この実施の形態4の差動機構に発生する差動角と反力用差動機構に発生する反力用差動角は同一の値となる。
【0117】
このような構成を用いることで、この実施の形態4は、上述した実施の形態3と同様の効果を有するブレーキペダル機構を実現することができる。
【0118】
実施の形態5.
この実施の形態5は、上述した実施の形態1におけるブレーキペダル機構101において、反力バネ214とブラケット201の間に、さらに、上述した実施の形態4で使用した反力用差動機構を有することで、上述した実施の形態3と同様に、ドライバーに伝わる反力トルクが差動角に影響されることがないブレーキペダル機構を実現することができる。
【0119】
実施の形態6.
この実施の形態6は、上述した実施の形態2におけるブレーキペダル機構101において、反力用バネ414とブラケット401の間に、さらに、上述した実施の形態3で使用した反力用差動機構を有することで、上述した実施の形態3と同様に、ドライバーに伝わる反力トルクが差動角に影響されることがないブレーキペダル機構を実現することができる。
【0120】
実施の形態7.
この実施の形態7は上述した実施の形態1におけるブレーキペダル機構101の差動機構について、図8のような差動機構を用いる構成とすることにより、上述した実施の形態1と同様の効果を得るものである。
【0121】
図8は、この実施の形態7のブレーキペダル機構101の構成を示した図である。図8において、801は車両の運転席足下において車体に固定されるブラケット、802はドライバーが減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッド、803は車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット801につり下げられ、アーム先端にブレーキペダルパッド802を有する入力アーム、805は入力アーム803と同じく車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なようブラケット801につり下げられ、アーム先端にてブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドに接続されストローク量を伝える出力アームである。
【0122】
811は入力アーム803の入力角を検出する入力角センサー、812は出力アーム805の出力角を検出する出力角センサー、815はモーター、813は入力角センサー811及び出力角センサー812の取得値に基づきモーター815に回転指示を与える制御
装置、816はモーター815の回転速度を減速し、かつモーター815の回転角を制限する減速ギア、810は減速ギア816から出力される差動軸817に接続され一体となって回転する回転部材、804は入力アーム803の回転軸および、出力アーム805の回転軸、減速ギア816の差動軸817のそれぞれに接続される遊星歯車機構である。さらに、遊星歯車機構804のリングギア806と回転部材810の間に反力用バネ814を有している。
【0123】
ここで、この実施の形態7のブレーキペダル機構101に有する遊星歯車機構804についてさらに説明する。遊星歯車機構804は、リングギア806とサンギア808、プラネタリキャリア809、少なくとも1つ以上のプラネタリギア807を有し、モーター815から減速ギア816を介し出力される差動軸817にサンギア808を、入力アーム803の回転軸にリングギア806を、出力アーム805の回転軸にプラネタリキャリア809をそれぞれ接続する。なお、この実施の形態7において、リングギア806と入力軸806は同一の部材により、またプラネタリキャリア809と出力軸809は同一の部材により兼ねる。
【0124】
遊星歯車機構804はトルク分配と差動機能があり、サンギア808、リングギア806、プラネタリキャリア809の回転角度及びトルクをθs 、Ts 、θR 、TR 、θc 、Tc とした場合、差動角は式8のような、トルク分配は式9のような関係を持つことがわかっている。
【0125】
【数8】

【数9】

【0126】
ここで、αはサンギア808とリングギア806の直径の比で、サンギア808の直径をls 、リングギア806の直径lR とした場合、式10のような関係となる。
【0127】
【数10】

【0128】
なお、一般的にαは3〜5倍程度の比を有する遊星歯車が多い。
【0129】
図8を用いてこの実施の形態7における差動機構により差動を行わない場合の動作、つまりブレーキ踏み込み量とストローク量を変更しない場合の動作について説明する。ドライバー車両を減速若しくは停止させようとする場合、自身の足によりブレーキペダルパッド802を踏み込む動作を行う。このときの踏み込み量は入力アーム803に伝わり、入力アーム803のブラケット801に対する固定点を回転軸とし、回転運動として遊星歯車機構804のリングギア806に伝達される。
【0130】
このとき、モーター815は回転角を保持するよう制御装置813から指令されており、減速ギア816を介して差動軸817およびサンギア808も固定される。つまり、サンギア808の回転角θs は0度であるため、リングギア806とプラネタリキャリア809の回転角の間には、式8より下記式11のような関係が成立する。
【0131】
【数11】

