説明

プラスチック容器のラベル分離装置

【課題】どのような状態のプラスチック容器であってもラベルを確実に剥がして分離することができ、構成が比較的簡単で小型化が可能である装置を提供する。
【解決手段】プラスチック容器20を寝かせ縦向きにして投入する投入口22、廃容器排出口26およびラベル片排出口28を有するケーシング10内に、チェーンコンベア30の全周にわたって、複数本の突刺体58が植設された多数枚の棒状板56を取着したスパイク付きコンベア機構12と、回転する複数個のラベル切断刃66によりプラスチック容器をチェーンコンベアの棒状板に押し付けて突刺体が容器に突き刺さるようにするとともに容器のラベルを切断する複数本の切断ユニット62を、チェーンコンベアの移動方向と直交するようにかつ互いに平行に、チェーンコンベアの移動方向に沿った方向に間隔を設けて並列させたラベル切断機構14とを配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、飲料等の内容物を消費した後のペットボトル等の使用済みプラスチック容器を再資源化するのに際し、プラスチック容器からその胴部外周面に装着されたラベルを剥がして分離するプラスチック容器のラベル分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の容器としては現在、プラスチック容器が最も多く用いられており、それに伴い、大量の使用済みプラスチック容器が生み出されている。プラスチック容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエステル等の樹脂材料で製造されるが、近年、それら廃容器の再資源化が盛んに行われるようになってきている。この場合、プラスチック容器にはその胴部外周面に、商品名等が印刷されたラベルが装着されており、ラベルは、容器とは異なるポリ塩化ビニル、PE、PP等の樹脂材料や加工紙などで形成されている。そこで、廃容器の再資源化に当たっては、プラスチック容器からラベルを剥がして分離することが必要となる。
【0003】
プラスチック容器からラベルを剥がして分離する装置としては、各種構成のものが提案され、また実際に製造され稼働している。例えば、内筒と外筒とを適度の間隔をおいて同心状に配設して縦型二重筒状体を構成し、内筒外壁または外筒内壁に突起の剥離爪を設け、内筒外壁側の剥離爪を螺旋状に配置するとともに、外筒の径を下方に行くほど小さくし、内筒と外筒とを逆回転させ、あるいは、内筒および外筒の一方を固定し他方を回転させて、内筒と外筒間の上部に設けられた供給口にラベル付ペットボトルを投入し、ペットボトルのラベルを剥離爪により剥離するようにしたラベル剥離装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、廃プラスチック容器が供給される供給口および処理後のプラスチック材が排出される排出口を上部および下部にそれぞれ設けた横置き型の円筒状本体の軸芯部に、多角形状回転体を水平軸回りに回転可能に配設し、多角形状回転体のそれぞれの矩形状側面に所定の傾斜角度で互いに平行に一対の第1および第2回転刃ブレード部を配置し、円筒状本体の内側に、プラスチック容器の動きを規制するように所定長さの複数の固定針部を突設した構成を有するプラスチック容器のラベル分離装置が提案されている。このような構成の装置において、ラベルが装着されたプラスチック容器が供給口に投入されると、プラスチック容器が円筒状本体の軸線方向に移送され、第1、第2回転刃ブレード部の回転力によりプラスチック容器の外面からラベルが剥離するとともに、剥離されたラベル片やプラスチック容器が排出口に向けて移送される(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、ペットボトル上のラベルを、ボトルに凹凸があっても非接触に切断して剥離する装置も提案されている。すなわち、横倒し状態のペットボトルを整列搬送コンベアにより軸方向に姿勢を揃えて搬送しながら、追従アームの先端に取り付けられた熱風カッタノズルを、ラベルとは非接触の状態を維持したままペットボトルの表面に追従して上下動させ、熱風カッタノズルからペットボトルに熱風を吹き付けることによりペットボトルのラベルを直線状に溶断した後、剥離ローラによりラベルを溶断個所から二つ割りにして剥離するようにしたペットボトルのラベル剥離装置が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−25591号公報(第3頁、図1)
【特許文献2】特開2011−5848号公報(第5−6頁、図1、図2)
