説明

プラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体

【課題】本発明は、大型プラスチックミラー等の高精度なプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体に関する。
【解決手段】プラスチック積層体製造装置1は、最終形状に加工された転写面8を有する転写駒6と加圧部材7の間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材10と表層シート12を、熱可塑性樹脂からなる中間部材11を挟んで配設して、加圧部材7を移動させて、加圧部材7の押圧するプラスチック基材10が表層シート12を転写駒6の転写面8に押圧するとともに中間部材11を軟化させて、プラスチック基材10、中間部材11及び表層シート12を密着一体化させかつ転写面形状に補正加工するが、プラスチック基材10の加圧側の裏面10bに押圧凸部13を形成し、加圧部材7を押圧凸部13のみと接触させてプラスチック基材10を押圧させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体に関し、詳細には、大型プラスチックミラー等の高精度なプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、レーザプリンタ等の光走査に用いられるfθミラー、プロジェクションテレビ等の光路屈曲用の大型ミラー、フライトシュミレータやアミューズメント用途の画像表示に用いられる大型ミラーには、軽量化、低コスト化、多品種少量生産に対応するため等の理由により、プラスチック製のミラーが多用されてきている。
【0003】
また、大型ミラーは、その形状精度を維持するために剛性が必要であり、一般的な外装部品と比較して、肉厚となっている。
【0004】
このようなプラスチック製のミラーの製造方法としては、従来、製造コストが低く、大量生産に適した射出成形方法が用いられ、成形後に真空蒸着によって金属反射膜が形成されることで、製造されている。
【0005】
そして、射出成形法においては、加熱溶融した樹脂材料を金型内に射出充填した後、冷却固化させるが、この冷却工程において、金型内の樹脂圧力や樹脂温度を均一に保つことで、所望の形状精度を確保することができる。
【0006】
ところが、プロジェクションテレビ等の光路屈曲用のミラー、フライトシュミレータやアミューズメント用途の画像表示に用いられる大型ミラーのように、製造対象のミラーの形状が厚肉で、大型になると、ミラーの中心部と周辺部で冷却速度が異なり、体積収縮量が異なったものとなって、ひけが生じたり、形状精度が悪化するという問題があった。
【0007】
また、ミラーを製造する場合、従来、射出成形したプラスチック成形体に、金属反射膜を形成することで、ミラーを製造している。そして、この金属反射膜の形成は、通常、成形後に、真空蒸着によるバッチ処理で行われているため、プラスチック成形体の加工設備に加えて、さらに、別に、金属反射膜を形成するための蒸着設備が必要になるだけでなく、金属反射膜を形成する対象の形状が大きくなると、1バッチあたりの取り数が少なくなり、蒸着コストが大きくなるとう問題も生じる。
【0008】
そこで、本出願人は、先に、予め略最終形状に加工されたプラスチック母材と、反射膜の形成されたプラスチックフィルムとを金型キャビティ内に挿入した後、金型をプラスチック母材のガラス転移温度以上に加熱し、樹脂内圧を発生させてフィルム表面に金型鏡面を転写させ、金型を徐冷してプラスチック母材が熱変形温度以下になった後に取り出すプラスチックミラーの製造方法及びその製造装置及びプラスチック成形品の製造方法を提案している(特許文献1参照)。
【0009】
【特許文献1】特開平6−182783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来技術にあっては、プラスチック母材をガラス転移温度以上から熱変形温度までゆっくりさせることで加工時の温度分布や圧力分布が生じることなく高精度な面転写を実現するとともに、プラスチックフィルムに予め金属反射膜を形成しておくことで蒸着コストを低減しているが、熱容量の大きいプラスチック母材自体をガラス転移温度以上に加熱し、その後、熱変形温度以下までゆっくりと冷却するといった工程が必要であるため、加工時間が長くなり、生産性を向上させる上で改良の必要があった。
【0011】
そこで、本発明は、均一な圧力をプラスチック基材全域に付加できるようにして、プラスチック積層体を高精度に製造することのできるプラスチック積層体の製造方法及び当該製造方法で製造するプラスチック積層体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明のプラスチック積層体の製造方法は、最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートを、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設して、前記型部材と前記加圧部材を相対移動させて、当該加圧部材で押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して軟化させて、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートを密着一体化させるとともに、前記転写面形状に補正加工するプラスチック積層体の製造方法であって、前記加圧部材と前記プラスチック基材は、少なくとも一方が他方側に突出した凸面形状であって、当該他方側が当該凸面形状と対応する凹面形状であり、当該凸面形状の頂点部分と当該凹面形状の底部分とが所定の当接面積を有する所定の部分押圧端部で当接して、前記加圧部材が前記プラスチック基材を押圧することにより、上記目的を達成している。
【0013】
この場合、例えば、請求項2に記載するように、前記部分押圧端部は、前記プラスチック基材の前記加圧部材側の面に前記加圧部材方向に所定量突出して形成された押圧凸部であってもよい。
【0014】
また、例えば、請求項3に記載するように、前記部分押圧端部は、前記加圧部材の前記プラスチック基材側の面に前記プラスチック基材方向に所定量突出して形成された押圧凸部であってもよい。
【0015】
さらに、例えば、請求項4に記載するように、前記押圧凸部は、その先端部が所定の曲率を有した曲面に形成されていてもよい。
【0016】
