説明

ブローバイガス還流装置

【課題】ブローバイガス中に大量の燃料成分が含まれるときに空燃比を正確に制御することができる簡易な構造のブローバイガス還流装置を提供する。
【解決手段】本装置20は、内燃機関(エンジン1)の潤滑オイルを貯留するオイル貯留部(オイルパン15)と、前記オイル貯留部に設けられ、該オイル貯留部内の潤滑オイル中の燃料希釈度を検出する希釈度センサ21と、前記内燃機関のクランク室14で発生するブローバイガスを吸気系に戻すための第1ブローバイガス通路23及び第2ブローバイガス通路24と、前記希釈度センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替える切替手段(通路切替弁25及びECU26)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローバイガス還流装置に関し、更に詳しくは、ブローバイガス中に大量の燃料成分が含まれるときに空燃比を正確に制御することができる簡易な構造のブローバイガス還流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等のエンジンにおいて、燃焼室からクランク室へ漏れるブローバイガスを吸気系に還流して大気中への放出を防止するブローバイガス還流装置を設けることが一般的に知られている。このブローバイガス還流装置は、通常、クランク室又はシリンダヘッドカバーの内部空間と吸気管とを連絡するブローバイガス通路と、このブローバイガス通路に設けられるPCVバルブと、を備えている。
しかし、上記ブローバイガス還流装置では、吸気管の圧力により機械的にPCVバルブが開閉されるようになっているので、アイドリング時等のエンジン回転数が比較的小さいときにエンジンオイル中に燃料成分が多く混入していると、クランク室内のブローバイガス中に大量の燃料成分が含まれることとなり、空燃比(A/F)が乱れてしまう場合がある。なお、エンジン回転数が比較的高いときには空燃比の乱れは発生し難い。
【0003】
なお、従来のブローバイガス還流装置として、排気管5に空燃比センサ21を設け、この空燃比センサ21の検出結果に基づいてPCVバルブ31の流量を電気的に制御するものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
しかし、上記特許文献1では、排気管5に設けられた空燃比センサ21の検出結果に基づいてPCVバルブ31の流量を制御するようにしているので、ブローバイガス中に大量の燃料成分が含まれる以外の要因であってもブローバイガス量を絞ってしまうことがあり、空燃比を正確に制御できない恐れがある。また、PCVバルブの流量を電気的に制御するためには、PCVバルブひいては還流装置の構造が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−52664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、ブローバイガス中に大量の燃料成分が含まれるときに空燃比を正確に制御することができる簡易な構造のブローバイガス還流装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.内燃機関の潤滑オイルを貯留するオイル貯留部と、
前記オイル貯留部に設けられ、該オイル貯留部内の潤滑オイル中の燃料希釈度を検出する希釈度センサと、
前記内燃機関のクランク室で発生するブローバイガスを吸気系に戻すための第1ブローバイガス通路及び第2ブローバイガス通路と、
前記希釈度センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替える切替手段と、を備えるブローバイガス還流装置。
2.前記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、
前記第1ブローバイガス通路は、前記第2ブローバイガス通路の縦断面積より大きな縦断面積を有しており、
前記切替手段は、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、前記希釈度センサ及び前記回転数センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路のみが導通する状態と前記第2ブローバイガス通路のみが導通する状態とに切り替わるように前記通路切替弁を制御する制御部と、を有している上記1.記載のブローバイガス還流装置。
3.前記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、
