説明

プッシュスイッチ装置

【課題】 フロントパネル側のボタン収容空間と化粧パネル側の孔部との相互間での位置ずれの有無に関係なく、プッシュボタンを孔部に対し調心させることのできるプッシュスイッチ装置を提供する。
【解決手段】 フロントパネル10のボタン収容空間40にプッシュボタン30を自由移動可能に収容する。スイッチ素子60のタクト63を付勢している作用杆復帰手段71の付勢力で、プッシュボタン30の押圧操作部31を化粧パネル20の孔部50に押し込ませている。プッシュボタン30の樹脂ばね35の作用によって、プッシュボタン30の当接面33をタクト63に常時接触させている。孔部50にテーパ状の受面81を設け、プッシュボタン30にテーパ状の当り面82を設ける。受面81と当り面82との重なり合いによる調心作用を利用して押圧操作部31を孔部50に対して調心させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチ、さらに詳しくは、DVDプレーヤなどの電気電子機器のフロントパネルを装飾している化粧パネルの孔部に、スイッチ素子を切り換え動作させるときに押し下げられるプッシュボタンの押圧操作部が露出しているようなプッシュスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時の電気電子機器では、デザイン面から高級感を発揮させることなどを意図して、樹脂成形体でなるフロントパネルの表面に、透明性や光沢性に優れたアクリル樹脂板などでなる化粧パネルを両面粘着テープなどを用いて貼着しておくということが多々行われている。そして、このような処置がなされた電気電子機器に採用されているプッシュスイッチ装置にあっては、オペレータの手指で操作されるプッシュボタンの押圧操作部が、化粧パネルの孔部で、位置ずれを生じることなく正規位置に正確に調心されて露出していることが、上記したような外観品位の高級感を保つ上で重視される。
【0003】
一方、従来より、筐体前壁を形成しているフロントパネルの孔部に対して、その孔部に挿入されているプッシュボタンの押圧操作部が位置ずれすることを防止する対策として、孔部側と押圧操作部側とに同一勾配のテーパ面を具備させ、それらのテーパ面が重なり合うことによって孔部に対して押圧操作部を調心することが行われている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0004】
図8には、特許文献1によって提案されている押しボタン装置の構成を断面図で示してある。この押ボタン装置は、筐体前壁に相当する前板1に内向きに具備させた筒状のボタン案内部2に、バネ3によって常時弾発付勢されている押しボタン4が挿入されていると共に、ボタン案内部2と押しボタン4との当接部分が、互いに重なり合ったテーパ面5,6となされている。7は押しボタン4に設けられた棒状部、8はスイッチであって、押しボタン4が押し下げられていない常態時には、棒状部7とスイッチ8のキー9との間に一定の隙間Cが形成されている。この押しボタン装置によると、バネ3の弾発付勢作用によって互いに重なり合ったテーパ面5,6の共働作用によって、押しボタン4がボタン案内部2に対して調心されるために、押しボタン4がボタン案内部2に対して位置ずれするという事態が起こりにくいということが云える。
【0005】
特許文献2にも、特許文献1の場合と同様のテーパ面の調心作用によってプッシュボタンがパネルの孔に対して位置ずれすることを防止することが記載されている。特許文献3にも同様の調心作用についての記述がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭59−65436号公報
【特許文献2】実開昭61−68427号公報
【特許文献3】特開2000−306460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フロントパネルと化粧パネルとは、熱膨張率の異なる樹脂を用いて成形されている。そのため、組立工程でフロントパネルに化粧パネルを両面粘着テープを用いて貼着したときに、フロントパネルに具備させたボタン収容空間と化粧パネルの孔部との相互間で位置ずれの生じていることがある。そして、仮にフロントパネルのボタン収容空間と化粧パネルの孔部とに位置ずれが生じていると、その位置ずれが公差誤差の範囲内にあったとしても、フロントパネルのボタン収容空間に配備したプッシュボタンの押圧操作部が、化粧パネルの孔部に対する正規位置からずれてそのずれが目立つようになり、化粧パネルを使用することによる外観品位の向上が阻害されてしまうという事態の生じるおそれがある。
【0008】
