説明

プラグインカード収容装置

【課題】エラー訂正回路の動作に起因して発生する消費電力の低減を図る。
【解決手段】プラグインカード収容装置は、受信した入力データを格納するメモリと、前記メモリに電気的に接続可能に設けられ、前記メモリから出力された前記入力データのエラーを訂正するエラー訂正回路とを含むプラグインカードと、前記プラグインカードが実装される装置本体と、前記装置本体に実装された前記プラグインカードに備えられる前記メモリのエラー率に基づいて前記プラグインカードの信頼性指標値を算出し、算出した前記信頼性指標値が基準値に近づくように、前記エラー訂正回路を前記メモリに電気的に接続するかどうかを決定するプロセッサとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグインカード収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置や情報処理装置の分野では、或いは“シャーシ型”と呼ばれる装置構成を有する装置(以下、“シャーシ型装置”と称する)がある。シャーシ型装置は、複数のスロットを有する筐体(“シェルフ”と呼ばれることもある)と、複数のスロットに挿入される複数の“モジュール”、或いは“カード”と呼ばれる装置とを含む。
【0003】
“モジュール”又は“カード”は、所定の機能を実現するための、半導体デバイスなどの電気・電子部品が搭載された装置(以下、“カード装置”と称する)である。複数のカード装置がスロットに挿入され、カード装置間が電気的に接続されることによって、シャーシ型装置は、各カード装置が有する機能を統合した目的の機能を発揮することができる。“シャーシ型”装置は、筐体にカード装置を挿入(接続)することで、カード装置が持つ機能を利用可能となる点で、“プラグイン方式”のプラグインカード収容装置とも呼ばれている。
【0004】
例えば、シャーシ型の通信装置の一つであるシャーシ型スイッチは、筐体と、通信装置のインタフェース機能を有するカード装置(“インタフェースカード”或いは“インタフェースモジュール”と呼ばれる(以下、インタフェースカード(IFカード)と表記))と、複数のインタフェースカード間を結び、各インタフェースカードで受信された信号を目的のインタフェースカードへ転送するスイッチング機能を司るカード装置(“スイッチカード”,“スイッチファブリック”と呼ばれる)と、スイッチカード及びインタフェースカードの動作制御を司るコントローラを含むカード装置(“制御カード”と称する)とを含む。
【0005】
このような、シャーシ型スイッチでは、空きスロットにインタフェースカードを追加することで、シャーシ型スイッチの収容可能ポート数を増やすことができる。或いは、制御カードの交換によって、新たな制御方法に基づく新たな機能を追加することができる。
【0006】
ところで、近年、半導体回路の微細化技術の進歩に伴いFPGA(Field-Programmable
Gate Array) やRAM(Read Only Memory) 回路におけるSoft エラー(ソフトエラー)が問題視されつつある。ソフトエラーとは、LSI(Large Scale Integration) 内部のRAMやロジック回路が何らかの原因(例えば、宇宙線,α線)により誤動作する現象である。ソフトエラーは、回路の完全な故障ではなく、例えば電源のリセットによって、ソフトエラー状態を解消することができる。この点で、回路の完全な故障を示す「ハードエラー」と区別される。このようなソフトエラーの問題は、シャーシ型装置に搭載されるカード装置についても起こり得る。
【0007】
本願に関連する先行技術として、データを送信する局側装置からの情報により、使わないFEC(誤り訂正符号)デコーダを停止することとして、受信側の消費電力を低減させる技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、面積の増加を抑えつつ、多数のメモリマクロに対して一括したエラー訂正符号(Error Correcting Code:ECC)処理を施すことができるようにされた、ECC機能を
搭載した集積回路装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
また、伝送回路の特性を、データ通信開始前の定型パターン信号の受信誤り率と受信信号レベルで測定し、測定結果を送信側にフィードバックすると共に、受信側の信号処理も設定し直すことで、最適な信号伝送処理を提供する技術がある(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
また、メモリとプロセッサと、自動誤り検出・訂正回路と、誤り検出の発生を監視し、その頻度と使用されるメモリ・デバイスに対するソフト・エラーの公知の頻度とを比較して、警報を発するべきかどうか及び警報の本質を決定ソフトウェアとを備え、複数ビットの記憶誤りの発生確率が所定の閾値よりも大きいと、オンラインメモリ監視システムが適宜の警報を発する技術がある(例えば、特許文献4参照)。
【0011】
さらに、制御部が、切り替え元の光回線ユニットから受けた下り通信信号を受動的光ネットワークへ出力する通信回路から、切り替え先の光回線ユニットから受けた下り通信信号を受動的光ネットワークへ出力する通信経路に光スイッチが切り替えることを開始してから完了するまでの切り替え遷移期間中、光スイッチが複数の宅側装置から上り通信信号を受信しないように、光スイッチの切り替えタイミングおよび複数の宅側装置の送信タイミングを制御する技術がある(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2011−15278号公報
【特許文献2】特開2008−90419号公報
【特許文献3】特開2006−332920号公報
【特許文献4】特開平10−55320号公報
【特許文献5】特開2010−147801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
プラグインカード収容装置におけるソフトエラーの対処法として、例えばECCのようなエラー訂正符号を用いるエラー検出訂正 (error detection and correction:EDC)
がある。EDCが採用されたプラグインカード収容装置に収容されているプラグインカードには、メモリから読み出されたデータのエラー検出訂正を行うエラー訂正回路がメモリ毎に備えられている。
【0014】
ところが、プラグインカード収容装置の運用状態、すなわち、収容されているプラグインカードの数やプラグインカードに搭載されているメモリの種類、またはプラグインカード収容装置の設置環境などによっては、備えられている全てのエラー訂正回路を動作させなくても、ネットワーク装置として求められる信頼性や、ネットワークのサービスレベル(回線品質)を満足できる場合がある。
【0015】
このように、動作させるべきエラー訂正回路が最適化されていない場合、上述の信頼性または回線品質が要求レベルに対してオーバースペックとなり、過剰な電力が消費されてしまう恐れがある。
【0016】