また、例えば、請求項5に記載するように、前記加圧部材または前記プラスチック基材は、前記加圧時に前記押圧凸部の進入する凹部が形成されていてもよい。
【0017】
さらに、例えば、請求項6に記載するように、前記押圧凸部は、その高さが前記凹部の深さよりも所定量だけ高く形成されていてもよい。
【0018】
また、例えば、請求項7に記載するように、前記押圧凸部と前記凹部は、当該押圧凸部の先端部に先端ほどその先端方向に対して直交する方向の断面面積が小さくなる傾斜面と当該凹部の開口側端部に開口側ほどその開口面積が大きくなる傾斜面のうち、少なくとも一方が形成されていてもよい。
【0019】
さらに、例えば、請求項8に記載するように、前記プラスチック基材は、射出成形法で作製されていてもよい。
【0020】
また、例えば、請求項9に記載するように、前記プラスチック基材は、繊維等の強化充填材を含む非プラスチック複合材料で作製されていてもよい。
【0021】
請求項10記載の発明のプラスチック積層体は、最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートが、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設され、前記型部材と前記加圧部材が相対移動されて、当該加圧部材によって押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材が当該中間部材の軟化温度以上に加熱されて軟化して、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートが密着一体化されるとともに、前記転写面形状に補正加工されて製造されるプラスチック積層体であって、請求項1から請求項9のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法で製造されていることにより、上記目的を達成している。
【0022】
この場合、例えば、請求項11に記載するように、前記表層シートは、前記機能膜として、予め金属反射膜が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のプラスチック積層体の製造方法によれば、最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートを、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが型部材側に位置する状態で配設して、型部材と加圧部材を相対移動させて、当該加圧部材によって押圧されるプラスチック基材が表層シートを型部材の転写面に押圧するとともに、少なくとも中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して軟化させて、プラスチック基材、中間部材及び表層シートを密着一体化させるとともに、転写面形状に補正加工するに際して、加圧部材とプラスチック基材を、少なくとも一方が他方側に突出した凸面形状であって、当該他方側が当該凸面形状と対応する凹面形状とし、当該凸面形状の頂点部分と当該凹面形状の底部分とを、所定の当接面積を有する所定の部分押圧端部で当接させて、加圧部材でプラスチック基材を押圧させているので、均一な圧力をプラスチック基材全域に付加することができ、プラスチック積層体を高精度に製造することができる。
【0024】
本発明のプラスチック積層体によれば、最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートが、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設され、前記型部材と前記加圧部材が相対移動されて、当該加圧部材によって押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材が当該中間部材の軟化温度以上に加熱されて軟化して、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートが密着一体化されるとともに、前記転写面形状に補正加工されて製造されるプラスチック積層体を、請求項1から請求項9のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法で製造しているため、高精度なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な実施例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【実施例1】
【0026】
図1〜図15は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第1実施例を示す図であり、図1は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第1実施例を適用したプラスチック積層体製造装置1の正面概略構成図である。
【0027】
図1において、プラスチック積層体製造装置1は、下側ダイプレート2、上側ダイプレート3及びタイバー4を有したプレス機5を備えており、プレス機5は、下側ダイプレート2に対して鉛直方向に延在する状態でタイバー4が設置されていて、上側ダイプレート3が、タイバー4に沿って上下方向に移動可能となっていて、下側ダイプレート2との間に所定の圧力を付加することができる構造となっている。なお、プレス機5は、上側ダイプレート3が移動する場合だけでなく、下側ダイプレート2が移動してもよく、また、下側ダイプレート2と上側ダイプレート3の双方が移動するようになっていてもい。
【0028】
そして、下側ダイプレート2には、転写駒(型部材)6が固定されており、上側ダイプレート3には、加圧部材7が固定されている。加圧部材7の転写駒6に対向する側の面は、所望の最終形状の凸面形状に形成されており、転写駒6の加圧部材7に対向する側の面は、所望の最終形状に凹面形状に加工された転写面8が形成されている。
【0029】
また、転写駒6には、転写駒6を加熱するヒータ9が設けられており、転写駒6を加熱する加熱手段としては、ヒータ9に限るものではなく、例えば、高周波加熱、赤外線ヒーター加熱、温風加熱等の非接触な加熱手段を用いてもよい。
【0030】
プラスチック積層体製造装置1は、上記転写駒6と加圧部材7との間に、プラスチック基材10、中間部材11及び表層シート12が、配置される。この場合、プラスチック基材10が加圧部材7側に位置し、表層シート12が転写駒6側に位置して、それらの間に、熱可塑性樹脂からなる中間部材11が位置する状態で配置される。
