説明

ブロー成形装置及びブロー成形方法

【課題】成形された製品の内面に凹凸が形成される(肌荒れを生ずる)ことがなく、また、製品の成型時間をより短縮化することができる新規なブロー成形装置及びブロー成形方法の提供。
【解決手段】パリソンの内側に圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給手段5を備えたブロー成形装置であって、上記圧縮エアー供給手段5による圧縮エアーの供給により、一方及び他方の金型本体6,7内において成形された製品内に冷却ミストを噴霧するミスト噴霧ノズル22と、このミスト噴霧ノズル22の先端が製品の内側及び外側に位置するように駆動する第2の駆動手段23と、一方又は他方の金型本体6,7の少なくとも何れかに形成又は配置され、大気に通ずる穴を形成する穴形成手段20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料であるパリソンを型締めするとともに該パリソン内に空気を圧入することにより成形する際に使用されるブロー成形装置及びブロー成形方法に関し、特に、パリソンを上方から下方に吐出し、左右両側から該パリソンを金型により挟んだ状態で型締めし成形するブロー成形装置及びブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで中空成形品を成形する場合には、中空成形法(ブロー成形法)が多用されている。この中空成形法は、溶融された成形材料を押出し成形した筒状のパリソンを、キャビティが形成された中空成形金型によって両側から挟み込むように型締めし、このパリソンの内側にブローエアーを圧入することにより該パリソンを膨張させ上記キャビティに圧接させることによって、該パリソンの形状に対応した形状に成形し、その後上記中空成形金型を冷却させることにより上記樹脂を硬化させ、次いで脱型する方法である。こうした中空成形法によれば、所定の中空形状となされた製品を比較的に簡便に成形することができる。
【0003】
ところで、上述した従来の中空成形方法において、上記中空成形金型を冷却させる手段としては、該中空成形金型内に気体や液体等の流体が流通する通路を形成し、上記流体を媒体として冷却する手段が採用されているが、こうした冷却方法では、中空成形金型のキャビティに圧接された樹脂の外側面を冷却することはできるが、内側を冷却することはできない。このため、樹脂の外側から内側に亘って熱が伝播し、所定の温度に達するまでには、所定の時間を要することとなる。
【0004】
そこで、従来、キャビティに圧接した樹脂の内側を冷却し、生産効率を上げる手段として、樹脂の内側に挿入されたノズルの先端から冷却液(水)を散布し、該冷却液により該樹脂の内側を冷却する方法が提案されている(特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特許第2569241号公報
【特許文献2】特開平6−328551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の中空成形方法では、上述したように、両側からパリソンを挟み込むよう型締めしたパリソンを膨張させた直後に上記冷却液(水)を散布すると、製品の内側に細かい凹凸が形成されてしまう(肌荒れが生ずる)ばかりか、所定の時間内に冷却液を充填した後、該冷却液を排出する時間を要することから、成形サイクルを大きく短縮することには限界がある。また、上記従来の中空成形方法では、冷却液を注入するノズルと冷却液を排出するノズルとを併用又は共用するものであることから、注入した冷却液を製品内から完全に排出することが要求される場合には不向きであり、使用することができない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来のブロー成形方法が有する課題を解決するために提案されたものであって、成形された製品の内面に凹凸が形成される(肌荒れを生ずる)ことがなく、また、製品の成型時間をより短縮化することができる新規なブロー成形装置及びブロー成形方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、第1の発明(請求項1記載の発明)は、パリソンを下端から吐出するノズルと、このノズルから吐出されたパリソンの両側に配置された一方及び他方の金型本体と、上記一方の金型本体と他方の金型本体とを型締めする第1の駆動手段と、この第1の駆動手段により上記一方及び他方の金型本体が型締めされた後に、上記パリソンの内側に圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給手段と、を備えたブロー成形装置であって、上記圧縮エアー供給手段による圧縮エアーの供給により、上記一方及び他方の金型本体内において成形された製品内に冷却ミストを噴霧するミスト噴霧ノズルと、このミスト噴霧ノズルの先端が上記製品の内側及び外側に位置するように駆動する第2の駆動手段と、上記一方又は他方の金型本体の少なくとも何れかに形成又は配置され、大気に通ずる穴を形成する穴形成手段と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0008】