【0132】
つまり、リングギア806の回転に対し、α/(1+α)倍プラネタリアギア809が回転することになる。その後、プラネタリアギア809の回転は出力アーム805に伝達され、出力アーム805はブラケット801に対する固定点を回転軸として回転する。出力アーム805のアーム先端にはブレーキ負圧ブースター102の入力ロッドが接続されており、アーム先端の円弧状の回転運動はストローク量としてブレーキ負圧ブースター102に出力される。
【0133】
なお、ドライバーの差動機構による差動を行わない場合、ドライバーのブレーキ踏み込み量とストローク量は、通常の差動機構を有さないブレーキペダルのように1倍、つまり入力角度により出力角度が変わらないようにすることが望ましい。よって、αの値は大きい方がよい。実際には、遊星歯車機構804で取り得るαの値は限界があるため、αの値は5程度になり、ドライバーの踏み込み量に対しストローク量は5/6に減少してしまう。
【0134】
次に、この実施の形態7における差動機構により差動を行う場合の動作、つまりブレーキ踏み込み量とストローク量を変更する場合の動作について説明する。ドライバーが車両を減速若しくは停止させようと自身の足でブレーキペダルパッド802を踏み込む動作からリングギア806の回転運動に変化するまでは前述の差動を行わない場合の動作と同一である。
【0135】
差動機構により差動を行う場合、制御装置813からモーター815に対し、減速ギア816を介し遊星歯車機構804のサンギア808を回転させる指令が与えられる。つまり差動を行う場合、遊星歯車機構804のすべてのギアが回転することになる。このときの回転角の関係式は式8より式12となる。
【0136】
【数12】

【0137】
つまり、ドライバーがブレーキペダルをある程度踏み込んだ状態で保持しているときに、差動機構により差動を行おうとすると、モーター815は減速ギア816を介して目的とする差動角に対し、(1+α)倍の回転角をサンギア808に入力する必要がある。
【0138】
次に、反力用バネ814について説明する。反力用バネ814はこれまでの各実施の形態と同様に、差動機構による差動角発生時の反力トルク低下を防ぐために設置されている。
【0139】
まず、差動機構による差動を行わない場合のブレーキペダルに発生する反力トルクについて説明する。始めに、ブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104側から出力アーム805を介してプラネタリキャリア809に伝達されるトルクについて計算する。本機構は式11に示す通り、リングギア806の回転角に対しプラネタリキャリア809の回転がα/(1+α)倍に減少して回転することがわかっている。
【0140】
よって、ブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104側からプラネタリキャリア809に入力されるトルクも、この減少したプラネタリキャリア809回転角の角度に比例する。このときのブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104に用いるバネから、プラネタリキャリア809に伝達されるトルクは、式13のようになる。
【0141】
【数13】

【0142】
プラネタリキャリア809に伝達されるトルクは遊星歯車機構804によりトルク分割が行われ、入力ペダルが接続されるリングギア806には式14に示すトルクが発生する。
【0143】
【数14】

【0144】
また、リングギア806には反力用バネ814により式15のトルクが発生する。
【0145】
【数15】

【0146】
ここでは、TBは反力用バネ814に発生するトルクである。最終的にドライバーへの
反力トルクTp には遊星歯車機構804のリングギア806からのトルクTRと反力用バ
ネ814からのトルクTB の両方の力が足し合わされ、式16に示す値となる。
【0147】
【数16】

【0148】
次に、差動機構による差動を行う場合のブレーキペダルパッド802に発生する反力トルクについて説明する。先ほどと同様に、始めに、ブレーキ負圧ブースター102及びマスターシリンダー104側から出力アーム805を介してプラネタリキャリア809に伝達されるトルクについて計算する。差動機構による差動を行う場合のプラネタリキャリア809の回転角の式は式12そのものであり、これに対しバネ係数Kmcを乗算すると式1
7のようにプラネタリキャリア809に伝達されるトルクが求まる。
【0149】
【数17】

【0150】
プラネタリキャリア809に伝達されるトルクは遊星歯車機構804によりトルク分割が行われ、入力ペダルが接続されるリングギア806には式18に示すトルクが発生する。
【0151】
【数18】

【0152】
また、リングギア806には反力用バネ814により式19のトルクが発生する。
【0153】
【数19】

【0154】
最終的にドライバーへの反力トルクTp には遊星歯車機構804のリングギア806からのトルクTRと反力用バネ814からのトルクTB の両方の力が足し合わされ、式20
に示す値となる
【0155】
【数20】