本発明の一態様は、エラー訂正回路の動作に起因して発生する消費電力の低減を図ることが可能なプラグインカード収容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様によれば、受信した入力データを格納するメモリと、前記メモリに電気的に接続可能に設けられ、前記メモリから出力された前記入力データのエラーを訂正する
エラー訂正回路とを含むプラグインカードと、前記プラグインカードが実装される装置本体と、前記装置本体に実装された前記プラグインカードに備えられる前記メモリのエラー率に基づいて前記プラグインカードの信頼性指標値を算出し、算出した前記信頼性指標値が基準値に近づくように、前記エラー訂正回路を動作させるかどうかを決定するプロセッサと、を有することを特徴とするプラグインカード収容装置が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、エラー訂正回路の動作に起因して発生する消費電力の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るシャーシ型装置(シャーシ型スイッチ)の構成を模式的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示したシャーシ型装置の回路構成例を示す。
【図3】図3は、図2に示したシャーシ型装置に含まれるデータバッファの回路構成例を示す図である。
【図4】図4は、メモリに記憶されたカード情報の例を示す。
【図5】図5は、SERデータベースのデータ構造例を示す。
【図6】図6は、装置構成データベースのデータ構造例を示す。
【図7】図7は、実施形態1の動作例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施形態2の動作例を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施形態3におけるデータバッファの構成例を示す図である。
【図10A】図10Aは、ギャップ検出回路の作用説明図である。
【図10B】図10Bは、ギャップ検出回路の作用説明図である。
【図10C】図10Cは、ギャップ検出回路の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0021】
[実施形態1]
<構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るシャーシ型装置(プラグインカード収容装置)の構成を模式的に示す。図1には、シャーシ型装置の例示であるシャーシ型スイッチ10が示されている。
【0022】
シャーシ型スイッチ10は、図示しない複数のスロット及びバックワイヤリングボード(BWB)とが設けられた装置本体としての筐体10Aを有している。各スロットには、スロットに挿入されるカード装置(プラグインカード装置)とBWBとを電気的に接続するコネクタが設けられている。BWBに接続された各カード装置は、BWBを介して他のカード装置と相互に且つ電気的に接続される。
【0023】
カード装置は、インタフェースカード(IFカード)11と、スイッチファブリック(以下、スイッチカード)12(12A,12B)と、制御カード(制御カード)13とを含むことができる。図1に示す例では、所定数(図1の例では24)のIFカード11(IF#1〜IF#24)と、ワーク用回線(ワーキングライン)用のスイッチカード(スイッチファブリック)12Aと、プロテクト用回線(プロテクションライン)用のスイッチカード(スイッチファブリック)12Bと、制御カードである主制御カード(Main Control)13とが図示されている。なお、スイッチカード12A,12Bを区別しない場合には、“スイッチカード12”と表記する。
【0024】
IFカード11(IF#1〜IF#24)は、スイッチカード12A及び12Bを介してメッシュ状に接続されている。IFカード11(IF#1〜IF#6,IF#13〜IF#18)は、ワーク用に使用され、IFカード11(IF#7〜IF#12,IF#19〜IF#24)は、プロテクト用に使用される。
【0025】
なお、図1の例では、最大24個のIFカード11を実装可能なシャーシ型スイッチ10を示した。但し、シャーシ型スイッチ10が有するスロット数、実装されるカード装置の種別数、実装されるカード装置の数は適宜変更可能である。
【0026】
また、図1の例では、ワーキング側とプロテクション側との二系統を有するシャーシ型スイッチ10を示した。但し、シャーシ型スイッチ10が二系統を有することは必須の要件ではない。換言すれば、シャーシ型スイッチは、目的に応じた数の系統を有することができ、各系統に対応するスイッチカードを実装することができる。
【0027】
図2は、図1に示したシャーシ型装置の回路構成例を模式的に示す。図2に示すように、シャーシ型装置(シャーシ型スイッチ10)は、図1に示した複数のIFカード11(IF#1〜IF#24)と、スイッチカード12A,12Bと、主制御カード13とを含んでいる。但し、図2では、各IFカード11は、外部からの主信号をスイッチカード12へ送る部分と、スイッチカード12から入力される主信号を外部へ送る部分とを分離した状態で図示されている。
【0028】
各スイッチカード12A,12Bの左側に、主信号を受信するIFカード11(IF#1及びIF#24のみを例示)を模式的に図示し、各スイッチカード12A,12Bの右側には、各スイッチカード12A,12Bから出力される主信号を受信するIFカード11Aを模式的に図示している。
【0029】
すなわち、図2において、符号11Aで表される“IF#1−24”のブロックは、スイッチカード12A,12Bの左側に一部を示したIFカード11(IF#1〜IF#24)の何れかに該当する。
【0030】
図2において、IFカード11(IF#1を例示)は、プラグインカード構造を有し、主信号を送受信するための通常の回線インタフェース部と、シャーシ型スイッチ10内におけるカード装置間を電気的に接続するための装置内カード間接続部を備えている。
【0031】
また、IFカード11は、データバッファ15を有する受信機(レシーバ)16と、データバッファ17を有する送信機(トランスミッタ)18とを含んでいる。レシーバ16は、回線インタフェース部で受信される主信号が入力する。トランスミッタ18は、レシーバ16から出力される主信号をカード装置内の主信号を介して受信する。トランスミッタ18から出力される主信号は、回線インタフェース部を介して出力される。レシーバ16,トランスミッタ18は、主信号のデータを一時的に蓄積するデータバッファ15,17を有している。
【0032】
データバッファ15,17は、主信号のデータを一時蓄積するRAM回路と、RAM回路に蓄積されたデータのソフトエラーを訂正するエラー訂正回路とを具備して、ソフトエラー発生時に誤ったデータを訂正し、正常なデータ処理を行う。
【0033】
図3は、図2に示したデータバッファ15,17として適用可能なデータバッファ21の回路構成例を示す図である。データバッファ21は、主信号線上に配置されたセレクタ(SEL)22と、データを蓄積するためのRAM(Random Access Memory)23と、セレク