これに対し、特許文献1、同文献2及び同文献3には、上記したようにテーパ面による調心作用によってプッシュボタンの位置ずれを防ぐ対策が開示されている。
【0009】
しかしながら、上掲の各文献1〜3には、筐体前壁の孔部に挿入されているプッシュボタンの位置ずれを、テーパ面の調心作用によってただ単に防止しているだけである。したがって、冒頭で説明したところの、フロントパネル側のボタン収容空間と化粧パネル側の孔部との相互間で位置ずれが生じていても、プッシュボタンを化粧パネルの孔部に対し調心して位置ずれを無くするような対策が講じられているものではない。
【0010】
本発明は以上の状況に鑑みてなされたものであり、フロントパネル側のボタン収容空間と化粧パネル側の孔部との相互間に位置ずれが生じていても、そのような位置ずれの有無に関係なく、プッシュボタンを化粧パネルの孔部に対し調心させて位置ずれを無くすることのできるプッシュスイッチ装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、テーパ面の作用を利用して化粧パネルの孔部に対してプッシュボタンの押圧操作部を調心させるものであるにもかかわらず、プッシュボタンを孔部に押し込む方向に常時弾発付勢するための別部品としてのばね体を必要とせず、しかも、プッシュボタンの操作性が改善されるプッシュスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るプッシュスイッチ装置は、筐体前壁を形成している樹脂成形体でなるフロントパネルと、このフロントパネルの表面に貼着された樹脂成形体でなる化粧パネルと、プッシュボタンと、上記フロントパネルに設けられて上記プッシュボタンを収容しているボタン収容空間と、上記化粧パネルに設けられて上記ボタン収容空間に収容されているプッシュボタンの押圧操作部を露出させる孔部と、スイッチ素子と、上記プッシュボタンの背部に配備されていて、上記孔部に露出している上記押圧操作部を押し下げることにより押し込まれて上記スイッチ素子を切り換え動作させる作用杆と、を有している。
【0013】
そして、上記ボタン収容空間に上記プッシュボタンが自由移動可能に収容されていると共に、上記作用杆を押出し方向に常時弾発付勢している作用杆復帰手段と、上記プッシュボタンに樹脂で一体成形されていて、上記化粧パネルに弾接することによって生じる反力で当該プッシュボタンを上記作用杆に常時当接させている樹脂ばねと、を有して、上記樹脂ばねの反力に抗する上記作用杆復帰手段による弾発付勢力で上記押圧操作部が上記孔部に押し込まれるように構成されている。さらに、上記孔部の孔壁面に前窄まりテーパ状の受面が具備され、上記プッシュボタンに、上記受面に重なり合うことによって上記押圧操作部を上記孔部に対して調心する前窄まりテーパ状の当り面が設けられている。
【0014】
この構成において、プッシュボタンの押圧操作部をオペレータが手指で押し下げると、その押圧操作部により作用杆が押し込まれてスイッチ素子が切り換え動作を行う。
【0015】
また、プッシュボタンが押し下げられていない常態時には、化粧パネルに弾接している樹脂ばねの反力に抗する作用杆復帰手段による弾発付勢力で、プッシュボタンの押圧操作部が化粧パネルの孔部に押し込まれている。そのため、プッシュボタン側のテーパ状の当り面が上記孔部側のテーパ状の受面に重なり合って、上記押圧操作部が化粧パネル側の孔部に対して調心されることになる。
【0016】
さらに、フロントパネルのボタン収容空間にプッシュボタンが自由移動可能に収容されていることにより、フロントパネル側のボタン収容空間と化粧パネル側の孔部との相互間に位置ずれが生じているとしても、受面に当り面が重なり合うことによる上記の調心作用は、プッシュボタンが上記ボタン収容空間内で移動することによって確実に発揮されることになる。
【0017】
さらに、樹脂ばねが、化粧パネルに弾接しており、その反力を受けて、プッシュボタンが、作用杆復帰手段により弾発付勢されている上記作用杆に常時当接しているので、プッシュボタンが押し下げられていない常態時であっても、プッシュボタンにぐらつきが生じない。しかも、オペレータがプッシュボタンを押し下げたときには、プッシュボタンが遊び動作を行うことなく作用杆を即座に押し込むので、プッシュボタンを押し下げるときの遊び感触(ぐらつき感)がなくなってプッシュボタンの操作性が向上する。
【0018】
本発明において、上記プッシュボタンは、背面が上記作用杆に対する当接面とされた主部の前面に上記押圧操作部が前向きに突設され、その押圧操作部の根元部分の外周面が前窄まりテーパ状の上記当り面として形成されていると共に、上記主部の周囲に上記樹脂ばねが配備されていることが望ましい。これによると、テーパ状の当り面や樹脂ばねを押圧操作部と同心位置に設けることが可能になって、プッシュボタンの小形化を促進しやすいという利点がある。
