説明

プラジカンテル、マクロライドラクトン、シクロデキストリンおよび粘稠化剤を含む駆虫ペースト

本発明は、それぞれ動物用医薬品として有効量のプラジカンテルおよび(アベルメクチン、ミルベマイシンおよびこれらの誘導体から選択された)大環状ラクトン;シクロデキストリン;粘稠化剤;ならびに水を含む水性懸濁液の形の駆虫ペーストに関する。本発明の懸濁製剤は、コンパニオン動物などの温血動物において内部寄生虫を防除するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温血動物、特にネコやイヌなどのコンパニオン動物における内部寄生虫寄生の防除および処置のための新規な経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラジカンテル、大環状ラクトンまたはこれらの組合せが、温血動物における蠕虫類の防除および処置で使用されることが多い。こうした活性成分は、例えば水薬もしくは注射によって適用してよく、または好ましくは経口適用、例えば散剤または錠剤の形で適用してよい。しかし、散剤または顆粒の取扱いは一般に煩雑であり、錠剤は、イヌまたは特にネコなどの動物が自発的に服用する傾向にはないので問題を生じることが多い。
【0003】
米国特許第5,824,653号には、ウマに経口適用するためのプラジカンテルおよびアバメクチンを含む殺寄生虫ペーストが開示されている。このペーストは水中油性エマルション剤であり、アバメクチンが製造過程中に溶解している。このペーストは、ウマの治療において受け入れられることがあるが、より小型の動物への適用は、例えば不十分な投薬能力、ペースト安定性および嗜好性により不適切である。
【0004】
例えば、適切な嗜好性は、ネコまたはイヌへの経口薬適用に重要である。ヒトにおいては、医薬品を比較的容易に投与することができる。というのは、ヒト患者における自制および回復したいという願望に頼ることができるからである。しかし、イヌ、特にネコは、医薬活性成分が、苦いからであろうとまたは何らかの他の不快な味がするからであろうと動物にとって不快な味がする、または動物にとって単に異質である味がするとすぐに、経口服用することを拒絶する。プラジカンテルは、この点において、この不快な臭いおよび苦味のため非常に問題である。
【0005】
さらに、イヌおよびネコに対する動物用組成物には、ペットの飼い主によって家庭でも使用されるべきものがある。これには、一方で十分なペースト安定性が必要であり、さらに組成物が正確に少量ずつ投与される能力も必要である。周知の水中油性エマルション剤は、絶えず相分離の問題に直面しており、したがってこの安定性の低さのため、家庭で使用するには不都合である。さらに、プラジカンテルおよびアバメクチンなどの大環状ラクトンも、投与量の安全域が比較的低く、正確な投薬の重要性が強調される。
【0006】
したがって、米国特許第7,144,878号には、同様の経口用組成物においてプラジカンテルをピランテルまたはモランテルで代用することが提案されているが、プラジカンテルが駆虫活性範囲に関して好ましい活性成分であることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,824,653号明細書
【特許文献2】米国特許第7,144,878号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明内で解決しようとする課題は、したがって、ネコおよびイヌのようなコンパニオン動物において使用するための、上記の欠点を克服する新規な改良駆虫活性ペースト製剤を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題は、活性成分の水性懸濁液を、シクロデキストリンを含むペーストの形で提供することによって解決される。前記新規なペーストは、一般に有機溶媒の含有量が低く、または有機溶媒を含まないことさえある。
【0010】
本発明は、したがって一実施形態において、動物用医薬品として有効量のプラジカンテル;動物用医薬品として有効量の大環状ラクトン(アベルメクチン、ミルベマイシンおよびこれらの誘導体から選択される。);シクロデキストリン;粘稠化剤;および水を含む水性懸濁液の形の駆虫ペーストに関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の水性懸濁液の第1の活性成分は、プラジカンテル、別名2−(シクロヘキシルカルボニル)−1,2,3,6,7,11b−ヘキサヒドロ−4H−ピラジノ[2,1−a]イソキノリン−4−オンであり、以下の構造を有する。
【0012】
【化1】

