説明

プラスチック、特に立体障害エステル化アミン含有ポリウレタン

立体障害エステル化アミン(I)を含むプラスチックであって、アミン(I)が、(I)の質量に対して100ppm未満のチタンを含んでいることを特徴とするプラスチック。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、例えば架橋化プラスチック又は熱可塑性プラスチックに関し、プラスチックとして、例えば、PE、PP、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリカーボネート、PET及びPBT等のポリエステル、ポリアミド、ポリアクリレート、特にポリウレタン(例えば、一般に公知の圧縮(compact)、軟質又は硬質のポリウレタン、特に好ましくは立体障害エステル化アミン(I)含有ポリウレタン熱可塑性ポリウレタンで、チタンを(I)に対して100ppm未満、好ましくは30ppm未満、特に0〜5ppm含有するものに関する。プラスチックは、チタンを(I)に対して100ppm未満、好ましくは30ppm未満、特に0〜5ppm含有していることが好ましい。さらに、本発明は、特に(a)イソシアネートと(b)イソシアネートと反応性の化合物との一般に公知の反応による、立体障害エステル化アミン(I)含有ポリウレタンの製造方法で、且つチタンを(I)に対して100ppm未満、好ましくは30ppm未満、特に0〜5ppm含有する立体障害エステル化アミン(I)を製造中に添加、例えば(I)をポリウレタン製造用の出発成分に添加するか、或いは製造後に添加する工程を有する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレン及びスチレン共重合体は、日常生活の多くに分野で使用されている。これらの用途の例としては、フィルム及び繊維、自動車の内部部分(内装部分)、例えば室内装飾又は被覆材料、ダッシュボード又はエアバッグ、或いは自動車の外部部分において、タイヤ、バンパ又は保護ストリップ、そしてケーブル・シース、ハウジング、靴底、分散媒(dispersions)、仕上げ剤又は表面コーティングを挙げることができる。
【0003】
熱可塑性プラスチックは、加工する典型的な温度範囲、及び材料使用する典型的な温度範囲で、加熱と冷却を繰り返した場合、可塑性を保持するプラスチックである。熱可塑性プラスチックは、その典型的な温度範囲での加熱下で何回でも軟化し、そして冷却時に硬くなり、そして軟化時には流動させることにより何回でも成形物、押出物又は熱形成部分のとして成形して、中間生成物又は最終生成物(製品)を作製することができることを意味する理解される。熱可塑性プラスチックは、工業的に広く使用されており、シート、フィルム、成形品、瓶、シース、包装等の形で存在している。
【0004】
これらの異なる用途において、プラスチックは極めて広い範囲の要求に応ずることができる。例えば、自動車のエンジン・スペースに使用されるプラスチックは、高温に耐えることが必要である。一方、日光に曝されるプラスチックフィルム又は仕上げ被膜は、UV光及び熱負荷の有害な影響を蒙るので、生成物の劣化、或いはプラスチックの特性の低下をもたらす。これは、生成物の外観も損なう。さらに、生成物の機械的性質は、生成物がもう波や所望のレベルで使用することができない程度に、顕著に低下する場合がある。
【0005】
これらの異なる化学組成のため、プラスチックは、UV光及び熱負荷に対しても、或いは一般の環境作用による損傷に対しても異なる安定性を示す。にもかかわらず、全てのプラスチックの使用範囲をできる限り広くすること、即ち、環境に起因する損傷、例えば熱、日光又はUV光による損傷に対するプラスチックの安定性を向上させることが望まれている。
【0006】
プラスチックの安定剤による保護は、一般的な従来技術の重要部分である。例えば、プラスチックは、酸化防止剤(AO)とヒンダードアミン光安定剤(HALS)との混合物、或いはUV吸収剤とフェノール系酸化防止剤との混合物、或いはフェノール系酸化防止剤、HALS及びUV吸収剤の混合物によって、UV損傷から保護することができる。安定化添加剤の添加によるプラスチックの実質的な性質の改善のために、混乱するほど多数の異種の安定剤及び安定剤の組合せが、今や市販されている。このような化合物の例は、非特許文献1(Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 98-136頁)に記載されている。
【0007】
安定剤の1つの問題は、その移動的性質、即ち、揮発性、及び曇らせる傾向、浸出傾向及び洗浄脱色傾向である。例えば、安定剤のモル質量が余りにも低いとプラスチックから蒸発し、その後は保護されなくなり、このため環境の影響(例、高温又は熱)により損傷することが分かっている。これは、特に表面/容積比が極めて大きい場合に、該当する問題となる。特別な用途、例えば自動車の内部部分において、安定剤の蒸発、即ち、曇りが、蒸発成分の合計量が超過してプラスチックが受け入れなくなった場合に、末端ユーザにおいて起こり得る。蒸発を避けるために、安定剤は、通常、オリゴマーにされたり、ポリマー化されたり、有機アンカー基に結合させたりして、モル質量を増加させる。本発明における有機アンカー基は、安定剤のモル質量を増加させる有機基である。1種以上の安定剤をこのようなアンカー基に結合させることができる。
【0008】
しかしながら、モル質量を増加させることにより、安定剤とポリマーとの相溶性が低下し、曇り(blooming)、即ち生成物の表面に安定剤の堆積(析出)生成が起こる。これらの堆積により、生成物の外観が損なわれ、このため、苦情が発生する。さらに、安定剤の濃度、及び従って安定剤混合物の有効性が、曇りによって低減する。特に、表面/容積比が低い厚いワークピースの場合、曇りが該当する問題となる。
【0009】