【0156】
このとき、式20には差動機構による差動角の影響が現れており、サンギア808の回転角θs によりドライバーの反力トルクTp が変化することがわかる。そこで、反力用バネ814のバネ定数はKadd を式21のように設定する。
【0157】
【数21】

【0158】
この反力用バネ814のバネ定数はKadd を式21のように設定したものを、差動機構により差動を行う場合のブレーキペダルパッド802に発生する反力トルクを示した式である式20に代入すると、式22のようになる。
【0159】
【数22】

【0160】
式22では最終的にサンギア808の回転角θs に関する項がなくなっている。つまり、反力用バネ814のバネ定数Kadd に、式21に示すようなバネ定数を設定することで差動機構動作時に反力トルクが変化することを防ぐことができる。
【0161】
このようにして、この実施の形態7では、上述した実施の形態3と同様に、ドライバーに伝わる反力トルクが差動角に影響されることがなく、ドライバーが減速制動を行う際のブレーキペダルパッド802への踏み込み量とブレーキ負圧ブースター102への出力であるストローク量を可変にできるブレーキペダル機構を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
この発明は、コスト低減可能で小型を図ることができる差動機構を有するブレーキペダル機構の実現に好適である。
【符号の説明】
【0163】
101 ブレーキペダル機構
102 ブレーキ負圧ブースター
104 マスターシリンダ
202 ブレーキペダルパッド
203 入力アーム
204 入力軸
205 スライド部材
207 出力軸
208 出力アーム
209 スライドネジ
210 モーター
214 反力用バネ
402 ブレーキペダルパッド
403 入力アーム
404 入力軸
405 スライド部材
407 出力軸
408 出力アーム
409 スライドネジ
410 モーター
414 反力用バネ
602 ブレーキペダルパッド
603 入力アーム
604 入力軸
605 スライド部材
607 出力軸
608 出力アーム
609 スライドネジ
610 モーター
614 反力用バネ
615 反力用入力軸
616 反力用スライド部材
618 反力用出力軸
702 ブレーキペダルパッド
703 入力アーム
704 入力軸
705 スライド部材
707 出力軸
708 出力アーム
709 スライドネジ
710 モーター
714 反力用バネ
715 反力用入力軸
716 反力用スライド部材
718 反力用出力軸
802 ブレーキペダルパッド
803 入力アーム
804 遊星歯車機構
805 出力アーム
806 入力軸(リングギア)
807 プラネタリギア
808 サンギア
809 出力軸(プラネタリキャリア)
814 反力用バネ
815 モーター
816 減速ギア
817 差動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転席足下において車体に固定されるブラケットと、減速制動を行う際に踏み込み量を伝えるブレーキペダルパッドと、車両横方向に平行な軸を回転軸として回転可能なように配設されるとともに、アーム根元部に入力軸が接続されアーム先端部に前記ブレーキペダルパッドが設置される入力アームと、前記入力アームと同一の回転軸にて回転可能なように配設されるとともに、アーム根元部に出力軸が接続されアーム先端部にブレーキ負圧ブースターの入力ロッドが接続される出力アームと、前記入力アームの前記入力軸と前記出力アームの前記出力軸の間に角度差を発生させる差動機構を備え、前記差動機構により前記入力アームの前記入力軸と前記出力アームの前記出力軸の間の角度差を変化させるようにしたことを特徴とするブレーキペダル機構。
【請求項2】
前記差動機構は、円筒部材の片側に少なくとも1つ以上の回転方向にねじれた突起を有するスライド部材と、前記スライド部材に対する回転方向のすべりが規制され前記スライド部材と一体となり回転する入力軸と、前記スライド部材に接合面が嵌合するよう円筒部材の片側に少なくとも1つ以上の回転軸方向にねじれた切れ込みを有するとともに前記スライド部材に嵌合させるよう設置した出力軸と、前記スライド部材を円筒垂直方向にスライドさせるアクチュエータを有し、前記スライド部材を円筒垂直方向にスライドするよう前記アクチュエータを動作させることにより前記入力軸と前記出力軸との間に角度差を発生させることを特徴とする前記請求項1記載のブレーキペダル機構。
【請求項3】
