説明

プラスチック又はプラスチック前駆物質中の解凝集硫酸バリウムの分散系の製造方法

本発明は、0.5μm未満の平均一次粒径を有し、かつ分散剤で被覆された解凝集硫酸バリウムをプラスチック又はプラスチックの前駆物質中、例えばポリオール中に組み入れる方法を開示する。解凝集硫酸バリウムを有機溶媒に分散させ、この分散系をプラスチック又はプラスチックの前駆物質中に組み入れ、かつ前記溶媒を蒸発させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、プラスチック又はプラスチック前駆物質中の解凝集(deagglomerated)硫酸バリウムの分散系の製造方法に関し、ポリオール製剤又はジイソシアネート製剤中の分散系にも関する。
硫酸バリウムのプラスチック用フィラーとしての使用は既知である。国際特許出願WO00/14165は、担体材料中に微細形態で組み込まれた硫酸バリウムの製剤を開示している。粒径は0.01〜10μmであり;この製剤は艶消しに関して良い特性を有する。その製造は担体材料の存在下での湿式微細製粉によって行われる。
国際特許出願WO02/30994は、ポリマー形成前に、この種の無機硫酸バリウムをポリマーの原材料に添加することを開示している。有機物質中に組み込まれる無機固体の好ましい平均粒径D50は0.25〜0.45μmである。ポリエステル及びポリアミド中で該添加剤組成物を使用する。
国際特許出願WO00/57932は、ナノコンポジットと呼ばれるものを含む外科用途の材料を開示している。フィラー粒子を有機化合物で処理して、その分散性を高め、その凝集又は集合する傾向を低減し、かつ分散系の均一性を向上させることができる。この目的で使用する化合物の例として、製造中の外科用材料のモノマー、シトレート又は他の化合物などの有機化合物が挙げられる。有機シラン等のカップリング剤又は界面活性剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム)等のポリマー材料も利用できるが、両親媒性分子、すなわち親水性部分と疎水性部分を有する分子も利用できる。特定されたものとして、ノニルフェノールエトキシレート、ビス(2-エチルヘキシル)スルホスクシネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、及びリン脂質が挙げられる。実施例は、非被覆硫酸バリウム又は沈殿後にクエン酸ナトリウムで被覆した粒子を使用する。
国際特許出願WO01/05883は、フィラーを有するポリウレタンを調製する目的で、ポリオール又はイソシアネート中にフィラーを組み入れる方法を開示している。ナノスケールのフィラーとしてSiO2の分散系が使用される。
【0002】
本明細書の優先日には未公開のPCT/EP04/013612として提出された国際特許出願は、非常に良い再分散性を有し、ポリマー中への組入れによく役に立ち、かつ該ポリマーに耐引っかき性などの有利な特性を与える解凝集硫酸バリウムを開示している。
本発明の目的は、上記PCT出願PCT/EP04/013612に記載の硫酸バリウムをプラスチック又はプラスチック前駆物質中に組み入れる有利な方法を特定することである。
本発明のプラスチックプレミックス又はプラスチック(分散剤と、前記プラスチックプレミックス又はプラスチックの総質量に対して解凝集硫酸バリウムを含み、任意に結晶化抑制剤を含有してよい一次粒子を0.1質量%〜70質量%含み、一次粒子の平均径が0.5μm未満、好ましくは0.1μm未満、特に80nm未満、特に好ましくは50nm未満、さらに好ましくは20nm未満、非常に特に好ましくは10nm未満である)の製造方法は、分散剤の存在下、連続有機相としての有機溶媒中で、結晶化抑制剤を含む硫酸バリウムを分散させ、かつ解凝集する工程、この分散系をプラスチック又はプラスチックの前駆物質中に導入する工程、及び前記溶媒を蒸発させる工程を想定する。
国際特許出願PCT/EP04/013612に記載の硫酸バリウムは、以下のさらに詳細な記載で明らかになる。
好ましくは0.1μm未満、特に0.08μm(すなわち80nm)未満、非常に特に好ましくは0.05μm(すなわち50nm)未満、なおさらに好ましくは0.03μm(すなわち30nm)未満の平均(一次)粒径を有する解凝集硫酸バリウムが与えられる。特に優れた粒子は20nm未満、特に10nm未満の平均一次粒径を有する粒子である。一次粒径の下限は、例えば5nmであるが、それ未満でさえもよい。問題の粒径は、XRD又はレーザー回折法で決定される平均粒径である。結晶化抑制剤の存在下で硫酸バリウムを沈殿させる(該沈殿中に分散剤が存在)ことによって、及び/又は沈殿後に分散剤の存在下で硫酸バリウムを解凝集することによって、好ましい硫酸バリウムが得られる。
解凝集硫酸バリウム中の結晶化抑制剤及び分散剤の量はフレキシブルである。硫酸バリウムの質量部当たり、結晶化抑制剤及び分散剤はそれぞれ2質量部まで、好ましくは1質量部まで可能である。結晶化抑制剤及び分散剤は、好ましくはそれぞれ解凝集硫酸バリウム中に1質量%〜50質量%の量で存在する。存在する硫酸バリウムの量は、好ましくは20質量%〜80質量%である。
【0003】
その通常の製法の過程で、硫酸バリウムは一次粒子で構成される凝集塊(“二次粒子”)を形成することが知られている。この文脈における用語“解凝集(deagglomerated)”は、二次粒子が完全に一次粒子(単離状態で存在する)に分解したことを意味しない。この用語は、硫酸バリウムの二次粒子が典型的に沈殿で生成されるのと同じ凝集状態ではなく、より小さい凝集塊の形態であることを意味する。本発明の解凝集硫酸バリウムは、好ましくは2μm未満、好ましくは1μm未満の平均粒径を有する凝集塊(二次粒子)を含む。その平均粒径は好ましくは250nm未満であり、非常に特に好ましくは200nm未満である。なおさらに好ましくは、該平均粒径は130nm未満、特に好ましくは100nm未満、非常に特に好ましくは80nm未満;なおさらに好ましくは50nm未満、さらに30nm未満が好ましい。部分的又は実質的に全体的にでさえ、硫酸バリウムは非凝集一次粒子の形態である。問題の平均粒径は、XRD又はレーザー回折法で決定される当該平均粒径である。
50nm未満、好ましくは30nm未満、特に20nm未満、非常に特に10nm未満の平均一次粒径を有する対応硫酸バリウムは、少なくとも30m2/g、特に少なくとも40m2/g、特に好ましくは少なくとも45m2/g、非常に特に好ましくは少なくとも50m2/gのBET表面積を有する。