【0013】
この化合物は、ラセミ体の形またはこの異性体である(s)−異性体もしくは左旋性−(r)−異性体のうちの一方の形で使用することができる。
【0014】
プラジカンテルが製剤全体に対して0.5から20重量%、好ましくは0.5から15重量%、より好ましくは1.0から10.0重量%、特に2.0から7.5重量%の量で存在する本発明の駆虫製剤を使用することは有益である。
【0015】
本発明の水性懸濁液は、動物用医薬品として有効量の第2の活性成分を含み、これは、アベルメクチン、ミルベマイシンおよびこれらの誘導体から選択された大環状ラクトンである。
【0016】
大環状ラクトン化合物は限定されるものではないが、例えば、遊離の形または生理学的に許容される塩の形の、イベルメクチン、ドラメクチン、モキシデクチン、セラメクチン、エマメクチン、エプリノメクチン、ミルベマイシン、アバメクチン、ミルベマイシンオキシム、ネマデクチンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0017】
本発明の文脈において、大環状ラクトンの好ましい一群は、遊離の形または生理学的に許容される塩の形の、式
【0018】
【化2】

[式中、Xは、−C(H)(OH)−;−C(O)−;または−C(=N−OH)−であり;Yは、−C(H)−;=C(H)−;−C(H)(OH)−;または−C(=N−OCH)−であり;Rは、水素、または基
【0019】
【化3】

のうちの1つであり;Rは、ヒドロキシル、−NH−CHまたは−NH−OCHであり;Rは、水素、−CH、−C、−CH(CH、−CH(CH)−C、−C(CH)=CH−CH(CHまたはシクロヘキシルであり;原子22と原子23の間の結合が二重結合を表す場合、23位の炭素原子は非置換であり、したがってYは、=C(H)−であり、または原子22と原子23の間の結合が単結合である場合、23位の炭素原子は非置換であるまたはヒドロキシもしくは=N−O−CH基で置換されており、したがってYは、−C(H)−;−C(H)(OH)−;または−C(=N−OCH)−である。]の化合物で表される。
【0020】
式(2)の化合物の典型的で特に好ましい代表物は下記である。
【0021】
1)イベルメクチンは、22,23−ジヒドロアバメクチン;22,23−ジヒドロアベルメクチンB 1;または22,23−ジヒドロC−076B 1であり、式中、Xは−C(H)(OH)−であり;Yは、−C(H)−であり;Rは、下記の基であり、
【0022】
【化4】

は、−CH(CH)−CHまたは−CH(CH)−Cであり、原子22と原子23の間の結合は、単結合を表す。イベルメクチンは、US−4,199,569から周知である。
【0023】
2)ドラメクチンは、25−シクロヘキシル−5−O−デメチル−25−デ(1−メチルプロピル)アベルメクチンA 1aであり、式中、Xは、−C(H)(OH)−であり;Yは、=C(H)−であり;Rは、下記の基であり、
【0024】
【化5】

は、シクロヘキシルであり、原子22と原子23の間の結合は、二重結合を表す。ドラメクチンは、US−5,089,480から周知である。
【0025】
3)モキシデクチンは、[6R,23E,25S(E)]−5−O−デメチル−28−デオキシ−25−(1,3−ジメチル−1−ブテニル)−6,28−エポキシ−23−(メトキシイミノ)ミルベマイシンBであり、式中、Xは、−C(H)(OH)−であり;Yは、−C(=N−OCH)−であり;Rは、水素であり;Rは、−C(CH)=CH−CH(CHであり;原子22と原子23の間の結合は、単結合を表す。モキシデクチンは、EP−0,237,339およびUS−4,916,154から周知である。
【0026】
4)セラメクチンは、25−シクロヘキシル−25−デ(1−メチルプロピル)−5−デオキシ−22,23−ジヒドロ−5−(ヒドロキシイミノ)アベルメクチンB1単糖であり、したがって式(2)の化合物であり、式中、Xは、−C(=N−OH)−であり;Yは、−C(H)−;Rは、下記の基であり、
【0027】
【化6】

