説明

ブロックポリウレタンプレポリマーを含む反応性組成物

【課題】ブロック剤の分離を伴わずに反応でき、室温で良好な貯蔵寿命を有し、低温でも架橋でき、十分に長いポットライフ又は加工時間を有する、接着剤組成物として有用なブロックトポリウレタンプレポリマー系反応性組成物を提供する。
【解決手段】A)0.1〜20質量%のブロックトイソシアネート基含有量を有し、i)5〜60質量%の遊離イソシアネート基含有量を有するジイソシアネート、ii)ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分、iii)ブロック剤としての、特定のCH酸性環式ケトンから生成された、ブロックトポリウレタンプレポリマー、及びB)OH成分がβ−位アミン成分により活性化を受けるOH官能性化合物を含んでなる反応性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックトポリウレタンプレポリマーに基づく新規反応性組成物、その製造方法及び接着剤組成物におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート基を一時的に保護するためにポリイソシアネート又はポリウレタンプレポリマーをブロックすることは、既知の方法であり、例えばHouben Weyl, Methoden der organischen Chemie XIV/2, 61-70頁に記載されている。基本的に適しているブロッ剤の総説は、例えばWicks ら,Progress in Organic Coatings 1975, 3, 73-79頁、同1981, 9, 3-28頁及び同1999, 36, 148-172頁に見出すことができる。ブロックトポリイソシアネート又はポリウレタンプレポリマーを含む硬化性組成物は、例えば、ポリウレタン(PUR)ラッカー又はポリウレタン(PUR)接着剤に使用される。
【0003】
DE-A 199 63 585 は、直鎖ポリエーテル及び任意に無定型ポリエステルとの混合物として少なくとも部分的に結晶性の直鎖ポリエステルを、反応性ジイソシアネート基を部分的又は完全に既知のブロック剤によりブロックしたジイソシアネートと反応させることにより得られたイソシアネート基含有プレポリマー、及び架橋剤成分としてのジアミン及び/又はそのエポキシ付加物を含むホットメルト接着剤組成物を記載している。
【0004】
EP-A 0 419 928 には、長期の貯蔵寿命を有する一液型ポリウレタン接着剤を記載しており、この接着剤は、室温で少なくとも部分的に結晶性であり、主として直鎖であり、加熱により硬化できる。この接着剤は、少なくとも部分的に結晶性で、ポリウレタン化学で既知の1官能性ブロック剤によりキャップされたイソシアネート基を含むポリウレタンプレポリマー、及び少なくとも1種の低分子量NH−及び/又はOH−官能性連鎖延長剤又は架橋剤に基づいている。
【0005】
ブロックトイソシアネートは、US-B 4 798 879 にも、接着剤システムの成分として記載されている。この米国特許には、ブロックトイソシアネート基を含むプレポリマー及び硬化剤としての第1級アミンからなる、室温で急速に硬化する2成分系が記載されている。
【0006】
上記の接着剤組成物では、ブロック剤は、以下の作用を発揮する:1)ブロック剤は、NCO基が早期にNH及び/又はOH架橋剤成分と反応するのを防止し、2)特有の脱ブロッキング特性により特定の温度範囲で接着剤の硬化を規制する。加えて、製造時及び貯蔵中に接着剤に混入して粘度を増加させ、究極的には加工前に硬化を引き起こす微量の水分による望ましくない副反応を防止するので、接着剤組成物の貯蔵寿命が延びる。
【0007】
しかしながら、このような望ましい性質に加え、個々のブロック剤は、不利益、例えば費用対効果の欠如、環境問題及び重大な生理学的影響などももたらす。
【0008】
ブロック剤の解離により、揮発性有機化合物が放出される。そのような有機化合物は接着剤層内に残留し、可塑剤として作用して、接着剤組成物の適用特性プロフィールに悪影響を与える。また、ブロック剤の解離は平衡反応である。解離したブロック剤は接着層に残るので、脱ブロックが完全には生じない。そうすると、接着剤の架橋が不完全になる。このことは、接着剤の適用プロフィールに著しい障害をもたらす。しかしながら、解離したブロック剤が接着剤層から離散すると、気体状発散物が接着剤層中に気泡を生成することになり、やはり、結合部の強度を低下させる。
【0009】
WO 03/004545 には、無放出ブロックト有機ポリイソシアネート及びポリイソシアネートプレポリマーが開示されており、特別なCH酸性環式ケトンがブロック剤として使用されている。ブロックトイソシアネートの架橋は、ポリオールを用いて、110℃〜140℃において15〜30分間で、又は300℃〜400℃において2分以内に、ブロック剤を解離、即ち放出することなく、行われる。更に、その発明によりブロックされたポリイソシアネートは、ジ−又はポリアミンにより硬化することができると記載されている。この反応は、好ましくは室温で行われるべきである。しかしながら、この国際公開公報に記載されている反応条件は、この系を接着剤として広く利用することを妨げている。何故なら、多くの基材は、110℃〜130℃の温度において、15〜30分の時間で非可逆的に損傷を受けるからである。加えて、このような架橋条件は、経済的観点(エネルギーコスト)から、多くの場合、適当と言えない。
【0010】
DE-A 102 60 300 は、無放出ブロックトポリウレタン架橋剤に基づく粉体塗料用架橋剤を開示している。ブロッキングは、やはり特別なCH酸性環式ケトンにより行われる。硬化は、既知の粉体塗料用硬化剤を用いて110℃〜220℃の温度で1〜6分間行われるここでも、架橋条件は、上記の理由により、接着剤としての使用を妨げる。
【0011】
DE-A 102 60 299 は、放出物なしに硬化し、ポリエーテルに基づく、CH酸性環式ケトンによりブロックされたポリウレタンプレポリマー、それから製造された室温で硬化する反応性組成物、および該組成物の接着剤、シーラント、成形物及び被覆の製造における使用を記載している。ブロックトプレポリマーの硬化は、60〜500g/molの分子量を有するポリアミン、又はポリエーテルアミン(例えば、商品名JeffamineTM としてHuntsman から市販されている)を用いて行われる。このような系の硬化は、室温において、数分から数時間で行われる。これは、2成分系であり、短い硬化時間の故に、非常に限られた加工時間(ポットライフ)しか有していない。このことは、加工時に、例えば表面積が大きい基材を結合する際に、問題を生じ得る。
【特許文献1】DE-A 199 63 585
【特許文献2】EP-A 0 419 928
