説明

プラスチックキャップ式パネル固定装置の製造方法

【構成】 キャプティブ式パネル固定装置を製造する。まず、ネジ頭の底部を超えて下方に突出する円筒形プラスチックスカートをもつプラスチックキャップを軸部を有するネジ頭の周囲にオーバー成形する。また底部に円形開口をもって形成される。ネジの軸部周囲に圧縮バネを設けてから、キャップ式スカートが口環フランジの下に下向きに突出する点まで、口環の上面に対してネジを押しつける。この点で、プラスチックスカートの底部縁部にそってその外周に半径方向内向きに熱および圧力を作用させて、スカート底部の直径が口環フランジよりも小さくなる点まで底部縁部が永久的に変形し、これによってネジの後退位置と前進位置との間においてネジを口環に軸方向を取り込む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本特許出願は、2009年9月25日に出願され、“プラスチックキャップ式パネル固定装置”を発明の名称とする仮特許出願第61/245,901号に関し、この出願の優先権を主張する出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、面が向きあった状態で一つのパネルを他のパネルに装着するために使用するキャプティブ式パネル固定装置(captive panel fastener)に関する。ネジは、一方のパネルに永久的に取り付ける部材に取りこまれるが、このネジを第1パネルから突き出し、回すことによって第2パネルにネジ係合する。
【背景技術】
【0003】
一般にキャプティブ式パネル固定装置の場合、3つの主構成部品からなる。即ち、ネジ、キャップおよび口環(フェラル:ferrule)である。最初にキャップにネジを取り付けてから、次にネジおよびキャップを口環に組み付ける。これら部品は一般的に金属製であり、キャップは、簡単に変形できる比較的肉厚の薄いアルミニウムで構成する。ネジ頭の付いたネジは、口環のボアを下向きに貫通し、その底部を突き抜けるネジを形成した、細長い軸部を有する。口環底部は、口環をパネルに固定する装着手段を有する。ネジは、後退位置と前進位置との間において口環内を滑動できる。ネジには、ネジおよび少なくとも口環の上部の周囲に下向きに延長する周囲キャップを嵌合する。口環の上部は、ネジ/キャップ体が上向きに引っ張られて口環から外れることを防止する固定手段を有する。一つの装着手段は、キャップの底部において内側に突出するリングに当接する口環上部の半径方向に突出するフランジである。リング上部および口環フランジ底部は、ねじが完全に後退する位置にあるときにそれぞれ当接する。キャップ底部のリングについては、キャップおよびネジが口環に装着された後、キャップの底縁部に折り曲げることによって口環に組み付けられたときにキャップが完全に形成されるように構成することが好ましい。
【0004】
この従来技術の問題は、スクラップとして除去する必要がある材料の量のため、キャップの機械加工コストが高くならざるを得ない点にある。キャップ形成後に、組み立て作業の工程の一つとしてネジにキャップを組み付ける必要がある。キャップを着色することが望ましい場合には、陽極酸化処理化か塗料処理によって着色できるが、一部に摩耗による欠色が生じ、外観が劣化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のプラスチックキャップ式パネル固定装置は、上記従来のキャプティブ式パネル固定装置を改良するものである。本発明のキャップは、ネジの上にオーバー成形処理するプラスチックで構成する。これには、多くの作用効果がある。第1に、製造時キャップが完成する間廃棄物が出ない。成形に過剰な材料が使用された場合、過剰部分を再使用できる。キャップ全体をネジの上に成形するため、組み立て時にキャップをネジに取り付ける作業工程を省略できる。従って、アルミニウムキャップに必要な機械加工/装着に比較して、形成/組み立て作業全体のコストを大幅に削減できる。さらに、成形前にプラスチック化合物を着色することによって着色作業を実行でき、優れた耐摩耗性をもつ耐久性のある着色キャップを得ることができるため、アルミニウムキャップの着色における従来の摩耗問題は発生しない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特別な特徴の一つは、キャップを滑動自在に口環に固定する手段にある。従来のアルミニウムキャップの底部縁部を折り曲げて内向きに突出するリングを形成するロールオーバー技術は、プラスチックが簡単には新規な形状に折り曲げ加工できないため、プラスチックキャップに直接応用できない。ところが、本発明によれば、アルミニウムに適用されているロールオーバーの考えに熱を併用すると、プラスチックキャップ底部のリングを良好に形成できることがわかった。熱を併用すると、穏やかな力の作用でプラスチックを流動化できる。新しい形にした後、プラスチックが冷却し、目的の新しい形に永久に硬化する。