好ましい結晶化抑制剤は、少なくとも1個のアニオン性基を有する。結晶化抑制剤のアニオン性基は、好ましくは少なくとも1個のスルフェート、少なくとも1個のスルホネート、少なくとも1個(好ましくは少なくとも2個)のホスフェート、少なくとも2個のホスホネート又は少なくとも2個のカルボキシレート基である。
結晶化抑制剤は、例えば、この目的のために使用されることが既知の物質であり、WO01/92157で特定されているような相対的に短鎖又は長鎖のポリアクリレート(典型的にナトリウム塩の形態);ポリエーテル、例えばポリグリコールエーテル;エーテルスルホネート、例えばナトリウム塩の形態のラウリルエーテルスルホネート;フタル酸のエステル及びフタル酸誘導体のエステル;ポリグリセロールのエステル;アミン、例えばトリエタノールアミン;及び脂肪酸のエステル、例えばステアリン酸エステルが挙げられる。
【0004】
結晶化抑制剤として、炭素鎖Rとn個の置換基[A(O)OH]を有する下記式(I)の化合物又はその塩も使用できる。
(I) R[-A(O)OH]n
式中、
Rは疎水性部分及び/又は親水性部分を有する有機基であり、Rは低分子量のオリゴマー又はポリマーで、任意に分岐し、及び/又は環式炭素鎖(任意に酸素、窒素、リン若しくは硫黄ヘテロ原子を含んでよく、及び/又は酸素、窒素、リン若しくは硫黄を介して基Rに結びつく基で置換されている)であり、
AはC、P(OH)、OP(OH)、S(O)又はOS(O)であり、
かつnは1〜10,000である。
モノマー又はオリゴマー化合物の場合、nは好ましくは1〜5である。
この種の有用な結晶化抑制剤として、カルボン酸化合物、特に少なくとも1個のヒドロキシル基で置換されているカルボン酸化合物が挙げられる。非常に有用な例として、ヒドロキシ-置換モノカルボン酸とジカルボン酸が挙げられる。このようなカルボン酸は、鎖中に好ましくは1〜20個の炭素原子(COO基の炭素原子は数えない)を有し、例えばクエン酸、リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン-1,4-二酸)、ジヒドロキシコハク酸及び2-ヒドロキシオレイン酸などである。非常に特に好ましくは、結晶化抑制剤としてクエン酸及びポリアクリレートが与えられる。
1〜10個の炭素原子の鎖長のアルキル(又はアルキレン)基を有するホスホン酸化合物も非常に有用である。この文脈で有用な化合物は、1、2又は3以上のホスホン酸基を有する当該化合物である。これら化合物はさらにヒドロキシル基で置換されている。非常に有用な例として、1-ヒドロキシエチレンジホスホン酸、1,1-ジホスホノプロパン-2,3-ジカルボン酸及び2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸が挙げられる。これらの例はホスホン酸基のみならずカルボン酸基をも有する化合物も同様に有用であることを示す。
また、1〜5個又はそれより多くの窒素原子と、1以上、例えば5個までのカルボン酸基又はホスホン酸基とを含み、かつ任意にさらにヒドロキシル基で置換されている化合物も非常に有用である。このような化合物として、例えば、エチレンジアミン又はジエチレントリアミン枠組みとカルボン酸又はホスホン酸置換基を有する化合物が挙げられる。非常に有用な化合物の例として、ジエチレントリアミンペンタキス(メタンホスホン酸)、イミノジコハク酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸及びN-(2-ヒドロキシエチル)-エチレンジアミン-N,N,N-三酢酸が挙げられる。
また、ポリアミノ酸、例えばポリアスパラギン酸も非常に有用である。
1〜20個の炭素原子(COO基の炭素原子は数えない)と1以上のカルボン酸基を有する硫黄-置換カルボン酸、例えばスルホコハク酸ビス-2-エチルヘキシルエステル(ジオクチルスルホスクシネート)も極端に有用である。
結晶化抑制剤は、好ましくは少なくとも2個のカルボキシレート基を有する任意にヒドロキシ-置換されているカルボン酸;硫酸アルキル;ベンゼンスルホン酸アルキル;ポリアクリル酸;ポリアスパラギン酸;任意にヒドロキシ-置換されているジホスホン酸;少なくとも1個のカルボン酸又はホスホン酸を含み、かつ任意にヒドロキシル基で置換されているエチレンジアミン又はジエチレントリアミン誘導体;又はこれらの塩である。
当然、添加剤の混合物も使用可能であり、例えば、亜リン酸のようなさらなる添加剤との混合物が挙げられる。
結晶化抑制剤、特に式(I)の結晶化抑制剤を有する上記硫酸バリウム中間体の調製は、想定した結晶化抑制剤の存在下で硫酸バリウムを沈殿させることによって有利に行われる。例えば、インヒビターを少なくとも部分的に、又は全体的にアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩として、又はアンモニウム塩として使用することによって、該インヒビターの少なくとも一部を脱プロトンすると、有利である。もちろん、酸を用いて相当量の塩基を加えるか、又はアルカリ金属の水酸化物溶液の形態も可能である。
【0005】
解凝集硫酸バリウムは結晶化抑制剤のみならず、分散作用を有する薬剤をも含む。この分散剤が、実際の沈殿の際に添加されると、望ましくない大きな凝集塊の形成を防止する。後述するように、引き続く解凝集段階で分散剤を添加することもでき;それが、再凝集を妨げて、凝集塊が容易に再分散することを保証する。
分散剤は、好ましくは硫酸バリウムの表面と相互作用できる1以上のアニオン性基を有する。このようなアニオン性基は、硫酸バリウム粒子の表面の固定基として作用するだろう。好ましい基はカルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、ビスホスホネート基、スルフェート基及びスルホネート基である。
使用可能な分散剤として、結晶化抑制剤作用のみならず分散作用をも有するいくつかの上記薬剤が挙げられる。この種の薬剤を使用する場合、結晶化抑制剤と分散剤が同一でもよい。日常的な試験を利用して好適な薬剤を決定できる。結晶化抑制剤作用と分散作用を有するこの種の薬剤の結果、沈殿する硫酸バリウムが特に小さい一次粒子として得られ、容易に再分散しうる凝集塊を形成することとなる。結晶化抑制剤と分散性の両作用を有するこの種の薬剤を使用する場合、その沈殿の際に該薬剤を添加してよく、所望により、その存在中にさらに解凝集を行ってよい。