安定剤とポリマーとの非相溶性及びこれによる安定剤の曇りのリスクは、安定剤とポリマーの組合せに大きく依存しており、予測不可能である。時折、あるポリマーで問題なく使用できある安定剤が、別のポリマーではかなりの曇りをもたらすことがある。結果として、異種のプラスチックを製造する場合、場合によっては同じ活性基を有する大量の異種の安定剤を在庫しなくてはならないばかりか、各ポリマーに対して移動的性質を新規に調査しなければならないので、最適な安定剤の発見は極めてコストがかかることとなる。
【0010】
ポリウレタン、特に熱可塑性ポリウレタン(以下TPUと呼ぶ)は、多くの用途、例えば、靴、フィルム、スキーブーツ、ホース、計器パネル、シール(充填材)、ヒールパッチ、装飾及び設計素子、スキー−カバーフィルム、交通標識の保護フィルム等に使用されるエラストマーである。これらの用途の多くの場合、TPUは直接又は間接にUV光に曝される。このため、UV安定剤又はUV安定剤混合物によるTPUの保護は、従来技術の重要部分に相当する。例えば、酸化防止剤、特にフェノール系酸化防止剤を使用することができる。フェノール系酸化防止剤は、非特許文献2(Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 98-107頁及び116-121頁)に記載されている。さらに、UV吸収剤もTPUを保護するために使用することができる。UV吸収剤は、高エネルギーUV光を吸収し、エネルギーを消散する分子である。工業的に使用される従来のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアノアクリレート、ジアリールブタジエン及びベンゾトリアゾールからなるグループに属している。ベンゾトリアゾールは特に好適である。
【0011】
別の種類のUV安定剤としては、立体障害アミン(ヒンダードアミン光安定剤(HALS)としても知られている)が挙げられる。HALSの活性度は、ニトロキシルラジカルの形成能力に基づいている。このニトロキシルラジカルは、ポリマーの酸化のメカニズムにおいて干渉する。HALSは、ほとんどのポリマーに対して有効なUV安定剤あると考えられ、従ってポリウレタンに対しても同様である。ヒンダードアミン光安定剤の例は、非特許文献3(Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 123-136頁)に記載されている。それの低い揮発性及びそれのTPUとの良好な相溶性のために、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)622(Ciba Specialty Chemicals, Basel, Switzerland)はポリウレタンに特に好適である。
【0012】
一般に、上述の安定剤は、混合物として使用される。例えば、UV吸収剤は、フェノール系安定剤又はUV吸収剤とHALS化合物とを組み合わせたもの、HALS化合物とフェノール系安定剤との組合せであり得るし、またHALS、UV吸収剤及びフェノール系安定剤の組合せも可能である。通常、熱可塑性ポリウレタンは、酸化防止剤、UV吸収剤及びHALSの混合物により保護されている。従って、Ciba Specialty Chemicalsは、チヌビン(登録商標)622とチヌビン(登録商標)シリーズのUV吸収剤[チヌビン(登録商標)622、テクニカルデータシート、Nov−99]の使用を薦めている。
【0013】
特許文献1(US5824738)には、熱可塑性ポリウレタンの安定化ための酸化防止剤、UV吸収剤及びHALSの混合物の使用が記載されている。フェノール系安定剤、ベンゾトリアゾール及びチヌビン(登録商標)622の混合物が特に好適であることが証明されている。
【0014】
しかしながら、特に、UV吸収剤としてベンゾトリアゾールを含むUV安定化用の安定剤混合物は、光に曝露する前でさえポリウレタンに黄変を起こさせて安定化させることが見いだされた。この黄変は、それが小さくても好ましくなく、生成物(製品)の苦情につながる。
【0015】
特許文献2(DE10148702A1)には、TPUの初期着色をできるだけわずかに抑えるために、酸化防止剤、UV吸収剤及びHALS及びさらにホスファイトを含む安定剤混合物が記載されている。ホスファイトの例は、非特許文献4(Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 109-112頁)に記載されている。しかしながら、ホスファイトは、加水分解、特にポリエステル−TPUの場合にこれを起こす。この加水分解は、機械的特性の低下をもたらし、従って生成物の劣化をもたらす。
【0016】
【特許文献1】US5824738
【特許文献2】DE10148702A1
【非特許文献1】Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 98-136頁)
【非特許文献2】Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 98-107頁及び116-121頁
【非特許文献3】Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 123-136頁
【非特許文献4】Plastics Additive Handbook, 第5版, H. Zweifel, ed., Hanser Publishers, Munich, 2001 ([1]), 109-112頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従って、本発明の目的は、着色が極めてわずかであり、さらに外部の影響、特にUV放射線に極めて安定である、プラスチック、特に好ましくはポリウレタン、とりわけTPUを提供することにある。特に好ましくは、ポリウレタンはまた熱に対して高い安定性を持つべきである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は、上記目的が、冒頭に記載のプラスチック、特にポリウレタンにより達成されることを見いだした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