前記切替手段は、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、前記希釈度センサ及び前記回転数センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路のうちの両方の通路が導通する状態と一方の通路のみが導通する状態とに切り替わるように前記通路切替弁を制御する制御部と、を有している上記1.記載のブローバイガス還流装置。
4.前記オイル貯留部に設けられ、該オイル貯留部内の潤滑オイルの温度を検出する温度センサを更に備え、
前記切替手段は、前記希釈度センサ及び前記温度センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替えるようになっている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載のブローバイガス還流装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のブローバイガス還流装置によると、希釈度センサによって、オイル貯留部内の潤滑オイル中の燃料希釈度が検出され、切替手段によって、その検出結果に基づいて第1及び第2ブローバイガス通路の導通状態が切り替えられる。これにより、オイル貯留部内の潤滑オイル中の燃料希釈度が高いとき、即ちクランク室内のブローバイガス中に大量の燃料成分が含まれるときに第1及び第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替えてブローバイガスの流量を絞ることができる。その結果、空燃比を正確に制御することができる。また、還流装置の構造を簡素化することができる。
また、前記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、前記第1ブローバイガス通路が、前記第2ブローバイガス通路の縦断面積より大きな縦断面積を有しており、前記切替手段が、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、前記希釈度センサ及び前記回転数センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路のみが導通する状態と前記第2ブローバイガス通路のみが導通する状態とに切り替わるように前記通路切替弁を制御する制御部と、を有している場合は、内燃機関の回転数が高いときには、制御部による通路切替弁の制御により第1ブローバイガス通路が導通される状態とされ、第1ブローバイガス通路を介してブローバイガスが吸気系に戻される。一方、内燃機関の回転数が低いときには潤滑オイル中の燃料希釈度が高い場合に、制御部による通路切替弁の制御により第2ブローバイガス通路が導通される状態とされ、第2ブローバイガス通路を介してブローバイガスは流量が絞られつつ吸気系に戻される。これにより、空燃比が乱れてしまう状態をより正確に把握してブローバイガスの流量を絞ることができる。
また、前記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、前記切替手段が、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、前記希釈度センサ及び前記回転数センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路のうちの両方の通路が導通する状態と一方の通路のみが導通する状態とに切り替わるように前記通路切替弁を制御する制御部と、を有している場合は、内燃機関の回転数が高いときには、制御部による通路切替弁の制御により第1及び第2ブローバイガス通路が導通される状態とされ、第1及び第2ブローバイガス通路を介してブローバイガスが吸気系に戻される。一方、内燃機関の回転数が低いときには潤滑オイル中の燃料希釈度が高い場合に、制御部による通路切替弁の制御により一方のブローバイガス通路のみが導通される状態とされ、一方のブローバイガス通路を介してブローバイガスは流量が絞られつつ吸気系に戻される。これにより、空燃比が乱れてしまう状態をより正確に把握してブローバイガスの流量を絞ることができる。
さらに、前記オイル貯留部に設けられ、該オイル貯留部内の潤滑オイルの温度を検出する温度センサを更に備え、前記切替手段が、前記希釈度センサ及び前記温度センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替えるようになっている場合は、潤滑オイル中の燃料希釈度が高く且つ潤滑オイルの温度が高いとき、即ちクランク室内のブローバイガス中に極めて大量の燃料成分が含まれときにブローバイガスの流量を絞りつつ吸気系に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1に係るブローバイガス還流装置を備えるエンジンの縦断面図である。
【図2】実施例1に係るECUの処理動作を説明するためのフローチャート図である。