【特許文献3】US-B 4 798 879
【特許文献4】WO 03/004545
【特許文献5】DE-A 102 60 300
【特許文献6】DE-A 102 60 299
【非特許文献1】Houben Weyl, Methoden der organischen Chemie XIV/2, 61-70頁
【非特許文献2】Progress in Organic Coatings 1975, 3, 73-79頁
【非特許文献3】Progress in Organic Coatings 1981, 9, 3-28頁
【非特許文献4】Progress in Organic Coatings 1999, 36, 148-172頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、放出、すなわちブロック剤の分離を伴わずに反応でき、室温で良好な貯蔵寿命を有し、低温で架橋でき、同時に十分に長いポットライフ又は加工時間を有する、接着剤組成物としての、ブロックトポリウレタン(PUR)プレポリマー系反応性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、特別なCH酸性化合物によりブロックされ、熱活性化接着剤組成物用架橋剤成分として適している、本発明のPURプレポリマー系反応性組成物により達成し得る。この特別にブロックされたポリイソシアネートプレポリマーは、OH官能性化合物と組み合わせることができ、その組み合わせでは、OH官能性成分が、β−位アミン成分により活性化され、室温では数時間かけて、あるいは50〜90℃の温度では数分から数時間で、揮発性物質の放出を伴うことなく硬化が起こる。
【0014】
すなわち、本発明は、
A)0.1〜20質量%のブロックトイソシアネート基含有量(NCOとして計算)を有し、
i)5〜60質量%の遊離イソシアネート基含有量を有する芳香族、脂肪族、芳香脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート少なくとも1種、
ii)少なくとも1つのポリエステルポリオール及び/又は少なくとも1つのポリエーテルポリオール及び/又は少なくとも1つのポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分、
iii)ブロック剤としての、式(I):
【化1】

[式中、Xは電子吸引性基であり、
およびRは、相互に独立に、水素、C−C20(シクロ)アルキル、C−C24アリール、C−C20(シクロ)アルキルエステル又はアミド、C−C24アリールエステル又はアミド、4〜8員環の部分であってもよい1〜24個の炭素原子を有する混合脂肪族/芳香族基であり、
nは0〜5の整数である。]
で示されるCH酸性環式ケトン
から生成された、1種以上のブロックトポリウレタンプレポリマー、及び
B)OH成分がβ−位アミン成分により活性化を受ける、1種以上のOH官能性化合物、
C)所望により触媒、
D)所望により添加剤及び/又は助剤
を含んでなる反応性組成物を提供する。
本発明は、本発明の反応性組成物により結合された2つの被着材を含んでなる複合システム(複合材)をも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ブロックトポリウレタンプレポリマーA)の製造に適しているジイソシアネート成分i)は、(ジイソシアネートに基づき)5〜60質量%のイソシアネート含有量を有し、脂肪族的、脂環式的、芳香脂肪族的及び/又は芳香族的に結合したイソシアネート基を含むジイソシアネートである。ジイソシアネートの例には、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−又は2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−及び1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI),4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)イソシアナトメチルシクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、1,3−及び1,4−ビス(2−イソシアナトプロパ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、2,4及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5−ジイソシアナトナフタレン、又は1,3−及び1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンが含まれる。
【0016】
好ましいジイソシアネートの例は、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI),4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4−及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、並びに2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)である。
【0017】
適当な出発成分i)は、ポリイソシアネート付加物も含み得る。この付加物は、上記ジイソシアネートから調製され、ウレトジオン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジン、ウレタン、アロファネート、アシルウレア、ビウレット及び/又はオキサジアジントリオンを有する。その例は、J. Prakt. Chem. 336(1994)185-200、又はDE-A 16 70 666、DE-A 19 54 093、DE-A 24 14 413、DE-A 24 52 532、DE-A 26 41 380、DE-A 37 00 209、DE-A 39 00 053、DE-A-39 28 503、EP-A 336 205、EP-A 339 396 及びEP-A 798 299 などに記載されている。
【0018】
ブロックトポリウレタンプレポリマーA)の製造に適しているポリオール成分ii)は、ポリウレタン化学で既知の、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを含む。
【0019】