驚くべきことに、チタン含有触媒の残さを含まない立体障害エステル化アミンは、実質的に、ポリウレタンの黄変をほとんどもたらさないことを見いだした。本発明では、含まないとは、チタン触媒残さが不活性化されたか、錯体化されたか、沈殿されたか、ろ過されたか、吸収されたか、又は他の方法で無害にされたことを意味するか、或いは立体障害アミンのエステル化に触媒としてチタンが使用されなかったことを意味する。
【0020】
新規な、立体障害エステル化アミン(sterically hindered etherified amine)は、チヌビン(登録商標)622(CAS登録番号65447−77−0)であり、これは以下のスキームにおいて3で表示される。このため、それは、2ヒドロキシル基(スキームにおいて1で表示されている)を含む立体障害アミン及びブテン二酸又はブテン二酸誘導体(スキームにおいて2で表示されている)を基礎とする縮合物であることが好ましい。縮合は、一般に、OH含有化合物を除去しながら行われる。これは一般に水又はアルコールであり、好ましくは低分子量アルコール(例、メタノール又はエタノール)である。その平衡からOH成分を、例えば蒸留により除去することによって、反応を、重縮合の方向に導くことができる。反応を加速するためには、スズ又はチタン触媒等の触媒を使用する。チタン触媒は特に反応性である。1の環の4位におけるヒドロキシル基は、2級のOH基である。2級のOH基は、1級のOH基に比べて重縮合反応における反応性が小さい。このため、触媒、特にチタン触媒を高い濃度で用いることが屡々行われる。これらの触媒は、一般に反応後にろ過除去されないので、生成物中に留まる。従って、様々な製造による立体障害エステル化アミン3は、120〜200ppmのチタンを含んでいる。
【0021】
【化1】

【0022】
驚くべきことに、このチタンは合成中にUV安定化TPUを変色させる原因となっていることが分かった。本発明によれば、立体障害エステル化アミン、特に上記に示した式3のものは、チタン含有量がその立体障害エステル化アミンの質量に対して100ppm未満、好ましくは30ppm未満、特に5ppm未満であり、このため、この立体障害エステル化アミンは、新規なポリウレタン、特に熱可塑性ポリウレタンに使用されている。
【0023】
驚くべきことに、新規な立体障害エステル化アミンを用いた場合、TPUの加水分解が低減することが分かった。
【0024】
このため、(I)として、下記の化合物を含むポリウレタン、特にTPUが好ましい:
【0025】
【化2】

【0026】
[但し、nが1〜100の整数、好ましくは3〜50の整数、特に8〜14の整数を表し、
R1が水素原子、又は直鎖、分岐若しくは環式の炭素原子数1〜12個のアルキルを、好ましくは水素原子を表し、
R2が、水素原子、又は直鎖、分岐若しくは環式の炭素原子数1〜12個のアルキルを表すか、或いはR1又はO−R1若しくはN(R1)2を表し、好ましくは−O−CH3である。]。
【0027】
チタンの低含有量は、エステル化することにより、即ちチタン触媒の存在下、立体障害エステル化アミンを作製し、その後チタン触媒を、例えばろ過により除去することにより達成することができる。この目的のため、例えば、生成物を、粘度低減用溶剤中に溶解させ、少量の水(例、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%、特に0.1〜1質量%)の存在下に撹拌し、その後ろ過することができる。ろ過に、加圧ろ過を使用することが好ましい。
【0028】
新規なポリウレタンは、(I)に加えてフェノール系安定剤(II)を含むことが好ましい。
【0029】
好適なフェノール系安定剤は、特に酸化防止剤として働く一般に公知の化合物である。好ましい態様において、酸化防止剤(II)、特にフェノール系酸化防止剤(II)は、好ましくは350g/モルを超える、特に700g/モルを超えるモル質量で、且つ好ましくは最大モル質量が10000g/モル未満、特に3000g/モル未満、中でも1500g/モル未満を有する。さらに、これらは、融点が180℃未満であることが好ましい。さらにまた、アモルファス又は液体の酸化防止剤を使用することが好ましい。2種以上の酸化防止剤の混合物を、成分(II)として使用することもできる。
【0030】
モル質量及び融点に関する上述の境界条件により、酸化防止剤が、大きい表面/容積比の場合でさえ蒸発することはなく、そして酸化防止剤が、合成中に一様に且つ均質にTPUに入り込むことができることが保証される。好適なフェノール系酸化防止剤の例は、活性基として下記の構造1を含む分子である:
【0031】
【化3】

【0032】
[但し、X及びYが、相互に独立して、水素原子、又は直鎖、分岐若しくは環式の炭素原子数1〜12個のアルキルを表し、
Zが、活性基を酸化防止剤(i)の残存分子に結合させるための2価結合である。]。
【0033】
好ましく使用されるフェノール系酸化防止剤(II)は、下記の基2を含む化合物である:
【0034】
【化4】

【0035】
[但し、Zは、1について上記に定義されたとおりである。]。
【0036】