上記第1の発明では、ノズルから吐出されたパリソンが一方及び他方の金型本体により型締めされ、圧縮エアーがパリソン内に供給されると、穴形成手段により、大気に通ずる穴が形成される。そして、上記ミスト噴霧ノズルから噴霧された冷却ミストにより、上記製品の内側が冷却される。なお、このミスト噴霧ノズルが噴霧される状態においては、大気に通ずる穴が製品に形成されていることから、該製品内は所定以上の圧力とならない。
【0009】
なお、穴形成手段により形成される穴の位置は特に限定されるものではなく、このブロー成形装置により成形される製品の形状により種々設定することができる。例えば、管状の本体の中途部に短い分岐管部が形成されている製品である場合には、脱型された後に取り除かれる上記分岐管の先端に上記穴を形成することも可能である。但し、こうした製品の中途部に上記穴を形成できない場合には、該製品の最も下方位置に形成され、脱型後に切り落とされる部位に上記穴を形成することが望ましい。また、上記噴霧ノズルは、上記一方及び他方の金型本体によりブロー成形され脱型された後に切り落とされる部位(以下捨袋という。)が、最終製品の上下両側に存在する場合においては、下側の捨袋から挿入されても、上側の捨袋から挿入されても良く、その位置が特に限定されるものではない。
【0010】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記穴形成手段は、前記一方又は他方の金型本体の何れかに形成され、前記圧縮エアー供給手段による圧縮エアーの圧力により、該製品の材料が部分的に流入した後に破裂して、該圧縮エアーを大気に放出するエアー通路であることを特徴とするものである。
【0011】
この第2の発明を構成するエアー通路は、一方の金型本体か他方の金型本体の少なくとも何れかに形成されてなるものである。そして、上記一方及び他方の金型本体が型締めされ、圧縮エアー供給手段により、パリソンの内側に圧縮エアーが圧入されると、該パリソンは膨張し一方及び他方の金型本体に形成されたキャビティに密着するが、このとき上記パリソンの内側の圧力により、上記エアー通路が形成された部位では、該パリソンの材料が該エアー通路内に流入する。このエアー通路は、大気に通ずることから、やがて上記材料は破裂し、上記パリソン内(一方及び他方の金型本体により成形された製品内)と大気は連通することとなる。なお、上記大気に通ずるエアー通路の途中には、該エアー通路の長さや内径にもよるが、該エアー通路に流入する流体の流量を調整する流量調節弁を設けても良い。
【0012】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1の発明において、前記穴形成手段は、前記一方又は他方の金型本体の何れかに形成され、圧縮エアーを大気に放出するエアー通路と、このエアー通路の一部に配置されてなる穴開けピンと、この穴開けピンの先端が前記製品の内側及び外側に位置するように駆動する第3の駆動手段と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0013】
この第3の発明では、上記第2の発明のように、圧縮エアー供給手段によりパリソン内に供給される圧縮エアーの圧力により該パリソン(一方及び他方の金型本体により成形された製品)に穴を形成するものではなく、穴開けピンの駆動により機械的に形成するものである。すなわち、この穴開けピンは、上記一方及び他方の金型本体内でパリソンが膨張することにより成形された後に、上記第3の駆動手段の駆動により、上記穴開けピンの先端が上記製品を突き破り再び元の位置に復帰する。この動作により、上記製品に穴が形成される。なお、この穴開けピンは、エアー通路の一部に配置されてなることから、上記製品に穴が形成され、その後に流体により該製品内の圧力が上昇した場合には、流体は上記製品に形成された穴から上記エアー通路を通って大気に放出される。
【0014】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1,第2又は第3の発明において、前記穴形成手段は、前記製品が該一方及び他方の金型本体から脱型された後に切り落とされる部位の最も下方位置であるとともに、前記一方又は他方の金型本体には、前記ミスト噴霧ノズルから冷却ミストを前記製品の内側に噴霧した後に冷却液を吐出する冷却液吐出ノズルと、この冷却液吐出ノズルの先端が上記製品の内側及び外側に位置するように駆動する第4の駆動手段と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0015】