タ(SEL)24とを備えている。
【0034】
また、データバッファ21は、エラー訂正回路として、例えば、誤り訂正符号(Error Correction Code:ECC)データ生成回路25と、ECC格納RAM26と、誤り検出
訂正(Error Detection and Correction:EDC)回路27とを備えている。セレクタ22,24は、エラー訂正回路とRAM23とを接続状態と非接続状態との間で切り替えるための切替回路として使用される。
【0035】
セレクタ22,ECCデータ生成回路25には、主信号線からの主信号(入力データ)が入力される。ECCデータ生成回路25は、入力データに基づくECCを生成する。
【0036】
セレクタ22は、主信号線からの入力データと、ECCデータ生成回路25を経て出力される入力データとのいずれか一方をRAM23へ向けて出力する。RAM23は、セレクタ22から出力される入力データを格納する。
【0037】
ECCデータ格納RAM26は、ECCデータ生成回路25から出力されるECCを格納する。RAM23から読み出される入力データは、セレクタ24及びEDC回路27に入力される。また、ECCデータ格納RAM26から読み出されたECCは、EDC回路27に入力される。
【0038】
EDC回路27は、RAM23から入力される入力データと、ECCデータ格納RAM26から入力されるECCとを用いて、RAM23からの入力データの誤り検出訂正(EDC)処理(入力データのチェック及び誤り訂正)を行う。ECCを用いることで、RAM23から読み出されるデータの誤りをチェックすることができ、1ビットの誤りであれば訂正が可能である。ソフトエラーによって生じた入力データの誤りは、このEDC処理によって訂正される。EDC処理が施された入力データ(“訂正データ”と称する)は、セレクタ24へ出力される。セレクタ24は、RAM23から読み出された入力データと、EDC回路27から出力された訂正データとの一方を、出力データとして出力することができる。
【0039】
上記した構成によれば、EDCが実行されない場合には、セレクタ22が入力データを選択する一方でセレクタ24がRAM23からの入力データを選択する。これによって、EDCが実施されていない出力データがデータバッファ21から出力される。これに対し、EDCが実行される場合には、セレクタ22がECCデータ生成回路25を経た入力データを選択する一方で、セレクタ24が訂正データを選択する。これによって、EDCの実施によってソフトエラーが訂正された出力データがデータバッファ21から出力される。
【0040】
セレクタ22,24の切り替え制御は、図2に示すローカルCPU(local Central Processing Unit)19から入力されるセレクタ制御情報(セレクタ制御信号)に従って行
われる。EDC(エラー訂正処理)が実施されない場合には、セレクタ22,24が入力データを選択するためのセレクタ制御信号(制御信号1と称する)が入力される。制御信号1がセレクタ22,24に供給されることによって、セレクタ22,24は、入力データを選択する切り替え動作を行う。一方、EDCを実施するためのセレクタ制御信号(制御信号2と称する)が入力された場合には、制御信号2はセレクタ22,24に供給される。制御信号2がセレクタ22,24に供給されることによって、セレクタ22はECCデータ生成回路から出力される入力データ、セレクタ24はEDC回路27から出力される訂正データをそれぞれ選択する切り替え動作を行う。
【0041】
上記した制御信号1及び制御信号2は、EDC処理に係るECCデータ生成回路25,
ECCデータ格納RAM26,EDC回路27(エラー訂正回路)に対する電源のオン/オフ信号として機能する。すなわち、制御信号1の入力によって、エラー訂正回路に対する電源供給がオフになり、制御信号2の入力によってエラー訂正回路に対する電源供給がオンになる。このような、エラー訂正回路に対する電源オン/オフ制御で、消費電力の浪費が抑えられる。
【0042】
また、図2に示すように、IFカード11(IF#1)は、各データバッファ15,17を制御するコントローラであるローカルCPU19と、メモリ(ストレージ:記憶装置)20とを備えている。
【0043】
メモリ20は、カード装置のタイプや、カード装置の使用デバイスなどPhysical Inventory情報(カード情報)を記憶した不揮発性記録媒体である。図4は、メモリ20に記憶されたカード情報の例を示す。カード情報は、ローカルCPU19によって読み出される。
【0044】
IFカード11(IF#2〜IF#24)は、IFカード11(IF#1)が有する構成要素(図3参照)と基本的に同じ構成要素を含んでいる。このため、IFカード11(IF#2〜IF#24)の内部構成についての説明は省略する。なお、IFカード11間において、データバッファ15,17に含まれるRAM23の構造,形状,容量が同一であることは要求されない。また、各IFカード11は、スイッチカード12A又は12Bから受信される主信号を処理するためのレシーバ及びトランスミッタ(夫々データバッファを含む)を備えているが、図示は省略する。
【0045】
図2に示すように、スイッチカード12Aは、各IFカード11(IF#1〜IF#24)からの出力信号(主信号)を受信するための複数のレシーバ31と、レシーバ31から出力される主信号を受信する複数のトランスミッタ32とを備えている。レシーバ31及びトランスミッタ32は、IFカード11が有するレシーバ16及びトランスミッタ18と同様の構成を有することができる。各レシーバ31及びトランスミッタ32が有するデータバッファ33,34は、図3に示したデータバッファ21が有する構成と同様の構成を有する。以下、データバッファ15,17,33,34を区別しない場合には、“データバッファ21”の表記を用いる。
【0046】
スイッチカード12Aは、さらに、各レシーバ31及び各トランスミッタ32の動作を制御するローカルCPU35と、Physical Inventory (カード情報)を記憶したメモリ(ストレージ:記憶装置)36とを備えている。ローカルCPU35は、制御線を通じて各レシーバ31及び各トランスミッタ32と接続されており、各IFカード11から入力される主信号(入力データ)に対するクロスコネクト処理を制御する。また、ローカルCPU35は、メモリ36に格納されたカード情報の読み出しを行う。メモリ36は、メモリ20と同様に、スイッチカード12Aのタイプ情報及び搭載デバイスを示すデバイス情報を含むカード情報(図4)を保持している。スイッチカード12Bは、スイッチカード12Aと同様の構成を有する。
【0047】
主制御カード13は、各IFカード11のローカルCPU19及び各スイッチカード12のローカルCPU35と通信可能であり、且つ各ローカルCPU19,35に対して各種の指示を送るローカルCPU43を備える。
【0048】
また、主制御カード13は、ローカルCPU43にて制御可能な、装置のカード実装情報や、カード間接続構成情報等、装置を構成する上で必要な接続情報を持つ装置構成データベース42と、各カード装置のSER値の計算に必要な情報を格納するSERデータベース41とを備える。各データベース41,42は、ハードディスク,フラッシュメモリ
