説明

プライマー形成用組成物、この組成物を用いたプライマー層を有するプラスチックレンズ、およびその製造方法

【課題】高屈折率のプライマー層でありながら、プラスチックレンズ基材とハードコートとの密着性に優れ、レンズの耐衝撃性向上も確実に実現するプライマー層を成膜することができる、プライマー組成物とその調製方法を提供する。
【解決手段】(A)ポリウレタン樹脂粒子、(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマー、(C)酸化物微粒子を含有するプライマー形成用組成物。プラスチック基材の少なくとも一方の表面に、上記プライマー形成用組成物を用いてプライマー層を形成し、次いで前記プライマー層の上にハードコート層を形成することを含み、プラスチック基材の少なくとも一方の表面にプライマー層およびハードコート層をこの順に有するプラスチックレンズを得る、プラスチックレンズの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー形成用組成物、この組成物を用いたプライマー層を有するプラスチックレンズ、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、ガラスレンズよりも傷が付きやすい。そこで、プラスチックレンズの擦傷の形成を抑制するために、レンズ基材の上面にハードコート層が形成される。また、プラスチックレンズには、チラツキをなくすためにハードコート層の上面に、さらに反射防止膜が形成される。ハードコート層と反射防止膜が形成されているプラスチックレンズは、一般に、レンズ基材自体やハードコート層のみ形成されているプラスチックレンズよりも耐衝撃性が劣る。
【0003】
ハードコート層と反射防止膜が形成されているプラスチックレンズの耐衝撃性を高めるために、ハードコート層とレンズ基材の間にプライマー層を形成する技術が開発されている。プライマー層には、レンズ基材とハードコート層との密着性と耐衝撃性の両者を実現可能なポリマー材料が採用されている。ポリウレタン樹脂は、その両者を実現できる最適な樹脂の一つである。
【0004】
ところで、プライマー層の屈折率がレンズ基材やハードコート層の屈折率と大きく異なると、プラスチックレンズには干渉縞が生じる。そのため、プライマー層は、レンズ基材やハードコート層の屈折率と差が少ない層であることが望ましい。
【0005】
近年、プラスチックレンズの薄型化を目的に、高屈折率レンズが開発されている。プラスチックレンズの干渉縞を抑制するために、プライマー層の高屈折率化も検討されている。
【0006】
プライマー層を高屈折率化する有効な方法の一つとして、ポリウレタン樹脂層に無機化合物からなる微粒子を分散させる方法が挙げられる。プライマー層中の、その微粒子の割合を上げるほど、プライマー層の屈折率は上昇する。
【0007】
しかし、プライマー層中の無機微粒子の割合を上げるほど、プライマー層は脆くなり、無機微粒子の割合が高いプライマー層が採用されたプラスチックレンズは、耐衝撃性が低くなる。
【0008】
特許文献1には、ポリウレタン樹脂から形成されたプライマー層を有するプラスチックレンズに関する技術が開示されている。
【0009】
特許文献1には、以下に示すプライマー組成物を用いてプライマー層が形成されているプラスチックレンズが記載されている。
(1)ポリウレタン樹脂または水性ポリウレタンエマルジョンを用いているプライマー組成物1(サンプル1〜4)。
(2)ポリイソシアネートとチオール化合物からなるウレタンモノマーを用いているプライマー組成物2(実施例5、6)
(3)水性ポリウレタンエマルジョンと金属酸化物のゾルを用いているプライマー組成物3(実施例7、8)
(4)ポリイソシアネートとチオール化合物からなるウレタンモノマーと金属酸化物のゾルを用いているプライマー組成物4(実施例9)
【0010】
特許文献2には、ポリウレタンラテックスと(メタ)アクリル樹脂ラテックスを含むプライマー組成物を用い、プライマー層を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001-201602号公報
【特許文献2】特表2002-522798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の発明は、以下の問題点を有する。
(1)上記プライマー組成物1では、高屈折率のプライマー層が形成されない。このプライマー組成物1は、高屈折率レンズのプライマー層の形成に適さない。
(2)上記プライマー組成物1では、高屈折率のプライマー層が形成されない。このプライマー組成物2も、高屈折率レンズのプライマー層の形成に適さない。
(3)上記プライマー組成物3を用いると、プライマー組成物1よりも屈折率の高いプライマー層を得ることができる。しかし、このプライマー組成物3を用いて製作さプラスチックレンズは、耐衝撃性が悪い。
(4)上記プライマー組成物4を用いると、プライマー組成物2よりも屈折率の高いプライマー層を得ることができる。しかし、プライマー組成物4を用いて製作さプラスチックレンズは、耐衝撃性が悪い。
【0012】
特許文献2に記載の発明は、以下の問題点を有する。
特許文献2に記載のプライマー組成物を用いてプライマー層を形成した場合、個々に独立したポリウレタンと独立したメタアクリル樹脂の結合状態を均質にすることが困難である。また、ポリウレタンとメタアクリルの接合部で弾性が大きく異なるため、耐衝撃性を十分に高めることができない。このようなプライマー組成物に、プライマー層の高屈折率化を目的として無機化合物のゾルを投入すると、耐衝撃性がさらに低下する。
【0013】
そこで本発明の目的は、高屈折率のプライマー層でありながら、プラスチックレンズ基材とハードコートとの密着性に優れ、レンズの耐衝撃性向上も確実に実現するプライマー層を成膜することができる、プライマー組成物とその調製方法を提供することにある。
【0014】
さらに本発明の目的は、プラスチックレンズ基材とハードコートとの密着性に優れ、レンズの耐衝撃性にも優れ、かつ干渉縞防止効果にも優れたプラスチックレンズを提供することである。
【0015】
上記目的を達成するために本発明者らが、種々検討した結果、金属酸化物のゾルと、ポリイソシアネートとポリオールからなるウレタンモノマーと、ポリウレタン樹脂と、金属酸化物のゾルが含まれるプライマー組成物によって、上記目的が達成できることが明らかとなり、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は以下のとおりである。
[1](A)ポリウレタン樹脂粒子、(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマー、(C)酸化物微粒子を含有するプライマー形成用組成物。
[2](A)ポリウレタン樹脂と(B)ウレタン形成用モノマー及び/又はオリゴマーの質量比は、(A):(B)=1:9〜9:1である[1]に記載の組成物。
[3](A)ポリウレタン樹脂粒子と(B)ウレタン形成用モノマーの合計と(C)酸化物微粒子の質量比が(A)+(B):(C)=2:8〜9:1である[1]または[2]に記載の組成物。
[4](A)ポリウレタン樹脂粒子が数平均分子量200以上のポリエステル骨格を有するポリオール化合物、鎖延長剤および末端にポリイソシアネート化合物から製造されたポリウレタン樹脂粒子であり、官能基としてカルボキシル基を有する水性ポリウレタン樹脂である[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5](B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマーが、イソフタル酸を主成分とするポリエステルポリオールとポリイソシアネートからなる群から選ばれる[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[6](C)酸化物微粒子は、少なくとも(i) 酸化チタンが含まれている[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記複合酸化物微粒子が、下記(C-1)〜(C-4)から選択される少なくとも一種からなる微粒子である[6]に記載の組成物。
(C-1)酸化チタン微粒子を核として酸化ジルコニウムおよび酸化ケイ素で被覆された微粒子、
