説明

プッシュベルト試験法およびこの種の方法を実施するための試験装置

本発明は、一つ以上の無端引張手段(12)上に摺動可能に配置される多数の横方向要素(11)を備えたプッシュベルト(10)の使用可能な寿命を求めるための試験法を提供し、そこにおいてこのベルト(10)は、原車(2;61)および従車(3;62)のまわりに取り付けられるとともにそのそれぞれの円錐綱車(21、22;31、32)と摩擦接触し、引張手段(12)は、滑車(2、3;61、62)によって横方向金属要素(11)上に発揮される半径方向に外側に向けられた力によって引っ張られ、そして、ベルト(10)および滑車(2、3;61、62)が原車(2;61)に入力トルク(T)を加えることによって回転させられる。本発明によれば、半径方向に外側に向けられた力はそれによって前記入力トルク(T)を伝達することが可能なベルト(10)に対して最小限に必要なものを超える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプッシュベルトのための、特にプッシュベルト製造プロセスを監視するための試験法に関し、最終製品プッシュベルトの品質が、無作為に標本化された試料の機能的寿命、代わりとして示されたライフサイクル試験を測定することによって試験される。
【背景技術】
【0002】
このようなプッシュベルトは、例えば特許文献1から一般に公知であり、および主に自動車に適用される周知の無段変速機の2つの調整可能な滑車間の動力伝達のための手段として、主に使われる。周知のプッシュベルトは、各々少なくとも一つの平坦な金属リングから成る一つ以上の無端引張手段上に、摺動可能に組み込まれる多数の比較的薄い横方向金属要素から成る。一般的に、しかしながら、この無端引張手段は相互に半径方向に入れ子にされる複数のこの種のリングの2つの積層された組を備える。プッシュベルトリング構成要素は一般に、原子量割合が金属疲労に対する大きな耐性と組み合わせられた大きな抗張力の材料特性を提供するマレジング鋼から作成され、その特性は、自動車変速機のプッシュベルトの用途のために必要である。
【0003】
プッシュベルトの品質は、実際の適用中にプッシュベルトの尚早の故障の危険性がほんの最小限であるように、それが予め定められた高い基準を満たすことを確実にするために厳密に監視される。この種の品質監視は一般に、製造プロセスから損傷された構成要素を除去するためのプッシュベルトのリングおよび横方向要素構成要素の光学試験、同じく不正確に製造されるものを除去するためのそれらの構成要素の寸法精度の測定、のような非破壊試験を含む。前記品質監視は典型的にさらに、母材引張応力および構成要素疲労強度試験のような、破壊試験を含む。この種の試験法は、明らかに、限定された数の試料だけに実行されることができる。
【0004】
プッシュベルト製造の日々の実践において、しかし上述した試験に加えて、さらに−無作為に選択された試料の−最終製品プッシュベルトが破壊試験に、特に、ベルトの意図された用途と、好ましくは等価であるが、少なくともそれを代表する試験条件でその引張手段のライフサイクル疲労試験に、かけられることが不可欠であると判明した。この種の試験は、多くの個々の横方向要素とそのリング構成要素との間で、同じくプッシュベルトと伝動滑車との間で、プッシュベルトの通常動作中に生じる力および/または運動の複合のために必要になる。力のこの複合は、まだ満足に、その関連した各個に規定されて相互に無関係な構成要素に解体されることができていない。つまり組合せにおいてさえ、周知の構成要素試験法は、破壊的最終製品試験によって引張手段ライフサイクル疲労試験に対する技術的におよび/または経済的に実行可能な置換えを提供しない。
【0005】
それでも、周知の破壊的最終製品試験法は、この試験条件がプッシュベルトの意図された、かつ統計学的に規定されたサービス寿命をこえる負荷条件を代表するので、それが極めて高コストである欠点をともなう。例えば、自動車、すなわち車両用途のプッシュベルトに対する典型的な破壊試験は、電気モータとブレーキとの間の試験台上に配置され、モータを全時間意図された用途の最大機関軸出力に等価な動力を発生させる、変速機の数100時間の試験を含む。
【特許文献1】欧州特許出願EP 1 089 013
【発明の開示】
【0006】