【特許文献3】特開2002−316115号公報(第3頁、図1、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラスチック容器からラベルを剥がして分離する装置として一般的な構成は、特許文献1、2に開示されているように、二重筒状構造を有し、内筒外壁面と外筒内壁面との一方または両方に多数の突起(剥離爪、ブレード部、針部等)を設け、内筒または外筒を回転させながら、内筒外壁面と外筒内壁面とで形成される空間にプラスチック容器を投入し、プラスチック容器を軸線方向へ移動させつつプラスチック容器からラベルを剥離する、といったものである。このような装置構成では、処理しようとする全てのプラスチック容器からラベルを完全に剥離しようとすると、筒状体の軸線方向の寸法を或る程度大きく設定する必要があり、このため、装置が大きくなるといった問題点がある。また、例えばキャップが装着されて内部に空気が閉じこめられたプラスチック容器が混在しているような場合、容器が押し潰されにくくなるために、内筒外壁面と外筒内壁面とで形成される狭い空間を通過することができなくなる恐れもある。
【0007】
また、特許文献3に開示されているようなラベル剥離装置は、ペットボトルを軸方向に姿勢を揃えて搬送する整列搬送コンベア、追従アームの先端に取り付けられた熱風カッタノズルをペットボトルの表面に追従して上下動させる機構など、装置構成および制御が複雑であり、装置全体も大型化するといった問題点がある。
【0008】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、どのような状態のプラスチック容器であっても、その胴部外周面からラベルを確実に剥がして分離することができ、構成が比較的簡単で、装置を小型化することができ、制御も容易であるプラスチック容器のラベル分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、プラスチック容器からその胴部外周面に装着されたラベルを剥がして分離するプラスチック容器のラベル分離装置において、横方向における一側に、プラスチック容器を寝かせ縦向きにしてその長手方向に沿った方向へ投入する投入口を有し、その投入口の反対側に、ラベルが剥がされた後のプラスチック容器を排出する廃容器排出口、および、プラスチック容器から剥がされたラベルの切断片を排出するラベル片排出口を有するケーシングと、このケーシング内に配設されたスパイク付きコンベア機構と、前記ケーシング内の、前記スパイク付きコンベア機構と対向するようにその上方に配設されたラベル切断機構とを備え、前記スパイク付きコンベア機構は、プラスチック容器の投入方向に沿った方向において周回移動するコンベアにその全周にわたって、表面側の長手方向に複数本の突刺体が植設された棒状板を多数枚、コンベアの移動方向と直交するようにかつ互いに平行に並列させ隣り合うもの同士間に間隙を設けて取着した構成を有し、前記ラベル切断機構は、回転自在に支持された回転軸にその軸線方向に複数個のラベル切断刃が固着された切断ユニットを複数本、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの移動方向とそれぞれ直交するようにかつ互いに平行に、前記コンベアの移動方向に沿った方向にそれぞれ間隔を設けて並列させた構成を有しており、このラベル切断機構は、回転する前記ラベル切断刃によりプラスチック容器を前記コンベアの棒状板に押し付けて前記突刺体がプラスチック容器に突き刺さるようにするとともにプラスチック容器のラベルを切断するようにし、また、前記スパイク付きコンベア機構の前記コンベアを、その上側走行面がプラスチック容器の投入方向と同一方向へ移動するように駆動するコンベア駆動手段と、前記ラベル切断機構の前記複数本の切断ユニットをそれぞれ、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの周回方向と逆回りに回転駆動する切断刃回転駆動手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のプラスチック容器のラベル分離装置において、ラベル切断機構のラベル切断刃の周速度が、スパイク付きコンベア機構のコンベアの周回移動速度に比べて大きくなるように、コンベア駆動手段および切断刃回転駆動手段をそれぞれ制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のプラスチック容器のラベル分離装置において、スパイク付きコンベア機構およびラベル切断機構を、水平面に対し傾斜して配設し、プラスチック容器の投入方向を斜め下向きに設定したことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