説明

プラスチックの分解装置

【課題】原料供給管路内に付着した原料を洗浄除去し、原料供給管路の閉塞を防止するプラスチックの分解装置を提供する。
【解決手段】プラスチック60を超臨界又は亜臨界の状態で溶媒70にて分解する分解槽1にプラスチック60を供給する原料供給管路2が形成されているプラスチックの分解装置において、前記原料供給管路2は、この原料供給管路2の内部を洗浄する洗浄装置3を有することとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの分解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、FRP(繊維強化プラスチック)に代表されるプラスチック成形品中の無機有価物及び有機有価物を回収して再利用できるようにするために、超臨界又は亜臨界状態の水熱反応によって分解する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
このような方法は、一般的には、耐圧性の分解槽にFRP及び溶媒となる水を投入し、これを超臨界又は亜臨界状態で分解した後、分解槽から分解液を排出して回収している。ここで、分解槽内での分解率向上と分解液の排出性等の観点から、FRPを前処理として2〜20mm程度の大きさに粉砕して分解槽に投入している。FRPとともに投入される水と事前混合して投入してもよいが別途混合槽が必要になるため、経済性の観点から、分解槽に接続された原料供給管路より分解槽に直接、FRPを投入することが行われている。
【0004】
しかしながら、粉砕したFRPはガラス繊維を含むため箔状の形状を有し嵩比重が大きく、また微粉も含んでいることから、原料供給管路の内壁やその途中に設けられた供給弁に付着してしまうという問題があった。分解槽は超臨界又は亜臨界状態にするため高圧状態になるが、特にFRPが供給弁の閉止部に付着すると、漏れの原因となり、分解槽の温度上昇を妨げる。したがって、原料供給管路内部のFRPの付着を防止する方策が必要となる。このような方策として、例えば、FRPと一緒に空気を流して原料供給管路内部にFRPが付着するのを防止することが考えられる。しかしながら、空気を逃がす配管を用意する必要があり、またその配管の途中に分解処理時には閉止する開閉弁を設ける必要もあり、この配管にFRPが搬送されて閉塞を引き起こすことが懸念される。
【特許文献1】国際公開第2004/041917号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のとおりの背景から、従来の問題点を解消し、原料供給管路内に付着した原料を洗浄除去し、原料供給管路の閉塞を防止するプラスチックの分解装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のことを特徴としている。
【0007】
第1には、プラスチックを超臨界又は亜臨界の状態で溶媒にて分解する分解槽にプラスチックを供給する原料供給管路が形成されているプラスチックの分解装置において、前記原料供給管路は、この原料供給管路の内部を洗浄する洗浄装置を有することを特徴とする。
【0008】
第2には、第1の発明において、洗浄装置は、原料供給管路の内部を洗浄する洗浄液供給口と、洗浄液で洗浄した後の原料供給管路の内部を乾燥させる空気供給口を備えた洗浄液供給管路であることを特徴とする。
【0009】
第3には、第2の発明において、洗浄液供給管路の洗浄液供給口が、溶媒を供給する溶媒供給口であることを特徴とする。
【0010】
第4には、上記第2の発明又は第3の発明において、分解槽に供給されたプラスチック、洗浄液及び溶媒の重量を検出する重量検出器を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、原料供給管路は、この原料供給管路の内部を洗浄する洗浄装置を有することにより、原料供給管路内に付着した原料を洗浄除去することができる。したがって、原料供給管路の閉塞を防止することができる。
【0012】
第2の発明によれば、洗浄装置は、原料供給管路の内部を洗浄する洗浄液供給口と、洗浄液で洗浄した後の原料供給管路の内部を乾燥させる空気供給口を備えた洗浄液供給管路であることにより、原料供給管路内に付着した原料を洗浄液で確実に洗浄除去することができる。また、原料供給管路の内部を乾燥させるため、次バッチの原料供給時において原料供給管路内への原料の付着を抑えることができる。
【0013】
第3の発明によれば、洗浄液供給管路の洗浄液供給口が、溶媒を供給する溶媒供給口であることにより、溶媒を供給するための溶媒供給管路を別途設ける必要がないため、構造がより簡素化されて小型化が図られ、しかも低コストでプラスチックの分解装置を作製できる。さらに、原料供給管路を洗浄した洗浄液をそのままプラスチックの溶媒として用いることができるので、低コストでプラスチックの分解処理を実現できる。
【0014】
第4の発明によれば、分解槽に供給されたプラスチック、洗浄液及び溶媒の重量を検出する重量検出器を有することにより、分解槽の仕込み量を効果的に把握することができる。これにより、洗浄液が溶媒の場合、分解槽に供給された洗浄液を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明に係るプラスチックの分解装置の一実施形態を示した概要構成図である。
【0016】