活性基1を含む好ましいフェノール系酸化防止剤の例としては、トリエチレングリコールビス(3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)−プロピオネート)(イルガノックス(Irganox;登録商標)245、Ciba Spezialitaetenchemie AG)、ヘキサメチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)(イルガノックス(登録商標)259)、ペンタエリスリチルテトラキス(3−(3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート)(イルガノックス(登録商標)1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート(イルガノックス(登録商標)1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)(イルガノックス(登録商標)1098)、及びイルガノックス(登録商標)1135を挙げることができる。
【0037】
一般式3A及び3Bによって記載することができる酸化防止剤が特に好ましい。
【0038】
特に好ましくは、ポリウレタンは、フェノール系酸化防止剤(II)として、下記の化合物3A及び3Bを含んでいる:
【0039】
【化5】

【0040】
[但し、それぞれ、nが1〜30であり、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25であり、特に2、3、4、5、6、7、8又は9であり、中でも3、4又は5である。]。
【0041】
混合物が、nが異なる、従って分子量の異なる、式3A及び/又は3Bの化合物を含む混合物が特に好ましい。
【0042】
従って、好ましい酸化防止剤3A及び3Bは、nの大きさのみ異なる異種の化合物の好ましい混合物であり、酸化防止剤混合物として下記に示す。分子n1、n2、n3〜nmの割合は、酸化防止剤混合物の数平均モル質量(数平均分子量)が、有利であると認識されているモル質量に対応するように選択することが好ましい。分子n1、n2、n3〜nmの割合は、酸化防止剤混合物3A及び/又は3Bの数平均モル質量(数平均分子量)が好ましくは350g/モルを超え、特に好ましくは700g/モルを超え、且つ好ましくは10000g/モル未満、特に好ましくは3000g/モル未満、中でも1000g/モル未満となるように選択することが好ましい。
【0043】
さらに好ましい態様において、多分散度Pdが1を超える酸化防止剤混合物を使用すること、即ちこれらの数平均モル質量がその重量平均モル質量より小さいこと、が好ましい。これは、例えば酸化防止剤が、異なるnを有する構造3A又は3Bの異なる分子量の混合物から構成される場合に、実現される。
【0044】
単一のフェノール系酸化防止剤の代わりに安定化のためフェノール系酸化防止剤混合物を使用することが有利であろう。一般に、モル質量及び軟化点に関連する上述の条件を満たす全てのフェノール系酸化防止剤が、このような混合物として使用することができる。
【0045】
イルガノックス(登録商標)1010を含む混合物、及び/又は式3A及び3Bに従うフェノール系酸化防止剤を含む混合物が、特に好ましい。
【0046】
新規なポリウレタンは、(I)に加えて、UV−A吸収剤として機能する少なくとも1種のベンゾトリアゾール(III)も含むことが好ましい。UV−A吸収剤は、UV−Aスペクトルの波長の光を吸収し、それをプラスチックに損傷を与えない形(例、熱)に変換させる分子である。市販されていて、且つ好ましいベンゾトリアゾールの例としては、チヌビン(登録商標)P(CAS登録番号2440−22−4)、チヌビン(登録商標)329(CAS登録番号3147−75−9)、チヌビン(登録商標)326(CAS登録番号3896−11−5)、チヌビン(登録商標)320(CAS登録番号3846−71−7)、チヌビン(登録商標)571(CAS登録番号23328−53−2)、チヌビン(登録商標)328(CAS登録番号25973−55−1)、チヌビン(登録商標)350(CAS登録番号36437−37−3)、チヌビン(登録商標)327(CAS登録番号3864−99−1)、チヌビン(登録商標)234(CAS登録番号70321−86−7)、チヌビン(登録商標)360(CAS登録番号103597−45−1)、チヌビン(登録商標)840(CAS登録番号84268−08−6)、4−ヒドロキシ−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)フェニルプロパン酸のC7~9の分岐及び直鎖のアルキルエステル(CAS登録番号127519−17−9)、チヌビン(登録商標)384、チヌビン(登録商標)213(CAS登録番号104810−48−2、104810−47−1、25322−68−3の3物質の混合物)を挙げることができる。チヌビン(Tinuvin)は、Ciba Specialty Chemicals, Basel, Switzerlandの登録商標である。
【0047】
チヌビン(登録商標)328、チヌビン(登録商標)329、チヌビン(登録商標)234、チヌビン(登録商標)213、チヌビン(登録商標)571及びチヌビン(登録商標)384が好ましい。チヌビン(登録商標)328、チヌビン(登録商標)571、チヌビン(登録商標)213及びチヌビン(登録商標)384が特に好ましく、中でも、4−ヒドロキシ−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)フェニルプロパン酸のC7~9の分岐及び直鎖のアルキルエステル(CAS登録番号127519−17−9)、チヌビン(登録商標)384及びチヌビン(登録商標)328が好ましい。
【0048】
2種以上のUV吸収剤(III)の混合物は、新規の安定剤混合物の成分(III)として使用することもできる。
【0049】