は、シクロヘキシルであり;原子22と原子23の間の結合は、単結合を表す。セラメクチンは、例えば「ECTOPARASITE ACTIVITY OF SELAMECTIN;A novel endectocide for dogs and cats」(1999年8月19日、デンマークのコペンハーゲンにおいて、The 17th international Conference of the World Association for the Advancement of Veterinary Parasitologyと共に開催されたPfizer Symposium)から周知である。
【0028】
5)エマメクチンは、(4’’R)−5−O−デメチル−4’’デオキシ−4’’−(メチルアミノ)アベルメクチンA 1aおよび(4’’R)−5−O−デメチル−25−デ(1−メチルプロピル)−4’’−デオキシ−4’’−(メチルアミノ)−25−(1−メチルエチル)アベルメクチンA 1a(9:1)であり、式中、Xは、−C(H)(OH)−であり;Yは、=C(H)−であり;Rは、下記であり、
【0029】
【化7】

は、−CH(CH)−CHまたは−CH(CH)−Cであり、原子22と原子23の間の結合は、二重結合を表す。エマメクチンは、US−4,874,749から周知である。
【0030】
6)エプリノメクチンは、(4’’R)−4’’−エピ−(アセチルアミノ)−4’’−デオキシアベルメクチンB 1であり、式中、Xは、−C(H)(OH)−;Yは、=C(H)−であり;Rは、下記の基であり、
【0031】
【化8】

は、−CH(CH)−CHまたは−CH(CH)−Cであり、原子22と原子23の間の結合は、二重結合を表す。エプリノメクチンは、US−4,427,663から周知である。
【0032】
7)ミルベマイシンは、(6R,25R)−5−O−デメチル−28−デオキシ−6,28−エポキシ−25−メチルミルベマイシンであり、式中、Xは、−C(H)(OH)−であり;Yは、−C(H)−であり;Rは、水素であり;Rは、−CHまたは−Cであり;原子22と原子23の間の結合は、単結合を表す。ミルベマイシンは、US−3,950,360から周知である。
【0033】
8)アバメクチンは、アベルメクチンB 1であり、5−O−デメチルアベルメクチンA 1aおよび5−O−デメチル−25−デ(1−メチルプロピル)−25−(1−メチルエチル)アベルメクチンA 1a(4:1)とも呼ばれ、式中、Xは、−C(H)(OH)−であり;Yは、=C(H)−であり;Rは、下記の基であり、
【0034】
【化9】

は、−CH(CH)−CHまたは−CH(CH)−Cであり、原子22と原子23の間の結合は、二重結合を表す。アバメクチンは、US−4,310,519から周知である。
【0035】
9)ミルベマイシンオキシムは、式(2)の化合物であり、式中、Xは、−C(=N−OH)−であり;Yは、−C(H)−であり;Rは、水素であり;Rは、−Cまたは−CHであり、原子22と原子23の間の結合は、単結合を表す。ミルベマイシンオキシムは、US−4,547,520から周知である。
【0036】
10)式(2)の化合物、式中、Xは、−C(H)(OH)−であり;Yは、−C(H)−であり;Rは、下記の基であり、
【0037】
【化10】

