説明

プラスチック・グレージング・システム

自動車窓用の耐候性コーティングを有するプラスチック・グレージング・システムが開示されている。システムは、内面および外面を備える透明なプラスチック基材を備える。システムは、基材の外面上に配置された第1耐候層をさらに備える。耐候層は、ポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方を含む。第1耐候層は所定のガラス転移温度を有する。システムは、第1耐候層上に配置された第1耐磨耗層をさらに備える。第1耐磨耗層は、ポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方と両立できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第60/875、837号(2006年12月19日に出願)、発明の名称「自動車窓用の耐摩耗性が改善された耐候性コーティングを有するプラスチック・グレージング・システム」の利益を主張する。なお、この文献の全体の内容は本明細書において参照により取り入れられている。
【0002】
本発明は、自動車窓用の耐摩耗性が改善された耐候性コーティングを有するプラスチック・グレージング・システムに関する。
【背景技術】
【0003】
長年、自動車業界において窓用に用いられている構成要素はガラスである。知られているように、ガラスがもたらす耐摩耗性および紫外線(UV)耐性のレベルは、車両の窓として用いることに対して消費者に受け入れられるレベルである。その点では適切であるが、ガラス基材は、特徴として比較的重いため、配送および取り付けにおいてコスト高になる。またガラスの重量は、最終的に車両の総重量に影響を与える。多くの自動車工学用途では、ガラスの代わりに使用し、車両様式を拡張し、全体的な車両重量およびコストを下げるために、プラスチック材料が用いられている。透明なプラスチック材料に対して現れつつある応用例は、自動車窓システムである。
この業界において、より製造が簡単で重量が比較的軽いガラス代替窓システム、たとえばプラスチック窓システムを、機能性、たとえば耐候性、耐摩耗性、およびUV耐性を損なうことなく定式化することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第10/881,949号
【特許文献2】米国特許出願第11/075,343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は一般的に、耐摩耗性が改善された耐候性コーティングを有するプラスチック・グレージング・システムを提供する。プラスチック・グレージング・システムは、プラスチック基材、基材上に配置された耐候層、及び耐候層上に配置された磨耗層を備える。この例では、耐候層は耐摩耗性が増強されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態においては、システムは、内面および外面を備える透明なプラスチック基材を備える。システムはさらに、基材の外面上に配置された第1耐候層を備える。耐候層は、ポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方を含み、所定のガラス転移温度を有する。システムはさらに、第1耐候層上に配置された第1耐磨耗層を備える。第1耐磨耗層は、ポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方と両立(compatible)できる。
【0007】
本発明のさらなる目的、特徴、および優位性が、以下の説明および添付の請求項を、添付図面とともに考察したときに明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態により示されたプラスチック・グレージング・システムの断面図である。
【0009】
【図2】ポリマー・システムが表す弾性率(E)対温度のグラフであり、ガラス転移温度(Tg)の出現を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、プラスチック・グレージング・システム10の断面の一例を示す。プラスチック・グレージング・システム10は好ましくは、自動車窓として用いるシステムである。図示したように、プラスチック・グレージング・システム10は、透明なプラスチック基材14を備え、プラスチック基材14は、第1表面すなわち内面16と第2表面すなわち外面18とを有する。この実施形態においては、第2表面18は窓の外側すなわち「A」表面であり、第1表面16は窓の内側すなわち「B」表面である。
【0011】
基材は、本発明の代表的な実施形態により、好ましくはポリマー樹脂を含む。一実施形態においては、透明なプラスチック基材14は一般的に、ポリカーボネート、アクリル、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスルホン樹脂、ブレンドもしくは共重合体、または他の任意の好適な透明なプラスチック材料、またはそれらの混合物を含む。なおこれについては、以下でより詳細に述べる。前述したように、基材はポリカーボネートを含んでいても良い。この例では、基材の形成に好適なポリカーボネートは一般的に、次式の反復単位を含む。
【化1】