【図3】上記ブローバイガス還流装置の作用を説明するための説明図であり、(a)は第1ブローバイガス通路の導通状態を示し、(b)は第2ブローバイガス通路の導通状態を示す。
【図4】実施例2に係るブローバイガス還流装置を備えるエンジンの要部縦断面図である。
【図5】実施例2に係るECUの処理動作を説明するためのフローチャート図である。
【図6】その他の形態のブローバイガス還流装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態1.に係るブローバイガス還流装置は、以下に述べるオイル貯留部、希釈度センサ、第1及び第2ブローバイガス通路、並びに切替手段を備える。このブローバイガス還流装置は、例えば、後述する温度センサを更に備えることができる。
なお、上記「内燃機関」としては、例えば、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、バイオ燃料エンジン等を挙げることができる。したがって、上記実施形態1.に係るブローバイガス還流装置で還流されるブローバイガス中に含まれる燃料成分としては、例えば、ガソリン、ディーゼル燃料、バイオ燃料等を挙げることができる。
【0010】
上記「オイル貯留部」は、内燃機関の潤滑オイルを貯留する限り、その構造、貯留形態、設置形態、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。このオイル貯留部としては、例えば、内燃機関の本体の下部に設けられるオイルパン、内燃機関の本体とは別体に設けられるオイルタンク等を挙げることができる。
【0011】
上記「希釈度センサ」は、上記オイル貯留部に設けられ、このオイル貯留部内の潤滑オイル中の燃料希釈度を検出する限り、その構造、検出形態、設置形態、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この希釈度センサとしては、例えば、(1)潤滑オイル中の燃料希釈度を直接的に検出する形態、(2)潤滑オイル中の粘度を検出し、その検出値に基づいて潤滑オイル中の燃料希釈度を検出する形態等を挙げることができる。
【0012】
上記「第1及び第2ブローバイガス通路」は、上記内燃機関のクランク室で発生するブローバイガスを吸気系に戻すための通路である限り、その構造、設置形態、大きさ(例えば、直径、長さ等)、形状、材質などは特に問わない。
上記第1及び第2ブローバイガス通路としては、例えば、(a)内燃機関のクランク室と吸気系を構成する吸気管とを連絡する通路である形態、(b)内燃機関のシリンダヘッドカバーの内部空間と吸気系を構成する吸気管とを連絡する通路である形態等を挙げることができる。これらのうち、ブローバイガス通路の全長を長くして流量の絞り効果をより高め得るといった観点から、上記(a)形態であることが好ましい。
【0013】
上記「切替手段」は、上記希釈度センサの検出結果に基づいて、第1ブローバイガス通路及び第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替える限り、その構造、切替形態、タイミング等は特に問わない。
【0014】
ここで、上記実施形態1.のブローバイガス還流装置としては、例えば、以下に述べる(1)(2)形態等を挙げることができる。
(1)上記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、第1ブローバイガス通路は、第2ブローバイガス通路の縦断面積より大きな縦断面積を有しており、切替手段は、第1ブローバイガス通路及び第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、希釈度センサ及び回転数センサの検出結果に基づいて、第1ブローバイガス通路のみが導通する状態と第2ブローバイガス通路のみが導通する状態とに切り替わるように通路切替弁を制御する制御部と、を有している形態(例えば、図1及び2参照)。
(2)上記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、切替手段は、第1ブローバイガス通路及び第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、希釈度センサ及び回転数センサの検出結果に基づいて、第1ブローバイガス通路及び第2ブローバイガス通路のうちの両方の通路が導通する状態と一方の通路のみが導通する状態とに切り替わるように通路切替弁を制御する制御部と、を有している形態(例えば、図4及び5参照)。
【0015】
上記(1)形態では、例えば、上記制御部による通路切替弁の制御によって、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より大きいときに第1ブローバイガス通路のみが導通する状態とされ、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より小さいときに、上記希釈度センサの検出値が所定の希釈度設定値より大きい場合に第2ブローバイガス通路のみが導通する状態とされることができる。