ポリウレタン、特にTPUの製造方法は、一般に公知である。例えば、ポリウレタン、好ましくはTPUは、(a)イソシアネートを、(b)イソシアネートに対して反応性で、分子量が500〜10000の化合物、及び必要により(c)分子量が50〜499の分子延長剤と、(d)触媒及び/又は(e)慣用の助剤及び/又は添加剤の存在下に、反応させることにより製造することができる。
【0050】
出発成分及び好ましいポリウレタンの製造方法は、例を用いて以下に記載する。成分(a)、(b)、及び必要により、ポリウレタンの製造に通常使用される(c)、(d)及び/又は(e)は、例を用いて以下に記載する:
a)使用することができる有機イソシアネート(a)は、一般に公知の脂肪族、脂環式、芳香族脂肪族、及び/又は芳香族のイソシアネート、好ましくはジイソシアネートであり、例えばトリ−、テトラ−、ペンタ−、ヘキサ−、ヘプタ−及び/又はオクタメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン、1,5−ジイソシアネート、2−エチルブチレン1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、ブチレン1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4−及び/又は1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、1−メチルシクロヘキサン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、及び/又はジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,4’−及び2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’−、2,4’−及び4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5−ジイソシアネート(NDI)、トルエン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、ジフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニルジイソシアネート、1,2−ジフェニルエタンジイソシアネート及び/又はフェニレンジイソシアネートを挙げることができる。
【0051】
b)イソシアネートに対して反応性の一般に公知の化合物は、イソシアネートに対して反応性の化合物(b)として使用することができ、例えば、ポリエステルオール、ポリエーテルオール及び/又はポリカーボネートジオールであり、これらは通常、分子量が500〜8000好ましくは600〜6000、特に800〜4000で、且つ平均官能価が1.8〜2.3、好ましくは1.9〜2.2、特に2である、用語ポリオールによってまとめられているものである。
【0052】
c)使用可能な鎖延長剤(c)は、分子量が50〜499である脂肪族、芳香族脂肪族、芳香族及び/又は脂環式の化合物、好ましくは2官能性化合物であり、例えば、炭素原子数2〜10個のアルキレン基を有するジアミン及び/又はアルカンジオール、特に1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及び/又は炭素原子数3〜8個の、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、へキサ−、ヘプタ−、オクタ−、ノナ−及び/又はデカ−アルキレングリコール、好ましくは対応するオリゴ−及び/又はポリ−プロピレングリコールを挙げることができ、鎖延長剤の混合物も使用することができる。
【0053】
d)ジイソシアネート(a)のNCO基と、成分(b)及び(c)のヒドロキシル基との間の反応を特に加速する好適な触媒は、先行技術で公知の従来の4級アミンであり、例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、2−(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等、そして特に、有機金属化合物、例えばチタン酸エステル、鉄化合物(例、鉄(III)アセチルアセトネート)、スズ化合物(例、スズアセテート、スズジオクタノエート、スズジラウレート)、又は脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩(例、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等)等を挙げることができる。この触媒は、通常、ポリヒドロキシ化合物(B)100質量部に対して0.0001〜0.1質量%の量で使用される。
【0054】
e)触媒(d)に加えて、慣用の助剤及び/又は添加剤(e)を、成分(a)〜(c)に添加することもできる。その例としては、発泡剤、表面活性物質、フィラー、防炎剤、核剤、酸化防止剤、滑剤及び離型剤、染料及び顔料、適宜、新規な安定剤混合物に加えて、別の安定剤(例、加水分解安定剤、光安定剤、熱安定剤、又は変色防止安定剤)、無機及び/又は有機フィラー、強化剤及び可塑剤を挙げることができる。好適な態様においては、成分(e)として、加水分解安定剤、例えば高分子量及び低分子量カルボジイミドも挙げることもできる。別の態様において、TPUは、リン化合物を含むことができる。好ましい態様において、使用するリン化合物は、3価リンの有機リン化合物、例えばホスファイト及びホスホナイトである。好適なリン化合物として、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリアオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリチルジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリチルジホスファイト、ジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニリレンジホスホナイト、トリイソデシルホスファイト、ジイソデシルフェニルホスファイト、及びジフェニルイソデシルホスファイト、又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0055】