ポリオール成分ii)として適しているのは、約200〜10000g/mol、好ましくは約1000〜6000g/molの数平均分子量を有するポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールは、低分子量アルコール、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ブタンジオール、プロピレングリコール、グリセロール又はトリメチロールプロパンを、カプロラクトンと反応させることにより調製することができる。ポリエステルポリオールの調製に適した多価アルコールとしては、1,4−ヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,4−ブタントリオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール及びポリブチレングリコールが挙げられる。
【0020】
他の適当なポリエステルポリオールは、重縮合により調製することができる。重縮合反応では、2官能性及び/又は3官能性アルコールは、不足量のジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸若しくはそれらの反応性誘導体と反応させて、ポリエステルポリオールを生成することができる。適当なジカルボン酸には、アジピン酸又はコハク酸並びにそれらの高級同族体(炭素数16まで);不飽和ジカルボン酸、例えばマレイン酸又はフマル酸;並びに芳香族ジカルボン酸、特に異性体フタル酸、例えばフタル酸、イソフタル酸又はテレフタル酸が包含される。トリカルボン酸として適しているのは、クエン酸又はトリメリット酸である。上記の酸は、単独で又は2種以上の混合物として使用できる。特に適しているアルコールは、ヘキサンジオール、ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパノエート、トリメチロールプロパン、又はこれらアルコールの2種以上の混合物である。特に適している酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸又はドデカン二酸若しくはこれらの混合物である。
【0021】
高分子量を有するポリエステルポリオールには、多価、好ましくは2価アルコール(所望により、少量の3価アルコールと共に)及び多塩基性、好ましくは2塩基性カルボン酸の反応生成物が包含される。遊離ポリカルボン酸に代えて、対応するポリカルボン酸無水物、又は好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルコールとの対応するポリカルボン酸エステルも使用することができる。ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環カルボン酸若しくはこれらの混合物であってよい。これらは、場合により、例えばアルキル基、アルケニル基、エーテル基又はハロゲン原子により置換されていてよい。適するポリカルボン酸には、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー又はトリマー脂肪酸、又はこれらの混合物が包含される。
【0022】
「ポリカプロラクトン」としても知られているラクトン、例えばε−カプロラクトン、又はヒドロキシカルボン酸、例えばω−ヒドロキシカプロン酸から得られるポリエステルも、使用することができる。
【0023】
油脂化学原料からのポリエステルポリオールも使用できる。例えば、このようなポリオールは、少なくとも部分的にオレフィン性不飽和である脂肪酸含有脂肪混合物の炭素数1〜12の1種以上のアルコールとのエポキシ化トリグリセリドを完全に開環し、その後にトリグリセリド誘導体を部分エステル交換することによってアルキル基に1〜12個の炭素原子を有するアルキルエステルポリオールを生成することにより調製される。
【0024】
ポリオール成分ii)として適しているポリエーテルポリオールは、ポリウレタン化学では既知である。ポリエーテルポリオールは、一般に、低分子量多官能性OH−又はNH−官能性化合物をスターターとし、環式エーテル又は異なる環式エーテルの混合物との反応により得ることができる。この反応には、塩基、例えば水酸化カリウム、又は複金属シアン化物系を触媒として使用することができる。この目的に適した製造方法は、例えばUS-B 6,486,361 又はL. E. St. Pierre, Polyethers Part I, Polyalkylene Oxide and other Polyethers: Norman G. Gaylord 編, High Polymers, Vol. VIII; Interscience Publishers; Newark 1963; p. 130以後に記載されている。
【0025】
適するスターターは、環式エーテルが重付加できる水素原子を、好ましくは2〜8個、より好ましくは2〜6個有する。そのような化合物には、水、エチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又はソルビトールが包含される。
【0026】
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドのようなアルキレンオキシド、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド又はテトラヒドロフランも、環式エーテルとして適している。成分ii)には、好ましくはプロピレンオキシド、エチレンオキシド及び/又はテトラヒドロフラン単位、より好ましくはプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシド単位を含む上記スターターに基づくポリエーテルが好ましく使用される。
【0027】
ポリオール成分ii)として適するポリエーテルポリオールは、通常約200〜20000g/mol、好ましくは約500〜12000g/mol、より好ましくは約1000〜8000g/molの数平均分子量を有する。
【0028】
ポリオール成分ii)として使用するのに適するポリカーボネートポリオールは、実質的に直鎖で、少なくとも2つのOH基、好ましくは末端OH基を有する。ポリカーボネートポリオールは、ジオール(例えば、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール又は1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール又はテトラエチレングリコール若しくはこれらの混合物)とジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート又はホスゲン)との反応により得ることができる。
【0029】
成分i)と成分ii)との比は、NCO基対OH基の当量比が1.2:1〜4.0:1、好ましくは1.4:1〜3.0:1となるように、選択される。
