説明

プッシュスイッチ

【課題】各種電子機器の入力操作部に用いられるプッシュスイッチに関し、可動接点の直線状切断部と外側接点の上面との位置関係に纏わって発生するクリック感の鈍化が抑えられるものを提供することを目的とする。
【解決手段】直線状切断部4Aを有する可動接点4が、その外周下端を外側接点13の上面に載せられて支持されたプッシュスイッチであって、上記外側接点13の直線状切断部4Aに沿う方向の上面長さ寸法を、上記直線状切断部4Aの長さ寸法よりも長い長さで設定したものとした。これであれば、可動接点4が、常に直線状切断部4A以外の外周下端位置で外側接点13の上面に載って支持される構成にできて、直線状切断部4Aと外側接点13の上面との位置関係に纏わる押圧操作時のクリック感の鈍化が抑えられ、安定して軽快なクリック感が常時得られるものに実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の入力操作部に用いられ、押圧操作されて軽快なクリック感を伴って動作する自己復帰式のプッシュスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の入力操作部の信号用スイッチとして、押圧操作すると軽快なクリック感を伴って動作し、押圧を解除すると同様に軽快なクリック感を伴って自己復帰するプッシュスイッチが多く用いられている。
【0003】
このような従来のプッシュスイッチについて、図5〜図7を用いて説明する。
【0004】
図5は従来のプッシュスイッチの断面図、図6は同分解斜視図であり、同図において、1は上面が略円形に開口する凹部を有した絶縁樹脂製のケースで、その凹部の内底面中央には中央接点2が配設されると共に、その中央接点2を中心とする点対称位置の2ヶ所には外側接点3が配設されている。中央接点2と繋がった端子2A、外側接点3と繋がった端子3Aは、ケース1外方にそれぞれ延設されている。
【0005】
4は上方凸形に膨らんだ円形ドーム状に形成された弾性薄板金属製の可動接点で、外周下端が外側接点3上に載置されて凹部内に配され、ドーム状の中央部下面は中央接点2と間隔をあけて対峙している。5はケース1の開口面を覆う絶縁シートである。
【0006】
以上のように従来のプッシュスイッチは構成され、次にその動作を説明する。
【0007】
まず、上方から絶縁シート5を介して可動接点4の中央部分を押圧する。その力が所定の大きさを超えると、ドーム状の中央部分がクリック感を伴って下方凸形に弾性反転し、その下面が下方に対峙した中央接点2と接触する。これによって、可動接点4を介して中央接点2と外側接点3との間が導通したスイッチオン状態となる。
【0008】
次に、加えていた押し下げ力を解除すると、クリック感を伴って、弾性反転していた可動接点4のドーム状の中央部分が元の上方凸形に弾性復帰して中央接点2から離れ、中央接点2と外側接点3との間が絶縁状態となったスイッチオフ状態に戻る。
【0009】
このように、従来のプッシュスイッチは、弾性薄板金属から円形ドーム状に形成された可動接点4の弾性反転と弾性復帰を利用して、押圧操作時に軽快なクリック感が得られつつスイッチング動作がなされるものであった。
【0010】
そして、可動接点4は、通常、フープ状態で加工形成され、例えば、図7に示したように可動接点4を一対の繋ぎ桟部7で連結させた状態に加工形成した後、可動接点4の外周位置に相当する箇所で繋ぎ桟部7から切り離して製作される。その際、切断箇所としては、図7中に一点鎖線で示したように、カットするための刃先の管理などを容易にするために直線状で切断され、繋ぎ桟部7から切り離された個々の可動接点4は、その直線状切断部4A間の外周下端位置では径が若干短くなって、またその直線状切断部4A中央の外周下端の高さ位置としても他の外周下端位置よりも若干上方位置となる形状に形成されることが多かった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−236805号公報
【特許文献2】特開2010−21034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来のプッシュスイッチにおいては、可動接点4が直線状切断部4Aを有する形状であったため、可動接点4が、その直線状切断部4Aのみで外側接点3上に直接当接して載っている支持状態になると、直線状切断部4Aの下端高さ位置が他の外周下端位置よりも若干上方位置になっているために、その高さ分だけ相対的に可動接点4の中央部分の位置が下がってしまう。その状態になると、実使用上では支障なく使用可能なものではあるものの、押圧操作時に得られる可動接点4からのクリック感が若干鈍く感じられるものになってしまうという課題があった。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するものであり、可動接点の支持状態として、直線状切断部が外側接点上に直接当接して載った支持状態になることが防止できる構成としたプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、ケース部に配設された中央接点および外側接点と、上方凸形のドーム状で、外周位置に直線状切断部を有した形状で形成され、その外周下端が上記外側接点の上面に載せられて配された可動接点とを備えたプッシュスイッチであって、上記外側接点の上記直線状切断部に沿う方向の上面長さ寸法が、上記直線状切断部の長さ寸法よりも長い長さで設定されていることを特徴とするプッシュスイッチとしたものである。