【0031】
このプラスチック基材10は、例えば、軟化温度150℃のポリカーボネイト樹脂を使用して、上記転写駒6と加圧部材7との間に配置されたときに、転写駒6の転写面8側となる基材転写面10aの形状が当該基材転写面10a側が突出した凸面形状である略最終形状に予め加工されており、プラスチック基材10には、図2に示すように、その基材転写面10aとは反対側の裏面10bの中央部、すなわち、凸面形状の基材転写面10aの頂点部に対応する位置に、所定量だけ略柱状に突出した押圧凸部(部分押圧端部)13が形成されている。プラスチック基材10の作製方法は、限定されるものではないが、射出成形を用いることで、押圧凸部13を含めて、プラスチック基材10の外形が複雑な形状であっても、容易にかつ短時間で作製することができる。また、プラスチック基材10は、繊維等の強化充填材を含む非プラスチック複合材料で作製されていてもよい。
【0032】
そして、このプラスチック基材10の押圧凸部13は、その先端部が、図3に示すように、所定の曲率半径R0を有した曲面に形成されており、この押圧凸部13の曲率半径R0は、当該押圧凸部13の当接する相手方である加圧部材7が、上述のように、プラスチック基材10方向にその中央部が突出した凸面形状となっているため、この加圧部材7の凸面形状の曲率半径をR1としたとき、R0>R1となる曲率半径となっている。プラスチック基材10の押圧凸部13の先端部の曲面形状の曲率半径R0を、このような条件を満たした曲率半径とすることで、凸面形状の加圧部材7と押圧凸部13とが接触した際に、片当たりが発生することを適切に防止することができる。
【0033】
すなわち、例えば、図4に示すように、押圧凸部13の先端部が平面形状に形成されていて、当接する相手の加圧部材7が、当該押圧凸部13に対して凹面形状であると、押圧凸部13が当該加圧部材7に対して型当たりが発生するおそれがあり、このような型当たりが発生すると、加工安定性が悪化する。
【0034】
そこで、図3に示したように、加圧部材7が押圧凸部13に対して凸面形状であるときには、上記条件の曲率半径R0の曲面を押圧凸部13に形成することで、上述のような型当たりの発生を防止することができ、加工安定性を向上させることができる。
【0035】
また、図5に示すように、加圧部材7が押圧凸部13に対して凹面形状であるときには、当該加圧部材7の凹面形状の曲率半径をR2としたとき、押圧凸部13の凸面形状の曲率半径R0を、R0<R2となる曲率半径とすることで、凹面形状の加圧部材7と押圧凸部13とが接触した際に、片当たりが発生することを適切に防止することができる。
【0036】
中間部材11は、加圧時のプラスチック基材10と転写面8との間の形状誤差によって生じる空隙の最大幅以上の厚さを有している。
【0037】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧部材7が当接して加圧するプラスチック基材10の加圧側の裏面10bに押圧凸部13を形成して、加圧部材7がこの押圧凸部13のみと接触してプラスチック基材10を押圧することで、プラスチック基材10の基材転写面10aを、転写駒6の転写面8方向に均一に押圧する。
【0038】
すなわち、プラスチック積層体の製造方法として、例えば、図6に示すように、転写面側が凸面形状で裏面側が平坦なプラスチック基材101を用いて押圧側が平面の加圧部材102で押圧することで、成型する場合、例えば、図7に示すように、転写駒103と加圧部材102との間に、プラスチック基材101と中間部材104を挟んで表層シート105を、転写面103aの形成されている転写駒103側に表層シート105が位置するように配置して、図8に矢印で示すように、中間部材104を加熱・軟化させて、加圧部材102を転写駒103方向に移動させて、加圧一体化する方法で成形すると、加圧時に軟化した中間部材104を変形させることで、プラスチック基材101の形状誤差を補正して転写駒103の転写面103aの形状を忠実に表層シート105の面に転写することができる。また、この場合、軟化させる中間部材104の厚みは転写駒103の転写面103aの形状に対するプラスチック基材101の形状誤差分だけあれば良い。すなわち、非常に薄い中間部材104のみを加熱・冷却すればよいため、加工時間を非常に短くかつ高精度なミラーを作製することができ、また、表層シート105に予め金属反射膜が形成されているため、蒸着コストも低減することができる。
【0039】
ところが、上述のように、プラスチック基材101が軟化していないため、プラスチック基材101は、その裏面と加圧部材102とが剛体同士で接触して押圧されることとなるとともに、プラスチック基材101の裏面形状を加圧部材102の形状と同一形状に加工することが困難でことから、プラスチック基材101の裏面と加圧部材101との間に空隙106が発生し、成形品質を悪化させる。特に、プラスチック基材101が、図6及び図7に示したように、転写面側が凸面形状で裏面側が平坦な偏肉形状のプラスチック基材101であると、プラスチック基材101の中央部がヒケ気味となり、裏面が凹形状となる。このような状態で、図8に示すように、加圧部材102を転写駒103方向に移動させて加圧力を付与すると、プラスチック基材101が、図8に丸印で示す部分で、部分的に加圧されることとなり、プラスチック基材101の転写駒103側の面を中間部材104及び表層シート105を介して転写面103aに密着させたときに、プラスチック基材101自体が、図8に黒矢印で示すように変形する。また、図9に示すように、プラスチック基材101を転写駒103の転写面103aから離型する際に、プラスチック基材101が軟化していないため、変形状態からの弾性回復によって、図9に丸印で示すように、部分的に加圧された部分のみが先に転写面103aから剥離して、形状精度が大きく崩れて悪化する。
【0040】
そして、プラスチック積層体(成形品)が曲面ミラーである場合には、通常、成形性、軽量化を考慮して、図10に示すように、プラスチック基材110が略筋肉形状の曲面形状として、加圧部材111が転写駒方向に突出した球面形状に形成されるが、このような筋肉曲面形状のプラスチック基材110では、球面形状の加圧部材111とプラスチック基材110との形状を一致させることが難しく、プラスチック基材110と加圧部材111との間に図10に示すような空隙112が発生して、上記問題と同様の問題が発生する。また、たとえ加圧部材111とプラスチック基材110の裏面形状が一致している場合であっても、加圧部材111とプラスチック基材110との位置が少しでもずれると、プラスチック基材110と加圧部材111との間に図10に示すような空隙112が発生して、上記問題と同様の問題が発生する。