【0019】
本発明では、上記樹脂ばねが、上記主部の周囲の等角度おきの複数箇所に片持ち状態で形成された板ばね片でなることが望ましい。これによると、プッシュボタンと共に樹脂ばねを一体成形することが容易である。
【0020】
本発明では、上記作用杆復帰手段が、上記スイッチ素子に内蔵されている弾性部材でなることが望ましい。スイッチ素子に内蔵されている弾性部材には、たとえば、導電性のドーム状ばね板によって形成されている反転復帰型の電極板を有するタクトスイッチでは、その電極板が相当する。また、スイッチ素子にその押圧部材を復帰方向に付勢するために内蔵されているコイルバネや線状ばね、板ばねなども、上記弾性部材に相当する。
【0021】
本発明では、前窄まりテーパ状の上記受面が、押し下げられた上記押圧操作部を摺動させて上記当り面を当該受面との重なり位置に誘導する呼込み案内作用を発揮する軸長を有していることが望ましい。すなわち、上記のテーパ状の受面の軸長があまりに短いと、その受面からプッシュボタンの押圧操作部を摺動させる機能が消失してしまうので、そのような摺動機能の消失が生じない程度にテーパ状の受面の軸長を長くしておくことが望ましく、そのようにしておくと、押圧操作部が押し込まれて化粧パネルの孔部内で傾いたとしても、押込力が解除された時点で、押圧操作部が受面を摺動して孔部に対して調心された位置に復帰する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、組立工程でフロントパネル側のボタン収容空間と化粧パネル側の孔部との相互間に位置ずれが生じていたとしても、そのような位置ずれの有無に関係なく、プッシュボタンが化粧パネルの孔部に対し調心されるために、プッシュボタンが孔部に対して位置ずれして、化粧パネルを設けたことによる外観品位の高級感が損なわれる、という事態が起こらなくなる。テーパ面の作用を利用して化粧パネルの孔部に対してプッシュボタンの押圧操作部を調心させるものであるにもかかわらず、プッシュボタンを孔部に押し込む方向に常時弾発付勢するための別部品としてのばね体を必要とせず、しかも、プッシュボタンの操作性も改善されるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るプッシュスイッチ装置の要部の概略分解斜視図である。
【図2】プッシュボタンの正面図である。
【図3】常態時のプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図である。
【図4】プッシュボタンがまっすぐに押し下げられている状態でのプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図である。
【図5】プッシュボタンが傾いて押し下げられている状態でのプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図である。
【図6】変形例による作用杆を採用した常態時のプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図である。
【図7】プッシュボタンの変形例を示した正面図である。
【図8】特許文献1に示されている押しボタン装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明の実施形態に係るプッシュスイッチ装置の要部の概略分解斜視図、図2はプッシュボタンの正面図である。また、図3は本発明の実施形態に係る常態時のプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図、図4はプッシュボタンがまっすぐに押し下げられている状態でのプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図、図5はプッシュボタンが傾いて押し下げられている状態でのプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図である。
【0025】
図1及び図3〜図5に示したように、このプッシュスイッチ装置は、筐体前壁を形成している樹脂成形体でなるフロントパネル10と、このフロントパネル10の表面に貼着された樹脂成形体でなる化粧パネル20と、プッシュボタン30と、フロントパネル10に設けられてプッシュボタン30を収容しているボタン収容空間40と、化粧パネル20に設けられてボタン収容空間40に収容されているプッシュボタン30の押圧操作部31を露出させる孔部50と、スイッチ素子60と、プッシュボタン30の背部に配備されていて、上記孔部50に露出している上記押圧操作部31を押し下げることにより押し込まれて上記スイッチ素子60を切り換え動作させる作用杆70と、を有している。