【0030】
ポリウレタンプレポリマーA)を調製するための成分i)と成分ii)との反応は、反応温度で液体のポリオールを過剰のポリイソシアネートと混合し、均一混合物を、NCO含有量が一定になるまで攪拌することにより、行われる。反応温度は、40〜80℃、好ましくは50〜140℃である。ポリウレタンプレポリマーA)の調製は、攪拌容器カスケード又は適当な混合機、例えばローター−ステーター原理による高速ミキサーを用いて、連続的に実施することができる。
【0031】
ポリエステルポリオール及び/又はポリエーテルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオール若しくはそれらの一部を、不足量のジイソシアネート(例えば、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI),4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4−及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)並びに/若しくは2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI))により変性し、反応の終了時にウレタン基含有オリオールを過剰のジイソシアネートと反応させて、ポリウレタンプレポリマーA)を生成することもできる。所望により、NCO/OH反応を促進する触媒及び/又は溶媒を、成分i)と成分ii)との反応中に添加することができる。
【0032】
触媒としては、ポリウレタン化学では既知のアミン又は有機金属化合物が適している。適当なアミン触媒には、第3級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノジエチルエーテル、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7(DBU)及びN,N’−ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE);並びにアルカノールアミン化合物、例えばトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチル−及びN−エチルジエタノールアミン及びジメチルアミノエタノールが包含される。
【0033】
触媒として、スズ、鉛、鉄、チタン、ビスマス又はジルコニウムの有機金属化合物、例えば、塩化鉄(II)、塩化亜鉛、オクタン酸鉛、好ましくはスズ塩、例えばジオクタン酸スズ、酢酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)及びジエチルヘキサン酸スズ(II)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルジラウリルスズメルカプチド、ジアルキルスズ(IV)カルボキシレートなども適している。酸化スズ及び硫化スズ、更にチオール化スズも使用できる。好ましい化合物には、ビス(トリブチルスズ)オキシド、ビス(トリオクチルスズ)オキシド、ジブチル−及びジオクチルスズ(2−エチルヘキシルチオレート)、並びにジブチル−及びジオクチルスズジドデシルチオレートが包含される。スズ化合物、特にTi(IV)−O−アルキル化合物も適している。適当なアルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル及び3−ペンチル、好ましくは、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル及びn−ブチルが含まれる。特に好ましくは、Ti(IV)ブチレートである。有機ビスマス化合物としては、カルボン酸が2〜20個、好ましくは4〜14個の炭素原子を有するカルボン酸ビスマスが、特に使用される。
【0034】
触媒を使用する場合、その量は、成分i)及び成分ii)の合計量に基づき、0.01〜8質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0035】
ブロックトポリウレタンプレポリマーA)の調製に使用する成分iii)は、下記式で示されるCH酸性環式ケトンである:
【化2】

[式中、Xは電子吸引性基であり、
およびRは、相互に独立に、水素、C−C20(シクロ)アルキル、C−C24アリール、C−C20(シクロ)アルキルエステル又はアミド、C−C24アリールエステル又はアミド、4〜8員環の部分であってもよい1〜24個の炭素原子を有する混合脂肪族/芳香族基であり、
nは0〜5の整数である。]
【0036】
式(I)の電子吸引性基は、α位水素にCH酸性を生じさせるいずれの置換基であってもよい。そのような基の例には、エステル基、アミド基、スルホキシド基、スルホン基、ニトロ基、ホスホネート基、ニトリル基、イソニトリル基、カルボニル基、ポリハロアルキル基及びハロゲン原子(特にフッ素原子及び塩素原子)が包含される。ニトリルおよびエステル基が好ましく、カルボン酸メチルエステル基およびカルボン酸エチルエステル基が特に好ましい。
【0037】
適当な出発化合物iii)として、環が所望によりヘテロ原子、例えば酸素、硫黄又は窒素原子を含む式(I)と類似の化合物も使用できる。環中にヘテロ原子が存在するなら、好ましい構造要素はラクトン又はチオラクトンである。
【0038】
活性化環式ケトン(I)は、好ましくは、5員環(n=1)又は6員環(n=2)であり、従って、好ましくはnは1〜2である。
【0039】
好ましい出発化合物iii)の例には、シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステル及び−カルボキシエチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボン酸ニトリル、シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステル及び−カルボキシエチルエステルまたはシクロペンタノン−2−カルボニルメチルが包含される。シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステル及び−カルボキシエチルエステル及びシクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステル及びカルボキシエチルエステルが特に好ましい環式ケトンである。
【0040】
これらのシクロペンタノン系は、アジピン酸ジメチルまたはジエチルのディークマン縮合によって容易に得られる。シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステルは、サリチル酸メチルの水素添加によって得ることができる。