のような不揮発性記録媒体上に作成される。ローカルCPU43は、SERデータベース41に蓄積された情報を元に、SER値を計算する。
【0049】
また、主制御カード13は、シャーシ型スイッチ10の外部からオペレータ(保守者等)が情報を入力可能な外部端末50(例えば、パーソナルコンピュータ(PC))と接続される。外部端末50から入力される情報は主制御カード13にて管理される。例えば、入力情報の少なくとも一部は、上記したデータベース41,42にて保持される。
【0050】
上述したように、IFカード11及びスイッチカード12は、RAM回路(RAM23)を含むデータバッファ21を有し、ソフトエラーを訂正するためのエラー訂正回路をさらに備え、ソフトエラーによって誤ったデータを訂正することが可能である。
【0051】
しかし、ECCのようなエラー訂正符号を用いることについては、以下のような問題がある。
(1)エラー訂正回路の追加による消費電力の増大
(2)データスルーレートに上限がある場合に、エラー訂正符号の付与による実データのスルーレート(伝送レート)の低下
(3)エラー訂正処理に起因するレイテンシー(遅延)の増加
このため、エラー訂正回路の実装は最小限に抑えられるのが好ましい。また、実施形態におけるシャーシ型スイッチのようなネットワーク装置においては、ネットワーク装置としての信頼性や、ネットワークサービスレベル(回線品質)を満足することも要求される。したがって、要求されるサービスレベルを確保可能なソフトエラー対策機構をシャーシ型装置が具備することが要求される。
【0052】
さらに、SERは、下記のような事情(変動要素)によって変動する。
<1>SERはメモリ(RAM)の形状に依存する。特に、エラー訂正対策後の複数ビット同時エラー(Multi-bit Error)の確率は、メモリ形状に大きく依存する。
<2>プラグインカード方式のシステム(シャーシ型装置)においては、実装されるカードタイプはシステム毎に異なり、その組合せの違いによって、装置全体のSERも異なる。
<3>SERは、実際のシャーシ型装置の設置環境パラメータ(緯度・経度・高度・建物の遮蔽・宇宙中性子線の飛散量)によって左右される。
<4>運用中のSER値は、実際に動作している回路の容量によって決まる。
【0053】
従って、ソフトエラー対策機構(エラー訂正回路)の動作が、ネットワークシステム(シャーシ型装置)の運用状態により最適化されることが好ましい。最適化の実施によって、過剰なソフトエラー対策機構の動作が抑えられ、消費電力の低下を図ることができる。
【0054】
SERデータベース41及び装置構成データベース42は、エラー訂正回路の動作を最適化するための情報を格納し、ローカルCPU43は、各データベース41及び42に価格納された情報に基づいて各カード装置のデータバッファ21中のエラー訂正回路の動作(電源)のオン/オフを制御する。これによって、シャーシ型装置(シャーシ型スイッチ10)全体において、最適化されたソフトエラー対策(エラー訂正処理)が実施される一方で、消費電力の増大を抑えることができる。以下、SERデータベース41及び装置構成データベース42のデータ構造例、及びローカルCPU43の処理について説明する。
【0055】
図5は、SERデータベース41のデータ構造例を示す。図5において、SERデータベース41は、シャーシ型装置(シャーシ型スイッチ10)全体(装置)のSERテーブル41Aと、カードタイプ毎のSERテーブル41Bとを備えている。
【0056】
SERテーブル41Aは、装置のハードウェアの故障率,装置の設置位置(緯度/高度)に対する係数(緯度/高度係数),遮蔽物(コンクリートの厚さに対する係数(遮蔽物係数)を格納する。
【0057】
カードタイプ毎のSERテーブル41Bには、各カード装置のタイプに応じたハードウェア故障率を保持する。また、SERテーブル41Bは、カード装置間で共通なローカルCPU用SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory),及びカード装置に搭載された各デバイスに対する、メモリタイプ,メモリ容量,ECCの有無,SER値(ECC有),SER値(ECC無),エラー発生統計,ECCのオン/オフに関する情報を格納することができる。
【0058】
なお、図5のSERテーブル41Bに示すように、カード装置のローカルCPU(19,35)用のSDRAM(メインメモリ:図示せず)に対しても、図3を用いて説明したようなエラー訂正回路を適用することができる。すなわち、カード装置が複数のメモリ(RAM)を有する場合には、RAM毎にエラー訂正回路を設けることができる。換言すれば、カード装置は、1以上のエラー訂正回路を有することができる。
【0059】
各SERテーブル41Bの作成に際して、主制御カード13のローカルCPU43は、各IFカード11及び各スイッチカード12のローカルCPU19,35に対してカード情報の供給指示を送信する。各ローカルCPU19,35は、供給指示に応じて、メモリ20,36からカード情報を読み出してローカルCPU43に送信する。ローカルCPU43は、各カード装置から受信されるカード情報に応じたSERテーブル42をSERデータベース41に作成する。
【0060】
図5に示したような情報をSERデータベース41が保持する場合には、例えば、タイプ1のカード装置に対するソフトエラー発生率,カード故障率,平均故障時間[年]は、ローカルCPU43によって以下のような式1〜式3に基づき計算される。
【0061】
(式1)ソフトエラー発生率(SER)=(メモリ容量*SER値)*(緯度/高度係数)*遮蔽物係数 =((512*10)+(256*12)+(10*100)+(10*110))*1.02*0.32=3000[fit]
(式2)カード故障率=ハードウェア故障率+ソフトエラー発生率
=(300+2000)+3000=5300[fit]
(式3)平均故障時間[年]=(1000000000/故障率)/24/365
=(1000000000/5300)/24/365=21[年]
ここで、シャーシ型スイッチ10で予め定めた、シャーシ型スイッチ10が適正なネットワークサービスを提供するために要求される基準値(要求値)が、例えば“15年”であれば、シャーシ型スイッチ10のどこかのエラー訂正回路をオフにすることができる。
【0062】
上記計算例では、平均故障時間を基準値と比較することで、エラー訂正回路のオン/オフ条件が決定される例について説明した。これに代えて、ソフトエラー発生率(SER)や、カード故障率を基準値と比較すべき値として用いて、エラー訂正回路のオン/オフ条件を決定することができる。
【0063】
上述した、SER,カード故障率,平均故障時間は、シャーシ型スイッチ10が形成するスイッチとしてのシステムに対する信頼性指標値である。例えば、カード故障率または平均故障時間の指標値が基準値未満であれば、システムが信頼性を満たさないことになる。一方、カード故障率または平均故障時間の指標値が基準値を大きく上回る場合には、過剰なエラー訂正処理が実施されていることになる。従って、指標値が基準値を満足すると認められる範囲に収まる場合には、システム信頼性が確保され、且つ過剰なエラー訂正処理が実行されない状態となる。