【0026】
フロントパネル10と化粧パネル20とは、熱膨張率が相違する異なる種類の樹脂でそれぞれ成形されている。たとえば、化粧パネル20には透明性や光沢性に優れたアクリル樹脂板が用いられていて、この化粧パネル20が発揮する装飾性によって電気電子機器の筐体に高級感が付与されている。フロントパネル10と化粧パネル20とは、両面粘着テープなどの粘着テープを用いて貼着されている。そのため、組立工程でフロントパネル10に化粧パネル20を適切に位置合わせして貼着したとしても、化粧パネル20の孔部50がフロントパネル10のボタン収容空間40に対して必ずしも正規位置に配備されるとは限らず、化粧パネル20の孔部50が、フロントパネル10のボタン収容空間40に対して公差範囲内で正規位置からフロントパネル10の沿面方向に位置ずれしてしまっているという事態が起こり得る。
【0027】
図1及び図2に示したように、プッシュボタン30は樹脂の一体成形体でなる。図例のプッシュボタン30は、正面視矩形の主部32を有して、その主部32の前面中央に正面視円形の上記押圧操作部31が前向きに突設されている。また、主部32の背面は平坦に形成されていて、その平坦な背面が後述する作用杆70に対する当接面33として形成されている。また、主部32の周囲に矩形環状で肉薄のフランジ部34が一体に備わっている。そして、このフランジ部34に樹脂ばね35が一体に成形されている。図例の樹脂ばね35は、フランジ部34の4つのコーナ部のそれぞれに支点aを有して各辺に沿って延び、かつ、等角度おきに位置する4つの片持ち状態の板ばね片36,37,38,39でなる。これらの板ばね片36〜39は点対象の関係で位置していることに加えて、支点aaから自由端bに向かう前上がり勾配を有している。
【0028】
図3のように、プッシュボタン30は、フロントパネル10のボタン収容空間40に収容されて、その押圧操作部31が化粧パネル20の孔部50に挿入されてその前方へ突き出ている。この点に関し、孔部50に挿入されている押圧操作部31は、必ずしも孔部50の前方へ突き出ていなくてもよい。また、上記ボタン収容空間40は、プッシュボタン30のフランジ部34の大きさよりも十分に広い空間に形成されている。そのため、プッシュボタン30は、そのボタン収容空間の中でフロントパネル10の沿面方向に沿って全方位方向に自由移動可能に収容されていることになる。
【0029】
フロントパネル10の背部に、配線基板61に搭載された上記スイッチ素子60が倒伏姿勢で配備されている。このスイッチ素子60はタクトスイッチでなり、そのタクト63が上記した作用杆70を形成している。また、このタクトスイッチは、タクト63を突出位置に向けて常時弾発付勢している作用杆復帰手段71を内蔵している。通常、作用杆復帰手段71は、スイッチ素子60に内蔵されている弾性部材でなる。この種の弾性部材には、たとえば、導電性のドーム状ばね板によって形成されている反転復帰型の電極板を有するタクトスイッチでは、その電極板が相当する。また、スイッチ素子にその押圧部材(上記タクトに相応する)を復帰方向に付勢するために内蔵されているコイルバネや線状ばね、板ばね、なども上記弾性部材に相当する。
【0030】
図3に示したように、プッシュボタン30が押し下げられていない常態時では、フランジ部34を備える主部32の全体がフロントパネル10のボタン収容空間40に収容され、かつ、化粧パネル20の孔部50に挿入されている押圧操作部31の全体がその孔部50に露出している。この位置がプッシュボタン30の初期位置である。そして、初期位置のプッシュボタン30では、主部32の当接面33がスイッチ素子60のタクト63でなる作用杆70に当接していると共に、樹脂バネ35を形成している4箇所の板ばね片36〜39が、その自由端bを化粧パネル20の裏面に当接させて弾性変形している。したがって、この状態では、樹脂ばね35の反力に抗する作用杆復帰手段71による弾発付勢力で押圧操作部31が化粧パネル20の孔部50に押し込まれている。
【0031】
図1に示したように、この実施形態では、化粧パネル20の孔部50の孔壁面に前窄まりテーパ状の受面51が形成されているのに対し、上記押圧操作部31の根元部分の外周面が、上記受面51の相手方面である前窄まりテーパ状の当り面82として形成されている。そして、受面51と当り面82とは同一の勾配を有していて、互いに重なり合うことによって、押圧操作部31を孔部50に対して調心する作用を発揮する。