は、−CHまたはCであり、原子22と原子23の間の結合は、単結合を表す。この化合物は、WO 01/83500から周知である。
【0038】
11)ネマデクチンは、抗生物質S−541Aであり、[6R,23S,25S,(E)]−5−O−デメチル−28−デオキシ−25−(1,3−ジメチル−1−ブテニル)−6,28−エポキシ−23−ヒドロキシミルベマイシンBとも呼ばれ、式中、Xは、=CH−OHであり;Yは、−C(H)−であり;Rは、水素であり;Rは、−C(CH)=CH−CH(CHであり、原子22と原子23の間の結合は、単結合を表す。ネマデクチンは、US−4,869,901から周知である。
【0039】
上記の式(2)のアベルメクチン、ミルベマイシンおよびミルベマイシンオキシムは、R基を除いて同一である2つの化合物の混合物として使用されることが多い。例えば、イベルメクチンは、上述されたように2つの化合物の混合物であり、多い方の化合物のR基はsec−ブチルであり、他方の化合物のR基はイソプロピルである。sec−ブチル化合物とイソプロピル化合物の比は、例えば約80:20である。同様に、ミルベマイシンオキシムは、上記の2つの化合物の混合物であり、多い方の化合物のR基はエチルであり、他方の化合物のR基はメチルである。エチル化合物とメチル化合物の比は、例えば約80:20である。本発明の製剤内の最も好ましい大環状ラクトンは、イベルメクチンまたは特にミルベマイシンオキシムである。
【0040】
大環状ラクトンは、本発明の駆虫製剤中に、製剤全体に対して例えば0.1から10重量%、好ましくは0.1から8重量%、より好ましくは0.5から5.0重量%、特に1.0から2.5重量%の量で存在する。
【0041】
本発明に従って使用するためのシクロデキストリンとしては、例えば6から12個のグルコース単位を有する非置換または置換シクロデキストリン、例えばα−、β−およびγ−シクロデキストリンならびにこれらの誘導体が挙げられる。好適なシクロデキストリン誘導体は、例えばC−C−アルキルおよびヒドロキシル−C−C−アルキル誘導体、例えばヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはヒドロキシエチル−β−シクロデキストリンである。好ましい実施形態において、シクロデキストリンは、β−シクロデキストリンまたはこの誘導体、特に天然β−シクロデキストリンである。シクロデキストリンは、非晶質でも、結晶質でもよい。
【0042】
本発明の製剤中のシクロデキストリンの濃度は、例えば活性成分の濃度に応じて幅広い範囲内で変わることがある。一般に、シクロデキストリンは、本発明の製剤中に、製剤全体に対して例えば0.5から40重量%、好ましくは1.0から20重量%、より好ましくは1.5から10重量%、特に2.0から7.5重量%の量で存在する。
【0043】
本発明の製剤で有用である好適な粘稠化剤としては、原則として、動物における経口適用に許容されるすべての粘稠化剤が挙げられる。好適な粘稠化剤の例は、カラギーン、キサンタンガム、ポリビニルピロリドン、カルボマー(B.F.Goodrich)、コーンスターチ、オートミール粉、微結晶セルロース(Avicel)、ヒドロキシエチルセルロース、食用粘土、二酸化ケイ素またはこれらの組合せである。好ましい粘稠化剤は、キサンタンガム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、またはこれらのうちの2つもしくは3つの混合物である。特定の好ましい粘稠化剤は、キサンタンガムまたはキサンタンガムおよびポリビニルピロリドンの混合物またはキサンタンガム、ポリビニルピロリドンおよび微結晶セルロースの混合物である。
【0044】
粘稠化剤は、本発明の製剤中に、製剤全体に対して例えば0.1から10重量%、好ましくは0.5から7.5重量%、特に1から5重量%の量で存在する。
【0045】
さらに、本発明の水性駆虫懸濁液は、動物用医薬品として許容される材料、例えば保湿剤、保存剤、pH調整剤、着色剤、矯味剤、結合剤、充填剤または分散化剤をさらに含有してよい。前記動物用医薬品として許容される材料は、動物用医薬品製剤技術の技術者に周知である。好ましい保湿剤にはグリセロールがある。本発明の組成物内の好適な矯味剤は、例えば人工のビーフフレーバー、または乾燥肝末、麦芽抽出物もしくは魚粉などの食物抽出物である。有用な保存剤は、例えばベンジルアルコール、安息香酸もしくは安息香酸ナトリウムなどの安息香酸塩またはこれらの混合物である。好適なpH調整剤は、例えば塩基、または特に酸である。経口的に許容される着色剤の例は、二酸化チタンまたは酸化鉄(赤)である。
【0046】