ここでRは、ポリマー生成反応において使用される二価フェノールの二価の芳香族ラジカル(たとえば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAとしても知られる)のラジカル);または有機ポリカルボン酸(たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸など)である。これらのポリカーボネート樹脂は、当該技術分野において良く知られているように、1または複数の二価フェノールをカーボネート前駆体(たとえばホスゲン、ハロホーメート、または炭酸エステル)と反応させることによって調製しても良い芳香族カーボネートポリマーである。使用可能なポリカーボネートの一例は、ゼネラル・エレクトリック社(General Electric Co.)から販売されるLEXAN(登録商標)である。
【0012】
また基材はポリエステルカーボネートを含んでいても良い。ポリエステルカーボネートは、カーボネート前駆体、二価フェノール、およびジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体を反応させることによって調製することができる。
【0013】
基材は熱可塑性材料または熱硬化性材料を含んでいても良い。好適な熱可塑性材料の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリメタクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、フッ素含有樹脂、およびポリスルホンが挙げられる。好適な熱硬化性材料の例としては、エポキシおよび尿素メラミンが挙げられる。
【0014】
アクリル・ポリマーは、基材を形成するために用いても良い他の材料である。アクリル・ポリマーは、モノマーたとえばアクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどから調製することができる。置換アクリレートおよびメタクリレート、たとえばアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、およびn−ブチルアクリレートを用いても良い。
【0015】
ポリエステルは、有機ポリカルボン酸(たとえば、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、ドデカン二酸など)またはそれらの無水物を、有機ポリオール含有の一級または二級ヒドロキシル基(たとえば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、およびシクロヘキサンジメタノール)を用いてポリエステル化することによって調製しても良い。
【0016】
ポリウレタンは、基材を形成するために使用可能な別のクラスの材料である。ポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって調製しても良い。有用なポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、MDI、イソホロンジイソシアネート、これらのジイソシアネートのビウレットおよびトリイソシアヌレートが挙げられる。有用なポリオールの例としては、低分子量脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0017】
基材を形成するために用いても良い他の材料の例としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ガラス、VALOX(登録商標)(ポリブチレンフタレート、ゼネラル・エレクトリック社から販売)、XENOY(登録商標)(LEXAN(登録商標)とVALOX(登録商標)とのブレンド、ゼネラル・エレクトリック社から販売)などが挙げられる。
【0018】
基材の形成は従来の仕方で、たとえば射出成形、押出成形、冷間成形、真空成形、ブロー成形、圧縮成形、トランスファー成形、サーマルフォーミング(thermal forming)などによって行うことができる。物品は、任意の形状であっても良く、商取引される完成品である必要はない。すなわち、物品は、完成品に向けて切断もしくはサイズ取りまたは機械的に成形されるシート材料またはフィルムであっても良い。基材は透明であっても良いし透明でなくても良い。基材は硬くても良いし柔軟であっても良い
【0019】
透明なプラスチック基材14は、ビスフェノール−Aポリカーボネートおよび他の樹脂グレード(たとえば分枝または置換)を含んでいても良いだけでなく、他のポリマー、たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)(ABS)、またはポリエチレンと共重合またはブレンドされていても良い。透明なプラスチック基材14はさらに、種々の添加剤、たとえば着色剤、離型剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤を含んでいても良い。
【0020】
図1に示すように、耐候層12が透明なプラスチック基材14上に配置されている。この実施形態においては、耐候層12は基材14の表面18上に設けられている。耐候層は好ましくは、とりわけ、紫外線(UV)吸収性分子、たとえばヒドロキシフェニルトリアジン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、ポリアロイルレゾルシノール、およびシアノアクリレートを含んでいる。一実施形態においては、耐候層12は有機化合物を含んでいる。たとえば、耐候層12は、ポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方であっても良い。この実施形態においては、プラスチック基材上にコーティングが印刷されて硬化されたシステムは、厚さが好ましくは約10〜65ミクロンであり、テーバー(パーセント・デルタ・ヘイズ)が約1〜5パーセント・デルタ・ヘイズ、好ましくは約2パーセント・デルタ・ヘイズである。
【0021】
ポリウレタン・コーティングは、シリコーン・ハードコートよりもかなり安価であり、比較的厚い膜厚で設けることができるため、その下に設けられたポリカーボネートに対するUV保護の改善が実現される。ポリウレタン・コーティングは本来、ポリイソシアネートおよびポリオールから作られる生成物として規定されていたが、現在では、より大まかに規定されており、反応がポリオール、ポリアミンとの間であろうと、水との間であろうと、ポリイソシアネートに基づくすべての系が含まれている。これは、ポリウレタン(PU)コーティングが、ウレタン、尿素、アロファネート、およびビウレット結合を含んでいても良いことを意味する。ポリウレタン・コーティングは、数十年前に最初に導入されてから急速に成長した。導入の理由は、その非常に汎用性のある化学的性質および優れた特性(特に強靱性、耐磨耗性、および耐薬品性に関するもの)がある一方で、柔軟であり、すべての種類の基材に良好に接着するからであった。
【0022】
塗料業界で用いられるPU技術には、ほぼ4つの幅広いカテゴリが存在する。最初の3つは反応系であり、4つめは、最終的に設ける間にイソシアネート反応を伴わないすべての系をカバーするものである。
【0023】
第1に、ポリイソシアネートとポリオールまたはポリアミンとから構成される2成分系であり、設ける直前に混合されて、室温で硬化される。次に、オーブン硬化PUが、ポリオールまたはポリアミンとの保管安定性のあるワン・パック混合物をもたらすためにブロック・イソシアネートを用いることを除いて、以前のものと同様の材料である。そしてイソシアネートは、暖められるとデブロックして、その結果、反応する。第3に、湿気硬化PUが、1成分の高分子量で低遊離イソシアネート含有プレポリマであり、空気からの湿分と反応することで硬化して尿素結合を形成する。
【0024】