【0032】
以上の構成を有するプッシュスイッチ装置において、プッシュボタン30が押し下げられていない図3に示した常態時では、スイッチ素子60の作用杆復帰手段71によって押出し方向に矢印F1のように常時弾発付勢されている作用杆70としてのタクト63が、樹脂ばね35を形成している4箇所の板ばね片36〜39の弾性変形に伴う反力(矢印F2)に抗してプッシュボタン30をバックアップするので、そのプッシュボタン30が初期位置に保持される。しかも、この状態では、上記反力F2に抗する作用杆復帰手段71の弾発付勢力F1により、プッシュボタン30側の前窄まりテーパ状の当り面82が化粧パネル20側の前窄まりテーパ状の受面81に重ね合わされるので、押圧操作部31が孔部50に対して調心される。したがって、化粧パネル20の孔部50に対して押圧操作部31が位置ずれして、化粧パネル20を設けたことによる外観品位の高級感が損なわれる、という事態は起こらない。しかも、作用杆復帰手段71の弾発付勢力F1によって上記した当り面82が受面81に常時押し付けられていることになるので、プッシュボタン30が初期位置でぐらつくという事態も起こらない。
【0033】
その上、プッシュボタン30は、フロントパネル10のボタン収容空間40に、フロントパネル10の沿面方向に沿って自由移動可能に収容されているので、仮に組立工程で化粧パネル20の孔部50がフロントパネル10のボタン収容空間に対する正規位置から位置ずれしていたとしても、上記のように孔部50に対して調心されている押圧操作部31を備えたプッシュボタン30は、孔部50に対して調心された状態を保ったまま、上記の位置ずれ幅に見合ってボタン収容空間40の内部で変位する。そのため、押圧操作部31が孔部50に対して位置ずれして目立つような事態が起こらず、化粧パネル20を設けたことによる外観品位の高級感が損なわれる、という事態も起こらない。
【0034】
図4に矢印P1で示したようにプッシュボタン30の押圧操作部31がオペレータによって押し下げられると、主部32の当接面33によって、作用杆70としてのタクト63が作用杆復帰手段71による付勢に抗して押し込まれ、その操作を通じてスイッチ素子60のオンオフ状態が切り換わる。このような押圧操作部31の押し下げ動作は、プッシュボタン30の遊び動作を伴わずにタクト63に伝達される。このことにより、プッシュボタン30を押し下げるときの遊び感触がなくなってプッシュボタン30の操作性が向上する。矢印P1で示した押下力が解除されたときには、4つの板ばね片36〜39の反力F2に抗する作用杆復帰手段71による弾発付勢力でプッシュボタン30が図3に示した初期位置に復帰する。
【0035】
次に、図5に矢印P2で示したようにプッシュボタン30の押圧操作部31がオペレータによって斜め方向に押し下げられたときにも、主部32の当接面33によって、作用杆70としてのタクト63が作用杆復帰手段71による付勢に抗して押し込まれ、その操作を通じてスイッチ素子60のオンオフ状態が切り換わる。このような押圧操作部31の押し下げ動作は、プッシュボタン30の遊び動作を伴わずにタクト63に伝達されるので、上記同様にプッシュボタン30を押し下げるときの遊び感触がなくなってプッシュボタン30の操作性が向上する。矢印P2で示した押下力が解除されたときには、4つの板ばね片36〜39の反力F2に抗する作用杆復帰手段71による弾発付勢力でプッシュボタン30が図3に示した初期位置に復帰する。このときの復帰動作は、押圧操作部31が化粧パネル20の前窄まりテーパ状の受面81を摺動して孔部50に誘導されるという呼込み案内作用を介して行われる。受面81による上記の呼込み案内作用は、受面81の軸長を短すぎると十分に発揮されなくなるおそれがある。したがって、受面81の軸長は、その受面81が押圧操作部31を摺動させ得る程度の長さに定める必要がある。通常は、化粧パネル20の厚さに近い軸長を受面81に有しておくだけで、上記の呼込み案内作用を発揮させることが可能である。
【0036】
以上説明した実施形態では、作用杆70として、タクトスイッチのタクト63を選択してあるけれども、作用杆70はタクトスイッチのタクトにプッシュボタン30の押し下げ動作を連動させる部材によっても構成することが可能である。この事例を図6に示してある。
【0037】