【0064】
図6は、装置構成データベース42のデータ構造例を示す。図6に示すように、装置構成データベース42は、シャーシ型スイッチ10に実装された各カード装置の構成に係る情報を保持する。図6に示す例では、IFカード11(IF#1,IF#2)が有するポート1,2に関して、使用/未使用,回線タイプ,マッピング先が保持される。さらに、ポート1,2が夫々備えるチャネル(チャネル群)に対する使用/未使用、及びパス接続先が保持される。
【0065】
<動作例1>
次に、シャーシ型スイッチ10の動作例について説明する。最初に、オペレータ(例えば保守者)が外部端末50を用いて、装置構成情報及びカード間接続情報、緯度/高度係
数、及び建造物遮蔽率を、シャーシ型スイッチ10に入力する(フェーズ1)。
【0066】
すると、主制御カード13のローカルCPU43は、外部端末50から入力された装置構成情報及びカード間接続情報が登録された装置構成データベース42を構築する(フェーズ2)。
【0067】
続いて、主制御カード13のローカルCPU43は、装置構成データベース42の保持内容を元に、各IFカード11及び各スイッチカード12のローカルCPU19,35に対する指示を出力する。これによって、各IFカード11及びスイッチカード12A,12Bのデータパスの接続情報の設定が行われる(フェーズ3)。
【0068】
指示を受けた各IFカード11及び各スイッチカード12では、ローカルCPU19,35が、データバッファ21内のエラー訂正回路を含む全てのエラー訂正回路をオン(有効)に設定する(フェーズ4)。
【0069】
各IFカード11及び各スイッチカード12のローカルCPU19,35は、メモリ20,36からカード情報を読み出し、主制御カード13のローカルCPU43に送る(フェーズ5)。カード情報は、カード装置のタイプ情報と、デバイス情報とを含む。タイプ情報は、カード装置のハードウェア故障率(ハードエラーレート)を含む。デバイス情報は、図5に示したような、メモリタイプ,メモリ容量,ECC有無,SER値(ECC有),SER値(ECC無),ECC回路のオン/オフ情報を含む。
【0070】
主制御カード13のローカルCPU43は、装置構成データベース42からカード装置間接続情報を取得し、各IFカード11及び各スイッチカード12から通知されてくるカード情報と、保守者によって入力されたハードウェア故障率,緯度/高度係数及び建造物
遮蔽係数を元に、SERデータベース41のテーブル41A,41Bをカードタイプ毎に構築する(フェーズ6)。
【0071】
ローカルCPU43は、SERデータベース41に登録された情報を用いて、カード装置毎に、ソフトエラー発生率、カード故障率,カード故障率の逆数である「次に故障するまでの平均時間(平均故障時間)」を求め、予め用意されているシャーシ型スイッチ10の基準値(要求値)と比較する(フェーズ7)。動作例1では、平均故障時間を信頼性指標値としてその基準値と比較する例について説明する。
【0072】
すなわち、ローカルCPU43は、カードタイプの1つ(例えばタイプ1)について、対応するSERテーブル41Bを参照し、カード装置が具備する各デバイス(ローカルCPU用SDRAM及びデバイスA,B,C)が夫々有するメモリに関して、「使用ビット数(メモリ容量)×ビット当たりのソフトエラー発生率」を計算し(上記(式1)参照)、カード装置におけるソフトエラー発生率(SER)の合計を求める。このとき、全ての
エラー訂正回路(エラー訂正処理)がオンであることが前提となっているため、エラー訂正回路が付加されているデバイスについてはSER値(ECC有)が適用され、エラー訂正回路が付加されていないデバイスについてはSER値(ECC無)が適用される。続いて、ローカルCPU43は、SERの合計と、テーブル41Aに登録されたハードウェア故障率(装置のハードウェア故障率及びカード装置のハードウェア故障率との和)とを足し合わせて、カード故障率を求める(式2参照)。さらに、ローカルCPU43は、「次に故障するまでの平均時間(平均故障時間)」を、(式3)に基づき求め、平均故障時間を、予め設定された基準値(要求値)と比較する。
【0073】
平均故障時間の値が基準値よりも大きい場合には、ローカルCPU43は、タイプ1のカード装置に含まれるエラー訂正回路(エラー訂正処理)をオフにすることができると判定する。この場合、ローカルCPU43は、カード装置中の少なくとも1つのデバイスに対するエラー訂正回路をオフに設定し、上記したSER,カード故障率,平均故障時間を再計算し、基準値との比較を行う。このようにして、平均故障時間が基準値未満とならない範囲で基準値又は基準値と最も近い値となるように、エラー訂正回路のオン/オフ条件が決定される(フェーズ8)。フェーズ7及び8の動作は、カードタイプ毎に実行される。
【0074】
カードタイプ毎のエラー訂正回路のオン/オフ条件が決定された場合には、ローカルCPU43は、各IFカード11及び各スイッチカード12のローカルCPU19,35に対し、カード装置が備えるエラー訂正回路のオン/オフを示す制御情報を送る。各ローカルCPU19,35は、制御情報に従ったセレクタ制御情報(セレクタ制御信号)をデータバッファ21に入力する。ここで、セレクタ制御信号が制御信号1であれば、セレクタ22,24の切り替え動作でエラー訂正処理が実施されない状態となる一方で、エラー訂正回路の電源がオフとなる。これに対し、セレクタ制御信号が制御信号2であれば、エラー訂正回路の電源がオンとなり、セレクタ22,24のエラー訂正処理が実施される状態となる。もっとも、電源がオンの状態でエラー訂正回路によるエラー訂正処理がオフとなるようにすることもできる。
【0075】
<動作例2>
次に、実施形態1の動作例2について説明する。図7は、動作例2を示すフローチャートである。SERデータベース41,装置構成データベース42が既に構築されており、最適化されたエラー訂正回路のオン/オフ制御の運用が実際に行われていることを、フローチャートに示す動作の前提とする。
【0076】
動作例2では、平均故障時間ではなくソフトエラー発生率(SER)を信頼性指標値として基準値(要求値)と比較する例について説明する。また、図7に示すフローチャートは、変更に係るIFカードに係る処理のみを示す。
【0077】
シャーシ型スイッチ10に対し、新たなIFカード11が接続されたり、既存のIFカード11に対する設定変更(例えば、IFカード11に対するポートやチャネルに対する設定(例:使用/未使用))が生じたりした場合には、装置構成の変更が生じる。
【0078】
装置構成の変更が生じる場合には、外部端末50のオペレータ(保守者)は、外部端末50に対する装置構成変更操作を行い、変更に係る装置構成の情報を入力する。変更に係る装置構成の情報は、主制御カード(Main Control)13のローカルCPU43に供給される(S001)。
【0079】
すると、ローカルCPU43は、装置構成データベース42にアクセスし、変更に係る装置構成の情報を装置構成データベース42に反映する。すなわち、ローカルCPU43