【0041】
環式ケトンiii)を用いて成分i)及び成分ii)を反応させることにより調製されるポリウレタンプレポリマーA)のブロッキングは、通常、触媒の存在下に行われる。ポリウレタンプレポリマー中に存在するイソシアネート基の当量につき、0.8〜1.2モルの触媒を使用する。好ましくは、ブロッキングされるポリウレタンプレポリマーからのイソシアネート基の1当量を、1当量のブロック剤と反応させる。
【0042】
成分i)及び成分ii)を反応させて調製したポリウレタンプレポリマーA)の環式ケトンiii)によるブロッキングは、通常、触媒の存在下に行われる。ポリウレタンプレポリマー中に存在するイソシアネート基1当量につき0.8〜1.2モルの環式ケトンiii)を使用する。好ましくは、ブロックされるポリウレタンプレポリマーのイソシアネート基1当量を、ブロック剤1当量と反応させる。
【0043】
ブロック反応を促進するのに適している触媒には、アルカリ金属塩基又はアルカリ土類金属塩基、例えば、粉末炭酸ナトリウム(ソーダ)である。使用する環式ケトンiii)によっては、燐酸三ナトリウム、またはアミン塩基、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DabcoTM)を使用することもできる。周期表第2亜族の金属の炭酸塩も適している。炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムが好ましく使用される。あるいは、環式ケトンiii)とNCO基含有ポリウレタンプレポリマーの反応は、触媒としての亜鉛塩の存在下に行うこともできる。2−エチルヘキサン酸亜鉛を用いた反応が特に好ましい。触媒の混合物も使用できる。
【0044】
触媒は、NCO末端プレポリマーの質量に基づき、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜3%、より好ましくは0.07〜1質量%の量で使用される。
【0045】
上記反応は、0〜140℃の温度で行うことができる。15〜90℃の温度が好ましい。
【0046】
ブロッキングは、適当な溶媒の存在下又は不存在下に行うことができる。適当な溶媒には、既知の塗料溶媒、例えば酢酸ブチル、酢酸メトキシプロピル、メチルエチルケトン、アセトン、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ(例えば、Exxon Chemie から販売されている芳香族含有溶媒"Solvesso 100TM")、及びこれら溶媒の混合物が包含される。
【0047】
環式ケトンiii)に加えて、他の既知ブロック剤を、ブロックトプレポリマーA)の調製に使用することができる。環式ケトンiii)の量は、ブロック剤の質量に基づき、少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは100質量%である。適当な他のブロック剤には、ジイソプロピルアミン、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エステル、アセトンオキシム、ブタノンオキシム、ε−カプロラクタム、3,5−ジメチルピラゾール、1,2,4−トリアゾール、ジメチル−1,2,4−トリアゾール、イミダゾール、又はこれらブロック剤の混合物が包含される。
【0048】
この方法により得られるブロックトポリウレタンプレポリマーA)は、ブロックトプレポリマーの質量に基づき、一般に0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜15.6質量%、より好ましくは0.1〜14質量%のブロックトNCO基(NCOとして計算)を有する。このようなブロックトポリウレタンプレポリマーは、本発明の反応性組成物を製造するための出発成分として非常に適している。
【0049】
成分B)としてのOH官能性化合物は、OH成分がβ−位アミン成分により活性化を受けるポリオールである。このような混合官能性反応体には、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン又は多官能性アミノエタノールである。好ましい混合官能性反応体は、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン又はN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンである。
【0050】
本発明の反応性組成物を調製するには、ブロックトポリウレタンプレポリマーA)を、各ブロックトイソシアネート基及び任意の遊離イソシアネート基につき0.6〜1.4個、好ましくは0.8〜1.2個、より好ましくは0.9〜1.1個のイソシアネート反応性基が存在するような量で、OH官能性化合物B)と組み合わせる。
【0051】
得られた反応性組成物は、所望により、適当な触媒C)を含み、この触媒は、室温程度の低温度での架橋を可能にし、あるいは加熱により架橋を促進する。
【0052】
適当な触媒C)には、ジブチル錫ジラウレート(DBTL)、チタン2−エチルヘキサノエート、チタンテトライソプロピレート及び他の通常のチタン(IV)化合物、ジルコニウム2−エチルヘキサノエート及び他の通常のジルコニウム(IV)化合物、アルミニウムトリエチレート、スカンジウムトリフルオロメタンスルホネート、イットリウム2−エチルヘキサノエート、イットリウムトリフルオロメタンスルホネート、ランタン2−エチルヘキサノエート、ランタントリフルオロメタンスルホネート、コバルト2−エチルヘキサノエート、銅2−エチルヘキサノエート、インジウムトリフルオロメタンスルホネート、ガリウムアセチルアセトネート、ニッケルアセチルアセトネート、リチウム2−エチルヘキサノエート、リチウムトリフルオロメタンスルホネート、ナトリウム2−エチルヘキサノエート、酢酸ナトリウム、ナトリウムトリフルオロメタンスルホネート、マグネシウム2−エチルヘキサノエート、マグネシウムトリフルオロメタンスルホネート、カルシウム2−エチルヘキサノエート、カルシウムトリフルオロメタンスルホネート、亜鉛2−エチルヘキサノエート、亜鉛ジチオカーバメート、亜鉛アセチルアセトネート、亜鉛テトラメチルヘプタジオネート、サリチル酸亜鉛、塩化亜鉛及び他の通常の亜鉛(II)化合物、ビスマス2−エチルヘキサノエート及び酢酸ビスマスが包含される。
【0053】
好ましい触媒C)は、亜鉛及びビスマス化合物であり、亜鉛2−エチルヘキサノエート及びビスマス2−エチルヘキサノエートが特に好ましい。
【0054】
触媒C)は、反応性組成物の質量に基づき、0.00001〜2.0%、好ましくは0.05〜1.0%、より好ましくは0.01〜0.7%の量で使用される。