本発明の一目的は、試験結果が実際には、すなわち車両におけるその実際の適用において、観測されるプッシュベルトサービス寿命を代表する要件をなお満たすと共に、従来適用された方法より高コストでない破壊的最終製品試験法を提供することである。本発明によれば、そのようなものは本請求項1の試験法によって実現される。新規な試験法が以前に適用された方法に類似した結果を確かにもたらすことができること、およびさらに重要なことに、また、車両に適用される場合、実際のプッシュベルトサービス寿命を統計学的に代表すること、が実験的に確認された。
【0007】
この新規な方法の主要な改良点は、モータによって発生させられる動力およびしたがって、また、試験中の消費エネルギーの総量の相当な減少であり、それによって、試験台の固定費(すなわち構成上)および変動費(すなわち動作上)が劇的に低下されることができる。本発明による方法において、ベルト上の荷重、特にその引張手段の疲労荷重は、ベルトの単なる引張によって静的に多大な程度に実現される。ここに、この種の引張は、ベルトと滑車との間の摩擦によってモータによって生成されるトルクを伝達することが可能なことを最小限に必要とするものをかなり上回る。本発明による本方法によって、非常に低いトルクが伝達されることができる、すなわちモータが意図された用途の最大機関軸出力より非常により少ない動力を発生させることを可能にし、一方ベルトはなお意図された用途のそれらを反映する高負荷条件にさらされる。
【0008】
実際、金属疲労が引張応力変動の振幅によって主として決定され、それによって、引張応力の平均静的レベルが二次的な重要性だけであることは周知であるので、後者の試験法が代表的な試験結果を得ることは、むしろ驚くべきである。それで、単に引張応力レベルを増加させることは、この場合モータトルクを伝達するのに必要なものを上回るベルトの前記引張によって、この場合増大されたエンジントルクによって表される、一般的に、実際の用途における増大された疲労荷重を代表すると期待されない。しかしながら、プッシュベルトに対して、代表的な試験結果が新規な方法によって得られることができることが、驚いたことに発見された。
【0009】
本発明によれば、この新規な試験法は、他の種類の伝動ベルトからそれを区別するプッシュベルトの特別な機能に依存して、かつそれを都合よく使用する。プッシュベルトによってエンジントルクは、ベルトの横方向要素の間で発揮される圧縮力を主に通して変速機の滑車の間で伝達され、その力が、原車との摩擦によって実現され、およびその力は、また摩擦によって従車上にトルクが生成されるようにする。プッシュベルトの引張手段の主要機能は、原車と従車との間の個々の横方向要素の配列が、その間に発揮される圧縮力の影響の下で座屈するのをそれによって防ぐことである。それで、通常動作中にこの引張手段は、横方向要素が、座屈を伴わずに、すなわち破裂することなく、エンジントルクを伝達することができるのに必要な程度にだけ引っ張られる必要がある。それでも、プッシュベルトの動作中に、また、引張応力振幅が横方向要素との摩擦の結果として、引張手段内に生成される。しかしながら、この種の引張応力振幅は伝達されるトルクに対してわずかに変化するだけである。さらに、従車トルク全体が従車の入口側と出口側との間のベルト張力の差異によって生成される連続ベルトまたは鎖における応力振幅と比較すると、この種の引張応力振幅は小さい。
【0010】
本発明によれば、プッシュベルトの疲労荷重上の高いエンジントルクの影響は低いエンジントルクでベルトの追加の静的引張によって確かに代表されることができる。引張手段の追加の静的引張によって、横方向要素と引張手段との間の摩擦推力は、そこから生じる前記引張応力振幅がそうであるように自動的に増大するので、ますますそうなる。もちろん、引張手段の全体的な疲労荷重はいずれにしろ周期的に変化する曲げ応力によって決定される多大な程度にあり、その応力は、引張手段が変速機内のその回転中に長手方向に曲げられて引き伸ばされることから生じる、すなわち、エンジントルクから独立している。
【0011】
好ましくは、半径方向に外側に向けられた力は、ベルトが1.5以上の係数で、好ましくは2を超える係数で前記入力トルクを伝達することが可能なように最小限に要求されるものを超える。エンジントルクの他に、他の試験条件は、好ましくは実際の用途のそれらと一致するように設定される。この種の条件は、例えば原車でのおよび従車でのプッシュベルトの移動半径、同じくその回転速度のパラメータを含む。
【0012】