上記回転数設定値としては、例えば、1000〜4000rpm(好ましくは、2000〜3000rpm)のうちの任意の数値を挙げることができる。
上記希釈度設定値としては、例えば、15vol%以下の任意の数値を挙げることができる。
【0016】
上記(1)形態では、例えば、上記第1ブローバイガス通路には、吸気系を構成する吸気管の内圧によりブローバイガス通路を流れるブローバイガスの流量を調整可能な流量調整バルブ(「PCVバルブ」とも呼ばれる。)が設けられており、上記第2ブローバイガス通路には流量調整バルブが設けられていない形態とすることができる。この流量調整バルブは、例えば、上記第1ブローバイガス通路の通路切替弁と吸気管の接続部との間に設けられていることができる。
【0017】
上記(2)形態では、例えば、上記制御部による通路切替弁の制御によって、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より大きいときに第1及び第2ブローバイガス通路が導通する状態とされ、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より小さいときに、上記希釈度センサの検出値が所定の希釈度設定値より大きい場合に一方のブローバイガス通路のみが導通する状態とされることができる。
上記回転数設定値としては、例えば、500〜2000rpm(好ましくは、600〜1000rpm)のうちの任意の数値を挙げることができる。
上記希釈度設定値としては、例えば、15vol%以下の任意の数値を挙げることができる。
【0018】
上記(2)形態では、例えば、上記第1及び第2ブローバイガス通路のそれぞれには、吸気系を構成する吸気管の内圧によりブローバイガス通路を流れるブローバイガスの流量を調整可能な流量調整バルブ(「PCVバルブ」とも呼ばれる。)が設けられていることができる。
【0019】
上記「温度センサ」は、上記オイル貯留部に設けられ、このオイル貯留部内の潤滑オイルの温度を検出する限り、その構造、検出形態、設置形態、大きさ、形状、材質、数量などは特に問わない。この場合、上記切替手段は、希釈度センサ及び温度センサの検出結果に基づいて、第1ブローバイガス通路及び第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替えるようになっている。
【0020】
上記温度センサを備える場合、上記(1)形態では、例えば、上記制御部による通路切替弁の制御によって、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より大きいときに第1ブローバイガス通路のみが導通する状態とされ、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より小さいときに、上記希釈度センサの検出値が所定の希釈度設定値より大きく且つ上記温度センサの検出値が所定の温度設定値より大きい場合に第2ブローバイガス通路のみが導通する状態とされることができる。
上記温度センサを備える場合、上記(2)形態では、例えば、上記制御部による通路切替弁の制御によって、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より大きいときに第1及び第2ブローバイガス通路が導通する状態とされ、上記回転数センサの検出値が所定の回転数設定値より小さいときに、上記希釈度センサの検出値が所定の希釈度設定値より大きく且つ上記温度センサの検出値が所定の温度設定値より大きい場合に一方の通路のみが導通する状態とされることができる。
上記所定の温度設定値としては、例えば、ガソリンエンジンにおいては、40〜150℃(好ましくは、70〜120℃)のうちの任意の数値を挙げることができる。
【実施例】
【0021】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、本実施例では、本発明に係る「内燃機関」として、主噴射の前後に副噴射を行う筒内噴射型エンジン(以下、単に「エンジン」とも記載する。)を例示する。
【0022】
<実施例1>
(1)エンジンの構成
本実施例1に係るエンジン1は、図1に示すように、気筒2が形成されたシリンダブロック1aと、このシリンダブロック1aの上部に固定されたシリンダヘッド1bとを備えている。このシリンダブロック1aの気筒2内には、ピストン3が往復動自在に支持されている。また、シリンダブロック1aの下部には、クランクシャフト4を回転自在に支持してなるクランクケース1cが固定されている。このクランクシャフト4は、コネクティングロッド5を介してピストン3に連結されている。このピストン3の上方には、ピストン3の頂面とシリンダヘッド1bの壁面と気筒2の壁面とに囲まれた燃焼室6が形成されている。