反応性ポリウレタン塗料は一般的に、分枝ポリオールおよび/またはイソシアネートに起因してか、またはアロファネートおよびビウレットの形成を通して架橋される。架橋は、固さおよび耐摩耗性を増加させる一方で、水、溶媒、風化、および温度に対する耐性を向上させる。しかし使用するレベルが高すぎると、柔軟性の優位性は小さくなってしまう。非イソシアネート反応性配合物には、TPU系ラッカー、水性PU分散、ウレタンオイルおよびアルキドが包含され、放射線硬化されたポリウレタンも包含される。後者にはウレタン結合または尿素結合が含まれる。いま述べた非反応系はすべて、設ける間にイソシアネートが反応しないという共通点を有する。このPU塗料の族は、塗料用のすべてのPUの約35%を使っている。
【0025】
透明コーティング用に使用される一般的なイソシアネートは、IPDIおよびTMXDIである。それらは通常、トップコートの場合および多くの水性の手法の場合のようにUVまたは光安定性が好ましいときに用いられる。ポリオールに関しては、そのヒドロキシル値は50〜300ブラケットである。3つのタイプが一般的である。アクリル、ポリエーテル、およびポリエステルである。アクリルポリオールおよびポリエステルポリオールは、前述の平均的な耐候性を伴うより固いコーティングに対して好ましい傾向がある。またコーティング性能は、使用するポリオールの分岐レベルおよびヒドロキシル値の関数である。アミンおよび溶媒の混合物を選択しなければならないことに注意されたい。
【0026】
塗料中で用いられるアミン化合物は、ほとんどの場合に、ポリオキシアルキレンアミン、基本的にアミンが末端のプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、およびアミン末端鎖延長剤、たとえばジエチルトルエンジアミン(DETDA)またはイソホロンジアミン(IPDA)である。
【0027】
粘度を下げて処理を改善するために溶媒を添加する。しかし溶媒は、イソシアネートと反応してはならず、また反応系において設けるときに含水量が500ppm未満でなければならない。一例では、コーティング配合物のすべての成分を溶解して安定なエマルションを形成することに役立つように、3つ以上の溶媒を一緒に混合する。一般的に用いられる溶媒は、エステル、ケトン、エーテルエステルおよび極性芳香族または脂肪族タイプ(沸点が50℃から150℃超の範囲)である。
【0028】
非反応性PU系には通常、ウレタンまたは尿素結合を伴う完全成形されたポリマーが含まれるが、通常は遊離イソシアネートは含まれない。溶媒系ラッカーの場合、高分子量の線状ポリウレタンが形成されるかまたは溶媒中に溶解される。これらのPUは、脂肪族イソシアネート(主にTMXDIまたはIPDI)を、ポリエステルまたはポリエーテルポリオールおよび鎖延長剤と反応させることを通して得られる。ポリウレタンをスプレーして、それらのフィルムを溶媒を蒸発させることによって形成する。これらのフィルムは、穏やかな溶媒に対して比較的耐性があることに加えて、比較的柔軟で弾力性がある。
【0029】
放射線硬化の場合、この族には、主に、1成分で低粘度で100パーセント固体の生成物であるウレタンアクリレート・コーティングが含まれる。ウレタンアクリレート・コーティングは普通、設けることが容易であるとともに、紫外線または電子ビーム・エネルギー源によって室温で急速に硬化させることができる。木材、紙、プラスチック、およびインク・コーティングでは芳香族グレードが用いられる一方で、無黄変が好ましい場合には脂肪族系が用いられる。これは、とりわけ、PVC床タイルおよび連続的な床張りの場合である。またUV硬化可能なウレタンアクリレートは、接着剤、シール剤、および注封用または封入化合物中に存在する。
【0030】
オリゴマーが、プレポリマ(ジイソシアネートおよびポリエーテルまたはポリエステルポリオールから得られる)を、化学量論量のヒドロキシル含有アクリレートたとえばヒドロキシプロピルアクリレートと反応させることによって得られる。紫外線硬化の場合、ウレタンアクリレートオリゴマーを通常、反応性希釈剤および光開始剤として何らかのアクリレートモノマーたとえばトリプロピレングリコールジアクリレートまたはトリメチロールプロパンエトキシレートアクリレートとブレンドする。ベンゾフェノンは典型的な光開始剤であり、UVを吸収するとフリーラジカルを生成し、そしてアクリレート基を通して架橋を開始する。電子ビーム放射線(EB)の場合は、光開始剤に対する必要性がなくなる。UV硬化とEB硬化の間の主な違いは、電子ビームが厚くて不透明のフィルム層に進入する一方で、紫外線硬化は透明な膜または薄膜に限定されることである。
【0031】
前述したように、耐候性層にはポリウレタンアクリレートが含まれていても良い。ポリウレタンアクリレート・コーティングを自動車のポリカーボネート・グレージング用の耐候性層として用いることは、後述するように好都合であることが分かっている。一例では、耐候性コーティングを、熱的に設けても良いし、二重硬化コーティング法によって設けても良い。組成物をポリカーボネート基材上に直接設ける。自動車のポリカーボネート・グレージング用の多層コーティングの製造プロセスは、これらのウェット・コーティング組成物を、プラズマ層とともに、ポリカーボネート・グレージング・システムを製造するために用いることに及ぶ。本発明の例に関連して、用語「二重硬化コーティング組成物」は、UV照射時のフリーラジカル重合、さらに熱的に誘起される重合によって、硬化可能なコーティング組成物を意味する。
【0032】
ポリウレタンアクリレートを熱硬化する場合、ウレタン・コーティングの配合用にデザインされている多くのヒドロキシル機能性アクリル・ポリマーが利用可能である。アクリルウレタンによっていくつかの優れた性能特性が実現される。特性には、高い硬度および柔軟性、優れた光沢および保色性、耐化学性及び耐摩耗性が含まれる。ポリウレタンアクリレートは一般的に、2段階合成によって調製される。ジイソシアネートの過剰分が、最初にポリオール(一般的にグリコール)と反応し、それからヒドロキシル末端アクリレートと反応する。別の手順では、ジイソシアネートの過剰分が最初に、モノアルコールと反応し、次にポリオールと反応する。さらに別の手順では、これは1段階合成であるが、すべての反応物質が同時に反応する。
【0033】
熱硬化された系およびUV硬化された系の両方について、UV吸収剤を伴う場合と伴わない場合とについて、プラズマ層との接着について詳細に調べた。種々のプラズマ条件について詳細に調べた。両方の系との接着が実現できた。しかし、UV吸収剤が熱硬化系と二重硬化UV硬化系との両方に含まれていた場合、二重硬化系が、特定のプラズマ条件を伴うときに、接着および外観を実現することができた。
【0034】
ポリウレタンアクリレート・コーティングの硬化は、熱硬化または二重硬化(UV後に熱)のいずれかによって行なっても良い。プラズマ・コーティング(以下でより詳しく説明する)の場合、直流(DC)電圧を各カソードに印加して、対応する陽極板までアークを形成することを、アルゴン環境内で150トールよりも高い圧力(たとえば大気圧付近)で行うことによって、プラズマを生成する。そして大気付近の熱プラズマは、プラズマ処理チャンバ(プロセス圧力がプラズマ発生器内の圧力よりも下、たとえば約20〜約100である)内へと超音速で膨張する。
【0035】
一例では、2成分すなわち「2K」ポリウレタン(2K−PUA)系が、これらに限定されないが、ポリオール樹脂(デスモフェン(Desmophen)A870BA、バイエル(Bayer)製)とポリイソシアネート(デスモジュール(Desmodur)N3390ABA、バイエル製)との混合物を含んでいても良い。これらは、設ける前に混合されて、室温で硬化される。さらに、1成分すなわち「1K」ポリウレタン(1K−PUA)系が、これらに限定されないが、ポリオールを含む保管安定性のあるワン・パック配合物を実現するために用いられるブロック・イソシアネートを含んでいても良い。基材上に設けた後で、イソシアネートを非ブロックし、ポリオールと反応させてポリウレタン網を形成する。
【0036】
この例では、最初に3つの2K−PUA系を、プラズマ蒸着に対する中間層として評価した。これらの系を選んだのは、ガラス転移温度の範囲でコーティング(すなわち固さ)を評価して、性能に対するこの特性の影響を測定するためであった。表1に、これら2K−PUA系の組成を示す。
【表1】