【0041】
そこで、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧部材7が当接して加圧するプラスチック基材10の加圧側の裏面10bに押圧凸部13を形成して、加圧部材7がこの押圧凸部13のみと接触してプラスチック基材10を押圧することで、プラスチック基材10の基材転写面10aを、転写駒6の転写面8方向に均一に押圧する。
【0042】
以下、製造工程順に、製造方法を説明する。なお、以下の説明では、プラスチック基材10として、軟化温度が150℃のポリカーボネート樹脂を用い、表層シート12として、軟化温度が260℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、中間部材11として、軟化温度が100℃のウレタンフィルムを用いた場合を例として、説明する。
【0043】
まず、図1に示したうに、中間部材11と表層シート12を、表層シート12が転写面8側に位置する状態にして、転写面8の形成されている転写駒6上に配置して、ヒータ9で転写駒6を介して中間部材11の軟化温度以上の所定温度、例えば、ウレタンフィルムである中間部材11の軟化温度100℃以上の130℃に中間部材11を加熱して、中間部材11のみを軟化させる。すなわち、上述のように、プラスチック基材10として、軟化温度が150℃のポリカーボネート樹脂を用い、表層シート12として、軟化温度が260℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、中間部材11として、軟化温度が100℃のウレタンフィルムを用いて、赤外線ヒータ12で中間部材11を130℃に加熱することで、中間部材11のみを軟化させることができる。
【0044】
次に、プラスチック積層体製造装置1は、図11に矢印で示すように、上側ダイプレート3を下側ダイプレート2方向に移動させて、上側ダイプレート3に取り付けられている加圧部材7をプラスチック基材10の押圧凸部13のみに接触させ、加圧する。このとき、中間部材11が軟化されているため、プラスチック基材10で中間部材11を転写駒6方向に加圧することで、中間部材11が、プラスチック基材10の転写面8側(中間部材11側)の形状と転写駒6の転写面8の形状の誤差を補完するように、軟化変形する。
【0045】
次に、プラスチック積層体製造装置1は、加圧部材16でプラスチック基材10を加圧した状態のまま、中間部材11が軟化温度以下になるまで冷却した後、図12に示すように、上側ダイプレート3を上方に移動させ、プラスチック基材10、中間部材11及び表層シート12から構成される一体化されたプラスチック積層体(積層プラスチック成形品)20を、図示しない搬送装置等で離型して取り出す。
【0046】
なお、本実施例では、中間部材11と表層シート12をプラスチック基材10による押圧によって変形させているが、例えば、転写駒6に、転写面8の有効範囲外の位置で当該転写面8に開口する連通孔を形成するとともに、当該連通孔を、転写駒6の外部に設置されている真空吸引装置に連通して、中間部材11と表層シート12を、表層シート12が転写面8側に位置する状態にして、転写面8の形成されている転写駒6上に固定配置して、中間部材11及び表層シート12でその開口部が覆われた転写面8内の空気を連通孔を介して真空吸引装置によって吸引することで、転写駒6に固定されている表層シート12及び中間部材11を、転写面8に沿うように変形させてもよい。
【0047】
このように、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧部材7が当接して加圧するプラスチック基材10の加圧側の裏面10bに押圧凸部13を形成して、加圧部材7がこの押圧凸部13のみと接触してプラスチック基材10を押圧している。
【0048】
すなわち、図13に示すように、プラスチック基材10に押圧凸部13を設けない場合、プラスチック基材10の裏面と加圧部材7の形状が異なると、加圧時に、プラスチック基材10と加圧部材7との間に隙間30が生じ、プラスチック基材10が転写駒6の転写面8と接する位置と加圧部材7がプラスチック基材10を押す位置が異なり、プラスチック基材10が、図13に黒矢印で示す方向に変形して、成形精度が悪化する。なお、図13では、説明の便宜上、中間部材11と表層シート12を省いた状態で示している。
【0049】
ところが、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、図14に示すように、加圧部材7が当接して加圧するプラスチック基材10の加圧側の裏面10bに押圧凸部13を形成しているので、たとえプラスチック基材10の裏面と加圧部材7の形状が異なっていることで、図13と同様の隙間30が発生する状態であっても、プラスチック基材10が転写面8と接する位置と加圧部材7がプラスチック基材10を押す位置が一致しているため、図13の場合のようなプラスチック基材10の変形が発生せず、離型時の弾性回復による形状変形の発生を防止することができる。そして、図14に丸印で示した空隙31には、実際には、軟化変形した中間部材11で補完される。
【0050】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、加圧時には中間部材11が軟化しているため、プラスチック基材10を変形させない。
【0051】
なお、プラスチック基材10として、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、または、マイカ等を強化充填材としたプラスチック複合材料を用いて作製すると、プラスチック基材10の剛性が向上し、空隙30のような加圧力が直接付与されない部分でも、プラスチック基材10の剛性で、軟化した中間部材11を空隙31の形状に確実に変形させることができる。
【0052】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置1は、図15に示されるように、転写駒40の転写面40aが凹面である場合にも、プラスチック基材41の裏面側の頂点部に押圧凸部42を形成することで、その押圧面が凹面形状を有する加圧部材43がプラスチック基材41を付勢する場合に、押圧凸部42のみと接触して、均一にプラスチック基材41を押圧するように、することができ、成形品であるプラスチック積層体の品質を向上させることができる。