前記差動機構は、円柱状のスライド部材と、前記スライド部材に円筒の内側が接するとともに前記スライド部材が円筒の回転軸となり回転するよう設置した入力軸と、前記スライド部材に円筒の内側が接するとともに前記スライド部材が円筒の回転軸となり前記入力軸と同一の回転軸で回転するよう設置した出力軸と、前記スライド部材を円柱垂直方向にスライドさせるアクチュエータを有し、前記スライド部材と前記入力軸との間及び前記スライド部材と前記出力軸との間の双方において、いずれか一方の部材に少なくとも1つ以上のガイド溝を刻み、もう一方の部材から連結ピンを挿入しガイド溝に接続することで前記スライド部材のスライド位置に対する前記入力軸と前記出力軸の回転角位置をそれぞれ決定し、前記スライド部材を前記アクチュエータにより円柱垂直方向にスライドさせることにより前記入力軸と前記出力軸の双方にガイド溝に連動した回転角位置を再現させ、前記入力軸と前記出力軸との間に角度差を発生させることを特徴とする前記請求項1記載のブレーキペダル機構。
【請求項4】
前記ブレーキペダル機構は、さらに反力用バネを有し、前記反力用バネの片側を前記差動機構の入力軸に、もう一方の片側を前記ブラケットに固定することを特徴とする請求項2〜3記載のブレーキペダル機構。
【請求項5】
前記ブレーキペダル機構は、さらに反力用バネと反力用差動機構を有し、前記反力用バネの片側を前記差動機構の入力軸に、もう一方の片側を前記反力用差動機構の反力用出力軸へ接続し、前記反力用差動機構の反力用入力軸を前記ブラケットへ固定することを特徴とする請求項2〜3記載のブレーキペダル機構。
【請求項6】
前記反力用差動機構は、円筒部材の片側に少なくとも1つ以上の回転方向にねじれた突起を有する反力用スライド部材と、前記反力用スライド部材に対する回転方向のすべりが規制され前記反力用スライド部材と一体となり回転する反力用入力軸と、前記反力用スライド部材に接合面が嵌合するよう円筒部材の片側に少なくとも1つ以上の回転軸方向にねじれた切れ込みを有するとともに前記反力用スライド部材に嵌合させるよう設置した反力用出力軸を有し、前記反力用スライド部材を前記差動機構に有する前記アクチュエータにより円筒垂直方向にスライドさせることにより前記反力用入力軸と前記反力用出力軸との
間に角度差を発生させることを特徴とする前記請求項5記載のブレーキペダル機構。
【請求項7】
前記反力用差動機構は、円柱状の反力用スライド部材と、前記反力用スライド部材に円筒の内側が接するとともに前記反力用スライド部材が円筒の回転軸となり回転するよう設置した反力用入力軸と、前記反力用スライド部材に円筒の内側が接するとともに前記反力用スライド部材が円筒の回転軸となり前記反力用入力軸と同一の回転軸で回転するよう設置した反力用出力軸を有し、前記反力用スライド部材と前記反力用入力軸との間及び前記反力用スライド部材と前記反力用出力軸との間の双方において、いずれか一方の部材に少なくとも1つ以上のガイド溝を刻み、もう一方の部材から連結ピンを挿入しガイド溝に接続することで前記反力用スライド部材のスライド位置に対する前記反力用入力軸と前記反力用出力軸の回転角位置をそれぞれ決定し、前記反力用スライド部材を前記差動機構に有する前記アクチュエータにより円柱垂直方向にスライドさせることにより前記反力用入力軸と前記反力用出力軸の双方にガイド溝に連動した回転角位置を再現させ、前記反力用入力軸と前記反力用出力軸との間に角度差を発生させることを特徴とする前記請求項5記載のブレーキペダル機構。
【請求項8】
前記差動機構は、サンギアとプラネタリキャリアとリングギアと少なくとも1つ以上のプラネタリギアにより構成される遊星歯車機構と、前記遊星歯車機構のリングギアを兼ねる入力軸と前記遊星歯車機構のプラネタリキャリアを兼ねる出力軸と、前記遊星歯車機構のサンギアに連結し一体となって回転する差動軸と、前記差動軸に接続し回転角を入力するアクチュエータと、前記入力軸と前記作動軸の間を接続する反力バネを有し、前記アクチュエータを動作させることにより前記入力軸と前記出力軸との間に角度差を発生させることを特徴とする前記請求項1記載のブレーキペダル機構。
【請求項9】
前記差動機構は、前記入力軸と前記出力軸の間に発生する差動角を制限する差動角制限機構を有することを特徴とする請求項2〜8記載のブレーキペダル機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−225012(P2011−225012A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93928(P2010−93928)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】