さらに本発明によれば、新規な試験法の特定の実施態様において、印加エンジントルクは、全く試験パラメータでない、すなわち、変速機の出力または被駆動側は(上述した試験台ブレーキのような)荷重に全く接続されず、それで、何の出力(カウンタ)トルクも、従車に印加されない。これは、上述の係数がきわめて大きくなる、すなわち少なくとも従車に対して無限大に接近することを意味する。試験法のこの特定の実施態様においてモータは、比較的小さいトルクだけを発生させ、伝動回転を保つために、出力損失を単に補償するだけである。引張手段の疲労荷重は、それが回転させられる間プッシュベルトの静的引張によってほぼ完全に実現されるより。
【0013】
周知のライフサイクル疲労試験に関する上記した改良に対して好ましくは追加的に、しかし、おそらく代わりに、また、試験を実行するのに必要な時間も本発明に従って改善されることができる。プッシュベルトを意図された用途のそれを超える疲労荷重にさらすことによって、故障までの、すなわち引張手段の疲労破壊までの試験持続期間は、短縮される。実験的に確認されたことは、この後者の試験法は、以前適用された方法に類似した結果を確かにもたらし、かつ、さらに重要なことに、また、車両に適用されたとき実際のプッシュベルトサービス寿命を統計学的に表わすことである。
【0014】
本発明は、さらに、特に本発明による試験法を実施することが可能なプッシュベルトライフサイクル試験を実施するための試験装置に関する。従来の試験装置の典型的な構成が、EP−A−1.369.618内に記載されている。周知の試験装置は、調整可能な原車および調整可能な従車を備え、各々が滑車軸上に配置される2つの円錐台形の調車を有し、および、各滑車の少なくとも一つの綱車が、この種の可動綱車と関連するピストン/シリンダ組立体のシリンダチャンバ内に発揮される油圧の影響の下で、それぞれの滑車軸に対して軸方向に移動可能に取り付けられている。プッシュベルトはそれぞれ発揮されたシリンダ圧力の結果として、それぞれの滑車の綱車の間に締着されると共に、滑車軸の回りに取り付けられる。実際、この種の周知の試験装置の構成は基本的に実際の車両変速機に一致する。
【0015】
軸方向に向けられた滑車型締力は、垂直力がその間に実現されるように、かつ横方向要素が半径方向に外へ押しつけられるように、調車の円錐形の表面を通してプッシュベルトの横方向要素の水平側面に発揮される。この種の半径方向に外側に向けられた力が両方の滑車で生じるので、プッシュベルトの引張手段はそれによって引っ張られる。前記垂直力によって、次にトルクが滑車と横方向要素との間の摩擦によって原車から従車まで伝達されることができる。
【0016】
周知の試験装置の欠点は、ピストン/シリンダ組立体が回転し、その特徴が、特に、加えられる必要がある比較的高いシリンダ圧力(例えば最高80バール)との組合せで、基本的に連続的に動作するポンプを用いて補償される必要があるシリンダからの、作動油の相当な漏れを引き起こすことである。したがって、および、さらに滑車の複雑な設計のため、周知の試験装置は、構成して、動作させる両方でかなり高価である。
【0017】
周知の装置より動作させるのが安価で、好ましくはさらに構成するのがより容易である、プッシュベルトライフサイクル試験を実施するための試験装置を提供することが、本発明の一目的である。本発明によれば、そのようなものは本請求項3の試験装置によって実現される。
【0018】

本発明による試験装置において、2つの固定滑車、すなわち軸方向に移動可能な綱車のない滑車が適用され、この滑車は、滑車軸のうちの少なくとも1つ上で働く装置の軸変位手段によって半径方向に離れて動かされることができる。引張手段の前記型締力および前記引張は次いで、軸変位手段によって半径方向に離れて滑車軸を押しつけることによって実現され、一方プッシュベルトが滑車の回りに取り付けられる。
【0019】
本発明による試験装置は、また、原車に直接接続されるモータまたはエンジンを備えている。さらに、この試験装置は従車に直接接続されるブレーキを備えることができる。しかしながら、この試験装置が本発明による試験法を実施するために使われる場合、ブレーキは必須ではない。
【0020】
(図面の簡単な説明)
本発明の詳細な実施態様が、付随する図に沿って以下に記載される。
図1は、2つの滑車およびプッシュベルトを備える周知の無段変速機の断面を模式的に表す。
図2は、図1内に示される変速機の簡略側面図を示す。
図3は、その長手方向に面する周知のプッシュベルトの断面を示す。
図4は、周知のプッシュベルトの疲労強度を試験するための周知の試験装置に関して略図で例示する。
図5は、周知のプッシュベルトの疲労強度を試験するための本発明による改良された試験装置に関して略図で例示する。