【0037】
これらの2K−PUA系を、レーバークーゼン(バイエルAG)においてスプレー・コーティングした後に、プラズマ・コーティングした。2K−PUAの中間層厚さは25ミクロンであり、プラズマ・トップ・コートの厚さは2〜3ミクロンであった。プラズマ蒸着の前に、試料670および575は溶媒クレージングが原因で曇っていた。プラズマ蒸着の後、試料670は、プラズマ・トップコート中に多少の亀裂を示し、また3つの試料はすべて曇っていた(ヘイズ>4%)。プラズマ・コーティングした試料とともに2Kコーティングした対照(プラズマ・トップコートなし)にクロス・ハッチ接着試験を施し、その後に65℃の水に浸漬した。プラズマ・コーティングした試料および対照試料(下表中でCで指定)は最初、接着を示していたが、14日の水浸漬に合格したのは670−C試料のみであった。これらの試料における接着の損失は、接着不良後の表面のフーリエ変換赤外分光法(FTIR)に基づいて、ポリカーボネートと2K−PUA系との間で見出された。表2に、プラズマ・コーティング前後におけるこれらの試料の性能を示す。
【表2】

【0038】
ポリウレタン中間層スクリーニング実験:これらの有望な結果に基づいて、さらなる調査を行なって、プラズマ・コーティングが可能で、デスモフェンA665/デスモジュールN3390コーティングと比べて耐スクラッチ性の改善が可能な「より固い」ポリウレタン・コーティングを特定した。表3に、これらのスクリーニング実験から得られたテーバー磨耗(Taber abrasion)結果を示す。
【表3】

【0039】
表3に示す結果は、プラズマ蒸着後の個々の系の最良の性能を表わしている。性能を向上および/または再現する試みを行なった。ポリウレタン・コーティング厚さが変動するという懸念に対応するために、単一の系を用いて、異なるコーティング厚さでコーティングした。表4に結果を示す。白くなった外観は一般的に、コーティング系内に捕捉された溶媒に起因すると考えられており、一般的に、後硬化を100℃で2h行うことによって取り除かれる。
【表4】

【0040】
コーティング条件の影響:この一連の実験を、プライマー厚さ、トップコート厚さ、プライマーおよびトップコートのフラッシュ・オフ・タイム、トップコートの硬化時間および温度、トップコートへの触媒添加の各影響を理解するためにデザインした。ここまでテーバー試験において最良の性能を示していたポリウレタン系(A665/Z4470)を評価用に選択して、エグザテック(Exatec)から供給された基材上にコーティングし、エグザテックにおいてプラズマ・コーティングし、そしてエグザテックにおいて試験した。表5に、この評価から得られた結果をまとめる。
【表5】