【実施例2】
【0053】
図16〜図18は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第2実施例を示す図であり、図16は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第2実施例を適用したプラスチック積層体製造装置50の正面概略構成図である。
【0054】
なお、本実施例は、上記第1実施例のプラスチック積層体製造装置1と同様のプラスチック積層体製造装置に適用したものであり、本実施例の説明において、上記第1実施例のプラスチック積層体製造装置1と同様の構成部分には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0055】
図16において、プラスチック積層体製造装置50は、下側ダイプレート2、上側ダイプレート3及びタイバー4を有したプレス機5を備えており、下側ダイプレート2には、転写駒(型部材)6が固定されており、上側ダイプレート3には、加圧部材51が固定されている。
【0056】
プラスチック積層体製造装置50は、転写駒6と加圧部材51との間に、プラスチック基材52、中間部材11及び表層シート12が、配置される。この場合、プラスチック基材52が加圧部材7側に位置し、表層シート12が転写駒6側に位置して、それらの間に、熱可塑性樹脂からなる中間部材11が位置する状態で配置される。
【0057】
このプラスチック基材52は、例えば、軟化温度150℃のポリカーボネイト樹脂を使用して、上記転写駒6と加圧部材7との間に配置されたときに、転写駒6の転写面8側となる基材転写面52aの形状が当該基材転写面52a側が突出した凸面形状である略最終形状に予め加工されているとともに、略筋肉形状に形成されている。プラスチック基材52の作製方法は、限定されるものではないが、射出成形を用いることで、プラスチック基材52の外形が複雑な形状であっても、容易にかつ短時間で作製することができる。
【0058】
そして、上記加圧部材51は、その転写駒6側の面が、中央部ほど転写駒6方向に突出した凸面形状に形成されており、当該凸面形状の頂点部に、加圧時に上記プラスチック基材52に当接する押圧凸部(部分押圧端部)53が形成されており、この押圧凸部53は、第1実施例の押圧凸部13と同様に、所定の曲率半径を有した曲面に形成されている。
【0059】
このような加圧部材51の押圧凸部53とその加圧部材51側の裏面が凹面形状のプラスチック基材52の裏面52bとが接触した際に、片当たりが発生することを適切に防止することができる。
【0060】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例のプラスチック積層体製造装置50は、凸面形状の加圧部材51の頂点部分に押圧凸部53を形成して、その裏面が凹面形状となっているプラスチック基材52の裏面に当該加圧部材51の押圧凸部53のみを接触させてプラスチック基材52を押圧することで、プラスチック基材52の基材転写面52aを、転写駒6の転写面8方向に均一に押圧する。
【0061】
以下、製造工程順に、製造方法を説明する。なお、以下の説明では、プラスチック基材52として、軟化温度が150℃のポリカーボネート樹脂を用い、表層シート12として、軟化温度が260℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、中間部材11として、軟化温度が100℃のウレタンフィルムを用いた場合を例として、説明する。
【0062】
まず、図16に示したように、中間部材11と表層シート12を、表層シート12が転写面8側に位置する状態にして、転写面8の形成されている転写駒6上に配置して、ヒータ9で転写駒6を介して中間部材11の軟化温度以上の所定温度、例えば、ウレタンフィルムである中間部材11の軟化温度100℃以上の130℃に中間部材11を加熱して、中間部材11のみを軟化させる。
【0063】
次に、プラスチック積層体製造装置50は、図17に矢印で示すように、上側ダイプレート3を下側ダイプレート2方向に移動させて、上側ダイプレート3に取り付けられている加圧部材51をその押圧凸部53のみを、プラスチック基材52の裏面に接触させ、加圧する。このとき、中間部材11が軟化されているため、プラスチック基材52で中間部材11を転写駒6方向に加圧することで、中間部材11が、プラスチック基材52の転写面8側(中間部材11側)の形状と転写駒6の転写面8の形状の誤差を補完するように、軟化変形する。
【0064】
次に、プラスチック積層体製造装置50は、加圧部材51でプラスチック基材52を加圧した状態のまま、中間部材11が軟化温度以下になるまで冷却した後、図18に示すように、上側ダイプレート3を上方に移動させ、プラスチック基材52、中間部材11及び表層シート12から構成される一体化されたプラスチック積層体(積層プラスチック成形品)60を、図示しない搬送装置等で離型して取り出す。
【0065】
なお、本実施例では、中間部材11と表層シート12をプラスチック基材52による押圧によって変形させているが、例えば、転写駒6に、転写面8の有効範囲外の位置で当該転写面8に開口する連通孔を形成するとともに、当該連通孔を、転写駒6の外部に設置されている真空吸引装置に連通して、中間部材11と表層シート12を、表層シート12が転写面8側に位置する状態にして、転写面8の形成されている転写駒6上に固定配置して、中間部材11及び表層シート12でその開口部が覆われた転写面8内の空気を連通孔を介して真空吸引装置によって吸引することで、転写駒6に固定されている表層シート12及び中間部材11を、転写面8に沿うように変形させてもよい。
【0066】
このように、押圧凸部53が加圧部材51に設けられている場合にも、第1実施例と同様に、たとえプラスチック基材52の裏面と加圧部材51の加圧面側の形状が異なって隙間が発生する状態であっても、プラスチック基材52が転写面8と接する位置と加圧部材51がプラスチック基材52を押す位置が一致しているため、プラスチック基材52の変形が発生せず、離型時の弾性回復による形状変形の発生を防止することができ、プラスチック積層体60の品質を向上させることができる。