本発明の駆虫製剤は、プラジカンテルおよび/または大環状ラクトンを溶解するいずれの有機溶媒も含まれていない水性懸濁液である。特に、本発明の製剤には、(i)油などの滑沢剤、例えば植物油、鉱油、またはMiglyol(登録商標)ブランド、例えばプロピレングリコールジカプリラート/ジカプラート(Miglyol(登録商標)840);(ii)ポリグリコール、例えばポリエチレンまたはポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルもしくはモノエチルエーテルまたはジエチレングリコールモノメチルエーテルもしくはモノエチルエーテル;またはグリセロールホルマールなどの溶媒;および(iii)ラウリル硫酸またはポリソルベート80などの界面活性剤が含まれていない。本発明のペースト製剤の含水率は、いずれの場合にも製剤全体の重量を基準にして例えば≧30重量%、好ましくは≧50重量%、特に≧60重量%である。
【0047】
本発明による駆虫懸濁製剤の好ましい実施形態は以下の通りである。
(1)0.5から20重量%のプラジカンテル;
0.1から8重量%の大環状ラクトン(ただし上記の意味および優先度が適用される。);
0.5から40重量%のシクロデキストリン;
0.1から10重量%の粘稠化剤;および
全量100重量%に調整する水
を含むペーストの形の水性懸濁製剤;
(2)1.0から10重量%のプラジカンテル;
0.5から5重量%の大環状ラクトン(ただし上記の意味および優先度が適用される。);
1.0から20重量%のシクロデキストリン;
0.5から7.5重量%の粘稠化剤;および
全量100重量%に調整する水
を含むペーストの形の水性懸濁製剤;
(3)2.0から7.5重量%のプラジカンテル;
1.0から2.5重量%の大環状ラクトン(ただし上記の意味および優先度が適用される。);
2.0から7.5重量%のシクロデキストリン;
1.0から5.0重量%の粘稠化剤;および
全量100重量%に調整する水
を含むペーストの形の水性懸濁製剤;
(4)大環状ラクトンがミルベマイシンオキシムである上記水性懸濁製剤(1)、(2)または(3)の各々;
(5)シクロデキストリンがβ−シクロデキストリンまたはこの誘導体である上記水性懸濁製剤(1)、(2)、(3)または(4)の各々;
(6)含水率が製剤全体に対して≧50重量%、または好ましくは≧60重量%である上記水性懸濁製剤(1)から(5)の各々;
(7)保湿剤、保存剤、pH調整剤、着色剤および矯味剤からなる群から選択された1つ以上の追加の成分を含む上記水性懸濁製剤(1)から(6)の各々;
(8)(1)1.0から10重量%のプラジカンテル;
0.5から5重量%のミルベマイシンオキシム;
1.0から20重量%のシクロデキストリン;
0.5から7.5重量%の粘稠化剤;
1.0から10重量%の保湿剤;
0.5から5重量%の保存剤;
2.5から20重量%の矯味剤;
0から5.0重量%の着色剤;ならびに
全量100重量%に調整する水および酸
からなるペーストの形の水性懸濁製剤。
【0048】
本発明の懸濁製剤は、懸濁技術の分野においてそれ自体が周知である方法で調製することができる。一般的な原則として、水を準備し、この中に、好ましくはワンポットプロセスで各成分を連続して添加し、分散する。水に添加する成分の順序は、原理的には重要でない。しかし、最初にシクロデキストリンを水に添加すること、ならびに撹拌しながらこれを水に分散および/または部分溶解することが有利であるとわかった。
【0049】
したがって、本発明の懸濁製剤の好適な製造方法は、
(i)水、および場合によって、水に可溶な別の材料(pH調整剤、保存剤または保湿剤など)を準備するステップ、
(ii)シクロデキストリンを添加し、これを水に分散および/または部分溶解するステップ、
(iii)プラジカンテルを添加し、これを水/シクロデキストリン混合物中に分散するステップ、
(iv)大環状ラクトン、場合による別の材料および粘稠化剤を連続して分散するステップ、ならびに
(v)分散液を、均質なペーストが生成しない限り撹拌するステップ
を含む。
【0050】
ステップ(i)において別の材料が水中に存在する場合に、前記材料の水中での可溶化を促進するために、水を、例えば室温を超えて約80℃までの温度に加熱すること、および/または水のpH値を、例えば酸の添加によって例えば1.5から6、好ましくは2から5の値に下げることが望ましいことがある。シクロデキストリンを添加し、その後プラジカンテルを添加し、それぞれ添加した後に撹拌をしばらく、例えば15分間から1時間継続した後、ペースト材料の残りを添加する。プラジカンテルとシクロデキストリンの重量比は、約1:1から1:6、好ましくは約1:1から1:5、特に約1:1から1:2となるように選択されるのが好ましい。上記に述べたように、別の成分の添加順序は重要でない。例えば、大環状ラクトンを添加し、続いて着色剤、矯味剤などのような追加の成分を場合によって添加し、粘稠化剤を添加して、ペーストの粘度および比重を最終的に所望の値に調整する。
【0051】
本発明のペーストの好適な比重は、例えば約1.05から1.15、好ましくは約1.07から1.12、特に1.08から1.10である。最終懸濁ペーストのpH値は、好ましくは3から7までの間、好ましくは4から5.5であり、好適な塩基または酸の添加によって調整することができる。ペースト製剤の粘度は、一方では沈殿が妨げられ、他方では容易な適用性および正確な投薬が維持されるように調整されるのが好ましい。