置において、ラベル切断機構の複数本の切断ユニットのうち、ケーシングの投入口に近いものとスパイク付きコンベア機構のコンベアとの間隔を、前記ケーシングの廃容器排出口およびラベル片排出口に近いものと前記スパイク付きコンベア機構のコンベアとの間隔に比べて大きく設定したことを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置において、ラベル切断機構の各切断ユニットをそれぞれ、スパイク付きコンベア機構のコンベアに近付く方向へ付勢するように弾発的に支持したことを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置において、スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端側折返し部に、コンベアの内方空間側から棒状板の裏面に向けてエアーを吹き付け突刺体からプラスチック容器が離脱しやすくするエアー吹付け手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置において、廃容器排出口を、スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端部付近の下方に配設するとともに、ラベル片排出口を、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端部付近の上方に配設し、前記ラベル片排出口に、ラベルの切断片を吸引して排出する空気吸引手段を流路接続したことを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置において、スパイク付きコンベア機構のコンベアとしてチェーンコンベアを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明のプラスチック容器のラベル分離装置においては、プラスチック容器を寝かせ縦向きにしてケーシングの投入口へ投入すると、プラスチック容器は、スパイク付きコンベア機構のコンベアによって前方へ送られ、コンベアとラベル切断機構の切断ユニットとの間へ送り込まれる。このとき、プラスチック容器は、切断ユニットの回転するラベル切断刃によりコンベアの棒状板に押し付けられ、容器面に棒状板の突刺体が引っ掛かって、確実に前方へ移送される。また、プラスチック容器に棒状板の突刺体が突き刺さって、容器面に孔があけられる。これにより、例えばキャップが装着されて内部に空気が閉じこめられたプラスチック容器であっても、容器面にあけられた孔を通って容器内部の空気が抜け、プラスチック容器が押し潰されやすくなる。また、プラスチック容器の移動方向に複数本並んだ切断ユニットの回転する多数のラベル切断刃によってプラスチック容器のラベルが縦方向に細かく切断される。そして、ラベルが剥がされた後のプラスチック容器が廃容器排出口を通って排出されるとともに、プラスチック容器から剥がされたラベルの切断片がラベル片排出口を通って排出される。
したがって、このプラスチック容器のラベル分離装置を使用すると、どのような状態のプラスチック容器であっても、その胴部外周面からラベルを確実に剥がして分離することができる。また、このラベル分離装置は、構成が比較的簡単で、小型化が可能であり、制御やメンテナンスも容易である。
【0018】
請求項2に係る発明のラベル分離装置では、ラベル切断機構のラベル切断刃の周速度が、スパイク付きコンベア機構のコンベアの周回移動速度、したがってプラスチック容器の移動速度に対して相対的に大きくなるので、ラベル切断刃がプラスチック容器のラベル面を切り裂くように作用し、ラベルが確実に切断される。
【0019】
請求項3に係る発明のラベル分離装置では、ケーシングの投入口へのプラスチック容器の投入操作が容易になり、プラスチック容器をスパイク付きコンベア機構へ確実に送り込むことができる。
【0020】
請求項4に係る発明のラベル分離装置では、ケーシングの投入口に近い側において、プラスチック容器がスパイク付きコンベア機構のコンベアとラベル切断機構との間へスムーズに取り込まれる。また、ケーシングの廃容器排出口およびラベル片排出口に近い側においては、プラスチック容器が、切断ユニットの回転するラベル切断刃によってコンベアの棒状板により強く押し付けられ、プラスチック容器が押し潰されるとともに、ラベル切断刃がラベル面に対してより大きな力で押し付けられ、より確実にラベルが切断される。
【0021】