【0067】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置50は、加圧部材51に押圧凸部53を設けているので、プラスチック基材52の形状の自由度が増え、筋肉に形状として、容易に作製することができる。
【0068】
さらに、本実施例のプラスチック積層体製造装置50は、加圧部材51に押圧凸部53を設けて、当該押圧凸部53のみをプラスチック基材52の裏面に接触させて押圧しているので、プラスチック基材52の加工バラツキが発生しても、加工毎に押圧位置が変わることを防止することができ、安定してプラスチック積層体60を作製することができる。
【0069】
さらに、本実施例のプラスチック積層体製造装置50は、転写駒の転写面が凹面である場合にも、同様に適用することができる。
【実施例3】
【0070】
図19〜図22は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第3実施例を示す図であり、図19は、本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第3実施例を適用したプラスチック積層体製造装置70の正面概略構成図である。
【0071】
なお、本実施例は、上記第1実施例のプラスチック積層体製造装置1と同様のプラスチック積層体製造装置に適用したものであり、本実施例の説明において、上記第1実施例のプラスチック積層体製造装置1と同様の構成部分には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0072】
図19において、プラスチック積層体製造装置70は、下側ダイプレート2、上側ダイプレート3及びタイバー4を有したプレス機5を備えており、下側ダイプレート2には、転写駒(型部材)6が固定されており、上側ダイプレート3には、加圧部材71が固定されている。
【0073】
プラスチック積層体製造装置70は、転写駒6と加圧部材71との間に、プラスチック基材72、中間部材11及び表層シート12が、配置される。この場合、プラスチック基材72が加圧部材7側に位置し、表層シート12が転写駒6側に位置して、それらの間に、熱可塑性樹脂からなる中間部材11が位置する状態で配置される。
【0074】
このプラスチック基材72は、例えば、軟化温度150℃のポリカーボネイト樹脂を使用して、上記転写駒6と加圧部材7との間に配置されたときに、転写駒6の転写面8側となる基材転写面72aの形状が当該基材転写面72a側が突出した凸面形状である略最終形状に予め加工されているとともに、略筋肉形状に形成されている。
【0075】
上記加圧部材71は、その転写駒6側の面が、中央部ほど転写駒6方向に突出した凸面形状に形成されており、当該凸面形状の頂点部に、加圧時に上記プラスチック基材72に当接する押圧凸部73が形成されており、この押圧凸部73は、第1実施例の押圧凸部13と同様に、所定の曲率半径を有した曲面に形成されている。
【0076】
一方、プラスチック基材72の加圧部材71側の面である裏面72bの中央部には、加圧部材71の押圧凸部73が進入する所定量窪んだ凹部74が形成されている。
【0077】
そして、部分押圧端部として機能する加圧部材71の押圧凸部73とプラスチック基材72の凹部74は、加圧部材71の押圧凸部73の突出高さL1とプラスチック基材72の凹部74の深さL2とが、突出隆SAL1>深さL2の関係となるように形成されている。
【0078】
また、加圧部材71の押圧凸部73とプラスチック基材72の凹部74は、図20に示すように押圧凸部73の先端部と凹部74の開口側端部のうち、少なくとも一方が所定の傾斜面形状(テーパー形状)に形成されている。すなわち、図20(a)に示すように、加圧部材71の押圧凸部73の先端部にその先端方向に対して直交する方向の断面積が先端側ほど小さくなる傾斜面73aが形成されていても良いし、図20(b)に示すように、プラスチック基材72の凹部74の開口側端部に開口側ほど開口面積が広くなる傾斜面74aが形成されていても良いし、あるいは、図20(c)に示すように、加圧部材71の押圧凸部73の先端部に傾斜面73aが形成され、かつ、プラスチック基材72の凹部74の開口側端部に傾斜面74aが形成されていても良い。
【0079】
次に、本実施例の作用を説明する。本実施例のプラスチック積層体製造装置70は、凸面形状の加圧部材71の頂点部分に押圧凸部73を形成し、その裏面が凹面形状となっているプラスチック基材72の裏面に当該加圧部材71の押圧凸部73の進入する凹部74を形成して、加圧部材71の押圧凸部73をプラスチック基材72の凹部74内に進入させ、加圧部材71の押圧凸部73をプラスチック基材72の凹部のみに接触させてプラスチック基材72を押圧することで、加圧部材72のプラスチック基材72に対する位置決めを適切に行いつつ、プラスチック基材72の基材転写面72aを、転写駒6の転写面8方向に均一に押圧する。
【0080】
以下、製造工程順に、製造方法を説明する。なお、以下の説明では、プラスチック基材72として、軟化温度が150℃のポリカーボネート樹脂を用い、表層シート12として、軟化温度が260℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、中間部材11として、軟化温度が100℃のウレタンフィルムを用いた場合を例として、説明する。
【0081】
まず、図19に示したように、中間部材11と表層シート12を、表層シート12が転写面8側に位置する状態にして、転写面8の形成されている転写駒6上に配置して、ヒータ9で転写駒6を介して中間部材11の軟化温度以上の所定温度、例えば、ウレタンフィルムである中間部材11の軟化温度100℃以上の130℃に中間部材11を加熱して、中間部材11のみを軟化させる。
【0082】
次に、プラスチック積層体製造装置70は、図21に矢印で示すように、上側ダイプレート3を下側ダイプレート2方向に移動させて、上側ダイプレート3に取り付けられている加圧部材71の押圧凸部73をプラスチック基材72の裏面72bに形成されている凹部74内に進入させる。このとき、加圧部材71の押圧凸部73とプラスチック基材72の凹部74は、加圧部材71の押圧凸部73の突出高さL1とプラスチック基材72の凹部74の深さL2とが、突出高さL1>深さL2の関係となるように形成されているので、加圧部材71の押圧凸部73が、プラスチック基材72の凹部74の底面に確実に当接して、当該凹部74の底面のみを加圧する。また、加圧部材71の押圧凸部73がプラスチック基材72の凹部74内に進入することで、加圧部材71とプラスチック基材72の位置決めを適切に行い、加圧したい場所を確実に加圧することができるとともに、プラスチック基材72をプレス機5の上側ダイプレート3と下側ダイプレート2の間に挿入する場合に常に同じ場所に安定して挿入することができる。