図6は、周知の試験装置によって得られた試験結果と比較して、本発明による試験装置を使用してプッシュベルト上で実行されたライフサイクル疲労試験の結果を与える線図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、エンジンとその従車との間の自動車の動力伝達系路内に、一般に適用される周知の無段変速機1の中心部の断面を示す。図2内に、この変速機1の簡略側面図が与えられる。
【0022】
周知の変速機1は2つの滑車2および3を備え、各々が2つの調車21および22、それぞれ31および32を備え、その間に駆動ベルト10が、原車2から従車3まで回転運動Mおよび付随するトルクTを伝達するために取り付けられている。調車21、22、31および32は、概ね円錐形に形成され、および、各滑車2、3の少なくとも一つの調車22、32が、それぞれの可動綱車22、32がその上に配置されるそれぞれの滑車軸20、30に沿って軸方向に移動可能な変速機内に組み込まれる。少なくとも図示された態様において、各滑車2、3のそれぞれの他の綱車21、31は動かないで固定されて、例えばそれぞれの滑車軸20、30の一体的な部分である。
【0023】
変速機1の動作中に、駆動ベルト10は、各それぞれの滑車2および3と関連するピストン/シリンダ組立体22−24、32−34のシリンダチャンバ24、34内に油圧を印加することによって、滑車2および3の綱車21と22、それぞれ31と32の間に締着される。変速機コントローラ(図示せず)が、それぞれのシリンダチャンバ24および34内の圧力レベルP2およびP3を決定して実現するのに用いられ、この圧力レベルP2、P3が、駆動ベルト10とそれぞれの滑車2、3との間で最大限に伝達されることができるトルクT、同じく変速機1の幾何学的変速比を決定する。この幾何学的変速比は従車3の駆動ベルト10の有効移動半径R3と原車2の駆動ベルト10の有効移動半径R2の商によって決定され、その比率は、さまざまな値に連続的に変更されることができる。
【0024】
図2に、および、より詳細に図3の長手方向断面に示すように、駆動ベルト10は、実質上連続的一連の比較的薄い横方向要素11を備えるいわゆるプッシュベルトタイプであり、簡単さのためにそのいくつかだけが図2内に示され、それは、それらがその長手方向に滑動することができるような方法で、それに対して主に直角に向けられるプッシュベルト10の無端引張手段12上に設けられる。引張手段12自体は、2組の複数の半径方向に入れ子にされた連続的平坦薄型金属リングから成る。
【0025】
周知のプッシュベルト10は、それが原車2の綱車21と22との間に締着される位置で、図3の長手方向断面内に示される。この種のプッシュベルト10によって、伝達入力トルクTが、その横方向要素11の間に発揮される圧縮力を主に通して原車2から従車3まで伝達され、この力は、原車2の円錐形の綱車21および22と横方向要素11の傾斜側面6との間の摩擦によって実現され、およびこの力は、トルクT、この場合伝達出力トルクTが、また摩擦によって従車3上で生成されるようにする。プッシュベルト10の引張手段12は、それによって、原車2と従車3との間の個々の横方向要素11の配列が、要素11の間に発揮される圧縮力の影響の下で座屈するのを防ぐ。それに対して、引張手段12は、調車21、22の円錐形状から生じる滑車型締力Fcの半径方向に外側に向けられた分力を通して引っ張られる。
【0026】
プッシュベルト製造プロセスの品質を監視するために無作為に選択された製品サンプルを破壊的に試験することは公知である。特にそれによって、引張手段12の、すなわちその個々のリング構成要素の、疲労強度が現在の基準を満たすかどうか試験される。試験装置および適用される試験法は、それによってプッシュベルト10が適用されるべき実際の車両駆動ラインおよび負荷条件の表現を実際構成する。つまり、図4内に略図で例示される周知の試験装置50は、車エンジンを表すモータ51、上記した車両変速機1に類似した変速機52、および車両の従車によって占められる荷重を表すブレーキ53を含み、それによって、変速機52内のモータ51、ブレーキ53および滑車型締力、すなわちシリンダ圧力P2およびP3は、全て、プッシュベルト10の実際の適用をシミュレートするように制御されておよび/または動作させられる。
【0027】
上記の周知の試験に伴う問題は、相当な動力、例えば200kW以上が長期にわたる期間、例えば400時間以上の間、モータによって生成されることになるので、それが極めて高コストであるということである。たとえ出願人が、そのブレーキ53が機械動力を電気エネルギーに少なくとも部分的に(再)変換する発電機またはダイナモの形である試験装置50を首尾よく開発して現在動作させるとしても、試験のコストを(さらに)減少させる要求は、それにもかかわらず存在し続ける。