結晶化抑制剤作用及びと分散作用を有する異なる化合物を使用するのが一般的であり、かつ好ましい。
非常に有利な解凝集硫酸バリウムは、硫酸バリウム粒子に、静電気的、立体的、又は静電気的かつ立体的に再凝集を防止し、及び/又は凝集を阻止する表面を与える種類の分散剤を含むものである。このような分散剤が実際の沈殿の際に存在すると、沈殿する硫酸バリウムの凝集を該分散剤が阻止するので、沈殿段階においてさえ、解凝集硫酸バリウムが得られる。このような分散剤を例えば湿式粉砕操作の一部として沈殿後に組み入れる場合、解凝集後の解凝集した硫酸バリウムの再凝集を該分散剤が防止する。この種の分散剤を含む硫酸バリウムは、硫酸バリウムが解凝集状態のままであるという事実のため、特に好ましい。
【0006】
特に有利な解凝集硫酸バリウムは、該分散剤が硫酸バリウム表面と相互作用できるカルボキシレート、ホスフェート、ホスホネート、ビスホスホネート、スルフェート又はスルホネート基(硫酸バリウム粒子の表面の固定基)を有すること、及び該分散剤が疎水性部分及び/又は親水性部分を有する1以上の有機基R1を有することを特徴とする。
好ましくはR1は、低分子量のオリゴマー又はポリマーで、任意に分岐し、及び/又は環式でよい炭素鎖(任意に酸素、窒素、リン若しくは硫黄ヘテロ原子を含み、及び/又は酸素、窒素、リン若しくは硫黄を介して前記基R1に結びつく基で置換されている)であり、かつ前記炭素鎖は任意に親水性基又は疎水性基で置換されている。この種の置換基の一例はポリエーテル又はポリエステルベースの側鎖である。好ましいポリエーテルベースの側鎖は、3〜50、好ましくは3〜40、特に3〜30個のアルキレンオキシ基を有する。アルキレンオキシ基は、好ましくはメチレンオキシ、エチレンオキシ、プロピレンオキシ及びブチレンオキシ基から成る群より選択される。ポリエーテルベース側鎖の長さは通常3〜100nm、好ましくは10〜80nmである。
好ましい硫酸バリウムは、ポリマーに又はポリマー中に結合するための基を有する分散剤を含む。このような基はポリマーマトリックスの固定基として作用する。この基は、化学的にこの結合を惹起する基でよく、例えばOH、NH、NH2、SH、O-Oペルオキソ、C-C二重結合又は4-オキシベンゾフェノンプロピルホスホネート基である。問題の基は、物理的結合を惹起する基でもよい。
【0007】
硫酸バリウムの表面に疎水性を与える分散剤の例は、P(O)基の1個の酸素原子がC3-C10アルキル又はアルケニル基で置換され、P(O)基のさらなる酸素原子がポリエーテル側鎖で置換されているリン酸誘導体によって代表される。P(O)基のさらなる酸性酸素原子は硫酸バリウムの表面と相互作用することができる。
この分散剤は、例えば、成分としてポリエーテル又はポリエステルベース側鎖及びアルケニル基を有するリン酸ジエステルでよい。4〜12、特に4〜6個の炭素原子を有するアルケニル基が非常に好ましい。ポリエーテル/ポリエステル側鎖のあるリン酸エステル、例えばDisperbyk(登録商標)111、ポリエーテル/アルキル側鎖のあるリン酸エステル塩、例えばDisperbyk(登録商標)102及び106、例えば顔料親和性を有する基との高分子量コポリマーを主成分とする解膠作用を有する物質、例えばDisperbyk(登録商標)190、又は長鎖アルコールの極性の酸性エステル、例えばDisperplast(登録商標)1140がさらに非常に有用なタイプの分散剤である。
特に良い特性を有する硫酸バリウムは分散剤として、例えば上述した基のような、硫酸バリウムの表面と相互作用できる酸性基(硫酸バリウム粒子表面の固定基)を有し、かつポリマーに又はポリマー中に結合するための基、例えばOH、NH、NH2、SH、O-Oペルオキソ、C-C二重結合又は4-オキシベンゾフェノンプロピルホスホネート基(ポリマーマトリックスの固定基)を含有するポリマーを含む。好ましくは、OH、NH、NH2、SH、O-Oペルオキソ、C-C二重結合又は4-オキシベンゾフェノンプロピルホスホネート基を含有するポリエーテル又はポリエステルベース側鎖が存在する。本発明のこの種の硫酸バリウムは、再凝集する傾向を示さない。その適用の過程でさらに解凝集することさえある。
極性基、特にヒドロキシル基及びアミノ基による置換の結果として、硫酸バリウム粒子は極端に親水性になる。
好ましい分散剤は、硫酸バリウム粒子表面の固定基として作用する少なくとも1個のアニオン性基、再凝集を立体的に防止する少なくとも1個のポリエーテル又はポリエステルベース側鎖、及びポリマーマトリックスの固定基として作用する少なくとも1個の基を含む。
ポリマーに又はポリマー中に結合するために使用する基は、該ポリマーマトリックスの性質に関連して優先的に選択される。極性基、特にヒドロキシル基及びアミノ基は、特にエポキシ樹脂へ又はエポキシ樹脂中への結合に好適な反応性基を代表する。ポリカルボキシレート基の多重度及びヒドロキシル基の多重度と、さらに立体的に嵩高い基、例えばポリエーテル又はポリエステルベース鎖をも有する分散剤で被覆された硫酸バリウムによって特に良い特性が示される。特にエポキシ樹脂中のフィラーとして使用されるナノ粒子の硫酸バリウムのために非常に好ましい分散剤の群は、該ポリエーテルベース鎖上でヒドロキシル基によって末端置換されているポリエーテルポリカルボキシレートである。ヒドロキシル基は、ポリウレタンに又はポリウレタン中に結合するのにも非常に好適である。ポリ塩化ビニル(PVC)へ又はPVC中への結合にはヒドロキシル基及びチオール基を使用できる。別の例は、ポリオレフィン若しくはPVCに又はポリオレフィン若しくはPVC中に結合するために使用できる4-オキシベンゾフェノンプロピルホスホネートである。O-Oペルオキソ基は、不飽和ポリエステル又はポリオレフィンのための有用な固定基である。分散剤を含有する硫酸バリウムを樹脂に混合後、ペルオキソ基と樹脂の間の反応が開始する。さらなる例は、不飽和ポリエステルに又は不飽和ポリエステル中に結合するためにC-C二重結合を使用することである。
【0008】
結晶成長インヒビターと、立体的に再凝集を防止する特に好ましい1種の分散剤、特に上述したようなポリマーマトリックスの固定基で置換されている分散剤とを有するこの種の硫酸バリウムは、非常に微細な一次粒子を含み、かつせいぜいその凝集度が低い二次粒子しか含まず、これら粒子は容易に再分散しうるので、例えば、これら粒子を容易にポリマー中に組み入れることができ、かつこれら粒子は再凝集に向かう傾向がなく、かつ実に適用の過程でさらなる解凝集を受けることさえあるという非常に良い適用性を有するという最高の利点を有する。