リン化合物の対応する酸への加水分解は、ポリウレタン、特にポリエステルポリウレタンに損傷をもたらす場合があるので、リン化合物は、それらが分解し難い場合に特に好適である。従って、特に加水分解し難いリン化合物は、特にポリエステルウレタンに好適である。このようなリン化合物の例としては、ジプロピルプロピレングリコールフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルモノデシルホスファイト、トリイソノニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、及びジ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリチルジホスファイト又はこれらの混合物を挙げることができる。
【0056】
成分a)及びb)及び適宜c)、d)及びe)に加えて、鎖調節剤(通常31〜499の分子量を有する)を使用することができる。このような鎖調節剤は、イソシアネートに対して反応性の唯1個の官能基を有する化合物であり、例えば単官能アルコール、単官能アミン及び/又は単官能ポリオールを挙げることができる。このような鎖調節剤を用いることにより、特定の流れ挙動、特にTPUにおける流れ挙動を安定させることが可能である。鎖調節剤は、成分100質量部に対して、0〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%の量で一般に使用することができ、定義により成分c)で保護されている。
【0057】
この文書で記載されている全ての分子量の単位は[g/モル]である。
【0058】
TPUの硬度を確立するために、成分(b)及び(c)は、比較的広い範囲のモル比の範囲内で変えることができる。成分(b)の使用する鎖延長剤(c)の合計量に対するモル比が、10:1〜1:10、特に1:1〜1:4である場合、TPUの硬度は(C)の含有量の増大と共に大きくなり、特に有用であることが分かっている。
【0059】
鎖延長剤(c)は、TPUの製造に使用することが好ましい。
【0060】
反応は従来のインデックス、好ましくは60〜120,特に好ましくは80〜110のインデックスで行うことができる。インデックスは、反応に使用される成分(a)のイソシアネート基の合計量の、イソシアネートと反応性の基、即ち成分(b)及び(c)の活性水素に対する比によって定義される。インデックス100で、成分(a)のイソシアネート基に対して、成分(b)及び(c)の1個の活性水素、即ちイソシアネートに対して反応性の1官能が存在する。インデックス100を超えると、OH基よりイソシアネート基が多く存在する。
【0061】
TPUの製造は、公知の方法により、連続的に、例えば反応押出機又はワン−ショットによるベルト法、又はプレポリマー法を用いて行うことができ、或いは公知のプレポリマー法によるバッチで行うことができる。これらの方法において、反応させるべき、成分(a)、(b)及び適宜(c)、(d)及び/又は(e)を、連続的に又は同時に、相互に混合し、反応を即座に開始させることができる。
【0062】
押出機法では、成分(a)、(b)及び、適宜、(c)、(d)及び/又は(e)を個々に又は混合物として押出機に供給し、そして例えば100〜280℃、好ましくは140〜250℃で反応させ、その後得られたTPUを押し出し、冷却し、顆粒化する。
【0063】
通常顆粒又は粉末状で存在する本発明に従い製造されたTPUの加工により、所望のフィルム、成形製品、ローラ、繊維、自動車における被覆物、チューブ、ケーブルプラグ、蛇腹(bellows)、トレーリングケーブル、ケーブル・シース、シール(充填材)、ベルト又は制振素子を作製するが、この作製は従来法、例えば射出成形又は押出により行われる。
【0064】
安定剤(I)、即ち立体障害エステル化アミンが、ポリウレタン中に、ポリウレタンの合計質量に対して0.1〜5質量%、特に0.1〜3質量%、中でも0.1〜1質量%で存在することが好ましい。
【0065】
安定化すべきTPUが、ショアー54D未満のショアー硬度を有するポリエーテル−TPUである場合、酸化防止剤(I)は、通常、TPUの合計質量に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%、特に好ましくは0.5〜1質量%の濃度で使用される。
【0066】
安定化すべきTPUが、ショアー54D以上のショアー硬度を有するポリエステル−TPU又はポリエーテル−TPUである場合、酸化防止剤(I)は、通常、TPUの合計質量に対して0.1〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%、特に好ましくは0.15〜0.5質量%の濃度で使用される。
【0067】
安定剤(II)、即ちフェノール系安定剤は、ポリウレタン中に、ポリウレタンの合計質量に対して0.1〜5質量%の濃度で含まれていることが好ましい。
【0068】
安定剤(III)は、ポリウレタン中に、ポリウレタンの合計質量に対して0.01〜2質量%、特に0.05〜1質量%、なかでも0.15〜0.25質量%の濃度で含まれていることが好ましい。
【0069】
ポリウレタンの合計量との表現は、適宜、触媒、助剤、フィラー、安定剤等の、ポリウレタン中に存在しても良いが、実際のポリウレタンには取り込まれていないものを含むポリウレタンの質量を意味すると理解すべきである。
【0070】