【0052】
本発明のペースト組成物は、好ましくはチキソトロピー性であり、これは、その粘度が、加えられるせん断応力の増加につれて低下することを意味する。本発明のペーストのチキソトロピー特性は、特にペーストをピペットによって適用する際の投薬を容易にする。
【0053】
本発明の水性懸濁ペーストは、例えばコンパニオン動物などの温血動物、特にイヌまたは特にネコにおいて病原性内部寄生虫を防除するのに適している。これらのペーストは、温血種にとって好ましい毒性を示す。これらは、これらの有害生物のすべてまたは個々の発生段階に対して有効である。病原性内部寄生虫としては、条虫、吸虫、線虫および鉤頭虫が挙げられる。
【0054】
本発明の水性懸濁製剤は、好ましくはピペットによって動物に適用される。ピペットによって、例えば正確な投薬という利点がもたらされる。必要とされる正確な用量のペーストをピペットに充填し、ペーストを直接口中に適用することによって、動物が正確な用量を服用していることが確実になる。特に家庭で使用するためにピペットによって本発明の懸濁ペーストを使用する必要条件は、これらのペーストの優れた安定性および貯蔵寿命である。これらを調製した後、長期間経過した後でさえ、顕著な相分離、不均質性または比重などの物理的パラメータの変化は検出されない。
【0055】
さらに、本発明の水性懸濁ペーストは、改良された嗜好性を有し、これによって、医薬組成物の温血動物、特にイヌまたは特にネコによる自発的な受容または摂取が実現される。
【0056】
ネコについての好適な受容試験を、以下の通り実施することができる。試験実施全体にわたって、すべての被検経口用ペースト製剤を1mlずつ以下の通り投与する。最初に、少量のペーストを動物の唇/鼻に適用し、受容を以下の通り評価する:高い受容(3ポイント)は、ネコが自発的にペーストを舐め、嚥下し、ピペットを口内に挿入することなく、全用量が投与された場合に達する。十分な受容(2ポイント)は、ペーストが自発的に舐められず、ピペットをネコの口に挿入しなければならないが、その用量が全部投与された場合に達する。投与中および投与後に、ネコが頭部を振り、噛みつくことがあってもよいが、投与後5分間を超える唾液分泌過多も嘔吐も許容されない。不十分な受容(1ポイント)について、基準は十分な受容と同じであるが、唾液分泌過多および/または興奮が観察されることがあってもよく、ペースト適用後5分以内に嘔吐が生じうる。最悪の評価である受容不可(0ポイント)は、頭部を引込めるまたは掻こうとするなどの出来事のため、その用量が全く投与されない場合、または口中への挿入後にペーストが全部拒絶される場合に与えられる。これには、唾液分泌過多および嘔吐も伴うことがある。
【0057】
下記の例によって、本発明を例示する。
【実施例1】
【0058】
以下の材料:
量(w/v%)
プラジカンテル 2.5%
ミルベマイシンオキシム 1.0%
β−シクロデキストリン 2.5%
ポリビニルピロリドンK30 1.0%
安息香酸ナトリウム 0.4%
ベンジルアルコール 1.0%
人工のビーフフレーバー 10.0%
二酸化チタン 2.0%
グリセロール(水を含まない) 5.0%
キサンタンガム 1.0%
0.01M HCl 全量が100.0%となる量
を有する、経口適用される均質な水性懸濁ペーストを以下の方法で調製する。
(i)安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコールおよびグリセロールを0.01M塩酸溶液に溶解する;
(ii)β−シクロデキストリンおよびポリビニルピロリドンK30の添加および溶解/分散に続いて、プラジカンテルを添加し、均質に分散する;
(iii)ミルベマイシンオキシム、人工のビーフフレーバーおよび二酸化チタンを添加し、分散した後、最後にキサンタンガムを添加し、分散して、均質な水性懸濁ペーストを得る。最終ペーストの比重は、1.0814g/mlである。
【実施例2】
【0059】
以下の材料:
量(w/v%)
プラジカンテル 5.0%
ミルベマイシンオキシム 2.0%
β−シクロデキストリン 5.0%
ポリビニルピロリドンK30 1.0%
安息香酸ナトリウム 0.5%
ベンジルアルコール 1.25%
人工のビーフフレーバー 10.0%
グリセロール(水を含まない) 5.0%
キサンタンガム 1.0%
0.01M HCl 全量が100.0%となる量
を有する、経口適用される均質な水性懸濁ペーストを実施例1に記載した方法を用いて調製する(比重1.0844g/ml)。
【実施例3】
【0060】
ペースト安定性試験
実施例2のペースト組成物をガラス容器中、異なる温度で12カ月まで貯蔵し、両活性成分のアッセイ、続いてHPLC分析を所与の時点(3カ月、6カ月および12カ月)で行った。下記の表1は、組成物中のプラジカンテルおよびミルベマイシンオキシムについて、開始値(=製造直後のアッセイ)に対してそれぞれの含有量を%で示す。
【0061】
【表1】