請求項5に係る発明のラベル分離装置では、スパイク付きコンベア機構によって移送されるプラスチック容器からラベル切断機構の切断ユニットのラベル切断刃に想定以上の反力が作用するような異常が発生したときに、切断ユニットが付勢力に抗してコンベアから遠ざかる方向へ移動することにより、切断ユニットのラベル切断刃やスパイク付きコンベア機構の棒状板等が損傷するのを避けることができる。異常が解消すれば、切断ユニットは弾発力により元の位置に復帰する。
【0022】
請求項6に係る発明のラベル分離装置では、スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端側折返し部において、エアー吹付け手段によってコンベアの内方空間側から棒状板の裏面に向けてエアーが吹き付けられることにより、ラベルが剥がされた後のプラスチック容器が棒状板の突刺体から離脱しやすくなる。
【0023】
請求項7に係る発明のラベル分離装置では、ラベルが剥がされた後のプラスチック容器が、スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端部から自然落下し廃容器排出口を通って排出され、ラベルの切断片が、空気吸引手段により吸引されて上方へ舞い上がりラベル片排出口を通って排出される。
【0024】
請求項8に係る発明のラベル分離装置では、突刺体が植設された棒状板を多数枚、チェーンコンベアに取着して、スパイク付きコンベア機構が好適に構成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の1実施形態を示し、プラスチック容器のラベル分離装置の全体構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に示したラベル分離装置の要部をプラスチック容器の投入側から見た横断面図である。
【図3】図1に示したラベル分離装置の要部の構成を示す概略側面図である。
【図4】図1に示したラベル分離装置の要部をプラスチック容器の投入側から見た正面図である。
【図5】図1に示したラベル分離装置の構成要素であるスパイク付きコンベア機構の一部を示す部分拡大断面図である。
【図6】図1に示したラベル分離装置の構成要素であるスパイク付きコンベア機構の別の一部を示す部分拡大図である。
【図7】図1に示したラベル分離装置の構成要素であるラベル切断機構における動力伝達機構の一部を示す平面図である。
【図8】図1に示したラベル分離装置の構成要素であるラベル切断機構における切断ユニットの回転軸を支持する機構を示す部分拡大正面図である。
【図9】図8に示した切断ユニットの回転軸の支持機構を示す部分拡大側面断面図である。
【図10】図1に示したラベル分離装置の構成要素であるスパイク付きコンベア機構の後端部付近を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1ないし図4は、この発明の1実施形態を示し、図1は、プラスチック容器のラベル分離装置の全体構成を示す概略側面図であり、図2は、ラベル分離装置の要部をプラスチック容器の投入側から見た横断面図であり、図3は、ラベル分離装置の要部の構成を示す概略側面図であり、図4は、ラベル分離装置の要部をプラスチック容器の投入側から見た正面図である。
【0027】
このプラスチック容器のラベル分離装置は、ケーシング10とスパイク付きコンベア機構12とラベル切断機構14とを備えて構成されている。ケーシング10は、固定筐体部16と可動筐体部18とからなり、固定筐体部16の上側開口面を閉塞および開放するように、下面側が開口した可動筐体部18が固定筐体部16に蝶着されている。そして、ケーシング10の固定筐体部16内にスパイク付きコンベア機構12が配設され、可動筐体部18内に、スパイク付きコンベア機構12と対向しその上方に位置するようにラベル切断機構14が配設されている。ケーシング10の可動筐体部18の横方向における一側には、使用済みのプラスチック容器20を寝かせ縦向きにして投入する投入口22が設けられ、投入口22には複数枚の仕切り案内板24が並列して設けられている。プラスチック容器20の投入方向は、プラスチック容器20の長手方向に沿った方向でかつ斜め下向きに設定されている。処理されるプラスチック容器20は、キャップが装着されたままで内部に空気が閉じこめられたものであってもよい。また、ケーシング10の固定筐体部16には投入口22の反対側に、ラベルが剥がされた後のプラスチック容器20aを排出する廃容器排出口26、および、プラスチック容器20から剥がされたラベルの切断片20bを排出するラベル片排出口28が設けられている。この廃容器排出口26は、スパイク付きコンベア機構12の後端部付近の下方に配置され、ラベル片排出口28は、スパイク付きコンベア機構12の後端部付近の上方に配置されている。そして、図示していないが、ラベル片排出口28に、エアーダクトを通しラベルの切断片20bを吸引して排出するブロワーが流路接続されている。