対照試料の調製パラメーター:10μmプライマー厚さ、30’フラッシュ・オフ、15’80℃プライマー硬化、40μmトップコート厚さ、10°フラッシュ・オフ、10’、30℃/30’、130℃トップコート硬化。
【0041】
テーバー磨耗後のヘイズの変化のほとんどが、3〜5%の範囲である。テーバー試験自体のバラツキを考慮すると、検査中のほとんどのパラメーターについてプラズマ蒸着後の最終的な耐スクラッチ性に影響を与えなかったと、結論することができた。例外としては、対照条件下で調製された試料、プライマーが厚い試料、プライマーレス配合物がコーティングされた試料が挙げられる。これらの変動要素は、はるかに高いパーセント・デルタ・ヘイズ(>10パーセント・デルタ・ヘイズ)の一因となる。
【0042】
水浸漬試験から他のデータが利用できる。すべての試料について、初期接着があった(5B、100%)が、水浸漬において1日を超えて長く存続したのは3試料のみであった。これらの試料は、触媒作用が及んだ試料、トップコートに対する硬化時間が長い試料、プライマーにおけるフラッシュ・オフ・タイムが短い系であった。このデータから、トップコートにおける硬化の程度が高いほど水浸漬における性能が向上すると、結論することができる。水浸漬において1日が経った後に、すべての試料が割れ、場合によっては泡形成および層状剥離が始まった。7〜14日存続した試料は、試験の終わりまでに割れた。
【0043】
すべての試料を、QUV−相対磁気ベアリング(ASTM154、サイクル4)およびキセノン耐候性試験機(ASTMG155、サイクル2)での試験に出した。利用可能なデータが示唆するところによれば、ポリウレタン試料は、キセノンWOMおよびQUV−Aの両方に最小限暴露した後でも、やはり層状に剥離する。QUVからの試料は暴露後に激しく割れたが、XeWOMからの試料は接着の損失以外は変化がなかった。層状剥離がプラズマ・コーティングとポリウレタンとの間で起こった。
【0044】
新しいコーティング配合物:次に一連の実験を、新しいコーティング配合物についてその性能をプラズマ蒸着後にテーバー磨耗試験で試験するようにデザインした。表6に、これらの試験から得られた結果を示す。
【表6】

【0045】
これらの評価から得られた結果によって、さらなる評価に対する候補をいくつか選ぶための基礎が与えられた。この一連のコーティングから得られたデータが示すところによれば、2%デルタ・ヘイズに達するという目標は可能であるが、全体的な一貫性が引き続き問題である。一貫性が無いということは、各配合物からの試料#1および試料#2を比較したときに明白である。2つの試料を、各配合物がコーティングされたプラークから切断して、テーバー磨耗について試験した。ほとんどの場合において、試料#1および試料#2は著しく異なっていた。いくつかのプライマーレス配合物に対しては、接着も問題であった。いくつかの試料が、水浸漬において13日間が経過した後でも接着を維持していたが、テーバー磨耗において良好に機能して水浸漬において13日間存続したのは1つの系のみであった(A670/A365−N3390)。このデータに基づいて、プライマーを必要とせずにテーバーが2%の範囲である試料(上表において強調している)を選択して、さらなる評価に備えた。具体的には、系A665−N3390/2020/1、A670/A365−N3390、2009、および670/A365−N75である。
【0046】
再現:前述の評価から選択した4つの系を、エグザテック製のポリカーボネート・パネル上に再びスプレー・コーティングし、プラズマ・コーティングして、前回の試験から得られた結果を確認するために再び試験した。各配合物をそれぞれ2つのパネル上にコーティングし、新しい配合物を評価に加えて、すべてを、テーバーにおける性能(各配合物に対して4つの試料)、水浸漬(各配合物に対して2つの試料)、およびQUV(各配合物から2つの試料)に対して試験した。表7に、テーバーおよび水浸漬から得られた結果(テーバー#2およびWI#2)を示し、前回の試験から得られたデータ(テーバー#1およびWI#1)と比較する。
【表7】

【0047】
テーバー性能の再現性が2パーセント・デルタ・ヘイズ未満であることは問題であったが、水浸漬結果は前回の実験と一致していた。この再評価から、系HVS53−6−10およびHVS53−6−16についてさらに詳細に検討した。
【0048】
実験:ポリカーボネート基材を、ポリウレタン系のコーティングを行うためにバイエルに送った。これらの基材を、バイエルにおいてスプレー・コーティングした後に、エグザテックに送ってプラズマ・コーティングを施した。次に試料を小さい部分に切断して試験した。
【0049】
中間層としてのポリウレタン・コーティングのいくつかの評価については、プラズマ蒸着前に残留溶媒がコーティング内に捕捉されているために、複雑であった。試料は、プラズマチャンバから出てきたときには、ほぼ不透明(白くなった)であり、優位性の低い品質であった。
【0050】
問題の原因は実際には残留溶媒であることを確かめるために、保留物(プラズマ・コーティングされなかった試料)をオーブン内で100℃で7時間、後乾燥し、そして2週間後にプラズマ・コーティングした。デスモフェンA665/デスモジュールN3390およびデスモフェンA665/デスモジュールLS−2307に基づくコーティングは、以前よりも良好であることが分かったが、デスモフェンA665/デスモジュールN3390/4470は変わらなかった。硬化条件を詳細に調べるまで、すべての試料についてプラズマ蒸着前に後硬化することは、一般的な手法となった。このように調べた後は、後処理はもはや必要ではなかった。
【0051】
耐候性コーティング系に対して、おおよその厚さが20ミクロンである3つの系について、以下のような4つの異なるプラズマ条件の下で試験した:アクリレートUV硬化のみ;ポリウレタンアクリレート二重硬化;およびポリウレタンアクリレート熱硬化。未コーティングのプラスチック基材に対するプラズマ・コーティング系については、次に第1コーティング層(1A)を、下表で述べる条件を用いて堆積する。第1コーティング層(1A)を堆積した後に、第2コーティング層(2A)の堆積を、約37アンペアのアーク電流、約150sccmの反応試薬流量、および約800sccmの酸素(O)流量を用いて行う。
【表8】