国際特許出願PCT/EP04/013612は硫酸バリウムのいくつかの製造方法を開示している。 第1の方法は、任意に結晶化抑制剤の存在下で硫酸バリウムを沈殿させてから、供給溶媒中で解凝集を行う工程を想定している。この解凝集は分散剤の存在下で行われる。
第2の方法は、任意的な結晶化抑制剤と、分散剤との存在下で硫酸バリウムを沈殿させる工程を想定している。想定した溶媒中における引き続く解凝集の過程で同様に分散剤が存在しうる。
以下、前記第1の方法をさらに詳細に説明する。
典型的方法によって、例えば塩化バリウム又は水酸化バリウムをアルカリ金属の硫酸塩又は硫酸と反応させることによって硫酸バリウムを沈殿させる。沈殿の過程で、一次粒子が上述した細かさで形成される方法を用いる。沈殿の過程で、結晶化を阻止する添加剤、例えばWO01/92157に記載さているもの、又は結晶化抑制剤作用を有する上記式(I)の化合物を利用しうる。次に、沈殿した硫酸バリウムを乾燥、例えば噴霧乾燥させる。
【0009】
再分散性硫酸バリウムの第2の製造方法は、任意的な結晶化抑制剤の存在下、かつ分散剤の存在下で塩化バリウム又は水酸化バリウムをアルカリ金属の硫酸塩又は硫酸と反応させることによって沈殿を行う工程を想定し;この手順が実際の沈殿の際に容易に再分散しうる解凝集硫酸バリウムの形成をもたらす。沈殿の際に静電気的、立体的、又は静電気的かつ立体的に再凝集を防止し、かつ凝集を阻止する表面を硫酸バリウム粒子に与えるこの種の分散剤については上述した。この実施形態は、沈殿段階中と同じ早い段階で解凝集硫酸バリウムを生成する。このようにして沈殿した、任意的な結晶化抑制剤と、分散剤とを含む硫酸バリウムを例えば噴霧乾燥によって乾燥させる。
ここで、撹拌若しくは混合装置又はミル内、例えばビードミル、振動ミル、振とう機構ミル、遊星運動ボールミル若しくはガラス球を備えた溶解装置内、所望の有機溶媒中で湿式解凝集を行って分散系を生じさせる。第1の方法に従って生成された硫酸バリウムを分散させるとき、あらゆる場合に分散剤を添加する。第2の方法に従って生成された硫酸バリウムを分散させるとき、分散剤の添加がありうる。分散剤については上述した;例として、分散特性を有する式(I)の薬剤を使用しうる。この場合、結晶化抑制剤と分散剤が同一でよい。沈殿の過程で結晶化抑制剤作用が利用され、解凝集の過程で分散作用が利用される。分散系の調製のためには、少なくとも1つのポリエーテル又はポリエステルベース側鎖を含み、ひいては立体的に再凝集を防止する当該分散剤を使用することが好ましい。特に好適な分散剤は、ポリマーマトリックスのアンカーとして作用するOH、NH、NH2、SH、O-Oペルオキソ、C-C二重結合又は4-オキシベンゾフェノンプロピルホスホネート基を含む。ポリマーに又はポリマー中に結合するために使用する基は、該ポリマーマトリックスの性質に関連して優先的に選択される。
【0010】
有機溶媒中での粉砕工程ひいては解凝集を、所望程度の解凝集が達成されるまで行う。解凝集は、好ましくは本発明の解凝集硫酸バリウムが2μm未満、好ましくは1μm未満、特に好ましくは250nm未満、非常に特に好ましくは200nmの平均径を有する二次粒子を構成するまで行われる。さらに非常に好ましい解凝集では、平均粒径が130nm未満、特に好ましくは100nm未満、非常に特に好ましくは80nm未満、なおさらに好ましくは50nm未満になるまで行われる。この場合の硫酸バリウムは、部分的に、又は実質的に全体的にでさえ、非凝集一次粒子の形態で存在しうる(XRD又はレーザー回折法によって測定される平均粒径)。本発明の方法では、平均一次粒径が50nm未満、好ましくは20nm未満で、実質的に凝集していない硫酸バリウムを含み、従って、平均二次粒径が平均一次粒径の30%超えより大きくない分散系を使用することが好ましい。
本分散系内では、解凝集硫酸バリウムは、好ましくは0.1質量%〜70質量%、好ましくは1質量%〜60質量%、特に10質量%〜60質量%、例えば10質量%〜25質量%又は10質量%〜20質量%の量で存在する。
【0011】
有機溶媒は、意図した用途に関連して選択される。有機溶媒はプラスチック又はプラスチック前駆物質と適合性でなければならず:例えば、有機溶媒は望ましくない反応を示してはならず、かつプラスチック又はプラスチック前駆物質に十分に可溶性でなければならない。好適な溶媒は、好ましくはポリマーの極性の観点でも選択される。好適な溶媒の例として、特にアルカノール又はジオール、例えばメタノール、プロパノール、イソプロパノール又はn-ブタノール;エーテル、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン又はグリコールのエーテル;カルボン酸エステル、例えば酢酸エチル;ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又はシクロペンタノン;炭化水素、例えばソルベントナフサ;ハロゲン化有機溶媒、例えばジクロロメタン;又はこれらの混合物が挙げられる。
プラスチック組成物中の解凝集硫酸バリウムの分散系を生成するため、まず適切な溶媒中の解凝集硫酸バリウムの分散系をプラスチック又はプラスチック前駆物質と混合する。例えば、混合装置又は撹拌機構を備えた容器内で混合を行うことができる。粘度を下げるため、温度を上げることができる。混合を行った後、通常温度を上昇させるか、及び/又は真空にすることによって溶媒を蒸発させる。こうして、硫酸バリウムはプラスチック又はプラスチックの前駆物質中の分散系内にある。
解凝集硫酸バリウムは、特に例えば飽和及び不飽和ポリオレフィン、PVC、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、飽和及び不飽和ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂、ポリカーボネート及びポリアミド樹脂等のプラスチック用の添加剤として好適である。本発明の硫酸バリウム粒子を添加したプラスチックも同様に本発明によって提供される。プラスチック中の硫酸バリウム粒子の量は、有利には1質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜25質量%である。
【0012】