【0062】
上記の表に記載された結果は、両方の活性成分が、所与の製剤中、所与の条件下で化学的に安定であることを示している。
【0063】
両方の活性成分の化学安定性以外に、ペーストは、貯蔵中、肉眼で見える沈殿または分離を全く示さず、ペースト製剤のpH値は、すべての調査温度およびすべての時点でも安定であった。
【実施例4】
【0064】
ネコにおけるペースト受容試験
様々な性別および品種の健常ネコ約90匹(糸状虫検査で陰性、6カ月齢以上、体重≧1および≦22ポンド)が、試験に含まれた。
【0065】
試験材料は、体重7ポンド未満のネコに対する実施例1の経口用ペースト製剤および7ポンドから22ポンドのネコに対する実施例2の経口用ペーストからなった。両製剤とも、1回にミルベマイシンオキシム2mg/kgおよびプラジカンテル5mg/kgを与えた。試験0日目および21日目に、各々のネコに、これらの所有者/代理人が家庭で、試験0日目に獣医クリニックで調製された予め充填されたシリンジによってペーストを経口投与した。シリンジは、家庭で貯蔵するために小児誤飲防止エンベロープに包装された。ネコに錠剤を投与することと比べて、ペーストを投与することに対するネコ所有者の応答を評価するために、対照としてPet Tab(登録商標)(ビタミン−ミネラルサプリメント)の1/4を丸剤投薬器によって試験27日目±2日に投与した。ネコによる受容性および所有者による投与を、所有者/代理人の日誌について所有者/代理人から提供された応答の分析によって評価した。この日誌は、各々の試験材料の投与後に完了した。
【0066】
受容性エンドポイントが、評価される唯一の変数であった。これは、ネコの行動に基づいて評価された。所有者は、ペーストまたは対照製品をそれぞれ投与した後、ペット所有者の日誌に応答を記録し、最後に投薬した後、所有者フォローアップアンケートに記入した。
【0067】
ペースト対錠剤について、各々の受容スコアの頻度および%を表2−4に記載する。
【0068】
【表2】