【0028】
スパイク付きコンベア機構12は、プラスチック容器20の投入方向に沿った方向において周回移動するチェーンコンベア30を備え、チェーンコンベア30は、プラスチック容器20の投入角度と同じになるように水平面に対し傾斜して設置されている。このチェーンコンベア30は、左右一対のチェーン32、32と、それぞれのチェーン32が掛け回されチェーン32と噛み合う左右一対の駆動側スプロケット34、34および左右一対の被動側スプロケット36、36(スパイク付きコンベア機構12の後端部付近の平面断面図を示す図10参照)とから構成されている。駆動側スプロケット34は、回転軸38に固着されている。回転軸38は、ケーシング10の固定筐体部16外面に取着された一対の軸受部材40、40によって回転自在に支持されており、回転軸38の一端側にスプロケット42が固着されている。また、ケーシング10の固定筐体部16に速度変換可能な原動機44が固設されている。原動機44の駆動回転軸にはスプロケット46が固着され、原動機44の駆動回転軸の回転力が、スプロケット42、46およびチェーン48を介してチェーンコンベア30に伝達される。なお、原動機44の回転駆動力を伝達する機構は、プーリとベルトとを組み合わせたもの等であってもよい。
【0029】
チェーンコンベア30の後端部に配置される一対の被動側スプロケット36は、図10に示すように、ケーシング10の固定筐体部16にそれぞれ片持ち式に固設された一対の固定支軸50、50に軸受を介して回転自在に取着されている。そして、左右一対のチェーン32、32を左右一対の駆動側スプロケット34、34と左右一対の被動側スプロケット36、36とにそれぞれ掛け回して構成されたチェーンコンベア30は、原動機44により駆動されて、その上側走行面がプラスチック容器20の投入方向と同一方向へ移動するように周回する。また、チェーンコンベア30の上側走行面には、チェーン32が撓まないようにチェーン32に転接して支持するレール52が左右に一対配設されている。レール52は、図5に部分拡大断面図を示すように、ケーシング10の固定筐体部16にブラケット54を介して固設されている
【0030】
チェーンコンベア30には、その全周にわたって、ケーシング10の固定筐体部16の幅寸法よりわずかに短い程度の長さを有する細幅の棒状板56が多数枚、チェーンコンベア30の移動方向と直交するようにかつ互いに平行に並列させ隣り合うもの同士間にわずかな間隙を設けて取着される。棒状板56には、表面側の長手方向に複数本の突刺体58が一列に植設されている。突刺体58は、プラスチック容器20aに突き刺さっても抜けやすい形状、例えば円錐形状を有している。棒状板56は、左右一対のチェーン32、32間に掛け渡すように配置され、図6に部分拡大図を示すように、チェーン32にアタッチメント60を介して取着される。
【0031】
ラベル切断機構14は、回転軸64にその軸線方向にラベル切断刃66とカラー68とを交互に複数個ずつ嵌挿し両端を固定用カラー70でそれぞれ固定した複数本の切断ユニット62により構成されている。複数本の切断ユニット62は、スパイク付きコンベア機構12のチェーンコンベア30の移動方向とそれぞれ直交するようにかつ互いに平行に、チェーンコンベア30の移動方向に沿った方向にそれぞれ間隔を設け並列して設置されている。そして、複数本の切断ユニット62の配列方向は、チェーンコンベア30の傾斜角度に対応するように水平面に対し傾斜している。また、切断ユニット62とスパイク付きコンベア機構14のチェーンコンベア30との間隔は、ケーシング10の投入口22の直ぐ近くに配置された切断ユニット62が最も大きく設定されており、廃容器排出口26に向かって配列された順番に次第に小さく設定され、廃容器排出口26に近い側に配置された3本の切断ユニット62が同じ間隔とされている。このラベル切断機構14は、図1に二点鎖線で示すように、ケーシング10の固定筐体部16に対し可動筐体部18を上向きに回動させることにより、可動筐体部18と一体的に回動して、スパイク付きコンベア機構14に対し離間させることができるようになっている。
【0032】