【0017】
これであれば、直線状切断部を有する可動接点を用いたものであっても、可動接点は、常に直線状切断部以外の外周下端位置が外側接点の上面に載る支持状態のものに構成できる。このために、課題の項に説明した可動接点の直線状切断部と外側接点の上面との位置関係に纏わって発生するクリック感の鈍化が抑えられ、安定して軽快なクリック感が常時得られるプッシュスイッチを提供することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、直線状切断部を有する可動接点を用いたものであっても、可動接点の支持状態として、直線状切断部が外側接点上に直接当接して載った支持状態になることが防止でき、安定して軽快なクリック感が常時得られるプッシュスイッチを提供することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同絶縁シートを除いた状態での上面図
【図4】同押圧操作時のフィーリングカーブを示す図
【図5】従来のプッシュスイッチの断面図
【図6】同分解斜視図
【図7】可動接点の形成状態を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるプッシュスイッチについて、図1〜図4を用いて説明する。なお、従来と同一構成の部分には、同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0021】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態によるプッシュスイッチの断面図、図2は同分解斜視図、図3は同絶縁シートを除いた状態での上面図である。
【0022】
同図において、1は、上面が略円形で開口する凹部を有した絶縁樹脂製のケースである。このケース1が請求項のケース部に相当する部材で、その凹部の内底面中央には金属製の中央接点2が、またその中央接点2を中心とする点対称位置の2ヶ所には金属製の外側接点13が、ケース1を形成する樹脂でインサート成形によってそれぞれ固定されている。また、中央接点2と繋がった端子2A、外側接点13と繋がった端子13Aは、ケース1の外方にそれぞれ延設されている。
【0023】
4は上方凸形に膨らんだ円形ドーム状に形成された弾性薄板金属製の可動接点で、その外周下端が外側接点13上に当接状態で載せられて配されている。この可動接点4は、従来と同じ直線状切断部4Aを備えたものである。そして、ケース1の開口面は、可撓性を有する絶縁シート5で覆われており、可動接点4はケース1内に収容されている。
【0024】
ここに、本発明によるプッシュスイッチでは、図3に示しているように、外側接点13において、直線状切断部4Aに沿う方向の上面長さ寸法L1を、可動接点4の直線状切断部4Aの長さ寸法L2よりも長い長さで設定した構成としている。当該設定であれば、たとえ可動接点4の直線状切断部4Aが外側接点13上の位置にきても、直線状切断部4Aが、直接、外側接点13の上面に当接状態になることがない。つまり、直線状切断部4Aと外側接点13の上面との位置関係に拘わることなく、可動接点4は常に直線状切断部4A以外の外周下端位置が外側接点13の上面に載って支持される状態のものに構成できる。
【0025】
本発明によるプッシュスイッチは、以上のように構成され、次に、その動作などについて説明する。
【0026】
上方から絶縁シート5を介して可動接点4の中央部分を押圧し、その力が所定の押圧力になると、可動接点4のドーム状の中央部分がクリック感を伴って弾性反転し、その下面が中央接点2に接触する。これによって、可動接点4を介して外側接点13と中央接点2との間が電気的に導通したスイッチオン状態となる。そして、その押圧力を解除すると、可動接点4はクリック感を伴ってドーム状の中央部分が上方に反転復帰し、外側接点13と中央接点2との間が電気的に絶縁したスイッチオフ状態に戻る。
【0027】
ここに、本発明によるものは、課題の項で説明した状態つまり可動接点4が直線状切断部4Aのみが外側接点13の上面に直接当接して載っている支持状態の場合に比べて、得られるクリック感の鈍化が抑えられたものとなる。以下に、その対比説明をする。
【0028】
本発明によるものでは、外側接点13の直線状切断部4Aに沿う方向の上面長さ寸法L1を、可動接点4の直線状切断部4Aの長さ寸法L2よりも長い寸法に設定している。これであれば、可動接点4は、直線状切断部4Aと外側接点13の上面との位置関係などに拘わることなく、常に、直線状切断部4A以外の外周下端位置が外側接点13の上面の上に載って支持される構成となる。つまり、外側接点13の上面に直線状切断部4Aが直接当接状態になることはなく、可動接点4は、常時、自身の形成高さそのものでの支持状態となる。
【0029】