TPUがポリエステル−TPUである場合、加水分解安定剤を添加することも好ましい。好ましい加水分解安定剤は、カルボジイミド(IV)、例えば高分子量及び低分子量カルボジイミドである。加水分解安定剤は、一般にTPUの合計質量に対して0.05〜5質量%、好ましくは0.2〜2質量%、特に好ましくは0.5〜1質量%の濃度で含まれている。
【0071】
このため、ポリウレタン、特に熱可塑性ポリウレタンは、新規な安定剤(I)に加えて、安定剤(II)及び/又は(III)、特に(II)及び(III)も含むことが好ましい。
【0072】
成分(I)及び好ましくは(II)又は(III)、及び特に(II)又は(III)及び適宜(IV)を含む新規なポリウレタンの製造には、種々の方法が使用可能である。
【0073】
安定剤混合物の3成分(I)〜(III)を、ポリウレタンの合成前に、原材料中に計量導入するが、その際3成分(I)〜(III)がポリウレタンの出発材料と相溶性が良いことが好ましい。例えば、成分(I)〜(III)をポリオール成分(b)又はイソシアネート成分(a)に添加することができる。異なる安定剤成分を、ポリウレタン製造用の異なる成分に添加することも可能である。例えば、成分(I)〜(II)をポリオール成分(b)に添加し、安定剤成分(III)をイソシアネート成分(a)に添加することが可能である。
【0074】
安定剤成分(I)〜(III)を、ポリウレタン、例えばTPUの合成中に計量導入することもできる。例えば、3種の安定剤成分(I)、(II)及び(III)を、反応器の出発材料流に、個々に計量導入し、或いはTPUを反応押出法で製造する場合は、直接押出機に導入することができる。安定剤成分も、予め混合し、その後TPUに計量導入することもできる。
【0075】
さらに、新規な安定剤混合物の3成分(I)〜(III)を、加工中、例えば押出中、又は射出成形中においてのみ、TPUに添加することができる。ここでも、4種の活性成分を計量導入前に混合し、その後最終混合物に計量導入することが特に有利である。
【0076】
最後に、安定化用の4種の成分を、高濃度でTPUに導入、一体化することもできる。この濃縮物をその後顆粒化し、不安定なTPUの加工中に添加剤として計量導入する。
【0077】
新規なポリウレタン、特に熱可塑性ポリウレタンは、成形品、好ましくはフィルム、靴底、ローラ、繊維、自動車における被覆物、ワイパー・ブレード、チューブ(tube)、ケーブルプラグ、蛇腹、トレーリングケーブル、ケーブル・シース、シール(充填材)、ベルト又は制振素子の製造に使用することが好ましく、これは冒頭に記載した利点を有する。
【実施例】
【0078】
[実施例1]
この実施例は、異なる製法から得られる下記の化合物の平均チタン含有量を記載する:
【0079】
【化6】

【0080】
チヌビン(Tinuvin)(登録商標)622LDのチタン含有量、及び化学的に同一の生成物チソーブ(Chisorb) (登録商標)622LD及びロイライト(Lowilite) (登録商標)62を、原子吸光分光法により測定した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1から明らかなように、全ての製造元は、合成のためチタン触媒を使用しており、生成物中に高濃度で残っている。
【0083】
[実施例2]チヌビン(登録商標)622の精製方法
100gのチヌビン(登録商標)622を300gのTHFに溶解させた。その後、0.5質量%(合計量に対して)の水を、撹拌しながら添加し、撹拌を1時間続けた。その後、その溶液を、ザイツ・ディープ・ベッド・フィルタ・ディスク(Seitz deep-bed filter disk)T−120を有する加圧フィルタ(ザイツ・ワン・シート・フィルタ(Seitz one-sheet filter))を1.5〜2バールで通して、ろ過した。溶液を、ロータリ・エバポレータで完全に蒸発させ、精製されたチヌビン(登録商標)622を、40℃、10ミリバールで6時間乾燥した。
【0084】
精製前のチタン含有量:110ppm;精製後のチタン含有量:2.3ppm。
【0085】
[実施例3]ポリエステル−TPUの製造
1000gのポリエステルオール(LP1010、BASFアクチェンゲゼルシャフト)を2Lのスズ板製のバケット内で80℃に加熱した。その後、種々の安定剤を、撹拌しながら添加した。安定剤の種類及び量の例を表2にまとめて示す。88gの1,4−ブタンジオール及び8gのエラストスタブ(Elastostab) (登録商標)H01(Elastogran GmbH)をその後添加した。続いて溶液を75℃に加熱した後、500gの4,4’−MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)を添加し、溶液が均一になるまで撹拌を続けた。その後、反応材料を、浅い皿に注ぎ、ホットプレート上で125℃で10分間加熱した。得られたスラブをその後加熱オーブンで100℃で24時間加熱した。そのキャスト(cast)・スラブを顆粒化した後、顆粒を射出成形機で加工して、2mmの射出成形シートを得た。生成物はショアー85Aのシュアー硬度を有するものであった。
【0086】
[実施例4]
UV安定剤混合物で安定化されたポリエステル−TPUを、実施例3に従いキャストした。表2に使用した安定剤に関する情報を示す。
【0087】
【表2】

表2:異なるHALS生成物を有するポリエステル−TPUの安定剤の濃度(イルガノックス(Irganox)はCIBA Specialty Chemicalsの登録商標である)
【0088】
実験4b+4cで製造された2mmの射出成形シートは、室温で5週間保管された後には、べとべとしたフィルムとなった。一方、実験4aの射出成形シートは、室温で5週間保管された後でも、析出物(堆積物)は無かった。
【0089】
[実施例5]ポリエステル−TPUの製造