切断ユニット62の回転軸64は、ケーシング10の可動筐体部18外面に配設された摺動板72に取着された一対の軸受部材74、74によって回転自在に支持されている。回転軸64の一端側には、投入口22から最も遠い位置にある切断ユニット62を除きそれぞれ2個のスプロケット76、78が固着されている。投入口22から最も遠い位置にある切断ユニット62の回転軸64には、1個のスプロケット76だけが固着されている。また、ケーシング10の可動筐体部18に速度変換可能な原動機80が固設されている。原動機80の駆動回転軸にはスプロケット82が固着され、原動機80の駆動回転軸の回転力が、スプロケット76、82およびチェーン84を介して、投入口22から最も近い位置にある切断ユニット62の回転軸64に伝達される。複数本の切断ユニット62は、図7に平面図を示すように、それぞれ隣り合うものの回転軸64同士が内側のスプロケット78、78およびチェーン86、外側のスプロケット76、76およびチェーン88を介して動力的に順次連結している。このような構成により、原動機80の駆動回転軸の回転力が、全ての切断ユニット62の回転軸64に伝達されて、それぞれの回転軸64が同一方向に回転するようになっている。なお、原動機80の回転駆動力を伝達する機構や切断ユニット62の回転軸64間で動力伝達する機構は、プーリとベルトとを組み合わせたもの等であってもよい。
【0033】
ラベル切断機構14の各切断ユニット62はそれぞれ、スパイク付きコンベア機構12のチェーンコンベア30の周回方向と逆回りに回転駆動される。この場合、ラベル切断機構14のラベル切断刃66の周速度が、スパイク付きコンベア機構12のチェーンコンベア30の周回移動速度に比べて大きくなるように、2つの原動機44、80をそれぞれ制御することが好ましい。
【0034】
切断ユニット62の回転軸64を支持する軸受部材74が取着された摺動板72は、図8に正面図を、図9に側面断面図を示すように、ケーシング10の可動筐体部18に固着された4個の保持ボルト90を介して可動筐体部18の外面に、わずかな距離だけ上下方向へ摺動可能に保持されている。すなわち、摺動板72には4個の長孔92が穿設されており、その各長孔92に保持ボルト90の軸部がそれぞれ遊嵌するように装着され、摺動板72が長孔92の長手側寸法分だけ移動可能となっている。また、摺動板72の下端部は、可動筐体部18に固設されたブラケット94に取着されたナット96に螺合した高さ調整ねじ98の軸部上端部に連接している。この高さ調整ねじ98を操作することにより、摺動板72の高さ位置、したがって切断ユニット62とスパイク付きコンベア機構12のチェーンコンベア30との間隔を調節することができる。また、摺動板72の上端部は、可動筐体部18に固設されたブラケット100に取着されたナット102に螺合したばね力調整ねじ104の軸部下端部に圧縮コイルばね106を介在させて連接している。このような構成により、切断ユニット62に対して上向きの力が作用したときに、摺動板72が圧縮コイルばね106の弾発力に抗して上側へ移動し、切断ユニット62に対する上向きの力が解消されたときには、圧縮コイルばね106の復元力によって摺動板72が下側に移動して切断ユニット62が元の位置に復帰するようになっている。圧縮コイルばね106の弾発力は、ばね力調整ねじ104を操作することにより調整することができる。なお、圧縮コイルばね106に代えてエアーシリンダ等を用いてもよい。
【0035】
ラベル切断機構14の各切断ユニット62はそれぞれ、上記した機構により弾発的に支持されている。このため、スパイク付きコンベア機構12によって移送されるプラスチック容器20から切断ユニット62のラベル切断刃66に想定以上の反力が作用するような異常が発生した場合でも、切断ユニット62がチェーンコンベア30から遠ざかる方向へ移動する。この結果、切断ユニット62のラベル切断刃66やスパイク付きコンベア機構12の棒状板56等が損傷するのを防止することができる。また、異常が無くなれば、切断ユニット62は、圧縮コイルばね106の復元力によって元の位置に復帰させられる。
【0036】
スパイク付きコンベア機構12のチェーンコンベア30の後端側折返し部には、図10に平面断面図を示すように、チェーンコンベア30の内方空間にエアー吹付け管108およびエアー供給管110が配設されている。エアー吹付け管108は、チェーンコンベア30の移動方向と直交するように設置され、エアー吹付け管108には、チェーンコンベア30に取着された棒状板56の裏面に対向するように多数のエアー吹出し孔112が長手方向に一列に形成されている。エアー供給管110は、図示していないブロワーに流路接続されており、エアー供給管110を通ってエアー吹付け管108に供給されたエアーが、チェーンコンベア30の内方空間側から棒状板56の裏面に向けて吹き付けられる。これにより、チェーンコンベア30が折返し部を走行する際に間隔が少し拡がった棒状板56間の隙間を通ってエアーが棒状板56上のプラスチック容器20aに吹き付けられ、棒状板56上の突刺体58からプラスチック容器20aが離脱しやすくされる。
【0037】
次に、上記した構成を備えたプラスチック容器のラベル分離装置における処理動作について説明する。