(C-2)酸化チタンと酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムとの固溶体からなる複合酸化物微粒子を核として、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムで被覆された微粒子、
(C-3)チタンとケイ素との複合酸化物微粒子を核とし、この核微粒子の表面が酸化ケイ素及び酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムで被覆されている微粒子、または、
(C-4)チタンとケイ素とジルコニウムの複合酸化物微粒子を核とし、この核微粒子の表面が酸化ケイ素と酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムで被覆されている微粒子
[8]溶媒をさらに含む[1]〜[7]のいずれかに記載の組成物。
[9]溶媒としてN-メチルピロリジノンを含有する[8]に記載の組成物。
[10]プラスチック基材の少なくとも一方の表面に、[1]〜[9]のいずれに記載のプライマー形成用組成物を用いてプライマー層を形成し、次いで前記プライマー層の上にハードコート層を形成することを含み、プラスチック基材の少なくとも一方の表面にプライマー層およびハードコート層をこの順に有するプラスチックレンズを得ることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
[11]前記ハードコート層の上に、反射防止膜を形成することをさらに含み、プラスチック基材の少なくとも一方の表面にプライマー層、ハードコート層および反射防止膜をこの順に有するプラスチックレンズを得る、[10]に記載のプラスチックレンズの製造方法。
[12]プライマー層がスピンコートで成膜されたものである[10]または[11]に記載の製造方法。
[13][10]〜[12]のいずれに記載の方法で製造されたプラスチックレンズ。
[14]プラスチックレンズが眼鏡レンズである、[13]に記載のプラスチックレンズ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラスチックレンズ基材とハードコートとの密着性に優れ、レンズの耐衝撃性にも優れ、かつ干渉縞防止効果にも優れたプラスチックレンズを提供することができる。
より具体的には、本発明のポリウレタン樹脂とウレタン形成モノマーを含有する組成物で製膜されたプライマー層を設けることにより、耐衝撃性の高いレンズを得ることが出来る。さらに、前記組成物にさらに金属酸化物のゾルを含ませることで、高屈折率のプライマー層を形成することができる。高い屈折率のレンズ基板にこのようなプライマー層を製膜すれば、緩衝縞が生じず、且つ、耐衝撃性にすぐれたレンズを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[プライマー形成用組成物]
本発明のプライマー形成用組成物は、(A)ポリウレタン樹脂粒子、(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマー、並びに(C)酸化物微粒子を含有する。
【0019】
(A)ポリウレタン樹脂粒子、(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマー、並びに(C)酸化物微粒子の質量比は、(A)ポリウレタン樹脂粒子成分と(B)ウレタンモノマー及び/又はウレタンオリゴマーの和算値とに対して(C)酸化物微粒子[(A)+(B)]:(C)=2:8〜9:1の割合であり、好ましくは5:5〜9:1であり、特に好ましくは6:4〜8:2である。このような質量比で調整されることで、レンズ基材の屈折率が特に高屈折率(例えば1.65〜1.75)であっても、干渉縞が発生せず、且つ、耐衝撃性に優れるレンズを得ることができる。
【0020】
(A)ポリウレタン樹脂と(B)ウレタン形成用モノマー及び/又はオリゴマーの質量比は、(A):(B)=1:9〜9:1であり、好ましくは3:7〜7:3であり、特に好ましくは4:6〜6:4である。このような質量比で調整されることで、プライマー形成用組成物に酸化物微粒子が含まれてもプライマー層の密着性と耐衝撃性に優れるレンズを得ることができる。
以下に、各組成について説明する。
【0021】
(A)ポリウレタン樹脂粒子
本発明のプライマー形成用組成物に含有されるポリウレタン樹脂粒子は、極性が低い溶剤に分散している溶剤分散系のポリウレタン樹脂粒子と、水に乳化分散されている水性ポリウレタン樹脂粒子のいずれも用いることができる。溶剤分散系のポリウレタン樹脂粒子は、分散液が大気中の水分を取り込むと液自体の劣化が生じやすい。水系のポリウレタン樹脂粒子を用いた場合、分散液が大気中の水分を取り込んでも劣化しにくい。分散液の寿命並びに完成したプライマー形成用組成物の寿命を考えると、ポリウレタン樹脂粒子には水系のポリウレタン樹脂粒子を採用すること好ましい。また、水性ポリウレタン樹脂粒子は、レンズ表面との密着性に優れる。水性ポリウレタン樹脂粒子を含むプライマー形成用組成物を用いることでプライマー層とレンズ基材との密着性を向上させることができる。
【0022】
水性ポリウレタン樹脂粒子は、官能基としてカルボキシル基、水酸基、アミノ基などの親水基を有しているものが好ましく、エマルジョンを形成しているものが好ましい。水性ポリウレタン樹脂粒子の好適な例として、例えば、数平均分子量200以上のポリエステル骨格を有するポリオール化合物、鎖延長剤および末端にポリイソシアネート化合物から製造されたポリウレタン樹脂粒子であり、官能基としてカルボキシル基を有するものが挙げられる。
【0023】
水性ポリウレタン粒子のエマルジョンは、カチオン性エマルジョン、アニオン性エマルジョン、及び、非イオン性エマルジョンのいずれも適用することができる。エマルジョンの製造方法としては特に限定するものではないが、前記親水性の官能基を用いて水系化する自己乳化法、界面活性剤を用いる乳化重合法などがある。カチオン性エマルジョン、アニオン性エマルジョン及び非イオン性エマルジョンの製造方法を以下に示す。
【0024】
カチオン性エマルジョン
カチオン性エマルョンの製造方法としては、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、鎖延長剤として3級アミノ基を有するジオールを用いてポリマー化したのち4級化剤もしくは酸によりカチオン化するか、または、鎖延長剤として4級アミノ基を有するジオールを反応させてカチオン化する方法、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、鎖延長剤としてポリアルキレンポリアミンを用いてポリマー化した後、エピハロヒドリンと酸を反応させてカチオン化する方法、などを挙げることができる。
【0025】
アニオン性エマルジョン
アニオン性エマルジョン製造方法としては、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、鎖延長剤としてジヒドロキシカルボン酸またはジアミノカルボン酸を用いてポリマー化した後、アルカリ性化合物により中和してアニオン化する方法、疎水性ポリオールと芳香族ポリイソシアネートから得た末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、スルホン化し第3級アミンで中和してアニオン化する方法、を挙げることができる。
【0026】
非イオン性エマルジョン
非イオン性エマルジョン(ノニオン性エマルジョン)の製造法としては、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、乳化剤を用いて必要に応じてジアミン等を含む水溶液中に分散し、水またはジアミンで鎖延長する方法、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、長鎖アルコールのアルキレンオキシド縮合物(非イオン界面活性剤の一種)と水酸基等の親水基を有するアミンとを反応させる方法、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに前記鎖延長剤を反応させてウレタン系重合体とし、乳化剤を用いて機械的に水中に分散させる方法、等を挙げることができる。
【0027】
この発明に使用できる水性ポリウレタン樹脂粒子のエマルションの市販品としては、たとえば、旭電化製の「アデカボンタイター」シリーズ、第一工業製薬製の「スーパーフレックス」シリーズ、大日本インキ製の「ボンディック」シリーズ、「ハイドラン」シリーズ、三洋化成工業(株)製の「パーマリン」シリーズを挙げることができる。