【0055】
反応性組成物は、処方添加剤として接着剤分野で既知の添加剤D)も含み得る。そのような添加剤には、可塑剤、充填材、顔料、乾燥剤、光安定剤、酸化防止剤、チキソトロープ剤及び接着促進剤が包含される。適当な充填材の例は、カーボンブラック、沈降シリカ、熱分解法シリカ、天然白亜及び沈降白亜である。適当な可塑剤には、フェノールのフタル酸エステル、アジピン酸エステル、アルキルスルホン酸エステル、又はリン酸エステルが包含される。チキソトロープ剤の例は、発熱法シリカ、ポリアミド、水素化ひまし油誘導体又はポリ塩化ビニルである。
【0056】
適当な乾燥剤には、とりわけ、アルコキシシリル化合物、例えばビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン及びヘキサデシルトリメトキシシラン;無機物質、例えば酸化カルシウム(CaO);及びイソシアネート基を有する化合物、例えばトシルイソシアネートが包含される。接着促進剤として、既知の官能性シラン、例えば上記アミノシラン、並びにN−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシ及び/又はN−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、エポキシシラン及び/又はメルカプトシランも使用することができる。
【0057】
成分A)及びB)並びに所望の成分C)及び/又はD)からの本発明の反応性組成物の調製は、好ましくは−20〜50℃、より好ましくは0〜40℃の温度で行われる。
【0058】
本発明の反応性組成物は、接着剤、シーラント、塗料、埋封剤または成形物の製造に使用することができる。好ましくは、本発明の反応性組成物は、接着剤の製造に使用される。
【0059】
本発明の反応性組成物は、非常に広範囲の材料を、同種材料に、または異種材料に結合するのに適している。結合できる材料としては、例えば金属、プラスチック、ガラス、木、皮革および繊維製品が挙げられる。
【0060】
また、本発明は、結合される被着材の一方の面又は両方の面に本発明の反応性組成物を塗布することを含む、複合システム(複合材料)の製造方法をも提供する。
更に、本発明は、被覆として本発明の反応性組成物を含む複合システムを提供する。
【0061】
本発明の反応性組成物は、選択された組成によっては、周囲条件、即ち、好ましくは−30〜50℃の温度及び好ましくは10〜90%の相対湿度において、数時間から数日で、硬化することができる。温度を50℃以上、好ましくは約60〜100℃、より好ましくは約60〜80℃に高めると、硬化は更に促進される。硬化の促進は、実用上望ましい。この場合、本発明の反応性組成物は、選択された組成に依存して、数分から数時間で硬化する。
【0062】
以下、本発明を実施例により説明する。
下記実施例において、パーセントは質量%である。
粘度は、ViscoTester VT 550 回転粘度計(Thermo Haake, ドイツ、Karlsruhe 在)により、SV 測定カップ及びSV DIN 2 センサーを用いて、測定した。
プレポリマー及び反応混合物のNCO含有量は、DIN EN 1242 に従って測定した。
【0063】
出発化合物:
シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル(Fluka 製)
N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(Fkuka 製。更なる精製を行わずに使用)
【0064】
α−酸性環式ケトンによりブロックされたポリウレタンプレポリマーの調製
ブロックトポリウレタンプレポリマーA:
窒素雰囲気中、まず、HDI及びポリエーテルジオール(DesmodurTM E 305; Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, NCO含有量12.5%, 当量質量336g/当量)から調製したNCOプレポリマー100.8g(0.30当量)、並びに亜鉛2−エチルヘキサノエート0.095gを、還流冷却器及び内部温度計を備えた250ml4つ口フラスコに充填した。次いで、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル47.8g(0.306当量)を、室温で、反応温度が40℃を超えないようにゆっくりと滴下した。混合物を冷却するために、必要なら水浴を用いた。全てのエステルを添加し終わった時点から、反応混合物のNCO含有量がゼロになるまで、40℃で攪拌を続けた。プレポリマーのブロックトNCO含有量は8.52%であった。
【0065】
ブロックトポリウレタンプレポリマーB:
窒素雰囲気中、まず、ジイソシアナトトルエン(TDI)及びポリエーテルジオール(DesmodurTM E 15; Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, NCO含有量4.3%, 当量質量974.5g/当量)から調製したNCOプレポリマー146.2g(0.15当量)、並びに亜鉛2−エチルヘキサノエート0.170gを、還流冷却器及び内部温度計を備えた250ml4つ口フラスコに充填した。次いで、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル23.4g(0.15当量)を、室温で、反応温度が40℃を超えないようにゆっくりと滴下した。混合物を冷却するために、必要なら水浴を用いた。全てのエステルを添加し終わった時点から、反応混合物のNCO含有量がゼロになるまで、40℃で攪拌を続けた。プレポリマーのブロックトNCO含有量は3.71%であり、粘度は48900mPas であった。
【0066】
ブロックトポリウレタンプレポリマーC:
最初に、2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)1.2当量及びアセトン348.1gを、50℃で、500ml3つ口フラスコに充填した。次いで、ポリエステルジオール(BaycollTM AD 225; Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, OH価225mgKOH/g, 6.52〜7.12%のヒドロキシ含有量に相当)150gを加えた。温度は、60℃を超えないように維持した。混合物を、ウレタン段階のNCO含有量(4.18%)に到達するまで、反応させた。次いで、反応混合物を45℃に冷却した。シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル93.7g(0.6当量)及び亜鉛2−エチルヘキサノエート348mgを加えた。NCO含有量がゼロになるまで、45〜50℃で反応を続けた。その後、アセトンを留去した。得られた生成物は、14.5%のブロックトNCO含有量を有していた。生成物は固体であった。