この第4の発明では、上記ミスト噴霧ノズルから冷却ミストが噴霧された後、上記第4の駆動手段の駆動により、冷却液吐出ノズルが駆動して冷却液が吐出される。なお、この第4の駆動手段は、少なくとも、該冷却液吐出ノズルの先端が上記一方又は他方の金型本体に形成されたキャビティよりも外側に位置している状態(以下、初期状態という。)から、該先端がパリソン(一方及び他方の金型本体により成形された製品)の内側に臨むよう移動させ、所定時間又は所定量の冷却液を吐出した後には、上記初期状態に復帰するように移動させる機能を有するものである。なお、この第4の発明を構成する冷却液は、少なくともパリソンの温度よりも低い温度とされた水,油等これまで冷却液として使用されている各種のものを使用することができる。
【0016】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第4の発明において、前記第4の駆動手段には、前記冷却液吐出ノズルを回転駆動させる回転手段を備えてなることを特徴とするものである。
【0017】
この第5の発明を構成する回転手段は、モータ,シリンダーとラックギア及びピニオンギアを組み合わせた構造,シリンダーと螺旋状の溝とを組み合わせた構造等、少なくとも上記冷却液吐出ノズルを回転させる構造であれば良い。
【0018】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、ブロー成形方法に係るものであり、パリソンをノズルから下方に押し出すパリソン押出工程と、このパリソンを一方及び他方の金型本体により挟み込むように第1の駆動手段により型締めする型締め工程と、上記型締めされたパリソンの内側に圧縮エアーを圧入する圧縮エアー供給工程と、を備えてなるブロー成形方法であって、上記圧縮エアー供給工程中又は該圧縮エアー供給工程の後に、上記一方及び他方の金型本体内の製品に大気に通ずる穴を形成する穴形成工程と、上記穴形成工程の後に、上記一方及び他方の金型本体内において成形された製品内に冷却ミストを噴霧するミスト噴霧工程と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0019】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、上記第6の発明において、前記穴形成工程は、前記一方又は他方の金型本体の何れかに形成され、前記圧縮エアー供給手段による圧縮エアーの圧力により、該製品の材料が部分的に流入した後に破裂して、該圧縮エアーを大気に放出するエアー通路を形成することを特徴とするものである。
【0020】
また、第8の発明(請求項8記載の発明)は、上記第6又は第7の発明の何れかにおいて、前記穴形成工程にて形成される穴は、前記一方及び他方の金型本体により成形された製品が該一方及び他方の金型本体から脱型された後に切り落とされる部位の最も下方位置であるとともに、前記ミスト噴霧工程の後に、上記製品内に冷却液を吐出する冷却液吐出工程を行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)及び第6の発明(請求項6記載の発明)によれば、一方及び他方の金型本体内において成形された製品内に冷却ミストが噴霧されることから、該製品の内側を効果的に冷却(冷却ミストの気化に伴う潜熱の低下)することができるばかりではなく、製品の内側に細かい凹凸が形成されてしまう(肌荒れが生ずる)ことはない。また、これらの発明では、上記一方及び他方の金型本体により製品が成形された後に該製品に穴を形成することから、上記冷却ミストを噴霧する際に冷却ミストが効果的に噴霧されない事態を有効に回避することができる。そして、上記冷却ミストと製品との接触により蒸発した気体は、上記製品に形成された穴とエアー通路を介して大気に放出されることから、冷却効果を高めることができ、且つ、冷却時間を短縮することができる。
【0022】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)及び第7の発明(請求項7記載の発明)では、パリソンを膨張させる際に内圧により、一方及び他方の金型本体内で成形された製品にエアー通路に通ずる穴を形成するものであることから、機械構成が複雑になることを有効に回避することができる。
【0023】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)では、第3の駆動手段により駆動する穴開けピンにより、一方及び他方の金型本体内で成形された製品に穴を開けるものであることから、第2の発明と比較した場合、機械構成はやや複雑となる一方、パリソンの素材や肉厚更にはエアー供給手段を介して供給されるエアーによる内圧の程度如何に拘わらず、確実に製品に穴を開けることが可能となる。