【0028】
本発明によればこの種のコスト削減は、伝動トルクTとそれに対して応答して発揮される滑車型締力Fcとの間の比率を適用する都合よく単純な方策によって実現されることができ、それは、実際の適用におけるよりかなり高い。換言すれば、この新規な試験法においてより少ない動力がモータ51によって生成され、一方ベルト10の疲労荷重は引張手段12でさらに引っ張ることによって、すなわち当然伝達トルクTを伝達するのに必要なものを超えて、必要試験レベルに維持される。さらに、本発明によれば、前記方策は、従車3の何の制動も全く生じない程度に、適用されさえすることができ、そうすると伝達トルク出力トルクTと例えば従車シリンダ圧力P3に関して表される従車3によって発揮される型締力Fcとの間の比率は、無限になる。本発明のこの後者の特徴によって、もちろん、前記ブレーキ53が不必要になり、および、現在論じられる新規な試験法に従ってプッシュベルトライフサイクル試験を実施する時ブレーキ53を省くことによって有利に簡略化された試験装置60が適用されることができるようになる。このように変更された試験装置60が、図5内に略図で例示される。
【0029】
本発明によってこの後者の試験装置60は改良点、すなわち、型締力Fcが滑車軸変位手段63によって半径方向に離れて試験装置60の試験滑車61および62を押しつけることによって実現される、設計簡素化を更に含む。この例では、滑車軸変位手段63は、その滑車軸62Aの軸受62B経由で、好ましくは自動ロック式の方法で、スピンドル63Aを軸方向に変位するためのサーボモータ63Cによって回転可能な、軸方向に固定されたナット63B内に保持されるねじスピンドル63 によって、被駆動試験滑車62上で働く。このように、試験滑車61、62間のラジアル距離および/またはその間に与えられるベルト10の引張の量は、前記サーボモータ63Cの適切な駆動を通してスピンドル63Aの延伸後退によって制御されることができる。もちろん、ケーブルによって半径方向に移動可能な滑車62に取り付けられるピストン/シリンダユニットまたはさらに自由吊り下げおもりのような、数種類の他の変位手段63が構想されることができて、容易に利用できる。
【0030】
したがって、また、前記ピストン/シリンダ組立体22−24および32−34は不必要になって、試験装置60の現在の設計から省かれることができる。その代わりに、試験中にプッシュベルト10に対する固定移動半径およびしたがってまた固定変速比を規定する固定試験滑車61、62が適用される。これらの試験滑車61、62は好ましくは、それらが任意の所望の幾何学的変速比での試験のために他の移動半径を規定する他の固定滑車と、容易に交換されることができるように、試験装置60内に配置される。
【0031】
本発明による試験装置60の更なる利点は、それが変位手段63によって試験滑車61、62の間に適切なラジアル距離を設定することによって異なる周囲長さのプッシュベルトを容易に収容することができるということである。
【0032】
図6は、いわゆるウェイブルプロットを表し、このプロットまたは線図は、適用された試験条件の下でその相対寿命RLに対するプッシュベルト10の故障の確率PFを与える。この場合この種の故障は、プッシュベルト10の引張手段12の疲労破壊であり、一方、その個々の寿命は、たとえば、ベルト10の回転の数によって定量化される故障寿命によって求められる。もちろん、複数のプッシュベルト10が、この種のウェイブルプロットが描画されることができる前に個別に試験されなければならない。図6において四角は、本発明による上記の試験装置60を使用した場合に、本発明による方法を適用することによって得られた試験結果を表し、一方、丸は周知の試験装置50を使用した参考試験の結果を表す。ラインTは、直線、すなわち前記四角によって表される前者の試験結果による線形適合であり、およびラインRは前記丸によって表される後者の参考試験結果による線形適合である。図6から明白であることができることは、本発明による試験法を実行する場合、新規な試験装置60は前記周知の試験装置50によって以前得られたものと基本的に同一の結果を実際に得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】2つの滑車およびプッシュベルトを備える周知の無段変速機の断面を模式的に表す。