【0067】
ブロックトポリウレタンプレポリマーD:
窒素雰囲気中、60℃で、まず、2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)193.93g(2.23当量)を、攪拌機、還流冷却器及び内部温度計を備えた2000ml4つ口フラスコに充填した。次いで、ポリプロピレングリコール(AcclaimTM 2200; Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, OH価約56mgKOH/g、公称官能価2)1114.56g(1.11当量)を、滴下ロートから、添加中に反応温度が60℃を超えないようにゆっくりと滴下した。全てのポリエーテルを添加し終わった時点から、ウレタン段階のNCO含有量(3.58%)に到達するまで、60℃で攪拌を続けた。混合物を50℃に冷却し、亜鉛2−エチルヘキサノエート1.5gを攪拌して加えた。続いて、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル191.5g(1.23当量)を、30分かけて滴下した。NCO含有量がゼロになるまで(約10時間)、反応を続けた。その後、混合物を室温まで冷却し、生成物を注ぎ出した。プレポリマーは、3.12%のブロックトNCO含有量を有していた。
【0068】
ブロックトポリウレタンプレポリマーE:
窒素雰囲気中、60℃で、まず、2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)111.26g(1.28当量)を、攪拌機、還流冷却器及び内部温度計を備えた2000ml4つ口フラスコに充填した。次いで、ポリプロピレングリコール(AcclaimTM 4200; Bayer MaterialScience AG, Leverkusen, OH価約28mgKOH/g、公称官能価2)1278.87g(0.64当量)を、滴下ロートから、添加中に反応温度が60℃を超えないようにゆっくりと滴下した。全てのポリエーテルを添加し終わった時点から、ウレタン段階のNCO含有量(1.93%)に到達するまで、60℃で攪拌を続けた。混合物を50℃の冷却し、亜鉛2−エチルヘキサノエート0.5gを攪拌して加えた。続いて、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル109.87g(0.7当量)を、30分かけて滴下した。NCO含有量がゼロになるまで(約10時間)、反応を続けた。その後、混合物を室温まで冷却し、生成物を注ぎ出した。プレポリマーは、1.79%のブロックトNCO含有量を有していた。
【0069】
応用実施例
【実施例1】
【0070】
表1に示す量のブロックトポリウレタンプレポリマー(成分A)を、表1に示す量のN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(成分B)と、激しく混合した。これらの量は、ブロックトNCO基対OH基の比1:1に相当する。次いで、混合物をテフロンTM皿(直径約8cm、深さ1cm)に注ぎ、室温で硬化させた。硬化が完了するまでの時間を表1に示す。
【0071】
比較例1
表2に示す量のブロックトポリウレタンプレポリマー(成分A)を、表2に示す量のポリアミン(架橋剤)と、激しく混合した。これらの量は、ブロックトNCO基対NH基の比1:1に相当する。次いで、混合物をテフロンTM皿(直径約8cm、深さ1cm)に注ぎ、室温で硬化させた。硬化が完了するまでの時間を表2に示す。
【実施例2】
【0072】
表3に示す量のブロックトポリウレタンプレポリマー(成分A)を、表3に示す量のN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン(成分B)と、激しく混合した。これらの量は、ブロックトNCO基対OH基の比1:1に相当する。次いで、混合物をコフラーベンチ上に置き、高温で硬化が完了するまでの時間を測定した。硬化完了時間を表3に示す。
【実施例3】
【0073】
ブロックトポリウレタンプレポリマーA15gを、反応体であるN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン1.797gと共に秤量した。これらの量は、ブロックトNCO基対OH基の比1:1に相当する。次いで、触媒として亜鉛2−エチルヘキサノエート0.15gを加え、激しく攪拌しながら混合した。この接着剤組成物を使用して、ブナ材板(寸法30×120×4.0mm、23℃及び50%RHで貯蔵)を、未可塑化PVCフィルム(Benecke-Kaliko, Benelitfolie RTF, 寸法30×210×0.4mm)と結合した。接着剤は、溝付きドクターブレード(150μm)を用いて、ブナ材板の片面に塗布した。被着面は、約30×90mmであった。結合した基材に、2kgの荷重をかけ、3日間硬化させた。次いで、剥離角180°、剥離速度100mm/分で、剥離強さを測定した。5個のサンプルにつき測定し、測定値を平均した。剥離強さは3.7N/mmであった。
【実施例4】
【0074】
ブロックトポリウレタンプレポリマーC15gを、反応体であるN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン1.526gと共に秤量した。これらの量は、ブロックトNCO基対OH基の比1:1に相当する。次いで、触媒として亜鉛2−エチルヘキサノエート0.15gを加え、激しく攪拌しながら混合した。この接着剤組成物を使用して、ブナ材板(寸法30×120×4.0mm、23℃及び50%RHで貯蔵)を、未可塑化PVCフィルム(Benecke-Kaliko, Benelitfolie RTF, 寸法30×210×0.4mm)と結合した。接着剤は、溝付きドクターブレード(150μm)を用いて、ブナ材板の片面に塗布した。被着面は、約30×90mmであった。結合した基材に、2kgの荷重をかけ、3日間硬化させた。次いで、剥離角180°、剥離速度100mm/分で、剥離強さを測定した。5個のサンプルにつき測定し、測定値を平均した。しかし、2個のサンプルでは、材料破壊が生じた(PVCフィルムの破れ)。残り3個のサンプルで測定したところ、平均剥離強さは4.5N/mmであった。
【実施例5】
【0075】