は、変更に係る装置構成の情報を用いて、新規のテーブルの作成(新規IFカード接続時)、又は既存のテーブルの編集(追加,変更,削除)(IFカード設定変更時)を行う。これによって、変更に係るIFカード11の装置構成、すなわちポートやチャネルの使用/未使用,回線種別,パス接続情報などが装置構成データベース42に反映される(S002)。
【0080】
次に、ローカルCPU43は、装置構成データベース42の変更をSERデータベース41に反映する。これによって、新たなIFカード(カードタイプ)に係る情報の登録(テーブル41Bの追加)、所定のテーブル41Bの保持内容の変更が生じる。なお、新たなテーブル41Bが追加される場合には、そのカードタイプ(新規IFカード)が有する全てのエラー訂正回路がオンに設定される(S003)。
【0081】
次に、ローカルCPU43は、SERデータベース41の更新に従って、変更に係るカードタイプ(IFカード11)のSER(ソフトエラー発生率)を再計算する(S004)。次に、ローカルCPU43は、SERが予め用意されている要求値(基準値)未満であるかを判定する(S005)。
【0082】
このとき、SERが要求値未満であれば、ローカルCPU43は、SERデータベース41を変更する(S006)。すなわち、SERが要求値未満の場合には、過剰な信頼性が確保された状態であるので、不要なエラー訂正回路(ECC回路)をオフにして消費電力を抑えるのが好ましい。このため、ローカルCPU43は、IFカード11中の少なくとも1つのエラー訂正回路をオフに設定する。このとき、図5のテーブル41Bに示すように、デバイス単位のエラー発生統計値(エラー発生回数)がテーブル41Bに登録されている場合には、ローカルCPU43は、エラー発生統計値が少ない順序で、オフに設定するエラー訂正回路を決定する。
【0083】
S006の処理が終了すると、処理がS004に戻され、SERの再計算が行われる。このとき、1ビット当たりのSER値として、S006にてオフに設定されたエラー訂正回路に対応するデバイスに関する1ビット当たりのSER値として、SER値(ECC無)が適用される。その後のS005において、Noの判定がなされると、処理がS007に進む。Noの判定は、信頼性が最適である(SERが基準値と同等)、又は信頼性が低いことを示す。
【0084】
S007では、ローカルCPU43は、SERが要求値よりも高いか否かを判定する。このとき、SERが要求値よりも高い場合(YES)には、処理がS008に進む。
【0085】
S007において、SERが要求値よりも高いことは、信頼性が要求より低いことを意味する。このため、ローカルCPU43は、SERデータベース41の変更を行い、オフの状態にある少なくとも1つのエラー訂正回路をオンの状態に切り替える(S008)。このとき、デバイス毎のエラー発生統計値(エラー発生回数)が登録されている場合には、ローカルCPU43は、エラー発生統計値が少ない順序でエラー訂正回路をオンに設定する。
【0086】
S008の処理が終了すると、処理がS004に戻され、SERの再計算が行われる。このとき、1ビット当たりのSER値として、S008にてオンに設定されたエラー訂正回路に対応するデバイスに関する1ビット当たりのSER値として、SER値(ECC有)が適用される。その後、処理がS005に進む。
【0087】
S007において、Noの判定がなされた場合には、処理がS009に進む。Noの判定は、信頼性が最適であることを示す。なお、要求値は、1つの値でも良いが、連続した
複数の値からなる範囲であっても良い。
【0088】
S009に処理が進むと、ローカルCPU43は、変更に係るIFカード11(ターゲットIFカード)のローカルCPU19へ構成変更指示を送る。構成変更指示は、ターゲットIFカードが有する各エラー訂正回路(ECC回路)のオン/オフ情報を含む。
【0089】
ターゲットIFカードでは、ローカルCPU19が、主制御カード13から受信される構成変更指示に従って、ターゲットIFカード内のデバイスの設定変更を行う(S010)。また、ECC回路のオン/オフ情報に従って、対象ECC回路のオン/オフ設定が変更される(S011)。
【0090】
<効果>
実施形態1によれば、主制御カード13のローカルCPU43は、各カード装置からカード情報を収集し、保守者から入力された装置のハードウェア故障率,緯度/高度係数及び遮蔽物係数と合わせてSERデータベース41を構築する。
【0091】
さらに、ローカルCPU43は、SERデータベース41に格納された情報を用いて、カードタイプ毎の平均故障時間を求め、平均故障時間が基準値以上の範囲で基準値又は基準値に最も近づく値となるように、エラー訂正回路のオン/オフをカードタイプ毎に決定する。そして、ローカルCPU43は、各カード装置に対し、決定されたエラー訂正回路のオン/オフを示す制御情報を供給する。これによって、制御情報で指定されたエラー訂正回路の電源がオフとなる。
【0092】
従って、以下のような効果を奏することができる。
(1)カード実装/使用状態が多様なプラグインカード装置(シャーシ型装置)において
、装置の設置環境条件、実装カード条件等を考慮した、最適な信頼性をもったシステム動作が可能となる。すなわち、シャーシ型スイッチ10に要求される適正なサービス提供のための基準値を満たす範囲でエラー訂正回路の電源がオフとされるので、信頼性が確保される。
(2)信頼性が確保される範囲で、不要なエラー訂正処理が実行されないようにエラー訂正回路の動作又は電源供給をオフにすることができる。これによって、消費電力を低減する(消費電力の浪費防止を図る)ことができる。
(3)不要なエラー訂正処理がバイパスされる(主信号がエラー訂正処理にかかるルートを通過しない)ので、データの伝送遅延の増加を最小限にすることができる。
(4)プラグインカード装置が複数のメモリを備えている場合、プラグインカードの信頼性指標値は、前記複数のメモリの夫々のエラー率と、前記プラグインカード収容装置の設置環境パラメータに基づいて算出される。この方法によれば、複数のメモリの夫々のエラー率を用いてプラグインカードの信頼性指標値を算出しているため、一部のメモリのエラー率が高い場合であっても基準値に近づけることがより容易になる。その結果、エラー訂正回路の動作の最適化を図ることができる。また、プラグインカード収容装置の設置環境パラメータに基づいて信頼性指標値を算出することにより、放射線などの、SERに影響を与える要因を考慮して信頼性指標値を補正できる。このため、信頼性指標値の精度の向上を図ることができる。
【0093】
<変形例>
実施形態1において、エラー訂正回路のオン/オフ条件の決定は、カードタイプ毎になされる例について説明した。例えば、IFカードがタイプ1でスイッチカードがタイプ2であった場合、タイプ1に対するオン/オフ制御は、全てのIFカードに対して同様に適用され、タイプ2に対するオン/オフ制御は、全てのスイッチカードに対して同様に適用される。これに対し、IFカード間,スイッチカード間でカードタイプが異なる場合には