一方、課題の項に説明した状態、つまり直線状切断部4Aのみが外側接点上に直接当接して載っている可動接点4の支持状態であると、可動接点4は自身の形成高さから直線状切断部4A位置での高さ寸法だけ低くなり、かつ径寸法としても、若干内側に、よった位置で支持された状態となる。
【0030】
これら両者の支持状態において、押圧操作時のフィーリングカーブを、横軸に操作ストローク、縦軸に動作力をとって模式的に図4に示す。同図の点線が、本発明によるものの場合、実線が課題の項に記載した状態のものの場合である。なお、クリック率(%)は、一般的に、押圧力を受けて可動接点4が弾性反転する直前のピーク押圧力P1と弾性反転直後のボトム押圧力P2とから{(P1−P2)/P1}×100により算出される。
【0031】
同図に示したように、本発明によるもののピーク操作力PA1までのフィーリングカーブの推移と、課題の項に記載した状態によるもののピーク操作力PB1までのフィーリングカーブの推移は、可動接点4が反転動作するまでの挙動はほぼ同じであるため、殆ど同じ推移で、ピーク操作力PA1とPB1との差も殆ど表れなかった。
【0032】
また、それ以後のフィーリングカーブの推移も、ほぼ同じであったが、課題の項に記載した状態によるものに対して本発明によるものは、より長い操作ストロークの位置でボトム操作力PA2が得られ、また、そのボトム操作力PA2としても、課題の項に記載した状態によるもののボトム操作力PB2よりも低い値であった。これは、課題の項に記載した状態によるものの方が、可動接点4が自身の形成高さよりも低く支持された状態であるため、その高さ分、反転した中央部下面が早く中央接点2に接触するために上記の差異が生じたものと推察される。
【0033】
そして、上記ピーク操作力PA1、PB1およびボトム操作力PA2、PB2に基づいてクリック率を各々算出すると、本発明によるものの方が、得られるクリック率が良好なものになるという結果が得られた。
【0034】
以上のように、本発明によれば、外側接点13の直線状切断部4Aに沿う方向の上面長さ寸法L1を、可動接点4の直線状切断部4Aの長さ寸法L2よりも長い長さに設定することにより、直線状切断部4Aが外側接点13上に直接当接して載った可動接点4の支持状態になることが防止できる。すなわち、直線状切断部4Aを有する可動接点4を用いた構成であっても、可動接点4の直線状切断部4Aと外側接点13の上面との位置関係に纏わって発生するクリック感の鈍化が抑えられ、安定して軽快なクリック感が常時得られるものに実現することができる。
【0035】
なお、本発明であれば、可動接点4の配置自由度も増すことから、スイッチ組み立て性の向上が図れるなどの付帯的な効果も得られる。
【0036】
また、本発明は、可動接点の周方向への回転規制がなされている構成のものにも適用可能である。その場合には、回転規制用の構成部分を無くすことも可能となる。
【0037】
なお、上記には、単純なスイッチ構成のものを例として説明したが、押しボタン付きのものや、二段動作がなされる形態のものなどに本発明を適用してもよい。また、外側接点13は、三箇所以上に設置されていてもよい。
【0038】
さらに、上記には、ケース部として、凹部を有する絶縁樹脂製のケース1を備えたものを説明したが、ケース部が配線基板を用いて構成されているもの等であってもよい。
【0039】
以上のように、本発明によれば、直線状切断部4Aを有する可動接点4を用いたものであっても、外側接点13上での可動接点4の支持状態によるクリック感の鈍化の発生が抑えられ、安定して軽快なクリック感が常時得られるプッシュスイッチを安価に提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によるプッシュスイッチは、直線状切断部を有する可動接点を用いたものであっても、可動接点の支持状態として、直線状切断部が外側接点上に直接当接して載った支持状態になることが防止でき、安定して軽快なクリック感が常時得られるものに実現することができるという特徴を有し、各種電子機器の入力操作部等に有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 ケース
2 中央接点
2A、13A 端子
4 可動接点
4A 直線状切断部
5 絶縁シート
13 外側接点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース部に配設された中央接点および外側接点と、上方凸形のドーム状で、外周位置に直線状切断部を有した形状で形成され、その外周下端が上記外側接点の上面に載せられて配された可動接点とを備えたプッシュスイッチであって、上記外側接点の上記直線状切断部に沿う方向の上面長さ寸法が、上記直線状切断部の長さ寸法よりも長い長さで設定されていることを特徴とするプッシュスイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−8543(P2013−8543A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140222(P2011−140222)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】