【0028】
(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマー
ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマーは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートからなる群から選ばれる。以下にポリオールについて説明する。
【0029】
(1)ポリオール組成
ポリオール組成は限定されないが、例えば、ヒドロキシル基を一分子内に複数個有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカプロラクトン、ポリアクリレートが挙げられる。特に、ポリエステルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールは次の多塩基酸とヒドロキシル化合物から選択された化合物の反応で得られる。
多塩基酸としては、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、水添フタル酸、フマル酸、二量化リノレイン酸、マレイン酸、及び、飽和脂肪族からなる二塩基酸などの有機酸も用いることができる。
【0030】
ヒドロキシル化合物としてはポリエステルポリオールを合成する際に広く用いられている化合物が使用可能で、具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、ジエチレンなどのグリコール類、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、あるいはこれらの混合物を用いる。また、ポリオールとして屈折率を高める芳香環を含有するもの、例えば、ビスフェノールAとエチレングリコールやテレフタル酸とプロピレングリコールのポリエステルなどを用いることができる。
【0031】
ポリオールの分子量は特に限定されないが、例えば、数平均分子量で200〜5000が好ましい。ポリエステルポリオールの数平均分子量が200以下になると、重合後のプライマー層が硬くなりすぎてしまう。また、ポリエステルポリオールの数平均分子量が5000以上になると、プライマー層が柔らかくなりすぎてしまい、膜の強度が損なわれる。特に好ましいポリエステルポリオールの数平均分子量は、500〜3000である。
【0032】
(2)ポリイソシアネート
ポリイソシアネートは、特に限定されないが、脂肪族、脂環式、あるいは、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。また、ブロック型、非ブロック型のいずれも用いることができるが、ブロック型のポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3,3−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のポリイソシアネートまたはこれらの変性体、イソシアヌレート、アロファネート、ビュレットまたはカルボジイミドまたは例えばこれらの三量体などのアダクト体などが挙げられる。また、これらのイソシアネート基をブロッキング剤で保護したブロック型ポリイソシアネートも好ましい。ブロッキング剤として、例えば、β−ジケトン、オキシム、フェノール、及び、カプトラプタムが挙げられる。
【0033】
ポリイソシアネートは、組み合わされるポリオールのヒドロキシル基の量に応じて適宜決定すればよい。具体的には、ポリイソシアネートとポリオールの比率が、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比で、0.5〜1.5であり、好ましくは0.85〜1.2となるように調整するとよい。このモル比が0.5よりも小さい、または、1.5よりも大きいと、反応性が低く衝撃性が低くなりやすい。
【0034】
硬化触媒は、ポリイソシアネートがブロック型であるか非ブロック型であるか、あるいは、ブロック型であるならばブロッキング剤により有無を決定すればよい。硬化触媒として、例えば、脂肪酸金属塩、アミン類が挙げられる。硬化触媒は、ブロック型のイソシアネートを用いる場合に効果的である。
【0035】
本発明のプライマー形成用組成物に含まれる(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマーは、上記ポリエステルポリオールおよびポリイソシアネートの両方を含有する。
【0036】
ポリウレタン樹脂粒子は、エマルジョンを形成することで均質に分散する。しかし、個々のポリウレタン樹脂粒子は独立しており、ポリウレタン樹脂粒子同士は、密着しても一体化しない。ポリウレタン樹脂粒子からなるプライマー層は、ポリウレタン樹脂粒子がシート状に集合している形状で構成される。ポリウレタン樹脂粒子同士は結合しないため、隣面から垂直方向に衝撃が加わったとき、その衝撃が面方向に衝撃が拡散しづらい。結果として、垂直方向からの衝撃がポイントで集中するため、結果的に耐衝撃性が悪くなる。粒子同士の境目は耐衝撃性の面で弱点となる。それに対して、本発明では、ポリウレタン樹脂粒子と反応可能なウレタン形成用モノマー(プレポリマー)が併用される。プライマー形成用組成物をレンズ基板状に塗布した後に、熱硬化処理又はUV硬化処理を行うとウレタン形成用モノマーが隣り合うポリウレタン樹脂粒子を連結する。ウレタン形成用モノマー成分によりポリウレタン樹脂粒子が連結するので、プライマー層には垂直方向からの衝撃を横方向に伝播させる能力が加わり、衝撃が一箇所に集中しないため、耐衝撃性が上昇すると考えられる。
【0037】
(C)酸化物微粒子
酸化物微粒子は特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化錫、酸化アンチモン、及び、これらの複合酸化物が挙げられる。
【0038】
これらの複合酸化物微粒子では、少なくとも複合酸化物の一部が水和または水酸化されていてもよい。本発明で用いられる複合酸化物微粒子の平均粒子径は、1〜800nm、好ましくは2〜300nmであることが望ましい。この平均粒子径が800nmを超えると、得られる被膜が白濁して不透明になる傾向にあり、逆にこの平均粒子径が1nm未満の場合は、屈折率を充分に高くできないといった傾向が生じる。
【0039】
好ましい複合酸化物微粒子としては、(i)チタンと、(ii)ケイ素と、(iii)ジルコニウムの酸化物から構成されており、その複合形態としては、
(A-1)酸化チタン微粒子を核として酸化ジルコニウムおよび酸化ケイ素で被覆された微粒子、
(A-2)酸化チタンと酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムとの固溶体からなる複合酸化物微粒子を核として、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムで被覆された微粒子、
(A-3)酸化チタンと酸化ケイ素との固溶体からなる複合酸化物微粒子を核とし、この核微粒子の表面が酸化ケイ素及び酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムで被覆されている微粒子、または
(A-4)酸化チタンと酸化ケイ素と酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムの固溶体からなる複合酸化物微粒子を核とし、この核微粒子の表面が酸化ケイ素と酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムで被覆されている微粒子である。
【0040】
酸化チタンが核微粒子に含まれることで、高屈折率の複合酸化物微粒子が得られる。酸化チタンを複合酸化物微粒子の表面に露出させないことで、プライマー層の耐候性を向上させることができる。(A-1)から(A-4)成分について、以下に詳述する。
【0041】
(A-1)成分について詳述すると下記の通りである。酸化チタンの屈折率は、結晶構造により2.2〜2.7の範囲の値を示し、Al、Zr、Sn、Sbの酸化物の屈折率に比べ高い。しかし、酸化チタンは、230〜320nmの紫外光を吸収して活性化する。酸化チタンの活性化を抑制するには、酸化チタンからなる核微粒子の表面に酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムや酸化ケイ素の酸化物を被覆するとよい。