【0052】
結果については、プラズマ蒸着の後に、コーティング系全体を水浸漬接着試験によって試験した(下表9を参照)。
【表9】

【0053】
ポリウレタンアクリレートポリマーを、熱硬化して二重硬化した(UV後に熱)。厚さは、この例では15〜30ミクロンの範囲であった。設けは、展色またはスプレーによる設けであった(下表10を参照)。
【表10】

【0054】
未コーティングのプラスチック基材Aに対するプラズマ・コーティング系については、次に第1コーティング層(1A)を、下表に示すプラズマ条件を用いて堆積する。第1コーティング層(1A)を堆積した後に、第2コーティング層(2A)の堆積を、約37アンペアのアーク電流、約150sccmの反応試薬流量、および約800sccmの酸素(O)流量を用いて行う。
【表11】

【0055】
結果については、各コーティング系を、水浸漬後の接着について試験した後に、外観によって透明性および亀裂挙動について試験した。下表12に列記した以下の3つの系のみが、以下のプラズマ条件を用いて、接着に合格した。
【0056】
第1コーティング層(HC1B)の堆積を、約31アンペアのアーク電流、約100sccmの反応試薬流量、および約0sccmの酸素(O)流量を用いて行なった。第1コーティング層(HC1B)を堆積した後に、第2コーティング層(HC2B)の堆積を、約37アンペアのアーク電流、約150sccmの反応試薬流量、および約800sccmの酸素(O)流量を用いて行なった。
【表12】