【0023】
上記シリンダヘッド1bには、その一端側が吸気管7a(本発明に係る「吸気系」として例示する。)に接続され且つその他端側が燃焼室6に接続される吸気ポート8aと、その一端側が排気管7bに接続され且つその他端側が燃焼室6に接続される排気ポート8bとが形成されている。また、シリンダヘッド1bには、吸気ポート8aを開閉する吸気弁9a及び排気ポート8bを開閉する排気弁9bが設けられると共に、これら吸気弁9a及び排気弁9bを駆動するカムシャフト10a,10bがそれぞれ回転自在に支持されている。さらに、シリンダヘッド1bの上部には、上述の弁機構を覆うシリンダヘッドカバー1dが取り付けられている。上記吸気管7aの一端側は、エアクリーナボックス11に接続されている。この吸気管7aの途中には、吸気管7a内を流れる吸気量を調整するスロットルバルブ12が設けられている。
【0024】
上記シリンダブロック1aの下部には、潤滑オイルを貯留するオイルパン15(本発明に係る「オイル貯留部」として例示する。)が取り付けられている。このオイルパン15とエンジン1の被潤滑部(例えば、クランクシャフト、コネクティングロッド、ピストン、カムシャフト、駆動系等)とは、オイル供給路16を介して連絡されている。また、オイルパン15内の略中央部には、オイルパン15内のオイルをエンジン1の被潤滑部に供給するためのオイル供給路16の一端側のオイルストレーナ17が配設されている。このオイル供給路16の途中には、エンジン1の駆動力により作動されるオイルポンプ18が配設されている。
【0025】
(2)ブローバイガス還流装置の構成
本実施例1に係るブローバイガス還流装置20は、上記オイルパン15、以下に述べる希釈度センサ21、温度センサ22、第1及び第2ブローバイガス通路23,24、通路切替弁25及びECU26(Electronic Control Unit;本発明に係る「制御部」として例示する。)を備えている。
【0026】
上記オイルパン15の底壁には、オイルパン15内のオイル中の燃料希釈度を検出する上記希釈度センサ21が取り付けられている。この希釈度センサ21は、上記ECU26に電気的に接続されており、希釈度センサ21の検出値がECU26に入力されるようになっている。なお、本実施例では、上記希釈度センサ21として、オイル中の燃料希釈度を直接的に検出する形態のものを採用する。
【0027】
上記オイルパン15の底壁には、オイルパン15内のオイルの温度を検出する上記温度センサ22が取り付けられている。この温度センサ22は、上記ECU26に電気的に接続されており、温度センサ22の検出値がECU26に入力されるようになっている。
【0028】
上記第1及び第2ブローバイガス通路23,24は、クランク室14で発生するブローバイガスを吸気管7aに戻すための通路である。この第1ブローバイガス通路23は大径(例えば、直径8mm)とされ、この第2ブローバイガス通路24は小径(例えば、直径4mm)とされている。また、この第1ブローバイガス通路23は、その一端側がクランク室14に連なっており、その他端側が吸気管7aのスロットルバルブ12の下流側に連なっている。また、この第1ブローバイガス通路23には、吸気管7aの内圧によりブローバイガスの流量を調整可能なPCVバルブ27が設けられている。また、第2ブローバイガス通路24は、その一端側が第1ブローバイガス通路23の一端側(クランク室側)に連なっており、その他端側が吸気管7aのスロットルバルブ12の下流側に連なっている。
【0029】
なお、上記シリンダブロック1aには、クランク室14とシリンダヘッドカバー1dの内部空間13とを連絡する第1連絡通路28が形成されている。また、シリンダヘッドカバー1dの内部空間13と吸気管7aのスロットルバルブ12の上流側とは第2連絡通路29で連絡されている。
【0030】
上記第1及び第2ブローバイガス通路23,24の連絡部には、3ポート2位置方向制御弁である1つの通路切替弁25が設けられている。この通路切替弁25は、上記ECU26に電気的に接続されており、このECU26によって、第1ブローバイガス通路23のみを導通させる状態(図3(a)参照)と、第2ブローバイガス通路24のみを導通させる状態(図3(b)参照)とを切り替え得るようになっている。
【0031】
上記ECU26は、図示しないCPU、ROM及びRAMを有しており、ROMに保存された制御プログラムに従ってCPUが各種処理動作を実行し、また、RAMはデータの一時保存等に使用される。このECU26には、エンジン回転数を検出する回転数センサ40が電気的に接続されており、この回転数センサ40の検出値が入力されるようになっている。また、このECU26には、所定の希釈度設定値(例えば、10vol%)、所定の温度設定値(例えば、70℃)及び所定の回転数設定値(例えば、2000rpm)のそれぞれが予め記憶されている。