上記方法は、例えばハロゲン化有機溶媒、エーテル又はエステル等の低極性溶媒中の硫酸バリウム粒子の分散系をプラスチック又はその前駆物質と混合してから該溶媒を蒸発させることによって、例えばポリカーボネート又はPVC等の疎水性プラスチック中に硫酸バリウムを組み入れるのに特に非常に好適である。別の例は、不飽和ポリエステル樹脂中への組み入れのため、アセトン中の硫酸バリウムの分散系の使用である。この方法は、極性溶媒中の硫酸バリウムの分散系を用いて、エポキシ樹脂中に硫酸バリウムを組み入れるためにも非常に好適である。硫酸バリウムの分散系をエポキシ樹脂前駆物質に添加することもできる。本発明の方法は、WO01/05883にSiO2について記載されているように、上記硫酸バリウムをポリオール前駆物質及び/又ははポリウレタンのジイソシアネート及び/又ポリイソシアネート前駆物質中に組み入れるためにも特に好適である。この場合、好ましい分散剤は、ポリマーマトリックスの固定基としてヒドロキシル基を含む分散剤である。この実施形態を参照して、この方法をさらに説明する。
【0013】
使用可能な脂肪族、環式脂肪族、芳香族及びヘテロ環式ジ-、トリ-及びテトライソシアネート化合物はWO01/05883に開示されており、例えば式Q(NCO)n(式中、nは2〜4であり、Qは2〜18個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4〜15個の炭素原子を有する環式脂肪族炭化水素基、6〜15個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基又は8〜15個の炭素原子を有するアラリファチック(araliphatic)炭化水素基である)の当該化合物である。
WO01/05883は、使用可能かつイソシアネート基と反応してポリウレタンを形成する、より高分子量のポリヒドロキシル化合物も開示している。好適な高分子量ポリヒドロキシル化合物として、NCO基に対して反応性の少なくとも2個の水素原子を有する当該化合物、好ましくはポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールが挙げられる。周知の方法でこれら化合物を調製できる。例えば、触媒としてアルカリ金属の水酸化物又はアルカリ金属のアルコキシドの存在下、結合形態の2〜3個の反応性水素原子を含有する少なくとも1種のスターター分子を添加して行うアルキレンオキシドのアニオン重合によって、又は三フッ化ホウ素エーテラート等のルイス酸の存在下で行うアルキレンオキシドのカチオン重合によって、ポリエーテルポリオールを調製できる。例えば、2〜12個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸と2〜12個の炭素原子を有するジオールからポリエステルポリオールを調製できる。
より高分子量のポリヒドロキシル化合物、任意に低分子量でよい鎖増量剤又は架橋剤をイソシアネート化合物と一工程で混合することによって、ポリウレタンを調製できる。所望により、まず例えば、より高分子量のポリヒドロキシル化合物、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールと、イソシアネートとでプレポリマーを形成してから、このプレポリマーをさらに鎖増量剤又は架橋剤化合物と反応させることができる。
硫酸バリウムを分散形態でポリオール成分中、又はイソシアネート成分若しくはプレポリマー中に組み入れることができ、所望により、アルカンジオール、ジアルキレン若しくはポリアルキレングリコールでよい架橋剤中、又はアルカンジオール、アルキレングリコール若しくはポリオキシアルキレングリコールでよい鎖増量剤中に組み入れることができる。これを混合装置内で行うことができる。粘度によっては、混合時、室温より高い温度、例えば25〜50℃に温度を上げることができる。
硫酸バリウムをポリオール、架橋剤又は鎖増量剤中に組み入れることを意図する場合、使用できる溶媒の範囲は非常に広い。適切な溶媒として、アルコール、特に1〜6個の炭素原子を有するアルコール、例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール、エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール;環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン;エーテル、特に2〜6個の炭素原子を有するエーテル、例えばジメチルエーテル又はジエチルエーテル;アルカン、特に4〜8個の炭素原子を有するアルカン、例えばペンタン、シクロペンタン又はヘキサン、ヘプタン;芳香族化合物、例えばトルエン;及びケトン、特に2〜6個の炭素原子を有するケトン、例えばアセトン又は2-ブタノンが挙げられる。好ましくは、プラスチックの前駆物質がポリウレタンの製造用ポリオールの場合、有機溶媒はアルコールである。
プラスチックの前駆物質がNCO-含有ポリウレタン前駆物質の場合、選択される有機溶媒は、通常、NCO基に対して不活性な有機溶媒を含む。シアネート成分中、又は未だイソシアネート基を含有するプレポリマー中に硫酸バリウムを組み入れることを意図する場合、該NCO基との望ましくない反応を示さない非プロトン性溶媒が選択され、例として、環式エーテル、例えばテトラヒドロフラン又はジオキサン;エーテル、特に2〜6個の炭素原子を有するエーテル、例えばジメチルエーテル又はジエチルエーテル;アルカン、特に4〜8個の炭素原子を有するアルカン、例えばペンタン、シクロペンタン又はヘキサン、ヘプタン;及び芳香族化合物、例えばトルエンが挙げられる。
所望により、相対的に小フラクションの他の溶媒を混ぜることもできる。この場合混ぜる他の溶媒は、好ましくは全体として該分散系に対して5質量%を超えない量で存在する。
ポリウレタンの出発成分の1つ(又は、所望により両方)中に分散系を組み入れた後、例えば、80℃までの温度に上げて、4時間まで、及び/又は減圧下で溶媒を蒸発させる。
分散系を添加する前又は後に触媒又は発泡剤などの添加剤を混ぜることができる。
本発明は、さらに、上記方法で得られる解凝集硫酸バリウムが中に分散しているプラスチックプレミックス及びプラスチックを提供する。
本発明は、さらに、ポリウレタンの製造に好適であり、解凝集硫酸バリウムが分散しているポリオール製剤を提供する。このポリオール製剤は本発明の方法で得られる。