【0083】
そして、加圧部材71がプラスチック基材72を押圧するとき、中間部材11が軟化されているため、プラスチック基材72で中間部材11を転写駒6方向に加圧することで、中間部材11が、プラスチック基材72の転写面8側(中間部材11側)の形状と転写駒6の転写面8の形状の誤差を補完するように、軟化変形する。
【0084】
次に、プラスチック積層体製造装置70は、加圧部材71でプラスチック基材72を加圧した状態のまま、中間部材11が軟化温度以下になるまで冷却した後、図22に示すように、上側ダイプレート3を上方に移動させ、プラスチック基材72、中間部材11及び表層シート12から構成される一体化されたプラスチック積層体(積層プラスチック成形品)80を、図示しない搬送装置等で離型して取り出す。
【0085】
なお、本実施例においても、中間部材11と表層シート12をプラスチック基材72による押圧によって変形させているが、例えば、転写駒6に、転写面8の有効範囲外の位置で当該転写面8に開口する連通孔を形成するとともに、当該連通孔を、転写駒6の外部に設置されている真空吸引装置に連通して、中間部材11と表層シート12を、表層シート12が転写面8側に位置する状態にして、転写面8の形成されている転写駒6上に固定配置して、中間部材11及び表層シート12でその開口部が覆われた転写面8内の空気を連通孔を介して真空吸引装置によって吸引することで、転写駒6に固定されている表層シート12及び中間部材11を、転写面8に沿うように変形させてもよい。
【0086】
このように、本実施例のプラスチック積層体製造装置70においては、凸面形状の加圧部材71の頂点部分に押圧凸部73を形成し、その裏面が凹面形状となっているプラスチック基材72の裏面に当該加圧部材71の押圧凸部73の進入する凹部74を形成して、加圧部材71の押圧凸部73をプラスチック基材72の凹部74内に進入させ、加圧部材71の押圧凸部73をプラスチック基材72の凹部のみに接触させてプラスチック基材72を押圧している。
【0087】
したがって、加圧部材72のプラスチック基材72に対する位置決めを適切に行いつつ、プラスチック基材72の基材転写面72aを、転写駒6の転写面8方向に均一に押圧することができる。
【0088】
また、本実施例のプラスチック積層体製造装置70は、加圧部材71の押圧凸部73をプラスチック基材72の凹部74内に進入させ、加圧部材71とプラスチック基材72の位置決めを適切に行うとともに、加圧部材71の押圧凸部73をプラスチック基材72の凹部のみに接触させてプラスチック基材72を押圧している。
【0089】
したがって、プラスチック基材72の加工バラツキが発生しても、加工毎に押圧位置が変わることを防止することができ、また、加圧したい場所を確実に加圧することができるとともに、プラスチック基材72をプレス機5の上側ダイプレート3と下側ダイプレート2の間に挿入する場合に常に同じ場所に安定して挿入することができる。
【0090】
なお、本実施例においては、加圧部材71に押圧凸部73を形成し、プラスチック基材72に凹部74を形成しているが、逆に、プラスチック基材72に押圧凸部を形成し、加圧部材71に当該プラスチック基材72の押圧凸部の進入する凹部を形成しても良い。この場合にも、押圧凸部の高さを凹部の深さよりも高くする。
【0091】
また、図23に示すように、加圧部材71の中央部に2つの押圧凸部75を形成し、プラスチック基材72の裏面72bに、加圧部材71の押圧凸部75に対応する位置に、2箇所の凹部76を形成しても良い。この場合も、押圧凸部75の高さを凹部76の深さよりも高くする。
【0092】
このように、押圧凸部75を2つ形成し、対応する凹部76をプラスチック基材72に2つ形成すると、プラスチック基材72と加圧部材71の位置関係を回転方向においても位置決めすることができ、より一層形状精度を向上させることができる。
【0093】
なお、図23では、2つの押圧凸部75と2つの凹部76を形成している場合を示しているが、回転方向をも位置づけする場合には、押圧凸部75と凹部76の数は、2つ以上であれば、その数は限定されない。
【0094】
以上、本発明者によってなされた発明を好適な実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0095】
大型プラスチックミラー等の高精度なプラスチック積層体を製造する製造方法及びプラスチック積層体に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第1実施例を適用したプラスチック積層体製造装置の正面概略構成図。
【図2】図1のプラスチック基材の拡大正面図。
【図3】図1のプラスチック基材の押圧凸部と凸面形状の加圧部材の当接状態の拡大正面図。
【図4】図1のプラスチック基材の押圧凸部の先端部が平面形状としたときに凹面形状の加圧部材に片当たりする状態の説明図。
【図5】図4の押圧凸部の先端部を所定の曲率半径の曲面として型当たりが防止できている状態の説明図。
【図6】平面状の加圧部材で裏面が平面で転写面側が凸面のプラスチック基材を押圧する場合の正面図。
【図7】図6の加圧部材とプラスチック基材を用いたプラスチック積層体製造装置の正面図。
【図8】図7のプラスチック積層体製造装置の加圧時の状態を示す正面概略構成図。
【図9】図7のプラスチック積層体製造装置の離型時の状態を示す正面概略構成図。
【図10】凸面形状の加圧部材で略筋肉の凸面形状のプラスチック基材を押圧する場合の正面図。
【図11】図1のプラスチック積層体製造装置の加圧時の状態を示す正面概略構成図。
【図12】図1のプラスチック積層体製造装置の離型時の状態を示す正面概略構成図。
【図13】図1のプラスチック積層体製造装置のプラスチック基材に押圧凸部を形成しない場合の押圧状態の説明図。
【図14】図13のプラスチック積層体製造装置のプラスチック基材に押圧凸部を形成した場合の押圧状態の説明図。
【図15】図14のプラスチック積層体製造装置の筋肉の凹面形状の裏面に押圧凸部が形成され凹面形状の加圧部材で押圧する場合の押圧状態の説明図。
【図16】本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第2実施例を適用したプラスチック積層体製造装置の正面概略構成図。