【0032】
次に、上記ECU26の処理動作について説明する。
上記ECU26は、図2に示すように、希釈度センサ21、温度センサ22及び回転数センサ40からのそれぞれの検出値を入力処理する(ステップS1)。次に、回転数センサ40の検出値と設定値とを比較する(ステップS2)。その結果、回転数センサ40の検出値が設定値より大きいとき(ステップS2でNO判定)には、通路切替弁25を制御して第1ブローバイガス通路23のみが導通する状態とする(ステップS3)。一方、回転数センサ40の検出値が設定値より小さいとき(ステップS2でYES判定)には、希釈度センサ21の検出値と設定値とを比較する(ステップS4)。
【0033】
上記ステップS4の結果、希釈度センサ21の検出値が設定値より小さいとき(ステップS4でNO判定)には、上述のステップS3へ進む。一方、希釈度センサ21の検出値が設定値より大きいとき(ステップS4でYES判定)には、温度センサ22の検出値と設定値とを比較する(ステップS5)。その結果、温度センサ22の検出値が設定値より小さいとき(ステップS5でNO判定)には、上述のステップS3へ進む。一方、温度センサ22の検出値が設定値より大きいとき(ステップS5でYES判定)には、通路切替弁25を制御して第1ブローバイガス通路23のみが導通する状態とする(ステップS6)。
ここで、上記実施例に係る上記通路切替弁25及びECU26によって、本発明に係る「切替手段」が構成されていると言える。
【0034】
(3)ブローバイガス還流装置の作用
次に、上記構成のブローバイガス還流装置20の作用について説明する。
エンジン1の運転中において、オイルパン15内のオイルは、オイルポンプ18の作動によりオイルストレーナ17を介してオイル供給路16を通ってエンジン1の被潤滑部に圧送されてオイルパン15内に戻される。このエンジン1の運転中では、回転数センサ40、希釈度センサ21及び温度センサ22からのそれぞれの検出値がECU26に入力される。
【0035】
そして、回転数センサ40の検出値が設定値より大きいときには、ECU26による通路切替弁25の制御により第1ブローバイガス通路23のみが導通する状態とされる(図3(a)参照)。この状態では、クランク室14内で生じるブローバイガスは第1ブローバイガス通路23及びPCVバルブ27を介して吸気管7aに戻される。
【0036】
一方、回転数センサ40の検出値が設定値より小さいときに、希釈度センサ21の検出値が設定値より大きく且つ温度センサ22の検出値が設定値より大きい場合に、ECU26による通路切替弁25の制御により第2ブローバイガス通路24のみが導通する状態とされる(図3(b)参照)。この状態では、クランク室14内で生じるブローバイガスは第2ブローバイガス通路24を介してその流量が絞られつつ吸気管7aに戻される。
【0037】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のブローバイガス還流装置20によると、オイルパン15に設けられる希釈度センサ21によって、オイルパン15内の潤滑オイル中の燃料希釈度が検出され、その検出結果に基づいて第1及び第2ブローバイガス通路23,24の導通状態を切り替えるようにしたので、オイルパン15内の潤滑オイル中の燃料希釈度が高いとき、即ちクランク室14内のブローバイガス中に大量の燃料成分が含まれるときに第1及び第2ブローバイガス通路23,24の導通状態を切り替えてブローバイガスの流量を絞ることができる。その結果、空燃比を正確に制御することができる。また、還流装置20の構造を簡素化することができる。
【0038】
また、本実施例では、エンジン回転数を検出する回転数センサ40を更に備え、第1ブローバイガス通路23を、第2ブローバイガス通路24の縦断面積より大きな縦断面積を有して構成し、切替手段を、第1及び第2ブローバイガス通路23,24の連絡部に設けられる通路切替弁25と、希釈度センサ21及び回転数センサ40の検出結果に基づいて、第1ブローバイガス通路23のみが導通する状態と第2ブローバイガス通路24のみが導通する状態とに切り替わるように通路切替弁25を制御するECU26と、を有して構成したので、エンジン回転数が高いときには、ECU26による通路切替弁25の制御により第1ブローバイガス通路23が導通される状態とされ、第1ブローバイガス通路23を介してブローバイガスが吸気管7aに戻される。一方、エンジン回転数が低いときには潤滑オイル中の燃料希釈度が大きい場合に、ECU26による通路切替弁25の制御により第2ブローバイガス通路24が導通される状態とされ、第2ブローバイガス通路24を介してブローバイガスは流量が絞られつつ吸気管7aに戻される。これにより、空燃比が乱れてしまう状態をより正確に把握してブローバイガスの流量を絞ることができる。