【0042】
表面を被覆する酸化物に酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムを選んだのは、最終的に得られる硬化膜の耐候性(非着色性)、耐水性などの化学的性質が改善されるからである。また酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムとともに酸化ケイ素を用いたのは、酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムだけだとプライマー形成用組成物中で凝集が生じやすくプライマー層に白化(曇り)が生じやすいのに対し、酸化ケイ素を用いると、このような凝集の問題が防止され、プライマー形成用組成物の分散均一性が確保されるからである。表面を被覆する酸化物は、ケイ素とジルコニウム及び/又はアルミニウムの原子比(Zr/Si)が0.001〜1000であり、1〜10であると好ましい。酸化ジルコニウムがあまり多くなると酸化物微粒子の分散状態が悪くなる。また、酸化ケイ素の割合が多くなると、屈折率が低下し、あるいは耐候性や耐水性が悪くなる。
【0043】
複合酸化物微粒子は、核微粒子の質量(W1)と表面を被覆する酸化物の質量(W2)の比が0.001〜100が好ましく、0.01〜1が特に好ましい。
【0044】
(A-2)成分では、核微粒子が酸化チタンと酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムで構成されている。核微粒子に酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムを加えることで、酸化チタンの前記活性をさらに抑制することができる。また、酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムは着色が少なく複合化した微粒子をより無色化することが可能である。(A-2)成分の場合、酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムによる効果は、チタンとジルコニウム及び/又はアルミニウムの原子比(Zr/Ti)が0.01程度で得られる。酸化ジルコニウムがあまり多くなると屈折率が低下するため、上記原子比は10以下であることが好ましい。表面を被覆する酸化物は、(A-1)と同様である。
【0045】
(A-3)成分では、核微粒子が酸化チタンと酸化ケイ素で構成されている。核微粒子に酸化ケイ素が含まれることで、酸化チタンの前記活性をさらに抑制することができる。また、酸化ケイ素は含まれることで、耐候性(非着色性)や耐水性などの化学的性質が改良される。(A-3)成分の場合、酸化ケイ素による効果は、チタンとケイ素の原子比(Si/Ti)が0.01程度で得られる。酸化ケイ素があまり多くなると屈折率が低下するため、上記原子比は10以下であることが好ましい。表面を被覆する酸化物は、(A-1)と同様である。
【0046】
(A-4)成分では、核微粒子が酸化チタンと酸化ケイ素と酸化ジルコニウム及び/又はで構成されている。核微粒子に酸化ケイ素と酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムが含まれることで、酸化チタンの前記活性をさらに抑制することができる。また、酸化ケイ素が含まれることで、耐候性(非着色性)や耐水性などの化学的性質が改良される。また、酸化ジルコニウムが含まれることで、複合化した粒子を無色化することができる。(A-4)成分の場合、酸化ジルコニウムの添加によって得られる効果はチタンとジルコニア及び/又はアルミニウムの原子比(Zr/Ti)が0.01程度で得られる。酸化ケイ素の添加によって得られる効果は、チタンとケイ素の原子比(Si/Ti)が0.01程度で得られる。また、酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムや酸化ケイ素があまり多くなると屈折率が低下するため、ケイ素とジルコニア及び/又はアルミニウムの合計とチタンの原子比((Si+Zr)/Ti)は10以下であることが好ましい。表面を被覆する酸化物は、(A-1)と同様である。
【0047】
複合酸化物微粒子は、その分散状態を安定に維持するため、また耐水性の向上のため、その表面を各種有機酸、アルカリ、有機ケイ素化合物、酸化ケイ素などで処理してもよい。処理に用いる有機酸としては、クエン酸や酒石酸などが挙げられる。アルカリとしては、NaやK等のアルカリ金属の水酸化物または塩の水溶液やアンモニア、有機アミン等が挙げられる。有機ケイ素化合物としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、あるいはメチルトリクロロシランやテトラメトキシシラン等の有機シラン等が挙げられる。
【0048】
酸化物微粒子は、水、または、有機溶媒に分散したコロイドで存在するのが好ましい。コロイド状に保管しておくことで、酸化物微粒子の分散性を確保することができる。分散媒として用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類やエチルセロソロブ、メチルセロソルブが挙げられる。
【0049】
酸化物微粒子の添加量は、プライマー層の屈折率を考慮して適宜決定でき、高屈折率のプライマー層を形成したい場合には、酸化物微粒子の添加量をより多くすることができる。
【0050】
ウレタン形成用モノマー溶液及び/又はポリウレタン樹脂溶液は、予め酸化物微粒子が分散していることが好ましい。ウレタン形成用モノマー溶液やポリウレタン樹脂溶液に予め酸化物微粒子を分散させておくと、酸化物微粒子の分散性が高くなる。製造されたプライマー組成物により形成すると、酸化物微粒子の偏在が抑制された、均質なプライマー層を形成することができるという利点がある。
【0051】
ポリウレタン樹脂エマルジョンと酸化物ゾルからなる組成液でプライマー層を形成すると、ポリウレタン樹脂粒子の間に酸化物微粒子が入り込む。そのため、酸化物微粒子が入り込んだ箇所が脆点となり、耐衝撃性が低下すると考えられる。それに対して、本発明では、ポリウレタン樹脂粒子とポリウレタン樹脂粒子の隙間には、ウレタン形成用モノマーと金属微粒子が入りこむ。ポリウレタン樹脂粒子の連結は、ウレタン形成用モノマーが行うため、酸化物微粒子がポリウレタン樹脂粒子の間に入り込んでも、脆点になることを回避し得る。結果として、本発明では、プライマー層の耐衝撃性の低下が抑制される。さらに本発明のプライマー形成用組成物は酸化物微粒子を分散含有することで、高屈折率化で有りながら耐衝撃性に優れるプライマー層を形成する事ができる。その結果、高屈折率のレンズ基材でも干渉縞が生じず、耐衝撃性に優れるレンズを得ることができる。
【0052】
(D)溶媒
本発明に係るプライマー形成用組成物は、固形分濃度を調整する目的、あるいは塗布液の表面張力、粘度、蒸発スピード等を調整する目的で、溶媒を含有することができる。溶媒は水および水に加えて有機溶媒があることができる。
【0053】
有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、エチレングリコールなどのグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジクロルエタンなどのハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、カルボン酸類およびN,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
本発明においては、さらに有機溶媒としてN-メチルピロリジン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)やジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等との非プロトン性極性溶媒を用いることが好ましい。特に、N-メチルピロリジン(NMP)を用いると、ゾルの分散性や温度特性等の安定性に優れたプライマー形成用組成物を得ることができる。
【0055】