1000gのポリエーテルオール(PTHF1000、BASFアクチェンゲゼルシャフト)を2Lのスズ板製のバケット内で80℃に加熱した。その後、種々の安定剤を、撹拌しながら添加した。安定剤の種類及び量の例を表3にまとめて示す。155gの1,4−ブタンジオールをその後添加した。続いて溶液を75℃に加熱した後、830gの4,4’−MDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)を添加し、溶液が均一になるまで撹拌を続けた。その後、反応材料を、浅い皿に注ぎ、ホットプレート上で125℃、10分間加熱した。得られたスラブをその後加熱オーブンにおいて100℃で24時間加熱した。そのキャスト・スラブを顆粒化した後、顆粒を射出成形機で加工して、2mmの射出成形シートを得た。生成物はショアー95Aのシュアー硬度を有するものであった。
【0090】
[実施例6]
実施例5に記載したポリエーテル−TPU及び実施例3に記載したポリエステル−TPUを作製し、表3に従う安定剤(酸化防止剤=イルガノックス(Irganox)1125、UV吸収剤=チヌビン(Tinuvin)571)で安定化させた。射出成形シートを得るために加工処理した後、サンプルの黄色度を分析した。チヌビン(Tinuvin)622を含むサンプル(実施例2に従う精製後のチタン含有量が低いもの)は、市販の未精製生成物を含むサンプルより実質的に良好な初期色相を有することが分かった。
【0091】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体障害エステル化アミン(I)を含むプラスチックであって、アミン(I)が、(I)の質量に対して100ppm未満のチタンを含んでいることを特徴とするプラスチック。
【請求項2】
下記の化合物:
【化1】

[但し、nが1〜100の整数を表し、
R1が水素原子、又は直鎖、分岐若しくは環式の炭素原子数1〜12個のアルキルを表し、
R2が、水素原子、又は直鎖、分岐若しくは環式の炭素原子数1〜2個のアルキルを表すか、或いはR1又はO−R1若しくはN(R1)2を表す。]
が、ポリウレタン中に(I)として存在する請求項1に記載のプラスチック。
【請求項3】
ポリウレタンである請求項1又は2に記載のプラスチック。
【請求項4】
立体障害エステル化アミンが、プラスチックの全質量に対して0.1〜5質量%の濃度でプラスチック中に存在する請求項3に記載のプラスチック。
【請求項5】
フェノール系安定剤(II)を含む請求項3に記載のプラスチック。
【請求項6】
少なくとも1種の下記の化合物:
【化2】

及び/又は
【化3】

[但し、両式において、nが1〜30である。]
を、フェノール系安定剤(II)として含む請求項5に記載のプラスチック。
【請求項7】
フェノール系安定剤(II)が、ポリウレタン中に、ポリウレタン全質量に対して0.1〜5質量%の濃度で存在する請求項5に記載のプラスチック。
【請求項8】
ポリウレタンがベンゾトリアゾール(III)を含む請求項3又は5に記載のプラスチック。
【請求項9】
ベンゾトリアゾール(III)として、
チヌビン(登録商標)P(CAS登録番号2440−22−4)、チヌビン(登録商標)329(CAS登録番号3147−75−9)、チヌビン(登録商標)326(CAS登録番号3896−11−5)、チヌビン(登録商標)320(CAS登録番号3846−71−7)、チヌビン(登録商標)571(CAS登録番号23328−53−2)、チヌビン(登録商標)328(CAS登録番号25973−55−1)、チヌビン(登録商標)350(CAS登録番号36437−37−3)、チヌビン(登録商標)327(CAS登録番号3864−99−1)、チヌビン(登録商標)234(CAS登録番号70321−86−7)、チヌビン(登録商標)360(CAS登録番号103597−45−1)、チヌビン(登録商標)840(CAS登録番号84268−08−6)、4−ヒドロキシ−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)フェニルプロパン酸のC7~9の分岐及び直鎖のアルキルエステル(CAS登録番号127519−17−9)、チヌビン(登録商標)384、チヌビン(登録商標)213(CAS登録番号104810−48−2、104810−47−1/25322−68−3の3物質の混合物)から選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項8に記載のプラスチック。
【請求項10】
ベンゾトリアゾール(III)が 、プラスチック全質量に対して0.01〜2質量%の濃度で存在する請求項8に記載のプラスチック。
【請求項11】
立体障害エステル化アミン(I)を含むポリウレタンの製造方法であって、(I)の質量に対して100ppm未満のチタンを含有する立体障害エステル化アミン(I)を、製造中又は製造後にポリウレタンに添加することを特徴とする製造方法。
【請求項12】
立体障害エステル化アミン(I)の質量に対して100ppm未満のチタンを含有する(I)を含む熱可塑性ポリウレタンを基礎とする、フィルム、靴底、ローラ、繊維、自動車における被覆物、ワイパー・ブレード、ホース、ケーブルプラグ、蛇腹、トレーリングケーブル、ケーブル・シース、シール、ベルト又は制振素子。

【公表番号】特表2007−501868(P2007−501868A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522260(P2006−522260)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007876
【国際公開番号】WO2005/017019
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】