本発明は、さらに、ポリウレタンの製造に好適であり、かつ解凝集硫酸バリウムが分散しているイソシアネート製剤を提供する。
本発明の方法を用いて、硫酸バリウムフィラーをポリオール中に均一に分散させることができる。
本発明は、さらに、上記方法で得られる解凝集硫酸バリウムが中に分散しているポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂前駆物質に関する。
以下の実施例は本発明を説明することを意図しており、本発明の範囲を以下の実施例に限定するものではない。
【実施例】
【0014】
PCT/EP04/013612に記載されているとおりに調製を行う。
実施例1:結晶化抑制剤の存在下での沈殿による、中間体としての微細硫酸バリウムの調製
一般的実験の説明:
a) 日常実験:
高い600mlのガラスビーカーを200mlの添加剤溶液(2.3gのクエン酸と7.5gのMelpers(登録商標)0030を含有)と50mlの硫酸ナトリウム溶液(濃度:0.4モル/l)で充填する。分散補助として5000rpmでUltraturraxスターラーを用いて溶液の中心で撹拌を行う。Ultraturraxスターラーのボルテックス領域内で塩化バリウム溶液(濃度:0.4モル/l)をDosimat自動計量装置で供給する。
b) Melpers(登録商標)0030はなく、2.3gのクエン酸を含有する200mlの添加剤溶液と50mlの硫酸ナトリウム溶液を用いて、1a)で述べた実施例を繰り返す。
設備(V):
WO01/92157の記載どおりに、反応混合物に押圧、せん断又は摩擦作用を及ぼす装置を用いる。硫酸塩溶液の最初の充填物に結晶化抑制剤(下表参照)を添加する。







【0015】








* XRD値は、XRDで測定した平均一次粒径に相当する
** d50(懸濁液の前処理なし)は、一次粒子と二次粒子の両者を含む硫酸バリウム粒子の平均粒径に相当する。
【0016】
さらに上表は分散剤としても使用できる場合もある好適な結晶化抑制剤を示す。
実施例2:沈殿の際、結晶化抑制剤とポリマー分散剤の存在下での沈殿による硫酸バリウムの調製
使用した出発原料は硫酸バリウムと硫酸ナトリウムだった。
2.1. ビーカー実験:
200mlの目盛付きフラスコを7.77gのMelpersタイプの末端がヒドロキシ置換されたポリエーテルポリカルボキシレート(Melpers(登録商標)0030)(SKWから)で充填し、水を加えて200mlにする。この量は、形成されるBaSO4の最大量(=4.67g)に対して50%のMelpers(w=30%水溶液)に相当する。
600mlの高いガラスビーカーを50mlの0.4M BaCl2溶液で充填し、これに200mlのMelpers溶液を加える。分散を助けるためUltraturraxをガラスビーカーの中央に浸して5000rpmで操作する。Ultraturraxによって生じたボルテックス領域内で、クエン酸を添加した(形成されるBaSO4の最大量:2.33g(50ml/Na2SO4当たり)に対して50%のクエン酸)50mlの0.4M Na2SO4溶液をフレキシブルなチューブを介してDosimatを用いて加える。沈殿前にNaOHを用いて、BaCl2/Melpers溶液とNa2SO4/クエン酸溶液を両方ともアルカリ性にし;pHは約11〜12である。
解凝集形態で得られた硫酸バリウムは、約10〜20nmの一次粒径;同範囲の二次粒径を有するので、硫酸バリウムはほとんど凝集していないとみなされる。
2.2. パイロットプラントスケールでの解凝集硫酸バリウムの調製
30リットルの容器を5リットルの0.4M BaCl2溶液で充填する。780gのMelpers製品を撹拌しながら加える(形成されるBaSO4の最大量:467gに対して50%)。この溶液に20リットルの脱塩水を加える。容器内でUltraturraxを操作し、そのボルテックス領域に5リットルの0.4M Na2SO4溶液をステンレススチールパイプを介してぜん動ポンプを用いて加える。Na2SO4溶液は前もってクエン酸と混ぜた(233g/5リットルのNa2SO4=50%のクエン酸,形成されるBaSO4の最大量に対して)。ビーカー実験の場合のように、この実験も同様に沈殿前にNaOHで両溶液をアルカリ性にした。一次粒径に関する特性は、実施例2.1の硫酸バリウムの一次粒径に関する特性と一致する。同様に硫酸塩はほとんど凝集していない。
2.3. より高い反応物濃度による解凝集硫酸バリウムの調製
実施例2.2を繰り返す。この場合、1モル濃度溶液を使用する。得られる硫酸バリウムは実施例2.2の硫酸バリウムと一致する。
【0017】
実施例3:解凝集硫酸バリウムによる分散系の調製
3.1. Melpers(登録商標)0030を用いた分散系の調製
実施例1並びに実施例2.1、2.2及び2.3に従って硫酸バリウムを調製し、乾燥させ、分散剤を添加してビードミル内でのイソプロパノール中の湿式粉砕に供する。使用する分散剤はポリエーテルポリカルボキシレート(該ポリエーテル側鎖上でヒドロキシル基にて末端置換されている)(SKWのMelpersタイプ、モル質量は約20,000、側鎖5800)である。
3.2. Disperbyk(登録商標)102を用いた分散系の調製
実施例3.1を繰り返すが、使用する分散剤は、1個のフリーなヒドロキシル基を有するリン酸エステル、すなわちDisperbyk(登録商標)102である。
【0018】
実施例4:粉砕による硫酸バリウムの調製
4.1. 結晶化抑制剤の存在下での沈殿、引き続きポリマー分散剤の存在下での粉砕による化学的に分散した硫酸バリウムの調製
使用する出発原料は塩化バリウムと硫酸ナトリウムである。塩化バリウム溶液(0.35モル/l)と硫酸ナトリウム溶液(0.35モル/l)を結晶化抑制剤としてクエン酸の存在下で反応させて硫酸バリウムを沈殿させる。沈殿した硫酸バリウムを乾燥させてイソプロパノール中で懸濁させる。ポリエーテルポリカルボキシレート(該ポリエーテル側鎖上でヒドロキシル基にて末端置換されている(Melpers(登録商標)0030)を分散剤として添加し、沈殿した硫酸バリウムをさらにビードミル内で解凝集する。硫酸バリウムは約7.5質量%のクエン酸と約15質量%のポリエーテルポリカルボキシレートを含有する。
4.2. 他の出発化合物及び異なる結晶化抑制剤を用いた調製