本発明のプライマー形成用組成物に用いるポリウレタン樹脂粒子は水性エマルジョンポリウレタンが用いられ、溶媒は水系であり、ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマーには有機溶剤が用いられる。 ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマーに用いられる有機溶剤は、例えば、メタノール、ダイアセトンアルコール、1−メトキシ2プロパノールアセテート等である。が入っております。上記NMPは極性が強い溶剤であるため、水性ウレタンの水系の溶媒(主に水)との親和性および上記有機溶剤との親和性の両方に優れ、そのため、NMPを用いることで、プライマー形成用組成物に含まれるポリウレタン樹脂粒子や酸化物微粒子等の材料の凝集や沈殿の発生を抑制できるという利点がある。
【0056】
さらに、従来は、NMPはプライマー形成用組成物等の塗布液用の溶媒としはほとんど使用されていなかった。これは、NMPの沸点が202℃と高く蒸発しにくいためである。しかし、高沸点のNMPは、塗布のためにスピンコートで使用してもほとんど蒸発せず、使用前と回収後の材料液の組成がほとんど変動しない。そのため、プライマー形成用組成物に含まれるゾルやウレタンの分散状態もほとんど変動しない。そのため、NMPを含有するプライマー形成用組成物では、スピンコート液の再利用が容易になるという利点もある。尚、従来のプライマーは溶剤中の低沸点成分(例えばメタノール)の比率が高かったため、スピンコート液を再利用することが困難でした。低沸点成分がスピンコート時に蒸発してしまい、回収時にプライマー材料液に溶剤を大量に継ぎ足し、あるいは再度分散加工しなければならなかったからである。
【0057】
上記のNMPの機能を用いる場合、NMPは、プライマー形成用組成物全量の10〜75質量%の範囲、好ましくは40〜70質量%の範囲で使用することが適当である。
【0058】
本発明のプライマー形成用組成物は、その他必要によりレベリング剤、潤滑性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤およびブルーイング剤等を含有することができる。また、さらにポリマーの架橋剤、架橋反応を促進させるための触媒を含有していてもよい。レベリング剤や潤滑性付与剤としては、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体がとりわけ好ましい。これらはプライマー組成物中に例えば0.001〜10質量%の割合で含有される。
【0059】
本発明のプライマー形成用組成物は、プラスチック基材の少なくとも一方の表面に塗布され、それによって塗膜を有する本発明の透明積層体を有するプラスチックレンズを与える。
【0060】
プラスチック基材としては、特に限定されず、例えばポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エピスルフィド系ポリマー等を挙げることができる。透明プラスチック基材が眼鏡用レンズ基材であるときには、例えばポリウレタン樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリアクリル樹脂、エピスルフィド系ポリマー等を好ましいものとして挙げることができる。
【0061】
あるいはまた、本発明で使用するプラスチック基材の材質は、特に限定されず、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1 種以上の他のモノマーとの共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタンなどが挙げられる。
【0062】
これらの透明プラスチック基材へのプライマー形成用組成物の塗布は、例えばディップ法、フロー法、スピンコート法、スプレー法等によって行うことができる。塗布したのち、例えば50〜90℃で数分ないし30分間加熱することにより、硬化塗膜とすることができる。塗膜の厚みは、好ましくは0.1〜5μmであり、より好ましくは0.2〜3μmである。0.1μmより薄いと耐衝撃性向上効果が小さく、また5μmより厚いとハードコートを施したのち硬度が低下することが見られる。
【0063】
本発明の透明積層体は、上記プライマー形成用組成物からなる塗膜の外表面上に、ハードコート膜をさらに有することができる。ハードコート膜としては、シリコン樹脂系の膜、例えば(D)Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、InおよびTiの各元素の酸化物よりなる群から選ばれ且つ粒径1〜100nmの微粒子からなる無機酸化物のゾルおよび(E)下記式(2)
34dSi(OR53-d ……(2)
【0064】
ここでR3はエポキシ基を有する炭素数2〜12の基、R4は炭素数1〜6のアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、フェニル基またはハロゲン化フェニル基であり、R5は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアシル基であり、そしてdは0、1または2である、で表されるエポキシ含有ケイ素化合物またはその加水分解物を含有する組成物からなるものが好ましい。
【0065】
上記無機酸化物のゾルはハードコート膜の硬度、耐熱性および耐候性を高める。またTi、Zrなどの酸化物を含む無機酸化物微粒子はハードコート膜の屈折率を、前記プライマー塗膜の屈折率に近くなるように高めて、干渉縞の発生を防止するのに役立つ。上記無機酸化物としては、例えばSiO2、Al23、SnO2、Sb25、Ta25、CeO2、La23、Fe23、ZnO、WO3、ZrO2、In23およびTiO2を挙げることができる。これらの無機酸化物は、好ましくは1〜100μmの粒径を持つ微粒子からなる。
【0066】
これらの無機酸化物は、溶媒への分散性を高めるため、必要により、有機シラン化合物の表面処理を施される。表面処理は有機シラン化合物で行うことができまたこの加水分解物で行うこともできる。有機シラン化合物は無機酸化物に対し20質量%以下の割合で好ましく用いられる。
【0067】
かかる有機ケイ素化合物としては、下記式(3)、(4)、(5)および(6)で表される化合物を挙げることができる。
63SiX ……(3)
【0068】
ここで複数のR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれアルキル基、フェニル基、ビニル基、メタクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基またはエポキシ基を有する有機基でありそしてXは加水分解可能な基である。
【0069】
62SiX2 ……(4)
ここでR6およびXの定義は式(3)に同じである。ただし複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【0070】
6SiX3 ……(5)
ここでR6およびXの定義は式(3)に同じである、
SiX4 ……(6)
ここでXの定義は式(3)に同じである、上記式(3)で表される化合物としては、例えばトリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジメトキシエトキシシランおよびβ−(3.4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシランを挙げることができる。
【0071】
また、上記式(4)で表される化合物としては、例えばジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシジエトキシシランおよびβ−(3.4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランを挙げることができる。
【0072】
上記式(5)で表される化合物としては、例えばメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシランおよびβ−(3.4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0073】
上記式(6)で表される化合物としては、例えばテトラエチルオルソシリケートおよびテトラメチルオルトシリケートを挙げることができる。
【0074】
上記無機酸化物のゾルの分散媒としては、例えば水、飽和脂肪族アルコール、セロソルブ、プロピレングリコール誘導体、エステル、エーテル、ケトン、芳香族炭化水素およびその他の溶媒を挙げることができる。
【0075】