【図17】図16のプラスチック積層体製造装置の加圧時の状態を示す正面概略構成図。
【図18】図16のプラスチック積層体製造装置の離型時の状態を示す正面概略構成図。
【図19】本発明のプラスチック積層体の製造方法及びプラスチック積層体の第3実施例を適用したプラスチック積層体製造装置の正面概略構成図。
【図20】図19の加圧部材の先端部に傾斜面の形成されている押圧凸部とプラスチック基材の凹部部分(a)、加圧部材の押圧凸部とプラスチック基材の開口端部に傾斜面の形成されている凹部部分(b)及び加圧部材の先端部に傾斜面の形成されている押圧凸部とプラスチック基材の開口端部に傾斜面の形成されている凹部部分(c)の拡大正面断面図。
【図21】図19のプラスチック積層体製造装置の加圧時の状態を示す正面概略構成図。
【図22】図19のプラスチック積層体製造装置の離型時の状態を示す正面概略構成図。
【図23】2つの押圧凸部の形成されているプラスチック基材と2つの凹部の形成されているプラスチック基材の拡大正面断面図。
【符号の説明】
【0097】
1 プラスチック積層体製造装置
2 下側ダイプレート
3 上側ダイプレート
4 タイバー
5 プレス機
6 転写駒
7 加圧部材
8 転写面
9 ヒータ
10 プラスチック基材
10a 基材転写面
10b 裏面
11 中間部材
12 表層シート
13 押圧凸部
20 プラスチック積層体
30 隙間
31 空隙
40 転写駒
40a 転写面
41 プラスチック基材
42 押圧凸部
43 加圧部材
50 プラスチック積層体製造装置
51 加圧部材
52 プラスチック基材
52a 基材転写面
52b 裏面
53 押圧凸部
70 プラスチック積層体製造装置
71 加圧部材
72 プラスチック基材
72a 基材転写面
72b 裏面
73 押圧凸部
74 凹部
80 プラスチック積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートを、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設して、前記型部材と前記加圧部材を相対移動させて、当該加圧部材で押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材を当該中間部材の軟化温度以上に加熱して軟化させて、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートを密着一体化させるとともに、前記転写面形状に補正加工するプラスチック積層体の製造方法であって、前記加圧部材と前記プラスチック基材は、少なくとも一方が他方側に突出した凸面形状であって、当該他方側が当該凸面形状と対応する凹面形状であり、当該凸面形状の頂点部分と当該凹面形状の底部分とが所定の当接面積を有する所定の部分押圧端部で当接して、前記加圧部材が前記プラスチック基材を押圧することを特徴とするプラスチック積層体の製造方法。
【請求項2】
前記部分押圧端部は、前記プラスチック基材の前記加圧部材側の面に前記加圧部材方向に所定量突出して形成された押圧凸部であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項3】
前記部分押圧端部は、前記加圧部材の前記プラスチック基材側の面に前記プラスチック基材方向に所定量突出して形成された押圧凸部であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項4】
前記押圧凸部は、その先端部が所定の曲率を有した曲面に形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項5】
前記加圧部材または前記プラスチック基材は、前記加圧時に前記押圧凸部の進入する凹部が形成されていることを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項6】
前記押圧凸部は、その高さが前記凹部の深さよりも所定量だけ高く形成されていることを特徴とする請求項5記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項7】
前記押圧凸部と前記凹部は、当該押圧凸部の先端部に先端ほどその先端方向に対して直交する方向の断面面積が小さくなる傾斜面と当該凹部の開口側端部に開口側ほどその開口面積が大きくなる傾斜面のうち、少なくとも一方が形成されていることを特徴とする請求項5または請求項6記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項8】
前記プラスチック基材は、射出成形法で作製されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項9】
前記プラスチック基材は、繊維等の強化充填材を含む非プラスチック複合材料で作製されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法。
【請求項10】
最終形状に加工された転写面の形成されている型部材と当該型部材に対して相対向する状態で配設されている加圧部材との間に、予め略最終形状に加工されたプラスチック基材と予め所望の機能膜の形成されている表層シートが、熱可塑性樹脂からなる中間部材を間に挟んで当該表層シートが前記型部材側に位置する状態で配設され、前記型部材と前記加圧部材が相対移動されて、当該加圧部材によって押圧される前記プラスチック基材が前記表層シートを前記型部材の前記転写面に押圧するとともに、少なくとも前記中間部材が当該中間部材の軟化温度以上に加熱されて軟化して、前記プラスチック基材、前記中間部材及び前記表層シートが密着一体化されるとともに、前記転写面形状に補正加工されて製造されるプラスチック積層体であって、請求項1から請求項9のいずれかに記載のプラスチック積層体の製造方法で製造されていることを特徴とするプラスチック積層体。
【請求項11】
前記表層シートは、前記機能膜として、予め金属反射膜が形成されていることを特徴とする請求項10記載のプラスチック積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−181910(P2006−181910A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379069(P2004−379069)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】