【0024】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)及び第8の発明(請求項8記載の発明)では、冷却ミストを噴霧した後に、冷却液を吐出することから、製品の内側に細かい凹凸が形成されてしまう(肌荒れが生ずる)ことはないばかりか、さらに製品を早期に冷却することができる。しかも、穴形成工程にて形成される穴は、前記一方及び他方の金型本体により成形された製品が該一方及び他方の金型本体から脱型された後に切り落とされる部位の最も下方位置であり、冷却液吐出ノズルから吐出された冷却液は、上記製品に形成された穴とエアー通路を介して大気(外部)に排出されることから、言わば冷却液の吐出と排出が並行して行われるものである。したがって、これらの発明によれば、従来のブロー成形装置やブロー成形方法に比べて、加工時間を大きく短縮することができ、冷却液が製品内に残地される危険性も有効に防止することができる。
【0025】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)では、第4の駆動手段には、前記冷却液吐出ノズルを回転駆動させる回転手段を備えてなることから、一方及び他方の金型本体内の製品の内側に満遍なく冷却液をかけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。先ず、この実施の形態に係るブロー成形装置について詳細に説明した後に、このブロー成形装置を使用したブロー成形方法を各工程順に説明する。なお、この実施の形態は、本発明を、自動車の製品として使用されるホースエアークリーナーを成形するために使用されるブロー成形装置(及びその製造方法)に適用したものである。
【0027】
先ず、このブロー成形装置1の基本的構成を説明する。このブロー成形装置1は、図1に示すように、上方にはパリソンPを吐出する図示しないノズルが下面に形成されたパリソン吐出部2(ダイコア)が配置されている。このパリソン吐出装部2は、パリソンPを押し出す押出装置3に接続され、この押出装置3にはパリソンPの樹脂原料が投入されるホッパー4が設けられている。上記押出装置3は、上記ホッパー4から投入された樹脂原料を加熱し溶融させる図示しない加熱手段と、この加熱されて溶融した樹脂材料を押し出す図示しないスクリューとを備えてなるものである。なお、上記パリソン吐出部2には、吐出されるパリソンPの肉厚を制御する図示しないパリソンコントローラが内蔵されている。また、上記パリソン吐出部2の下面には、該パリソン吐出部2から吐出されたパリソンPの内側にエアーを供給するエアー供給管5が垂設されている。また、上記パリソン吐出部2から吐出されたパリソンPの左側には、一方の金型本体6が配置され、右側には、他方の金型本体7が配置されている。なお、上記一方の金型本体6も他方の金型本体7も、それぞれ油圧シリンダー等の駆動手段9,10により互いに接近する方向及び離間する方向に駆動自在とされている。なお、上記駆動手段9,10は、本発明を構成する第1の駆動手段である。また、上記エアー供給管5は、エアーコンプレッサー12に接続されており、後述するように、上記一方及び他方の金型本体6,7により型締めされた後に、このエアーコンプレッサー12の駆動により、上記パリソンPの内側にエアーが圧入される。なお、この例では、上記エアー供給管5は、パリソン吐出部2に設けられているが、下側から上記パリソンP内にエアーを供給するようエアー供給管15を設けても良い。このようにパリソンPの下側にエアー供給管15を設ける場合には、該エアー供給管15を昇降させる昇降駆動装置(エアーシリンダー)16に該エアー供給管15を配置し、上記一方及び他方の金型本体6,7が型締めした後に、該昇降駆動装置16を駆動させ、上記エアー供給管15の先端を上記パリソンP内に圧入し、上記エアーコンプレッサー12からの圧縮エアーを供給する。
【0028】
そして、上記一方の金型本体6と他方の金型本体7とには、成形する製品(最終製品)の形状にほぼ対応した(後述する上側捨袋成形面6c及び下側捨袋成形面6dが形成された)キャビティが形成されている。これら一方及び他方の金型本体6,7により成形される製品Gの形状(最終製品の形状)は、図2に示すように、上方及び下方に開口G,Gが形成され、上方から下方に亘って中空状に成形されてなるものであるが、上面Gと下面Gは、該一方及び他方の金型本体6,7によりブロー成形された後にそれぞれ図示しない捨袋が切断された切断面である。したがって、上記一方及び他方の金型本体6,7に形成されたキャビティ6a,7aは、図3に示すように、図2に示す最終製品Gの形状と全く同一ではなく、図示しない上記上下の捨袋も含めた形状とされている。すなわち、上記他方の金型本体7に形成されたキャビティ7aは、図2に示す最終製品Gに対応した主成形面7bと、この主成形面7bの上方に連続してなる上側捨袋成形面7cと、上記主成形面7bの下方に連続してなる下側捨袋成形面7dとから構成されている。なお、上記一方の金型本体6にも、上記他方の金型本体7と同じように、主成形面6b、上側捨袋成形面6c及び下側捨袋成形面6dが形成されている。