【図2】図1内に示される変速機の簡略側面図を示す。
【図3】その長手方向に面する周知のプッシュベルトの断面を示す。
【図4】周知のプッシュベルトの疲労強度を試験するための周知の試験装置に関して略図で例示する。
【図5】周知のプッシュベルトの疲労強度を試験するための本発明による改良された試験装置に関して略図で例示する。
【図6】周知の試験装置によって得られた試験結果と比較して、本発明による試験装置を使用してプッシュベルト上で実行されたライフサイクル疲労試験の結果を与える線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュベルト(10)の使用可能な寿命を判定するための試験法であって、前記ベルト(10)の少なくとも一つの無端引張手段(12)上の実質上連続的一連で摺動可能に配置される多数の比較的薄い横方向要素(11)を備え、その引張手段(12)が、特にプッシュベルト(10)製造プロセスにおいて最終製品品質を監視するために、一つ以上の平坦な金属リングから成り、前記ベルト(10)が、そのそれぞれの円錐調車(21、22;31、32)と摩擦接触すると共に、原車(2;61)および従車(3;62)の回りに取り付けられ、前記引張手段(12)が、前記滑車(2、3;61、62)によって前記横方向金属要素(11)上に発揮される半径方向に外側に向けられた力によって引っ張られ、そして、前記ベルト(10)および滑車(2、3;61、62)が前記原車(2;61)に入力トルク(T)を加えることによって回転させられ、前記半径方向に外側に向けられた力が、前記入力トルク(T2)を伝達することが可能な前記ベルト(10)に最小限に必要な力を超えることを特徴とする試験法。
【請求項2】
前記半径方向に外側に向けられた力が、1.5以上、好ましくは2を超える係数だけ前記最小限に必要な力を超えることを特徴とする請求項1に記載の試験法。
【請求項3】
前記ベルト(10)および滑車(2、3;61、62)が、前記従車(3;62)に加えられる出力(カウンタ)トルク(T)なしで実質的に回転させられることを特徴とする請求項1に記載の試験法。
【請求項4】
請求項1、2または3のいずれかに記載の試験法を実施する際に用いられるのに適している試験装置(60)であって、その間に試験されるべきプッシュベルト(10)が取り付けられることができる、駆動試験滑車(61)および被駆動試験滑車(62)を備え、前記装置(60)が、試験されるべき前記プッシュベルト(10)を引っ張るために、前記試験滑車(61、62)を互いに対して半径方向に変位させることが可能な変位手段(63)をさらに備えることを特徴とする試験装置。
【請求項5】
前記変位手段(63)が、ナット(63B)内に保持されるねじスピンドル(63 )を備え、そのスピンドル(63A)およびナット(63B)が、前記変位手段(63)のサーボモータ(63C)によって相対的に回転可能であり、前記スピンドル(63A)および前記ナット(63B)のうちの少なくとも1つが軸方向に固定されたものであり、および、前記それぞれの他の1つの構成要素(63A、63B)が前記被駆動試験滑車(62)に固定されることを特徴とする請求項4に記載の試験装置。
【請求項6】
前記試験滑車(61、62)が、各々固定綱車を備え、したがって試験されるべき前記プッシュベルト(10)に対する固定移動半径を規定することを特徴とする請求項4または5に記載の試験装置。
【請求項7】
前記駆動試験滑車(61)の軸(61A)が、モータ(51)に回転可能に接続され、および、前記被駆動試験滑車(62)の軸(62A)が、全く接続されず、すなわち軸受(62B)内に自由に回転することができることを特徴とする請求項4、5または6のいずれかに記載の試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−543045(P2009−543045A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518008(P2009−518008)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000326
【国際公開番号】WO2008/002125
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(504226423)ロベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミト ベシュレンクテル ハフツング (40)
【Fターム(参考)】