実施例4.1を繰り返す。塩化バリウムを水酸化バリウム溶液(0.35モル/l)で置き換え、硫酸ナトリウムを硫酸(0.35モル/l)で置き換える。クエン酸の代わりに3質量%のDispex(登録商標)N40を使用する(ポリアクリル酸ナトリウム)。Melpers(登録商標)0030は8.5質量%の量で使用した。
【0019】
実施例5:ポリオールにおける硫酸バリウム分散系の組み入れ
上述したように調製し、かつ約50質量%の硫酸ナトリウム(100nm未満の凝集塊サイズ、イソプロパノール中)を含有する分散系をポリオール(Lupraphen 8100、二官能性脂肪族ポリエステルポリオール(Elastogran GmbH, Lemforde (DE)から入手可能な))中で混合する。この混合は、ビードミル内で前記成分を一緒に撹拌することによって行われる。引き続き、溶媒を蒸留で除去する。
溶媒の非存在を強いられる厳しい条件の場合、蒸留による除去は最後に約80℃で2時間行われる。
分散系とポリオールの量は、最終ポリオール中、分散した硫酸バリウムが約30質量%となるように選択される。
分散系とプラスチックの量が、完成プラスチックが分散形態の硫酸バリウムを約45質量%含有するように選択されることを除き、同一条件でさらなる実施例を行う。これは、プラスチック中30〜45%の範囲の硫酸バリウムがこの方法で容易に得られることを示す。
次に、ポリオール中の硫酸バリウムの最終分散系を周知の方法でジイソシアネート又はポリイソシアネート成分とさらに処理してポリウレタンを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックプレミックス又はプラスチックの調製方法であって、該プラスチックプレミックス又はプラスチックが、該プラスチックプレミックス又はプラスチックの総質量に対して、0.1質量%〜70質量%の一次粒子を含み、該一次粒子は、任意に結晶化抑制剤を含む解凝集硫酸バリウムを含んでなり、かつ500nm未満、好ましくは100nm未満、特に80nm未満、特に好ましくは50nm未満、さらに好ましくは20nm未満、非常に特に好ましくは10nm未満の平均一次粒径を有し、分散剤の存在下、連続有機相としての有機溶媒に前記硫酸バリウムを分散させ、かつ解凝集する工程、この分散系をプラスチック又は該プラスチックの前駆物質中に導入する工程、及び前記溶媒を蒸発させる工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記硫酸バリウムが、一次硫酸バリウム粒子と二次硫酸バリウム粒子を含み、前記二次硫酸バリウム粒子が2000nm未満、好ましくは250nm未満、さらに好ましくは200nm未満、特に好ましくは130nm未満、非常に好ましくは100nm未満、特に好ましくは50nm未満の平均粒径を有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
結晶化抑制剤が前記硫酸バリウムに含まれ、かつ少なくとも1個のアニオン性基を有する化合物から選択される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶化抑制剤中の前記アニオン性基が、少なくとも1個のスルフェート基、少なくとも1個のスルホネート基、少なくとも2個のホスフェート基、少なくとも2個のホスホネート基、少なくとも2個のカルボキシレート基、又はこれらの混合物である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記結晶化抑制剤が、炭素鎖Rとn個の置換基[A(O)OH]を有する下記式(I)の化合物又はその塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
(I) R[-A(O)OH]n
(式中、Rは疎水性部分及び/又は親水性部分を有する有機基であり、Rは低分子量のオリゴマー又はポリマーで、任意に分岐し、及び/又は環式炭素鎖(任意に酸素、窒素、リン若しくは硫黄ヘテロ原子を含んでよく、及び/又は酸素、窒素、リン若しくは硫黄を介して基Rに結びつく基で置換されている)であり、AはC、P(OH)、OP(OH)、S(O)又はOS(O)であり、かつnは1〜10,000、好ましくは1〜5である。)
【請求項6】
前記結晶化抑制剤が、少なくとも2個のカルボキシレート基を有する任意にヒドロキシ-置換されているカルボン酸;アルキルスルフェート;アルキルベンゼンスルホネート;ポリアクリル酸;ポリアスパラギン酸;任意にヒドロキシ-置換されているジホスホン酸;エチレンジアミン又は少なくとも1個のカルボン酸若しくはホスホン酸を含有し、かつ任意にヒドロキシル基で置換されているジエチレントリアミン誘導体;又はこれらの塩である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記分散剤が、前記硫酸バリウムの表面と相互作用できるアニオン性基、好ましくはカルボキシレート基、ホスフェート基、ホスホネート基、ビスホスホネート基、スルフェート基又はスルホネート基を有する請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分散剤が、疎水性部分及び/又は親水性部分を有する1以上の有機基R1を含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
R1が低分子量のオリゴマー又はポリマーで、任意に分岐し、及び/又は環式炭素鎖(任意に酸素、窒素、リン若しくは硫黄ヘテロ原子を含み、及び/又は酸素、窒素、リン若しくは硫黄を介して基R1に結びつく基で置換されている)であり、かつ前記炭素鎖が任意に親水性基又は疎水性基で置換されている請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分散剤が、部分として、ポリエーテル側鎖と、好ましくは6〜10個の炭素原子のアルケニル基とを有するリン酸ジエステルである請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記分散剤が、ポリマーに又はポリマー中に結合するための基を有する請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーに又はポリマー中に結合するための前記基が、OH、NH、NH2、SH、O-Oペルオキソ、C-C二重結合、4-オキシベンゾフェノンプロピルホスホネート基又はこれらの混合物から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