【0029】
そして、本実施の形態に係るブロー成形装置1では、図5に示すように、上記一方の金型本体6には、エアー通路20が形成されている。このエアー通路20は、大気に開放されてなるものであり、中途部にはこのエアー通路20に流入するエアーの流量を可変調節する流量調整弁21が配置されている。なお、この実施の形態においては、このエアー通路20は、上記下側捨袋形成面6dの最も下方位置に形成されている。また、上記一方の金型本体6の下方には、ミスト噴霧ノズル22が配置され、このミスト噴霧ノズル22は、第1のエアーシリンダー23に接続されている。なお、この第1のエアーシリンダー23は、本発明を構成する第2の駆動手段である。このミスト噴霧ノズル22の先端には、冷却液とエアーとが排出され混合される図示しない小孔が形成されており、また、該ミスト噴霧ノズル22の先端は、平常時においては、上記下側捨袋形成面6dの内側よりも下方に位置した状態(初期位置)とされ、後述するように、上記一方及び他方の金型本体6,7が型締めされ且つ上記エアー供給管5から圧縮エアーが圧入された後に、上記第1のエアーシリンダー23の駆動により、図5に示すように、上方に突出するよう駆動するとともに、所定時間又は所定量の冷却ミストが噴霧された後には、該第1のエアーシリンダー23の駆動により、再び上記初期位置に復帰するものである。なお、上記第1のエアーシリンダー23は、上記一方の金型本体6の外側に配置されてなるものであり、該第1のエアーシリンダー23には、エアーが流入する2つのエアー流入ポート23aと、水が流入する水流入ポート23bがそれぞれ形成されている。
【0030】
また、上記ブロー成形装置1では、冷却液吐出ノズル25が配置されている。この冷却液吐出ノズル25は、先端側に冷却液Wが吐出する複数の小孔25aが穿設されてなるものであり、第2のエアーシリンダー26に接続されている。この第2のエアーシリンダー26は、上記冷却液吐出ノズル25を前方及び後方に移動させるとともに、該冷却液吐出ノズル25を回転する機能を有するものである。そして、この冷却液吐出ノズル25は、平常時においては、上記一方の金型本体6に形成された上側捨袋形成面6cよりも該一方の金型本体6の外側に位置した状態(初期位置)とされ、上記ミスト噴霧ノズル22から冷却ミストが所定時間又は所定量噴霧されると、次いで、上記第2のエアーシリンダー26の駆動により、一方及び他方の金型本体6,7が型締めされることにより形成された内部空間内に先端が臨んだ状態とされ、回転しながら冷却液Wが吐出される。この冷却液Wが所定時間又は所定量吐出さると、それまで回転していた冷却液噴霧ノズル25は停止するとともに、上記初期位置に復帰する。なお、上記第2のエアーシリンダー26は、本発明を構成する第4の駆動手段であり、エアーが流入する2つのエアー流入ポート26aと、冷却液が流入する冷却液流入ポート26bがそれぞれ形成されている。
【0031】
なお、この発明では、上述したように、一方の金型本体6にエアー通路20のみを形成したものばかりではなく、図6に示すように、一方及び他方の金型本体6,7により成形されたパリソンP(製品)に強制的に穴を形成する構造を備えたものであっても良い。すなわち、このブロー成形装置1では、上記一方の金型本体6に形成された下側捨袋成形面6dから垂直に形成された主エアー通路30と、この主エアー通路30の中途部から分岐してなるとともに大気に通じる分岐エアー通路31とが形成されてなるとともに、上記主エアー通路30には、穴開けピン33を配置してなるものである。上記穴開けピン33の基端は、第3のエアーシリンダー34に接続されており、2つのエアー流入ポート34aが形成されている。また、上記分岐エアー通路31の中途部には、流量調整弁36が配置されている。こうした構成を備えたブロー成形装置1では、上記穴開けピン33が、図6に示す状態よりも下方(分岐エアー通路31が形成されている位置よりも更に下方)に位置した状態(初期位置)から、上記第3のエアーシリンダー34が駆動すると、穴開けピン33は上方に移動し、先端により図示しないパリソン(一方及び他方の金型本体6,7により成形された製品)に強制的に穴が開けられる。このように製品に穴が開けられると、再び上記第3のエアーシリンダー34が駆動し、上記初期位置まで復帰する。このように穴開けピン33が初期位置まで復帰すると、上記主エアー通路30と分岐エアー通路31とが連通し、後述するように、上記製品内部の圧力が上昇すると、流体(気体又は冷却液)は、これら主エアー通路30及び分岐エアー通路31を介して一方の金型本体6の外部に放出される。なお、上記第3のエアーシリンダー34は、本発明を構成する第3の駆動手段である。