【0057】
この例では、耐候層12は所定のガラス転移温度(Tg)を有している。耐候層のガラス転移温度は好ましくは、約60℃を上回る。異なるポリウレタンおよびポリウレタンアクリレート樹脂をインク配合物内に一緒にブレンドしたときには、結果として生じる系のガラス転移温度は前述の範囲を満足しなければならない。しかし、混合物内に1または複数のポリウレタンまたはポリウレタンアクリレートがあると、指定範囲の外側の別個のTg値を示す場合がある。
【0058】
通常、樹脂のブレンドがもたらすTgblendは、ブレンド中に存在する各樹脂が示す別個のTg値の間に位置する。このTgbiendは、下の等式1に示すように、ブレンドされたインク中に存在する各樹脂の量に依存する。式において、WおよびWは、別個にガラス転移温度TgおよびTgをそれぞれ示す各樹脂の重量分率である。耐候層が樹脂のブレンドを含む場合、このブレンドが示す1/Tgbiendの比率は、約0.002985未満でなければならず、約0.0029239未満が特に好ましい。Tはケルビンでなければならない。Tは、以下の等式を用いてケルビンでなければならない。
【0059】
1/Tgblend=(W/Tg)+(W/Tg).(1)
【0060】
非晶質材料のガラス転移温度(Tg)が表わす温度は一般的に、その温度未満では、分子が比較的動けないかまたはその可動性が比較的無視できるというものである。ポリマーに対しては、物理的に、この意味は、関連する高分子鎖が実質的に動かなくなるということである。換言すれば、高分子主鎖の並進運動とともに高分子セグメントの曲げまたは巻き解きが、ガラス転移温度未満では禁止されるということである。より大きい規模では、これらのポリマーは固い(hard)かまたは硬い(rigid)状態を示す。そのガラス転移温度を超えると、これらのポリマーは、より柔軟であるかまたは「ゴムのように」なり、その結果、より大きい弾性または塑性変形の能力を、破砕せずに示す。この遷移が起こる原因は、高分子鎖がもつれを解いてより自由になることで、回転して互いに滑り合うからである。Tgは通常、非晶質相に適用可能であり、一般にガラスおよびプラスチックに適用可能である。熱処理および分子再配列、空孔、誘起歪みなどの要因、および材料の状態に影響する他の要因が、Tgに影響する場合がある。Tgは、材料の粘弾性特性に依存し、そのため印加負荷のレートとともに変化する。
【0061】
ポリマーに関しては、Tgは多くの場合に、ポリマーの約50個の元素の協同運動に対する活性化エネルギーをギブスの自由エネルギーが超えるような温度として表現される。この結果、分子鎖は、力が印加されたときに互いに滑り合うことができる。この定義から、側鎖および比較的堅い化学基(たとえばベンゼン環)を導入することは流れプロセスと干渉し、その結果、Tgを増加させることになる。この影響が原因で、熱可塑性とともに材料の剛性が減少する。
【0062】
高分子系のTgを決定するもっとも一般的な方法は、熱力学的な特性(たとえば弾性率)において起こる変化を温度の関数としてモニタすることである。図2に示すように、高分子材料の弾性率(E)は温度の増加とともに減少する。ガラス転移温度に達すると、弾性率は、材料が流れ始めるまで比較的一定のままである。弾性率が一定のままである領域を「ゴム」プラトーと言う。高分子材料のガラス転移温度を測定する他の多くの手段(少しだけ例を挙げると、熱機械分析(TMA)または示差走査熱量測定(DSC)など)は、ポリマー合成の当業者に知られている一般的な分析方法である。
【0063】
ポリマー系が示すTgは、ポリマー・マトリックスに可塑剤を添加することによって著しく下げることができる。可塑剤の小分子が高分子鎖の間に食い込む結果、鎖がさらに離れ(すなわち、自由体積が増加し)、より容易に互いに対して移動できる場合がある。
【0064】
種々の添加剤を耐候層12に添加しても良い。たとえば、とりわけ、着色剤(ティント)、レオロジー制御剤、離型剤、酸化防止剤、および赤外吸収または反射色素である。耐候層12(任意の複数の中間層を含む)は、薄膜として押出成形または鋳造しても良いし、別個のコーティングとして設けても良い。耐候層を含む任意のコーティングについてその設けを、浸漬コーティング、フロー・コーティング、スプレー・コーティング、カーテン・コーティング、または当業者に知られている他の技法によって行なっても良い。プラスチック・グレージング・システム10はさらに、プラスチック・パネルの表面16上の(たとえば、窓の「B」表面すなわち内面に向かう)層20上に配置される耐磨耗層22を含む。
【0065】
耐磨耗層34を、耐候層12の最上部の窓の「A」表面すなわち外面18に設ける。耐磨耗層34は、耐候層12と両立できて、約1〜5パーセント・デルタ・ヘイズ、好ましくは、2パーセント・デルタ・ヘイズのテーバー磨耗性能になる。また耐磨耗層34は、層状物品の耐スクラッチ性を増加させるように機能し、通常は、ケイ素、水素、炭素、および酸素を含むプラズマ重合された有機ケイ素材料(一般的にSiOと言われる)を含む。通常、0.5<X<2.4、0.3<Y<1.0、および0.7<Z<4.0である。耐磨耗層は通常、厚さが0.5〜5.0ミクロンであり、より典型的には1.0〜4.0ミクロン、より典型的には2〜3ミクロンである。
【0066】
耐磨耗層34は、耐磨耗層22と、化学組成または構造において実質的に同様であっても良いし異なっていても良い。耐磨耗層22および34の一方または両方とも、UV吸収または遮蔽添加剤を含んでいても良い。耐磨耗層22および34は両方とも、1つの層から構成されていても良いし、可変組成の複数の中間層の組み合わせから構成されていても良い。耐磨耗層22および34の設けは、当業者に知られている任意の真空蒸着技法で行なっても良い。たとえば(これらに限定されないが)プラズマ励起化学気相成長法(PECVD)、膨張熱プラズマPECVD、プラズマ重合、光化学蒸着、イオン・ビーム蒸着、イオン・プレーティング蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、蒸発、中空陰極活性化蒸着、マグネトロン活性化蒸着、活性化反応蒸着、熱化学気相成長法、および任意の既知のゾル・ゲル・コーティング・プロセスである。
【0067】
本発明の代表的な実施形態によれば、PECVDを用いて、有機ケイ素化合物および過剰酸素の重合および酸化反応を、10〜10ジュール/キログラム(J/kg)の範囲のパワー密度を用いて開始する。パワー密度を高くすると、容易に割れるフィルムが製造される場合があり、密度を低くすると、耐磨耗性が低いフィルムが製造される場合がある。通常、酸素の存在量は、有機ケイ素化合物内のすべてのケイ素および炭素を酸化するのに化学量論理的に必要な量を上回っている。
【0068】
パワー密度はW/FMの値である。ここで、Wはプラズマ生成用に印加される入力パワーであってJ/秒で表現され、Fは反応ガスの流量であってモル/秒で表現され、Mは反応物質の分子量であってkg/モルである。ガスの混合物の場合には、パワー密度はW/ΣFから計算することができる。ここで、「i」は混合物中の「i番目の」ガス成分を示す。パワー密度範囲内でかつ過剰酸素を用いて実行することにより、単一の重合保護層を基材表面上に形成することができる。層は実質的に無亀裂で、透明で、無色で、固くて、表面に強く接着している。
【0069】
本明細書の一実施形態においては、膨張熱プラズマ反応器を含む特定のタイプのPECVDプロセスが好ましい。この特定のプロセス(以後、膨張熱プラズマPECVDプロセスと言う)については、以下の文献に詳細に記載されている。米国特許出願第10/881,949号(06/28/2004に出願)および米国特許出願第11/075,343号(03/08/2005に出願)。なお両文献の全体は、本明細書において参照により取り入れられている。膨張熱プラズマPECVDプロセスでは、直流(DC)電圧をカソードに印加して、対応する陽極板までアークを形成することを、不活性ガス環境内で150トールよりも高い圧力(たとえば大気圧付近)で行うことによって、プラズマを生成する。そして大気付近の熱プラズマは、プラズマ処理チャンバ(プロセス圧力がプラズマ発生器内の圧力よりも下、たとえば約20〜約100mTorrである)内に超音速で膨張する。
【0070】
膨張熱プラズマPECVDプロセス用の反応試薬としては、たとえば、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、ビニル−D4または別の揮発性有機ケイ素化合物を挙げても良い。有機ケイ素化合物は、アーク・プラズマ蒸着機器内で、通常は酸素および不活性キャリア・ガス(たとえばアルゴン)の存在下で、酸化、分解、および重合されて耐磨耗層を形成する。
【0071】
耐磨耗層22および34は無機化合物から構成されていても良い。たとえば、耐磨耗層22および34は、以下のものから構成されていても良い。酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンオキシ・ナイトライド、シリコンオキシ・カーバイド、水素添加シリコンオキシ・カーバイド、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム・スズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、またはこれらの混合物またはブレンドである。好ましくは、耐磨耗層22および34は、堆積層中に残存する炭素および水素原子の量に応じてSiO〜SiOの範囲の組成物から構成される。
【0072】