【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
64%を超えるネコが、ペーストを全部受容したが、よく使用される錠剤を全部受容したのは50%のネコだけであった。
【0072】
投薬に対する所有者の応答;ペーストと錠剤の比較:
ペーストおよび錠剤について、投与の容易さの各々のスコアの%を表5に記載する。71%を超える所有者が、ペーストを投与するのはかなり容易であるまたは非常に容易であると感じたが、錠剤を投与するのがかなり容易であるまたは非常に容易であると感じたのは、47%の所有者だけであった。
【0073】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物用医薬品として有効量のプラジカンテル;
アベルメクチン、ミルベマイシンおよびこれらの誘導体から選択された大環状ラクトン;
シクロデキストリン;
粘稠化剤;および

を含む水性懸濁液の形の駆虫ペースト。
【請求項2】
大環状ラクトンが、遊離の形または生理学的に許容される塩の形の、式
【化1】

[式中、Xは、−C(H)(OH)−;−C(O)−;または−C(=N−OH)−であり;Yは、−C(H)−;=C(H)−;−C(H)(OH)−;または−C(=N−OCH)−であり;Rは、水素、または基
【化2】

のうちの1つであり;Rは、ヒドロキシル、−NH−CHまたは−NH−OCHであり;ならびにRは、水素、−CH、−C、−CH(CH、−CH(CH)−C、−C(CH)=CH−CH(CHまたはシクロヘキシルであり;原子22と原子23の間の結合が二重結合を表す場合、23位の炭素原子は非置換であり、したがってYは、=C(H)−であり、または原子22と原子23の間の結合が単結合である場合、23位の炭素原子は非置換であるまたはヒドロキシもしくは=N−O−CH基で置換されており、したがってYは、−C(H)−;−C(H)(OH)−;または−C(=N−OCH)−である。]
の大環状ラクトンである、請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
大環状ラクトンが、イベルメクチンまたはミルベマイシンオキシム、特にミルベマイシンオキシムである、請求項1または2に記載のペースト。
【請求項4】
0.5から20重量%のプラジカンテル;
0.1から8重量%の大環状ラクトン;
0.5から40重量%のシクロデキストリン;
0.1から10重量%の粘稠化剤;および
全量100重量%に調整する水
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項5】
2.0から7.5重量%のプラジカンテル;
1.0から2.5重量%の大環状ラクトン;
2.0から7.5重量%のシクロデキストリン;
1.0から5.0重量%の粘稠化剤;および
全量100重量%に調整する水
を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項6】
大環状ラクトンがミルベマイシンオキシムである、請求項4または5に記載のペースト。
【請求項7】
保湿剤、保存剤、pH調整剤、着色剤および矯味剤からなる群から選択された1つ以上の追加の成分を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項8】
製剤全体に対して≧50重量%、好ましくは≧60重量%の含水率を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項9】
油、ポリグリコール、グリコールエーテル、グリセロールホルマールおよび界面活性剤を含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項10】
1.0から10重量%のプラジカンテル;
0.5から5重量%のミルベマイシンオキシム;
1.0から20重量%のシクロデキストリン;
0.5から7.5重量%の粘稠化剤;
1.0から10重量%の保湿剤;
0.5から5重量%の保存剤;
2.5から20重量%の矯味剤;
0から5.0重量%の着色剤;ならびに
全量100重量%に調整する水および酸
からなる、請求項2に記載のペースト。
【請求項11】
1.05から1.15の比重を有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項12】
チキソトロピー性であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のペースト。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の駆虫ペーストの製造方法であって、
(i)水、および場合によって、水溶性の別の材料を準備するステップ、
(ii)シクロデキストリンを添加し、これを水に分散および/または部分溶解するステップ、
(iii)プラジカンテルを添加し、これを水/シクロデキストリン混合物中に分散するステップ、
(iv)大環状ラクトン、場合による別の材料および粘稠化剤を連続して分散するステップ、ならびに
(v)分散液を、均質なペーストが生成しない限り撹拌するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の駆虫ペーストをイヌまたはネコに経口投与することを含む、温血動物、特にイヌまたは特にネコにおいて内部寄生虫を防除する方法。
【請求項15】
温血動物、特にイヌおよびネコにおける内部寄生虫の処置のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の駆虫ペーストの使用。
【請求項16】
温血動物、特にイヌおよびネコにおいて内部寄生虫を防除するための医薬品の調製における、請求項1から12のいずれか一項に記載の駆虫ペーストの使用。

【公表番号】特表2011−503140(P2011−503140A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533558(P2010−533558)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065335
【国際公開番号】WO2009/062939
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】