すなわち、図6は変形例による作用杆70を採用した常態時のプッシュスイッチ装置を示した概略縦断面図である。同図の作用杆70は、フロントパネル10にヒンジ72を介して連設されたクランク形状の中継部材73によって構成されている。そして、この中継部材73は、プッシュボタン30の主部32の当接面33と配線基板61に上向きに搭載されているスイッチ素子60としてのタクトスイッチのタクト63との両方に接触した状態でそれらの相互間に配備されている。その他の構成は、図3などを参照して説明したところと同様である。この構成であると、スイッチ素子60に内蔵されている作用杆復帰手段71の弾発付勢力が、中継部材73を介してプッシュボタン30の主部32に常時付加される。そのため、図3〜図5を参照して説明した作用が同様に発揮される。なお、図6において、矢印Rは、プッシュボタン30の押し下げ復帰動作に追従する中継部材73の揺動方向を示している。
【0038】
また、プッシュボタン30は図1及び図2に示した構成に限定されない。図7はプッシュボタン30の変形例を示した正面図である。このプッシュボタン30では、主部32が正面視円形に形成されていて、その主部32の周囲に円形のフランジ部34が一体に樹脂で成形されている。そして、そのフランジ部34の周囲等角度おきの3箇所に設けられた片持ち円弧状の板ばね片によって樹脂ばね35が構成されている。その他の構成や作用は、図1及び図2に示したプッシュボタン30と同様である。
【0039】
なお、図1〜図7では、説明の便宜上、同一又は相応する部分に同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0040】
10 フロントパネル
20 化粧パネル
30 プッシュボタン
31 押圧操作部
35 樹脂ばね
36〜39 板ばね片(樹脂ばね)
40 ボタン収容空間
50 孔部
60 スイッチ素子
70 作用杆
71 作用杆復帰手段
81 受面
82 当り面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体前壁を形成している樹脂成形体でなるフロントパネルと、このフロントパネルの表面に貼着された樹脂成形体でなる化粧パネルと、プッシュボタンと、上記フロントパネルに設けられて上記プッシュボタンを収容しているボタン収容空間と、上記化粧パネルに設けられて上記ボタン収容空間に収容されているプッシュボタンの押圧操作部を露出させる孔部と、スイッチ素子と、上記プッシュボタンの背部に配備されていて、上記孔部に露出している上記押圧操作部を押し下げることにより押し込まれて上記スイッチ素子を切り換え動作させる作用杆と、を有するプッシュスイッチ装置において、
上記ボタン収容空間に上記プッシュボタンが自由移動可能に収容されていると共に、上記作用杆を押出し方向に常時弾発付勢している作用杆復帰手段と、上記プッシュボタンに樹脂で一体成形されていて、上記化粧パネルに弾接することによって生じる反力で当該プッシュボタンを上記作用杆に常時当接させている樹脂ばねと、を有して、上記樹脂ばねの反力に抗する上記作用杆復帰手段による弾発付勢力で上記押圧操作部が上記孔部に押し込まれるように構成され、
上記孔部の孔壁面に前窄まりテーパ状の受面が具備され、上記プッシュボタンに、上記受面に重なり合うことによって上記押圧操作部を上記孔部に対して調心する前窄まりテーパ状の当り面が設けられていることを特徴とするプッシュスイッチ装置。
【請求項2】
上記プッシュボタンは、背面が上記作用杆に対する当接面とされた主部の前面に上記押圧操作部が前向きに突設され、その押圧操作部の根元部分の外周面が前窄まりテーパ状の上記当り面として形成されていると共に、上記主部の周囲に上記樹脂ばねが配備されている請求項1に記載したプッシュスイッチ装置。
【請求項3】
上記樹脂ばねが、上記主部の周囲の等角度おきの複数箇所に片持ち状態で形成された板ばね片でなる請求項2に記載したプッシュスイッチ装置。
【請求項4】
上記作用杆復帰手段が、上記スイッチ素子に内蔵されている弾性部材でなる請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載したプッシュスイッチ装置。
【請求項5】
前窄まりテーパ状の上記受面が、押し下げられた上記押圧操作部を摺動させて上記当り面を当該受面との重なり位置に誘導する呼込み案内作用を発揮する軸長を有している請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載したプッシュスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−272487(P2010−272487A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125695(P2009−125695)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】