ブロックトポリウレタンプレポリマーA15gを、反応体であるN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン1.797gと共に秤量した。これらの量は、ブロックトNCO基対OH基の比1:1に相当する。次いで、触媒として亜鉛2−エチルヘキサノエート0.15gを加え、激しく攪拌しながら混合した。この接着剤組成物を使用して、2枚のNBR試験片(寸法30×180mm)を相互に結合した。接着剤は、溝付きドクターブレード(150μm)を用いて、一方の片面に塗布した。結合した基材に、4kgの荷重をかけ、3日間硬化させた。次いで、剥離角180°、剥離速度100mm/分で、剥離強さを測定した。3個のサンプルにつき測定し、測定値を平均した。剥離強さは3.6N/mmであった。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)0.1〜20質量%のブロックトイソシアネート基含有量(NCOとして計算)を有し、
i)5〜60質量%の遊離イソシアネート基含有量を有する芳香族、脂肪族、芳香脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネート少なくとも1種、
ii)少なくとも1つのポリエステルポリオール及び/又は少なくとも1つのポリエーテルポリオール及び/又は少なくとも1つのポリカーボネートポリオールを含むポリオール成分、
iii)ブロック剤としての、式(I):
【化1】

[式中、Xは電子吸引性基であり、
およびRは、相互に独立に、水素、C−C20(シクロ)アルキル、C−C24アリール、C−C20(シクロ)アルキルエステル又はアミド、C−C24アリールエステル又はアミド、4〜8員環の部分であってもよい1〜24個の炭素原子を有する混合脂肪族/芳香族基であり、
nは0〜5の整数である。]
で示されるCH酸性環式ケトン
から生成された、1種以上のブロックトポリウレタンプレポリマー、及び
B)OH成分がβ−位アミン成分により活性化を受ける、1種以上のOH官能性化合物
を含んでなる反応性組成物。
【請求項2】
成分i)が、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI),4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4−及び/又は2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、若しくは2,2’−、2,4’−及び/又は4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)を含む請求項1に記載の反応性組成物。
【請求項3】
成分iii)が、シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボン酸ニトリル、シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステル、シクロヘキサノン−2−カルボキシエチルエステル又はシクロペンタノン−2−カルボニルメチルを含む請求項1に記載の反応性組成物。
【請求項4】
成分iii)が、シクロペンタノン−2−カルボキシメチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボキシエチルエステル、シクロペンタノン−2−カルボン酸ニトリル、シクロヘキサノン−2−カルボキシメチルエステル、シクロヘキサノン−2−カルボキシエチルエステル又はシクロペンタノン−2−カルボニルメチルを含む請求項2に記載の反応性組成物。
【請求項5】
ポリウレタンプレポリマーA)が、0.1〜15.6質量%のブロックトイソシアネート基含有量を有する請求項1に記載の反応性組成物。
【請求項6】
成分B)が、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン又は多官能性アミノエタノールである請求項1に記載の反応性組成物。
【請求項7】
成分B)が、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン又は多官能性アミノエタノールである請求項2に記載の反応性組成物。
【請求項8】
成分B)が、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン又は多官能性アミノエタノールである請求項3に記載の反応性組成物。
【請求項9】
成分B)が、エタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン又は多官能性アミノエタノールである請求項4に記載の反応性組成物。
【請求項10】
成分B)が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及び/又はN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンである請求項1に記載の反応性組成物。
【請求項11】
成分B)が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及び/又はN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンである請求項2に記載の反応性組成物。
【請求項12】
成分B)が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及び/又はN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンである請求項3に記載の反応性組成物。
【請求項13】
成分B)が、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン及び/又はN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミンである請求項4に記載の反応性組成物。
【請求項14】
各ブロックトイソシアネート基及び任意の遊離イソシアネート基につき0.6〜1.4個のイソシアネート反応性基が存在するような量で、ブロックトポリウレタンプレポリマーA)をOH官能性化合物B)と反応させることを含んでなる、請求項1に記載の反応性組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1に記載の反応性組成物により結合された2つの被着材を含んでなる複合システム。
【請求項16】
被着材が、金属、プラスチック、ガラス、木、皮革又は繊維製品である請求項15に記載の複合システム。

【公開番号】特開2006−97018(P2006−97018A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−260417(P2005−260417)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】