使用済みのプラスチック容器20を寝かせ縦向きにしてケーシング10の投入口22へ投入すると、プラスチック容器20は、スパイク付きコンベア機構12のチェーンコンベア30によって前方へ送られ、チェーンコンベア30とラベル切断機構14の切断ユニット62との間へ送り込まれる。このとき、プラスチック容器20は、切断ユニット60の回転するラベル切断刃66によってチェーンコンベア30の棒状板56に押し付けられる。この動作により、プラスチック容器20の胴部周面に棒状板56の突刺体58が引っ掛かって、プラスチック容器20は確実に前方へ移送される。また、プラスチック容器20に棒状板56の突刺体58が突き刺さって、容器面に孔があけられる。これにより、キャップが装着されて内部に空気が閉じこめられたプラスチック容器20であっても、容器面にあけられた孔を通って容器内部の空気が抜ける。このため、切断ユニット60のラベル切断刃66によってプラスチック容器20が確実に押し潰される。また、プラスチック容器20はチェーンコンベア30によって前方に移送されつつ、チェーンコンベア30の周回移動速度、したがってプラスチック容器20の移動速度より大きい周速度で回転する多数のラベル切断刃66がプラスチック容器20のラベル面を切り裂くように作用して、プラスチック容器20のラベルが縦方向に細かく切断され、プラスチック容器20の胴部外周面からラベルが剥がされていく。
【0038】
ラベルが剥がされた後のプラスチック容器20aは、チェーンコンベア30の後端側折返し部においてチェーンコンベア30上から離脱して自然落下し、廃容器排出口26を通ってケーシング10外へ排出される。この際、チェーンコンベア30の内方空間に設置されたエアー吹付け管108の多数のエアー吹出し孔112からチェーンコンベア30上の棒状板56の裏面に向けてエアーが吹き出され、棒状板56間の隙間を通ってエアーが棒状板56上のプラスチック容器20aに吹き付けられることにより、棒状板56上の突刺体58からのプラスチック容器20aの離脱動作が補助される。一方、プラスチック容器から剥がされたラベルの切断片20bは、ブロワーにより吸引されて上方へ舞い上がりラベル片排出口20bを通ってケーシング10外へ排出される。
【0039】
なお、上記した実施形態では、スパイク付きコンベア機構12およびラベル切断機構14を水平面に対し傾斜して配設し、プラスチック容器20の投入方向を斜め下向きに設定したが、スパイク付きコンベア機構12およびラベル切断機構14を水平に配設し、プラスチック容器20の投入方向を水平方向に設定するようにしてもよい。また、上記実施形態では、スパイク付きコンベア機構12のコンベアとしてチェーンコンベア30を用いたが、ベルトコンベア等を用いるようにすることもできる。このように、本願発明は、要旨を逸脱しない範囲で種々の形態により実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
この発明を実施することにより、回収した使用済みのプラスチック容器からラベルを剥がして廃プラスチック容器とラベルとを完全に分離することが可能になるので、廃プラスチック容器を粉砕してフレーク状やペレット状にしたときに、PET等のプラスチック材の純度を高めることができ、その再資源化・再製品化のための処理にとって有利となる。
【符号の説明】
【0041】
10 ケーシング
12 スパイク付きコンベア機構
14 ラベル切断機構
20 プラスチック容器
20a ラベルが剥がされた後のプラスチック容器
20b ラベルの切断片
22 投入口
26 廃容器排出口
28 ラベル片排出口
30 チェーンコンベア
38 回転軸
40 軸受部材
42、46、76、78、82 スプロケット
44、80 原動機
48、84、88 チェーン
56 棒状板
58 突刺体
62 切断ユニット
64 回転軸
66 ラベル切断刃
72 摺動板
74 軸受部材
90 保持ボルト
92 長孔
104 ばね力調整ねじ
106 圧縮コイルばね
108 エアー吹付け管
110 エアー供給管
112 エアー吹出し孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック容器からその胴部外周面に装着されたラベルを剥がして分離するプラスチック容器のラベル分離装置において、
横方向における一側に、プラスチック容器を寝かせ縦向きにしてその長手方向に沿った方向へ投入する投入口を有し、その投入口の反対側に、ラベルが剥がされた後のプラスチック容器を排出する廃容器排出口、および、プラスチック容器から剥がされたラベルの切断片を排出するラベル片排出口を有するケーシングと、