【0039】
さらに、本実施例では、オイルパン15に設けられ、このオイルパン15内の潤滑オイルの温度を検出する温度センサ22を更に備え、切替手段を、希釈度センサ21及び温度センサ22の検出結果に基づいて、第1及び第2ブローバイガス通路23,24の導通状態を切り替えるように構成したので、潤滑オイル中の燃料希釈度が高く且つ潤滑オイルの温度が高いとき、即ちクランク室14内のブローバイガス中に極めて大量の燃料成分が含まれときにブローバイガスの流量を絞りつつ吸気管7aに戻すことができる。
【0040】
<実施例2>
次に、実施例2に係るブローバイガス還流装置について説明する。なお、本実施例2において、上記実施例1のブローバイガス還流装置20と同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、以下に相違点について詳説する。
【0041】
(1)ブローバイガス還流装置の構成
本実施例に係るブローバイガス還流装置30は、図4に示すように、同じ直径(例えば、直径8mm)の第1及び第2ブローバイガス通路33,34を有している。これらの第1及び第2ブローバイガス通路33,34のそれぞれは、その一端側がクランク室14に連なっており、その他端側が吸気管7aのスロットルバルブ12の下流側に連なっている。また、これら第1及び第2ブローバイガス通路33,34の一端側(クランク室側)のそれぞれには、吸気管7aの内圧によりブローバイガスの流量を調整可能なPCVバルブ37a,37bが設けられている。
【0042】
上記第1及び第2ブローバイガス通路33,34の一端側(クランク室側)のそれぞれには、2ポート2位置方向制御弁である通路切替弁35a,35bが設けられている。これらの通路切替弁35a,35bは、ECU26に電気的に接続されている。そして、このECU26によって、第1及び第2ブローバイガス通路33,34のそれぞれの通路を開閉(導通・非導通)させるように切り替え可能とされている。
【0043】
上記ECU26は、図5に示すように、回転数センサ40の検出値が設定値より大きいとき(ステップS2’でNO判定)には、通路切替弁35a,35bを制御して第1及び第2ブローバイガス通路33,34が導通する状態とする(ステップS3’)。一方、回転数センサ40の検出値が設定値より小さいとき(ステップS2’でYES判定)には、希釈度センサ21の検出値が設定値より大きく(ステップS4’でYES判定)、且つ、温度センサ22の検出値が設定値より大きい場合(ステップS5’でYES判定)に、通路切替弁35a,35bを制御して第2ブローバイガス通路34のみが導通する状態とする(ステップS6’)。
【0044】
(3)ブローバイガス還流装置の作用
次に、上記構成のブローバイガス還流装置30の作用について説明する。
エンジン1の運転中において、回転数センサ40の検出値が設定値より大きいときには、ECU26による通路切替弁35a,35bの制御により第1及び第2ブローバイガス通路33,34が導通する状態とされる。この状態では、クランク室14内で生じるブローバイガスは、第1ブローバイガス通路33、第2ブローバイガス通路34及びPCVバルブ27a,27bを介して吸気管7aに戻される。
【0045】
一方、回転数センサ40の検出値が設定値より小さいときに、希釈度センサ21の検出値が設定値より大きく且つ温度センサ22の検出値が設定値より大きい場合に、ECU26による通路切替弁35a,35bの制御により第2ブローバイガス通路34のみが導通する状態とされる。この状態では、クランク室14内で生じるブローバイガスは、第2ブローバイガス通路34を介してその流量が絞られつつ吸気管7aに戻される。
【0046】
(4)実施例の効果
以上より、本実施例のブローバイガス還流装置30によると、上記実施例のブローバイガス還流装置20と略同じ作用・効果を奏すると共に、エンジン回転数を検出する回転数センサ40を更に備え、切替手段を、第1及び第2ブローバイガス通路33,34の連絡部に設けられる通路切替弁35a,35bと、希釈度センサ21及び回転数センサ40の検出結果に基づいて、第1及び第2ブローバイガス通路33,34が導通する状態と第2ブローバイガス通路34のみが導通する状態とに切り替わるように通路切替弁35a,35bを制御するECU26と、を有して構成したので、エンジン回転数が高いときには、ECU26による通路切替弁35a,35bの制御により第1及び第2ブローバイガス通路33,34が導通される状態とされ、第1及び第2ブローバイガス通路33,34を介してブローバイガスが吸気管7aに戻される。一方、エンジン回転数が低いときには潤滑オイル中の燃料希釈度が高い場合に、ECU26による通路切替弁35a,35bの制御により第2ブローバイガス通路34のみが導通される状態とされ、第2ブローバイガス通路34を介してブローバイガスは流量が絞られつつ吸気管7aに戻される。これにより、空燃比が乱れてしまう状態をより正確に把握してブローバイガスの流量を絞ることができる。