飽和脂肪族アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−ブタノール等;セロソルブとしては、例えばメチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等;プロピレングリコール誘導体としては、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルアセテート等;エステルとしては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等;エーテルとしては、例えばジエチルエーテル、メチルイソブチルエーテル等;ケトンとしては、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン等;芳香族炭化水素としては、例えばキシレン、トルエン等;その他の例として、エチレングリコール、テトラヒドロフラン、N,N,−ジメチルホルムアミド、ジクロロエタン等を挙げることができる。
【0076】
無機酸化物の含有量はゾル100質量部当り例えば5〜80質量部、好ましくは10〜40質量部であることができる。
【0077】
ハードコート組成物を形成するもう一方の成分は、上記式(2)で表されるエポキシ含有ケイ素化合物またはその加水分解物からなる。エポキシ含有ケイ素化合物またはその加水分解物はハードコート用組成物中に5〜60質量%で含有されるのが好ましい。
【0078】
エポキシ含有ケイ素化合物としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランおよびβ−(3.4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0079】
ハードコート用組成物の分散媒としては、例えばグリコール類、脂肪族環状ケトン類、酢酸エステル類、アルコール類およびその他の溶剤を挙げることができる。
【0080】
グリコール類としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテルを挙げることができる。
【0081】
脂肪族環状ケトン類としては、例えばシクロヘキサノン、o−メチルシクロヘキサノン、m−メチルシクロヘキサノンおよびp−メチルシクロヘキサノンを挙げることができる。酢酸エステル類としては、例えば酢酸エチル、酢酸n−プロピルおよび酢酸n−ブチルを挙げることができる。アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよび1−ブタノールを挙げることができる。その他ソルベントナフサおよびメチルエチルケトンを用いることができる。ハードコート用組成物は、上記式(2)のエポキシ含有ケイ素化合物を加水分解するために、好ましくは理論的化学量論量の1〜10倍の水を含有することができる。
【0082】
さらに、ハードコート用組成物は、硬化触媒を含有する。硬化触媒としては、例えばキレート化合物、脂肪酸塩、第1級〜第3級アミン、ポリアルキレンアミン、スルフォン酸塩、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アンモニウム等を挙げることができる。またこれらの化合物と有機メルカプタンやメルカプトアルキレンシランを併用することもできる。キレート化合物としては、中心金属が例えばAl、Zr、Co、Zn、Sn、Mn、V、Cu、Ce、Cr、Ru、Ga、Cd、Feであり、配位化合物が例えばアセチルアセトン、ジ−n−ブトキシド−モノ−エチルアセテート、ジ−n−ブトキシド−モノ−メチルアセテート、メチルエチルケトオキシム、2,4−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセトオキシムである化合物を挙げることができる。また、脂肪酸塩としては、例えば2−エチル−ヘキサン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、酢酸、セバシン酸、ドデカン二酸、プロピオン酸、ブラシル酸、イソブチル酸、シトラコン酸、ジエチレンアミン四酢酸の如き脂肪酸の金属塩を挙げることができる。これらのキレート化合物および脂肪酸塩のより具体的化合物としては、例えばカルボン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アセチルアセトンの金属塩およびアンモニウム塩、エチルアセトアセテートの金属塩、およびアセチルアセトンとエチルアセトアセテートが配位した金属塩を挙げることができる。さらに、上記第1級〜第3級アミンとしては、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノシラン等が好ましい。その例としては、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジメチルアミノプロピルアミン、アミノエチルエタノールアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、メンタンジアミン、N−アミノメチルビペラジン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メタキシレンジアミン、テトラクロロパラキシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4'−メチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルフォン、ベンジジン、トルイジン、ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−チオジアニリン、4,4'−ビス(o−トルイジン)ジアニシジン、o−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、メチレンビス(o−クロロアニリン)、ジアミニジトリルスルフォン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルフォン、2,6−ジアミノピリジン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、4−メトキシ−6−メチル−m−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロパン、N,N'−ジメチルピペラジン、N,N'−ビス[(2−ヒドロキシ)プロピル]ピペラジン、N−メチルホルモリン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン、ピラジン、キノリン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチロール)フェノール、N−メチルピペラジン、ピロリジン、ホルモリン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびγ−アミノプロピルメチルジエトキシシランを挙げることができる。
【0083】
上記ハードコート用組成物は、その他必要によりレベリング剤、潤滑性付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤およびブルーイング剤等を含有することができる。レベリング剤や潤滑性付与剤としては、ポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体がとりわけ好ましい。これらはハードコート用組成物中に例えば0.001〜10質量%の割合で含有される。
【0084】
ハードコート用組成物は、透明積層体のプライマー塗膜上に、例えばディップ法、フロー法、スピンコート法、スプレー法等によって行うことができる。塗布したのち、例えば90〜120℃で1〜24時間加熱することにより、硬化塗膜とすることができる。塗膜の厚みは、好ましくは0.5〜5μmであり、より好ましくは1.0〜4.0μmである。0.5μmより薄いと硬度が低下し易く、5μmより厚くなるとクラックが入り易くなる。
【0085】
本発明の透明積層体を有するプラスチックレンズには、ハードコート膜の上にさらに反射防止コートを設けることができる。ハードコート膜の上に単層あるいは多層の無機物からなる反射防止膜を設けることにより、反射の低減、透過率の向上、耐候性の向上を図ることが出来る。
【0086】