【0007】
より具体的には、本発明は、底部に円形開口を形成したネジ頭の底部を超えて下向きに突出する円筒形のプラスチックスカートをもつプラスチックキャップを、軸部を有するネジ頭の周囲上にオーバー成形する工程を第1工程とするキャプティブ式パネル固定装置の製造方法を提供するものである。この方法では、次に、圧縮バネをネジの軸部周囲に設定してから、上端に半径方向に突出するフランジおよび下端にパネル取り付け手段を有する口環の貫通孔にこのバネを挿入する。その後、ネジは、キャップスカートが口環フランジの下に下向きに延びる地点まで口環の上面に対して押し込まれる。この時点で、プラスチックスカートの底部にある開口が、口環フランジの直径よりも小さい直径の半径リングに縮小する点までプラスチックスカートが永久的に変形するまで、プラスチックスカートの周囲にその底部縁部にそって熱および圧力を半径方向内向きに作用させる。この熱および圧力については、加熱された成形面に回転接触させることによって加えるのが好ましい。これによって、ネジの後退位置と前進位置との間においてネジを口環に軸方向に取りこむことができる。
【0008】
以下本発明の少なくとも一つの実施態様を詳しく説明するが、本発明は、それを適用するさい、以下に説明する、あるいは添付図面に図示した構成部材の構成および配置の細部に制限されるものではない。本発明は他の実施態様でも実施でき、また各種の方法で実施可能である。また、本明細書で使用する用語術語などは説明を目的とするもので、制限を意図するものではない。
【0009】
また、当業者ならば、本発明の技術思想は、本発明のいくつかの目的を実現する他の構造、方法およびシステムを設計する基礎としての応用が簡単であることを理解できるはずである。従って、特許請求の範囲については、本発明の精神および範囲から逸脱しない限り、このような等価な構成を包含するものとして考えるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のパネル固定装置の正面図である。
【図2】正面部分断面図である。
【図3】キャップをその底部縁部にそって成形する方法を示す正面部分断面図である。
【図4】キャップをその底部縁部にそって成形する方法を示す正面部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明のキャプティブ式パネル固定装置を示す図である。この固定装置の基本的な構成部材は、まず口環1に回転自在かつ滑動自在に固定されるキャップ3である。口環1は、口環1を第1パネルに固定するパネル装着手段2を有する。以下に詳しく説明するように、キャップ5の下縁部は本発明に従って成形し、各部材の組み付けを完了する。
【0012】
図2について説明すると、本発明のキャプティブ式パネル固定装置のネジ11は、その側面にそってローレット刻み12を有し、ここに溶融プラスチックを受け取り、耐トルク性を与えるようになっている。成形プラスチックキャップ13はネジ17の底部から離しておき、ネジ11を完全に前進させたときに、ネジ11の頭が口環1の上部に直接接触して、ネジ11と口環1との間の力の移動をより直接的にする。これは、口環1底部の装着手段によってネジ上部に比較的大きな力を作用させる必要がある場合に有利な作用効果である。このような装着手段としては、例えば、押圧力を作用させた場合にパネルからの金属の冷間流れを受け取るクリンチ式装着構造体2がある。向きを内に向けたリング16が、口環1の上部において半径方向に外側に向いたフランジ19に干渉し、口環に対してキャップを軸方向に保持する。
【0013】
図3および図4は、キャップ底部に内向きに設定されたリングを形成するために、直線状スカート部をもつ成形プラスチックキャップ13に対する回転圧力に熱を作用させ、キャプティブ式パネル固定装置のキャップを形成する、本発明の方法の適用前後を示す図である。これらの図から理解できるように、軸方向力を加え、図3に示すように、形成面15に対して固定装置を下方に移動し、形成面15には、熱及び圧力によってプラスチックキャップの底部縁部が図4に示す形状になるように溶解するよう熱が加えられる。このようにして成形を行うと、形成したリングが口環1の上部において向きが半径方向に外側にあるフランジ19と当接し、各部品の回転自在かつ滑動自在な係合を維持した状態で、キャップ13および口環1が引っ張られて離間することがなくなる。