このケーシング内に配設され、プラスチック容器の投入方向に沿った方向において周回移動するコンベアにその全周にわたって、表面側の長手方向に複数本の突刺体が植設された棒状板を多数枚、コンベアの移動方向と直交するようにかつ互いに平行に並列させ隣り合うもの同士間に間隙を設けて取着したスパイク付きコンベア機構と、
このスパイク付きコンベア機構の前記コンベアを、その上側走行面がプラスチック容器の投入方向と同一方向へ移動するように駆動するコンベア駆動手段と、
前記ケーシング内に、前記スパイク付きコンベア機構と対向するようにその上方に配設され、回転自在に支持された回転軸にその軸線方向に複数個のラベル切断刃が固着された切断ユニットを複数本、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの移動方向とそれぞれ直交するようにかつ互いに平行に、前記コンベアの移動方向に沿った方向にそれぞれ間隔を設けて並列させ、回転する前記ラベル切断刃によりプラスチック容器を前記コンベアの棒状板に押し付けて前記突刺体がプラスチック容器に突き刺さるようにするとともにプラスチック容器のラベルを切断するラベル切断機構と、
このラベル切断機構の前記複数本の切断ユニットをそれぞれ、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの周回方向と逆回りに回転駆動する切断刃回転駆動手段と、
を備えたことを特徴とするプラスチック容器のラベル分離装置。
【請求項2】
前記ラベル切断機構のラベル切断刃の周速度が、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの周回移動速度に比べて大きくなるように、前記コンベア駆動手段および前記切断刃回転駆動手段をそれぞれ制御する制御手段を備えた請求項1に記載のプラスチック容器のラベル分離装置。
【請求項3】
前記スパイク付きコンベア機構および前記ラベル切断機構が、水平面に対し傾斜して配設され、プラスチック容器の投入方向が斜め下向きに設定された請求項1または請求項2に記載のプラスチック容器のラベル分離装置。
【請求項4】
前記ラベル切断機構の複数本の切断ユニットのうち、前記ケーシングの投入口に近いものと前記スパイク付きコンベア機構のコンベアとの間隔が、前記ケーシングの廃容器排出口およびラベル片排出口に近いものと前記スパイク付きコンベア機構のコンベアとの間隔に比べて大きく設定された請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置。
【請求項5】
前記ラベル切断機構の各切断ユニットがそれぞれ、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアに近付く方向へ付勢されるように弾発的に支持された請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置。
【請求項6】
前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端側折返し部に、コンベアの内方空間側から前記棒状板の裏面に向けてエアーを吹き付け前記突刺体からプラスチック容器が離脱しやすくするエアー吹付け手段を備えた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置。
【請求項7】
前記廃容器排出口が、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端部付近の下方に配設されるとともに、前記ラベル片排出口が、前記スパイク付きコンベア機構のコンベアの後端部付近の上方に配設され、前記ラベル片排出口に、ラベルの切断片を吸引して排出する空気吸引手段を流路接続した請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置。
【請求項8】
前記スパイク付きコンベア機構のコンベアがチェーンコンベアである請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のプラスチック容器のラベル分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−75400(P2013−75400A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216026(P2011−216026)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(594172628)近畿機械工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】