この実施形態のプラスチックの分解装置は、プラスチック60を超臨界又は亜臨界の状態で溶媒にて分解する円筒形で耐圧性の分解槽1を備えており、この分解槽1の上部にプラスチック60を供給する配管が接続され、原料供給管路2が形成されている。原料供給管路2の分解槽1側には供給弁21が設けられており、供給弁21を開放することによってプラスチック60が分解槽1に供給される。プラスチック60は、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機充填材やガラス繊維等の無機繊維を含むFRP等のプラスチック成形品であり、分解槽1内での溶媒70との攪拌混合性を高めて反応効率を向上させるために、粒径が1〜20mm程度、好ましくは最大粒子径が10mm以下になるように粉砕して使用するのが好ましい。このように粉砕された粉粒状のプラスチック60が原料供給管路2を通じて分解槽に供給さる。
【0017】
本実施形態では、原料供給管路2の内部を洗浄する洗浄液供給口5と、洗浄液で洗浄した後の原料供給管路2の内部を乾燥させる空気供給口6を備えた洗浄液供給管路4が、原料供給管路2を洗浄する洗浄装置3として、原料供給管路2に形成されている。具体的には、空気供給口6を有する配管が原料供給管路2を構成する配管に供給弁21の上流側で接続され、洗浄液供給口5を有する配管が空気供給口6を有する配管の途中に接続されている。
【0018】
洗浄液の種類としては、プラスチックの分解に用いられる溶媒と同様のものを用いることができ、例えば、水やアルコール等の流体を挙げることができる。この流体に水酸化ナトリウム等のアルカリが共存されていてもよい。このような洗浄液は、原料供給管路2の洗浄後は分解槽1に排出されるが、これをそのままプラスチック分解のための溶媒として使用することができる。また、洗浄液によって洗浄除去されたプラスチックについてもこれを分解槽1から排出せずに被分解物として利用することができる。洗浄液をプラスチック60の分解のための溶媒70として用いる場合、別途プラスチック60の分解のために供給される溶媒70の量は、この洗浄液の量を考慮して設定される。
【0019】
洗浄液供給口5を有する配管には洗浄液供給弁51が設けられており、これを開放することによって洗浄液供給口5から高圧ポンプ等によって洗浄液が導入され、供給弁21を含む原料供給管路2の内部が洗浄される。原料供給管路2の口径が大きく、一定の洗浄液量で充分な洗浄効果が得られない場合には、一時的に原料供給管路2の供給弁21を閉止し、原料供給管路2に洗浄液を貯留した上で、供給弁21を開放して洗浄するようにしてもよい。
【0020】
空気供給口6を有する配管には空気供給弁61が設けられており、洗浄液で原料供給管路2を洗浄した後は、空気供給弁61を開放して空気供給口6からコンプレッサ等によって乾燥空気を導入する。これによって、洗浄液で濡れた原料供給管路2の内部を乾燥させ、次バッチでのプラスチック60の供給時にプラスチック60が原料供給管路2の内部に付着し易くなるのを防止できる。
【0021】
このように洗浄液供給管路4によって原料供給管路2内に付着したプラスチック60を洗浄除去することができるため、原料供給管路2の閉塞を防止することができる。
【0022】
分解槽1の上部には、溶媒70を供給する配管が接続され、溶媒供給口71を有する溶媒供給管路7が形成されている。溶媒70は、溶媒供給口71から溶媒供給管路7を通じて分解槽1内に供給され、超臨界又は亜臨界状態でプラスチック60の反応触媒として作用してプラスチック60が分解される。このような溶媒70の種類としては、水やアルコール等の流体であり、この流体に水酸化ナトリウム等のアルカリが共存されていてもよい。本実施形態では、プラスチック60を分解槽1に供給した後に溶媒70を供給するようにしてもよいし、先に溶媒70を供給してからプラスチック60を供給するようにしてもよく、溶媒70とプラスチック60の仕込み順は問わない。また、上述したように、洗浄液を溶媒70として使用する場合、洗浄水量分を差し引いた量の溶媒70を仕込み量として設定する。
【0023】
分解槽1の外周にはヒーターや熱媒ジャケット等で形成される加熱手段8が設けてあり、温度センサー等で形成される温度検出器9が分解槽1内に差し込んで設けられている。また、分解槽1には内部の圧力を測定する圧力ゲージなどで形成される圧力検出手段10が設けられている。この温度検出器9及び圧力検出手段10で分解槽1の温度、圧力をそれぞれ検出しながら、加熱手段8で分解槽1内を加熱することによって、検出される温度と圧力に基づいて加熱手段8を制御して最適温度での加熱を行うようにしている。
【0024】
分解槽1には、分解槽1に供給されるプラスチック60と溶媒70を混合する攪拌装置20が設けられている。攪拌装置20は、回転軸201と、回転軸201に取り付けられた攪拌翼202を有しており、分解槽1の上部に設けたモータで回転軸201を回転駆動することにより、分解槽1内のプラスチック60と溶媒70を攪拌混合する。
【0025】
本実施形態の分解槽1には、配管で構成される安全弁管路30が形成されて、安全弁管路30の途中に安全弁301が設けられている。安全弁301は、プラスチック60の分解処理時における高温高圧下において、内圧の異常上昇による分解槽1の破損などを防止するための安全機構を有する弁である。
【0026】
本実施形態では、分解槽1が密閉された状態で洗浄液供給管路4による洗浄液及び空気の供給をすることができない。このため、開閉弁を別途設けてこれを開放することで分解槽1を外部に開放してもよいが、上記安全弁301を開放して分解槽1を外部に開放するようにしてもよい。