【0014】
以上は、本発明の原理のみを説明するもので、当業者ならば、これら原理に基づく多くの改変、変更を容易に行うことができるはずである。換言すれば、本発明は、図示し、かつ説明してきた正確な構成および動作に限定されるものではない。従って、これらすべての改変、変更は本発明の範囲に包摂されるものである。
【符号の説明】
【0015】
1:口環
2:装着手段
3:キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャプティブ式パネル固定装置の製造方法において、
ネジ頭、軸部、およびこのネジ頭の底部を超えて下方に突出するキャップの円筒形プラスチックスカートを有し、そしてこのスカートが該底部に円形開口をもつプラスチックキャップ式ネジを用意する工程、
前記ネジの前記軸部周囲に圧縮バネを設ける工程、
上端部に半径方向に突出するフランジ、そして下端部にパネル装着手段を有する口環の貫通孔に前記キャップ式ネジを挿入する工程、
前記スカートが前記口環フランジの下に下向きに突出する前記口環の上面に対して前記ネジ頭の底部を押しつける工程、および
前記プラスチックスカートの底部縁部にそってその外周に半径方向内向きに熱および圧力を作用させて、前記口環フランジの外径よりも小さい直径のリングまで前記スカート底部の開口が小さくなる点まで前記底部縁部が永久的に変形し、これによって前記ネジの後退位置と前進位置との間において前記ネジを前記口環に軸方向を取り込む工程からなることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記プラスチックキャップをオーバー成形法によって前記ネジ頭周囲に形成する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記圧力を回転接触によって加熱された成形面に加える請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ネジが金属からなる請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記軸部がネジを刻設した細長い軸部である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
キャプティブ式パネル固定装置の製造方法において、
ネジ頭の底部を超えて下方に突出する円筒形プラスチックスカートであって、底部に円形開口を持つプラスチックスカートを有するプラスチックキャップを、軸部を有するネジ頭の周囲にオーバー成形する工程、
前記ネジの前記軸部周囲に圧縮バネを設ける工程、
上端部に半径方向に突出するフランジ、そして下端部にパネル装着手段を有する口環の貫通孔に前記キャップ式ネジを挿入する工程、
前記スカートが前記口環フランジの下に下向きに突出する前記口環の上面に対して前記ネジ頭の底部を押しつける工程、および
前記プラスチックスカートの底部縁部にそってその外周に半径方向内向きに熱および圧力を作用させて、前記口環フランジの外径よりも小さい直径のリングまで前記スカート底部の開口が小さくなる点まで前記底部縁部が永久的に変形し、これによって前記ネジの後退位置と前進位置との間において前記ネジを前記口環に軸方向を取り込む工程からなることを特徴とする製造方法。
【請求項7】
前記スカートがその底部端部に円形開口を有する請求項6に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−505860(P2013−505860A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531016(P2012−531016)
【出願日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/049937
【国際公開番号】WO2011/038079
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(501030625)ピーイーエム マネージメント,インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】PEM MANAGEMENT,INC.
【住所又は居所原語表記】103 Foulk Road,Suite 108,Wilmington,DE 19803 U.S.A.
【Fターム(参考)】