無機物として、例えばSiO、SiO2、Si34、TiO2、ZrO2、Al23、MgF2、Ta25等を用いて真空蒸着法等によって薄膜を形成する。
【0087】
ハードコート膜を設ける際には、ハードコートの付着性を改善するためにあらかじめレンズ基材をアルカリ処理、酸処理、プラズマ処理、コロナ処理、火炎処理等で前処理を行うことが有効である。
【0088】
本発明の透明積層体は特に眼鏡用のプラスチックレンズに適するが、たとえば耐衝撃性が求められる安全めがね、耐衝撃性が求められる透明プラスチック板にも適用できる。
【0089】
好ましい反射防止膜として、高屈折率層と低屈折率層を交互に積層した多層反射防止膜が挙げられる。多層反射防止膜の成膜方法は、特に限定されないが無機酸化物を蒸発源とする真空蒸着法や金属を蒸発源としてチャンバー内で酸化するイオンアシスト法を採用した蒸着法が挙げられる。反射防止膜の低屈折率層は、SiO2又はSiとAlの複合酸化物で構成される。反射防止膜の高屈折率層は、TiO2、ZrO2、Nb23、Al23、Ta25及び/又はY25から構成される。また、反射防止膜は、無機酸化物の蒸着に同期して有機物が蒸着されるハイブリッド層が含まれていてもよい。また、反射防止膜の上面には、さらに撥水コートや防曇コートが施されてもよい。
【0090】
多層反射防止膜の好ましい態様を以下に示す。なお、以下の態様に示す第1層目は、反射防止膜の最もレンズ側の層である。
【0091】
好ましい第1の態様
第1層:SiO2層(膜厚:20〜50nm)
第2層:Nb23層(膜厚:3〜10nm)
第3層:SiO2層(膜厚:130〜250nm)
第4層:Nb23層(膜厚:25〜40nm)
第5層:SiO2層(膜厚:30〜45nm)
第6層:Nb23層(膜厚:25〜50nm)
第7層:SiO2層(膜厚:80〜120nm)
【0092】
好ましい第2の態様(反射防止膜)
第1層:SiO2層(膜厚:30〜60nm)
第2層:Ta25層(膜厚:10〜30nm)
第3層:SiO2層(膜厚:200〜300nm)
第4層:Ta25層(膜厚:40〜70nm)
第5層:SiO2層(膜厚:20〜50nm)
第6層:Ta25層(膜厚:40〜70nm)
第7層:SiO2層(膜厚:100〜150nm)
【0093】
前記好ましい態様は、第1、第2とも7層構造を示したが、7層構造に限定されない。例えば、5層構造、3層構造の反射防止膜でもよい。
【実施例】
【0094】
以下本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0095】
<評価方法>
プライマー組成液の常温保管テスト
テストは常温(23℃湿度60%)で保管した場合、白濁、増粘等のプライマー組成液の機能が無くなったものを×とした。結果は表5に示す。
【0096】
・耐衝撃性の評価
耐衝撃性:FDA規格に基づき、鋼球落下試験を行った。落下試験は、約16.4gの鋼球を127cmの高さから、レンズ中心部へ向かつて自然落下させ、割れないものを合格とした。
○・・・合格
×・・・不合格
【0097】
・密着性の評価
硬化膜に1.5mm間隔で100目クロスカットし、このクロスカットしたところに粘着テープ(商品名:セロファンテープ ニチバン(株)製品)を強く貼り付けた後、粘着テープを急速に剥がした後の硬化膜の剥離の有無を調べた。判断基準は以下の通りである。
◎・・・剥離無し
○・・・剥離数1〜10目
△・・・剥離数11〜50目
×・・・剥離数51〜100目
【0098】
白化の評価
暗室内、蛍光灯下で硬化膜に曇りがあるかどうかを目視で調べた。判断基準は以下の通りである。
◎・・・・・・曇りが見えない
○・・・・・・曇りがほとんど見えない
△・・・・・・曇りが少し見える
×・・・・・・曇りがかなり見える
【0099】
実施例のプライマー用組成物の調製は、まず、チタンジルコニウム系酸化物微粒子のゾルからなるA液(触媒化成株式会社製オプトレイク(登録商標)調整液)と、ポリオール+イソシアネート+チタンジルコニウム系酸化物微粒子からなるB液(SDCテクノロジーズ・アジア株式会社製クリスタルコート(登録商標)調整液)と、水性ポリウレタン樹脂粒子のエマルジョンからなるD液(株式会社ADEKA製アデカボンタイター(登録商標)HUX232)をまず用意した。各液の液構成は次の通りである。(表1〜表3参照)
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
サンプル1:組成物の調製
組成物の調製:A液10質量部にB液22.5質量部を混合した。この混合液に溶媒のNMPを50質量部添加した。ついて、D液17.5質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0104】
サンプル2:組成物の調製
組成物の調製:A液14.5質量部にB液19質量部を混合した。この混合液に溶媒のNMPを50質量部添加した。ついで、D液16.5質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0105】
サンプル3:組成物の調製
組成物の調製:A液22.5質量部にB液7質量部を混合した。この混合液に溶媒のNMPを50質量部添加した。ついて、D液20.5質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0106】
サンプル3:組成物の調製(ゾル、モノマー無し)
サンプル3の調製:50質量部のNMPにD液50質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0107】
サンプル4:組成物の調製(ポリマー無し)
サンプル4の調製:B液50質量部に溶媒のNMPを50質量部添加して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0108】
サンプル5:組成物の調製(モノマー無し)
組成物の調製:A液20質量部に溶媒のNMPを50質量部添加した。ついで、D液30質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0109】
サンプル6:組成物の調製(モノマー無し)
組成物の調製:A液25質量部に溶媒のNMPを50質量部添加した。ついで、D液25質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0110】
サンプル7:組成物の調製(モノマー無し)
組成物の調製:A液30質量部に溶媒のNMPを50質量部添加した。ついで、D液20質量部を滴下して1時間攪拌し全体を100質量部の調合液を得た。この調合液に界面活性剤を添加し、24時間攪拌させた。得られた溶液を、0.5μmのフィルターで濾過したものをプライマー組成物とした。
【0111】
サンプル8:組成物の調製(溶媒変更)
サンプル1の組成物のうち溶媒として50質量部加えているNMPをDMF:ジメチルホルムアミドに替えて調製した。
【0112】
サンプル9:組成物の調製(溶媒変更)
サンプル1の組成物のうち溶媒として50質量部加えているNMPをDMA:ジメチルアセトアミドに替えて調製した。
【0113】
サンプル10:組成物の調製(溶媒変更)
サンプル1の組成物のうち溶媒として50質量部加えているNMPをPGM:プロピレングリコールモノメチルエーテルに替えて調製した。
【0114】
サンプル11:組成物の調製(溶媒変更)
サンプル1の組成物のうち溶媒成分を、NMP25質量部、DAA(ダイアセトンアルコール)25質量部として調製した。
【0115】
サンプル12:組成物の調製(溶媒変更)
サンプル1の組成物のうち溶媒成分を、NMP25質量部、DMA25質量部として調製した。
【0116】
各組成物の構成を以下の表4に示す。尚、ポリウレタン樹脂粒子、ウレタン形成用モノマーおよび酸化物微粒子(ゾル)は、固形分の質量%を示す。
【0117】
【表4】

※サンプル8−12は、溶媒以外はサンプル1と同様である。
※PGMはプロピレングリコールモノメチルエーテル
【0118】
【表5】

【0119】
サンプル1−7の組成物は、主溶媒としてNMPを使用しており、常温環境下で保管しても白濁が生じなかった。一方、サンプル8−10の組成物は、常温環境下で保管するとまもなく白濁現象が生じた。また、溶媒成分の約50%がNMPであるサンプル11,12は、サンプル8−10よりも遅いが10日以内に白濁現象が生じた。サンプル11,12は、5℃の冷蔵保存試験においては30日経過後も白濁現象は見られなかった。
通常の使用環境での取り扱い性の良さを考えると、主溶媒としてはNMPが望ましいことがわかった。