、IFカード間、スイッチカード間でカードタイプに応じて異なるオン/オフ制御が行われる。また、カード装置毎にカードタイプが異なる場合には、オン/オフ制御がカード装置毎に実行されるのと等価となる。また、カード毎にオン/オフ制御を行う場合には、例えば、カードタイプの代わりにカードIDを用い、カードID単位でオン/オフ条件の決定が行われるように変形することができる。
【0094】
また、実施形態1のシャーシ型スイッチ10スイッチカード12A,12Bのように、シャーシ型スイッチが冗長構成を有する場合には、予備系のカード装置に対するエラー訂正回路の電源がオフにされ、現用系と予備系の切替を契機として、予備系のカード装置に対して実施形態1で説明したようなエラー訂正回路に対するオン/オフ条件の設定が行われるようにしても良い。すなわち、現用系のカード装置のみを対象とするオン/オフ条件の設定が行われるようにしても良い。
【0095】
[実施形態2]
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2は、実施形態1と共通点を有するので、主として相違点について説明し、共通点については説明を省略する。
【0096】
実施形態2において、データバッファ21が具備するEDC回路27(図3)は、図示しないエラー検出状態表示レジスタを含む。エラー検出状態表示レジスタは、所定時間内におけるソフトエラーの検出の有無を示すフラグを有している。EDC回路27はソフトエラーを検出した場合にフラグをオンに設定する。フラグは、所定時間に応じた周期でクリアされる(初期状態:オフ)。
【0097】
IFカード11及びスイッチカード12の各ローカルCPU19,35は、上記した周期でエラー検出状態表示レジスタの読み出しを行い、フラグがオンであった場合には、主制御カード13のローカルCPU43へエラー発生通知を送信する。
【0098】
エラー発生通知を受信したローカルCPU43は、エラー発生通知に対応するSERテーブル41Bにおける対応デバイスのエラー発生統計の欄(エラー統計カウンタ)を更新(インクリメント(1を加算))する。
【0099】
図8は、実施形態2の動作例を示すフローチャートである。図8に示すS101において、例えば、或るIFカード11のデータバッファ15におけるエラー訂正回路のオン情報を含む構成変更指示が、主制御カード13のローカルCPU43から当該IFカード11のローカルCPU19へ送られたと仮定する。
【0100】
S102では、IFカード11のローカルCPU19は、構成変更指示に従って、自IFカード11内のデバイスの設定変更を行う。続いて、ローカルCPU19は、構成変更指示に含まれるオン/オフ情報に従って、データバッファ15のエラー訂正回路をオン(電源をオン)にするともに、セレクタ22,24を切り替えるための制御を行う(S103)。電源のオンによって、データバッファ15が有するEDC回路27のエラー検出状態標示レジスタの値がクリアされる(S104)。
【0101】
その後、S105〜S108の周期監視処理が行われる。すなわち、S105では、ローカルCPU19は、エラー検出状態表示レジスタのフラグ値を読み出す。続いて、ローカルCPU19は、ソフトエラーが発生したか否か(ソフトエラーが検出されたか否か)を判定する(S106)。この判定は、フラグがオフ(エラー無し)かオン(エラー有り)かによって行われる。
【0102】
ソフトエラーが発生していない場合(フラグオフの場合)には、処理がS108へ進む
。これに対し、ソフトエラーが発生した場合(フラグオンの場合)には、ローカルCPU19は、主制御カード13のローカルCPU43へエラー発生通知を送信する(S107)。エラー発生通知は、対象のエラー訂正回路の情報も含んでいる。その後、処理がS108へ進む。
【0103】
S108では、ローカルCPU19は、エラー検出状態表示レジスタをクリアして一定時間待ち状態となる。一定時間が経過すると、ローカルCPU19は、S105の処理を行う。
【0104】
S109では、ローカルCPU43が、対象のIFカードのデータバッファ15に相当するデバイスに対するエラー統計カウンタ(エラー発生統計の値)を更新する。このようにして、SERテーブル41Bの“エラー発生統計”には、エラー訂正回路が一定時間当たりにおいてソフトエラーを検出した回数が格納される。このようなエラー発生統計値は、実施形態1におけるS006やS008において、オン又はオフすべきエラー訂正回路(ECC回路)を決定するために使用される。
【0105】
<効果>
実施形態2によれば、統計的にソフトエラー発生率に基づいて、エラー訂正回路をオフに切り替えることが可能となる。これによって、エラー訂正の効果が小さいエラー訂正回路を優先的にオフにできるので、無用のエラー訂正処理を回避して消費電力の浪費を防止するとともに、遅延を抑えることができる。
【0106】
[実施形態3]
以下、本発明の実施形態3について説明する。実施形態3は、実施形態1と共通点を有するため、実施形態1との共通点については説明を省略し、主として実施形態1との相違点について説明する。
【0107】
実施形態3は、実施形態1で説明したデータバッファ21(図3)に構成要素が付加されている点で実施形態1と異なる。図9は、実施形態3において、データバッファ21の代わりに適用されるデータバッファ21Aの構成例を示す図である。図9に示すように、データバッファ21Aは、ギャップ検出回路28と、AND回路29が付加されている点で、データバッファ21と異なる。
【0108】
ここに、主信号線上には、主信号として、所定長を有するデータブロックを表す信号がシリアルに伝送される。IFカード11及びスイッチカード12は、データブロック単位で処理を行う。主信号中のデータブロック間には、有効なデータでない領域(区間)が設けられる。この領域(区間)は、“ギャップ”と呼ばれる。
【0109】
ギャップ検出回路28は、回線インタフェース部からの主信号(入力データ)が入力され、データブロック間のギャップを検出する。例えば、ギャップ検出回路28は、有効なデータブロック間に挿入される特殊なビットパターンを検出することでギャップを検出することができる。或いは、ギャップ検出回路28は、所定のクロックに従って主信号のパルスをカウントし、パルスのカウント数に基づいてデータブロックとギャップとを判別し、ギャップを検出することができる。もっとも、ギャップの検出手法は、主信号として伝送されるデータ構造に応じて、既存の適宜の手法を適用することができる。
【0110】
図10A,図10B,図10Cは、ギャップ検出回路28の作用説明図である。図10Aは、セレクタ22,24の切り替えが実施されない状態における、主信号(入力データ)及びRAM23へのデータブロックの格納状態を示す。図10Bは、図10B中の切り替えポイントAでセレクタ22,24の切り替えが実施される例を示す。図10Cは、図
10C中の切り替えポイントBでセレクタ22,24の切り替えが実施される例を示す。
【0111】
図10Aの例に示すように、主信号(入力データ)として、有効なデータブロック1〜4(データ1〜4)がシリアルに入力される場合を仮定する。ここで、データブロック2とデータブロック3との間に間隔がある場合には、データブロック2とデータブロック3との間には、有効なデータブロックが無いことを示す特殊なビットパターン(アイドルパターン)が挿入される。このアイドルパターンが挿入された区間(アイドル区間)がギャップに相当する。