分散剤がポリエーテル又はポリエステルベース側鎖を有する請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリエーテル又はポリエステルベース側鎖が、ポリマーに又はポリマー中に結合するための基を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分散剤がポリエーテルポリカルボキシレート(該ポリエーテルベース側鎖上でヒドロキシル基にて末端置換されている)である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記結晶化抑制剤及び前記分散剤がそれぞれ前記分散系中に、硫酸バリウムの質量部当たり2質量部まで、好ましくは硫酸バリウムの質量部当たり1質量部まで、特に、各場合、前記解凝集硫酸バリウムの質量に対して、1質量%〜50質量%の量で存在する請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記結晶化抑制剤のみならず分散剤の存在下で沈殿した硫酸バリウムを使用し、所望により前記分散系の生成の際にさらに前記分散剤又は異なる分散剤を添加し、或いは結晶化抑制剤だけの存在下で沈殿した硫酸バリウムを使用し、前記分散系の生成の際に分散剤を添加する請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記プラスチック前駆物質が、ポリウレタン製造用ポリオールであり、かつ前記有機溶媒がアルコールである請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記プラスチック前駆物質がNCO-含有ポリウレタン前駆物質であり、かつ前記有機溶媒がNCO基に対して不活性な有機溶媒を含む請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法で得られるプラスチックプレミックス又はプラスチックであって、中に分散した解凝集硫酸バリウムを含むプラスチックプレミックス又はプラスチック。
【請求項21】
請求項18に記載の方法で得られるポリウレタン製造用ポリオールであって、その中に分散した解凝集硫酸バリウムを含むことを特徴とするポリオール。
【請求項22】
請求項19に記載の方法で得られるポリウレタン製造用のジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートであって、中に分散している解凝集硫酸バリウムを含むことを特徴とするジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート。
【請求項23】
前記プラスチックがポリカーボネート又はポリ塩化ビニルであり、かつ前記有機溶媒がハロゲン化有機溶媒、エーテル又はエステルである請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記プラスチックがポリエステル樹脂であり、かつ前記有機溶媒がアセトンである請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記プラスチックがエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂前駆物質であり、かつ前記有機溶媒がアルカノール又はジオールである請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ポリカーボネート又はポリ塩化ビニルであって、その中に分散して請求項23の方法で得られる解凝集硫酸バリウムを含むことを特徴とするポリカーボネート又はポリ塩化ビニル。
【請求項27】
ポリエステル樹脂であって、その中に分散して請求項24の方法で得られる解凝集硫酸バリウムを含むことを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項28】
エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の前駆物質であって、その中で分散して請求項25の方法で得られる解凝集硫酸バリウムを含むことを特徴とするエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の前駆物質。
【請求項29】
解凝集硫酸バリウムの、プラスチック又はプラスチック前駆物質のフィラーとしての使用であって、該解凝集硫酸バリウムが、500nm未満、好ましくは100nm未満、特に80nm未満、特に好ましくは50nm未満、さらに好ましくは20nm未満、非常に特に好ましくは10nm未満の平均一次粒径及び2000nm未満、好ましくは250nm未満、さらに好ましくは200nm未満、特に好ましくは130nm未満、非常に好ましくは100nm未満、特に好ましくは50nmの平均二次粒径を有し、かつ分散剤を含有し、任意に結晶化抑制剤を含むことを特徴とする使用。
【請求項30】
プラスチックが、飽和及び不飽和ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、飽和及び不飽和ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン樹脂、尿素樹脂及びメラミン樹脂、ポリカーボネート及びポリアミド樹脂並びにこれらの前駆物質から選択される請求項23に記載のプラスチック及びプラスチック前駆物質。
【請求項31】
前記プラスチック又はプラスチック前駆物質中の硫酸バリウム粒子の量が、1〜50質量%、好ましくは1〜25質量%である請求項29又は30に記載のプラスチック。

【公表番号】特表2008−542492(P2008−542492A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514120(P2008−514120)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/062866
【国際公開番号】WO2006/131500
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(506192881)ソルヴェイ インフラ バート ヘンニンゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (9)
【Fターム(参考)】