【0120】
(2)プライマー層の形成
レンズ基材として特開2001−330701号公報段落番号[0013]〜[0014]に記載されている要領で、ビス(イソシアナトメチル)−1,4−ジチアン9.3質量部、ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン25.7質量部、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド65.0質量部を反応させて得られるプラスチックレンズ基材(屈折率(ne)1.70、以下、「レンズ基材1」と記載する)を60℃、10質量%水酸化ナトリウム水溶液中に300秒間浸漬し、その後、超音波28kHz印加の下、イオン交換水を用いて300秒間洗浄した。最後に、70℃雰囲気下、乾燥させる一連の工程を前処理とした。
前処理を施したレンズ基材1をスピンコーティング法にてコーティング組成物(実施例または比較例)を塗布し、120℃、20分間の条件にてプライマー層を形成した。
【0121】
(3)反射防止膜の形成
プライマー層を形成したプラスチックレンズ基材を蒸着装置に入れ、排気しながら65℃に加熱し、2.7mPaまで排気した後、電子ビーム加熱法にて蒸着原料を蒸着させて、ハードコート側よりSiO2からなるnd=1.46、nλ=0.08の第1層、Nb2O5、ZrO2、Y2O3からなるnd=2.21、nλ=0.04の第2層、SiO2からなるnd=1.46、nλ=0.55の第3層、Nb2O5、ZrO2、Y2O3からなるnd=2.21、nλ=0.12の第4層、SiO2からなるnd=1.46、nλ=0.09の第5層、Nb2O5、ZrO2、Y2O3からなるnd=2.21、nλ=0.17の第6層、SiO2からなるnd=1.46、nλ=0.28の第7層を形成して反射防止膜を施した。尚、ndは屈折率、nλは膜厚である。
【0122】
サンプル12、サンプル3−5、9、10を用いたレンズを製作して評価した。
サンプル2は、膜厚の異なる3つのサンプルで評価した。結果を表6に示す。
【0123】
【表6】

※サンプル8−12は組成液が白濁する前のものを用いた。
【0124】
耐衝撃性、密着性、屈折率、及び、白化の観点から、サンプル1,2及び8〜12の組成物で成膜されたプライマー層を有するレンズが優れている。
サンプル3は、耐衝撃性、密着性、及び、白化の点においては優れているが、屈折率が低かった。これは、屈折率を高くする酸化物微粒子のゾルがサンプル3には含まれていないことによると考えられる。
【0125】
サンプル4は、屈折率が1.7と高く耐衝撃性にも優れるが、密着性が得られない事がわかった。サンプル4には、水性ポリウレタン樹脂粒子が含まれていない。レンズとの密着性に優れる水性ポリウレタン樹脂粒子が含まれていないため、レンズへの密着性が得られなかったものと思われる。
【0126】
サンプル5〜7は、モノマーウレタン成分が含まれていない。サンプル5の組成液から得られたプライマー層は、耐衝撃性と密着性と白化においては優れるが、屈折率が1.61と低くかった。サンプル6の組成液から得られたプライマー層は、密着性と白化において優れていたが、屈折率が1.64と低めであり耐衝撃性も悪かった。サンプル7の組成液から得られたプライマー層は、密着性と白化において優れており屈折率も1.67と比較的高かったが、耐衝撃性が悪かった。サンプル6及び7に係るレンズの耐衝撃性が得られなかったのは、ポリウレタン樹脂粒子同士の接合を酸化物微粒子が阻害するため、ポリウレタン成分による衝撃の伝播と吸収がうまくできなくなったものと思われる。ウレタンモノマーを含まずポリウレタン樹脂粒子のみを含む組成液は、酸化物微粒子の割合が大きくなると耐衝撃性が低下する事がわかった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は眼鏡の技術分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリウレタン樹脂粒子、(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマー、(C)酸化物微粒子を含有するプライマー形成用組成物。
【請求項2】
(A)ポリウレタン樹脂と(B)ウレタン形成用モノマー及び/又はオリゴマーの質量比は、(A):(B)=1:9〜9:1である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(A)ポリウレタン樹脂粒子と(B)ウレタン形成用モノマーの合計と(C)酸化物微粒子の質量比が(A)+(B):(C)=2:8〜9:1である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
(A)ポリウレタン樹脂粒子が数平均分子量200以上のポリエステル骨格を有するポリオール化合物、鎖延長剤および末端にポリイソシアネート化合物から製造されたポリウレタン樹脂粒子であり、官能基としてカルボキシル基を有する水性ポリウレタン樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
(B)ウレタン形成用モノマーおよび/またはオリゴマーが、イソフタル酸を主成分とするポリエステルポリオールとポリイソシアネートからなる群から選ばれる請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
(C)酸化物微粒子は、少なくとも(i)酸化チタンが含まれている請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記複合酸化物微粒子が、下記(C-1)〜(C-4)から選択される少なくとも一種からなる微粒子である請求項6に記載の組成物。
(C-1)酸化チタン微粒子を核として酸化ジルコニウムおよび酸化ケイ素で被覆された微粒子、
(C-2)酸化チタンと酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムとの固溶体からなる複合酸化物微粒子を核として、酸化ケイ素及び酸化ジルコニウムで被覆された微粒子、
(C-3)チタンとケイ素との複合酸化物微粒子を核とし、この核微粒子の表面が酸化ケイ素及び酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムで被覆されている微粒子、または、
(C-4)チタンとケイ素とジルコニウムの複合酸化物微粒子を核とし、この核微粒子の表面が酸化ケイ素と酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムで被覆されている微粒子
【請求項8】
溶媒をさらに含む請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
溶媒としてN-メチルピロリジノンを含有する請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
プラスチック基材の少なくとも一方の表面に、請求項1〜9のいずれに記載のプライマー形成用組成物を用いてプライマー層を形成し、次いで前記プライマー層の上にハードコート層を形成することを含み、プラスチック基材の少なくとも一方の表面にプライマー層およびハードコート層をこの順に有するプラスチックレンズを得ることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
【請求項11】
前記ハードコート層の上に、反射防止膜を形成することをさらに含み、プラスチック基材の少なくとも一方の表面にプライマー層、ハードコート層および反射防止膜をこの順に有するプラスチックレンズを得る、請求項10に記載のプラスチックレンズの製造方法。
【請求項12】
プライマー層がスピンコートで成膜されたものである請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれに記載の方法で製造されたプラスチックレンズ。
【請求項14】
プラスチックレンズが眼鏡レンズである、請求項13に記載のプラスチックレンズ。

【公開番号】特開2009−67845(P2009−67845A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235485(P2007−235485)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】