本発明の一実施形態には、収率が増大したプラスチック・グレージング・システムの製造方法が含まれる。この実施形態においては、透明なプラスチック基材は好ましくは、ビスフェノール−Aポリカーボネートおよび他の樹脂グレード(たとえば分枝または置換)を含んでいるだけでなく、他のポリマー、たとえばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(アクリロニトリルブタジエンスチレン)(ABS)、またはポリエチレンと共重合またはブレンドされる。基材は好ましくは、窓(たとえば車両窓)に、プラスチック・ペレットまたはシートから、当業者に既知の任意の技法を用いることによって形成する。技法は、たとえば押出、成形、たとえば射出成形、ブロー成形、および圧縮成形、または熱成形(thermoforming)、たとえばサーマルフォーミング、真空成形、および冷間成形である。プラスチック・シートを用いた窓の形成は、本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、印刷前に、印刷後に、またはプライマーおよびトップ・コートの設け後に行なっても良いことに注意されたい。
【0073】
この実施形態においては、本方法にはさらに、耐候層を基材の第1表面に設けることが含まれる。耐候層は、前述したポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方を含むインクである。系は、厚さが好ましくは約15〜65ミクロンであり、テーバー(パーセント・デルタ・ヘイズ)が約1〜5パーセント・デルタ・ヘイズ、好ましくは約2パーセント・デルタ・ヘイズである。
【0074】
この実施形態においては、本方法にはさらに、基材上の耐候層を室温で約20分間乾燥させること、および基材上の耐候層を約90〜100℃で約30分間硬化させることが含まれる。本方法にはさらに、耐候性の層をプラスチック基材の第2表面に、フロー、浸漬、またはスプレー・コーティング・プロセスを用いて設けることが含まれる。
【0075】
この例では、本方法にはさらに、耐磨耗層を耐候性の層の最上部に設けることが含まれる。耐磨耗層は、SiO〜SiOの範囲の組成物から構成される。耐磨耗層の堆積は、以下のプロセスの少なくとも1つを用いて行う。すなわち、プラズマ励起化学気相成長法(PECVD)、膨張熱プラズマPECVD、プラズマ重合、光化学蒸着、イオン・ビーム蒸着、イオン・プレーティング蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、蒸発、中空陰極活性化蒸着、マグネトロン活性化蒸着、活性化反応蒸着、熱化学気相成長法、および任意の既知のゾル・ゲル・コーティング・プロセスであり、膨張熱プラズマPECVDプロセスが好ましい。
【0076】
本発明を、好ましい実施形態に関して説明してきたが、当然のことながら、本発明はそれらに限定されず、なぜならば当業者は変更を、特に前述の教示を考慮して行なっても良いからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車窓用の耐候性コーティングを有するプラスチック・グレージング・システムであって、
内面および外面を備える透明なプラスチック基材と、
基材の外面上に配置された第1耐候層であって、ポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方を含み、所定のガラス転移温度を有する第1耐候層と、
第1耐候層上に配置された第1耐磨耗層であって、ポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方と両立(compatible)できる第1耐磨耗層と、
を備える、システム。
【請求項2】
第1耐磨耗層がポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方と両立できて、システムのテーバー摩耗(Taber abrasion)性能が約1〜5パーセント・デルタ・ヘイズになる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
システムのテーバー摩耗性能が約2パーセント・デルタ・ヘイズである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
耐候層が、二重硬化コーティングによってコーティングされ、ガラス転移温度が約60℃を超える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
耐候層が、W/Tg比の和が約0.002985未満である樹脂の混合物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
内面上に堆積された第2耐候層と、
第2耐候層上に堆積された第2耐磨耗層と、をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
第1耐候層上に堆積された第1耐磨耗層と、第2耐候層上に堆積された第2耐磨耗層が実質的に同様である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
ポリウレタンが1Kおよび2Kポリウレタン系の一方を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
耐候層が紫外線吸収用の紫外線吸収性分子を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
透明なプラスチック基材が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、およびそれらの共重合体または混合物のうちの1種を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
第1耐候層上に設けられる第1耐磨耗層が、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、シリコンオキシ・ナイトライド、シリコンオキシ・カーバイド、水素添加シリコンオキシ・カーバイド、炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム・スズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、またはチタン酸ジルコニウム、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
第1耐候層が有機化合物を含み、第1耐磨耗層が無機化合物を含み、第1耐候層が第1耐磨耗層と両立できる、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
第1耐磨耗層が第1耐候層に接着する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
プラスチック・グレージング・システムを製造する方法であって、
透明なプラスチック基材上に第1耐候層を設けることであって、第1耐候層はポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方を含み、第1耐候層は所定のガラス転移温度を有する、設けること、および
第1耐候層上に配置される第1耐磨耗層を設けることであって、第1耐磨耗層はポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方と両立できる、設けること、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
透明なプラスチック基材上の第1耐候層と反対側に第2耐候層を設けること、
第2耐候層上に第2耐磨耗層を設けること、および
第1および第2耐候層を、約90〜100℃において少なくとも約30分間乾燥させること、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1耐磨耗層がポリウレタンおよびポリウレタンアクリレートの一方と両立できて、約1〜5パーセント・デルタ・ヘイズの系のテーバー摩耗性能になる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
システムのテーバー摩耗性能が約2パーセント・デルタ・ヘイズである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
第1および第2耐候層は、ガラス転移温度が約60℃を超える、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
耐候層が、W/Tg比の和が約0.002985未満である樹脂の混合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
ポリウレタンが、1Kおよび2Kポリウレタン系の一方を含む、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−513103(P2010−513103A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543181(P2009−543181)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/088120
【国際公開番号】WO2008/077098
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】