【0027】
分解槽1の底部には配管で構成される排出管路40が形成され、その途中に排出用開閉弁401が設けられている。排出用開閉弁401を開放することによって、分解槽1内の内容物、例えば分解処理終了後のプラスチック60の分解液や原料供給管路2を洗浄した際に分解槽1に排出された洗浄液等が排出される。
【0028】
図2は、本発明に係るプラスチックの分解装置の別の一実施形態を示した概要構成図である。なお、図1に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0029】
この実施形態では、洗浄液供給管路4の洗浄液供給口5を、溶媒70を供給する溶媒供給口71としている。つまり、プラスチック60の分解に用いられる溶媒70を洗浄液として用い、原料供給管路2の内部を洗浄するとともに、プラスチック60を分解する溶媒70として分解槽1内に供給するものである。
【0030】
この実施形態のプラスチックの分解装置の構成では、図1のような溶媒供給管路7を専用に設ける必要がなく、洗浄液供給管路4が溶媒供給管路7の機能を兼ね備えている。したがって、プラスチックの分解装置の構造が簡素化されて小型化が図られ、しかも低コストで作製できる。さらに、この実施形態では、原料供給管路2でプラスチック60を分解槽1に供給した後、原料供給管路2の内部を洗浄しつつ溶媒70を分解槽1に供給することができるので、分解槽1への溶媒70の仕込み時間の短縮化が図れる。また、洗浄液を溶媒70として使用することから、低コストでプラスチック60の分解処理を実現できる。
【0031】
図3は、本発明に係るプラスチックの分解装置のさらに別の一実施形態を示した概要構成図である。なお、図1に示した部分と同一の部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0032】
この実施形態では、分解槽1に供給されたプラスチック60、洗浄液及び溶媒70の重量を検出するロードセル等の重量検出器50が分解槽1に設けられている。この重量検出器50で、分解槽1に供給されたプラスチック60、洗浄液及び溶媒70の重量管理を行うようにしている。分解槽1で分解処理する際のプラスチック60と溶媒70の仕込み量は、分解槽1の大きさや加熱手段8の加熱能力等により予め決定されている。このため、洗浄液を溶媒70として使用する場合、重量検出器50によってプラスチック60、洗浄液、溶媒70のそれぞれの仕込み量を検出して所定量仕込むようにしている。
【0033】
本実施形態では、プラスチック60、洗浄液及び溶媒70のそれぞれの重量を重量検出器50で重量管理しているが、プラスチック60のみを重量管理し、洗浄液及び溶媒70については配管に流量計を設けて、その積算流量で仕込み量を管理してもよい。さらに、重量検出器50と流量計の両方を組み合わせて、洗浄液及び溶媒70のそれぞれについて積算流量を確認した後、重量検出器50で再度確認するようにしてもよい。
【0034】
本実施形態では、このように分解槽1の仕込み量を効果的に把握することができるので、洗浄液が溶媒70の場合、分解槽1に供給された洗浄液を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るプラスチックの分解装置の一実施形態を示した概要構成図である。
【図2】本発明に係るプラスチックの分解装置の別の一実施形態を示した概要構成図である。
【図3】本発明に係るプラスチックの分解装置のさらに別の一実施形態を示した概要構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 分解槽
2 原料供給管路
21 供給弁
3 洗浄装置
4 洗浄液供給管路
5 洗浄液供給口
51 洗浄液供給弁
6 空気供給口
61 空気供給弁
7 溶媒供給管路
71 溶媒供給口
50 重量検出器
60 プラスチック
70 溶媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックを超臨界又は亜臨界の状態で溶媒にて分解する分解槽にプラスチックを供給する原料供給管路が形成されているプラスチックの分解装置において、前記原料供給管路は、この原料供給管路の内部を洗浄する洗浄装置を有することを特徴とするプラスチックの分解装置。
【請求項2】
洗浄装置は、原料供給管路の内部を洗浄する洗浄液供給口と、洗浄液で洗浄した後の原料供給管路の内部を乾燥させる空気供給口を備えた洗浄液供給管路であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックの分解装置。
【請求項3】
洗浄液供給管路の洗浄液供給口が、溶媒を供給する溶媒供給口であることを特徴とする請求項2に記載のプラスチックの分解装置。
【請求項4】
分解槽に供給されたプラスチック、洗浄液及び溶媒の重量を検出する重量検出器を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のプラスチックの分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−203293(P2009−203293A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45170(P2008−45170)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】