【0047】
尚、本発明においては、上記実施例1及び2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1及び2では、2本のブローバイガス通路23,24(33,34)を設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、3本以上のブローバイガス通路を設けるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施例1及び2では、エンジン1のクランク室14と吸気管7aとを連絡する第1及び第2ブローバイガス通路23,24(33,34)を例示したが、これに限定されず、例えば、図6に示すように、エンジン1のシリンダヘッドカバー1dの内部空間13と吸気管7aとを連絡する第1及び第2ブローバイガス通路23’,24’としてもよい。
【0049】
さらに、上記実施例1及び2では、回転数センサ40の検出値と設定値とを比較した後に、希釈度センサ21の検出値と設定値とを比較してから温度センサ22の検出値と設定値とを比較するようにしたが、これに限定されず、例えば、回転数センサ40の検出値と設定値とを比較した後に、温度センサ22の検出値と設定値とを比較してから希釈度センサ21の検出値と設定値とを比較するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
内燃機関で生じるブローバイガスを吸気系に還流する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0051】
1;エンジン、7a;吸気管、15;オイルパン、20,30;ブローバイガス還流装置、21;希釈度センサ、22;温度センサ、23,23’,33;第1ブローバイガス通路、24,24’,34;第2ブローバイガス通路、25,25’,35a,35b;通路切替弁、26;ECU、40;回転数センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の潤滑オイルを貯留するオイル貯留部と、
前記オイル貯留部に設けられ、該オイル貯留部内の潤滑オイル中の燃料希釈度を検出する希釈度センサと、
前記内燃機関のクランク室で発生するブローバイガスを吸気系に戻すための第1ブローバイガス通路及び第2ブローバイガス通路と、
前記希釈度センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替える切替手段と、を備えるブローバイガス還流装置。
【請求項2】
前記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、
前記第1ブローバイガス通路は、前記第2ブローバイガス通路の縦断面積より大きな縦断面積を有しており、
前記切替手段は、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、前記希釈度センサ及び前記回転数センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路のみが導通する状態と前記第2ブローバイガス通路のみが導通する状態とに切り替わるように前記通路切替弁を制御する制御部と、を有している請求項1記載のブローバイガス還流装置。
【請求項3】
前記内燃機関の回転数を検出する回転数センサを更に備え、
前記切替手段は、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の連絡部に設けられる通路切替弁と、前記希釈度センサ及び前記回転数センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路のうちの両方の通路が導通する状態と一方の通路のみが導通する状態とに切り替わるように前記通路切替弁を制御する制御部と、を有している請求項1記載のブローバイガス還流装置。
【請求項4】
前記オイル貯留部に設けられ、該オイル貯留部内の潤滑オイルの温度を検出する温度センサを更に備え、
前記切替手段は、前記希釈度センサ及び前記温度センサの検出結果に基づいて、前記第1ブローバイガス通路及び前記第2ブローバイガス通路の導通状態を切り替えるようになっている請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブローバイガス還流装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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