【0032】
以下、上述したブロー成形装置1によるブロー成形方法を説明する。先ず、図3の左側に示すように、一方の金型本体6と他方の金型本体7とが互いに対峙した状態において、上記パリソン吐出部2からパリソンPが吐出される(パリソン押出工程)と、次いで、上記駆動手段9,10の駆動により、上記パリソンPが挟み込まれ、図3の右側に示すように、一方及び他方の金型本体6,7が型締めされると、(型締め工程)と、この型締めされたパリソンPの内側に上記エアー供給管5から圧縮エアーが圧入される(圧縮エアー供給工程)。すると、上記パリソンPは、上記一方及び他方の金型本体6,7に形成されたキャビティ6a,7aに対応した形状に変形される。このとき、一方の金型本体6に図5に示すエアー通路20が形成されている場合には、上記圧縮エアーの圧力により、パリソンPの一部は、このエアー通路20内に侵入するとともにやがて破裂し、大気に通ずる穴が形成される(穴形成工程)。一方、図6に示すように、一方の金型本体6に形成されたエアー通路30に穴開けピン33が配置されている場合には、上記圧縮エアー供給工程が終了すると、上記第3のエアーシリンダー34が昇降駆動し、該穴開けピン33の先端によって、上記成形された製品の図示しない下側捨袋に、主エアー通路30と分岐エアー通路31を介して大気と連通した穴が形成される。
【0033】
そして、このように穴形成工程が終了すると、次いで、上記第1のエアーシリンダー23の駆動が開始し、上記初期位置から図5又は図6に示すように、ミスト噴霧ノズル22の先端が上記製品の内側に臨まされ、先端から冷却ミストが噴霧される(ミスト噴霧工程)。こうしたミスト噴霧工程により、製品の内側が冷却される(一次冷却工程)。なお、こうしたミスト噴霧工程により冷却ミストが噴霧されると、製品の内部の気体は、上記エアー通路20又は主エアー通路30及び分岐エアー通路31を通って大気に放出される。したがって、ミスト噴霧ノズル22から冷却ミストが噴射不能となったり僅かな冷却ミストのみが噴射されたりする等の事態を有効に防止することができるとともに、冷却ミストの気化により高湿度となった気体を排出することができるので、より効果的に製品の内側を冷却することができる。なお、上述したミスト噴霧ノズル22によるミスト噴霧工程が(所定時間又は所定量)終了すると、再び上記第1のエアーシリンダー23が駆動し、該ミスト噴霧ノズル22は一方の金型6に形成されたノズル移動通路6e内を下方に移動し、上記初期状態に復帰する。
【0034】
そして、上記ミスト噴霧ノズル22からの冷却ミストの噴霧が終了すると、該ミストの噴霧を停止し、次いで、上記第2のエアーシリンダー26の駆動により、一方及び他方の金型本体6,7が型締めされることにより形成された内部空間内に冷却液吐出ノズル25の先端が臨んだ状態とされ、該冷却液吐出ノズル25は回転しながら冷却液Wを吐出する(冷却液吐出工程)。そして、この冷却液Wが所定時間又は所定量吐出されると、それまで回転していた冷却液吐出ノズル25は停止するとともに、上記初期位置に復帰する。このように冷却液吐出ノズル25から冷却液Wが吐出されると、この冷却液Wにより製品の内側は更に冷却される(二次冷却)。このとき、上記冷却液Wは、上記エアー通路20又は主エアー通路30及び分岐エアー通路31を通って外部に放出される。特に、この実施の形態に係るブロー成形装置1では、上記エアー通路20又は主エアー通路30は、下側捨袋成形面6dの最も下方位置に形成されていることから、上記冷却液吐出ノズル25による冷却液吐出工程が終了した場合には、該冷却液Wが製品内に残置する危険性を有効に回避することができる。
【0035】
このように、上述したブロー成形装置1及びブロー成形方法によれば、成形された製品の内面に凹凸が形成される(肌荒れを生ずる)ことがなく、また、製品の成型時間をより短縮化することができ、さらには、製品の内部から冷却液を効果的に除去することができる。
【0036】