【0112】
図10Aに示すケースでは、セレクタ22,24への切り替えが実施されないので、各データブロック1〜4は、正常にRAM23に格納される。これに対し、図10Bのケースでは、RAM23へのデータブロック2の転送中にセレクタ22,24の切り替えが実施される。このため、データブロック2はエラーとなってRAM23に正常に蓄積されない。一方、図10Cのケースでは、ギャップ,すなわちアイドル区間でセレクタ22,24の切り替えが実施されるので、データブロック1〜4は正常にRAM23に格納される。
【0113】
ギャップ検出回路28は、上述したようなアイドル区間を検出した場合に、ギャップ検出を示す信号(ギャップ検出信号)をAND回路29に入力する。AND回路29は、二つの入力端子を有している。一方の入力端子には、セレクタ制御情報(セレクタ制御信号)が入力され、他方の入力端子には、ギャップ検出回路28からのギャップ検出信号が入力される。従って、AND回路29は、セレクタ制御信号が入力されても、ギャップ検出信号が入力されなければ、その出力端子からセレクタ制御/電源制御信号をセレクタ22,24及びエラー訂正回路(ECCデータ生成回路25,ECCデータ格納RAM26,EDC回路27)へ供給しない。従って、セレクタ22,24の切り替え及びエラー訂正回路への電源制御は、ギャップにおいてのみ実行されるようになる。
【0114】
以下、実施形態3の動作例を示す。各IFカード11のローカルCPU19,各スイッチカード12のローカルCPU35は、主制御カード13のローカルCPU43からの指示に従って、データバッファ21のエラー訂正処理をオフにするためのセレクタ制御情報(セレクタ制御信号)を出力する。
【0115】
一方、データバッファ21では、ギャップ検出回路28がアイドルパターン(ギャップ)を検出するまで、セレクタ制御/電源制御信号がセレクタ22,24及びエラー訂正回路へ供給されない。
【0116】
よって、主制御カード13の設定タイミングでセレクタ22,24の切り替えや、エラー訂正回路への電源供給停止は行われず、ギャップ検出回路28によってアイドル区間が検出されたタイミングでセレクタ切り替え及び電源供給停止が実行される。
【0117】
<効果>
実施形態3によれば、実施形態1で説明した効果に加え、装置構成が運用中に変更された場合においても、ユーザデータ(データブロック)のエラーを伴うことなく、エラー訂正回路がオフされることによって、信頼性を高めることができる。
【0118】
なお、上記した実施形態3では、一定時間内にソフトエラーが発生した回数がエラー発生統計としてSERデータベース41に保持される構成について説明した。このような構成の代わりに、各カード装置で、エラー訂正回路毎にソフトエラー回数が保持され、ローカルCPUが所定周期(一定時間)毎のソフトエラー回数をローカルCPU43に通知し、SERデータベース41(対象SERテーブル)でソフトエラー回数の累積値が保持さ
れるようにしても良い。
【符号の説明】
【0119】
10・・・シャーシ型スイッチ
11・・・インタフェースカード(IFカード)
12A,12B・・・スイッチカード
13・・・主制御カード
15,17,21,33,34・・・データバッファ
16,31・・・レシーバ
18,32・・・トランスミッタ
19,35,43・・・ローカルCPU
20,39・・・メモリ
41・・・SERデータベース
42・・・装置構成データベース
50・・・外部端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信した入力データを格納するメモリと、前記メモリに電気的に接続可能に設けられ、前記メモリから出力された前記入力データのエラーを訂正するエラー訂正回路とを含むプラグインカードと、
前記プラグインカードが実装される装置本体と、
前記装置本体に実装された前記プラグインカードに備えられる前記メモリのエラー率に基づいて前記プラグインカードの信頼性指標値を算出し、算出した前記信頼性指標値が基準値に近づくように、前記エラー訂正回路を動作させるかどうかを決定するプロセッサと、
を有することを特徴とするプラグインカード収容装置。
【請求項2】
前記プラグインカードは複数のメモリを備え、
前記プラグインカードの信頼性指標値は、前記複数のメモリの夫々のエラー率と、前記プラグインカード収容装置の設置環境パラメータに基づいて算出されることを特徴とする請求項1記載のプラグインカード収容装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記エラー訂正回路で発生したエラーの発生情報を前記プラグインカードから受信し、
受信した前記エラーの発生情報からエラー統計情報を生成し、
前記エラー統計情報に基づいて、前記エラー訂正回路を動作させるかどうかを決定することを特徴とする請求項1に記載のプラグインカード収容装置。
【請求項4】
前記プラグインカードは、
前記エラー訂正回路を前記メモリに電気的に接続する切替回路と、
前記電気的に接続することにより、前記メモリに格納すべき前記入力データが損なわれないように、前記切替回路による非接続から接続への切替タイミングを調整する調整回路と、
をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラグインカード収容装置。
【請求項5】
前記プラグインカードは、ワーク用プラグインカードと保護用プラグインカードとを含み、
前記プロセッサは、前記保護用のプラグインカードのエラー訂正回路を前記メモリに対して非接続とする
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプラグインカード収容装置。
【請求項6】
前記信頼性指標値は、前記メモリのソフトエラー率に前記プラグインカード収容装置の設置位置に基づいて決定された係数を乗じた値に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のプラグインカード収容装置。
【請求項7】
前記信頼性指標値は、前記プラグインカードのハード故障率及び前記装置本体のハード故障率に基づいて算出される
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のプラグインカード収容装置。
【請求項8】
プラグインカード収容装置に収容されるプラグインカードの制御方法において、
前記プラグインカードに備えられるメモリのエラー率に基づいて前記プラグインカードの信頼性指標値を算出し、
算出した前記信頼性指標値が規定値に近づくように、前記プラグインカードに備えられるエラー訂正回路を動作させるかどうかを決定する、
ことを特徴とするプラグインカードの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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