なお、上記実施の形態に係るブロー成形装置1では、ミスト噴霧工程を行うミスト噴霧ノズル22を(一方の)金型本体6の下側に配置する一方、冷却液吐出工程を行う冷却液吐出ノズル25を(一方の)金型本体6の上側に配置したものであるが、本発明は、上述したものに限定されるものではなく、図8に模式的に示すブロー成形装置50(第2の実施形態)のように、他方の金型本体57の上側に、ミスト噴霧ノズル58と冷却液吐出ノズル59の双方を配置し、さらに、一方の金型本体56と他方の金型本体57の下方から成形された製品内に圧入され該製品(パリソンP)の内側に圧縮エアーを圧入する圧縮エアー供給管55を配置したものであっても良い。このブロー成形装置50を構成する上記ミスト噴霧ノズル58及び冷却液吐出ノズル59は、何れも冷却ミストを噴霧し又は冷却液を吐出する際には、他方の金型本体57の主成形面57bの上方に形成された上側捨袋成形面57cの近傍に先端が位置するものであり、該噴霧ノズル58は、本発明を構成する第2の駆動手段であるエアーシリンダー60により、上記冷却液吐出ノズル59は本発明を構成する第4の駆動手段であるエアーシリンダー61にそれぞれ基端が支持され、他方の金型本体57の内側及びその逆方向に移動自在とされている。また、上記圧縮エアー供給管55は、図7及び図8に示すように、基端がエアーシリンダー63に接続され、下側捨袋成形面57dの下方から上方に向かって移動自在とされている。なお、この実施の形態に係るブロー成形装置50においても、上記他方の金型本体57には、下側捨袋形成面57dの最も下側にエアー通路65が形成され、中途部には流量調節弁66が配置されている。
【0037】
こうした構造に係るブロー成形装置50による場合であっても、上記ブロー成形装置1と同じように、極めて効果的に製品の内側を冷却することができ、且つ、上記ミスト噴霧ノズル55からの噴霧による製品内の気体や、上記冷却液吐出ノズル59から吐出された冷却液は、それぞれ上記エアー通路60を介して大気に又は外部に放出されることから、より短時間に製品を冷却することができる。
【0038】
さらに、本発明では、上記ブロー成形装置50のように、ミスト噴霧ノズル55や冷却液吐出ノズル59を他方の金型57の上方に配置する場合であっても、図10に示すように、圧縮エアー供給管55を他方の金型本体57の中途部に配置したものであっても良い。すなわち、このブロー成形装置50(第3の実施形態)では、圧縮エアー供給管55の先端が、エアーシリンダー63の駆動により、キャビティ57aを構成する主成形面57bから製品の内側に先端が臨むよう配置されているものである。そして、このブロー成形装置50では、一方及び他方の金型本体56,57によりパリソンPを挟んだ状態で型締めされると、上記エアーシリンダー63の駆動が開始され、上記主成形面57bよりも他方の金型本体57の外方向に位置していた圧縮エアー供給管55が該主成形面57bよりも内側であって且つパリソンPの内側まで移動させられ、その後圧縮エアーが圧入される。なお、こうした構造に係るブロー成形装置50による場合には、最終製品に上記圧縮エアー供給管55の外径に対応した図示しない開口が形成される。
【0039】
また、この発明では、図8に示すブロー成形装置50のように、冷却液吐出ノズル59を他方の金型本体57に形成された上側捨袋成形面57cの近傍に吐出するよう配置し、圧縮エアー供給管55を他方の金型本体57の下方から圧入する構造を採用した場合であっても、図11に示すように、上記ミスト噴霧ノズル58の先端が、エアーシリンダー60の駆動により該他方の金型本体57の中途部から製品の内側に圧入され、主成形面57bに対応した製品の内側にて冷却ミストが噴霧される構造(第4の実施形態)を採用しても良い。さらに、図12のように、パリソンP内に圧縮エアーを圧入する圧縮エアー供給管55は、図5に示す圧縮エアー供給管5のように、パリソン吐出部2に設けたもの(第5の実施形態)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態に係るブロー成形装置の基本的構成を模式的に示す側面図である。
【図2】図1に示すブロー成形装置により成形された後に両端の捨袋が切断された後の最終製品の外観を示す斜視図である。
【図3】パリソン吐出部からパリソンが吐出された状態と、一方及び他方の金型本体が型締めされた後の状態とを示す側面図である。
【図4】他方の金型本体に形成されたキャビティを示す正面図である。
【図5】一方の金型本体の詳細を模式的に示す正面図である。
【図6】一方の金型本体の下方の構造の他の例の要部を模式的に示す正面図である。
【図7】ブロー成形装置の第2の実施形態の要部を模式的に示す側面図である。
【図8】図7に示すブロー成形装置を構成する他方の金型本体を模式的に示す正面図である。
【図9】ブロー成形装置の第3の実施形態の要部を模式的に示す側面図である。
【図10】図9に示すブロー成形装置を構成する他方の金型本体を模式的に示す正面図である。
【図11】ブロー成形装置の第4の実施形態の要部を模式的に示す正面図である。
【図12】ブロー成形装置の第5の実施形態の要部を模式的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ブロー成形装置
2 パリソン吐出部
5 圧縮エアー供給管
6 一方の金型本体
7 他方の金型本体
9,10 第1の駆動装置
20 エアー通路
22 ミスト噴霧ノズル
23 第1のエアーシリンダー
25 冷却液吐出ノズル
26 第2のエアーシリンダー
33 穴開けピン
34 第3のエアーシリンダー
50 ブロー成形装置
52 パリソン吐出部
56 一方の金型本体
55 圧縮エアー供給管
57 他方の金型本体
58 ミスト噴霧ノズル
59 冷却液吐出ノズル
60 エアーシリンダー
61 エアーシリンダー
63 エアーシリンダー
P パリソン
G 最終製品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パリソンを下端から吐出するノズルと、
このノズルから吐出されたパリソンの両側に配置された一方及び他方の金型本体と、
上記一方の金型本体と他方の金型本体とを型締めする第1の駆動手段と、
この第1の駆動手段により上記一方及び他方の金型本体が型締めされた後に、上記パリソンの内側に圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給手段と、を備えたブロー成形装置であって、
上記圧縮エアー供給手段による圧縮エアーの供給により、上記一方及び他方の金型本体内において成形された製品内に冷却ミストを噴霧するミスト噴霧ノズルと、
このミスト噴霧ノズルの先端が上記製品の内側及び外側に位置するように駆動する第2の駆動手段と、
上記一方又は他方の金型本体の少なくとも何れかに形成又は配置され、大気に通ずる穴を形成する穴形成手段と、を備えてなることを特徴とするブロー成形装置。
【請求項2】
前記穴形成手段は、前記一方又は他方の金型本体の何れかに形成され、前記圧縮エアー供給手段による圧縮エアーの圧力により、該製品の材料が部分的に流入した後に破裂して、該圧縮エアーを大気に放出するエアー通路であることを特徴とする請求項1記載のブロー成形装置。
【請求項3】
前記穴形成手段は、前記一方又は他方の金型本体の何れかに形成され、圧縮エアーを大気に放出するエアー通路と、このエアー通路の一部に配置されてなる穴開けピンと、この穴開けピンの先端が前記製品の内側及び外側に位置するように駆動する第3の駆動手段と、を備えてなることを特徴とする請求項1記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記穴形成手段は、前記製品が該一方及び他方の金型本体から脱型された後に切り落とされる部位の最も下方位置であるとともに、
前記一方又は他方の金型本体には、前記ミスト噴霧ノズルから冷却ミストを前記製品の内側に噴霧した後に冷却液を吐出する冷却液吐出ノズルと、この冷却液吐出ノズルの先端が上記製品の内側及び外側に位置するように駆動する第4の駆動手段と、を備えてなることを特徴とする請求項1,2又は3記載の何れかのブロー成形装置。
【請求項5】
前記第4の駆動手段には、前記冷却液吐出ノズルを回転駆動させる回転手段を備えてなることを特徴とする請求項4記載のブロー成形装置。
【請求項6】
パリソンをノズルから下方に押し出すパリソン押出工程と、
このパリソンを一方及び他方の金型本体により挟み込むように第1の駆動手段により型締めする型締め工程と、
上記型締めされたパリソンの内側に圧縮エアーを圧入する圧縮エアー供給工程と、を備えてなるブロー成形方法であって、
上記圧縮エアー供給工程中又は該圧縮エアー供給工程の後に、上記一方及び他方の金型本体内の製品に大気に通ずる穴を形成する穴形成工程と、
上記穴形成工程の後に、上記一方及び他方の金型本体内において成形された製品内に冷却ミストを噴霧するミスト噴霧工程と、を備えてなることを特徴とするブロー成形方法。
【請求項7】
前記穴形成工程は、前記一方又は他方の金型本体の何れかに形成され、前記圧縮エアー供給手段による圧縮エアーの圧力により、該製品の材料が部分的に流入した後に破裂して、該圧縮エアーを大気に放出するエアー通路を形成することを特徴とする請求項6記載のブロー成形方法。
【請求項8】
前記穴形成工程にて形成される穴は、前記一方及び他方の金型本体により成形された製品が該一方及び他方の金型本体から脱型された後に切り落とされる部位の最も下方位置であるとともに、
前記ミスト噴霧工程の後に、上記製品内に冷却液を吐出する冷却液吐出工程を行うことを特徴とする請求項6又は7記載の何れかのブロー成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−245443(P2007−245443A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70249(P2006−70249)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(390017558)株式会社オプコ (2)
【Fターム(参考)】